http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/721.html
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DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735
転載記事(抜粋)
■ 赤字構造が定着した貿易収支(クレディ・スイス証券)
■ 円安で貿易赤字は拡大へ (クレディ・スイス証券)
アベノミクスが大きな売り物にしていた円安による輸出パワー。
しかし、輸出数量指数はアベノミクスで<大幅な円安>が進んでからも、依然として低迷し前年比でマイナスが続いている。中国・欧州などの海外要因もあるが、昨年3〜5月は3〜9%台のプラスであった。
昨年夏からの輸出数量指数の推移は前年同月比(%)で、
2012年3月:+3.6 4月:+4.7 5月:+9.3 6月:−2.4 7月:−10.3 8月:−4.3 9月:−11.1 10月:−8.1 11月:−7.5 12月:−12.2 2013年1月:−5.9 2月:−15.8 3月:−9.8
貿易指数統計>貿易指数の推移表(財務省)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/OtherList.do?bid=000001008860&cycode=1
最近になって日経で、「円安は本当に輸出を増やすのか 」という編集委員によるコラム(4月17日)があった。
日経も含めマスコミでは「円安が輸出増に結びつくのにはタイムラグがある」と指摘されているが、この円安と輸出の問題、そして現在の円安が貿易収支へ与える影響ついて、クレディ・スイス証券が詳細な分析をしており(日本語版)、3月28日のレポートでは日本の貿易収支は<赤字構造が定着化した>と強い警鐘を鳴らしている。
円安で貿易赤字は拡大へ (2月22日)
https://plus.credit-suisse.com/researchplus/ravDocView?docid=EkCCzQ
赤字構造が定着した貿易収支 (3月28日)
https://plus.credit-suisse.com/researchplus/ravDocView?docid=K0yCHy
また小幡績氏(慶応義塾大学准教授)は、黒田東彦・日銀総裁の元同僚でもある志賀櫻氏(元財務省主計官・東京税関長)との対談で次のように述べている。
「アベノミクスによる実体経済への影響は円安がすべてですが、円安でも輸出は上向いていません。この3月も、輸出額は1.1%微増したものの、数量ベースでは前年同月比9.8%マイナス。円安でも輸出は伸びず、円換算の企業の利益が増えるだけで、数量が伸びなければ生産も雇用も増えることはない。」
(「2人の財務省OBが「アベノミクスの正体」を冷静に解析する」 4月30日 週刊ポスト)
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/705.html
私が上記のクレディ・スイス証券のレポートを知ったのは、4月19日のビジネス・インサイダーの記事からであった。
Why The Cheap Yen Isn't Boosting Japan's Exports
http://www.businessinsider.com/credit-suisse-yen-down-exports-down-2013-4?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+TheMoneyGame+%28The+Money+Game%29&utm_content=Google+Reader
この記事中には、クレディ・スイス証券が4月に公開した別のレポートからの引用がある。
「<円安にもかかわらず>輸出の伸びが低迷していれば、なお一層の円安が進み、その円安が引き金となり国内貯蓄の海外流出と金融市場の不安定化を加速させる。」
この記事はWebサイト「ファイナンシャリスト」からの転載であるが、最後にこのコラムニストは、
「アベノミクスで、円安は逆回転を始める」
と言っている。つまり、
円安の進行で、やがてアベノミクスは逆回転を始めるということだ。
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(※)以下に掲げる2つの記事は、クレディ・スイス証券の2つのレポートからの抜粋である。それらの概略部分の記載の全文を含めて掲載し、各々にその記載ページを付した。抜粋文の中で図表番号がたびたび出てくるが、資料のグラフを掲載できなかったので原文を開いてみることをお勧めしたい。多くの解析グラフが参考になるかと思う。
2月22日のクレディ・スイスのレポートの中の「(3) 日本製品の必需性と飽和」は、前述のビジネス・インサイダーでも取り上げられ、現在の日本の円安と輸出との関係の問題を考えるのに重要な要因であると考えられる。
【参照】
円安なのに輸出量が激減する日本経済(野口悠紀雄 東洋経済 4月6日号)
http://toyokeizai.net/articles/-/13514
普通貿易統計(財務省)
http://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.htm
貿易指数統計>貿易指数の推移表(財務省)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/OtherList.do?bid=000001008860&cycode=1
貿易指数統計>貿易指数表(財務省)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/OtherList.do?bid=000001008816&cycode=1
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日本経済アドバイザー クレディ・スイス証券 2013年3月28日
赤字構造が定着した貿易収支
https://plus.credit-suisse.com/researchplus/ravDocView?docid=K0yCHy
(概略) (1ページ)
• 弊社日本経済分析第37 号(2 月22 日付)の分析からは、「円安によって貿易赤字が拡大する可能性が高い」ことが予期されていたが、2 月の通関統計は季調済で過去最大の貿易赤字(1 兆866 億円)を記録した。貿易赤字拡大の背後では、(1)交易条件の悪化、(2)輸出数量の低迷、(3)輸入数量の増加基調が続いている。
• より深刻な問題は、依然小幅ではあるが、日本の貿易収支が数量ベースでも既に赤字に転じており、赤字幅がジワジワと拡大していることである。数量ベースの赤字が構造的に定着すれば、円安は貿易赤字額を拡大させる。円安で交易条件は悪化するからだ。
• 前回景気回復期において貿易黒字額がピークを記録をした2007 年7-9 月期から直近2013 年1-2 月までの貿易収支(季調済、年率換算)の変化を振り返ると、輸出金額の大幅縮小と輸入金額の小幅増加によって収支が大きく悪化したことが確認される。
• このうち、輸出金額の大幅縮小には、数量要因と価格要因が概ね同程度に寄与し、空洞化進展の影響が大きいことが示唆される。他方、輸入金額の小幅増加は価格上昇による部分が主体であるが、輸出数量減少にもかかわらず、輸入数量はほぼ横這いであり、輸入浸透率の趨勢的な上昇が観察される。
• 年央にかけては輸出数量が循環的にある程度伸びる可能性があり、貿易収支はごく一時的に改善するものと見込まれる。しかし、数量ベースでの貿易赤字が定着しつつある状況下、貿易収支の趨勢的な悪化傾向が反転する可能性は低い。
1. 2013 年2 月の貿易収支 (2-3ページ)
2月の通関統計は季調済ベースで過去最大の貿易赤字を記録した。すなわち、貿易赤字額は1 兆866 億円となり前月の7,373 億円から大幅に拡大、2012 年9 月の9,838 億円を上回って過去最大となった(図表 1)。グローバル生産循環は回復局面の半ばにあり、輸出数量の循環的な回復が見込まれていたが、弱い状態が続いている。より深刻な問題は、小幅ではあるが、日本の貿易収支が数量ベースでも既に赤字に転じており、赤字幅がジワジワと拡大していることである(図表 2)。数量ベースの赤字が構造的に定着すれば、円安は貿易赤字額を拡大させる。円安で交易条件は悪化するからだ。
弊社日本経済分析第37 号(2 月22 日付)の分析からは、「円安によって貿易赤字が拡大する可能性が高い」ことが予期されていた。円安発生から2 ヵ月経ったデータをみる限り、円安は実際に貿易収支を悪化させたと判断される。具体的には、2 月の輸出金額は季調済前月比で+1.3%増加した一方、輸入額は同+6.8%と、輸出を上回って拡大した(図表 3、4)。輸入については、価格、数量ともに2 月に増加に転じている。
貿易赤字拡大の背後では、(1)外貨建て比率の高い輸入価格の上昇ペース(2 月: 前月比+2.7%)が輸出価格のそれ(同+1.9%)を上回っており、交易条件が悪化している(図表 5)ほか、(2) グローバル生産の循環的回復と円安による競争力の改善があるにもかかわらず、輸出数量の回復がみられない。すなわち、輸出数量指数(弊社による季調値)は前月比− 0.6%と1 月の− 0.2%に続いて減少となった(図表 3)。さらに、(3)輸入数量は高齢化・空洞化などを背景に増加トレンドを続けており、2 月は同+4.0%と大幅なプラスとなった(図表4)。
ちなみに、輸出数量の内訳をみると、化学製品、一般機械、科学光学機器のリバウンドを背景に米国向けの輸出が回復した一方で、中国、EU、その他アジア向けの輸出数量は引き続き弱含んでいる(図表 6、7)。一方、輸入数量の内訳をみると、足元2 月では、鉱物性燃料、食料品、化学製品などの増加が目立った(図表 8)。
(中略)
3. 先行き見通し (7ページ)
以上を踏まえると、過去5 年半に亘る貿易収支悪化要因のうち、円安による改善が見込めるのは輸出価格の上昇に限られると示唆されよう。産業空洞化は、新興市場経済を最終消費地とするビジネス・チャンスを求めている(内外成長率格差に起因する)部分が大きいとみられるが、サプライ・チェーン構造の変化を伴いつつ不可逆的な動きとなっており、そのトレンドが反転する可能性は低い。
一方、輸入数量は高齢化・空洞化等を背景に今後も緩やかな増加トレンドを辿るだろう。また、輸入金額増加の主因であった輸入価格の上昇は円安によってさらに加速することになる。外貨建て比率の高い輸入価格の上昇ペースは、輸出価格の上昇ペースを上回るのが自然であり、交易条件の改善は望めない。高齢化・空洞化によって数量ベースの貿易収支は既に赤字に転落しているが(図表 17)、数量ベースでみた構造的貿易赤字が定着すれば、円安の下でも貿易収支は悪化を続けるだろう。
1-3 月期の円安によって利益増の恩恵を得た輸出企業が、4-6 月期〜7-9 月期にかけて、外貨建て値下げや販売促進を打ち出し、輸出数量がある程度伸び始める可能性はある。米国製造業ISM などが好調さを維持していることからみても、3 月以降は循環的な輸出数量の回復が始まる余地がある。このため、年央にかけて、更なる円安化や国際商品市場の高騰などが生じなければ、交易条件が一定の下、貿易収支は一時的に赤字幅を縮めると見込まれる(図表 18)。しかし、秋以降の貿易収支は、輸入数量の増加トレンドと交易条件の悪化トレンドの影響を受けて再び悪化し、2013 年の貿易赤字(通関ベース)は10.4 兆円(GDP 比率−2.1%)と2012 年の6.9 兆円赤字(同−1.4%)から大幅に拡大するものと予想される。
4. 経常収支への示唆 (8ページ)
以上のように、円安によって貿易収支は悪化する可能性が高い。経常収支が悪化を免れるには、円安によって対外資産からの利子・配当受取である所得収支黒字の円建て額がどれほど増加するか、が鍵となっている。しかし、1 月の国際収支統計では、季節調整済みの所得収支黒字は前月比−0.2%とむしろ減少していた(図表 19)。所得収支黒字の増加が限定的であれば、円安によって経常収支も悪化する。実際、通関統計の貿易収支実績を基に計算した場合、2 月の経常収支(季調済)は114 億円程度の赤字と、統計開始以来2 度目の季調済赤字となる見通しである。
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日本経済分析 第37号 クレディ・スイス証券 2013年2月22日
円安で貿易赤字は拡大へ
https://plus.credit-suisse.com/researchplus/ravDocView?docid=EkCCzQ
(概略) (1ページ)
• 円安は交易条件を悪化させる可能性が高い。輸出品よりも輸入品の外貨建て比率が高いことなどから、輸入価格の方が輸出価格よりも名目為替レートに対する反応が大きいためである。このため、円安の貿易収支への影響については、最終的には、輸出数量がどれだけ刺激されるか、に依存する。
• 直感的には、円安は価格競争力の向上を経由して輸出数量を持ち上げるように思える。しかし、実質実効為替レートと輸出数量の関係をより詳しくみると、両者の関係は“飽和点を持つ非線形的なもの”である可能性が高いことがわかる。すなわち、円安(実質実効円安)による輸出数量の押し上げ効果は、円安の進展とともに逓減するものとみられる。
• 見逃してはならない事実は、2009〜2012年の名目円高局面では、輸出価格の下落により、実質実効為替レートはさほど上昇しなかった(2005〜06年と同水準に止まった)という点である。このため、足元の急激な円安を反映した実質実効為替レート水準は、既に、「円安の輸出数量押し上げ効果が明確に逓減し始める閾値」の近傍にまで低下してしまっている。このことは、円安によって見込まれる輸出数量押し上げ効果がかなり限定的なものになる可能性が高いことを強く示唆している。
• このように、足元の円安の輸出数量押し上げ効果は限定的なものになると考えられるが、このことは、円安が鉱工業生産や労働時間・雇用水準に与える効果も小さい可能性が高いことを意味する。円安が経済活動水準の上昇を経由してインフレ的な圧力をもたらすシナリオは描きにくい。
• 輸出数量の反応が限定的なものになるという経済構造を前提に、円安ショックが名目貿易収支に与えるインパクトをシミュレートすると、2013年1-3月期におけるドル円相場の10円上昇(83円→93円)は、2013年度の名目貿易収支(名目GDP)を約−1.31兆円(GDP比−0.27pp)悪化させる、と計算された。
(以下は4ページ目)
したがって、ここでも円安が一定以上に進むと輸出刺激効果が逓減してくると同時に、一定以上の実質円高となっても、その輸出阻害には下限がある可能性が示唆される。
(3) 日本製品の必需性と飽和
このように、実質為替と輸出数量との関係にはある程度の下限と上限があると示唆されるが、その背後にあるメカニズムは、製品差別化による日本製品の必需性と飽和であろう。例えば、日本製品が既に高いシェアを占めているある種の光学機器、電子部品やハイテク素材などについて、世界GDP などの最終需要要因を一定として、単にドル建て価格が値下がりしただけで、その製品に対する需要が劇的に増えることは考え難い。すなわち、そもそも平均的な日本製品がある程度差別化1されていることを考えれば、その需要量と為替の関係には飽和点があり、ある一定以上に円安となっても海外からの需要がさほど増加しないということが考えられる。同様に、円高が一定以上に進んでも、最終製品の製造過程で技術的に差別化された日本の中間製品がどうしても必要であれば、短期的には、その輸出数量が劇的に減ることはないであろう。もちろん、全ての貿易財がこのように差別化に成功しているわけではなく、実質実効為替(つまり、外貨建て売値)に依存して製品シェアが大きく変動する財も少なくないだろう2。しかし、マクロの輸出量を見た場合には、円高と円安の両端において、上述のような必需性と飽和の傾向がある程度見て取れる。
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