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That’s up to you and me.
日銀の黒田総裁が打ち出した新しい緩和政策の本質は財政ファイナンス(Money Finance)です。それは新発の国債を日銀が直接購入することを指します。
中央銀行が国債を買うと券面が中央銀行の金庫に入庫されると引き換えに、キャッシュが市中にばら撒かれます。最終的な効果としては、輪転機を回してお札を刷るのと同じ効果が、財政ファイナンスから生じるのです。
実は今回の試みにかなり似たようなことは、昔、日本で実施済みです。どえらい効き目があることも、既にわかっています。
1929年にニューヨーク株式市場の大暴落がありました。その後、世界は未曽有の大恐慌に入ってゆくわけです。
その時、いちはやく(これはいかん)と状況の深刻さを察知し、大胆な措置を講じたのが、高橋是清です。
当時、アメリカの物価は広範に渡り下落していました。いわゆるデフレです。
日本でも生糸やお米の値段が下落しました。当時日本は「金解禁」していました。これは金本位制度を採用していたということです。
金本位制度下では、中央銀行がむやみやたらと紙幣を刷ることは、できません。あくまでも紙幣の裏付けとして、いつでも兌換できるゴールドが発券の際の根拠として中央銀行の金庫に眠っていないといけないのです。
これは手堅い金融政策なのですが、問題があります。それは他国の景気が悪いときに日本だけが保守的で慎重な金利政策にとどまっていると、日本円が強く(=円高)なりすぎてしまうという点です。
実際、当時も為替は円高に振れ、ドル建てで見た場合の日本の生糸などの輸出品目の値段はどんどん割高になってしまいました。
1931年12月に高橋是清が大蔵大臣に就任すると、是清は金本位制度から離脱します。(なお英国は1931年9月にポンドの切り下げをおこない、またアメリカは33年3月にフランクリン・D・ルーズベルトが大統領になった直後に金本位制を離脱しています)
是清はさらにわざとインフレを誘発させるようなオペレーションを実施しました。
まず財政出動のための財源を確保するため、公債を日銀に買わせました。これはこんにちの財政ファイナンスの手口と酷似しています。
日銀には債券の券面が入ります。それと引き換えに 日銀は現金を日本政府に渡します。
日本政府はそのキャッシュを担保として民間への支払いに対して小切手を切りました。 企業はその小切手を銀行に持ち込んでキャッシュに変えます。銀行はその小切手を日銀に持ち込んでキャッシュを貰うわけです。
結局、この一連の動きで何をやっているかといえば、お金が世の中を一回転しているわけです。
これは難しい表現をすれば通貨の膨張を演出していることになります。なぜなら小切手には支払いにタイムラグがあり、この少しの期間、政府は実際の予算の持ち合わせより大きな金額を世の中に投入していることになるからです。
それを説明するために通常の国債の入札のケースと対比してみましょう。
通常のやり方では政府が国債を売り、それを金融機関が落札購入します。
たしかに政府は国債を売ったお金で財政出動するための原資を得られます。
でも市中銀行の方を見ると国債買い入れの代金を払い込まないといけないので、銀行の余った資金がそこへ吸い上げられてしまうのです。すると銀行は一般の企業に貸し付けるお金が減ってしまいます。これではカネ詰まり対策にはなりません。
だから是清は、わざとまわりくどい方法で通貨の膨張を起こしておいて、最後に頃合いを見計らって日銀は購入した国債を処分したわけです。つまり時間差攻撃です。
このような一連のオペレーションの結果、円は僅か1年くらいの間に50%も下落します。
それだけ円が急落すれば、国際市場における日本の輸出品の価格競争力は息を吹き返します。
1935年の世界各国の輸出額・・・1929年、つまりニューヨーク市場の大暴落の年を100としています。
言い換えれば、日本は1935年までに大暴落の年より上の水準まで回復したということです。
上で見たようなインフレをわざと引き起こす方策をとったことが功を奏して、日本の卸売物価は1931年を大底に、反転しています。
鉱工業生産も急増しています。さらに国民所得も力強く反発していることがわかります。
当時、日本は産業構造がそれまでの軽工業から重工業へと移行する時でした。
それは粗鋼生産高を見てもわかります。
次はエネルギー消費量です。
・・・同じ時期に当時世界で圧倒的な経済力を持っていた米国における粗鋼生産やエネルギー消費量が下落していたことを考えると、このときの政策がいかに成功したかがわかると思います。
★デフレの状況を説明するために、ひとつの比喩を使います。
今、ノルマンディー上陸作戦をイメージしてください。上陸用舟艇でオマハ・ビーチに殺到し、兵隊さんが水辺の海水の中に飛び込むわけです。
でもビーチのピルボックスから機銃掃射を浴びて、水辺にはりつけにされてしまい、前に進めません。海水は飛び上がるほど冷たいし、動くにも動けないわけです。このまま体力を消耗して死んでしまうのか……つまりデフレとは、そういうことです。これがジョージ・ソロスの言うところの「緩慢な死」というやつです。
去年の11月までの日本は、そういう状況におかれていました。
ところが誰かがドイツ軍のピルボックスに上手く手榴弾を投げ込んだ……そのさく裂で、一瞬マヒして相手の機銃掃射が止みます。
その場合、やるべきこと、正しいことは一つしかありません。それは、前進することです。相手が気を取り直して態勢を立て直す前に、ピルボックスを盗ってしまわないといけないのです。
財政ファイナンスの発表というのは、今まさにピルボックスの機銃口にまんまと手榴弾が放り込まれた瞬間と同じなのです。
つまり今、前進しないと、逆にアブナイのです。
それでは具体的に何をやるか? ですが、高橋是清の当時は、重工業へのシフトが採られるべき道でした。
今は、当時の重工業に代わるような、あきらかに「この道を進め!」という産業政策は無いと思います。
それを考えるのは今の日本の実業界の仕事だし、我々一人ひとりの任務です。でも僕のドタ勘で言えば、「なんでも構わない」という気がします。
なぜなら、はじめから「これが正しい」という道など見えている筈ないわけだし、アメリカでドットコム・ブームがあったときも、どのサービスや企業が生き残るかなんて、誰にもわかりませんでした。だから片っ端から試せることは全て試したのです。
だからクールジャパンでも何でもいいんです。
若し、今回黒田総裁が打ち出した財政ファイナンスというチャンスを日本の産業界が生かせない、ないしは生かす気が無いのなら、いずれ財政ファイナンスはシャブのように常習化し、切り上げるべき時でも切り上げられなくなってしまうでしょう。
★だから今回の財政ファイナンスという禁断プレイの責任を、日銀にだけ押し付けるのは、間違っている。
そもそもアベノミクスを望んだのは国民なんだし、だからスーパー・マジョリティという世界でも希有な政治状況が日本に出現したのです。今回、大胆な政策が打ち出せたのも、それと無関係ではありません。
今、日本企業はビジネスを拡大するために積極的に投資すべきだし、新卒を積極的に採用するべきだし、円安を生かしてガンガン輸出するべきだし、中国企業に奪われたシェアの奪還を試みるべき時です。
そして、たんまり利益を出したら、法人税をドカンと国庫に納めようじゃありませんか。
兎に角、国が全うしなければいけない社会福祉や教育や防衛や、その他、もろもろの公共サービスにかかるおカネの半分程度しか税収が無いという今の状況は、異常であり、不健全であり、そして国民が「親方日の丸」に依存し過ぎ。
つまり我々は財政ファイナンスの当事者意識を持て!ということです。
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