http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/514.html
Tweet |
外国為替市場のディーラーたちは、あの時を歴史上最もクレージーな2日間として記憶に刻んでいる。
1998年10月7日と翌8日の取引開始から終了までの間に、ドルは対円で高値から安値までほぼ15%下落した。銀行やヘッジファンドが怒濤(どとう)のように円買いに殺到したからだ。この2日間のドル・円の1日当たり取引高は、ドル・ドイツマルク取引には及ばなかったが、ビッドとアスクのスプレッド、つまり買い手が支払う価格と売り手が提示する価格との差大する・・
この2日間、1円という未曽有の開きになった。これはドルの買い手が非常に少なかった証拠で、129円ビッド、130円オファードといった「大きな数字」の気配値を出したトレーダーもいた。
こうした外為市場の混乱と、その原因となった世界的な出来事の記憶は、現在の円相場の下降に伴い世界の金融システムが当時と同じように混乱するのではないかとの懸念を呼び起こす。15年前の円急騰が起きたのはアジア金融危機の最中で、3年間にわたる円下落局面に続いた動きだった。日銀による最近の金融緩和強化策から生じる結果として、円弱気筋が予想している事態に似ていなくもない。
現在と同様に、日本当局は1995年当時、円が過大評価されていると考えていた。ドルがその年の4月に1ドル=79円92銭の安値まで下落し、日本経済が阪神・淡路大震災に伴う負担にあえぐ中で、強力な輸出業界が窒息しかかっていた。
このため日銀は国債買い付けの通常の「輪番オペ」を強化する一方、日本政府はワシントン(米政府)に円安を求め、それが黙認されていた。そこで巨大な相場転換が起こった。1998年8月までにドルはほぼ2倍となり、1ドル=147円62銭を付けていた。
円安促進策は日本の輸出業者を満足させたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)もインフレ抑制要因になるとして喜んだ。しかし、それは同時に「アジアの奇跡」を破綻させた。タイ、韓国、インドネシアや、その他の「アジアのタイガー」諸国は日本の競争力が改善するにつれて圧迫された。そしてこれらアジア諸国の対外収支が悪化すると、投機家たちはこれら諸国のドルにペッグされた通貨を標的にした。それは最終的に崩壊のドミノ現象の引き金になり、世界全体を巻き込んだ。
一方、トレーダーたちが下落していく円に対して仕掛けたショート(売り)ポジションは、自らの瓦解の種をまいた。景気低迷で円金利が世界でも最も低くなると、世界の投資家はいわゆる円キャリー・トレードに積極的になった。低金利の円で安く資金を調達し、それをタイ・バーツやロシア・ルーブルなど高利回り通貨に投資したのだ。しかし危機が発生し、投資家がこうしたポジションを手仕舞うと、融資返済のため円を買い戻さなければならなくなった。
1998年10月、ウォール街の銀行がロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)を救済し、同社が世界中に持っていたリスクポジションを整理した。それを受けた「ショートカバリング(買い戻し)」に伴う相場急騰は、全てを巻き込む総崩れに発展した。
日本は今また、当時と同様の世界的な混乱の種をまいているのだろうか? 中央銀行である日銀は未曽有の量のマネーをグローバルな金融システムにばらまこうとしている。そしてトレーダーたちはその効果を予測して、円相場を昨年9月のピークから22%押し下げた。
もちろん今回は、多くのことが1998年当時と違っている。投機家たちが標的にするペッグ通貨は当時よりはるかに少ないし、新興市場諸国の中銀は、膨大な外貨準備を保有している。このため自らを防衛する十分な武器があるといえる。それでも、1990年代からの教訓は説得力があるし、今回のケースでは、開発途上国よりも欧州の先進国のほうが教訓を学ぶことが大切だ。
誰も、ユーロ圏のゾンビのような経済を、当時躍進していた東南アジアのタイガー諸国と混同することはあり得ない。しかし、欧州の債券(国債)市場では過大評価リスクが高まっており、それは1990年代の人為的に過大評価されたアジア通貨を想起させる。
キプロスの銀行システム崩壊や、失業と社会不安という二重苦がユーロ圏の金融危機を再び招来しかねないにもかかわらず、欧州の中核諸国の債券利回りは今週、最低水準に落ち込んだ。投資ファンドが比較的高利回りを求めて日本の国債から資金シフトしたためだ。誰もが日銀のマネー供給の機先を制しようとしたのだ。850億ドルというFRBの月間マネー発行量のほか、日銀は月間7兆円(約700億ドル)の国債を買い入れる計画で、それはグローバルな資産評価に深遠な影響をもたらすだろう。リスクは、こうした評価が現実離れして、15年前がそうだったように、いずれ修正せざるを得なくなることだ。
そして、中国や他の大輸出国が急落した円の競争上の脅威にどう対応するかという問題がある。アジア危機の際と同様に、「競争的切り下げ」の潜在的な悪循環がこの先、立ちはだかろうとしている。
高度に相互連関した世界経済において、日本ほどの規模の国が政策をかくも劇的にシフトしようとすれば、世界の均衡を崩す意図しない混乱は避けられない。
(参考関連記事:)
★PIMCOのグロース氏、10年物米国債「強気」に転換http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323366004578413582072439640.html?mod=WSJJP_Market_2_4_Left_LatestNews
米債券ファンド最大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の創設者で共同最高投資責任者(CIO)のビル・グロース氏は、長期米国債に対して過去数カ月は弱気を維持してきたが、足元では強気に転じている。日本銀行が大胆な金融緩和策を打ち出したことを受け、世界の投資家が方針転換に動いた新たな事例となった。
グロース氏は満期が10年以内の米国債に対して強気に転じたことを明らかにした。(以下有料)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。