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[東京 5日 ロイター] リフレ派に懐疑的な一橋大学の斉藤誠教授は5日、ロイターのインタビューに応じ、日本のデフレは国際競争力の低下に起因するものであり、金融政策だけで克服するのは難しいとの見方を示した。
日銀が新たに打ち出した巨額の国債買い入れによる量的緩和は長期金利の反転急上昇を招きかねず、「正気の沙汰と思えない」と指摘。出口戦略が見えないとして、批判的な立場を示した。
<財政の実情とかけ離れた低金利は維持不能>
斉藤教授はデフレの原因を「資源価格の上昇と国際競争力の低下による海外への所得流出にある」とし、「金融政策で克服するのは難しい」と説明。「家電業界などは採算割れの水準にあり多少、為替が円安に振れても国内設備投資を増やさない」として、金融政策で国内の総需要を刺激し、物価を引き上げるリフレ派のシナリオは望み薄との見方を示した。
黒田新体制の日銀が国債の買い入れ対象を40年債にまで広げたことで、「民間金融機関は日銀が常に低金利(債券価格は上昇)で買い入れてくれるとの安心感から国債を買い続ける。5年、10年、20年と超長期の金利まで徐々にゼロにつぶれていくだろう」と指摘する一方、「巨額の財政赤字を抱える日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)からかい離した低金利は持続不可」と警告。その上で「何かのきっかけで反転上昇せざるを得ない」と語った。
<欧米より半周遅れの金融緩和>
仮に反転上昇した場合は、日銀のバランスシートがき損するリスクがあると懸念。「金融機関は、ゼロ金利が理由で付利稼ぎのため当座預金に預けていた資金を取り崩し、現在90兆円程度の紙幣(銀行券)のうちタンスや金庫に眠っている40兆円程度も銀行に持ち込まれ、日銀が回収することになる」とみる。当座預金残高を維持するため付利を引き上げるなど日銀の資金調達コストも上昇し「日銀の資産がき損。国庫納付金がマイナスになり結果的に国民負担が発生する」と述べた。
また、「議事録(議事要旨)が公表されるまでわからないが、日銀が昨日の決定会合で出口戦略まで詰めたのか気になる」とも発言。「米連邦準備理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)も金融緩和は半分出口モードで、日銀は半周遅れだ。日銀の緩和によるFRBやECBは金利の急激な上昇を伴わずに出口に向かえるが、日銀が出口を目指すときには金利が相当高くなっているリスクがある」と懸念を示した。その上で「欧米より遅れて中国を植民地化したため、植民地主義のすべてのつけを払わされたような歴史と重なるものがある」と語った。
斉藤教授は、浜田宏一米イエール大教授などリフレ派の学者から「『急病患者に対して副作用を恐れて見放すのか』と叱責される」という。しかし、「1997─2002年の金融危機と異なり現在の日本はそもそも劇薬が必要なほどの危機にない」との立場。現在の物価下落も緩やかに安定しているとみている。「日本の生産年齢人口1人当たりの労働生産性は他の先進国よりも高い伸びを示している」と、白川方明・前日銀総裁の発言を引用し、「すでに非常に豊かな国になってしまった日本は、それに見合った競争力が必要」と説明した。
このところの円安・株高は、金融緩和期待も要因としつつ、「欧州危機の深刻化や米財政問題が一服し米経済が好転の兆しをみせた影響が大きい」と語った。「すべてを(金融)政策の効果とみると、円高が進んだ場合さらに金融緩和を必要との議論になりかねず心配」と述べた。
(ロイターニュース 竹本能文;編集 久保信博)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93404P20130405?sp=true
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