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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MMQNVX6K50YQ01.html
5月13日(ブルームバーグ):ソニーの平井一夫社長の笑顔は1ドル=100円の光と陰を浮かび上がらせた。
ソニー が数年ぶりに黒字を回復したことが笑顔の理由だ。しかし、かつてトランジスタラジオとウォークマンで家電の常識を変えたソニーが、アップルのiPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)、さらに遡ってiPod(アイポッド)に勝てる製品を思い付いたのかと言われれば、答えはノーだ。生産性が向上したのか、部門間の不利益な対立が解消されたのか、これもノーだ。急激に変化する市場での競争についていけるほど迅速にコストと人員を減らしているかと言えば、これもほとんどできていない。
何が2013年3月期に430億円の黒字をもたらしたのか。それは主として、昨年11月以降20%以上も下落した円の対ドル相場だ。平井社長をはじめ、日本株式会社の経営陣が革新と効率向上によって業績を立て直す義務を円安が消滅させてしまうことに問題がある。
安倍晋三首相による円押し下げの成功は日本企業幹部と投資家が考えているような福音ではない。それには3つの理由がある。その第一が革新と効率性向上義務の喪失。あとの2つは、日本のエネルギー輸入需要の増大と通貨戦争のリスク上昇だ。
日本株式会社は生まれ変わる必要がある。ソニーは恐らくその象徴だ。ソニーを創設した盛田昭夫、井深大両氏は日本人にとって、米国人にとってのヘンリー・フォード氏(フォード創業者)やスティーブ・ジョブズ氏(アップル創業者)のようなものだろう。ソニーの成功は日本の戦後復興の象徴だった。
■願い事の一つはかなった
しかし、日本自身と同様に、ソニーは道を見失った。急成長と利益拡大から安定成長への転換は難航した。1980年代の日本の資産価格バブル以降何年も、ソニーは水膨れ体質を改善できず、大き過ぎる負債を抱えたまま、かつて業界に革命を巻き起こした創造の精神も失っていた。今日のソニーは、台頭する敏捷で低コストの競合他社に包囲され苦戦する日本株式会社の典型だ。
前任のハワード・ストリンガー氏と同じように、平井氏も社長として大半の時間をソニーの合理化に費やし、残りは円安を祈ることに使った。安倍首相のおかげで円安の願いがかなった今、平井社長はソニーがアップルや韓国のサムスン電子の後塵(こうじん)を拝するようになった理由を忘れてしまいはしないだろうか。ソニーの問題は決して、円高ではなかった。問題は時々出る映画のヒット以外に、消費者が求める製品をもはや創り出していないことだ。
ドイツの輸出企業は為替相場を嘆くよりも変化に適応し、革新的な製品を生み出して利益を上げている。一方、シャープや日産自動車が今回の円安を、業界地図を塗り変えるような新技術・製品の開発と再生への努力をやめてよいというお墨付きだと受け取るリスクは現実のものとしてある。日本株式会社がそろってこの過ちに陥った瞬間、アベノミクスは日本再生計画ではなく日本の将来への脅威になる。
■タグフレーション
第2の問題として、日本のエネルギー輸入はここ数十年で最大規模になっている。2011年3月の震災とそれに伴う放射性物質漏れは原子力発電に対する強い反発を引き起こした。54の原子炉 のうち稼働しているのはわずか2基という状況の下、資源のない日本は石油や石炭、ガスをこれまで以上に大量に輸入せざるを得ない。
安倍首相は今月、産業界のリーダー約100人を率いてロシアとサウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)を訪れた。割安なエネルギー確保が目的だ。しかしどんなに割安な契約を結んでも、現在の円相場では同じ額でも購入できるエネルギーの量は激減している。
エネルギーの値上がりは消費者や企業の負担を増やし、アベノミクス効果を鈍らせる。燃料高騰を抑える補助金のため、政府の財政見通しも悪化するだろう。円安と日本のエネルギー需要の組み合わせが悪い種類のインフレを引き起こす恐れもある。デフレがスタグフレーションに変わっても、それを進歩とは誰も呼べない。
■中国の存在
輸出企業が陥っているジレンマも見落とせない。円安が部品輸入のコストを高めており、富士通は国内でパソコンを値上げする計画だ。東芝も追随する可能性を示唆している。生産拠点を積極的に中国に移してきたパナソニックなどが、日本国内で雇用を増やして安倍首相の日本再生計画に貢献することができるだろうか。購買力が低下する日本国民に製品を買ってもらうこと自体が難題だというのにだ。
第3の問題は、円安が確実に世界的な緊張を高めることだ。日本の貿易相手国であるオーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、スイス、タイなどは相次いで自国通貨相場の上昇抑制に急きょ動いている。尖閣諸島をめぐって日本との関係が悪化している中国が、これに加わればどうなるか。
週末の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、日本は公式に批判されずに済んだ。しかし、今は20カ国・地域(G20)の時代だ。G20の主要メンバーである中国は、これまで欧米に批判され続けてきた政策を日本が取るのを黙認しないだろう。中国経済の成長減速を受けて、習近平国家主席が人民元相場押し下げによる輸出てこ入れを図る可能性は十分にある。批判されれば、安倍首相と同じ言い訳をすればいい。
■追い風待つ経営者
日本企業の経営陣は誰も、これらを心配していないようだ。この10年の日本において最も優れた経営者の一人である日産のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)はこのところの円下落について、「逆風がやんだが、まだ追い風は吹いていない」と論評した。つまり一段の円安が必要だということだ。しかし、このような自助努力の欠如こそがそもそも、日本株式会社にこれまでの道筋を歩ませた元凶なのだ。(ウィリアム・ペセック)
(参考ニュース:)
★中国が世界を必要としないわけ(WSJ)
米国や欧州、中国は閉鎖型経済を政策面で現実的な選択肢として見出す可能性がある
•http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323531704578483593721658794.html?mod=WSJJP_Market_2_4_Left_LatestNews
【シドニー】中国の重商主義的な経済モデルには問題が山積しておりし、弱みが浮上している。中国にとって、新しいグローバル環境に調整するための便利で有効な方法は内向き志向かもしれない、とマーケットウォッチは伝えた。
実際、経済的圧力が自給自足へのシフトを促すことになれば、米国や欧州、中国は閉鎖型経済を政策面で現実的な選択肢として見出す可能性がある。しかし、その理由はそれぞれ異なるだろう。(以下有料)
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