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2013/4/3 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
すでに外国人は売り越しに転じている東証株式相場の真相
新年度になった途端、株式市場が変調をきたしている。きのう(2日)、一昨日と2日つづけて下落してしまった。
4月1日の日経平均株価は、262円も急落。東証1部全体の95%を超える1630銘柄が値下がりした。2日も131円下落し、1万2003円で取引を終えている。1日に発表された「日銀短観」の結果が悪かったことに、市場が失望した形だ。
いま、株式市場はどうなっているのか。大手メディアは「アベノミクス」をはやしたて、「乗り遅れるな」と個人投資家が次々に参入しているが、よくよく冷静になると、平均株価はこの1カ月間、400円しか上がっていない。乱高下しているだけで、騒ぐほどは上昇していないのだ。外国人投資家も19週ぶりに「売り越し」に転じている。
もう、株高は上限なのか。安倍バブルは終わりなのか。経済ジャーナリストの有森隆氏はこう言う。
「外国人投資家は、1万3000円前後を天井と見ているようです。これまで市場は、安倍首相が次々に繰り出す“次元の違う政策”に反応して株を買ってきた。しかし、日銀総裁が決まったことで材料は出尽くしたと外国人投資家は見ています」
株式アナリストの黒岩泰氏はこう言う。
「1日、2日の下落は、日経平均よりもTOPIXの方が大きかった。機関投資家が売ったのでしょう。アベノミクス相場をつくってきた外国人投資家は、この3カ月間で十分に株を仕込んでいるから、これ以上、買う必要はない。この先は、利益を確定するために少しずつ売ってくるはずです」
昨秋以降、どんな銘柄でも上がったが、新年度に入って相場の空気は変わった。明らかにヤバイ様相を呈し始めている。
◆アベノミクスは効果のない偽薬だ
そもそも、これまで株価が上昇してきたことが異常だった。
朝日新聞まで「止まらぬ安倍相場」などと無批判にアベノミクスを持ち上げているが、安倍政権は、具体的な景気対策は何も打っていない。実体もないのにアベノミクスへの“期待”だけで株価が上がっている。病院でプラシーボ(偽薬)を処方された患者が、治るはずもないのに治った気になっているようなものだ。
「日銀短観」を見ても、実体経済はまったく良くなっていない。大企業・製造業の「業況判断指数」は、マイナス8と依然マイナス圏のまま。
2013年度の「設備投資計画」も、前年度比マイナス2%と過去3年の平均を下回っている。スーパーの売り上げも12カ月連続マイナスである。
足元の景気も、先の見通しも悪いのに、株価が上がるほうがおかしい。
「本来、株価は経済状況を映す鏡のはずです。景気が良くなるから株価が上がる。なのに、アベノミクスは株価を上げることで、景気が良くなったような空気をつくろうとしている。しかし、トリックはいつまでもつづかない。安倍政権は、株価が高く、景気回復への期待が大きい間に、大急ぎで“実体経済”に火を付ける政策を打つべきです。なのに、肝心の成長戦略は6月以降に出す予定だから話にならない。このままでは株価は下落してしまいます」(経済評論家・広瀬嘉夫氏)
それでなくても過去3年、世界の株式市場は毎年5月に急落している。いまごろ慌てて参入した個人投資家は大ヤケドを負う恐れがある。
ヤバイのは、たとえ実体経済が上向かなくても、安倍首相は「金融緩和」だけで株価を上げようとしていることだ。日銀の輪転機をフル回転させ、市場に紙幣をバラまくことで、少なくとも7月の参院選までは株高を維持するつもりだ。
「リフレ派」の黒田東彦日銀総裁も、カネをジャブジャブにすると宣言している。市場に資金を流すだけでなく、日銀みずから株を購入する予定だ。
しかし、人為的に株価をつり上げても、実態が伴わなければ、いずれ株高バブルは破裂する。この先、平均株価を1万3000円、1万4000円、1万5000円と上げれば上げるほど、バブルが破裂した時、日本経済は大打撃を受けることになる。このままでは参院選が終わった途端、日本経済は破滅に向かいかねない。
「心配なのは、日銀のリフレ政策に期待して、株だけでなく不動産まで値上がりしていることです。ゴルフ会員権までコースによっては2倍にハネ上がっている。バブルが発生しているのは明らかです。参院選の勝利を最優先している安倍首相は『あとは野となれ、山となれ』という気持ちなのでしょうが、いまバブルが破裂したら日本経済は耐えられない。ただでさえ、デフレ不況が15年間もつづいて体力が弱り、巨額な財政赤字を抱えているのに、ひとたまりもありませんよ」(広瀬嘉夫氏=前出)
外国人投資家が“売り越し”に転じ始めているだけに、安倍バブルは、いつ崩壊してもおかしくないのだ。
◆節度を失った世界の中央銀行
15年間もデフレ不況がつづいた後、突然、バブルが発生するなんて、もはや日本経済も終わりが近づいているのではないか。没落する時は、得てして、そういうものだ。
これは日本に限らず、先進国に共通する現象だが、世界の資本主義は、すっかり変質してしまっている。
「中央銀行は、本来、最後の“貸し手”が役割のはずです。ところが、リーマン・ショック後は、自ら有価証券を購入する“買い手”になっている。プレーヤーになってしまっている。節度を失ってしまった。資本主義の堕落は明らかです。とくに日銀は、国債、社債、REIT(不動産投信)、株式……と、あらゆるモノを買って市場を支えようとしている。日銀は大量に保有した株や国債を、どうやって処理するつもりなのか。いずれ、どこかで売らなければならないが、大量に保有する日銀が売ろうとしたら、暴落するのは目に見えています」(民間シンクタンク研究員)
リーマン・ショック後、アメリカも、欧州も、日本も、財政出動を重ね、どこも巨額の財政赤字にあえいでいる。アメリカは、財政再建の方法をめぐって、富裕層に課税すべきかどうか、民主党と共和党が激しい対立をつづけている。世界の資本主義が曲がり角に立たされているのは間違いない。安倍バブルも、資本主義が変質し始めたタイミングで起きている。
バブルに浮かれていたら、日本国民はとんでもない事態に直面することになるだろう。
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