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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130416-00013679-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 4月16日(火)8時0分配信
しかし、一体日銀の黒田東彦総裁はどうして誤ってしまったのだろうか。
前回の記事で書いたように、4月4日に発表された黒田新日銀の大規模な金融緩和政策は、国債バブルを予定よりも早く一気に招き、金融市場を混乱に陥れることが明らかだった。
■ 混乱した国債市場は、何を物語るのか
これは、私だけの意見ではなく、市場ではコンセンサスだったようで、翌日5日に国債先物市場、金利市場は大混乱。10年物で0.3%から0.6%への乱高下がおき、国債先物価格が1円以上動くと発動するサーキットブレーキが2度も発動し、それでもさらに1円近く下がってから、一気に反転した。翌営業日、月曜日の4月8日には、今度は急騰し、1円上昇して、サーキットブレーキ。しかし、またそこから反転し、先週は下落傾向だった。
この事態に対しては、安倍政権内でも問題となり、官邸が、日銀に注視するようにと言った、というコメントも報道された。黒田総裁自身は、国債市場の混乱について、
「長期金利は新しい材料を消化しながら、いわば新しい均衡点を模索していく動きが常にある。今回の金融緩和は量的にも質的にもこれまでと相当違ったものだったこともあり、ある程度ありうる動きだと思っていた。」(日本経済新聞インタビューより)
とコメントしているが、明らかな誤りだ。
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この混乱は、長期国債の保有者の間に、不安心理が広がり、そこへヘッジファンドなどの投機筋が混乱に乗じて、乱高下で利益を上げようとして仕掛けたものだ。黒田異次元緩和をネタに、生保が動いたなどの噂が流された。
欧州国債市場までが乱高下の混乱となったのを見てもわかるように、世界的に、これを材料とした投機的動きが広がっており、推測だが、日本国債市場で仕掛けているのも、欧州国債市場での仕掛けも同じ筋、あるいは同種のトレーダーの動きではないかと思われる。
■ 中央銀行としてはあり得ない政策
黒田総裁が自画自賛した異次元の金融緩和は、いわゆる百害あって一利なしだ。なぜなら、長期国債を長期投資として安定的に保有してくれる投資家を国債市場から追い出し、短期的な乱高下で利益を狙うトレーダーを大量に呼び込んだからだ。彼らは、乱高下の下で買い、日銀が、市場を安心させようと、あわてて高値で買い入れたところで、売り飛ばす。誰もが予想した最悪のパターンに、日銀ははまっている。
そもそも、黒田バズーカ砲とも称された、異次元の量的緩和は、なぜ市場関係者の予想を超え、誰も予想できなかったかというと、間違っているからだ。中央銀行としてはあり得ない政策だからなのだ。
海外の首脳やIMFなどがポジティブなコメントをするのは、これは、外交の世界では当然で、同盟国の政策は基本的に支持するのがしつけだ。一方、海外市場関係者の多くは、賞賛のコメントが目立っているが、彼らは、投資家、言い換えれば、海外投機家サイドの意見だ。日本の安定的投資家と日銀から、海外投機家へ冨が移転するのだから、賞賛するのは当然だろう。
そして、困るのは、日本の中小の金融機関だ。前回の記事でも書いたように、彼らは集まった預金を長期国債で運用せざるを得ない。国債市場から彼らを追い出しても、何もできない。リスク資産の運用に走って、仕組み債をつかまされ、その反省が強く残っている中、何もできない。もちろん、実体経済への融資を増やす方向にシフトすれば一番いいのだが、そして、黒田氏はそれをもくろんでいるのかもしれないが、それは無理だ。融資できるようならとっくに融資している。今でもかなり無理して融資をしており、円滑化法(モラトリアム法)で無理やり貸し出しをさせられていたところが多いのだから、彼らはむしろ融資しすぎるインセンティブがあるくらいだ。
彼らも、結果的に、投資筋に振り回されて、価格の乱高下でリスクの高くなった国債というリスクの高い資産を保有せざるを得ず、あるいは混乱で投機筋にいいようにやられるか、あるいは投機家に変貌して、日銀相手にキャピタルゲインを狙う中小金融機関のヘッジファンド化が起こるか、いずれかしかない。
欧州国債危機から銀行危機においても、一部同様のことが起きたが、ああちらはある程度仕方のないことで、中央銀行が望んだことではなく、各国政府が勝手に財政出動し、各金融機関が勝手に国債バブルを作ってしまったものを、尻拭いさせられただけだから、止むを得ない。
しかし、日本は、国債市場の混乱を、金融市場の根幹の市場を、しかも、どの国よりも異常に膨らんだ危険なソブリン市場を、中央銀行自らが混乱させ、それを意図的にやっているのだ。しかも、それにより、利益を受けるのは海外投機家、損をするのが、国内の脆弱な中小金融機関。日銀がもっとも守らなくてはならないところだ。
あり得ない。
しかし、あれほど知的な黒田氏が、こんな単純なことも予想できなかったのか。信じられない。
誤りはどこから来たのか。
彼は、国債市場を為替市場と勘違いしているのではないか。為替介入と同じで、敵を打ち負かそうとしているのではないか。
■ 黒田総裁の狙いは円安?
為替市場は、敵がいることはある。イングランド銀行とソロスの対決もそうだった。しかし、国債市場には敵はいない。いや、ほとんどいなかったのに、自ら敵を呼び込み、敵を利しているのだ。国債市場では、投資家寄り沿い、利害を共有し、資産市場の緩和効果を実体経済に波及させるよう、手に手を取って進んでいくべきものだ。その一番のパートナーが銀行、預金取り扱い金融機関である。彼らをつぶしてどうするのか。
実は、為替ですら、敵と戦うことは得策ではない。投機家がなびくような流れを作らないといけないし、その流れは、米国ドルの流れに沿わないといけないのだ。
黒田氏は円安だけが狙いなのかもしれない。円安政策は、私は間違いだと思うが、円安メリットを望む立場のエコノミストであっても、国債市場を混乱させて円安にするのは、キャピタルフライトから日本売りの懸念が強まり、もっとも危険なルートであることは、誰でも知っているはずだ。
黒田氏。辞任することはないから、一刻も早く軌道修正をしてほしい。
小幡 績
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