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2013年5月14日 植草一秀の『知られざる真実』
金融市場の変動というものは、基本的に循環的なものである。
円高があり円安がある。
株安があり株高がある。
変動が生じる原因は基本的に変動が行き過ぎるからである。
円高が行き過ぎれば円安に振れる。
株安が行き過ぎれば株高に振れる。
循環変動であることを忘れられない。
昨年11月以降の円安・株高をもたらした原因は、二つある。
ひとつは、金融政策の運営が変わるとの予想が浮上したことだ。
日銀の独立性を排除し、日銀に無理やりにでも、量的金融緩和を強制する。
その効果があるのか、ないのか。それははっきりしない。
しかし、金融市場がその変化に反応すると予想されることから、その予想に乗る投資資金の増加が生じて、金融緩和=円安の市場反応が生まれてきた。
このことによってある種の「ウソから出たマコト」のようなことで円安が進行した。
実際、安倍政権は日銀人事において、日本銀行法が定めている日本銀行の独立性を蹂躙するかたちで幹部人事を行った。
この人事で総裁、副総裁に就任した黒田東彦氏、岩田規久男氏は、「結果」を出すことを迫られる。
別の言い方をすれば、無理をしてしまう傾向をビルトインされていると言える。
日銀による金融緩和策強化の評価は短期的にはできない。
短期的には円安・株高の反応が生まれたから、一見、日本経済にプラスの効果を与えているかのような印象が強いが、金融政策の評価はこのような短期で行うものではない。
中長期の影響評価が必要不可欠である。
詳細は、拙著『金利・為替・株価大躍動−インフレ誘導の罠を読み抜く−(ビジネス社)
をご参照賜りたい。
為替レートについては、重大な事実を認識しておくことが必要である。しかし、いま進展している円安には、この側面が極めて薄い。
それは、日本円が円高には振れていないと判断されることだ。
円高が行き過ぎれば円安に振れるのは、ある意味順当である。
為替レートはあいまいなもので、必ずこの水準でなければならないという水準がない。
逆に、驚くような水準の為替レートでも、その水準が出現する可能性はいつでもある。
実際、豪ドルのレート変動を見ると、2008年10月に1豪ドル=55円だったのが、本年4月には1豪ドル=105円になった。豪ドルの価格は、わずか4年半で、約2倍になった。
これほど変動が大きいのが為替レートの特徴である。
為替レートの適正な水準を考えるための考え方に「購買力平価」という考え方がある。同じお金なら、同じものが買えるのが「基準」だとする考え方だ。
マクドナルドのビッグマックが日本で320円、米国で4.37ドルであるなら、為替レートが1ドル=73円であれば、この基準が満たされる。
320円をドルに換金すると4.37ドルになって、米国でもビッグマックを一つ買える。
これが、ビッグマックを基準にして計算される「購買力平価」である。
ところがいま、円ドルレートは1ドル=101円である。この基準値と比較すれば現在の為替レートは、「適正レート」よりもはるかに「円安」に振れているということになる。
現在の1ドル=100円が正当化されるには、マクドナルドのビッグマックが437円にならなければならない。
安倍政権は日本銀行に金融緩和推進を強制して、インフレを誘導することを目標に掲げている。
この政策が実現され、ビッグマックが1個437円になると、現在の1ドル=100円は順当な為替レートということになる。
安倍政権の政策方針は、文字通り解釈すれば、この変化を追求するものであることになる。
これが、本当に国民生活にとってプラスになることなのか。
よく考える必要がある。
320円のビッグマックが437円になるのだ。これが、インフレ誘導=円安誘導の結果である。
オーストラリアの人は、1ドルの使い道が2倍になったのだから、日本にたくさん来るようになるだろう。
しかし、その裏側には、オーストラリアの1ドルの牛肉の輸入価格が55円から105円に値上がりする現実がある。
そして、もうひとつ、重大な変化が観察され始めていることに警戒を怠れない。
日本の長期金利に上昇の兆候がはっきりと表れ始めたのである。
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