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■PDCA名目に激増した会議と朝礼に、社員は疲労困憊
業績が悪化すると会議が増えるのは普遍の現象である。業務運営の引き締めや管理の徹底を意図して増えるのだが、その根底は、不安心理が群れたがるという習性を呼び起こしているのだ。だが会議の増加は、いつしか会議を目的として会議を中心に仕事が廻るという倒錯した現象を定着させてしまう。ある中堅人材紹介会社がそうだった。
(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)
■事業部、部、課ごとにも会議
2年連続で経常赤字を計上したこの会社では、その次年度4月の経営会議で、各部門に「会議体系を構築せよ」という方針が打ち出された。経営の要諦はPDCAのサイクルを廻すことで、そのためには会議の体系化が最適の手段である。会議の体系化とは、PDCAを年次、半期、四半期、月次、週次で廻す仕組みである。それが、方針の説明だった。
そして方針が出された1週間後に、事業部、部、課ごとに年次、半期、四半期、月次、週次ごとの開催日時、さらに朝礼の開催日時を付けて年間スケジュール表を作成し、社長室に提出した。その翌週から実行に移されたのだった。
どの会議でも、前日までに各部署の責任者が業務項目ごとの目標と実績の差異分析、新たな施策をフォーマットに記入して、業務管理担当者に送信する。会議の場では各責任者が記入した内容を報告し、目標未達成の場合は「申し訳ございません」と謝罪することがならわしになっていた。
ひと通り報告が終わると、会議を統括する上席者が重点テーマに関する意見を集め、責任者たちに指示を出し、各人は次回会議までの目標と施策を発表する。この間、およそ2時間。これだけなら平均的な時間だが、元幹部社員は弊害を指摘した。
「フォーマット作成に1時間近くかかるため、会議が増えたことで、本来の業務に支障が出てしまった。営業に出かける時間がどんどん削られていったのです」
この状況に拍車をかけたのが「マネジメントデー」と呼ぶ毎月第一営業日だった。
毎月第一営業日は「開店休業」に
この日は、全社が部単位で午前9時から11時に全体会議で前月の振り返りを行い、部長が各課に検討事項を指示し、各課は終日を討議に費やして、午後5時から開かれる全体会議で当月の施策を発表する。昼食をのぞいて外出は禁じられ、取引先からの急な呼び出しが発生した場合には、役員の承認が義務づけられた。
こうして毎月第一営業日は事実上の休業状態になったが、それを認識する社員は少数派だった。会議ラッシュが組織全体を麻痺させ、社長から新入社員までの大半が、本末転倒の状況に鈍感になってしまったのだ。
■ 会議へのこだわりは、さらに続く。
各事業部と各部で、会長と社長が出席する会議の前日には必ず「会長対策会議」「社長対策会議」が開かれ、突っ込まれそうな事項は何か、どんな角度から突っ込んできそうか、それに対してどう答えるのかが入念に話し合われた。会長や社長の指示を業務に反映させることよりも、会議を無事に乗り切ることが優先されたのだった。
群れたがる心理は朝礼にも現われた。
この会社では毎週月曜日、午前8時から事業部マネージャー朝礼、9時から全社朝礼、10時から事業部全体朝礼、11時から部朝礼というように、マネージャー職以上は4回、一般社員は3回の朝礼に出席を義務づけられた。
■ 実働時間が大きく減少で士気下がる
この日に朝礼が終わるのは、おおむね11時30分。社員が席に戻り、メールの処理などをすませると昼食の時間になっていた。ある中堅社員は笑い飛ばす。
「朝礼疲れで午後からは仕事に身が入らなかった。私は営業職だったので、すぐに外出して映画を見たり、パチンコで過ごしたりしていました。月曜日の午後はオフタイムと割り切って、目標達成そっちのけで遊んでいた人が結構いました」。
朝礼の呪縛は月曜日だけではなかった。火曜日以降は、各部で午前9時の朝礼で課ごとに当日の予定と目標を発表し、午後5時には夕礼が開かれ、やはり課ごとに1日の振り返りと翌日の予定を発表した。それにしても、なぜ会議を重ねに重ねた上で、こんなにも集わせるのだろうか。
その趣旨はPDCAをデイリーで高速回転させることだったが、「朝礼と夕礼と会議の合間を縫って仕事をせざるをえなかった」(元幹部社員)という倒錯した現象を常態化させたのだ。
実労時間が削減され、無用な疲労を招くうちに、社員の士気は目に見えて落ちていった。もはやPDCAで業績を回復させるどころではない。業績は3期連続赤字という危険水域に近づいていった。この会社では、PDCAが“疲労増殖のツール”として機能したのである。
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