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黒田日銀総裁が打ち出した強力な金融緩和策は、周辺国に押されていた日本経済を蘇らせるか
中韓経済に“黒田バズーカ”直撃! 韓国輸出に大逆風、対中投資さらに減速
http://www.zakzak.co.jp/economy/investment/news/20130408/inv1304081826005-n1.htm
2013.04.08 夕刊フジ
「日銀の『バズーカ砲』」と呼ばれた100兆円規模の巨額金融緩和策は、円安と株高を加速させ、日本経済復活を確信させる威力があった。一方、その衝撃をまともに食らう形となったのが中国や韓国だ。本来なら通貨安が他国の貿易に悪影響を及ぼすのは短期間に限定されるはずだが、中韓の通貨・経済体制はそれぞれ特殊事情を抱えているため、図らずも両国経済が窮地に陥る恐れがあるというのだ。
黒田東彦(はるひこ)総裁と岩田規久男副総裁が率いる日銀の新体制がマネタリーベース(資金供給量)を年間70兆円のペースで増やし、国債の保有額を2年間100兆円増やすなど「お金の量を2年で2倍」にする新たな量的緩和策を打ち出したのが4日。翌5日に日経平均株価は一時、1万3200円台とリーマン・ショック前の2008年8月の高値水準を取り戻し、為替も1ドル=97円台まで急速な円安が進んだ。
対照的に5日に年初来安値を更新したのが韓国総合株価指数。北朝鮮のミサイル問題と並ぶ株安要因となったのが円安とウォン高だった。
韓国市場では、すでに海外の投資家が逃げ始めている。3月の海外ファンドによる売越額は昨年5月以降最大の水準となった。米運用大手のバンガード・グループが1月以降、保有する韓国株を処分しており、他の外国人投資家も追随。地元メディアは「セル・コリア(韓国売り)」と報じた。
韓国の輸出産業も暗雲が立ちこめている。3月の米国の自動車市場で、主要メーカーが揃って新車販売を伸ばすなか、韓国の現代自動車と傘下の起亜自動車は2カ月連続で前年割れの「独り負け」を喫した。ウォン安をテコにした低価格攻勢で日本車のシェアを奪ってきた韓国車だが、昨年末には燃費性能の誇大表示が発覚、最近は年間販売台数の1・5倍に当たる規模のリコールを発表するなど大逆風だ。
造船大手の現代重工業や鉄鋼大手のポスコなども業績が悪化、特に昨年10〜12月期以降の減速が激しく、円安ウォン高によって輸出が伸び悩んでいる。
リーマン・ショック以降、急速に円高ウォン安が進み、1円=10ウォンを切っていた相場が09年には1円=16ウォンを突破した。その後も14〜15ウォン近辺のウォン安が続いていたが、昨年後半以降この流れが反転、直近では1円=11ウォン台半ばと約3割の円安ウォン高が進行。韓国主要企業の損益分岐点とされる1円=11・8ウォンを下回っている。
これまでウォン安で潤っていた韓国だが、日本の金融緩和については「円安誘導だ」と批判的だ。だが、嘉悦大の高橋洋一教授は「一国が通貨を切り下げた場合、短期的には悪影響があっても、外国も金融緩和することで世界経済全体が良くなる」として、“近隣窮乏化”との批判は当たらないとする。
ただ、韓国の場合、日本に対抗するウォン安政策には重大なリスクがあるという。高橋氏は「ウォンは国際通貨でないので投資家にはリスク資産とみなされており、ウォン安が急速に進むと、さらなる資金流出がありえる」と語る。韓国にとっては、1997年の通貨危機でIMF(国際通貨基金)に乗り込まれた悪夢が蘇る。
「これまでの円高ウォン安も、少しのウォン安と激しい円高の組み合わせだったが、円高が修正されると韓国の国内産業は厳しくなる。半年から1年後には輸出数量の減少という結果が出てくるのではないか」(高橋氏)
日銀の金融緩和を受けた円安は、中国にも少なからぬ影響を与えそうだ。
たとえば建設機械の分野で日本は中国と激しい競争をしているが、「円安が進めば日本メーカーに値下げ余地が出て、中国メーカーとの価格競争力が出る」(証券会社アナリスト)。
対中投資についても、今年1〜2月の日本からの直接投資実行額は前年同期比6・7%減となっているが、「90円を超す円安が定着すれば、企業は工場を中国から日本に戻したり、新工場を国内に建設する」(同)とされ、中国離れが一段と鮮明になりそうだ。
さらに、中国経済の根幹をも揺さぶる可能性がある。人民元は完全な固定相場制ではないが、政府や中央銀行が介入して一定の変動幅の範囲内に収める管理フロート制を導入している。
前出の高橋氏はこう指摘する。
「日本はインフレ目標達成のための金融緩和による円安だが、中国が為替を動かそうとすると、直接の為替介入になるので目立ってしまい、国際社会から変動相場制への圧力が高まる。しかし、政権中枢には輸出産業に権益を持つ人が多いので容易に移行はできず、苦しい立場に追い込まれることもありうる」
日本の金融政策がまともになるだけで、隣国との関係にこれだけ変化が生じるのだ。
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