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2013/4/8 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
日銀・黒田新総裁の「異次元緩和」にマーケットは沸いているが、その一方で否定的な見方も多い。これだけ日本株が上がっているのに、歓迎どころか、青ざめている専門家の方が多いくらいだ。
「日銀は国債購入額を単純計算で毎月7兆円強とする緩和策を打ち出しました。発行額の約7割を日銀が買うということです。こうなると、完全な官製相場で債券市場は機能しなくなります」
こう言ったのは三井住友銀行のチーフストラテジスト、宇野大介氏だ。日銀の「買い」が続けば、当面、国債は高値安定するのだろうが、こういうのを日銀による「財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)」というのである。財政規律を無視するようなやり方がいつまで続くのか。
加えて、危うい債券市場から逃げ出したマネーは株や不動産に流れ、資産バブルを膨らます。これによって安倍政権は景気回復を演出したいのだろうが、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「(株は)企業の経営実態とはかけ離れた値上がりで、バブルの兆候」(毎日新聞5日)との懸念を示した。
◆日銀のバランスシートは怪しい資産で膨らんでいく
資産バブルは、株や土地などの資産を持つ人には恩恵があるが、多くの庶民には関係ない。しかし、バブルがはじければ、その影響は資産を持たない人にも広く波及する。日本は経験上、それをよーく知っているはずなのに、黒田日銀は札を刷る輪転機の速度を倍に上げて、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J―REIT)などのリスク資産まで買い増すのだ。国債の買い入れ対象は40年ものにまで広げ、銀行券ルールも反故(ほご)に、つまり、歯止めをなくした。これじゃあ、放漫財政を宣言したようなものだ。
「黒田新総裁は『財政ファイナンスではない』と言っていましたが、問題は市場がどう見るかです。大胆な緩和策の発表と同時に、政府が財政規律について説明する必要があったと思います」(宇野大介氏=前出)
黒田は政策決定会合後の会見で「戦力の逐次投入はせず、必要な施策をすべて講じた」と得意げに語っていたが、これも危ないセリフだ。裏を返せば、もう切るカードがないということだからだ。これでデフレ脱却ができなければ、次の策はない。つまり、際限なく債券を買い続けなければならなくなる。日銀のバランスシートは怪しい資産で膨らんでいく。危なっかしいったらありゃしない。
◆黒田日銀は危険な領域に踏み込んだ
経済ジャーナリストの有森隆氏はこう言う。
「これだけの危険があるのに、政策決定会合は全会一致でした。3人の正副総裁だけでなく、6人の審議委員までもが市場の期待と政治の圧力におもねったのです。これではまるで経済戦争の大政翼賛会ですよ。日銀の首脳陣が目をつぶってリスクに飛び込もうとした時、冷静に『待った』をかけられる人がいないことが恐ろしい」
そもそも、黒田の「輪転機」政策で人々のインフレ期待が高まり、モノが売れて、デフレ脱却ができるのなら、とっくにやっていなければおかしい。それをやらなかったのはリスクと副作用が大き過ぎるからだ。
「セントラルバンクの使命は通貨の信用を守ること。ところが、日銀プロパーではない黒田総裁はアッサリ一線を越えてしまった」(日銀関係者)
この先は未知の領域で、日本はリフレ派によって、壮大な実験場にされているようなものなのだ。
◆アベノミクスの本質は「収奪政策」だ
決定会合後の会見で、黒田は「重大な副作用が直ちに表れる可能性は低い」と言った。どこかで聞いたセリフだ。福島原発事故の直後、当時の枝野官房長官も「直ちに影響はない」と繰り返していた。しかし、漏れ出た放射能はとんでもない量だった。今度の黒田日銀の量的緩和も同じである。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。
「黒田日銀は、実質的な財政ファイナンスに踏み出したとみています。毎月7兆円の国債購入は、間接的な国債の日銀引き受けです。いつ国債暴落を招いてもおかしくない。だいたい、中央銀行が株屋や不動産屋になってリスク資産をどんどん買い込むなんて、正気の沙汰ではありません。株価は永遠に上がり続けるわけではない。下落した時には、日銀の資産が劣化し、円の信用が著しく毀損して、円売りが加速する。そうなると、『悪い円安』が進み、輸入インフレが起きる。貿易赤字が拡大し経常収支の赤字も膨らんでいく。ある時点で国債暴落です。黒田日銀のバクチみたいな金融政策の行く末は空恐ろしいものがあります」
すでに円安で輸入コストは上昇し、家計の負担は増している。そこに2%の物価上昇が加わり、さらに消費増税がのしかかってくる。
「このままいけば、給料は上がらず、物価だけが上昇する『悪いデフレ脱却』に向かいます。低賃金でも生活できたのはデフレのおかげなのに、低賃金のインフレは最悪です。私は、アベノミクスとは、究極的には国民資産の収奪政策だと考えています。庶民は株が上がったといって喜んでいる場合ではありません」(小林弥六氏=前出)
◆インフレ政策は政府の究極の錬金術
経済学者の野口悠紀雄氏は近著「金融緩和で日本は破綻する」で、こんなことを書いている。
〈歴史上、財政赤字が一定の限度を超えた場合には、ほぼ例外なくインフレを引き起こしている〉
〈インフレは税と同じ経済効果を発揮する〉
〈(日銀の国債引き受けによって)政府は、税制改正なしに、そして市場の制約なしに、いくらでも財源を調達できる。国民から見れば、法律によらずに財産を没収される手段である〉
黒田日銀の金融緩和=インフレ政策は、家計から政府へ所得移転を起こす錬金術なのである。
実体経済は良くならない。成長戦略もない。だから、金融政策のイリュージョンで、国民からかすめ取ろうということだ。
だとすると、黒田と安倍がやろうとしていることは、バクチよりひどくて、収奪という犯罪ということになる。
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