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2013/4/25 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
日銀以外に国債の買い手がいなくなったら国と国民生活はどうなるか
いったい、どうなってしまうのか。金融機関が、保有していた「国債」をどんどん売り始めている。
「長めの国債はすべて売った」――。横浜銀行の寺沢辰麿頭取(66)が、横浜で開いたアナリスト説明会で発した一言が、衝撃を走らせている。残存期間5年以上の国債はすべて売却したと明かしたのだ。
ただでさえ「国債市場」は乱高下を繰り返し、国債の「暴落」が懸念され始めている。日本で一番大きい地銀の横浜銀行が、すべて売り払った、と明かしたのだから金融関係者が驚くのも当たり前だ。
「国債」から距離を置き始めているのは、銀行だけじゃない。日本最大の機関投資家である生命保険会社も、今後「国債」を買うつもりはないらしい。生保協会の松尾憲治会長(明治安田生命社長)は、「国債を買うというスタンスは取りにくい。外国債券の買い増しが選択肢となる」と会見でハッキリ明言している。
企業年金も「国債」への投資を見直しはじめた。JPモルガンが128の年金基金を調査したら、外国債券の比率を0・7ポイント増やすという回答だった。
「投資先を国債から外国債へ変えるのは、国債では逆ザヤになってしまうからです。銀行の調達金利は1%程度なのに現在、国債の利回りは0・6%前後。米国債は1・7%前後あります」(東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏)
日銀が大量に国債を買っているために金利が下がり、金融機関は手を出さなくなっている。
◆日銀は国債を買い続けるドロ沼に
銀行や生保が「国債」離れを強めているのは、逆ザヤだけが理由じゃない。とてもじゃないが、リスクが高すぎて持っていられないのだ。
日銀の黒田総裁(68)が、「市場に流すカネの量を2年間で2倍にする」と次元の違う金融緩和を決定した4月4日以降、国債市場は“異変”をきたしている。
「売り」と「買い」が激しく交錯。国債の先物市場では、値幅制限を超えて価格が乱高下したため、1週間に5回も売買停止の「サーキットブレーカー」が発動される異常事態になっている。
なにしろ、日銀は毎月7兆円分、国が発行する国債の7割を購入すると宣言しているのだから、市場メカニズムが働くはずがない。池の中にクジラがいるようなものだ。さすがに、ここ数日は「国債市場」も落ち着きはじめているが、いつまた、乱高下するか分からない。これでは安心して国債を買えるはずがない。このままでは国債の“買い手”は日銀だけになりかねない。
「逆ザヤなのはもちろん、市場は国債を保有するリスクに敏感になっています。凄まじい“売り圧力”がある。ちょっと油断すると暴落する恐れがある。日銀は国債価格の暴落=金利上昇を恐れて、さらに買いつづけざるを得なくなるのではないか。ドロ沼にはまる危険があります」(斎藤満氏=前出)
日銀の黒田総裁は「次元を超えた金融緩和だ」と、国債をバンバン買うと胸を張っていたが、とんでもない事態になり始めているのだ。
◆国債暴落で金融危機が始まる
このまま日銀以外に「国債」の買い手がいなくなったら、この国はどうなるのか。いくら紙幣を刷っている日銀でも、いつまでも国債を買いつづけるわけにはいかない。いずれ国債が暴落するのは間違いない。
それでなくても日本は、GDPの2倍を超す財政赤字を抱え、毎年、予算の半分を国債で賄っている状態である。いつ国債が暴落してもおかしくない、と以前から指摘されてきた。
もし、日銀だけが国債を買うような異常事態になったら、市場から「日銀による財政ファイナンスだ」と判断されるのは確実。国債の格付けを下げられ、あっという間に国債は暴落し、金利は急上昇、ハイパーインフレを引き起こすことになるだろう。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。
「国債暴落によってダメージを受けるのは、国債を500兆円以上も保有している金融機関です。相当な不良債権を抱えることになる。日本は再び金融危機が勃発し、大不況に陥ってしまうでしょう。この20年、バブル崩壊で傷ついた金融機関は、儲けは少ないが安全確実な国債を運用することで収益を上げてきた。結果的に国債価格も安定し、政府も赤字国債を発行して予算を組むことができた。ある意味、日本はうまくいっていたのです。なのに、日銀の黒田総裁が“異次元の金融緩和”などとムチャクチャなことをやり始めたために、何もかもブチ壊されてしまった状態です」
国債が暴落し、金利が急騰したら、日本は予算も組めなくなってしまう。
◆再び日本は失われた20年に突入する
そもそも、市場をカネでジャブジャブにさえすれば景気は良くなる、というリフレ派の発想が間違っている。どんなに異次元の金融緩和で市場に資金を流しても、絶対に景気は良くならない。“資産バブル”を招くだけだ。
「たしかに株や不動産は値上がりしているようですが、肝心なことは、アベノミクスによって実体経済が上向くのかどうかということです。庶民の給料が増えるのかどうか。そのためには、企業が設備投資したくなるような成長戦略を官民挙げて考えるしかない。なのに、知恵のない安倍政権は、カネさえ流せばいいと思っている。すでに民間企業は270兆円もの内部留保をため込んでいる。カネはあるのです。このままでは、有り余ったカネが株や不動産に流れ込み、資産バブルを引き起こす。しかも、実体経済を伴っていないから、いずれ崩壊するのは確実です。日本はまた失われた20年が始まってしまいますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
20年前、バブル経済が崩壊した後、会社が次々に倒産し、多くのサラリーマンがリストラに苦しみ、自殺者も続出した。
アベノミクスの生みの親である浜田宏一エール大名誉教授は、つい最近「どれだけ所得や消費を喚起するのか分からない。これほど大規模な実験は世界でも行われていない」などと、無責任なことを口にしたそうだ。この国と国民をモルモットにするつもりだ。
またこの国は地獄を見ることになる。
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