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10年後も食える会社、消える会社【1】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130521-00009442-president-bus_all
プレジデント 5月21日(火)8時15分配信
あなたの会社の給料は? リストラ危険度は? 業界研究のスペシャリストが280社を徹底分析。「ものづくり日本」の落日が数字でも明らかになった――。
今回の調査では、代表的企業280社を14の業界・業種に分類し、過去の財務諸表などから分析(2012年5月時点)。企業会計専門家や経営コンサルタントのアドバイスをもとに将来の経営状況を予測し、「安定性」「稼ぐ力」「リストラ余力」「給与上昇期待度」の4項目によるポイントから総合評価した。
「安定性」は、企業経営の健全さを示す。10年後に生き残っているか、衰退しているかを反映する指標だ。「稼ぐ力」では、投資に見合うだけの利益を生み出す力があるかどうかを見る。その業界が成長産業なのか、そうでないのかが表れる指標でもある。「リストラ余力」は、リストラを行わなくても企業経営を続けていく体力があるかどうかを示す指標。今後の成長が期待され、人材を積極的に採用すると予想される企業ほど値が高く、リストラされる危険が高い企業ほど値が低い。「給与上昇期待度」は、現在の業界平均と比較し、10年後の給与水準がどうなっているかを予測したものである。
総合評価トップとなったのは、「医薬品・化粧品」。ワーストとなったのが、「電機」だ。各業界の未来予測については、次項をご参照いただきたいが、10年後に持続的成長できるかどうかを判断するうえでもっとも重要なことは何か。
「企業が継続するための最低条件は、経常的な営業活動で得る資金が、人件費や税金負担などの支出を上回ること」
評価項目の選定などでアドバイスをしてくれた池田陽介氏(池田総合会計事務所所長)はいう。
つまり、現金ベースの決算書である「営業活動によるキャッシュフロー(以下、営業CF)」が黒字(入金超)であることが、企業の継続に欠かせないということ。逆にいえば、入金が出金を下回る「営業CF赤字(出金超)」は、危険シグナルであるというわけだ。
■14業種の5つ星評価
●医薬品・化粧品
――抜群の「安定性」で総合評価トップ!
過去6期で最終赤字を1度でも計上したのは28社中1社のみと、安定経営の企業が多数を占める。自己資本比率と売上高営業利益率の両方が高い会社も多く、「安定性」「稼ぐ力」もトップ評価となった。従業員給与が上昇で推移している企業も多く「給与上昇期待度」も高い。大型M&Aを手がけてきた各社の課題は買収効果の早期実現。医薬品は輸入超過になっており、その縮小・解消も今後の課題。
●電機
――ワースト1位! 純損失累計額は1兆円
製造からの撤退や事業中止が目立っているように、選択と集中どころか縮小均衡が加速。増加傾向を示していたグループ社員の減員も必至であり、これからがリストラ本番か。「鉄鋼・非鉄金属」や「自動車・二輪」などに比べると、小幅で推移してきた平均給与の減額幅の拡大も懸念される。調査対象9社の06年度以降の純損失合計額は約10兆円と、最大の弱点である「稼ぐ力」の回復が急務。
●自動車・二輪車
――苦境を乗り越え反転攻勢へ!
13年3月期、トヨタが前年度比で130万台を超える世界販売台数を見込んだように、各社は反転攻勢を鮮明化。ただし、世界大手との覇権争いは必至な状況だけに、「稼ぐ力」が低く出ているのが気がかり。各社の将来はここ1、2年にかかっているといってもいい。
●精密機器・医療機器・工作機械
――世界経済停滞でも「安定感」高し
過去6期の決算で1期でも営業CFが赤字に陥った会社は26社中2社。安定経営を維持してきた業界だ。リーマンショック以前を上回り、過去最高の売上高を計上した企業も出現。自己資本比率が高い企業も多いだけに、世界経済が多少停滞しても克服が期待できる。
●造船重機・建設機械
――コマツが牽引! さらなる成長も
各項目で高い数値を示しているコマツが平均値を押し上げているとはいえ、「稼ぐ力」や、成長期待度と裏表の関係でもある「リストラ余力」は上位水準。縮小が避けられない造船や原子力をカバーする社会インフラ関連などの事業の育成・拡大が持続的成長の鍵を握る。
●電子部品・自動車部品
――「稼ぐ力」の低下が懸念材料
グローバル経済の荒波を乗り越え世界的ポジションを確保している各社は、リーマンショックで大幅に減少させた売上高を徐々に回復。懸念材料は「稼ぐ力」の低下だ。11年度の売上高営業利益率が対前年度でアップしたのは、調査対象企業21社中2社にとどまる。
●鉄鋼・非鉄金属
――住友金属鉱山が突出も利益率は低下へ
海外鉱山開発などへの投資に見合う利益をコンスタントに確保しているように、「稼ぐ力」と「安定性」の評価ポイントが高いのが住友金属鉱山。ただし、全体的には売上高営業利益率が低下傾向を示しており、新日鉄と住友金属の経営統合を浮揚の契機にしたいところ。
●ゴム・ガラス・製紙・セメント
――「国内依存組」が数値を押し下げ
ブリヂストンや旭硝子などグローバル化を進めているゴム、ガラス各社が全体の数値を押し上げており、国内販売が中心の製紙やセメント各社の「安定性」や「稼ぐ力」はやや低迷。6期累計の純利益がマイナスになっている会社もあり、立て直しが急務だ。
●化学・繊維
――給与も安定推移で総合評価3位
調査対象が大手中心とはいえ、過去6期で1度でも営業CF赤字を計上した企業がないように、国内の化学・繊維会社の底力は健在。世界トップシェア製品を有し、高い利益率を持続している企業も目立つ。従業員の給与は、横バイで安定的に推移すると予想される。
●食品・飲料
――総合評価2位! 給与アップにも期待
16社の投資活動にともなう出金超過の合計は約6兆5000億円と、ビール各社を中心に海外企業の買収など積極的な投資を実施。勝ち組業界で給与の伸びも期待できそうだ。グループ従業員が増えていることなどもあり、「リストラ余力」も高ポイントになっている。
●小売・外食
――「明」のコンビニ、「暗」の家電量販店
成長基調のコンビニやドラッグストア、ホームセンターに対して家電量販店は低迷と、ここにきて明暗がくっきり。百貨店と総合スーパーは上向き傾向に転じており、今後の推移に注目。外食は企業間格差がさらに顕在化。調査対象の半数で従業員給与が上向きで推移。
●運輸・サービス
――内需型企業多数も「安定性」に不安
グループ従業員の減少企業が目立っていることもあって、「リストラ余力」が低水準。国際化を進めている海運・物流を除き内需型企業が多いことから「安定性」は高くなるはずだが、赤字基調の会社も調査対象に含んでいることからポイントも押し下げられている。
●通信・ネット関連・広告
――評価は高くないものの給与は上昇推移
基本的には成長産業で、従業員の給与も上向きでの推移が予想される。ただし、営業CFが赤字の企業も多いために、全体の評価ポイントが押し下げられている。投資活動への出金超過額が少ない企業も存在するなど、「リストラ余力」も低い評価にとどまる。
●エネルギー・建設・不動産・住宅関連
――「リストラ余力」が最下位評価
東京電力を調査対象に含めていることから、各評価ポイントが下落。ただし、その東京電力を含め、営業CFが赤字に陥ったことがある企業は半数を超える。従業員も減少傾向で、「リストラ余力」は最下位評価。今後の成長に向けた投資活動もゼネコンを中心に停滞。
ビジネスリサーチ・ジャパン 鎌田正文=文・評価
10年後も食える会社、消える会社【2】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130521-00009443-president-bus_all
プレジデント 5月21日(火)8時45分配信
あなたの会社の給料は? リストラ危険度は? 業界研究のスペシャリストが280社を徹底分析。「ものづくり日本」の落日が数字でも明らかになった――。
■「建設・不動産」は大手にも“黄信号”
過去に営業CF赤字が1回でもあった企業は60社。全体の約2割だ。6期中に営業CF赤字が2回以上あったところとなると1割を切る17社に減少する。
調査対象企業が大企業中心とはいえ、営業CF赤字が少ないことは評価していいだろう。ただし、「建設・不動産」では営業CF赤字が複数回あった企業が目につく。08年に米国発のサブプライム問題が国内に波及して不動産不況が深刻化、アーバンコーポレイションなど倒産ラッシュが続いた。経営体力のある大手といえども、今後も営業CF赤字を繰り返すようであれば、継続に“黄信号”が点滅する可能性がないとはいえないだろう。
「安定性」の評価では、営業利益や当期純利益、自己資本比率、手持ち現金の推移なども評価の対象にしている。
自己資本比率が高いということは、借入金の割合が少ないということ。「精密機器・医療機器・工作機械」「電子部品・自動車部品」「医薬品・化粧品」などで、高い自己資本比率の企業が多い。オーナー系や世界トップ級のニッチ製品を手がけている企業が、業界大手を上回る例が目立つのも特徴だ。
「稼ぐ力」では、現金ベースの「投資活動によるキャッシュフロー(以下、投資CF)」を重視した。
「投資CFは、将来の利益獲得・拡大に向けた企業の資金活動を見るうえで欠かせない指標。意外に誤解が多いのがこの投資CFです。『赤字=悪』と思い込んでいるからでしょう。工場新設、企業買収などの活動を活発化すれば、子会社の売却や工場の譲渡などで得る資金を上回ることになる。すなわち、入金よりも出金のほうが大きい出金超というわけです」(池田総合会計事務所所長・池田陽介氏)
つまり、投資CFがマイナスであるほうが、前向き姿勢と見ることも可能ということ。もちろん、投資すればいい、というわけではない。業界・業種別に投資CFの推移を見てみよう。
日立製作所やパナソニック、ソニーなど電機大手9社合計の6期累計投資CFは、約18兆円の出金超である。パナソニックが三洋電機やパナソニック電工を完全子会社化したり、シャープが大阪府堺市に液晶パネル工場を新設と、大手9社は過去6年間、企業買収や設備投資に18兆円を投じてきたといっていいだろう。
そしてその結果はといえば、6年間の9社合計で10兆円に迫る純損失だった。パナソニック、ソニー、NECなどが大規模なリストラを迫られ、シャープが台湾企業の資本を受け入れざるをえなかったのは必然だろう。
同様に計算すると、「自動車・二輪」9社の場合は、28兆円を投じて8兆円強の純利益を計上と、30%弱の回収率である。投資規模が断トツな業界だけに、ややモノ足りない数値だ。
もっとも回収率が高かったのは「造船重機・建設機械」で、70%弱。一方、10%台の低い数値にとどまったのが「エネルギー・建設・不動産・住宅」だ。東京電力の巨額最終赤字が数値下落の最大の要因だが、油田やLNGなど海外でのエネルギー開発には巨額の投資資金を要するだけに、リスク管理が将来を左右するキーワードになってくることはいうまでもない。
■海外M&A加速の「医薬」「ビール」
投資CFにおける海外企業買収の占める割合も増えている。国内需要の減少がはっきりしているだけに、買収先の選択眼はこれまで以上に重要になる。
医薬品やビール各社はここ数年、競うように大型の海外M&Aを実行。武田薬品工業にいたっては、1兆6000億円を超す手持ち現金を4500億円にまで減らしても、あえて海外医薬品メーカーの買収を繰り返してきた。
ただし、その武田を含め、アステラス製薬や第13共、キリンホールディングス(HD)、サントリーHD、アサヒグループHDなど、巨額投資に見合う成果がまだはっきりと見えてこないのが現実。買収選択眼の巧拙を含め、今後の推移に注目したい。
もちろん、企業の持続的成長に投資活動は欠かせない。しかし、その資金は営業活動で獲得した資金を原資とするのが基本だ。自由に使える余剰資金を指す「フリーCF」という言葉を、新聞などで目にする機会が多くなっているが、求める計算式は「営業CF+投資CF」。これまで触れたように、営業CFは入金超、投資CFは出金超であるのが一般的なことから、両数値の差額ととらえたほうが理解は早い。もちろん、プラスが望ましい。
最後に「リストラ余力」「給与上昇期待度」を見ていこう。全体の結論は、多少のリストラはあれど雇用はある程度守られるが、給与が上昇する可能性はきわめて低いということだ。
世界経済には暗雲が漂っているが、それでも、国内企業は生き残りをかけて海外に向かう。製造業だけでなく、内需型の小売や外食、サービス業も同様だ。ただし、海外での稼ぎは海外での再投資に向かうのが基本。国内の従業員給与に回る可能性は低い。雇用は維持されても、国内従業員の年収アップは期待できない、ということだ。グループ従業員は増えても、国内は減少傾向の企業が多く、リストラ余力も少なくなりつつあるのが現実である。
■利益率40%強のファナックに学べ!
経済環境が波乱続きのなかで、健闘している企業も少なくない。その代表が産業ロボットや工作機械の頭脳に相当するNC(数値制御装置)を手がけているファナックである。
同社が過去6期に計上した当期純利益の合計は約6300億円。同期間の投資CFの合計出金超過額は1400億円だったことから、投資の4.5倍の利益を確保したことになる。リーマンショックで落ち込んだ売上高も順調に回復、手持ち現金も伸張させている。
売上高営業利益率は、製造業にもかかわらず40%強。同数値が高いことで定評のあるキヤノンですら10%をわずかに超える程度であり、驚異的といっていいだろう。自己資本比率にいたっては、借入金がないどころか負債がほぼゼロを意味する90%に迫る。
「安定性」「稼ぐ力」でほぼ満点に近い評価。従業員給与も上昇傾向。工場の海外移転が加速する流れにあって、国内工場で生産し、海外で稼ぐのもファナックの特筆すべき点である。
同社をベンチマークにして、あとに続く企業が多数登場することを待ち望みたいところだ。
ビジネスリサーチ・ジャパン 鎌田正文=文・評価
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