02. 2013年4月03日 01:34:04
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【第2回】 2013年4月3日 途方もない目標を実現させる世界でたった1つの方法 ジョン・ウッド氏が語る「教育」のインパクト マイクロソフトでマーケティング・ディレクターを務めていたとき、たまたま訪れたネパールの奥地で「本のない図書館」に出くわして衝撃を受け、教育資源が不足している途上国の子どもたちに教育機会を届ける決意をしたジョン・ウッド氏。この春、自身2冊目となる著書『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』を上梓したウッド氏が、4月17日に再来日を果たす。それに先立ち、「教育」にかける想いを語ってくれた。 ジョン・ウッド(John Wood) ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長。クリントン・グローバル・イニシアチブのアドバイザリー・ボードメンバー。 コロラド大学で経営管理学修士、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院で経営管理学修士を取得。1999年にマイクロソフトのマーケティング部門の重役の座を捨て、ルーム・トゥ・リードを設立。アジアとアフリカの10カ国で780万人以上の子どもに教育と読み書き能力という生涯の贈り物を届けている。最新刊『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』には、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”が描かれている。
《ルーム・トゥ・リードの実績》(2013年3月現在) 学校建設 1500校以上 図書館・図書室開設1万5000カ所以上 現地語出版 874タイトル 女子教育支援 2万人以上 Photo: Sergio Villareal 貧しすぎて教育を受けられないが、 教育を受けなければ貧しいまま 夜が明ける30分前、インドシナ半島を流れるメコン川沿いの狭い岸を、ひとりの少女が走っていた。穏やかな水面をのぞき込み、目にもとまらぬ速さで片腕を水に入れたかと思うと、銀色の魚を1匹つかみとり、白いひもで腰に結びつけた袋に押し込む。11歳の少女インカムは夢中で漁を続け、20分間で家族5人分の朝食を捕まえた。「これでお母さんにほめてもらえる」。 インカムの家族は毎朝5時に起き、かまどに小枝をくべて米を炊く。兄は薄い毛布をたたむ。家にはベッドが1台しかなく、家族5人はここでくっついて眠る。そうすれば寒い夜をかろうじてしのげるからだ。 インカムは川をあとにして、大またで家をめざす。早く帰れば、朝食の前に宿題ができる。もっと早く帰れば、学校の小さな図書館から借りてきた大切な本を読めるかもしれない――インカムの瞳はきらきらと輝いている。 ラオスと聞いて、インカムのような喜びと希望を連想する人は多くないだろう。内陸国のラオスは、世界でもとりわけ貧しい地域のなかにさらに埋もれ、国際社会からずっと孤立してきた。貴重な外貨を稼ぐ天然資源はほとんどなく、観光業も、タイの海岸やカンボジアの寺院、ベトナムの麺など、近隣諸国の魅力にかなわない。 それだけではない。ラオスは、1960〜70年代に隣国を戦場としたベトナム戦争の打撃にいまも苦しんでいる。アメリカ軍は、ラオス領内を移動するベトナム軍の補給路となったホーチミン・ルートを断つため連日にわたってラオスに爆弾を投下し、いまもその国土にはたくさんの不発弾が埋まっている。 ラオスの国の運命は、そのままインカムの運命になってもおかしくなかった。しかしありがたいことに、僕たちは運命を覆う暗闇を払いのけることもできる時代に生きている。悪い結果を黙って見つめているのではなく、運命という言葉の意味を自分で変えられるのだ。 金持ちをさらに金持ちにする仕事から 途上国の子どもたちに教育機会を届ける仕事へ インカムはいま、僕たちルーム・トゥ・リードが支援する学校で学んでいる。そんなインカムを見守りながら、彼女のおばが感慨深げにつぶやいた言葉が印象的だ。「私たち一族の中で、この子が初めて、学校を卒業できるかもしれないんですね」。 ラオスの女の子 インカム(動画再生時間:3:32)
2013年3月の段階で、ルーム・トゥ・リードは1万5000カ所以上の図書室・図書館を開いたほか、女子教育支援プログラムで2万以上人の少女に奨学金などの支援を行い、地元政府の協力を得て1500校以上の校舎を建設してきた。図書館の棚を埋めるために現地語で800タイトル以上の本を出版してもいる。 ネパールから始めた僕たちの活動の輪はこの10年で大きく広がり、現在ではバングラデシュ、カンボジア、インド、ラオス、南アフリカ、スリランカ、タンザニア、ベトナム、ザンビアでも、本を届け図書館をつくっている。 僕自身の人生も、この10年で劇的に変わった。マイクロソフトで働いていたときは、会社の収益と売上げの増加と市場シェアのことばかり考えていた。どれも裕福な人をもっと裕福にするための数学だ。自分が裕福になるための数字も大切だった。今年はどのくらい昇給できそうか。ストックオプションはどのくらいもらえるか。国外の役職にとどまって、これまでどおり家賃を会社に払ってもらえるか。 でもいまは、僕にとって大切な数字はかなり違う。本に飢えている幼い子どもたちに、今年は去年より何冊多く本を届けられるか。僕たちの図書館に何人くらいの子どもが来ているか。毎月何冊の本が貸し出されているか。 この10年間で、ルーム・トゥ・リードが設立した図書館を利用した子どもの数は780万人。とても遠い道のりを、僕たちは一気に駆け抜けてきた。組織もない寄せ集めのボランティアから始まって、いまや数百万人が携わるグローバルな活動になりつつある。 こんにち、基本的な読み書きができずにいる人の数は世界全体で7億8000万人いると言われている。そのうちの3分の2は少女や成人女性だ。読み書き能力は、食糧問題や治安、人口増加の抑制、環境保護などと同じように、きわめて重要な社会問題だ。 教育は、あらゆる問題に影響を及ぼす。教育を受けた人は、より多くの金を稼いで貧困から抜け出せる可能性が高くなる。教育を受けた親は、より健康な子どもを育てる。学校を卒業した女性は地域社会で認められ、選挙の投票率も上がる。池に小さな石をひとつ投げると、さざ波が外へ外へと広がるように、次々に変化が起こるのだ。教育の問題を解決することができれば、同時に多くの問題も解決できるにちがいない。 絵空事にすぎないと思うだろうか?では、僕の父の例を挙げよう。 父が奨学金をもらえたおかげで、僕たちは中流家庭になれた 第二次世界大戦に従軍した父は、退役後に復員兵援護法の奨学金で大学に進んだ。この奨学金によって、技術者や科学者、医師、教師などホワイトカラーの専門職の世代が誕生し、大量の中流階級が創出され、やがてアメリカ経済を世界のトップに押し上げた。裏返せば、この奨学金がなかったら、僕たち家族は中流家庭になれていなかったと思う。 父は40年間、こつこつと働いた。金を稼ぎ、税金を納め、地域社会でボランティア活動をした。生涯を通じて納めた税金は、政府が父の教育に投資した金額の少なくとも100倍に相当する。 中流家庭に生まれ育っていなかったら、僕が教育というすばらしい恩恵を受けることも、マイクロソフトという企業の成長に参加することもなかっただろう。そして、僕のような世代がいなければ、アメリカの経済成長もありえなかった。初等教育しか受けられず、読み書きもできなければ、アップルやボーイング、グーグル、スターバックス、ツイッターなど世界屈指の企業を設立することはまず不可能だろうからだ。 教育の持つインパクトを自分自身が体感してきたからこそ、僕は「すべての子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標が達成できると信じ、その目標に向かって走りつづけている。 ルーム・トゥ・リードは10年をかけて、僕たちのアプローチが有効であることを10カ国で証明してきた。さらに大規模で着実な成果が早急に求められていることは言うまでもない。これからの10年でもっともっと多くの子どもに手を差しのべたい。生まれてくる場所と時代と親に恵まれなかった子どもは、教育を受けることができない――その概念を覆すことを、これからもめざしつづける。 【お知らせ】ジョン・ウッド氏 来日決定! ダイヤモンド社創立100周年記念講演会 教育と人材育成でイノベーションを起こせ!―世界基準のリーダーシップの育て方 経済全体がボーダーレス化し、めまぐるしく変化を続ける国際社会にあって、世界で活躍できる人材を育成することは、日本にとって喫緊のテーマです。そのために、これまでにないコンセプトで「教育と人材育成」の分野で大きなインパクトを生み出そうとしている人たちがいます。 ダイヤモンド社は、これからの日本を担う人材育成のために、新たな挑戦を始めたリーダーたちに注目し、教育や人材育成、リーダーシップ、組織運営といったテーマを論じる講演会「教育と人材育成でイノベーションを起こせ!―世界基準のリーダーシップの育て方」を開催いたします。 ルーム・トゥ・リードのジョン・ウッド氏の来日基調講演のほか、パネルディスカッションにはダボス会議でも活躍する注目のリーダーたち(小林りん氏、小沼大地氏、松田悠介氏、石倉洋子氏)が登壇いたします。豪華な顔ぶれが一堂に会するこの機会、ぜひお聴き逃しなく! 【開催概要】 □日時:2013年4月17日(水) 19:00〜21:00(開場18:30) □会場:モード学園コクーンホールB □住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-7-3 モード学園 【会場】(PDF:283KB) □定員:500名(一般450名/学生50名) □参加費:一般 5500円/学生 1000円 ※本講演会の利益は、登壇者が所属する4団体に全額寄付されます。 □プログラム: ●基調講演「教育で世界を変える」 ジョン・ウッド氏(ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長) ※逐次通訳 ●パネルディスカッション「教育と人材育成でわたしたちが目指すもの」 小林りん氏(公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団代表理事) 小沼大地氏(NPO法人クロスフィールズ 代表理事) 松田悠介氏(Teach For Japan創設代表者) 石倉洋子氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授) >>>講演会のお申し込みはこちらから! 【新刊のご紹介】 あのロングセラーに待望の続編が登場! ジョン・ウッド著『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』 定価:1,680円(税込) 四六判・上製・328頁ISBN:978-4-478-02289-4 ネパールの山奥、たまたま訪れた地元の小学校で“本のない図書館”に衝撃を受けたジョン・ウッドが、マイクロソフトの経営幹部職を辞して2000年に立ち上げたNPO「ルーム・トゥ・リード」。設立から10年以上が経ち、いまや数々の賞を受賞する世界的なNPOとなった。 ジョンの2 作目となる本書は、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”を伝える内容。本作の読みどころのひとつは、スターバックスの出店スピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館・図書室を設置する“超成長組織”のリーダーとしての、ジョンの苦悩と試行錯誤だ。世界的に注目される社会起業家とはいえ、ジョンもひとりの人間。信じた人物に裏切られ、思わぬハプニングに泣かされるなかで、リーダーとしての自分の至らなさにいらだつことも一度や二度ではなかった。それでも、「2015年までに子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標に向かって突き進むジョンの姿は、私たちにとってもおおいに刺激になる。 絶賛発売中!⇒[Amazon.co.jp] [紀伊國屋BookWeb] [楽天ブックス] ◆内容目次 イントロダクション 10年間で1万カ所の図書館 第1章 大胆な目標は大胆な人を引き寄せる 第2章 1キログラムの金塊 第3章 人生の宝くじ 第4章 すべてはバフンダンダから始まった 第5章 チャレンジ・グラント・モデル──自分たちで助け合う手助けをする 第6章 バルマー主義で一流のチームをつくる 第7章 ツナミから1年 第8章 レンジローバーはいらない――経費削減戦争 第9章 ネパールのドクター・スース 第10章 ベイビー・フィッシュ、学校へ行く――現地語出版プログラム 第11章 南アフリカの悪夢 第12章 教育が社会を再建する 第13章 CEOを卒業する 第14章 ゴミ箱のなかの希望 第15章 「この図書館の本を全部読みます」 第16章 小さな肩に家族の夢をのせて 第17章 ミスターX 第18章 カンボジアに向けて──リテラシー・ワン 第19章 恐怖の足音 第20章 世界最長の資金集めメーター 第21章 公約違反 第22章 ボート・トゥ・リード 第23章 「本が読めなければ、学校は拷問だ」 第24章 テクノロジーがつなぐ想い 第25章 ミスター・ポエットとミス・ライブラリー
http://diamond.jp/articles/print/33174 【第12回】 2013年4月3日 辻太一朗 [大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表] 「大学の成績」は使えない指標じゃなかった! “学生の本質”が分かる成績表を使った面接法 4月に入り、企業の採用面接が本格的に行われはじめています。 前回は、「面接で話を“盛る”学生と“突飛な質問”をする企業」についてお話しました。そして、そのような学生と企業が生まれる原因の1つとして、「日本の採用活動が面接に比重を置きすぎている」ことがあり、さらにそれを回避するためにも大学での成績を活用することが重要である、と説明しました。 一般的に文系学部では信用度があまり高くない大学の成績ですが、実は成績の構造を理解すると採用面接で活用できることが数多くあります。そこで今回は、意外と知られていないその方法をご紹介したいと思います。 大学の成績を活用すれば 「しなくてはいけないこと」への姿勢が見える そもそも現在行われている採用面接の場では、どのようなことが話の題材になっているのでしょうか? その学生が今まで頑張ったことやアルバイトでの経験、資格取得での勉強、留学経験など、その本人にしか語れないことについて聞くことが多いかもしれません。しかしそれは、学生にとっては、誰かに強制されたわけでもない「したいこと」ですよね。自分で望んで選択し、挑戦した出来事がほとんどです。 つまり、企業側が、学生の「したいこと/したかったこと」について聞いているので、自信を持って語る学生が多いかと思います。 その一方で、学生の本分である、大学での学業についてはどうでしょうか。もちろん授業に出て、ちゃんと単位を修得して初めて卒業見込みが出るわけですから、その間の学業に対する取り組みがどうだったのかは非常に重要な点です。 つまり、「したいこと」ではなく、「しなくてはいけないこと」について学生時代にどう行動していたのか。ここをしっかりと見極めていくと、その学生の普段の姿勢や行動が分かり、入社後にどのような人材になっていくかが見えてくるかもしれません。 「したいこと」には懸命に励むが、「しなくてはいけないこと」になると、急に意欲を失ってしまう。企業社会では、「しなくてはいけないこと」の方が圧倒的に多いのですから、そういった適性を面接の場で見極めないと、入社してからミスマッチが起こる可能性もないとはいえないでしょう。 つまり、「したいこと」と「しなくてはいけないこと」の両面に対する適性を、面接では見極めるべきです。 大学の授業は学生にとって「しなくてはいけないこと」です。そして、成績はその結果です。ですから繰り返しになりますが、成績を活用することによって「しなくてはいけないこと」に対する行動が見えてくるわけです。 「成績が良いから優秀」ではない! 成績表の正しい読み方 では、成績からはどのようなことが見えてくるのでしょうか?成績表には、その学生自身が入学してから今まで取得した授業の科目、単位、成績が記載されています。しかし、大学の成績はいろいろな要素が絡み合っているので、一概に「成績が良いから彼は優秀だ」と判断することはできません。 成績から想像することができるものは、次の3つです。 1つ目は、授業選択の考え方(どのような授業を選択していたか)です。言い換えれば、学生の「学ぶ」姿勢が見えてきます。 2つ目は、授業への向き合い方(授業にどのように取り組んできたのか)です。どのような場面で「学ぶ」努力をするのかということです。 3つ目は、地アタマの良さ(厳正な授業評価は?出欠確認のない授業での評価は?)です。 成績は以上の3つの要素が絡み合っているので、成績が良いからといって「地アタマ」が良いというわけではありません。 一律に多くの学生の成績を見ることができない点が、採用活動において大学の成績が活用されていない理由です。しかし、言い方を変えれば「しなくてはいけないこと」に対しての考え方、行動、能力といった多くの要素が実は成績表から見えてくるのです。 成績表から見えてくる 地アタマ力、真面目さ、要領の良さ 次に、具体的な活用例をお教えします。成績表を持参させることは、学生にとってそれほど負担感はありません。 多くの大学で、いちいち証明書を発行しなくても、学生が自分で成績表を出力できるようになっていたり、最近ではスマートフォンなどの画面上で確認できたりする場合もあります。事前に送るように手配させなくとも、面接の場に持参させることが可能なのです。 また、成績表の内容と、就職活動での志望動機などを組み合わせた面接を行うと、「したいこと」だけを聞く面接よりもはるかに、その学生の本質を捉えることができるようになります。 成績表を活用する手法としては、大きく分けて、以下の2つがあるのではないでしょうか。 ■地アタマ力、真面目さの判断に活用する 私自身が今まで多くの学生と接した中で感じたことと、人事担当の皆さんから伺ったご意見を考慮すると、例えば、A〜Dといった4段階で成績を評価している場合は以下のような傾向があると思います(あくまでも一例です。大学・学部によっても異なります)。 ・最高評価の割合が高い学生は地アタマが良い ・最低評価の少ない学生はマジメである ・最高評価と最低評価のばらつく学生は、マジメではないが要領がいい ・中間評価の多い学生は、マジメだが地アタマは良くない ・厳正な評価の授業を取得している学生は学び続ける意欲が高い ・必須科目での最高評価は地アタマが良い このような成績評価と面接での質問をうまく組み合わせることで、学生の「したいこと」と「しなくてはいけないこと」のバランス、社会に出た後の行動や意欲が判断できるのではないかと思います。 ■「学ぶ姿勢」を知るために活用する もう1つの活用手法として、成績表の内容を参考にしながら面接を行うと、今までの「したいこと」を聞く面接よりも深い内容を聞くことができると思います。例えば、以下のような質問です。 質問例: ・(成績表を見せて)どのような科目に力を入れましたか? ・なぜその科目に力を入れたのですか? ・(成績が良ければ)どうして成績が良かったのですか? ・(成績が悪ければ)なぜ成績が芳しくなかったのですか? ・あなたはすべての授業にきちんと出るほうですか? それともメリハリをつけて授業に出るほうですか? ・なぜそのような受け方をしたのですか? ・一番興味をもった授業はどれですか? そこから学んだことで社会でも生かせそうなことは何ですか? このような成績表を活用した質問を、面接の中でじっくりと聞いていくことで、 「したいこと」だけでなく「しなくてはいけないこと」への対応の仕方、その学生の「学ぶ」姿勢や考え方を知ることができるのではないでしょうか。 成績表を活用した採用面接をする企業は、これまであまり多くなかったかもしれません。しかし、「大学=遊ぶ場所」「授業=スマホをいじる時間」といった考え方を廃し、「本分である勉学にどれだけ真剣に取り組んできたのか」について、企業側が採用活動のなかできちんとフォーカスすることで、大学や学生、企業のいずれにとっても納得感のある採用活動・就職活動につながっていくのではないでしょうか。 <お知らせ>
3月29日、新刊『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』(東洋経済新報社)を上梓いたします。東大・慶應・早稲田などの一流大学の学生も例外なく「勉強しない」状況を生み出す構造を解き明かし、改善策を提案しています。よろしければ、ご一読ください。 【第12回】 2013年4月3日 辻太一朗 [大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表] 「大学の成績」は使えない指標じゃなかった! “学生の本質”が分かる成績表を使った面接法 4月に入り、企業の採用面接が本格的に行われはじめています。 前回は、「面接で話を“盛る”学生と“突飛な質問”をする企業」についてお話しました。そして、そのような学生と企業が生まれる原因の1つとして、「日本の採用活動が面接に比重を置きすぎている」ことがあり、さらにそれを回避するためにも大学での成績を活用することが重要である、と説明しました。 一般的に文系学部では信用度があまり高くない大学の成績ですが、実は成績の構造を理解すると採用面接で活用できることが数多くあります。そこで今回は、意外と知られていないその方法をご紹介したいと思います。 大学の成績を活用すれば 「しなくてはいけないこと」への姿勢が見える そもそも現在行われている採用面接の場では、どのようなことが話の題材になっているのでしょうか? その学生が今まで頑張ったことやアルバイトでの経験、資格取得での勉強、留学経験など、その本人にしか語れないことについて聞くことが多いかもしれません。しかしそれは、学生にとっては、誰かに強制されたわけでもない「したいこと」ですよね。自分で望んで選択し、挑戦した出来事がほとんどです。 つまり、企業側が、学生の「したいこと/したかったこと」について聞いているので、自信を持って語る学生が多いかと思います。 その一方で、学生の本分である、大学での学業についてはどうでしょうか。もちろん授業に出て、ちゃんと単位を修得して初めて卒業見込みが出るわけですから、その間の学業に対する取り組みがどうだったのかは非常に重要な点です。 つまり、「したいこと」ではなく、「しなくてはいけないこと」について学生時代にどう行動していたのか。ここをしっかりと見極めていくと、その学生の普段の姿勢や行動が分かり、入社後にどのような人材になっていくかが見えてくるかもしれません。 「したいこと」には懸命に励むが、「しなくてはいけないこと」になると、急に意欲を失ってしまう。企業社会では、「しなくてはいけないこと」の方が圧倒的に多いのですから、そういった適性を面接の場で見極めないと、入社してからミスマッチが起こる可能性もないとはいえないでしょう。 つまり、「したいこと」と「しなくてはいけないこと」の両面に対する適性を、面接では見極めるべきです。 大学の授業は学生にとって「しなくてはいけないこと」です。そして、成績はその結果です。ですから繰り返しになりますが、成績を活用することによって「しなくてはいけないこと」に対する行動が見えてくるわけです。 「成績が良いから優秀」ではない! 成績表の正しい読み方 では、成績からはどのようなことが見えてくるのでしょうか?成績表には、その学生自身が入学してから今まで取得した授業の科目、単位、成績が記載されています。しかし、大学の成績はいろいろな要素が絡み合っているので、一概に「成績が良いから彼は優秀だ」と判断することはできません。 成績から想像することができるものは、次の3つです。 1つ目は、授業選択の考え方(どのような授業を選択していたか)です。言い換えれば、学生の「学ぶ」姿勢が見えてきます。 2つ目は、授業への向き合い方(授業にどのように取り組んできたのか)です。どのような場面で「学ぶ」努力をするのかということです。 3つ目は、地アタマの良さ(厳正な授業評価は?出欠確認のない授業での評価は?)です。 成績は以上の3つの要素が絡み合っているので、成績が良いからといって「地アタマ」が良いというわけではありません。 一律に多くの学生の成績を見ることができない点が、採用活動において大学の成績が活用されていない理由です。しかし、言い方を変えれば「しなくてはいけないこと」に対しての考え方、行動、能力といった多くの要素が実は成績表から見えてくるのです。 成績表から見えてくる 地アタマ力、真面目さ、要領の良さ 次に、具体的な活用例をお教えします。成績表を持参させることは、学生にとってそれほど負担感はありません。 多くの大学で、いちいち証明書を発行しなくても、学生が自分で成績表を出力できるようになっていたり、最近ではスマートフォンなどの画面上で確認できたりする場合もあります。事前に送るように手配させなくとも、面接の場に持参させることが可能なのです。 また、成績表の内容と、就職活動での志望動機などを組み合わせた面接を行うと、「したいこと」だけを聞く面接よりもはるかに、その学生の本質を捉えることができるようになります。 成績表を活用する手法としては、大きく分けて、以下の2つがあるのではないでしょうか。 ■地アタマ力、真面目さの判断に活用する 私自身が今まで多くの学生と接した中で感じたことと、人事担当の皆さんから伺ったご意見を考慮すると、例えば、A〜Dといった4段階で成績を評価している場合は以下のような傾向があると思います(あくまでも一例です。大学・学部によっても異なります)。 ・最高評価の割合が高い学生は地アタマが良い ・最低評価の少ない学生はマジメである ・最高評価と最低評価のばらつく学生は、マジメではないが要領がいい ・中間評価の多い学生は、マジメだが地アタマは良くない ・厳正な評価の授業を取得している学生は学び続ける意欲が高い ・必須科目での最高評価は地アタマが良い このような成績評価と面接での質問をうまく組み合わせることで、学生の「したいこと」と「しなくてはいけないこと」のバランス、社会に出た後の行動や意欲が判断できるのではないかと思います。 ■「学ぶ姿勢」を知るために活用する もう1つの活用手法として、成績表の内容を参考にしながら面接を行うと、今までの「したいこと」を聞く面接よりも深い内容を聞くことができると思います。例えば、以下のような質問です。 質問例: ・(成績表を見せて)どのような科目に力を入れましたか? ・なぜその科目に力を入れたのですか? ・(成績が良ければ)どうして成績が良かったのですか? ・(成績が悪ければ)なぜ成績が芳しくなかったのですか? ・あなたはすべての授業にきちんと出るほうですか? それともメリハリをつけて授業に出るほうですか? ・なぜそのような受け方をしたのですか? ・一番興味をもった授業はどれですか? そこから学んだことで社会でも生かせそうなことは何ですか? このような成績表を活用した質問を、面接の中でじっくりと聞いていくことで、 「したいこと」だけでなく「しなくてはいけないこと」への対応の仕方、その学生の「学ぶ」姿勢や考え方を知ることができるのではないでしょうか。 成績表を活用した採用面接をする企業は、これまであまり多くなかったかもしれません。しかし、「大学=遊ぶ場所」「授業=スマホをいじる時間」といった考え方を廃し、「本分である勉学にどれだけ真剣に取り組んできたのか」について、企業側が採用活動のなかできちんとフォーカスすることで、大学や学生、企業のいずれにとっても納得感のある採用活動・就職活動につながっていくのではないでしょうか。 <お知らせ>
3月29日、新刊『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』(東洋経済新報社)を上梓いたします。東大・慶應・早稲田などの一流大学の学生も例外なく「勉強しない」状況を生み出す構造を解き明かし、改善策を提案しています。よろしければ、ご一読ください。 2013年03月29日 16:23 「倫理憲章」を廃止せよ 昨夜のアゴラチャンネルはすごい盛り上がりだった。
「世界と闘える人材を育てるために偏差値や新卒一括採用を廃止すべきだ」という茂木さんと「99%の学生にとってはもっと実用的な職業教育が必要だ」という常見さんは、日本の大学教育の二つの欠陥を指摘していたが、現代の日本で教育改革がもっとも重要な問題だという点は一致していた。 私は、彼らの指摘は一つの問題の二つの側面だと思う。偏差値を基準にした新卒一括採用は、個人の能力や創造性をみているのではなく、受験勉強という無意味な仕事をいわれた通りこなす忍耐力や実務能力をみているのだ。明治以来の日本で何より重要なのは、西洋文明という手本を忠実にまねることだった。帝国大学は官吏養成所であり、その後の日本の大学も「追いつき型近代化」のための途上国モデルなのだ。 この意味では、規律=訓練によって質の高い労働者を生み出した日本の初等中等教育は、世界でもっとも大きな成功を収めた途上国モデルだった。それが日本企業の競争力の源泉だったが、こういう能力はコモディタイズしやすいので、もはや国際競争力の源泉にならない。 大学(文科系)に至っては、まったく時間の無駄である。かなり有名な大学でも、300人の大教室に3人しか学生がいないというような授業はざらにある。それでも教師は何も努力しない。准教授になったら、自動的にテニュア(終身雇用権)を得られるからだ。アメリカの大学ではテニュアをもつ教授・准教授は4割しかいないので、再任のために激しい競争があるが、日本では決められた授業以外の仕事をするインセンティブがない。 こういう状況を是正する方法は、競争原理しかない。政府は就職についての「倫理憲章」を改正して就職活動を4年生の4月からにするよう財界に要請したが、これは逆である。有名無実の倫理憲章なんか廃止して、ユニクロのように1年生の4月2日に内定を出せばいいのだ。そうすれば大学は4年間来てもらえるように、必死で教育内容を改革するだろう。 日本の私立大学の半分は定員割れである。普通の産業なら続々と倒産するはずだが、その経営が成り立っているのは私学助成のおかげだ。国立大学法人と合わせると毎年1兆4800億円の補助金が、大学の実績とは無関係に学生の数に比例して一律に支給されている。こんな農業補助金みたいな制度は廃止し、教育予算は奨学金として学生に(成績に応じて)支給すべきだ。 日本経済に足りないのは、カネではなくヒトである。資金はジャブジャブに余っているが、労働者が古い企業に閉じ込められ、新卒以外の多様な人材を排除しているから、経済が活性化しないのだ。この意味で茂木さんは正しいが、こういう奇妙な採用慣行は日本経済の構造的バイアスの結果であって原因ではない。 教育問題は、文部科学省にまかせるには重要すぎる。安倍政権の教育再生実行会議は道徳教育などに力を入れているが、問題はそんな精神論ではなく、途上国モデルを卒業して世界に通用する人材を育てる教育システムを設計することだ。 Endou Kouichi · Top Commenter · 名城大学 「こんな農業補助金みたいな制度は廃止し、教育予算は奨学金として学生に(成績に応じて)支給すべきだ。」には賛同しますが、「問題はそんな精神論ではなく、」には賛同できません。「世界に通用する人材を育てる」には道徳教育の基礎にある宗教教育も大事であると考えますが、それを軽視してきた流れが東大宗教学から発せられているようです。そのことも、「途上国モデル」からいつまでたっても卒業できない遠因ではないかと感じております。 Reply · 2 · · Sunday at 6:34am
Toru Takahashi · Top Commenter 安倍首相の仲間たちに、戦前の教条主義でない、脱新興国の新しい道徳教育の仕組みが作れるのならいいですが、とてもできるように思えないのはなぜだろう。キリスト教国では自由主義神学という、聖書の道徳は学んでも聖書を教条的に絶対視はしないといういわゆるリベラル思想が社会の発展に貢献をしています。 Reply · · Sunday at 9:01pm Ichihash Masharry · 助教授、准教授、教授 at 広島大学 教員に降格システムを導入し、会議も授業も全て英語化し、助成金を廃止すれば、一挙に日本での大学淘汰が進むでしょう。 おそらく、大学は人材育成のベンチャービジネスになるべきなのだと感じます。 Reply · 1 · · March 29 at 6:25am Mugifumi Akimoto · Top Commenter · UCLA インプットとアウトプットを単純に結びつけるベンチャー方式で教育機関を運営すれば受験淘汰よりも悲惨なことになりそうです。 何でもかんでも英語化って英語が良くできる人から聞いたことがないのは何故だろう、、、柳井さんや楽天三谷さんの拘りも根っこはコンプレックスのような気がします。 Reply · · Sunday at 8:22pm Ichihash Masharry · 助教授、准教授、教授 at 広島大学 そうかもしれませんが、そうじゃないかもしれません。 日本の大学受験は決して悲惨なものじゃないと思いますし。 それから、英語化のご批判もよく聞く話ですが、動機がコンプレックスかどうかはどうでもいいことで、問題と何の関係もありません。 英語化の最大の目的は、そうすれば海外からの人材流入の参入障壁が確実に下がるということです(英語が良くできるかどうかは本質的な問題じゃない)。 今ならまだ、日本で学んでみたいと思ってくれている海外の学生は少なくありません。その中でグローバルにやれる人材を育てることこそ、これからの大学の使命のような気がします。 Reply · · Yesterday at 1:09am Yoshihiro Kiyonaga · Top Commenter 職業訓練は文科省や厚労省ではなく、もっと雇う側・需要側の財界や業界団体ががんばるべきだと思う。財界が名誉サラリーマン養老院になっているのではないか。 Reply · 1 · · March 29 at 8:31am Ogura Simon 今回の(も)池田論説は素晴らしいですね。 特に、【教育問題は、文部科学省にまかせるには重要すぎる】には同感し過ぎて噴き出して仕舞いました(笑)。最近は聞こえなくなったのが気懸りですが、「少しの間違いも許されない」を標榜している筈の安倍首相は、遅場瀬ながらアベノミクスの理論武装その他でお忙しいようで、愚見の「悪賢いモグラ」の巣窟である中央官僚組織を手付かずのまま放置している。長期的な重要課題である教育問題は本より、目先のTPPも肝心のアベノミクスも、「神も悪魔も宿る細部」を担う「悪賢いモグラ」を放置したままでは、【重要すぎる】と思います。 また、【帝国大学は官吏養成所であり、その後の日本の大学も「追いつき型近代化」のための途上国モデルなのだ】にも合点でした。道理で、日本の学者たちの論文の多くが、「先進国」たる欧米の学者の主張をなぞるだけで先頭を走っている訳ではない。独自の視座がなく退屈極まりない凡庸な内容で終わっている。 政治を支えるべき官僚や有識者(と云われる人達)が此のような状態で、折角安倍首相がTPPの流れで掲げた看板「日本はルールを作る側に立つ」が、何日まで立っておれるのか?懸念のタネは尽きない。 草々 Reply · · March 29 at 3:28am Aoki Takashi · Top Commenter · 代表 at 自営業(個人事業主) やはりこれからは漫然としたインテリジェンスよりも、収入と資産防衛が教育の柱になってくると思う。(金稼ぎと遺産と節税)そうなると、国債買い支えのために漫然とお金を銀行に置いてて欲しいお国に、教育改革やるインセンティブがない。やっぱり民間でやらなくては。 Reply · · March 29 at 10:13am http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51850043.html
言論プラットホーム・アゴラの映像コンテンツ「アゴラチャンネル」http://ch.nicovideo.jp/agora/。3月28日木曜日は午後10時から、茂木健一郎氏、常見陽平氏を招き「日本の大学教育はこれでいいのか?−茂木・常見のデスマッチ」を放送します。入口は上記アゴラチャンネルから。 時間はいつもと違い木曜日午後10時から。1時間強の時間を用意しました。2人の論客は初顔合わせ。就活やキャリア作りを考える大学生と高校生にとって、そして大学との関わりを考えるすべての社会人にとって、参考になる対話をご期待ください。 日本の大学教育について、評価もある一方で、さまざまな問題が指摘されています。例えば「授業がつまらない」「キャリア作りに役立たない」「レジャーランド」「研究の質が低い」などです。それはどこまで事実なのでしょうか。そして問題をどのように改革し、社会との関係をいかにして築くべきでしょうか。 大学教育と若者のキャリア作りについて鋭い発言を続ける、2人の論客を招き、アゴラ研究所所長の池田信夫を交えながら徹底討論します。 茂木健一郎氏は、脳科学者でありながら、テレビ司会者、執筆など多彩な活動を行っています。その自由奔放な行動と感性に、さまざまな人から注目と期待を集めています。教育やキャリアデザインについても発言。創造性を壊しかねない日本の大学について、入試、教育、そして就活とキャリア作りのサポートについても、批判する意見を述べ、改革を訴えています。(茂木氏ブログ「クオリア日記」http://kenmogi.cocolog-nifty.comから。 常見陽平氏は、リクルート勤務、メーカーの人事担当のキャリアづくりの経歴を活かして、若者の就活、キャリア作りで提言を行う著述家です。現在、いくつかの大学で教えながら、自分も一橋大学で社会学を学ぶ大学院生でもあります。常見氏は大筋で茂木氏の問題意識に同意しながらも、「問題だらけ現実を受け入れた上で、どう直すか」を考えたいとしています。(常見氏ブログ「陽平ドットコム」http://www.yo-hey.com) http://live.nicovideo.jp/watch/lv131641524
「世界一になる」と思って成功した人に話を聞く 「全国人材発展協会」代表に聞くココロの持ちよう 2013年4月3日(水) 横田 尚哉 いつも『明日の決定学』をご覧いただき、ありがとうございます。34回目の今回は、世界一マインドを持つ、後藤勇人さんとの対談でお届けしたいと思います。 違う世界の方と話しをすると、とても勉強になるものです。同じ世界で、同じ人と接していると、だんだん刺激もなくなってきます。刺激は、思考を変えてくれます。思考は、行動を変えてくれます。是非、異色なお2人の会話から、いい刺激を得てください。 テクニックも、マインドも 横田:こんにちは。今回は「世界一」を目指す企業や人に役立つ対談として、後藤さんのマインドを引き出そうという企画で、対談を始めたいと思います。 後藤さん、今日は宜しくお願いします。 私のロジックと後藤さんのマインドが、この対談で一緒になることで、経営者やエグゼクティブ・リーダー、そして、個人の成長に大いに役立つのではないかと思っています。その当たり、自己紹介を兼ねて、後藤さんの取り組まれていることをお話しいただけますか? 後藤:始めまして、後藤勇人と申します。本日は、よろしくお願いいたします。それでは、私の簡単な自己紹介をさせていただきます。私は、人材育成組織「全国人材発展協会」代表と、ヘアサロン・日焼けサロン、アパート賃貸、セミナー業などを業務とする会社 BKプロジェクトの代表取締役社長をしております。 現在の仕事は、サロン経営などの実業と、人材育成をサポートするセミナー事業やコンサルティングなどを手掛けております。具体的には、テクニック×マインド=結果という考え方から、テクニックやノウハウに頼り過ぎて、ビジネスが上手くいかないビジネスパーソンに、結果を出すマインドの大切さを説くセミナーや講演の開催、また、夢を実現するための朝の習慣などを提供しております。 決断に必要なのは、正しい情報と冷静さ
横田:後藤さんは、私とずいぶん違う世界で、活躍されてこられたのですね。どうりで、いままでお会いする機会がなかったわけですね。 これまで経営者として、いろいろな事業を手掛けられたわけですが、その時々で、やはり大きな決断といいますか、決定ということを繰り返されてきたと思います。 このコラムでは、私が企業の経営者、エグゼクティブ層に向けて、『明日の決定学』の大切さをお伝えしております。 きっと、後藤さんにも重要な場面で、「明日の決定」をされたと思います。そういう時に、何を重要として行われてきたのか、お伺いしてもよろしいでしょうか。 後藤:そうですね、私は24歳で最初のヘアサロンを出店してから、24年間経営者をしています。その間には、様々な重要な決断をしてきました。 32歳の時に、ヘアサロン2店、ショットBAR、日焼けサロンなど、複数のお店を経営していましたので、舵取りが大変でした。ですから、決断の大切さは本当に心から感じています。経営者やリーダーは、決断能力の高さが、そのままリーダーの能力の高さだと感じます。特に、問題が起きた時の決断は、その後の会社存続や組織の行く先、その後の組織力に大きく影響すると思います。 私が考える、決断する時のキーワードは、決断に必要なすべての情報を集め、冷静に事態を判断することです。つまり、「正しい情報と冷静さ」です。 さらに言えば、その決断により、事態がどのように変化するのかをしっかり把握して、その対処法を完璧に用意してから、決断するということです。つまり、決断によって起こることを、良いことも悪いことも、すべて想定内として考えておくことです。 テクニックとマインドが補い合う 横田:決断に必要なすべての情報が集められない時ってありますよね。これですべての情報なのか、もっとほかに情報がないかとか、経営者って、考えれば考えるほど、不安になりませんか。その不安が、冷静さを欠いてしまい、決断を間違ってしまうこともあるように思います。 横田尚哉:顧客サービスを最大化させる経営コンサルタント、改善士、著者。株式会社ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役社長。ウェブサイトはこちら。 私は、ファンクショナル・アプローチで重要な「誰のため?何のため?」という問いかけをしてください、とお伝えしています。本当に達成したいコトなのか、本当にやりたいモノなのかを、見極めるための問い掛けです。
このようなテクニックを使ったからと言って、正しい情報が限られた時間にそろうことって、なかなかないように思います。 せいぜい60%くらいかな、と思うのです。その残り40%は、経験からくる感性のような、直感のようなスキルが必要に思います。そういうところが、後藤さんの言われるマインドになるのでしょうか。 後藤:確かに、すべての情報は集まりません。ですが、その時の実力で集められるものがすべての情報ととらえ、判断していくことが重要だと思います。 無いものねだりをしていても前に進みませんので、ある程度集まったら、判断を下すことが大切でしょうね。ビジネスの成長や問題解決において、決断のスピードがその後の展開を大きく変えてしまいますから。 特に問題解決は、初期判断の対処スピードが、その後の問題を大きくも小さくもしますので非常に重要です。その場合でも、横田さんが推奨するファンクショナル・アプローチの「誰のため?何のため?」の考え方は、判断の大きな本質的な材料になりますね。 私も横田さんの著書を2冊ほど読ませていただき、その発想の斬新さに驚くと共に、思考のパラダイムシフトが起き、大変勉強になりました。 もちろん、私が推奨する世界一マインド、つまり、グレコで有名な世界一のギター会社フジゲン横内祐一郎会長の、わずか26年で世界シェアー40%を達成したマインドは、直感力とともに判断の大きな指針になります。 このマインドは、行動の原則、人間関係の原則、時間の原則、逆境の原則、お金の原則、自己実現の原則の36の教えから成り立っています。 失敗はない。あるのは「成功」か「思考錯誤」 横田:なるほど、私のロジカルな考え方が、お役にたっているというのは嬉しいです。どんな業界、どんな世界でも通用する考え方だと思っています。私のロジックに、後藤さんの世界一マインドが加われば、最強のような気がしますね(笑) それから、もう少し詳しくお聞きしたいのですが、そのマインドの中で重要な決定をする時のマインドといいますか、原則といいますか、ありますか。さわりだけでも結構なので、具体的にお話しいただけますか。 後藤:確かに、横田さんのロジックと私の世界一マインドがコラボすれば、最強のビジネス力がつきますね。これは、面白いコラボだと感じます。というのも、結果と言うのは、テクニック×マインドの答えですので、そのどちらが欠けてもうまくいきませんね。 後藤勇人:朝1分自分磨きコンサルタント、ブランディングプロデューサー、横内祐一郎「世界一マインド伝承者」、著者。全国人材発展協会代表。ウェブサイトはこちら。 さて、重要な決定をする時に大事なことは、自分がその時に最善だと考えて決断して出た結果に対して、その答えがどうであろうと、「絶対後悔しない」と最初から決めることです。
何故なら、出た答えを否定してしまえば、自分の決断の否定にもなりますし、決断事態に怖さを感じてしまい、その後、決断できなくなってしまいます。 ですから、良い結果に対しては、もちろん喜べばいいですし、もし、悪い結果が出たとしても、それは悪い結果ではなく、次のステージに行くためのハードルだと考えればいいのです。 つまり、物事には、失敗はなく、「成功か思考錯誤」しかないという考え方です。失敗というのは、チャレンジをやめた時に初めて出てくるものなのでしょうね。 組織を一気に変える「オセロマネジメント」 横田:やっぱり、心の持ちようといいますか、知識や見識だけではなく、胆識も重要だということですね。まさに、人間力を身につけなければ、大きな決定はできないのでしょうね。 もう1つ、お聞きしたいのですが、個人としての決定は、その人の人間力を高めることでできたとして、組織として決定する時は、どうでしょうか。 組織であれば、自分以外の人が大勢います。弱腰になったり、慎重になったり、時には反対するような人もいます。組織では、ある程度の合意を得ながら、進めなければなりません。 ファンクショナル・アプローチだと、組織活動で本来、達成するべきファンクションを分析して、そこからロジカルにアプローチしていきます。そうすれば、目的が明確になるので、手段の違いは調整すれば解決できることが、理解されます。 マインドで、周りの人たちを巻き込むのは、どのようにされているのでしょうか。 後藤:私は、組織はオセロゲームのような物だと考えています。 この理論は、拙書『ダメ社員をプチ経営者に変える「最強の社員マネジメント」』(総合法令)にも書いていますが、新しいプロジェクトを始めようとした時には、ほとんどの社員は、オセロでいうところの「黒」になっています。 その理由は、変化することを拒むからです。 でも、その組織の中にも必ずキーマンがいて、そのキーマンが白く変われば、その間に挟まれている黒い社員は、パラパラと白く変わり始めます。私はこれを、独自にオセロマネジメントと命名しています。 この理論は、社会行動心理学でも実証されている動物の習性でもあります。動物には、同じグループや同じ目的を持った人の行動を真似する修正があります。バッファーローの群れが、最初の1頭が崖から落ちれば、群れ全体が崖から落ちるのと同じ理論です。 ですから、社長がどんなに口うるさく言っても変わらない社員でも、同僚が変わりだすと、皆、変わり始めます。 大切なことは、最初にキーマンとなる影響力のある人を2人見つけ、いなければ1人でもいいのですが、まずその2人を変化させ、その変化によって、残りの人たちを変化させることです。この流れで他の人たちのマインドも変化していきます。 さらにもう1つ心を変化させる方法として、現状のままの行動をとった時に得られる未来と、新しい行動をとった時に得られる未来の違いをしっかり見せてあげることです。 そして、どんなメリットが自分たちにあるかを教えてあげることです。人は、未来に何が得られるかによって、行動を起こしますから。 問題解決のプロセス自体を楽しむ
横田:「オセロマネジメント」は、面白い表現ですね。実に、分りやすい喩えだと思います。そして、組織の変革には、重要なキーワードのような気がします。 組織の中にいると、大きな変革ができないものと思いがちですが、シッカリとしたロジックを持ち、テクニックとマインドをうまく兼ね備えていれば、ブレない信念と力強い行動力が生まれますね。 私自身、企業に勤めながら、新しい変革を繰り返してきました。それらを拙著『ビジネススキル・イノベーション』(横田尚哉・著、プレジデント社・刊)にまとめましたが、今思えば、マインドの部分を多く書いておりました。 後藤さんと対談していると、自分の中のマインドに火がつくようです。忘れかけていたマインドが喜んでいるようです。とても楽しい対談でした。 後藤さん、最後にこのコラムの読者の方に、メッセージはありますか。 後藤:そうですね、やはりゴールを明確にすれば、手段は無限にあるということでしょうか。問題解決のロジックにしても、マインドにしても、ダメだと諦める気持ちが、ダメな現実を引き寄せるような気がします。 ビジネスには、問題は付き物ですから、それに立ち向かうロジックとマインドを身につければ、本当に強い自分自身が出来上がり、結果的にステージアップすることができると思います。 問題に直面した時に、苦しむのではなく、「この問題を解決してやるぞ!」と問題を楽しみ、さらに、その問題を解決すれば、ステージアップした組織や自分になれると確信を持つことが大事です。 そして、問題を解決すること自体を楽しむぐらいの姿勢でいれば、どんな問題でも成長のステップに変わります。 是非、問題解決のプロセス自体を楽しんでいただきたいと思います。今日は、ありがとうございました。 横田:後藤さん、どうも有り難うございました。アルバート・アインシュタインは、次のような言葉を遺しました。「失敗した事がない人は、新しい事に挑戦した事がない人である」と。『明日の決定学』で大切なのは、テクニックとマインドです。今回、後藤さんからマインドの部分を中心にお話しいただきました。異なる世界に居ながらも、原理は同じなのだなと確信しました。 横田 尚哉(よこた・ひさや)
社員が5年で会社を辞めてしまう前提で経営するのもアリ?
カヤックでは退職者一覧というページを作ろうと思っています 2013年4月3日(水) 柳澤 大輔 企業活動には「顧客を囲い込む」というキーワードがあります。 この表現はあまり個人的には好きではありませんが、皆さんはいかがでしょうか。 僕がマーケティング企画をする場合、僕自身お客さんだったらと言うことを常に考えて企画をします。 そのように考えた時に、自分がお客さんだとしたら、囲い込まれたいのか?と言われたら囲い込まれたくないです。なんか、自分が何を買ったかもどんな行動をしているか、なんていうことをいちいち把握されて、何か不必要なものを売りつけられそうというイメージすらありそう。 もちろん、良心的な企業であれば、顧客を囲いこむことで、よりもっと便利により満足度の高いサービスを提供しようとするでしょう。そのことはユーザ様にとっても嬉しいことです。このような正義があります。 お客様の立場だったら「囲い込まれたくない」よね でも、どうでしょうかね。ほんとにお客様の立場になったなら囲いこむことなんてしない方がいい。自分たちよりも優れたサービスがあったら、紹介してあげた方がむしろよい。でもそんなことしたらお客さんが流れていっちゃうから、できない。だからこそ囲い込むという言葉になる。 この表現はどこまでいっても企業目線であることには違いありません。 でも、実際囲いこむなんてことはきょうびできるのでしょうか。どこもかしこもやれポイントやら、やれメルマガ登録やらがあるわけですが、囲いこむことができているんでしょうか。大半は大してできてないんじゃないでしょうか。 確かに、amazonのようにあそこまでの規模感になってしまうと囲いこんだ方がいいのかもしれません。もはやなんでもamazonで買えますし、むしろほかを探すのが面倒だから何でも買えるようにしてほしいと僕も思います。 でも、それとは別に、むしろ囲い込むという思想よりも、顧客の通り道になってもらう。一生懸命顧客が長時間滞在してもらってできるだけそこにとどまってもらうような工夫をするよりも、多くの顧客が一度は通る交差点のような場所を目指すという発想もあり、その方が時に、結果的には良い結果をもたらすこともあると思うのです。 例えば、ザッポスが自分のサイトには売ってない靴を求められた時に他社のサイトを勧めちゃう、というような話は伝聞のための伝説かもしれませんが、ネットの世界では閉じてほかのサイトに誘導しないサイトよりも、ガンガン他社に誘導した構造になっている方が結果としても自社のサイトのプレゼンスがあがり、トラフィックのハブになる。そういったケースは何度も見てきました。 困ったときに誰に相談する? 自分のまわりにいる人のことを想像してみてください。 なにか困った時に、この人に相談しよう。と思い浮かべる人は誰でしょうか。その人は非常にフラットな人ではないでしょうか。その人に相談するとすっかりその人にきっちり囲い込まれてしまう人よりも、フラットで自分に一番あった方法を紹介してくれる。そんな人ではないでしょうか。そしてそういう人は、そういう人だからこそ人が常に相談に来て人が流れていく。 確かに、昔に比べて、あらゆるツールが進化し、個人情報を取るのも個人情報を管理するのも簡単になりました。でもだからこそ簡単にユーザは違うところに移っていってしまうとも言えます。 あるいは、「囲いこまないで、通り道にしていく」これを会社の採用&人事という枠ではめて考えてみます。 優秀な人も外に出す 会社は優秀な社員がいたら囲い込んで外に出したくないものです。採用コストも教育コストもかかっていますし、何より結局、会社が伸びるも伸びないも人財にかかっているからです。でも、僕が社員だったらどうでしょうか。大切にしてくれるのはありがたいことですし、一緒に君と働きたいんだと言われたらそりゃ漢気(ヲトコギ)を感じます。仲間が好きですからね。でも、その根底に辞めさせないように囲い込もうみたいな思想があるとがっかりです。 であれば、例えば、囲い込むという思想をやめて、通り道にするとしたらどうでしょうか。優秀な人が会社を辞めたいといっても囲いこまず外に出すことも時によしとする。そうすると、社会的にあの会社出身の社員は優秀だぞという評判がついてくる。そうすると転職するときもその会社出身ということが有利になる。その会社が自分のキャリア上有利になるというのであれば、優秀な人がさらに集まってくる。 僕も散々採用活動をしたので実感値としてありますが、転職は、その会社で活躍できなかったからするケースが多いのです。だから名の通った企業でも、そこ出身だからといって必ずしも優秀なわけではない。むしろ、大体企業は優秀な人は手放さないのです。 だから、すごく伸びている企業だけど、どうもこの会社出身の人はそんなに転職市場に優秀な人はでてこないんだよな・・・という印象の会社もあります。でも、それが、あの会社からは優秀な人が結構出てくるぞという評判の会社はある意味すごい。例えばリクルートなんかはそういう人財輩出企業としては、そんなイメージかもしれませんね。 そのように考えると世の中的にいい会社だと言われていても、優秀な人を囲い込んで一切輩出しないのは果たして社員にとって世の中にとっていいことなのかどうか。 囲い込まないで、通り道にするという思想で勝負するのも1つのやり方だと思うのです。 …うむ。 囲い込まない方が熱い!・・・のかなぁ ほんとは、囲い込む思想は古く、これからは囲い込まない方が熱い!という展開にもっていこうと思ってこの原稿を書き始めたのですが、結局、顧客を囲い込むのも正解、囲い込むのが嫌なら他の方法で勝負する。何が正解なんてものはなく、どちらでも良いのだと思います。 単に、「顧客を囲い込む」という言葉を、僕が嫌なだけだったということに気がつきました。つまり僕があまり何者にも束縛されたくない人間なんだということだけです。 確かに、ユーザ登録して、購入履歴とかが逐一自分で把握できるのはありがたいし便利です。でも、必ずしも、より便利になったり痒いところに手が届くような至れりつくせりのサービスを必ずしも望んでいない人も世の中にはいます。でも、いいから放っておいてくれよという感じの人もいるのです。 例えば、僕も飲食事業やアパレル事業を手がけた経験があるので、体感値としてあるのですが、接客していて、常連客の中には、毎回来るたびにおしゃべりして常連客として扱ってくれることを望んでいるお客と、いいから放っておいてくれよというお客さんがいると思います。 これでなんとなく分かるでしょうか。もちろん、そんな放っておいてくれという人だって、何度か来てくれたのをさりげなく店員は覚えておいてくれていて、いつもありがとうございます、と言ってもらえると嬉しい。ということはあると思います。 接客のプロはその常連客がどんな対応をのぞんでいるのか、その匂いをかぎ取ってそれぞれに対応方法を変えるからプロなのであり、であれば、やっぱり、そういうことも含めてどんな趣味のお客さんかを把握するうえでも顧客の個人情報や顧客属性は取得しておいた方がいいのではないかとつっこまれそうですが。 それでも、世の中をあえて二項対立でわけるのなら、かまって欲しい人と、放っておいて欲しい人がいます。放っておいて欲しい人は、どちらかというと束縛という言葉が嫌い。自由に動きまわりたい。そんな人かもしれません。 だから、お店にいっても会員カードをつくりますか?と言われたら必ずNO。また何度か来るかもしれないなと思っていても、そのわずか年に数回のために一々カードを作って持ち歩くこと自体が面倒。ポイントがついて今日から安くなりますよと言われてもNO。 例えばネットサービスでも、会員登録をするとお得ですよ、って言っているのに、IDとPWどうせ忘れちゃうし、面倒だから毎回都度住所を入れてもいいから会員登録はしない。 そんなタイプ。 囲い込まない戦略 だったら、囲い込まない戦略として、思いっきりその一定層こそがメインターゲットだという思想で、サービスの面構えを考えるとしたらどうなるでしょうか。 前述の会社の採用&人事戦略でいえば、5年で社員が退職することを前提に、事業モデルを構築し、採用コスト教育コストを考え、会社のブランディングを行います。 サービスであれば、会員登録している人をメインの導線とせず(例えば、つまりネットサービスでいえばIDとPWを聞くフォームなんていうものは奥の方に)、常にGUESTを優先としたサービス導線にする。 そのようにふりきることで、勝負していこうという世界もありだと、個人的には応援していきたいと思いました。なんてことのない結論になってしまいましたが。 最後に今1つ企んでいることを紹介します。 それは、今度カヤックのサイトには、カヤックを辞めた退職者の転職先一覧っていうページを創ろうかと思っています。 よく進学高校が、進学先一覧といって、進学先の大学〇×大学何名。とか書いていますよね。そんなイメージ。カヤックに来ると、いろんな道が開ける。それも1つのカヤックの価値になる。 ただ、どうせカヤックに入ったからには、5年以上は最低いてもらいたい…とは思っていますけどね…。 【今週の一言】 会社の採用人事戦略でいえば、5年で社員が退職することを前提に、事業モデルを構築し、採用コスト教育コストを考え、会社のブランディングをすることもアリかも。 柳澤 大輔(やなさわ・だいすけ)
「会社って要するに、体育会の部活なんですね!」 あなたの職場もブカツマインドで動いてる? 2013年4月3日(水) 若輩ライダーズ2012 たいへん長らくお待たせしました。復活、「若輩者」連載です。就活突入直前に原稿を書き終えた大学3年生諸君はいま、それぞれの戦いの最中にあったり、あるいは内定を祝っていることでしょう。 今回は、体育会系の男子学生ふたりが気づいた「ニッポンの会社」の、文化系サークル出身者にとって恐るべき実態をリポートしてもらいます。思い当たる節がありすぎて怖いです(編集Y) はじめまして。某私立大学生のH、そしてMと申します。3月現在で3年生、絶賛就職活動中(残念ながら、内定は未だ)です。 就活を始める直前に日経ビジネスのYデスクから「難しいことはいいから、学生目線で社会を見た記事を書け!」という、ありがたい機会をいただきました。そこで私たちは、大学生にとっていちばん悩ましい課題である「就職活動」と自分が所属している「体育会」をテーマに書いてみることにしました。拙い文章と思いますが、最後までお付き合いいただければ、幸いです。企画・取材はHとM、執筆はMが担当します。 さて、ご存知の通り就職活動では、大学時代のゼミや部活にアルバイト、あるいはボランティアや留学経験を語るのが、面接の山場になっています。 昨年12月に、就職活動を始めるにあたり、面接で大学生活のことを聞かれたら何を話そうかとあれこれ考えてみました。幸か不幸か、私(M)は体育会系の厳しい武道系団体に3年間、まさしく身を捧げてきました。H君は野球部、グラウンドで白球を追い、自由時間はナンパに精を出す青春です。 一方でアルバイトをして学費を稼ぐ努力はせず、成績も人並み。つまり、面接で話せそうな大学の思い出といえば、部活でしごかれた経験ばかり。これでは企業の人にどう見られるか不安です。 しかし、いくら悩んでも過去は変えられません。体育会系学生はどう就活を戦うべきか、実際に内定をもらった4年生の先輩に話を聞いてみることにしました。 内定者の語る「体育会」の強みと弱み まず話を伺ったのは、某大手医療機器メーカーから内定を獲得したS先輩。大学では合気道部の一員として日々稽古に明け暮れていたそうです。 私(M):大学の部活動経験でいちばん印象に残っていることは何ですか? S先輩:合宿でやる「声だし」かなあ。特に春合宿の声出しは地獄だったよ。春と言っても2月下旬、寒風が吹き付ける千葉の海岸で合宿の抱負を大声で叫ぶんだ。ただ叫ぶだけならいいけれど、下級生は主将にひとりずつ名前を呼ばれ、50人近い部員が一列に並ぶ前に出て、先輩に監視されながらやるわけ。 所作をちょっとでも間違えたり、声が小さかったりすると、先輩の叱責というより罵声を浴びるし、そのあげく、追加の筋トレや受け身を命じられたりするものだから、絶対にミスをしたくない。だから、緊張感は半端なものじゃなかった。この経験を通して人前に出ることが楽になったし、プレッシャーに強くなったと思うね。 私:なるほど。人前でプレッシャーをかけられる経験って体育会系の人間ならたいてい経験してますよね。他にも部活が就職活動で役立ったことってありますか? S先輩:よく言われるけれど、やっぱり体力は大きいよ。体力面の裏付けがなかったら、就職活動のハードスケジュールは乗り越えられなかった。 私:どんな日常になるんですか? S先輩:僕は部活の外務の仕事もあったから、それで時間を取られて、夜は23時まで学校で就活の書類を作るわけ。そうなると家に帰る時間が惜しいから、そのまま漫喫(マンガ喫茶、ネットカフェ)に宿泊。朝は5時から起きて、説明会をはしご。3社以上回ったこともあったな。 (筆者はこれを聞いて驚きましたが、就活中のいまこれを読み返して、ああ、本当だったんだなと思っています) でも、就活では体育会系って有利だと思うよ。厳しくしつけられた礼儀作法に、「声だし」みたいな「無茶振り」に耐えたエピソード。師範の接待や下足番をこなした話、いろいろな経験をしたから、面接のときに話しやすかった。部活流に大きな声で挨拶したら、それだけで人事の人に感心されたよ! 私:えっ、大きな声で挨拶するだけで企業の方に感心していただけるのですか…! なるほど、体力に、礼儀作法に、人前で話せるエピソードか…。私はなるほどと思いつつ、もうひとり、話を聞いてみることにしてみました。 次にお話を伺ったのは、大手不動産会社から内定を獲得したT先輩。昨年の 11月までラクロス部の一員として現役で活躍していました。 私(M):部活の経験で一番大変だったことは何ですか? T先輩:「夏合宿」だね。夏の合宿では5日間、気温35度にもなる炎天下のグラウンドで午前4時間、午後4時間練習をしたよ。 練習では1年生でも上手ければ上級生と混ざって練習ができる反面、上級生が基礎練習に行かされることも頻繁にあった。1年生の中で上級生が練習することは精神的にも悔しいし、スターティングメンバーに入れなくなるのではないかという危機感を感じるから、すごく辛い。 練習試合ではチームをAとBの上位下位に分けてモチベーションと緊張感を高めるんだけど、もし一度でもパスミスがコーチの目に留まれば、「〇〇、Bへ」と言われて、降格させられてしまう。だから、どんなに短く一瞬のプレーでも常に気を抜くことはできない。練習が終わっても、夜は3時間くらいミーティングをして、その日の練習試合の反省や、戦術などを話し合う。だからなかなか休めなかった。 肉体的にも精神的にも厳しい合宿を乗り越えることで得た「忍耐力」は、就職活動を乗り越える原動力になったと思うし、面接での話のネタになって良かったと思うよ。 体力・挨拶・エピソードが体育会の武器 私:他に役立ったことはありますか? T先輩:やっぱり、体力。1日に3社以上企業説明会に出向くのは、1日だけならなんとかなっても、連日となれば僕だってきつかった。体力がないと持たないね。後は、挨拶が当たり前にできたのも良かったのかな。 僕は部活を通して大きな声で挨拶をすることは当たり前のことだと思っていたけど、実際に面接に行ってみると、ほとんど挨拶のできない人や、小声でほとんど聞き取れない人もいて、そんな人がいるのかと驚いたよ。部活で挨拶を徹底してきて、本当によかったと思ったね。 お二人に共通した感想は、体育会で得た「体力」「挨拶」それに「エピソード」は、就職活動でとても役立つ、というものでした。 会社で働いたことはありませんが、体力があれば残業や出張の強行スケジュールをこなせるでしょうし、挨拶もしっかりできる方が組織の一員としてはいいはず。厳しい環境や、プレッシャーを乗り越えたエピソードは、会社の人にとって一種「検査済み、品質保証」に見えるのではないでしょうか…? そんなことを考えているうちにふと私は、一つの仮説にたどりつきました。 「結局、会社と体育会って同じじゃないですか?」 とはいえ、学生の私たちがこんなことを考えていては、「学生の考えることはお気楽でいいよね」とNBOの読者の皆様にお叱りをいただくかもしれない。もちろん、体育会系でお金を稼ぐ実務をすることはほとんどありません。まるっきり同じと言うことではなく、組織として求める素養、経験、振る舞いが同じ、ということです。 では、社会人の方からは体育会系部活出身者はどう見えるのだろう。Yさんにご紹介をお願いし、MとHで揃って実際に人事を見ている会社員の方にお会いして、お話を聞いてみることにしました。 体育会出身のやつらは「めんどくさくない」んだよね!! 今回私たちのためにお時間を割いていただいたのは、某大手企業の人事担当のDさんです。大学時代は軟式野球部に所属し、日々汗を流していたそうです。H君とは話が合って、ベースボールネタで盛り上がっています。早速、お聞きしてみましょう。 H:社会人の方から、体育会出身者はどのように見えるでしょうか? Dさん:思い切り簡単に言ってしまえば「めんどくさくない」んです! M:めんどくさくない? どういうことですか? Dさん:例えば、社内で飲み会をすることになったとしましょう。MさんもHさんも、先輩に飲み会のセッティングを頼まれたら、すぐ人数を確認し、店に予約をいれるでしょ? M・H:はい。もちろんです。 Dさん:これが体育会出身者以外だと、「え、どうしてそんなことを僕がやるんでしょうか」と、理由を尋ねてきたりして、まず「やらなくてすむかどうか」を聞いてくるんだよ。その点、体育会だった者は、先輩、監督さんの言葉は「やれ!と言われたらやる!」。これが身についているから、めんどくさくない。言い換えると、「理不尽に免疫がある」のかな。 H:理不尽に免疫ですか。自然に部活動で免疫がついていたのかな… M:それって「会社は理不尽なところだ」ってことでしょうか。 Dさん:会社に限らず、世の中には理不尽なことも多いのです。人事の仕事をしていれば、誰だってそう思うはずです。 例えば、自分への「人事評価」には、納得できないことってたくさんあるんですよ。 M:大学の成績なら、勉強していないから自業自得と思えますが…。 Dさん:でも、人事評価はペーパーテストとは違う。運や相性が大きく作用する。突き詰めていけば、評価者の趣味嗜好偏見がどこかに絶対に入ります。それでも、当社のベテラン社員でさえ人事部に対して「100人が100人、誰が見ても納得できるような人事評価をしてほしい」、と、本気で言ってくる方がたくさんいます。 もちろん、その気持ちはわかります。自分の実力を客観的に見て、公正に評価して欲しい。当然です。そして、それは絶対に叶えられない願いなんです。 M:じゃあ、会社員の方はそれにどうやって耐えているんですか? Dさん:例えば、高校野球のベンチに入れるのは20人までと決まっていますよね。 H:はい。 Dさん:例えばHさんが物凄く努力していたのを、他のメンバーも監督さんも知っている。でも、21人目を作ることは出来ない。結局、ベンチに入れなかったとします。そうなったら、監督やチームとの「相性」も含めて、自分に何か、が足りなかったのだと受け止めるしかない。おそらくHさんは、悔しいけど、それを理解することができると思います。 H:(泣きそう)本当にそれは悔しいですが、勝負事ですから、割り切れるかもしれません。 ベンチに入れなくても前向きでいられるか? Dさん:選ぶ側、この場合は監督さんも「誰がベンチ入りするか」を一人ひとりの選手が、完全に納得いくところまで説明できているかといえば、そうでもないと思います。 というか、そんなことはおそらく無理なんです。全員が完全に納得するように努力はすべきですが、納得しないうちはメンバーを決められない、というのでは、試合に出ることができない。目的はまず試合に勝つこと。ここを共有することが、体育会系は部活を通して社会に出る前に自然にできている…と、こちらは期待するわけです。 H:なるほど。自分の納得よりもまず目の前の勝負だと。 Dさん:体育会出身者は、「どんなに努力しても負けた」経験を通して、「置かれた場所で咲く」と言いますか、自分に対する他人の評価をまずは受け入れ、「適応するしかない」と割り切る姿勢があるように思えるのです。これは、理不尽に耐える方法として相当有効だと思います。 M:そうすると、会社と体育会はやはり似ているのでしょうか? ここは決定的に違うということはありますか? Dさん:いまのところ、日本の会社の多くはタテの組織です。新入社員は下っ端として、よく働き、先輩に指導され、チームプレーで利益を挙げるために戦います。この点、会社は非常に部活と似ていると思います。違う点は…あまり思いつかない(笑)。 いわずもがなですが、相違点があるとしたら、ミスした場合種類によっては洒落では済まないことですね。個人情報の取り扱いとか、品質管理上の誤りなど、個人の失敗が会社という組織全体のミスになり、致命的な損害をもたらすこともあります。もちろん、そのミスをカバーするのも会社の組織の役割です。会社という営利集団だからこそ生まれるプロ意識、責任感は部活とは全然違う。でも、そのくらいかな(笑)。 M:だんだん、体育会系の部活に入っていて良かったと思えてきました。 「ジュース買ってこい!」と先輩に怒鳴られ、「何がいいですか?」と聞くと「センス!(=俺の気に入るヤツ)」と言われ、買ってきたコーラに「ファンタが良かったんだよ!」と怒られたりした、それも会社に入るには良い経験だったのかもしれません。 体育会系学生は大学生のわずか8% Dさんのぶっちゃけトークはものすごく分かりやすかったのですが、さすがにお一人に会っただけで、「こういうことです」と決めつけるわけにはいきません。そこで私(M)は、アスリートプランニング(以下アスプラ)という会社の採用コンサルタントの方にお話を伺いに行きました。 アスプラは「体育会学生の約2/3の就活を支援している」(同社)会社です。「体育会学生を採用したい」という企業へコンサルティングを行う一方、部活で時間がない体育会系の学生を専門に就活指導を行っています。私のところにも案内をいただいたので、主旨をお伝えしてお邪魔してきました。 私:そもそも、「体育会の学生」は、どれくらいいるのでしょうか? アスプラ:大学生のうち、8%ほどです。リーダー部(応援団)やマネージャーも入れてこの数です。1割に満たない。だから、結構貴重な存在と言えますね。 私:アスプラさんはなぜ、体育会学生にこだわるのでしょうか。 アスプラ:アスリートプランニングでは、体育会の支援を理念に掲げて事業を行っています。私たちが体育会学生の就職支援を行うのは、体育会組織の活性化を図りたいと考えているからです。 もともと、当社の代表は体育会の出身なのですが、彼が就職活動を行ったころは、体育会学生に対する就職支援はありませんでした。そこで、1991年に日本で初めて「体育会学生採用企画」を手がけたんですね。以来、多くの企業に体育会学生の採用支援を行い、また当社の「アスリート就職ナビ」は体育会学生の約3分の2が登録するまでになったんですよ。 私:体育会の学生は、人気があるのでしょうか。 アスプラ:ありますね。お話したとおり、大学生のうち、体育会に属するのはわずか8%ですが、大手企業のなかには、新卒採用の20〜30%を体育会出身者で占める企業がいくつも存在します。 私:体育会学生のどのようなところが企業には魅力的なのでしょうか? アスプラ:いまの企業は長い不景気を受けて、厳選採用を行っています。言い換えると「あまり費用をかけずに幹部候補が欲しい」のです。一般論としてですが、これに体育会系出身者は向いています。 企業というものは利益を出すことが求められる組織ですが、体育会の学生も日々記録の向上や試合での勝利といった「結果を求められる世界」に身を置いています。追求する姿勢に共通するところがあるので、何を求められているかの理解が早い。従って、獲得したい人材になるのです。もちろん、最後は個人個人の話になりますけれど。 私:確かに、「楽しければいい」というサークルと違って、どのスポーツでも結果を出し続けることを求められます。 体育会の学生は「企業の働き方」を既に体験している アスプラ:それに、体育会の組織というものは主将、キャプテンを頂点としたピラミッド型の構造になっています。そこでは、主将を中心に、組織運営のさまざまな場面を経験します。例えば、運営方針の決定や予算の確保と会計の管理、学内外との折衝、新入生勧誘のような採用活動も経験しますよね。体育会の組織を経験することは、企業経営を疑似体験するようなものなのです。 私:言われてみれば、私も新入生がたくさん欲しくて勧誘活動を行ったり、幹部生で経営会議みたいなことをして部の方針を決定したりしました。 アスプラ:その分、部活に時間を取られるので、授業や試験では不利だったり、情報収集で出遅れることも多いのですが、そこを当社でサポートしよう、というわけです。 やはり、体育会系学生は「会社に似た組織」に属していたために、企業で「使える(使いやすい)」と重宝されているようです。 下級生時代は部に適応できるよう基礎トレーニングの反復や部の雑用をたくさんやらされ、2年生になったら部に適応できそうな新入生を探して学内を走り回り、実質最高学年の3年では後輩の指導、運営方針の決定や会計の管理。意識するまでは気付きませんでしたが、私が部活で体験してきたことは、新入社員から管理職に至るまでの社会人が出世していく過程を超ハイスピードでやっていたのかもしれません。 いわば「会社の高速シミュレーター」が、体育会だということですね。こう考えたら、ちょっと自信が出てきました。 果たして、この自信がどのような結果に結びつくのか…? NBOの読者の皆様、やっぱり会社は「体育会系の部活」マインドなのでしょうか。そうであればと期待しています。 若輩ライターズ2012 http://business.nikkeibp.co.jp/
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