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日経平均4万円も夢ではない〔1〕/武者陵司(武者リサーチ代表)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130510-00000001-voice-pol
PHP Biz Online 衆知(Voice) 5月10日(金)12時40分配信
いったい何が起こったのだろうか。大多数の日本人はいぶかしく思っているはずである。諦めていた円安、株高、さらにはデフレ脱却と日本経済の復活すら視野に入りはじめたのである。この現実をどのように捉え、投資家、経営者、ビジネスマンはどのようなスタンスを取るべきか、以下ではその答えを述べたい。過去のしがらみやこだわりを捨て、リスクテイクを徹底させるべきである。それは国家百年、企業、個人100年の計を決する重大判断である、と訴えたい。
◆貨幣が2倍なら株価も2倍に◆
日銀の新金融政策は大成功し、不当な株安、不動産安、円高を大転換、2年後には2%インフレが視野に入るだろう。黒田日銀新総裁に主導された金融緩和は、日本経済史における大きな画期となる。諸悪の根源は異常円高と株・不動産の過剰値下がりであり、それは完全に金融政策の射程のなかにあるからである。単純に考えて、貨幣供給が2倍に増えるのだから、供給量が不変の株価、地価は2倍となり、円は(相手国通貨供給が不変なら)2分の1になる。まるで市場にバズーカ砲を撃ち込むように、新金融政策が資産市場と為替市場に絶大な衝撃を与え続ける。「間違っていた株価・不動産価格、円の是正」が起きれば、日本経済をめぐる風景が一変する。現在1.3倍のPBR(株価純資産倍率)が世界平均の1.9倍まで上昇すると考えれば、日経平均株価は1万8000〜2万円をめざすことになる。
同様に、世界で最も割安であった不動産価格も高騰するだろう。控えめに見積もっても、今後数年間で年間GDPと同額の500兆円以上の資産効果(株と不動産のキャピタルゲイン)を日本にもたらすだろう。不動産関連をはじめとして投資と銀行貸し出しも増加、2014年から3%程度の賃金上昇も始まる公算が大きい。消費税増税前の駆け込みもあり、消費・投資は2014年にかけて大きく増加しよう。資産価格急騰自体が追加的購買力を生むので貯蓄余剰の解消は緩慢となり、長期金利は2014年から上昇するものの1.0%止まりであろう。
われわれは、今後の日本を二段階で考えるべきだろう。まずアベノミクスで円高デフレ脱却、その先の改革で世界の経済大国日本復活へ、である。日本の成長分野である医療、教育、農業は既得権益の巣窟、それらを規制緩和・自由化し、競争を導入し、資源を誘導しなければならない。また移民法の改正、女性の機会均等等、開かれた社会への変革も必須である。TPP参加を梃子とした構造改革、社会保障と労働の規制改革推進が実現できれば、日本は再度世界に冠たる高生産性経済大国になるであろう。第一段階だけでも日経平均は2万円、第二段階が進展すれば、日経平均は3万円から4万円への展望が開けていくだろう。
「そんなうまい話があるはずはない。輪転機を回しさえすればすべてが解決するとは錬金術である。呪縛にかかっている」。そうした懐疑を尻目に、株価は昨年11月14日以降5カ月で50%、ドル円レートも78円から99円まで3割弱の円安になった。
呪縛にかかっていたのは、これまでの日本人を支配した悲観論、宿命論のほうではないか。2009年以降のリーマン・ショックによる国際金融危機からの回復過程で、着実にパニック心理が沈静化し、米国や欧州では正常状態に戻ったのに、日本だけはむしろパニック状態を正常とする心理が広く蔓延し、定着した。
一方、欧米では危機という異常事態からの回復をめざした政策が展開された。量的金融緩和という前例のない金融緩和政策により失われたアニマルスピリットが復元し、市場でのリスクテイク意欲が完全に復活、その先に持続的経済成長と長期繁栄が見えてきた。リーマン・ショック直後には大恐慌時以上に上昇した社債のリスクプレミアム(市場が織り込む倒産確率)は元に戻り、株価は2009年3月のボトムから2倍を超えて上昇、米国のダウ工業株指数は史上最高値を更新した。
他方、アベノミクスが登場する昨年11月前まで日本株式はリーマン・ショック後の安値に低迷し、不動産も下落基調が続いた。この結果、日本株式、日本(東京)の不動産価格は世界主要国のなかで最も割安になっていた。日本株のリターンである益回りは8%と、1%弱の債券利回りの8倍となったが、それは歴史的にも国際的にも前例のない高さであり、日本株式の馬鹿げたほどの割安さを示していた。不動産においても、世界主要都市の不動産のキャップレート(期待リターン)と債券利回りの格差、イールドスプレッドを比較すると東京は世界最高であり、その著しい割安さが明白であった。
このような悲観の呪文から日本を解放したものがアベノミクスと、黒田氏が率いる新生日銀による新次元の金融緩和政策である。空前のマネー供給により、リスク資産への投資勧誘を打ち出した。日銀が中立性を放棄し、リスクテイカー支援に回ったことが如実である。舞台は大転換したのである。
◆マネーは自由に動かせばよい◆
それにしても、なぜ輪転機を回し、市場価格を支える金融政策が効果的なのだろうか。それは「遊んでいる人と資本を働かせ、富と需要を生み出すこと」に対して有効だからである。マネー、信用はそもそも経済活動にとって媒介、潤滑油にすぎないのだから、結果を出すために自由に動かせばよいのである。そして出すべき結果とは、需要創造に尽きる。現在、日本をはじめ先進国が患っている共通の最大の病は、生産性が高まったために、労働と資本の余剰が空前の規模で発生している点にある。それが大幅な失業の増加と空前の低金利をもたらしている。
この余剰を活用し、新たな需要が創造されれば、経済は発展し、人びとの生活水準は向上する。しかし余剰が遊ばされたままなら、デフレ、超低金利と失業の大発生となり経済は恐慌に陥る羽目となる。マネーはこの遊休資源(人と金)を需要に繋げる役目をもっているのであり、政策はその目的のために動員されなければならない。超金融緩和に対する評価も、この一点でなされなければならない。超金融緩和は「資産所得(=不労所得)をもたらし非倫理的である」という問いは、本筋ではないのである。
「金融政策ではデフレは解決できない」「バブル、ハイパーインフレをもたらす」「構造改革が必要」などはすべて、現状は変えられないという宿命論である。大多数の学者、ジャーナリストそして白川日銀体制はそうした宿命論の信奉者であった。しかし日本国民、安倍政権そして黒田日銀新体制は、そうした悲観論が導く暗い現実を拒否したのである。
それでは、日本だけがかかった病「長期デフレ」の二大原因は何か。それは円高と株・不動産の過剰値下がりであった。為替も資産価格も本来は循環的なもので、それが20年間、一方向に偏り続けたのは日本だけに起こった特異な現象である。円高と資産価格下落の相乗効果が世界中で唯一、日本においてだけ20年近くに及ぶ賃金下落をもたらした。1980年代までの円、株価と不動産価格は行き過ぎであり、その是正は当然であった。80年代末、日本の特異な産業競争力の高まり、大幅貿易黒字は円の不当な安さを示していた。また戦後の土地担保金融と過剰貯蓄が自己実現的にもたらした資産バブルも、どのような理論によっても正当化できないものであった。
つまり1990年代前半の円高と資産価格下落は、戦後日本経済の過剰成功がもたらした歪みの是正としての正当な意味があった。その背景には、極端に強くなった日本企業の競争力が米国経済を困難に陥れているという現実があった。いま振り返ってみれば、1980年代までの日本の繁栄は覇権国の国益を損なうもので、砂上の楼閣だったのである。
しかしその是正が行き過ぎた。過剰な円高と過剰な資産価格下落の継続が、相乗効果となって日本企業に異常な賃金下落圧力をかけ続けた。世界の労働市場は一物一価、同一労働同一賃金の原則が貫徹しつつある。
生産性を上げぬままに賃金を引き上げても、インフレ→通貨安となって逆襲される、つまり世界の賃金に回帰する。同様に生産性を上げぬまま通貨高になっても、国内の賃金下落を引き起こし、世界賃金に収斂する。過去20年間の執拗な円高は国内賃金の下落圧力を定着させ、日本に世界唯一のデフレをもたらした。一般的な通貨変動は購買力平価と比べてプラス・マイナス30%程度の為替変動が限度なのに、円の場合は一時、2倍という異常な評価が与えられた。それによって国際水準に対して日本企業のコストは2倍となり、賃金も2倍となったために、企業は雇用削減、非正規雇用へのシフト、海外移転を進めた。労働コストは大きく低下し、かろうじて競争力を維持できたものの、日本の労働者の賃金はいわばその犠牲となり、長期にわたって低下し、日本にデフレをもたらしてきたといえる。
また、ピーク時である1989年の日本の株式と不動産の合計時価総額は3100兆円(対GDP比6倍)に達したが、それが2011年には1500兆円(対GDP比3倍)へと半減した。この下落は年間平均80兆円に達し、名目GDPの16%に相当する。この資産価格下落は、ただちに企業と金融機関の問題資産償却コストや担保価値下落による信用収縮となり、企業の収益とアニマルスピリットを奪った。負の波及効果は金融や不動産など内需関連業種に連鎖し、企業のコスト引き下げ=賃下げ圧力を高めた。企業が空前の貯蓄余剰を抱えているのも、資産価格下落に際しての財務バッファーを確保するためという面が強い。
この過剰な円高と資産価格下落に、金融政策は決定的に影響を及ぼした。白川氏までの日銀は「通貨は財務省管轄、資産価格は市場が決定するもので、あずかり知らぬ」という態度を取り続けてきたが、それは誤りであった。1990年前後のバブル形成とバブル潰しにおいては、日銀の金融政策は決定的な役割を果たし、バブル潰しを指揮した当時の三重野総裁は「平成の鬼平」とジャーナリズムからの喝采を浴びた。
しかし日銀が「失われた20年」後半の過度の資産価格下落を放置し続けたことは、バランスを欠いていた。プラスのバブルを潰しながら、マイナスのバブルを容認し続けたのであるから、市場が極端なリスク回避にとらわれ続けたのも当然であった。人びとは著しく割安の株式(益回り8%、配当利回り2%)を避け、ゼロ金利の預金や1%の国債に大半の貯蓄を寝かせ続けた。金融市場がリスクキャピタル提供の場として完全に機能しなくなったのである。金融市場の機能不全に日銀の責任は大であった。
このように見てくると、「日銀金融政策の革命的変化」(『ファイナンシャル・タイムズ』紙)がいかに有意義か、明白になるだろう。黒田氏が率いる新日銀はマネタリーベースの2年倍増、国債残存期間の3年から7年への延長、上場投資信託(ETF)の買い増しなどにより、リスクプレミアムの引き下げ、リスク性資産投資の勧誘を打ち出した。日銀が中立性を放棄し、リスクテイカー支援に回ったことが如実に示されたのである。舞台は大転換し、株高と円安が始まった。なお、その背後には対中圧力という観点から日米同盟を強化したい米国の国益があることが留意されるべきである。米国は、アジア最大の民主主義国である日本経済のデフレによる衰弱を地政学的リスクと感じはじめている。東日本大震災直後のG7による協調介入、アベノミクス登場以降の円急落の容認などは、地政学的配慮によってもたらされている、と考えられる。
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日経平均4万円も夢ではない〔2〕/武者陵司(武者リサーチ代表)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130510-00000002-voice-pol
◆アカデミズムの罪◆
さて、アカデミズムで大きな影響力をもつ経済学者による量的金融緩和批判が絶えない。伊藤元重氏、吉川洋氏、野口悠紀雄氏などは「実質実効為替レートで見れば歴史的円高ではない」と主張しているが、それは因果関係をはき違えた議論である。実質実効為替レートで90年代前半ほど円高になっていないのは、円の名目為替レートがドルなどの主要通貨に対して上昇するなかで、製造業を中心に単位労働コストが大幅に低下したためである。実質実効為替レートは事後的に均衡したにすぎない。むしろ円高が進行したことで、日本の労働者の賃金は、他国に劣らない労働生産性の伸びが続いたにもかかわらず、大幅に下落してきたと捉えるのが正しい理解だろう。米労働省は、主要国製造業の時間当たり賃金およびユニットレーバーコストの比較を現地通貨ベースとドルベースのそれぞれで発表しているが、日本の円賃金は大きく下落したのに、ドルベースでは大きく上昇し、日本の競争力を阻害したことが鮮明である。円高は修正すべき対象であり、容認すべき対象ではないといえる。
また吉川洋東大教授は、近著『デフレーション』(2013年1月刊、日本経済新聞出版社)で「インフレは金融引き締めによる不況で抑制できるが、デフレは金融政策では抑制できない(何故ならゼロ金利下での超過準備引き上げに効果はない)、つまりデフレは原因ではなく結果である」と述べたうえで「日本のデフレ原因は1990年代に起こった大企業の雇用システム変貌、賃下げに原因がある」と主張している。
つまり企業が雇用を守ることを優先し、そのしわ寄せが賃金下落圧力となったというのであるが、説得力に乏しい。企業が不必要な雇用を維持することで労働生産性を引き下げ、その結果、発生する労働生産性低下のコストを賃下げというかたちで労働者と分け合う行動をとっているという論理であるが、そんな特異な行動がいまのグローバライゼーションのもとで成り立つのだろうか。
また、池尾和人氏(経済学者・慶應義塾大学経済学部教授)などは「必要なのは構造改革であって金融緩和ではない。構造が変わらなければいくら金融を緩和しても停滞から抜け出せない」と主張しているが、それは「長期デフレ」が構造改革を押しとどめてきたという点を無視している。デフレ終焉はそれ自体が構造改革なのである。20年間続いたデフレは、価格メカニズム(市場価格によって最適資源配分を行なう機能)を麻痺させ、潜在需要が大きな成長分野への資源配分を阻害した。ハイエクは「恐慌の原因は部門間の相対価格の歪みによる資源配分不全」としているが、日本はそれが20年近く続いたのである。
デフレとは、例えるなら「冷凍保存」のようなもので、変化を止めてしまう働きをもっている。つまり日本の経済停滞の原因は、本来成長産業であるサービスセクターが成長できていない点にあるが、その原因はサービス価格の長期的デフレにより、サービス産業がまったく儲からなくなってしまったからである。つまり、デフレが成長分野への所得配分を阻害しているのである。
それは、日本の高度成長期の歴史を振り返ればはっきりわかる。技術革新と生産性向上によって国民生活は急速に向上し、都市と農村間、製造業とサービス業間の所得格差が縮小したが、それは製造業などの高生産性セクターが稼いだ所得がサービス価格インフレ、農産物価格インフレとなってサービス産業や農業に移転できたからだ。いわゆる「生産性上昇率格差インフレ」であるが、デフレは生産性上昇率格差を埋め合わせる所得再配分機能を壊してしまったのである。
そうした事情は先進国の項目別物価、セクター別雇用、セクター別賃金推移における日本の特異性に顕著に表れている。各国の雇用を見ると、製造業の雇用減少は世界共通であるが、非製造業に関しては日本だけが雇用停滞に陥っている。そしてその原因はサービス価格のデフレにある。項目別物価推移を各国で比較すると、衣料品、テレビなど製造業製品価格は各国共通で低下しているのに、サービス価格は日本だけがデフレ、他国がサービス価格インフレと著しい相違があることがわかる。
そして賃金を見ると、日本だけ過去15年にわたって賃金が下落しており、とくに非製造業の下落が大きい。つまり、世界中で日本だけが「サービス価格デフレ→サービス産業の収益悪化→賃金下落・雇用悪化」という悪循環に陥ってきたことが明瞭である。
ということは、量的金融緩和によって円高が転換し、資産価格が上昇すれば、いままでの悪循環が好循環に転換すると考えられる。円安と資産効果によって企業に賃金上昇余力が生まれ、賃上げ傾向が開始される。賃金上昇や株価・地価の値上がりは家計に追加的購買力をもたらすが、その大半は飽和状態にある衣料品やエレクトロニクス製品ではなく、医療、教育、娯楽などのサービス分野に振り向けられ、そこで新たな需要を生む。サービス価格は上昇に転じ、サービス部門の賃金も上昇する。つまりサービス価格デフレの悪循環からサービス価格インフレの好循環が起こる、と想定されるのである。
◆シャドーバンキングの時代◆
リーマン・ショック以降、世界の中央銀行は新たなレジームに移行している。そして、この新しいレジームをどう評価するかで将来展望はまったく変わってくる。新レジームとは、米国や英国の中央銀行で始められ黒田日銀新総裁が踏み切った非伝統的金融政策、量的金融緩和政策である。それは中銀が、(1)金融危機に際しては最後の貸し手(lender of last resort)ではなく、最後の買い手(buyer of last resort)として振る舞う。また(2)流動性供給手段としては従来の銀行貸し出しを経由したそれではなく、市場価格の引き上げ=リスクプレミアムの引き下げを通した購買力の創造として遂行する。(3)そうした新政策は「成長・失業率」などの新たな政策目的を導入することで正当化される、という三点に整理されるだろう。なぜそうした変化が求められたかというと、金融の構造が大きく変化しているからである。
かつての銀行貸し出し中心の間接金融時代から市場を通した直接金融・市場金融時代へと金融チャンネルが変化し、シャドーバンキング(銀行以外の金融業態)が金融のメインストリームになっている。それにともない、信用創造の形態も融資から資産価格上昇へと変化してきている。信用(=購買力)は契約ではなく、市場価格の変化によって移転するので、信用創造は市場価格の上昇を意味することとなる。
金融を監視する中央銀行は市場価格をも管理せざるをえなくなり、銀行融資管理から資産価格管理へと中央銀行のウィングが広がる。それはバーナンキFRB議長が繰り返し述べてきたように、リスクプレミアムのマネジメントを通して行なわれる。ドラギECB総裁がOMT(国債の直接買い入れ)導入に際して「ユーロ崩壊プレミアムを潰す」と布告したのも、売り叩かれた南欧諸国の国債価格引き上げに焦点があった。中央銀行がリスクプレミアムに影響を及ぼす過程では、リスク選好度の最重要指標としての株価が重要になってくる。グリーンスパン前FRB議長、バーナンキFRB議長は暗黙の政策目標として株価を意識してきており、株価を無視してきた日銀思想の改変が必要になったのである。
こうした流れにより、中央銀行における通貨発行の裏付けが変化しつつある。中央銀行のバランスシートは、金本位制では通貨と金、管理通貨制では通貨と国債をバランスさせてきた。FRBのバランスシートを見ると、リーマン・ショック前の資産はほとんどが国債であった。しかしリーマン・ショック以後は、モーゲージ債(MBS)など市場性証券を多額に組み入れている。また保有国債も償還期限が長く、価格変動の大きな長期債の比重を高めている。
それでは市場性証券の裏づけは、いったい何であろうか。これは中央銀行の資産のなかに初めて登場した経済的価値であるといえよう。
市場性証券は将来、明確に予想できるキャッシュフローの現在価値である。金(誰もが金に価値があると信じている共同幻想)や国債(徴税権をもつ政府が必ず返済してくれるという信用)よりも確かな裏づけをもっている、とさえいえるかもしれない。
■ 武者陵司(むしゃ・りょうじ)武者リサーチ代表
1949年、長野県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。大和総研企業調査第二部長、ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーなどを経て2009年に株式会社武者リサーチを設立、代表に就任。
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