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2013年5月22日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー)
ダイヤモンド・オンライン
ドル円は今年末110円、2015年に120円、こんな予想ではもはや誰も驚くまい。アベノミクスで日本市場は様変わりした。しかし円安・株高を急進展させた背景を正しく理解しないと、現状評価も予測も戦略もトンチンカンになる。実は安倍相場も進化しつつある。
進行中の円安トレンドを三段跳びに例えると、長年の円高基調に沿って積まれた巨額のポジションの修正によって、まずホップが勢いづいた。円高基調下では外国人は日本資産を為替ヘッジなしで保有し、日本人は為替ヘッジのために先物等でドル売りを膨らませていた。円安に潮目が変わるとその巻き戻しの円売りや外貨買いが起こり、それがさらに円安を促す。その循環で相場のホップは、ファンダメンタルズ要因だけでは理解不能なほどの勢いになる。
下グラフは昨年11月半ばを基点に日米株価とドル円を対比している。日本株はすでに60%以上、ドル円は25%以上上昇した。このうち当初3カ月は、日本株の上昇率はドル円と米国株の上昇率の掛け合わせでおおむね説明できる。つまり日本株の上昇からドル円上昇分を除くと米国株の上昇とほぼ同等だった。日本株買いの主役である海外投資家は、ドル換算した日本株と米国株のパフォーマンスが同等になる程度に日本株を買っていた。
安倍相場が実現するに至ったポイントは二つある。第一は、アベノミクスの最初の功績として、既存ポジションの修正による円安動意を首尾よく喚起できたこと。第二は、その円安も、円安に誘発された外国人の日本株買いも、米国景況・市況の改善という追い風を受けられる幸運が重なったことだ。逆に言えば、万一米国で景気見通しが悪化し、株価が反落すれば、円高になり、日本株は「米国株安+円高」分は下落しよう。
過去5年の日本の政権は、米国・世界経済からの逆風で円高・株安に苛まれ、求心力を失い短命に終わった。しかし、米国経済がバランスシート調整からの自律回復の兆しを見せており、安倍政権は向こう数年追い風を受け続けると想定する。円安トレンドの三段跳びは、「追い風参考記録」のホップの後、ファンダメンタルズの順風に沿ったステップに移行できそうだ。
足元は日銀の異次元緩和という自ら惹起した突風が手伝って、ホップとステップが同時進行しているかのような状況だ。日本株は「円安+米株高」を超えて上伸し、為替先導型相場から、株高に伴うリスク選好の高まりが円安も促す相乗型相場になっている。
アベノミクス第三の矢である構造改革は円相場に直接関わるものは少ないだろうが、株式市場が好感するなら、リスク選好の高まりから円安を促す方向に作用するだろう。三段跳び最後の120円台へのジャンプを皮算用するのはいかにも尚早だが、当座は株高を伴う年末110円へ向けた「よい円安」の流れを享受したい。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
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