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デフレは、賃金を下げ過ぎた経営者の責任だ  「アベノミクス」は、じつは「世界標準ノミクス」  高まる日銀資産の毀損リスク
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/431.html
投稿者 eco 日時 2013 年 3 月 29 日 09:21:26: .WIEmPirTezGQ
 

デフレは、賃金を下げ過ぎた経営者の責任だ

吉川洋・東京大学大学院経済学研究科教授に聞く

2013年3月29日(金)  広野 彩子

 近著『デフレーション――日本の慢性病を解明する』(日本経済新聞出版社)で、長引くデフレの原因を「イノベーションの欠如にある」とした吉川洋・東京大学大学院経済学研究科教授。そのイノベーションの欠如をもたらした元凶は、企業による正規雇用から非正規雇用への流れなどによる名目賃金の下落であると論じ、デフレの原因を「日銀の金融緩和が不十分だからだ」とする説に真っ向から反論した。さらには過去40年のマクロ経済学は「進化などしていなかった」と、最新のマクロ経済学を斬って捨てる。その真意について、さらに話を聞いた。
 (聞き手は広野 彩子)
ご著作『デフレーション』で、日本が停滞した原因の1つを、(合理化するための)プロセスイノベーションにこだわりすぎてモノ作りのイノベーションがなかったからだ、という趣旨で書いておられました。医療分野でのイノベーション、たとえば介護ロボットを開発するとか、需要創出型のイノベーションが大事というのは吉川先生の以前からの主張です。

吉川:そうそう。私の持論は、需要創出型のイノベーションなのです。リフレ派の人からは、間違っていると言われてしまうんですが。日本はデフレだから、とりあえずデフレを止めよ、というのがリフレ派の主張です。私も止められるなら止めよう、そこで技術進歩やイノベーションが必要だと言うと、それは供給サイドの発想だろうと批判される。つまり標準的な経済学で考えるとそれは供給サイドで、経済の天井を上げることだから、デフレギャップが広がることになると。


吉川洋(よしかわ・ひろし)
東京大学大学院経済学研究科教授。1974年3月東京大学経済学部経済学科卒業、78年12月米エール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。82年大阪大学社会経済研究所助教授、88年東京大学経済学部助教授、93年2月東京大学経済学部教授を経て現職。著書に『高度成長―日本を変えた6000日』(中公文庫)『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ―有効需要とイノベーションの経済学』(ダイヤモンド社)など多数。(写真:陶山勉、以下同)
需要はもう満たされているとして、需要はそのままで供給だけを増やすことだ、ということですね。

吉川:需要が今十分とすれば、経済の天井を上げるのだから、デフレギャップが広がってもっとデフレがひどくなるという話ではないかということです。需要不足は私も認めます。需要不足なら技術革新などと言うなというのが標準的な反応です。ただそれはちょっと違う、と私は思う。

 供給サイド、需要サイドという整理自体に限界がある。革新的なモノを生み出すプロダクトイノベーションはある種、供給サイドと言えるのですが、それがこれまでになかった新たな需要をつくるでしょう。逆に言うと、狭い意味でのケインズ経済学は、需要をつくると言った時、どれほど持続可能な需要かについて何も語らない。

 確かに道路に穴を掘って埋めても需要は生まれるけれども持続可能ではない。大仏を作るとか、何かを造成すると言ったって、単発で終わりです。私の言う需要創出型のイノベーションは、もっと持続性のある、介護や医療など成長分野でのプロダクトイノベーションで経済を引っ張っていくという話です。

日本からなぜiPhoneが生まれなかったか

需要創出型のイノベーションといえばiPhoneなどがいい例でしょうか。なぜ日本で生まれなかったのかと。

吉川:それが、日本企業が効率化でコストを切り詰める「プロセスイノベーション」ばかりをしていたからなのです。

 バブル崩壊後、日本企業は雇用、設備、債務の3つの過剰を抱えていると言われていました。設備と債務はともかく、人で、とにかく人件費を削った。その頃から中国をはじめ、アジアの国と競争がさらに激しくなるというのでコスト抑制を続けてきた。原材料費削減や合理化といったこともあるでしょうが、コストの本丸は人件費です。

 賃金抑制の結果として、正規から非正規へのシフトが起こり、20年これが続いた。しかし、ざっくり言って行き過ぎた。長期的に少子化ということを考えると、これはファーストベストではない。一方では、長期的に労働人口が減るから大変だと言っているわけですから。

では、ファーストベストは何だったのでしょう。

吉川:やはり、企業が責任を持って将来を見据えて、必要なイノベーションを起こすことでしょう。現在も「将来、働き手が足りなくなるから大変だ」と言っていますが、経済学の立場からすると、人材も頭数だけではなくて質が大事ではないですか。いわゆる、人的資本です。人的資本の蓄積はとても大切です。先進国の経済は、質こそ重要なんです。人的資本というのは、学校もさることながら、勤め始めて会社で技能育成をすることなどを通じて徐々に蓄積されていくものです。

 しかし非正規と呼ばれる人たちが、どれほど人的資本を蓄積できるのでしょうか。過去20年を振り返ると、はなはだ心もとないところがあるのではないでしょうか。

 つまり、ほかのアジアの国でも「モノ」は作れる環境の中で、少しでも安くという戦略は当然ながら限界があるのです。皆が言うように、これからはほかでは作れないものを作ることが重要だと思います。あるいは、ほかが作り始めたらその1世代先に行く。先進国としてはそうあるべきです。

ドイツのコンサルタント、ハーマン・サイモン氏の話では、欧州経済もダメだが、特定の強い企業が何とか引っ張っている。それはよそでは作れないニッチ製品や高級品の類いが多いということでした。

吉川:ドイツは石油高などのコスト増を転嫁できるのだけれど、日本では明らかに転嫁できません。石油高、ユーロ高でもドイツは交易条件が悪化しない。日本は石油の値段が上がると一気に交易条件が悪化するのですが、ドイツではきっちり値上げしてくる。買いたくなければ、買わなくて結構と。たとえば円安になったら、欧米のブランドが実際一斉に値上げを始めたでしょう。

そうですね。値上げしても買う人は買うと分かっているから、値段を上げる。日本にも、値段が高くても買いたいと思わせるブランド創出力が大切だという話でした。

いまだに人口の半分である「女性」を生かしていない

吉川:そういったことを大きく見ると、日本は苦しい、停滞感があると言っているけれど、潜在力を十分に生かしていないだけだと思う。いくつかあって、1つは女性。あなたがご存じの通りですね。人口の2分の1の人たちをしっかり使っていないのにここまでやっているのですから、その人たちを使えば相当大きなプラスアルファがあるでしょう。もう1つは高齢化です。これはチャレンジだけれども大きな機会でもある。どうもそのことが認識されていない気がする。「ふーん、チャレンジだけどオポチュニティなのね」と、話を聞いても右耳から左耳に抜けている感じがします。たとえば石油危機がなければ、今の日本の自動車産業はなかったわけです。

日本が米国の自動車市場を取れたのは、石油危機のおかげであると。

吉川:石油危機は、日本経済にとって半端ではない危機だったんですよ。チャレンジなんて生やさしいものではない。でも石油がバレル1.9ドルでずっと推移していれば、小型車、あるいは燃費効率なんてコンセプトは生まれなかった。それが現在のハイブリッドやEV(電気自動車)につながったわけです。高齢化も、日本がフロントランナーで現在は一番大変ですが、今世紀中には、世界中が高齢化します。

 これから、暮らし方も買い方も建物も全部変わるでしょう。しかし足元では、たとえば流通業もいまだにほかの店より1円でも安くすることで商売している。ビジネスの現場はそれほど厳しいということでしょうが、それはそれとして、やはり高齢化に備えた第3次流通革命を考えるべきだと思う。たとえば高齢者には、ビルの非常階段なんて意味をなさないでしょう。あれでは非常階段じゃなくて非情階段です。高齢者がどうやって下りるのかと。

恐らくこれからそうした問題がますます表面化しますね。日本の消費者は要求が厳しいと言われてきて、そういった厳しい人たちがどんどん高齢化するわけですから。

吉川:自動車産業などは少しイノベーションが始まっているのではないですか。グリーンとシルバーというコンセプトがあって、グリーンはハイブリッドとEV、シルバーはドライブからドリブンというコンセプトでしょう。ほぼ自動で動くという。あとは衝突安全性もそうですね。

するとイノベーションの本丸になりそうなのは高齢化のところでしょうか。

吉川:上場企業は手元に資金が潤沢にあるわけで、使っていないだけです。お金がないからイノベーションができないんではなくて、先ほどの人的資本の枯渇の問題もあって知恵がないからのではないでしょうか。…こんなことを言うと、リフレ派だけではなくて経営者からも嫌われてしまうかもしれませんが。

勝負する土俵を変えることも「イノベーション」

 先ほど言った女性もそうですが、明らかに今ある潜在的な力を使っていない。それからコスト削減って、今あるものの生産コストを下げる話ですね。それより、全く違うものを作ってほしい。
 たとえば時計にしても大昔は、スイスが伝統的に職人芸でトップでした。そのうち日本でクオーツを生み出し、極限まで正確に時を刻むことができるようになった。それでほかの国の産業の息の根を止めたところもあった。


ところが最近はどうです、海外の高級時計の広告が増えましたね。先日はこんなことが書いてありました。「今や時計はWhat time is itを見るための時計ではない」と。あれっ、じゃあ私は例外なのかなと思いましたが、まあ富裕層向けの広告なのでしょう、時計に宝石などを載せて腕につけるという、時計はステイタスシンボルであるという見せ方です。

「何が時計の魅力か」を変えてしまうことで復活したわけですね。戦いのルールを変えた。

吉川:だって、時計の価値は「時間を見ることではない」って言ってしまうんだから。この発想は、立派なイノベーションですよ。こう仕掛けるあたり、日本はフランスやスイスに負けちゃったのかなと思います。

ところで、マクロ経済学者の方にデフレのことを伺うと、「記者さん、デフレというのは貨幣的現象、金融現象なんですよ」とまず諭されます。お金の量が増えすぎると1円の価値がモノに比べて下がるから、モノの値段が上がりインフレになる。逆にモノに対してお金の量が少なすぎると、1円の価値が高まるので、結果としてモノの値札は安くなって、これがデフレだと。だから、そこでデフレの時はお金の量を増やせば、景気が良くなる場合もあると。

 一般的な感覚からいうと、会社の業績もちょぼちょぼだし給料も大して増えそうにないのに、お金の量を増やすだけでそんなに大きく変わるのかな、という感じだと思うんです。

吉川:「デフレは貨幣的現象です」という説明は、経済学のごくごくスタンダードな言い方の1つなんですね。物価というのは名目物価です。たとえばリンゴ1個100円、ミカンが50円という金額が名目物価です。一方で「リンゴとミカンは1対2で交換される」と考えるのが、実質価格、あるいは相対価格と経済学者がいうものです。

 リンゴが非常に不作であれば、リンゴの相対的な価格が上がるでしょう。あるいはみんなが突然ミカン好きになれば、ミカンの相対的な価格が上がるでしょう。

 しかし、それが名目(実際の値札)でいくらになるかは、貨幣数量説に聞いてみなければ分からない、というのがスタンダードな経済学なんです。しかしこれ、現実の経済との対応がどれだけある話なのかが全く分からないんですね。

1億円の年俸が2倍になったら、2000万円?

 別の説明をしてみましょう。今年、とてもいい成績を出したサッカー選手がいて、年俸で毎年契約を更新する。倍になると言ったら、今年1億円だったら2億円になるというのが常識的な受け止め方でしょう。ところが貨幣数量説で考えると、これがいくらになるか分からないわけ。

 たとえばほかのものの価格が全体として10分の1まで下がるとしたら、ものすごい成績を上げたこの人の給料は額面で5分の1になるということです。

つまり極端な話、もし物価水準が1年前の10分の1になるなら、「1年前よりも2倍の年俸」という約束でも、実際にもらえる給料は5分の1になると。

吉川:そう。1億円だった年俸が、2000万円になるということです。つまりは「実質的」な意味では2倍になっているのだから、ということだけれども、現実にはそういう話じゃないでしょう。デフレは貨幣的なことだと言うんだけれども、貨幣数量説はこうした「変化」に対して、実は何も語っていないんですよ。お金の供給量を増やすというけれど、そもそもマネーサプライというのは、結果として決まっている側面が先進国では多い。

結果として決まっている?

吉川:つまり物価が2割上がったから、2割マネーサプライが増えているのだ、ということです。マネーサプライが増えたから物価が上がったというのではなくて。ところで、これまでデフレに関して、どんな方に話を聞きましたか。

数年前、英国のサッチャー元首相のブレーンだったというパトリック・ミンフォード氏と話をして大変印象深かったです。「金本位制の19世紀、英国はデフレでも繁栄した。日本が不況なのは、デフレのせいではない」と言っていました。

吉川:大ざっぱにいうと、英国の19世紀前半はそうです。デフレでも実体経済は絶好調。とはいえ1873年からは実体経済も左前で、デフレ。特に19世紀の終わりの大恐慌が非常に大きな問題になって、ケインズなどは、貨幣数量説はいかんとそこで言っているんです。私の心のよりどころは、ケインズとシュンペーター、この経済学の2大巨匠が貨幣数量説を否定していたということです。あと、ブラック=ショールズモデルで有名なブラックも、貨幣数量説を否定していました。

原因はマネーサプライの不足ではなく国内投資の不足

 19世紀の大恐慌で英国経済が25年ぐらい続けて悪かった時は、実体経済も悪いうえにデフレも続いた、という状況だったんです。原因は何かということで、最初はマネーサプライが足りなかったんじゃないかという話でしたが、結局のところケインズが行き着いた答えは、国内の投資が慢性的に不調だったということでした。

 というのも当時のイギリスは、海外への投資は非常に盛んだったんですよ。イギリス国内で設備投資などをすると儲からないということで投資する余地がなくなり、アルゼンチンに農園を開く、南アフリカで何かビジネスをする、カナダに鉄道を造る、などと積極的に投資していました。しかし国内投資はさっぱり。

 これ、今の日本と似ていますよね。日本企業が、海外で直接投資をすることが増えている。今や国内で工場を造っても失敗するだけだ、とよく言っていますね。

すると今、アベノミクスと言われていますけれども、国内公共投資が盛り上がるのは悪くないということですか。

吉川:公共投資の評価は、副作用との関係です。つまりは、財政破綻のリスクね。公的債務残高のGDP(国内総生産)比が200%超というのは、やはり問題ですよ。民主党政権が掲げた「2015年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を半減する」という目標は、もう不可能になったわけでしょう。

アベノミクスは「財政規律をお預けにして景気回復」

 ざっくばらんに言えば、財政規律を少しお預けにして財政出動するというのが、アベノミクスです。それがこれから先、国内の投資が不振だから公共投資をどんどんやれということになったら、少し問題があると思います。

ところで、『デフレーション』を読み通した後で、マクロ経済学批判の書物のような印象も受けたんですが。

吉川:タイトル通りデフレに関する本です。とはいえ、デフレを止めるのにどうするべきなのかという話になった時に、経済学者の間で議論が百出しているのが現実です。

 そのため最終章で「行き着く先は」と、経済学に対する批判を書いたんです。標準的な経済学者は、マクロ経済学や金融論は過去40年間で進歩してきた、と考えていると思うんです。医学にたとえれば、昔は到底直せなかった病気が随分解明されて、分子レベルで分かってきたと。昔は本当に手がつけられなかった病気が、今は治せると。これはまさに進歩です。医学ほどではないにせよ、経済学にも同じような進歩があったと彼らは考えていると思います。でも私は率直に言って進歩なんてしていないと思っているんです。私が少数派なのは分かっています。

緻密にはなっているけれども、進歩していないと。

「マクロ経済学にミクロ的基礎付け」はおかしい

吉川:数学を使うのはかまわないんです。問題は方法論のようなものというか、使い方の話なのです。デフレに即して政策論争がありますね。具体的には、ゼロ金利のもとでマネーサプライを増やし、どれぐらい効果があるのか、それともないのか、というのはその1つです。政策提言の基には理論があるわけですが、そこで使われるマクロ経済学が40年ぐらいで大きく変わった。

 40年前は大まかにいえばケインズ経済学だったのが、ある時期からそれが蔑称として使われるようになった。ケインズ経済学は「ど」マクロ、抽象論でした。ところがある時期から、ミクロ経済学との関係が分からないと言われ始め、マクロ経済学にもミクロ的な基礎付けが重要だという話になり、「合理的期待」や動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルなどという理論が生み出されました。DSGEモデルは世界中の中央銀行の調査部などが現在、一生懸命使っているものです。

 さてDSGEモデルというのはどういうものか簡単にいうと、基本的には代表的な個人、家計、企業、といったものを想定して、その動きをものすごく詳しく調べるものです。マクロをそうしたミクロの「相似拡大」という形で理解するという感じです。私は、それは基本的に間違っていると思う。

どうしてですか。

吉川:自然科学なら、方法論は二刀流でしょう。つまり物理であれば、1つのものや動きを調べるとき、たとえばボールを投げた時の放物線について考えると、ボールをどのくらいの強さで放るのか、どういう角度で投げるのか、調べれば調べるほど正確な軌跡が分かる。これを経済の動きでいうミクロだとしましょう。

 一方で、物理でものすごくたくさんのモノが集まる「システム」に関して、全体としてどう動くか、どういう性質をもつのか、その挙動はどのようなものかという分析もある。その場合、ボールとは全く違った方法論を使うんです。1つ1つの細かい動きを調べても仕方がないから全体で捉える。

 しかし経済学者同士でこれを指摘するとこう反論されるんです。物理は基本的には脳みそがない無機的な、分子とか原子などが対象だけれど、経済はみんな脳みそがあって、その動きには目的があるから、目的合理性を持った行動だと。

 でもそれは私の考えでは、違う。やはり1つのものの動きと、集団現象では違う。多くのものが集まっているところが本質なんです。いい例が、高速道路の渋滞です。個々のドライバーには脳みそがついていて、それなりに合理的に運転しようとしているでしょう。

うまくいかなくて起きるトラブルを分析するのがマクロ

 ところがそれが密になると、ある時に渋滞が起きる。それがどう起きるかはかなり解明されているのですが、そこで個々のドライバーの動きを動学的に計量分析したって意味なんかない。ある条件のもとで、ある種の集団が集まった時、渋滞だったり、将棋倒しの事故だったりがおきる。これがマクロの分析です。

 ですからマクロ経済学というのは、言わばトラブルの経済学なんですよ。うまくいっている時より、不況や失業、インフレーション、デフレーション、うまくいかなくて何か問題が起きた時にそれはなぜか、どうしたらいいのか、というのを解き明かすためのものなのです。

なるほど。そもそも理論に合わない部分を分析しなければならない。


『デフレーション――日本の慢性病を解明する』(日本経済新聞出版社)
吉川:だからこそ、個々の代表的な個人や法人が合理的なことを想定して、相似拡大なんかしちゃだめなんです。時々、主流派の経済学を批判する人が、「人や企業はそれほど合理的ではない」と言うんですが、それは的外れだと思う。経済学という学問はそもそも、全体のうち合理的な部分に注目して分析しているものなのですから。

 分析対象が個人や企業といったミクロであれば、集団現象であっても個人や企業のモチベーションが非常に効いてくると思う。でもマクロはあくまで総需要、総投資、総消費、GDP、その間にどのような関係があるかというような現象論です。それを家計や企業の合理的行動を前提として理論化していくうち、どんぶらどんぶらと、変なところまで流れちゃった。

経済学は二刀流であるべきだ

 このことに関しては、米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授もこんなことを言っていました。「過去30年のマクロ経済学というのは、よく言って大変役に立たない。悪く言えば積極的に害がある代物だった」。

 過去40年ぐらいのマクロ経済学は、やはりだんだんおかしくなっちゃったんじゃないかなあと思います。マクロ経済学にミクロ的な基礎付けなどを使うべきではなくて、経済学も二刀流であるべきなんです。


広野 彩子(ひろの・あやこ)

日経ビジネス記者。1993年早稲田大学政経学部卒業後、朝日新聞社入社。阪神大震災から温暖化防止京都会議(COP3)まで幅広い取材を経験した後、2001年1月から日経ビジネス記者に転身。国内外の小売・消費財・不動産・保険・マクロ経済などを担当、『日経ビジネスオンライン』、『日経ビジネスマネジメント』(休刊)の創刊に従事。休職してCWAJ(College Women’s Association of Japan)と米プリンストン大学の奨学金により同大学ウッドローウィルソンスクールに留学、2005年に修士課程修了(公共政策修士)。近年は経済学コラムの企画・編集、マネジメント手法に関する取材、執筆などを担当。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130327/245704/


 


 

【第11回】 2013年3月29日 佐々木一寿 [グロービス出版局編集委員]

日本では新奇的に扱われる「アベノミクス」は、じつは「世界標準ノミクス」だった!?(1)金融緩和編

麹町経済研究所のちょっと気の弱いヒラ研究員「末席(ませき)」が、上司や所長に叱咤激励されながらも、経済の現状や経済学について解き明かしていく連載小説。今回から3回にわたっては、特別編として、“いまさら聞けない”アベノミクスについて、末席が精魂こめて解説します。まずはアベノミクス3本の矢の1本目、金融政策から。(佐々木一寿)

「主任はただいま、外出中でございまして…」

 マネジャーが電話をとって対応している。

「これはこれは、ヨミヨミ新聞の方ですか、ご連絡ありがとうございます」

 どうやら、新聞社からの取材らしい。ヨミヨミ新聞は大手の全国紙であり、これは光栄なことである、といった雰囲気を全面に押し出して対応している。

「えっ。…そうなんですね」

 こんどは一転して声のトーンが2つばかり落ちている。いったい、どうしたというのだろう。

「であれば、主任ではなく、もう1人のほうがむしろ適役かもしれません。その者でもよろしければ…」

 マネジャーは受話器越しに末席をチラリと見た。

「ご快諾ありがとうございます。では、なにとぞよろしくお願いいたします」

 そう言って保留ボタンを押して、マネジャーは末席のところに来た。

「末席研究員、取材対応をお願いできるかな」

「はい。でも、大手の新聞の取材は主任の役割じゃないですか。今ならケータイでつかまるかもですが、いいんですか、僕でも」

「うん、もちろんじゃないか、私もいずれはこんな日がくると思っていたんだよ。よろしく頼むね!」

 感激した面持ちのマネジャーを見て、「もらい感激」をしてしまった末席は、受話器をとって挨拶をした。記者も挨拶を返す。

「こちらヨミヨミ新聞の朝口と申します。今回はアベノミクスの取材をお願いしたいと思いまして」

 いまどきアベノミクスなんて、直球中の直球じゃないか。しかも嶋野主任の得意分野でもある。これは一生懸命やらないと。末席は重責に応えようと必死の形相だ。

「ただ、できるだけわかりやすくお願いします」

 無論、そのつもりである、読者はエコノミストではないのだから。末席はわかっていますよ、という風に頷いた。

「大丈夫ですよ、まかせてください」

「よかった! 読者はこどもさんなんですよ。私、週刊ヨミヨミこども新聞の記事を担当しております」

 えっ、ハードル高すぎないか、この取材。しかも、業績的にみてもそんなにおいしくなさそうだし…。

 記者はそのような相手の落胆への対応には慣れているらしく、励ましながらフォローする。

「大丈夫ですよ、最終原稿の表現はこちらのほうで咀嚼しますから」

 末席は、少し離れたところで涼しげにミネラルウォーターを飲んでいるマネジャーをガン視しながら、しぶしぶ応諾した。

アベノミクスの「3本の矢」、
金融政策・財政政策・成長戦略

「えー。では、さっそく。アベノミクスの要点は」

 いきなりずいぶんザックリ聞いてくるなぁ、この記者は。末席は禅問答の試練に耐える修行僧のような心境で応える。

「(1)金融政策と(2)財政政策と(3)成長戦略と言われています。これがいわゆるアベノミクスの『3本の矢』ですね。これでデフレ不況というおバケを退治するわけです」

「(気は遣ってもらってるな、でも用語の言い換えはあとでこちらで適切に考えるとして)その3つをやればいい、ということなんでしょうか」

「そうですね。ただ、これには注意書きが必要です。じつは、この『3本の矢』という言い方はじつに絶妙なのです」

「なるほど。それはやはり折れにくいとか、強靭になるとか、そういうことですか」

 担当者は、首相のお膝元出身者か、歴史好きな人かもしれないな、と末席は思いながら続ける*1。

*1 矢は3本束ねると折れにくい、と息子たち3人が力を合わせるよう諭した長州の戦国大名、毛利元就の逸話は有名

「もちろん、そういう意味もあると思います。ただ、歴史学的にだけでなく、これは経済学的にも非常に重要な示唆があるのです。3本の矢を射るときには、一本ずつ射ますよね」

 たしかに、連射するにしても、1人だったら順番に放つことになるな。こういう論のはこびは、こどもたち(読者)が喜びそうな気がする、そう予感がしながら嬉しそうに聞いている。

「じつは、その順番をも首相は明示しているのです!」

「だから末席さんはわざわざ番号をつけているんですね。順番が違ったらだめなんですか?」

「じつはそうなんです、ちゃんと順番を守らない生徒は、先生に怒られるわけです。まあ首相の場合は、経済学の先生にですがね!」

 きっといま上手いこと言ったと悦に入っているはず、そう記者は察しながら応える。

「いやー、ウマいですね。読者も喜ぶと思います」

 末席はまんざらでもない様子で続ける。

「(1)の金融政策を最初にやるのが肝心です。これが十分でないと、あとが続きません」

「十分とはどのくらいでしょうか?」

「金融政策というのは通常、政策金利の設定によって行います。景気が加熱気味であれば金利を引き上げておカネを借りにくくし、景気がよくなければ金利を下げて、おカネを借りやすくして使ってもらいやすくするわけですね*2」

*2 通常、金融政策は、中央銀行が政策金利目標を定めて各種オペレーションを実行する

「で、金利を0%まで下げると*3。アレ? でも景気は良くなってない気が…」

*3 現在はゼロ金利政策を継続中で、金利はほとんど変動していない

「通常であれば、そこまでしなくても持ち直すものなのですが、これはなかなか重症な患者さんだということですね」

「金利は0%で、これ以上は下げられないということは、もう打つ手がないのでしょうか」

「これに関しての議論は、じつは日本では10年以上も続けられているところなのでした。いまでもまだその意見はけっこう根強いのですが、海外の著名な経済学者の多くは、『打つ手はなんぼでもある』*4と言っています」

*4 たとえばノーベル賞学者、ポール・クルーグマンは「なんぼでもあるのでなんぼでもやって、さっさと不況を終わらせろ」という趣旨のことを述べている

 なぜ外国人のセリフが関西弁風なのだろうか。そんなこども騙しは、いまや目の肥えたこども新聞読者には通用しないんだよな、と思いながらも相槌を打った。

「それが、いわゆる『量的緩和』といわれるものですね。金利が0%でも、こんどは量を増やして勝負、どうぞどんどん借りてください、というわけです」

「でも、0%で借りないのに、同じ0%だとしたら、やっぱり借りないですよね」

「なるほど。では今まで、金利0%(という破格の借りやすさ)でもおカネを借りてくれなかったのはなぜだと思いますか?」

「うーん、おカネを借りても、それを使っても儲けるのが難しそうだからじゃないですかね…」

 記者はこども役に慣れているようだ。

「そうですね。ではなぜそう思うのでしょうか。そう、不況だからですよね。モノを作っても売れなさそうです。とくに起業家は大変ですよ、いま成功してる人はすごいと思います。で、その不況の元凶がデフレ(とそのスパイラル)なのではないか、という見方があります」

インフレ・ターゲティング明示のイミ

「それはよく聞きますね。でもなぜデフレだとマズいのでしょうか」

「デフレだとモノが安くなりますよね、牛丼だって安く食べられます。ただ、そう喜んでいる間に、なぜか自分の給料が下がっていたり、ましてや失職してしまいやすい状況が生まれていたとしたら、どうでしょうか*5」

*5 本編第4回で詳説のフィリップス曲線を参照

「牛丼におカネを使うのももったいない、お昼は手製の弁当にして、いざ失職したときに備えようとするかもしれない」

 そういう人に取材をしたことがあるのか、記者の相槌はここだけかなり具体的だ。

「そうですね。それは企業側にとってもしょうがないところもあるんです、デフレによる雇用不安下でモノが売れないのと同時に、会社の資産が年々目減りしていきます。また、投資したい案件があっても、来年のほうが安くなりそうだ、ということであれば買い控えをしますよね、合理的に考えればこれはしょうがないことです。それが何年も続くと、ずっとおカネを使わないままになってしまいます。で、どんどん不況が深刻化する。これがデフレとデフレスパイラルのメカニズムの説明です。デフレでなければ、必要なものにおカネを使う人も増えて、低い金利で借りたおカネで投資をして儲けをあげられる企業も増えて、景気がよくなってきます。まあ、話は簡単ですね」

 簡単かどうかは最終的には読者が決めることなんだけど…、と思いながら記者は応える。

「なるほど。じゃあ、デフレは退治したほうがいいとして、どうすればいいのか手段も『なんぼでもある』として、なぜやらないんですか?

 待ってましたとばかりに末席はその言葉に飛びついた。

「まさにそれをいまの首相が選挙で問うたわけですね!」

 そういうことだったのか。案外、こうして淡々と説明されたほうがわかりやすいかもしれない。日々の報道に流されてしまうと、わかっているようでよくわからなくなるものなんだな、と記者は自省しながら言った。

「そして、デフレを脱却します、その手段がインフレ目標の設定だと宣言したのですね。ただ、あの時点であれ言われても、何がなんだか分からない人のほうが多かった気が」

 末席は頷いて応える。

「まあ、そうですよね。実際、景気対策の初手の初手なのですが、これがかなり専門的なんですよね。選挙の最大の争点がインフレ率だったのですから、経済学的には画期的です!*6」

*6 経済問題、景気対策を掲げるのはごく普通だが、物価水準を明確に数字で公約にするのは極めて稀で、史上初めてのことかもしれない

 勝手に悦に入っている末席をいなしつつ、記者は疑問を投げかける。

「それって、でも、正しいんですか? インフレってどちらかというと良くないというイメージが」

「たとえば2桁%以上といった高すぎるインフレは問題ですね。ただ、デフレは最悪だ。というわけで、学者によって議論が分かれますけれど、だいたい2〜5%のあいだくらいが物価としてちょうどいいというのが国際標準でしょうかね。そのあたりだと、マネーという『経済の血液』の巡りがよくなるらしいのですね!というわけで、多くの先進国は目標を定めて、そこに収まるように金融政策をやります」

「それが、いわゆる『インフレ・ターゲティング』というやつなんですね。今回、首相はそれを『2%』と設定した」

「まあ、もしかしたら、もっと高くてもいいと思っているかもしれませんが、結局2%ということにして、中央銀行と共同声明を出しましたね」

「(えっ、本音では?と聞きたいけど、まあ、こういうウラオモテというものはこどもにとってはよくない話だな…。)*7それは分かったとして、なんで今までそれをやらなかったんでしょうか」

*7 選挙中には2〜3%といった発言もあった。海外には、4%くらいでもいいという著名な学者も複数でいる

「さあ…。世界の七不思議のひとつと言ってもいいくらいの興味深いナゾですが*8、それもそろそろ解明されてくるかもですね!」

*8 米FRB(Federal Reserve Board、連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキは、プリンストン大学経済学部長時代、日銀のある議事録を読んで、「一人を除いてみんなジャンクだ」と不思議がっていたという

「でも、こんなに何年も続いているのに、本当にできるんでしょうか」

「そうですね、もうザックリ15年くらいになりますかね。経済学の世界では、処方箋は当然ありますよ*9。ただ、それができる人は中央銀行の非常に限られた人たちで、その責任者が『それやりたくない』『やっても効果ない』『景気が回復すれば自然にデフレ脱却できる』という人であれば、もうしょうがなかったのかもしれませんね。その責任者が法律的に独立した存在なのであれば、説得に応じなければもうなすすべがないわけです。でも、いま首相は、『インフレ目標を早く守ってもらうか、守ってもらえないというなら次は守ってくれる人にします』と厳しく言っている、というわけです。

*9 インフレ・ターゲティングの設定による金融緩和の実施がその王道

「約束は、オトナだって守らなければならない、ということなんですね。ではもう、大丈夫ですね!」

「と思っていましたら、共同宣言発表直後に上がった株価が、すこし後であっという間に値崩れしました*10。いろいろな見方ができるかと思いますが、結局、市場は『約束はしたけど、ホントかな』って疑ったんではないか、と。まあ、デフレを15年も事実上放っておいたとマーケット関係者は思っているのですから、半信半疑なところもどうしてもあるのでしょうね、彼らは文字通り非常にゲンキンですから、言ったことをそのまま信じるようなことは、なかなかしないんです。『それ裏付けるマネーの量、足りてないじゃん』*11となったらそれまでですので、期待して買っていた人はさっさと株なんて売り払って逃げるわけですね。でも一部は信じて残る。その人数のバランスで株価はいま決まっていると思われます*12」

*10 2013年1月22日の日経平均株価の動向を参照

*11 一説には、裏付けになる金融緩和の規模が20〜40兆円ほど足りず、しかも実施時期が遅すぎる、といった意見がある

*12 たとえば日経平均、TOPIXなど、株価平均の代表的なインデックス指標の動向は個別銘柄の事情をかなり排除できるので、このことが顕著に現れるため、よく景気動向の見通しを伝えるものとして引用される

「えーっ。ちゃんとおカネ出すって公に言ってるわけですよね、2%っていう物価水準まできちんとやるって」

「うーん、でもたぶんマーケットは『やるつもりですが、仮にやれなくても罰則はありませんし、あしからず』と聞いたのかもしれません」

「そんな! それ守れなきゃダメじゃないですか、こどもの教育にもよくないですよ!」

「そうですね、ちゃーんとそのように書いておいてください。市場関係者はもちろん監視していますし、なにより将来の日本を支えるこどもたちが、オトナが約束を守るかどうかじーっと見ていますよってね!」

 末席は、おそらくお子さんがいそうなその記者に、笑って答えた。(つづく)


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このコラムはGLOBIS.JPの提供によるものです。
http://diamond.jp/articles/print/33948


 


 

 


【第110回】 2013年3月29日 週刊ダイヤモンド編集部
【日本銀行】
大胆な緩和策で保有国債は長期化
高まる日銀資産の毀損リスク
黒田東彦新総裁率いる日本銀行の“大胆な金融緩和策”に市場の注目が集まっている。実際には、日銀は購入する長期国債の年限を長期化していくしかない。そこに潜むリスクを読み解く。

 1月29日に公表された2013年度の国債発行計画に、ある“異変”が表れた。2年新発債の発行額が、例年の毎月2兆7000億円から、13年度は2兆9000億円へと、年間にして2兆4000億円も上乗せされたのだ。

 ある財務省関係者は、「日本銀行の金融政策を意識していないと言えば嘘になる」と本音を明かす。

 日銀は現在、資産買い入れ基金を通じて購入する長期国債の残存年限を「3年以下」とし、今年1月には14年以降も無期限で国債を購入していくと発表していた。

 財務省が国債の満期構成を考える上で、金融政策を考慮するのは自然なことではある。今回の“異変”がすなわち日銀による「財政ファイナンス(財政赤字の肩代わり)」と断定できるわけではない。

 とはいえ日銀が2年債を購入する目的は、2年物金利を押し下げることにある。一方で、市中消化がしやすいからといって財務省が2年新発債の供給を増やせば当然、2年債の価格は低下し、2年物金利にも上昇圧力が働く。財務省・日銀を広く政府部門と捉えれば、政府としてはいかにもあべこべなことをしていると言える。

 そもそも日銀が現在、長期国債の購入にまで踏み切っているのは、金融政策の伝統的な手段である名目短期金利の引き下げ余地が失われているからだ。

 伝統的な金融政策においては、日銀は買いオペで短期国債を購入、または短期貸し出しを行い、準備預金を供給する。銀行にとって準備預金は国債とは違い、決済手段として使える。こうして銀行に資金が供給され、短期金利は下がる。

 その際、日銀が短期国債を中心に購入していたのは、償還までの期間が1年未満であるため資金供給が短期となり、将来引き締めが容易となるからだ。金利が上昇しても、国債の評価損が発生するリスクもほとんど勘案しなくてよい。

 ところが、ゼロ金利という制約に直面し、銀行が準備預金を大量に積み上げている状況下では、短期国債を購入しても効果はない。

 日銀が資産購入で一定の効果を上げるには、やはり準備預金とは性質の異なる長期国債、またはリスク資産を購入するしかない。長期金利は低下してきているとはいえ、引き下げる余地が残っている。あるいはリスク資産を購入すればリスクプレミアムは下がり、資産価格の上昇効果も見込める。

 ただ、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)などリスク資産の市場規模は小さく、購入金額も限られてくる。故に新体制下の日銀が実施する「大胆な緩和策」は、その手段の大半が長期国債の購入に向かう。


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 日銀は、現状でも93兆円と巨額の長期国債を保有している(図(1))。既に旧体制下の決定によって、13年末には約113兆円にまで拡大する見込みだ。

 だが、リスク資産に限らず、むろん長期国債にもリスクはある。日銀の保有国債の評価損益が直近で公表されている昨年9月末時点を起点に、金利が1%上昇した場合の評価損を計算してみよう。


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 週刊ダイヤモンド調査によれば、日銀の保有長期国債の平均残存期間は約3.83年(図(2))。9月末時点での長期国債保有額は102兆8593億円だから、金利が1%上昇した場合の価格下落幅は、簡易的には3兆9372億円(=102兆8593億円×3.83年×1%)となる。9月末時点の評価益は2兆0657億円なので、差し引き1兆8715億円が評価損として発生することになる(図(3))。


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基金を廃止した場合の
保有国債長期化リスク

 もっとも国債を満期保有すれば元本は確定しているため、評価損は実現しない。だが、金利上昇局面では、国債を満期保有するのも容易でない。負債側で見合いとなる超過準備(銀行が法定準備預金額を超えて保有する準備預金)を減らす必要があるからである。

 景気が回復し政策金利を上げなければならない局面では、ジャブジャブと供給された超過準備を吸収する必要がある。だからといって保有国債を売却すれば評価損が実現し、さらには引き締めが行き過ぎて金利が急騰しかねない。

 苦肉の引き締め策として、超過準備に対し日銀が支払っている金利(付利。現在0.1%)を引き上げていけば、今度は保有国債から得られる金利との間で逆ザヤが発生、日銀の財務状況は悪化する。

 日銀はそういった金利上昇リスクを被らないよう短期国債を保有してきたし、長期国債を保有する場合は日銀券発行高以内に抑える「日銀券ルール」に則ってきた。金利を払う必要のない日銀券の残高以内であれば、長期国債保有部分に逆ザヤは発生しないからだ。


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 日銀が資産買い入れ基金を設立しているのも、日銀券ルールと切り分けて残存期間の短い長期国債の購入に限定し、金利上昇リスクを極力回避する意図がある。実際、基金を通じた保有国債の平均残存期間は1.35年と極めて短期に維持されている(図(4))。

 3月7日の金融政策決定会合で白井さゆり審議委員は、資産買い入れ基金を廃止し、日銀券ルールに基づく国債買い入れと統合する案を提示した。基金を通じた国債購入を年限5年以下、あるいは10年以下と“大胆”に推進していくなら、確かに日銀券ルールと基金を切り分けた意味合いは薄れる。しかし、保有長期国債全体で見れば日銀券残高を既に突破しているだけに、将来の金利上昇に伴うバランスシート毀損リスクはさらに高まっていく。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)
http://diamond.jp/articles/print/33735
 

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01. 2013年3月29日 09:26:13 : GnRfb4ci8o

アングル:黒田日銀「期待ルート」も大胆強化か、2%「達成まで」緩和継続
2013年 03月 28日 19:36 JST

トップニュース
G7の経済回復は日米けん引、ユーロ圏利下げ必要=OECD見通し
パナソニック中期計画、2015年度に赤字事業をゼロに
長期・超長期債、新年度買いの主役は銀行勢か
キプロスの銀行、取引を制限して営業再開

[東京 28日 ロイター] 黒田東彦総裁ら新日銀執行部は、消費者物価の前年比上昇率で2%とする目標の早期達成に向け、質・量両面の金融緩和に加え、「期待ルート」も大胆に強化する可能性がある。

これまであいまいだった2%の物価目標と緩和政策との関連について、目標が「達成できるまで」緩和措置を継続するなど強いコミットメント(約束)を示すことも想定される。

黒田総裁は、これまでの会見や国会答弁などを通じ、2%の物価目標について「達成できるまで」金融緩和を続ける考えを表明しており、28日の衆院財務金融委員会でも「2%の物価安定目標を達成するというコミットメントを強く意識しながら、必要なことは何でもやる」と語った。

2%の物価目標は白川方明前総裁の下で今年1月に導入されたが、物価目標に対する金融緩和政策のコミットメントは、目標の実現を目指して、現行の実質的なゼロ金利政策と資産買い入れなどを「それぞれ必要と判断される時点まで継続する」となっており、目標と緩和政策の関連が必ずしも明確ではない。

これに対して黒田総裁の2%が「達成できるまで」との発言は、消費者物価の前年比上昇率が実績値で2%になるまで緩和策を継続する意志を示したものといえる。物価上昇に対して金融引き締めを遅らせるビハインド・ザ・カーブをつくり出すことで、期待インフレ率を引き上げ、質・量両面おける大胆な金融緩和政策の効果を最大限に引き出す狙いがありそうだ。ある政府関係者は、こうした黒田総裁のコミットメントに関する発言について「かなり強い表現」とし、事実上の緩和強化策との見方を示している。

もっとも、こうしたコミットメント強化を実現するには課題もある。政策として打ち出すには、正副総裁を含めた9人の政策委員のうち過半数の承認が必要。このうち佐藤健裕、木内登英の両審議委員は1月会合で物価目標を2%とすること自体にも「無理がある」として反対しており、政策委員の意見集約には紆余曲折が予想される。

(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 宮崎大)


関連ニュース

期待物価上昇による実質利下げ、緩和の波及経路で重要=黒田総裁 2013年3月28日
消費税増税、全部転嫁されれば物価に2%程度影響=黒田日銀総裁 2013年3月28日
日銀、国債買入一本化と無期限緩和の前倒しを検討へ 2013年3月27日
質・量ともに大胆な金融緩和の推進が必要=黒田日銀総裁 2013年3月26日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92R05L20130328?sp=true

期待インフレ率引き上げによる実質利下げで物価2%達成へ=黒田総裁
2013年 03月 28日 15:34 JST
[東京 28日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は28日午前、参院財政金融委員会に出席し、金融緩和により期待物価上昇率を引き上げれば実質金利の低下を通じて企業の設備投資意欲が刺激されるとして、期待に働きかけることの重要性を強調した。

リーマン・ショック後に日銀の金融緩和が欧米より消極的だったことが円高の一因と指摘し、日銀のマネタリーベース(資金供給量)やバランスシート全体の大きさを注視する姿勢を鮮明にした。日銀の保有国債を紙幣(銀行券)の発行量内に収める「銀行券ルール」はすでに形骸化しており、財政ファイナンス(穴埋め)懸念を払しょくする仕組みを政策委員会で検討する意向を示した。

日銀が昨年12月に国会に提出した「通貨及び金融の調節に関する報告書(半期報告)」の概要を説明した上で、質疑に応じた。

<期待物価上昇と株高など資産効果で2%達成へ>

黒田総裁は、2%の物価目標を達成するには「大胆な金融緩和継続に対する強いコミットメントが必要」、「やれることは何でもやる姿勢を示さなければ、物価安定という最大の使命を達成できない」と繰り返し、金融緩和の副作用に対する懸念をけん制した。消費者物価指数(CPI)が前年比マイナスで推移する現状、金融政策の出口を議論するのは「時期尚早」と明言。従来の日銀が出口政策の重要性に触れることで緩和効果を弱めたとの見方を示した。

金融政策によって2%の物価上昇率を実現する経路については「期待物価上昇率が上がり、実質金利が下がり、企業が手元流動性を取り崩し、株高により資産効果で企業の設備投資や消費にプラスの影響を与えるため」と説明。量的緩和拡大が人々の期待物価上昇率を引き上げる経路を強調した。

具体的な緩和手段としては、「より長期の金利などイールドカーブ(利回り曲線)全体を下げ、リスク性資産のリスクプレミアムを下げていく」とし、年限の長い国債の買い入れやリスク性資産買い入れの増額に強い意欲を示した。

外債の購入は「為替介入と受け取られるため、G7(日米欧7カ国)などの国際的合意事項からみて困難」との見解を繰り返した。一方、他に日銀が買い入れる資産がないような状況では「外債を買い入れる判断はあり得る」とも述べた。

<円高の一因、マネタリーベースの拡大不足>

リーマン・ショック後の急激な円高の一因について、「欧米と比べてマネタリーベース(資金供給量)でギャップがあった」と述べ、日銀のバランスシート拡大ペースが欧米より消極的だったことが要因の1つ、とした。

為替レートは「中期的には金融政策の違い、長期規的には購買力平価で決まる」と述べ、中央銀行のバランスシートの規模と為替レートは直接的に関係が少ないとの白川方明前日銀総裁の見方を否定した。

また「人口が減少している先進国はいろいろあるが、デフレに陥っていない」として、「人口成長率はデフレやインフレの主たる要因でない」と明言。デフレは金融現象との見解を示した。「中長期的には金融政策が大きく影響を与える」とも述べ、金融政策のみで2%の物価目標達成は可能との見方を強調した。同時に麻生太郎財務相が2%の達成が難しいと発言していることを踏まえ、「デフレ期待が浸透している日本で大変な困難を伴うのは十分承知している」と述べた。

<銀行券ルール、すでに上回っている>

2%達成を目指した国債の大量買い入れが長期金利の急上昇を招かないかとの質問に対しては、「物価目標は予想物価上昇率が上振れた場合にもアンカー(抑制)するので、長期金利を安定化させる」と反論した。

また、3%分の消費増税が実施されれば2%程度の物価上昇要因になるとの試算を示しつつ、「消費増税による一時的な物価2%上昇をもって目標達成とは見なさない」と述べた。

物価と賃金の関係については、「大まかに見れば、物価と賃金はシンクロ(同期)して動いている」と述べた。

中央銀行が国債買い入れにより財政を穴埋めする財政ファイナンスについては、「行わないのが世界の中銀で一致した考え」と強調。ただ、財政ファイナンス懸念を払しょくするため日銀が内部で定めている銀行券ルールについては「すでに上回っており、(日銀の国債保有は)今後もさらに上回る」と指摘、財政ファイナンスを防ぐための新たなルールについて政策委員会で議論していくと述べた。

(ロイターニュース 竹本能文;編集 田中志保 山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92R03K20130328?rpc=188&sp=true


消費税増税、全部転嫁されれば物価に2%程度影響=黒田日銀総裁
2013年 03月 28日 11:39 JST
[東京 28日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は28日の参院財政金融委員会で、消費税が3%ポイント引き上げられた場合、全部が転嫁されれば物価には2%程度影響が出るとの認識を示した。

消費税増税によって一時的に物価が2%上昇しても、これを物価上昇率目標達成とはみなさない、と述べた。

愛知治郎委員(自民)の質問に答えた。

また、現時点で外債購入による金融緩和は考えていない、と述べた。

大塚耕平委員(民主)の質問に答えた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92R01620130328?rpc=188

 

長期・超長期債、新年度買いの主役は銀行勢か
2013年 03月 28日 21:10 JST
[東京 28日 ロイター] 新年度の長期・超長期債の買いの主役は、生保や年金勢ではなく、都銀、地銀など銀行勢になる見通しだ。これまで銀行勢の買いの中心は中期ゾーンだったが、大量の国債償還を迎えるなか、低金利のもとで運用益をねらうためには年限の長期化しかないためだ。

来週の日銀金融政策決定会合で、より期間の長い国債を買うことが決まった場合、4月中にも超長期債利回りが1%を割り込む展開を予想する市場参加者も出てきている。

<緩和あれば金利カーブは「ぺしゃんこ」に>

日本国債の長期・超長期債が過去最低利回りを付けたのは量的緩和期の2003年6月11日。10年債利回りは0.430%、20年債利回りが0.745%、30年債利回りが0.960%と、全年限が1%を割り込むという歴史的に「異例」な状況となった。

しかし、今回、その記録を突破する可能性がマーケットでは意識され始めてきている。背景は日銀新体制に対する大胆な金融緩和への期待だ。黒田東彦日銀総裁は2%の物価上昇率目標の早期達成に向けて、イールドカーブ全体の低下を促していく考えを示している。市場では「4月初めの日銀会合で超長期/長期債の利回り低下に働きかける大胆な金融緩和が実施された場合、イールドカーブは一気に潰れ、『ぺしゃんこ』になるイメージを持っている。超長期債利回りの1%割れは十分に考えられる」(外資系証券)との声も出始めている。

現在を2003年6月当時の各年限の利回りと比較すると、5年債利回りはすでに過去最低となり、カーブ上で見ても残存期間2年程度から5年にかけての利回りは当時を下回っている。時間軸効果は当時以上に強固との見方もできる。

新年度入り後、需給面で長期・超長期ゾーンの買いの主役になるとみられているのが、都銀、地銀など銀行勢だ。これまで銀行勢は、中長期ゾーンのメーン・プレーヤーだったが、過去に持った0.8─1.5%の高クーポンで発行された5年国債が相次いで償還となる事情がある。これまでのクーポン収入水準を維持しようとすれば、中長期ゾーンの現状の利回り水準では、とても間に合わない。

そこで、カーブのフラット化が進んでいるとはいえ、利回りの絶対水準で中長期ゾーンを上回る超長期ゾーンに対して、年限の長期化で臨んでくる銀行勢が増えると見られている。「銀行勢がこれまで以上にデュレーションを延ばして、金利リスクを取る動きが長期/超長期ゾーンに見られることも想定できる」(国内金融機関)という。

一方で、これまでの超長期ゾーンの主役だった生保や年金勢の動きは鈍くなるとの予想が出ている。ある生命保険会社の運用担当者は「保険負債責任準備金に対応する債券を積んでいく流れに変わりはないが、現状の超長期ゾーンの利回り水準から判断して、あせって買うスタンスではない。資金流入そのものは生保の貯蓄分に関して落ちているため、超長期債への買い余力は以前とは違ってきていることも影響しそうだ」と話す。超長期ゾーンの利回りが1.0%を割るようなことがあれば、過去の経験則から判断して、買いを手控えるという。

また、年金勢は株高に伴うアセットアロケーションの変化に対応するためのリバランスで、超長期ゾーンを積極的に買ってきたが、みずほ証券・マーケットアナリストの濱田亘氏は「相応のリバランスが続くとは思われるが、仮に円安/株高の流れが鈍化することになれば、リバランスのフローは落ち着いてくる」と予想する。

<1割を日銀が買う予測も>

28日の円債市場で20年債利回りは一時前営業日比3.5bp低下の1.4%を付け、2003年7月以来の低水準となった。日銀の金融緩和期待に加え、キプロスなど欧州問題への懸念の強まりによるリスクオフムードも金利低下を後押ししている。

日銀の国債の買い入れペースは現在、紙幣発行量に合わせた国債買い入れ(輪番オペ)で合計月1.8兆円だが、残存10年超30年以下のオファー額は1000億円とごくわずか。資産買い取り基金は残存期間3年以下の国債が対象だ。

現在、市場では、買い取り年限の長期化があった場合、残存10年超30年以下で3000億円─3500億円程度の買い入れ規模になるとの見方が出ている。現在の月次の長期/超長期債の発行額は4兆円余りのため、1割程度を日銀が買い入れる計算になる。

一方、市場では「輪番と基金との統合に加え、現在の3区分を見直し、買い取る比率も変える可能性がある」(国内証券)との予想も出ている。

(ロイターニュース 伊藤武文 編集:伊賀大記)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92R00120130328


 


焦点:投機が造成した円安の「蜃気楼」、リアルマネーの後押しあるか
2013年 03月 28日 16:37 JST
[東京 28日 ロイター] これまでの円安相場は投機が造成した「蜃気楼」ともいえる。世界的な金融緩和で生み出された豊富な過剰流動性を背景に投機筋が円安を加速させたが、リアルマネーの動きは乏しい。

新年度入り後、日本の機関投資家が外債・外株投資を再開すれば、実体を伴う円安相場が到来する可能性もあるが、足元では外債・外株の大量処分売りに動いている。欧州問題でマーケットは神経質になっており、実需の動きが大きな焦点となってきた。

<円に「暴発注意」のレッテル>

最近の円相場は、円安方向に進む際のスピードが緩慢なのに対し、円高への揺り戻しは強烈なことが特徴だ。イタリア総選挙への懸念が広がった先月25日、円は全ての通貨に対して暴騰。わずか一昼夜のうちに、円は対ユーロで6.62円、対英ポンドで4.37円、米ドルと豪ドルに対してそれぞれ4円も急騰した。今月25日にも、キプロス懸念を背景に対ユーロで3.77円急伸し、円は「暴発注意」(米銀)のレッテルを貼られた。

東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は「カネ余りのみに依存し、実体のない円安は、些細なショックに弱く、出て行った資金が逆流しやすい」と、最近の強烈な円買い戻しの背後にある構造を説明する。投機の円安が蓄積したところへ、ショックとなるような相場急変や信用収縮が起こると、リーマンショック後のような急速な円買い戻し型の円高が生じるという。

円安はグローバルなリスクオンの潮流と共に進んできたが、「グローバルなリスクテーク嗜好の背景には過剰流動性の存在がある」(JPモルガン・チェース銀行、チーフFXストラテジストの棚瀬順哉氏)。

過剰流動性の根源は日米欧による前代未聞の金融緩和であり、実体経済に対して巨大化した金融の存在だ。キプロス問題やイタリアの政局不安など欧州問題が再び浮上するなか、過剰流動性がつくった「蜃気楼」の円安が揺らぎをみせている。

<注目される本邦投資家の新年度投資>

不安定さを増す円相場の背景には、短期筋の円売りポジションが累積していることに加え、本邦投資家の対外証券投資が円安とは逆向きのフローになっていることもあるとみられる。

財務省によると、本邦投資家は2月に外国中長期債を約2.5兆円売り越し、資金を日本に回帰させている。外国株については11月から5カ月間で約3.8兆円売り越している。

アベノミクスは海外短期筋の円売りを誘発・扇動する一方で、本邦投資家に不採算ポジションを解消する好機を与えた。昨年からの円安の潮流で「日本中の投資家から『やれやれ売り』が出た」(機関投資家)という。

4月の新年度からの投資家動向について、SMBC日興証券の為替ストラテジスト、野地慎氏は「欧米とも金利が低下している中、現状では外貨建て資産を高値掴みするリスクがある。JGB20年債の利回りがまだ1.5%程度ある環境では、外に資金をどんどん振り向けていくことはしないだろう」と予想する。また、外債投資をする場合にもヘッジ付きが想定され、円相場への影響は限定されるという。

一方で、「年度末に向けたポートフォリオのリバランスが終わり、アロケーションを見直して、外もの(外債・外株)を買っていこうという動きが出てもおかしくない」(前出の機関投資家)との見方も出ている。リアルマネーの動向が、揺れている投機筋のマインドを左右する可能性もあり、日本の機関投資家の新年度の投資姿勢は円相場を占ううえでも大きな注目点となっている。

<依然大きな投機筋のポジション>

投機筋のポジションは依然大きい。モデル系ファンドの動向を移すシカゴのIMM通貨先物市場では、円のネット売り持ち高が7万9993枚と3カ月ぶりの高水準となった前週の9万3763枚から縮小したが、依然高止まり。主要6通貨に対するドルの買い越し額は257億5700万ドルで、昨年7月17日以来の高水準となっている。

著名投資家のジョージ・ソロス氏は、円の下落を見込んだ取引を通じて、昨年11月以降2月半ばまでに、およそ10億ドルの利益を得たとされる。

ソロス氏のほかにも、デビッド・アインホーン氏率いるグリーンライト・キャピタル(GLRE.O)やダニエル・ローブ氏のサード・ポイント、カイル・バス氏のヘイマン・キャピタル・マネジメントなども円の下落に賭ける取引で多額の利益を上げたとされる。

ただ、ヘッジファンドの業績については会計ルールに基づいた開示義務が存在しないため、市場では「宣言主義で言ったもの勝ちというところがある。ソロス氏にしても、2月下旬以降の円の急騰時までポジションを保有していたとすれば、利益が大幅に減っているはず」(外銀)との指摘も出ている。

(ロイターニュース 森 佳子 編集:伊賀大記)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92R04I20130328?sp=true



コラム:日経平均2万円超えと長期繁栄の予兆=武者陵司氏
2013年 03月 28日 15:24 JST
武者陵司 武者リサーチ代表(2013年3月28日)

日本株はどこまで上がるか。日経平均株価がまだ9000円台で推移していた昨年11月後半、筆者は1万5000―1万8000円へのトレンド転換も十分に期待できると指摘した。現実は今まさにその方向に進んでいる。それどころか、数年内に2万円、いや2万2000円を目指す展開すら可能性として見えてきたと考えている。

日本株に魔法のごとき推進力を与えているのは、他でもないアベノミクスである。リフレ政策の推進によって長期にわたり日本経済を苦しめてきた円高デフレからの脱却を果たすと公約し、多くの投資家を悲観論の呪縛から解き放った安倍晋三政権の功績は、現時点で判断する限り、大きい。

日本株の異常な割安状態の是正が引き続き進み、現在1.3倍の東証1部平均PBR(株価純資産倍率)が世界平均の1.9倍まで上昇すると考えれば、日経平均2万円は決して夢物語ではない。すでに株価は野田佳彦(当時)首相が解散総選挙実施を表明した11月14日以降の4カ月あまりで約40%上昇し、3月27日終値ベースで1万2493円79銭に達している。

こうした状況下、「バブルが始まった」「財政破綻リスクが高まる」「制御不能のインフレが起こる」といった批判論が増殖しているが、いずれも端(はな)から「アベノミクスは失敗する」と決めつけた結論ありきの議論ばかりだ。

もちろん、リフレ政策が失敗する可能性はゼロだとは思わない。だが、成功しないと決めつけるのは間違いだ。むしろ、筆者は後述するような理由から成功する可能性のほうがはるかに高いと見ている。少なくとも現状の株高の流れをバブルと決めつけるのは、早計である。

<説得力を失った量的緩和批判>

最大の根拠は、米国だ。ご存知のとおり、米国の株価は2009年3月に付けたリーマンショック後の底値から2倍の水準に上昇。ダウ平均株価は史上最高値の更新を続けている。皮肉屋による「異常な量的金融緩和が起こしたバブル」という批判は、海の向こうでは、実体経済と企業業績の顕著な回復により、すでに説得力を失っている。

そもそも、きっかけを与えたのが金融緩和だとしても、健全な成長路線に復することができれば、生産性の高まりによってインフレ抑制下での利益増加が可能となり、金利の急騰、物価の高騰、資産のバブル化は起きるべくもない。

仮に金利が上昇したとしても、それは民間の利子収入増も意味する。もちろん、増加した分が消費に回るかどうかは将来への期待が良くなるか次第だが、言い換えれば、だからこそ、期待に働きかけることは間違っていないと言える。

また、異常な割安状態からの是正という観点からだけでも、日本株の上昇は正当化できる。今回の上げ相場が始まる11月半ば以前、日本株はまさしく一人負けの状態にあった。たとえば、リーマンショック後の底値からの株価の回復度合いは米国株の2倍に対して、日本株は1割と危機の震源地をはるかに下回る低迷ぶりだった。

ちなみに、不動産も同じ状況だ。日米ユーロ圏の不動産のフェアバリュー(適正価格)と時価の推移を対賃料比で見ると、米国とユーロ圏では過去20年間、リーマンショック後を除いて双方の価格がほぼ連動しているのに対して、日本はフェアバリューが横ばいなのに時価が一貫して低下し、両者の乖離(かいり)が大きく広がっている。つまり、株式だけでなく日本の不動産も異常な割安状態に放置されてきたのである。

<500兆円以上の資産効果>

こうした状況下、安倍政権が掲げる世界標準のリフレ政策に賛同する日銀新体制が発足したことは、日本にとって歓迎すべきことだ。欧米では危機という異常事態からの脱却を目指して大胆な量的金融緩和が展開され、投資家のアニマルスピリッツが回復し、市場のリスクテイク姿勢が復活した。遅ればせながら今、日銀がその潮流に合流しようとしている。

黒田日銀の量的緩和の新機軸となるであろうリスク資産の大量購入は、市場にポジティブサプライズを与え続けるに違いない。まず、すでに低水準にある長期金利が現在の0.5%台から0.4%台まで低下する可能性がある。長期金利の低下は日本株や不動産の割安感を一段と際立させ、両相場を押し上げることになろう。

控えめに見積もっても、今後数年間で、年間の国内総生産(GDP)と同規模の500兆円以上の資産効果(株と不動産のキャピタルゲイン)を日本にもたらす可能性がある。資産価格上昇を起点とする好循環は、すさまじい威力を発揮するだろう。リーマンショック後の資産価格下落を起点とする悪循環の逆バージョンと考えればよい。安倍政権と黒田日銀の使命であるデフレ脱却は、そうしたムード大転換を伴って初めて可能となる。その意味でも、黒田日銀には是非とも悲観の呪縛を木っ端微塵(こっぱみじん)に砕いてもらいたいものだ。

<米国経済に灯る長期繁栄の予兆>

最後に付け加えれば、今回の株価の上昇局面、特にダウ平均株価の史上最高値更新は、新たな長期繁栄の時代の始まりと捉えることも可能だと考えている。

過去80年間で長期低迷の後に最高値を更新したのは、今回を除けば4回あるが、そのうち持続性のある株高、長期繁栄につながったのは1954年と82年の2回だけだ。残りの2回(1972年と2006年)は、いうなれば「まやかしの高値波乱」だった。

筆者は実は、今回の高値更新は3度目の長期繁栄の予兆の可能性が高いと見ている。というのも、過去2回の本物の株高をもたらしたのと同じ3つの条件が整いつつあるからだ。第1に地政学レジームの変化、第2に技術革新と生産性革命、第3に通貨・信用システム(あるいは需要創造メカニズム)の転換だ。

地政学レジームの変化については、過去においては第二次世界大戦に前後しての西側世界における米国覇権の確立、その後の米国の価値観と制度の世界的普及(すなわち世界制覇)があったが、今回は、大げさに言えば、米国を中心とする世界共和国(グローバル・コモンウェルス)への転換である。

民主主義、人権擁護、市場経済、資本主義、インターネット環境への対応、世界各国の夜警国家化などを骨格とする世界共和国の実現によって、米国は国益を貫徹しようとしているように見受けられる。実際、オバマ大統領のもとで、国際世論に極端に配慮した政策にシフトしつつある。核廃絶の呼びかけ、自制的リビア攻撃、イスラエルに対する67年以降の占領地返還要求などはその最たる例だ。

2点目の技術革新と生産性革命については、今後、インターネット革命のさらなる深化、シェールガスを中心とする新エネルギー革命が展望される。また、グローバリゼーションの進展により引き続き着実な生産性の向上が期待できる。過去2回の長期繁栄をもたらした、電気・自動車・石油化学革命や情報化革命に匹敵する大きなインパクトを与えるだろう。

最後の3点目については、40年代から60年代にかけての繁栄をもたらした管理通貨制度の導入、80年代以降の世界経済拡大に貢献したペーパードルの垂れ流しを経て、現在は次なる通貨・信用システムないしは需要創造メカニズムの確立が模索されている。

その姿は他の2条件に比べるとまだ不明瞭だが、資産市場に中立を装わず、リスクテイカーをサポートする政策にいち早く転換した米連邦準備理事会(FRB)の近年の動きは、そのヒントを与えているのではないか。新しいシステムやメカニズムが確立すれば、経済・雇用や株式は再び大きく上昇する時代に入る可能性が高い。

このように考えると、現在は停滞からの出口に差し掛かっていると考えたほうがよさそうだ。悲観の呪縛に囚われ、ブラックスワンに備えるばかりでは、長期繁栄の予兆を見逃すことになるだろう。


http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE92R03720130328?sp=true


 


 

 


第4四半期の米GDP確報値、11年第1四半期以来の低成長
2013年 03月 28日 23:46 JST
[ワシントン 28日 ロイター] 米商務省が28日発表した第4・四半期の国内総生産(GDP)確報値は、年率換算で前期比0.4%増と、2011年第1・四半期以来の小幅な伸びにとどまった。

市場予想の0.5%増もわずかに下回った。

ただ、民間投資とサービス輸出が押し上げ要因となり、改定値の0.1%増からは上方修正された。

在庫投資の鈍化と国防費の落ち込みが全体を押し下げた。ただこれらの要因は第1・四半期には反転すると見込まれている。

個人消費支出は相対的に底堅く、1.8%増加。ただ前回発表からは下方修正された。

家計支出はGDP全体のおよそ70%を占めるため、消費支出が勢いを欠いている状況は、財政引き締めが始まる第1・四半期も景気のすう勢が非常に緩やかなことを示唆している。

在庫はGDPを1.52%ポイント押し下げた。押し下げ幅は前回の見込みからは縮小した。

国防費は22.1%減少し、1.28%ポイントの押し下げ要因となった。

民間設備投資は13.2%増と、前回発表から引き上げられ、明るい材料を提供した。主に企業による建設支出の増加がけん引した。

輸入は4.2%減少。第3・四半期の0.6%減から落ち込み幅が拡大し、GDP全体の押し上げに寄与した。

またサービス輸出が従来予想を上回る伸びとなったことも追い風となった。

輸出全体でも、従来予想ほどは落ち込まなかった。輸出は欧州のリセッション(景気後退)や天候関連による港湾施設の混乱の打撃を受けている。

変動の激しい在庫変動を除く最終需要は1.9%増で、市場予想と一致した。

ユーロ反発、キプロス懸念・伊政局混迷で力強さ欠く=NY市場
キプロスの銀行は営業再開初日大きな混乱なく、資本規制1カ月継続
ロンドン株式市場は反発、投資家心理改善で過去2度目の10カ月連続高
スロベニア、支援要請の必要ない─中銀総裁=通信社

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92R00I20130328?sp=true

G7の経済回復は日米けん引、ユーロ圏利下げ必要=OECD見通し
2013年 03月 28日 23:29 JST
[パリ 28日 ロイター] 経済協力開発機構(OECD)は28日、2013年上期の主要7カ国(G7)経済見通しを発表し、日米が先進国の回復をけん引するとの見方を示した。一方、ユーロ圏景気はなおぜい弱で、回復定着を確実にするために利下げが必要と指摘した。

G7の景気見通しがようやく強まったとしたが、政府、中銀が景気てこ入れに向け導入した異例の措置を解除するのは時期尚早としている。

G7全体の成長率は第1・四半期が年率2.4%に加速、第2・四半期には1.8%に減速すると見込まれている。

OECDのチーフエコノミスト、ピエール・カルロ・パドアン氏はロイターに対し、「米国で成長が加速していることに加え、日本でも新たな措置により景気が一段と回復しており、ドイツも勢いを増している」とし、先行きをやや楽観していると述べた。

米成長率は、第1・四半期が3.5%、第2・四半期が2.0%、日本は第1・四半期が3.2%、第2・四半期が2.2%と見込まれている。

ただユーロ圏では、域内最大の経済国ドイツとその他の国の成長格差が拡大している。

ドイツの成長率は、昨年第4・四半期のマイナス成長から第1・四半期に2.3%、第2・四半期には2.6%に加速すると一方、フランスは第2・四半期に0.5%のプラス成長に回帰するまでリセッション(景気後退)を脱却できないと予想されている。

イタリアも長期の景気後退から抜け出せない見通しだ。

パドアン氏は、インフレが低水準にあるなか、欧州中央銀行(ECB)は利下げが正当化されるとし、将来の金利政策に関する明確な指針を示すことが必要な可能性があるとしている。

OECDは、日銀の積極的な金融緩和策を歓迎する一方、米国については緩和策の必要性が低下し始めていると指摘した。米国の追加量的緩和(QE)は「利点が低下する一方、コストは上昇している可能性がある」(パドアン氏)としている。

OECDは「利回りを求める大量の流動性により、多くの資産市場でリスク志向が高まっている」とし、大半の国で依然回復の足場が固まっていない中で、中銀の流動性供給が過度なリスクテイクを促している可能性があるとして警告した。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92R00A20130328?sp=true



 
2013年03月27日
ユーロ/ドルの下落基調は一段と強まるか?
本欄の2013年2月27日更新分では「すでにユーロ/ドルのリバウンドは終了したのか?」と題して、ユーロ/ドルの相場分析を試みました。当時(1ヶ月前)は、下の図にも見るように、昨年7月安値とその後の安値を結ぶサポートラインを下抜け、さらに一目均衡表(日足)の「雲」上限をも下抜けた状態で「目先は『雲』下限を下抜けるかどうかが焦点」と述べています。果たして、その後の展開は...。
2月下旬の数日間、一目均衡表(日足)の「雲」下限が意識され、同水準付近で推移していたユーロ/ドルは、3月に入ってその「雲」下限を下抜け、弱気ムードが一段と強まることになりました。見えにくくなるので一目均衡表(日足)の基準線と転換線は下の図に描画していませんが、ずっと以前の段階で転換線は基準線を下抜け、後に遅行線が日々線を下抜けていましたから、この「雲」下抜けで「三役逆転」という相当に弱気のパターンが示現してしまったことになります。
その後は、重要な心理的節目である1.3000ドルを試すような展開が続き、同時に遅行線が「雲」下限付近でのもみ合いを続けましたが、この遅行線が「雲」下限を下抜けたことで、ついに1.3000ドルをも明確に下抜けることとなり、次は下方に位置する200日移動平均線(200日線)を試すような展開へ。そして、とうとう一昨日の3月25日には終値ベースで200日線を割り込み、昨日(26日)も200日線の下方での推移となりました。

実のところ、この200日線が位置しているのは昨年7月安値から今年2月高値までの上げに対する半値(50%)押しの水準でもあり、同水準を下抜けたからには次に61.8%押しの水準=1.2679ドルが意識されやすくなるものと見られます。さらに、同水準より少し下方には昨年11月安値=1.2661ドルがあり、仮に同水準をも下抜けるとなると、そこからはある程度、まとまった下げになる可能性が高まると思われます。
2月下旬は"イタリア・ショック"、そして今回は"キプロス・ショック"とでも言いましょうか、どちらも依然として先行きは不透明なままです。キプロスに関しては、同国がEU加盟国であると同時にロシアの「出島」的な存在でもあり、そのこと以外にも極めて複雑な歴史的・構造的問題を抱えている国であるということを踏まえたうえで、そのような国もユーロ参加国の一員であるということは、いかにユーロの統一や安定が難しいことであり、程遠いものであるかということをあらためて思い知らされる気がします。
イタリアの政局混乱は、同国の経済的地盤を一段と沈下させることにつながりますし、GDPの6割近くにも相当する巨額の金融支援を受けるキプロスにしても、その経済の立て直しには気が遠くなるほどの時間がかかることでしょう。もちろん、ギリシャにしてもスペインにしても、いまだ状況は改善の方向に向かっておらず、総じてユーロの価値は今後も低減して行かざるを得ないものと見られます。その一方で、米国経済が徐々に回復の足取りを強めて行くとするならば、やはり少し長い目で見て1ユーロ=1ドル(パリティ)に向かうと考えるのが自然であると思われてなりません。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役 
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2013/03/27.html

 


02. 2013年3月29日 09:33:17 : GnRfb4ci8o

「若手もシニアもやる気減退」の恐怖 幸せな定年延長なんてあるの?

2013年3月29日(金)  白壁 達久

 高齢者雇用安定法の改正により、今後、希望する全社員を65歳まで雇わなければいけなくなる。日経ビジネスでは「定年延長パニック」という特集を3月4日号で掲載し、多大な反響を得た。

 特集を担当して驚いたのは、年齢層を超えて関心が高かったことだ。該当する世代や、今後60歳を迎えるシニア層だけでなく、ミドルや若手からの反応も強かった。

 理由は2つあるようだ。まずは単純に、いずれ訪れる自分の定年まで、どう働いていくのかという将来に対するもの。もう1つは、定年延長によってシニア層とどう働いていけばいいのかという現在に対する関心だろう。

 「元上司が残ると働きづらい」「人生設計をどうすればよいか」「若手が割を食って給料が下がるのではないか」――。いろいろな不安が脳裏によぎる。

 定年延長に対して、企業とビジネスパーソンはそれぞれどのように対応していけばいいのか。専門家に聞いた。まずは個人。人材開発などを手掛ける日本マンパワーで教育研修・人材事業を担当する片山繁載取締役は、「キャリアの棚卸と、ゴールに向かうまでのプランニングが不可欠」と語る。

 社会人として身につけたスキルや経験が、どのように会社(あるいは社会)の中で役立っていくのかをきちんと見極める必要がある。企業の人事担当者に話を聞くと、「それなりに考えているつもりのようだが、漠然としたものが多い」と口をそろえる。

 片山氏は言う。「多くのシニア社員は、管理者として60歳を迎えてきた。だが、そこから65歳までの5年間を『元管理職』という肩書きだけで企業から必要される人材でい続けられるかと言うと、そうではない。過去の栄光を振りかざして現場に戻っても、今ではそのやり方は通じない場合がほとんど。自身の経験が役立たないのであれば、会社から必要とされるスキルを身につけることを考えなければいけない」

 管理者を長く務めたシニア社員は、現場から離れて久しい。そのため、専門職としての知識が乏しいことが少なくない。再雇用制度で継続雇用される場合、これまで自身が取り組んできた仕事とは異なる分野の仕事を割り振られることもある。パソコンを使った事務作業に従事するのであれば、それなりにパソコンを使いこなす能力が求められる。

 「50歳や55歳といった節目の社員を対象に、キャリアビジョンやライフプランを話し合う機会があるならば、そこでどのような未来が待ち受けているのかをまずは聞く。そして、どのようなスキルが必要なのかを想定し、キャリア習得に向けた行動計画表を作って実践すべきだ」(片山氏)

多面的な制度拡充が不可欠

 企業としては、どのような対応が必要なのか。

 コンサルティング会社のアクセンチュアで人材・組織管理を担当する作佐部孝哉シニア・マネジャーは「企業が早期独立型か長期雇用型か、どちらのスタンスなのかを明確に打ち出すべきだ」と語る。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のように、早期に選抜した社員にエリート教育を施していくスタイルをとるのか。もしくは、多くの日本企業のように全員底上げ型を選ぶのか。経済が右肩上がりの状態であれば、全員底上げ型でも耐えられた。だが、厳しさを増すグローバル競争で海外の競合に勝つためには、その余裕などないはずだ。

 作佐部氏はさらに「シニア層と若手のそれぞれの士気低下を防ぐ手立てを考える必要がある」と付け加える。

 気をつけなければいけないのは、「シニア社員だけ」「若手だけ」に向けた対策を取らないことだ。シニア社員の士気向上を念頭に置いた制度を作れば、若手からは不満の声が漏れる。逆も然りで、制度導入後に再度の変更を余儀なくされてしまう。シニア社員向けの策と同時に、若手への策も考える。60歳以後も働ける環境を作りつつ、早めに退職できる制度を整えるなど、多面的な制度の構築が求められる。

シニア向けに社内FA制度

 それを実践する企業の1つが、オリックスだ。同社は来年4月から定年そのものを65歳まで延長する予定。定年延長で懸念されるのが、シニア社員の滞留だ。若手やミドルと異なり、目標意識や行動力に乏しい社員が「ぶら下がって」しまいかねない。ぶら下がり社員を防ぐとともに、シニア社員の活性化に向けて、オリックスは昨夏から50代以上の社員向けにFA(フリーエージェント)制度も実施している。

 「本体の部長から、子会社の担当部長となれば『降格』と捉える人もいるだろう。だが、管理職よりも現場で新しい事業を育てたいとの思いから、応募した」

 そう笑顔で話すのは、オリックスの子会社であるオリックス環境の川原修司氏だ。同社は1998年にオリックスグループの環境事業として設立された。川原氏は、本体で管理職として出世街道を歩んでいたが、昨夏にFA制度を活用してオリックス環境へ出向した。理由は「管理系の受け身の仕事だったので、主体的に動ける仕事がしたかった」からだという。

 社内FA制度を若手向けに導入する企業は多いが、シニア社員向けに展開する企業は珍しい。オリックス人事部の安部歩副部長はその理由を「自身のキャリアに限界を感じることなく、シニア層でも新たなことに挑戦できる場を作りたかった」と語る。

 社歴が長くなると、自分の進路の選択肢は限られてくる。そうなると、前向きに仕事に取り組みづらくなってしまう。生産性が下がり、結果的に企業も個人もパフォーマンスの質が低下してしまう。

 新しい仕事に挑戦したい、あるいは今の職場では満足のいくパフォーマンスを出せていない社員に対して、社内やグループ会社の中で自分が輝ける場所を見つけ出してもらう。それがシニア社員向けにFA制度を導入した背景だ。

 65歳まで定年を延長するならば、50歳から15年の期間がある。その間、決められたポストや仕事をこなすだけでは、本人の士気は上がりにくく、スキルも磨かれない。そして、使えない社員が増えてぶら下がられてしまうのが会社にとって一番の負担となってしまう。

 「会社が社員のキャリアを一方的に決めるのには限界がある。定年延長をするならば、それに合わせて自身のキャリアを磨く仕組みを、会社は用意すべきだ」(安部副部長)

 50歳以上の社員のFA制度は昨年に2回実施し、シニア社員に対してグループ全体で35のポジションから募集がかかった。80人が応募し、20人が異動したという。今年は100人近い異動を見込んでいる。

 「今は担当部長だが、伸びしろのあるこの事業を磨き、いずれは自分の部にまで成長させたい」と、川原氏は目を輝かせる。

 定年延長制度により、オリックスは従来の定年再雇用制度に比べて人件費は1人当たり1.4倍に増える見込み。年間2億円の人件費増加を予想する。これをカバーするのは、若手ではなくシニア社員自身の生産性向上とオリックスは位置付ける。シニア社員の人材流動活性化で、コストではない利益を生み出す源泉への変換を促す。

 定年延長は企業にもビジネスパーソンにもそれぞれに少なからず影響を与える。この難題に対して「負担を極力減らしたい」と考えるか、「士気高く働ける環境を作るきっかけにする」と考えるか。場当たり的な対応では、その都度問題が噴出して制度の改正を余儀なくされ、企業の競争力もそぎかねない。


白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

 


【【後編】】 2013年3月29日 藤野英人,山田真哉
お金を儲けるのは「悪」なのに、貯めるのは美徳。
へそくり大好きで消費をしない、日本人の価値観
160万部を突破した『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』など多くの著書がある公認会計士の山田真哉氏と、独立系投資運用会社のレオス・キャピタルワークスで最高投資責任者(CIO)を務め、伸びる会社とダメな会社の見分け方を指南したベストセラー『スリッパの法則』で知られるファンドマネジャーの藤野英人氏。独自の視点を持つ2人が、日本人の「お金」観について語ります。「日本人は、儲けることは悪だと思っているのに、お金を貯め込むことが大好き」……その理由は本文で!

※今回の記事はジセダイ(星海社)のページでも読むことができます。

お金を儲けるのは「悪」なのに
貯め込むことが大好きな日本人

藤野 日本人には「豊かになることは汚れることだ」「お金=悪」といった根強い価値観がありますが、一方で、実はみんなお金が大好きなんです。日本の個人金融資産は総額1400兆円と言われますが、このうち半分以上は現金と預金が占めています。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどと比べると、投資されているお金の割合が非常に低い。つまり、日本人は自分の懐にお金を貯め込むのが好きだということ。実際、「お金を貯めるのは良いことだ」と美化されていますよね。


山田真哉(やまだ・しんや) 一般財団法人芸能文化会計財団理事長・公認会計士・税理士。1976年神戸市生まれ、大阪大学文学部卒。著書に160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)、シリーズ100万部でテレビドラマ化もされた『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫ほか)、『世界一やさしい会計の本です』(日本実業出版社)など。年間25回ほどの講演会を8年間続け、延べ4万人を動員している。
Twitterアカウント:twitter@kaikeishi1
山田 確かに、日本ではへそくりをしたりしてお金を隠し持つことが自慢になりますね。ドラマで時代劇を見ていても、「実は、ここに貯めておいたお金が30両ある。これで馬を買いなさい」というのが美談になる。お金を毛嫌いする半面、お金を隠して貯めておくことを美徳とするというのは、よく考えてみると不思議な文化です。

藤野 僕は、日本人は社会に対する信頼が薄いんだと思っています。企業に対しても、仕事上のお客様に対してもリスペクトする気持ちがなくて、「会社も客もお金をくれるから我慢しているけれど、うるさいことばかり言う」「日々を耐え忍び、頑張って生きている対価としてお金をもらっている」「お金を貯めて自衛しなくてはならない」「自分は被害者でかわいそうな存在」といった考えがはびこっているように感じるんです。

山田 お金が大好きだけれど、社会を信用してないから投資はしない。我慢して頑張って貯め込むから、へそくりは尊い、ということになるわけですね。

藤野 日本の金融教育の問題は根が深いと思います。それは、根本に「勤労嫌い」があるからです。働くことが楽しそうに見えないし、働いている人が素敵に思えないから、会社が素敵だと感じない。

 私は明治大学で講義をしているので学生と接する機会が多いんですが、彼らと話すと、社会人になることに対してネガティブなんですよ。若い人の間に、「会社勤めをするというのは、身も心も捧げて生血も与えて、引き換えにお金をもらうことだ」という勤労観が広がっていると感じます。
彼らにとって、労働とはストレスと時間をお金に替えることであり、会社とは「儲けるためには何でもする」「人権を蹂躙することさえある」ところというイメージでしょう。

 でも仕事とは本来、クリエイティビティを発揮し、社会とコミュニケーションし、価値を提供したことへの評価としてリターンをもらうものですよね。それを実感できないと、会社が価値を創造し、それが株価につながるということに対してもポジティブになれない。「株式投資は会社を応援することだ」と説明されても、投資が良いことだと思えない人が多いのは、結局のところ、みんな会社が嫌いだからなんです。

入社して最初に教えられたのが
「歯車の一つになりなさい」でした(山田)

山田 僕が新卒で入った会社で最初に教えられたのは、「歯車の一つになりなさい」ということでした。部長が、「社長も社員も歯車。みんなで歯車を回しましょう」と言っていたんです。これは「みんな平等だよ」というメッセージだったのだと思いますし、当時はそんなにネガティブにとらえてはいませんでしたが、歯車というのはやはり夢がない。「どこまで頑張っても自分は歯車なのか」という気がしてしまいます。本当は、会社の中でもクリエイティブな仕事はできるはずなのに……。


藤野英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)1966年、富山県生まれ。1990年、早稲田大学卒業後、国内外の運用会社で活躍。特に中小型株および成長株の運用経験が長く、23年で延べ5000社、5500人以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。2003年に独立し、現会社を創業、成長する日本株を組み入れる「ひふみ投信」を運用し、ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。この「ひふみ投信」はR&Iが選定するファンド大賞2012の「最優秀ファンド賞」を受賞した。著書に『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金よりも大切にしていること』(星海社新書)ほか多数。明治大学講師、東証アカデミーフェローも務める。
ひふみ投信:http://www.rheos.jp/ Twitterアカウント:twitter@fu4

藤野 僕は大学の講義に、いろいろな企業経営者を呼んで学生の前で若い頃の話をしてもらっているのですが、彼らの話を聞いていると、上司の言うことを粛々と聞いていた“いい子”が一人もいない。

 サラリーマンで出世した人は、上司と戦ったとかストをやったとか、どこかで会社に刃向かってきたという人が多いんですよね。学生にしてみれば、これは結構ショックな話でしょう。彼らは、社会人になって社長になるような人は「上司の言うことを素直に聞くタイプ」だとイメージしているのに、実は自分の考えを突き詰める人こそ社長になっていることに気づくわけです。

山田 学校の世界では、生徒会長になるのは“いい子”ですからね。会社とは絶対的な違いがあるのに、学生時代の延長で企業社会をイメージしていると、現実とズレが生じてしまう。

藤野 学生時代と社会人とで大きく違うのは、初めて「お客様」という第三者が出てくることです。学生時代はお客様がいなくて、閉じた世界の中、試験の結果だけで評価されます。ところが社会に出ると、お客様視点、第三者視点で評価を受けることになるわけです。その劇的な違いを知らないまま卒業していく学生が非常に多いと思います。

山田 その「第三者視点による評価」を数値化したものがお金なんですよね。学校や塾でならお金のことに触れずにすみますが、社会人になったらお金の話から逃れることはできません。

藤野 社会ではテストの点数を取れる“いい子”がお金持ちになれるわけではありませんからね。評価の軸がいきなり変わって、高得点を取った人ではなく「付加価値を生み出した人」「儲けた人」が偉いということになる。

 そうすると、“いい子”はお金そのものを否定したくなるわけです。でも、お金は「自分が生み出した付加価値」を示すもの。ということは、お金を見つめることは自分を見つめることだとも言える。だからこそ、お金と冷静に向き合い、自分の生み出した価値をどう消費するか、何に投資するかを真面目に考えることも非常に重要だと思うんです。

みんなのお金の使い方で
社会が変わる!

山田 「みんながお金をどう使うかによって社会が変わっていく」ということは、もっと意識されたほうがいいですね。たとえばネットの世界ではよく「ブラック企業批判」が起きますが、ブラック企業がなくならないのは、「安いから」といった理由で消費者が安易に商品やサービスを利用し続けるからだと言うこともできます。ブラック企業をなくしたいなら、その会社の商品やサービスを利用しなければいい。

 「消費が社会を動かす」というのは非常に現実的な話で、声高に何かを言うよりも、消費や投資こそ社会を変え得るのだと思います。

藤野 株式投資を通じて良いと思う会社を応援することだって、社会を変える手段の1つですからね。

山田 しかし、「投資」については「自分には関係ない特別な話」と思ってしまう方が多い。これは「働いてお金をもらい、消費する」というのは「上」からもらったお金を「下」に流すイメージなのに対して、「株や投資信託を買い、それを売る」というのはいわば「水平的なお金の流れ」だからではないかと思います。

 みんな、投資の「水平的なお金の流れ」に慣れていないんじゃないでしょうか。僕は新刊『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』で投資の話をほかの話と明確に分けて書いたんですが、これは一般の方には投資の話はどうしてもつかみにくいだろうと思ったからなんです。

投資が広まらないのは
投げるという言葉が良くない!

藤野 それで言うと、たぶん「投資」という言葉が良くないんですよね。「投げる」というのは手元からなくなってしまった感じがしますから。そもそも日本人は他人も社会も信用していないわけで、お金を「手元から離して」誰かに委ねるということに不安を感じるのでしょう。


山田 実際のところ、現金や預金で株や投信を買っても家計のバランスシート上は資産の中身が入れ替わっているだけで、手元からなくなってしまうわけじゃないんですよね。それなのに「投げる」というのは、まるで博打を打つようなイメージです。

藤野 でも、投資ってそういうものじゃない。山田さんがおっしゃるとおり、株や投信は現金や預金と同様、「ちゃんと手元にある」ものです。それに、博打のような「食うか食われるか」という世界ではなく、企業が発展すればその会社の株に投資したみんなが豊かになれます。

 「投資」という言葉についてさら言えば、ほとんどの人は「投資=お金でお金を儲けること」だと思っているでしょう?でも、僕は「投資=エネルギーを投入し、未来からのお返しをいただくこと」だと考えているんです。ここでいうエネルギーとは、情熱や行動、時間、知恵、お金、体力、運などのこと。これらのエネルギーを投入すると、未来から物やサービス、他者からの感謝、自分の成長、経験、お金、仲間などが帰ってくる。

 こうして「投資」を高い視点でとらえれば、消費をすることも、選挙で一票を入れることも、会社を選んでそこで働くことも、会社を選んでそこの株を買うことも、すべて「投資」と言えます。

 そして僕は、あらゆる投資のたった一つの目的は「世の中を良くして明るい未来をつくること」だと思っています。人は、何に投資するかによって、社会とどう向き合うかを問われているんです。投資の意味をとらえ直せば、「お金というエネルギーを投入し、未来からお金というお返しをいただくこと」が前向きな行動だと腹に落ちるのではないでしょうか。

山田 「投資」の本当の意味を教えてもらいました。今回はありがとうございました。


取材・文/千葉はるか


http://diamond.jp/ud/bkseminar/5135a4456a8d1e1580000002

http://diamond.jp/articles/print/33837


BRICSの協力の限界に要注意
開発銀行は本当にできるのか?
2013年03月29日(Fri) Financial Times
(2013年3月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 別荘を建てるために集まったが、いくらお金をかけるか、どこに建てるか、その代金を誰が支払うかで合意できない5人の友人グループを想像してみてほしい。

 大雑把に言ってそれが、BRICSの年次サミット(首脳会議)を終えたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の指導者の立場だ。

サミットで謳われた開発銀行創設計画

 彼らは全員、「BRICS開発銀行」が名案だと思っている。いまだに先進国が優位を占める国際通貨基金(IMF)や世界銀行から独立して発展途上国が管理する、発展途上国のための基金活用経路だ。

 彼らは27日、ダーバンサミットの閉幕にあたっての声明で、この考えを「実現可能かつ実行可能」と呼び、「インフラへの資金供給で効果を上げるだけの多額かつ十分な」資本を持った銀行を設立することで合意したと述べた。

 これによって、BRICS開発銀行が最初に提案された昨年のニューデリーでの会議から少しだけ状況は前進したが、大きな前進とは言えない。ロシアのアントン・シルアノフ財務相は正式な首脳会議に先立つ財務相会合の後、「前向きな動きはあるが、銀行の創設に関する決定はない」と述べている。

 5カ国の政府高官は、銀行に500億ドルの資本を拠出することについて議論した。だが、各国が公平に資金を負担するのか、あるいは拠出金は各国の国内総生産(GDP)の大きな違いを反映すべきなのかに関する合意はなかった。中国の経済規模は、ロシアやインドの4倍、南アフリカの約20倍に上る。

 問題は、どの国が資金を負担できる、できないということだけではない。どの国が銀行に職員を派遣するのか、どこに資金を貸し出すのか、どの国の企業が銀行の気前良さから恩恵を受けるのかという問題でもある。

本部はどこに置くのか?

 同じくらい議論を引き起こすのは、本部をどこに置くかという問題だろう。この点については他の多国間組織が証言してくれるはずだ。実際、英国が決して最大の拠出国でないにもかかわらず、欧州復興開発銀行(EBRD)がロンドンに本部を置くまでは、多くの駆け引きを要した。

 中国は、BRICSの中で圧倒的な力を持つ国として、間違いなく北京に銀行を置きたいと思っている。


ロンドンが妥協点と見る向きもあるが・・・〔AFPBB News〕

 南アフリカは、開発銀行は――開発基金を最も必要とする大陸として――アフリカに焦点を合わせるべきだと主張している。これはヨハネスブルクが好ましいという思いを暗示しているのかもしれない。

 一部のBRICS観測筋は、ロンドンがまずまずの妥協点になるかもしれないと述べている。ロンドンは、どの国の縄張りでもなく、時差や交通の便という点でまずまず良い位置にある都市だ。

 だが、ロンドンにBRICS開発銀行を置くことになれば、「旧世界」に対する新興国の対抗勢力としてBRICSを推進するという目的が損なわれる可能性がある。

BRICSが直面する3つの問題

 BRICSの指導者たちがこのような単なる事務処理作業でもっと良い結果を出せないとすれば、彼らが対処したいと思っている大きな問題、特にIMFをはじめとする既存の多国間組織で新興国が代表権を欠く問題について協力することなど期待できるだろうか?

 BRICSは、3つの基本的な困難に直面している。

 まず、首脳会議の写真撮影のために各国指導者がどのような順番で並ぶにせよ、彼らは、中国が他国よりはるかに大きく、世界的にその経済力を誇示することにはるかに成功しているという現実を避けることはできない。

 中国政府としては、国営の中国開発銀行や国の支配下にある他の大手銀行でできなかったどんなことをBRICS開発銀行を通じて達成できるのか思案することになるだろう。

 次に、BRICSはグローバルな経済統治について共同戦線を張りたいと思っているが、実際にそれができることを示さなければならない。フランスのクリスティーヌ・ラドルガ氏が専務理事に任命された2011年のIMFの指導者選出で、BRICSが単一候補を支持できなかったことは有名だ。

 最後に、BRICS内の相違点は類似点と同じくらい大きい。ブラジル、ロシア、南アフリカは資源輸出大国だ。これに対して中国とインドは輸入国だ。

 中国とインドの間には国境を巡る緊張があり、中国とロシアの間には中央アジアでの影響力を巡る競争がある。中国は共産主義国で、ロシアは旧共産主義の独裁主義国、それ以外は民主主義国だ。

現実的な姿勢が肝心

 ダーバンサミットは失敗ではなかった。通貨危機と戦うために合意された1000億ドルの基金は、その実際的なメリットは限られているかもしれないが、政治的なコミットメントを示す有益な声明だ(新設される基金にできて、各国中央銀行による急場の協調行動にできないこととは、一体どんなことか?)。

 だが、BRICSの指導者は、自分たちが協力できる範囲について現実的な姿勢を保つよう気を付けなければならない。彼らがBRICS開発銀行を創設できるのなら、それは結構なことだ。できないのなら、その計画が政治的な恥になる前に撤回する必要がある。

By Stefan Wagstyl in London

 


大接戦確実の総選挙で試されるマレーシア首相
2013年03月29日(Fri) Financial Times
(2013年3月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


ナジブ・ラザク首相(左)は副首相兼国防相や財務相を歴任してきた〔AFPBB News〕

 マレーシアのナジブ・ラザク首相(59歳)は、行政首都プトラジャヤにある広々とした執務室から窓の外を眺め、近くの丘に立つ外務省を指差す。

 「彼らは首相を騙して一番高い場所に陣取ったんですよ」。マレーシアが政府機能をクアラルンプールから移した1990年代に言及して、こう冗談を飛ばす。

 ところが今、人口2800万人の東南アジアの多民族国家で選挙フィーバーが高まる中、ナジブ首相と長年マレーシアを支配してきた統一マレー国民組織(UMNO)は、外務省などよりずっと大きな勢力にお株を奪われる恐れがある。同国の歴史上最大の接戦になる総選挙で政権奪取を狙う野党連合・人民同盟だ。

絶対優位が揺らぐ与党連合・国民戦線、投資家は戦々恐々

 1981年から2003年まで首相を務めたマハティール・モハマド氏の時代から、UMNOがマレーシアを支配してきた。同党と連立パートナーは1957年の英国からの独立以来、議会で圧倒的多数を謳歌してきた。

 ナジブ首相は数日内に総選挙の実施を宣言すると見られている。一方、マハティール政権で副首相を務めたアンワル・イブラヒム氏率いる野党連合は、勝利を収める絶好のチャンスだと考えている。

 2008年に行われた前回の選挙では、人民同盟が躍進し、UMNOと連立パートナーの与党連合・国民戦線は議会の3分の2の多数議席を失った。この衝撃的な結果を受け、UMNOは時の首相を交代させ、マレーシア元首相の息子で経済学を学んだナジブ氏をトップに据えた。

 今回の選挙の結果は極めて不透明なため、与党の国民戦線が僅差で勝利する見込みでさえ投資家を狼狽させている。マレーシアの株式市場は今年、アジアで最も不調な市場の1つとなっている。

 この選挙にかかっているのは、穏健なイスラム国家にして米国の友好国、アジア地域における中国の影響力が高まる中で東南アジア諸国連合(ASEAN)の政治的結束の要となってきた国の未来だ。

 大方の政治アナリストは、国民戦線が議会の3分の2を取り戻す見込みはほとんどないとの見方で一致している。だがナジブ首相は、午後の祈りを終えるために開始が数分遅れたインタビューで、そうした見方を一蹴した。

ナジブ首相は選挙勝利後の「空前の株高」に自信

 「我々が確かな勝利を収められることを慎重に楽観している。3分の2の議席獲得は達成可能だが、選挙では何が起きてもおかしくないことも分かっている。慎重に楽観していると言ったのは、そのためだ」

 「投資家は現政権に対する強い信任を期待している。もし我々が好成績を出したら、いや、我々がいい結果を出した時には、株式市場で空前の高騰が見られるだろう。その点については、かなり自信がある」

 経済統計から判断すると、元財務相で温厚な実務家であるナジブ首相には現職の優位性がある。首相の指揮下でマレーシアは昨年、国際通貨基金(IMF)が「予想を超える」と評した経済成長を遂げた。ガスやパーム油といったコモディティー(商品)の堅調な輸出と内需に引っ張られ、マレーシア経済は5.6%拡大した。

 マレーシアは、国民1人当たりの年間所得を2020年までに1万5000米ドルに倍増させるために政府が2010年に開始した「経済改革プログラム(ETP)」にも後押しされた。ETPの下、石油・ガス、インフラ計画に巨額の資金がつぎ込まれた。海峡をまたいでシンガポールから続く巨大な工業団地イスカンダルもその1つだ。

 HSBCによると、ナジブ首相の改革に対する諸外国の信頼から、外国人によるマレーシア国債の保有残高は2009年以降550%急増し、2150億マレーシアドル(690億米ドル)に達したという。

 ナジブ首相はまた、ボルネオ島のマレーシア領サバに侵入したフィリピン人武装集団を掃討する軍事作戦を行った後、国家主義的な意識を持つ有権者からも多少の後押しを得られるだろう。

野党連合が勝ったら・・・

 だが、大半のアナリストが見込んでいるように国民戦線が負けたり辛くも勝ったりした場合には、改革のペースが懸念される。マレーシアの債務は国内総生産(GDP)比51%とアジアでは最も高い部類に入り、政府の歳入は少ない。

 エコノミストらは一般売上税の導入を訴えてきた。この新税を導入するかどうか問われると、ナジブ首相は「歳入基盤を強化する必要があるから、当然、租税構造は検討する・・・政府の歳入基盤は今よりずっと強固な足場の上に築かれなければならない」と述べた。

 ナジブ首相は、最低賃金の引き上げや通信とコメの独占廃止、自動車の物品税撤廃など、人民同盟が提案した経済政策に反論する。

 「国をどこに導きたいのかという明確な方向感覚がない連合を信用するのはリスクが大きすぎると思う」。首相はこう言い、野党連合のマニフェストはマレーシアの経常収支を1年以内に赤字に転落させると主張する。

 ETPを批判する向きは、政府支出――政府によれば、これまでに149件のプロジェクトに2110億マレーシアドルが投じられた――のどれだけが民間投資も生み出すことによって実体経済に流れ込んだのか疑問視している。

 これに対して首相は言う。「ETPは間違いなく、外国直接投資も含めて民間投資を増加させた。重要なのは軌道だ。人々はすべてのことが一夜にして変わることは期待していない。それに、大きなマクロの数字を見れば、すべての数字が我々が正しい方向に向かっていることを示しているはずだ」

蔓延する汚職が弱み

 だが、UMNOは汚職については弱い立場にある。政府の契約を獲得するための贈賄疑惑は蔓延しており、非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル」の昨年の国別ランキングでは、マレーシアの腐敗度に目立った低下は見られない。2012年の「腐敗認識指数」では、マレーシアは世界176カ国中54位につけていた。

 ナジブ首相はこの問題についてはコメントを拒み、マレーシアの汚職防止委員会が調査を行っていると指摘。政府は批判的な向きと「同じくらい汚職を懸念している」と主張する。

By Jeremy Grant


03. 2013年3月29日 18:47:12 : zBYc960RaI
"日本プレミアム価格"が通用しなくなっただけだろうが。
外国で買えば10円のものが日本では100円になる理由がない。
アメリカ製缶コーラが日本で38円で売られている理由は明らかだが、それを
デフレデフレと騒いでいる。
昔からヒネた人が「物の値段は定価の1割」と言っていた。
知らないから皆、10円のものを100円で買っていただけだ。

04. 2013年3月30日 01:09:58 : GnRfb4ci8o
ベール脱ぐ黒田日銀の「異次元緩和」、ドル/円は神経質な展開に
2013年 03月 29日 18:24 JST
[東京 29日 ロイター] 来週の外為市場では、新体制下で初となる日銀金融政策決定会合が最大の注目イベント。黒田東彦総裁のもとで打ち出される金融緩和策が「異次元の金融緩和」とみなしうるのか吟味されることになる。

日銀会合を終えると、欧州中央銀行(ECB)理事会、3月米雇用統計と米欧で重要イベントが続出するため、ドル/円は神経質な展開になるとみられている。ユーロは、キプロス情勢やイタリア政局への警戒感に加え、ECBの利下げ観測が重しになると予想されている。

予想レンジはドル/円が92.50─96.00円、ユーロ/ドルが1.2650─1.3000ドル。

<「異次元の金融緩和」へ高まるハードル>

来週は4月3、4日と黒田東彦日銀総裁のもとでは初となる金融政策決定会合が開催され、最大の注目イベントになる。デフレ脱却に向けて「異次元の金融緩和」に踏み切ることができるか、市場参加者は4日、決定内容のみならず黒田総裁会見まで注視する構えだ。

これまでの黒田総裁の発言や観測報道などを通じ、為替市場でも緩和策の具体内容の織り込みが進んでいる。資産買入基金と輪番オペの統合、オープンエンド方式の資産購入の前倒し実施、購入対象国債の残存年限の3年から5年への延長、銀行券ルールの撤廃検討といったところまでは織り込んだとみられているため、今回の会合で急速な円売りにつながるようなサプライズを打ち出すのは難しく、結果発表を受けていったんはドル/円が下落するとの見方が目立つ。

外為どっとコム総研のジェルベズ久美子研究員は、決定内容のみならず、黒田総裁が会見で今後の緩和に向けた期待を残せるかが焦点になるとみている。黒田総裁はここまで、緩和にあたっての具体的な選択肢に触れてきた。言及される政策オプションは現実的なもので、外債購入については否定しているが、それでもドル/円は下落していない。ジェルベズ氏は、黒田総裁の発言がマーケットが抱く緩和期待をつないでいるとみている。

黒田総裁は質・量ともに大胆な金融緩和を推進すると繰り返してきた。三井住友銀行・市場営業統括部の山下えつ子チーフ・エコノミストは、為替マーケットは「量」の強化がどの程度なのかまだ織り込み切れておらず、拡大規模によっては円安に振れると予想している。ただ、量を強化するという方向性自体はマーケットに浸透しているため、ドル/円が「1円も2円も上がるのは難しい」とみる。

<日銀会合後は欧米で重要イベント>

来週は日銀の金融政策決定会合が最注目イベントになるが、欧米の重要イベントが日銀会合に続く格好になり、ドル/円としては上下に振れやすくなりそうだ。4日は、日銀の黒田総裁会見の後にECB理事会が行われるほか、5日には3月米雇用統計が発表される。

前回の米雇用統計が発表された3月4日からの週は、週半ばから良好な米国の経済指標が相次ぎ、ドル/円は93円台から96円後半に一気に駆け上がった。2月米雇用統計の強い結果を受けて、8日には96.60円を付けた。しかし、足元では欧州情勢が不安定なため、「リスクオンという地合いが継続するには、ヨーロッパの状況が悪すぎる」(外為どっとコム総研のジェルベズ氏)とされる。来週、3月米雇用統計が前月に続いて強い内容になっても、ドル/円が上値追いになるとは考えにくいという。

ECB理事会をめぐり、市場の一部では利下げ観測がくすぶっている。ただ、三井住友銀行の山下氏は、利下げの有無よりも会合後のドラギ総裁会見に注目している。キプロス支援策の内容が苦境に陥った国の救済事例として汎用性を持つのか、それともキプロスの事例はあくまで特殊なのかという点について、踏み込んだ言及があるかがポイントだという。

今週冒頭25日には、キプロス支援策の合意を受けてユーロが急伸したものの、同日の海外市場では一転して下げ基調となった。下落の背景には、ユーログループのダイセルブルーム議長が、キプロス支援のもとでの銀行リストラ計画について、ユーロ圏銀行危機の解決に向けた新たなモデルになる、とし、銀行部門を整理する必要のあるその他の国もリストラ実施に迫られる可能性があるとの考えを示したことがあった。

香港上海銀行の外国為替本部長マネージングディレクターの花生浩介氏は、欧州の問題が解決していない以上、ユーロにはなお一定の下げ圧力が掛かると指摘する。しかし、「マーケットの焦点は欧州から離れている」とし、注目は日米の重要イベントに移っているとの見方を示した。

花生氏は「この数年間、第2・四半期は調整局面がいつも続いている。今年はリスクオンになるか見極めたい」と話した。新たな四半期早々、来週のマーケットは重要な局面を迎えることになる。

(為替マーケットチーム)

 甘利経財相が日銀決定会合出席へ、黒田総裁の行動に期待 2013年3月29日

日経平均は小幅続落、様子見姿勢強まり商い減少 2013年3月29日
日経平均は反落、欧州情勢警戒で先物売り強まる 2013年3月28日
ドル94円前半で上値重い、次回日銀会合で「セルザファクト」も 2013年3月28日


 

 

来週の日本株は波乱含みでも下値限定、米国株高や緩和期待継続が支え
2013年 03月 29日 15:56 JST
[東京 29日 ロイター] 来週の東京株式市場は、重要イベント目白押しで波乱含みだが、下値は限定的となりそうだ。米国のファンダメンタルズ改善と史上最高値圏の株高が日本株にも好影響を与えるとみられる。

日銀金融政策決定会合の結果が想定の範囲内なら株価は短期的に下振れる可能性もあるが、先行きの追加緩和期待が消えるわけではない。日銀短観や米経済指標で好実態が確認できれば上値を試す可能性もある。

日経平均の予想レンジは1万2000円─1万2800円。

最大の焦点となる4月3─4日の日銀金融政策決定会合では、黒田新体制のもと2%の物価上昇率目標達成に向け、積極的な追加緩和策が打ち出されそうだ。市場では基金による国債買い入れの対象年限長期化が有望視されているほか、ETF(指数連動型上場投資信託)、J−REIT(不動産投資信託)などリスク性資産の購入枠拡大などへの期待も大きい。問題は市場の期待を上回る緩和策を打ち出せるかどうかだが、仮に想定内の範囲内でも失望売りは一時的にとどまるとみられる。岡三オンライン証券チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏は、「22日以降の株価調整で、(日銀決定会合で)想定外の話が出ないことを前倒しで織り込んだ可能性がある。逆にサプライズがあれば上振れも期待できる」という。

黒田総裁は28日の衆院財務金融委員会でも「2%の物価安定目標を達成するというコミットメントを強く意識しながら、必要なことは何でもやる」と語っている。市場がネガティブな反応を示せば、4月26日以降の決定会合で追加緩和への期待が残る。

一方、米国株はファンダメンタルズの改善を伴う上昇を続けている。28日の米国株式市場では、S&P総合500種が終値ベースの過去最高値を付けたほか、ダウ工業株30種も最高値を更新した。米国は1月以降の給与減税期限切れで、可処分所得の減少が懸念されたものの、資産効果などから雇用や消費は上向いている。好調な米国景気と米国株は日本市場にも追い風となりそうだ。「欧州や中国の景気回復が遅れる中で相対的に優位な米国や日本に海外投資家の資金が向かいやすい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア投資ストラテジストの吉越昭二氏)との見方も出ている。

東京証券取引所がまとめた3月第3週(3月18日─3月22日)の3市場投資主体別売買内容調査で、海外投資家は918億円の売り越し(前週は4574億円の買い越し)となり19週ぶりの売り越しに転じたが、三菱UFJの吉越氏は「3月第1週から第2週の買い越し額が異常に多かった反動もある。海外投資家が買いから売りにトレンド転換したとは考えにくい」と話している。

来週は名実ともに新年度入りし、投資判断の目線は2014年3月期や15年3月期に移ってくる。「株式市場は金融相場から業績相場への踏み出そうとしている。15年3月期までの増益がみえてくれば上値余地は大きい」(みずほ証券ストラテジスト兼エコノミストの倉持靖彦氏)という。キプロス問題やイタリアの政局混迷など欧州情勢には留意する必要があるものの、セーフティネットの整備もあり大きな波乱要因にはなりにくい。

主なスケジュールとしては、国内で1日に3月日銀短観、2日に3月マネタリーベース(日銀)が発表される。海外では1日に3月中国PMI(国家統計局)、3月米ISM製造業景気指数、2日に2月米製造業新規受注(商務省)、3日に3月全米雇用報告(ADP)、3月米ISM非製造業景気指数、5日に3月米雇用統計(労働省)など重要な経済指標の発表が相次ぐ。

(ロイターニュース 株式マーケットチーム)


 


 


アングル:マイナス幅拡大する消費者物価、2%へ道遠し
2013年 03月 29日 18:42 JST
[東京 29日 ロイター] 総務省が29日発表した2月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くベースで前年比マイナス0.3%とマイナス幅が前月より0.1ポイント拡大した。円安でエネルギー価格が上がっているものの、テレビなど耐久消費財の下落が指数を押し下げた。

黒田東彦新総裁率いる日銀は2%の物価目標必達を掲げ、来週にも大胆な金融緩和策を打ち出す見通しだが、道のりは遠いとの見方が多い。

マイナス幅が拡大したのは、昨年1月にエアコン、2月にテレビがそれぞれ調査品目入れ替えという特殊要因で大幅に上昇していた反動が出たため。2月はエアコンが前年比23.9%、テレビが同28.9%とそれぞれ大幅に下げた。一方、灯油は前年比12.6%、ガソリンは同8.1%と大幅に上昇。生活必需品は上がっても耐久消費財が相殺し、指数でみるとマイナスとなっている。

同時発表された3月の東京都区部のテレビ価格が前月比で11.8%と上昇に転じており、総務省では全国のCPIも3月以降はマイナス幅が縮小するとみている。

とはいえ、物価の今後の上昇ペースは緩やかなものにとどまる見通し。

SMBC日興証券の宮前耕也エコノミストは「石油製品が昨年上昇した反動もあり、3月の消費者物価指数はマイナス0.5%まで下落するが、昨年の原油価格下落の影響で、5月にはマイナス0.2%程度まで上昇する」とみる。4月の小麦価格値上げが、指数への影響が大きいパンの価格に転嫁されるなどの仮定を置けば、「年末にはプラス0.7%程度まで上昇する」と試算する。ただ、3月の中小企業金融円滑化法終了の影響が今秋以降に顕在化することや、2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられるなど、景気の下振れ要因が多い。政府の緊急経済対策や消費増税前の駆け込み需要の反動減も響く。このため2014年は「年初から物価が下落に転じる」(宮前氏)とみている。

みずほ証券の河上淳マーケットエコノミストは「テレビの特殊要因がはげ落ち、4月にもCPIはプラスに浮上する可能性あるが、持続性なく、年内はゼロ前後で推移する」と見通している。「短期的に物価上昇率を上げるには円安で輸入価格を上げるのが早いが、2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議以降は急激な円安が望めなくなり、難しい」と指摘。「金融緩和一本槍での2パーセント実現は論理が明確でなく、実現は期待しにくい」との見方だ。

シティグループ証券の道家映二チーフJGBストラテジストは「14年からの消費増税を実施すれば、景気・物価が失速し、2%達成は難しい。政権として増税と2%達成のいずれかを選択する必要が出てくる。両立させるには財政出動しかない」と言い切る。

金融緩和による円安には物価上昇効果があるとみられるが、「対ドルで10円の円安で消費者物価指数は0.2ポイントしか上昇しない。為替のみで2%を実現するには100円の円安が必要」(宮前氏)なため、実現は難しそうだ。

(ロイターニュース 竹本能文;編集 山川薫)


 


 

デフレ脱却になお時間、海外景気に不安要素=財務相
2013年 03月 29日 11:36 JST
[東京 29日 ロイター] 麻生太郎財務相は29日午前の閣議後会見で、デフレ脱却には「まだ時間がかかる」との見通しを示し、欧州など海外景気に不安要素があると指摘した。

財務相はデフレ脱却に向けた課題として、消費者などのマインド面が変化するかといった国内問題に加え「米国は住宅市況が良くなって消費が伸びたから少し変わってきたが、欧州はまだまだ。不安要素がまだある」と海外景気の不透明要因に言及。「大丈夫だという気持ちになるようなものが、出てくるかこないか。まだ不安要素として残っている」としたが、同時に「政策が動き、予算が作動し始め、仕事が出始めれば、それなりの効果はある。それが経済成長につながるか」が課題だと指摘した。

物価上昇が期待インフレ率を高め、長期金利を上昇させるリスクに関しては「間違いなく、期待インフレ(率)が上がれば長期金利が上がることになっている」としたが、同時に金利は「過去20年間、上がると言って上がらなかった。(マインドが)ある日突然、急に変わるはずはない」との考えを示した。現在の低金利状態は「普通では考えられない状態。今までの経済の知識や経験では考えられないことが世界中で起きている、ということを頭に入れて、どうするかという発想をしないといけない」と述べた。

<円滑化法の期限切れ、対応に万全>

今月末で期限が切れる中小企業金融円滑化法については、導入したことで「企業倒産を防止したことは確か」だと効果を認めながらも、財務内容の改善努力など「内容の進歩が見られないところに関しては、およそ意味がない。従って再延長はせず、円滑化法をいったん切らせてもらう」と打ち切りの理由を説明した。ただ、打ち切りにあたり「各地の中小零細企業に貸し付けを行っている金融機関の対応が急激に変わることがないように、対応をきちんとやってもらう。万全を期したい」との考えも示した。

(ロイターニュース 基太村真司)


2月全国消費者物価は‐0.3%、TV下落でマイナス幅拡大 2013年3月29日
[東京 29日 ロイター] 総務省が29日発表した2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI、2010年=100.0)は前年比0.3%低下の99.2と4カ月連続でマイナスとなり、マイナス幅は前月より0.1ポイント拡大した。昨年2月にテレビの品目入れ替えが指数を押し上げた反動が響いた。ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比0.4%低下だった。

全国の総合指数は前年比0.7%低下。食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数は前年比0.9%低下した。

品目別では、テレビが前年比28.9%と大幅に下落。昨年1月に品目が入れ替えで上昇していたエアコンも反動で23.9%下落した。一方、外国パック旅行が8.2%上昇。円安の影響などでガソリンが8.1%、灯油が12.6%とそれぞれ大幅に上昇した。

3月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI、2010年=100.0)は前年比0.5%低下の98.7となり、マイナス幅は前月より0.1ポイント縮小した。ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比0.6%低下だった。

東京都区部の総合指数は前年比1.0%低下。食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数は前年比0.8%低下した。テレビが前年同月比17.7%下落したほか、エアコンも21.3%下落した。ガソリンは1.6%下落したが、灯油は5.7%上昇した。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 宮崎亜巳)


2月全国消費者物価は前年比‐0.3%、3月東京都区部は‐0.5% 2013年3月29日
期待物価上昇による実質利下げ、緩和の波及経路で重要=黒田総裁 2013年3月28日
アングル:黒田日銀「期待ルート」も大胆強化か、2%「達成まで」緩和継続 2013年3月28日
 

 

2月失業率は小幅悪化、景況感の改善背景に職探しの動きも
2013年 03月 29日 09:43 JST
[東京 29日 ロイター] 総務省が29日に発表した労働力調査によると、2月の完全失業率(季節調整値)は4.3%となり、1月に比べて小幅悪化した。最近の景況感好転を背景として、女性を中心に職探しの動きが広がる中で、完全失業者数も増加したことが要因とみられている。

ロイターが民間調査機関に行った聞き取り調査では4.2%が予測中央値だった。 季節調整値でみると、就業者数は6298万人と前月に比べて9万人増加した一方、完全失業者も284万人と同5万人増加した。失業者の内訳をみると、非自発的な離職は同7万人減少したが、新たな求職者が同4万人増加。女性を中心に非労働力人口が同13万人減少しており、総務省では「景況感の好転により、女性を中心に労働市場に参入する動きが出てきている」とみている。

ただ、引き続き完全失業者数は高い水準にあることから、今後の雇用情勢に引き続き「注視が必要」としている。

一方、厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は0.85倍で、1月から横ばいだった。ロイターの事前予測調査の中央値は0.86倍で、結果は予想を下回った。有効求人数は前月比0.7%増。有効求職者数は同0.3%増となった。

(ロイターニュース 伊藤純夫;編集 宮崎亜巳)


 

2月の完全失業率は4.3%に悪化、有効求人倍率は横ばい
2013年 03月 29日 08:46 JST
[東京 29日 ロイター] 総務省が29日に発表した労働力調査によると、2月の完全失業率(季節調整値)は4.3%で、1月(4.2%)に比べて悪化した。ロイターが民間調査機関に行った聞き取り調査では4.2%が予測中央値だった。

一方、厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は0.85倍で、1月から横ばいだった。ロイターの事前予測調査の中央値は0.86倍で、結果は予想を下回った。有効求人数は前月比0.7%増。有効求職者数は同0.3%増となった。

 


 

日経平均の2四半期上昇率は36.5%、列島改造沸く1972年以来 

  3月29日(ブルームバーグ):2012年度末を迎えた日経平均株価 は前日比0.5%高の1万2397円91銭で終え、1−3月では19.3%高となった。安倍政権による日本のデフレ脱却策への期待が強まった昨年10−12月と合わせた2四半期の上昇率(期間収益率合計)は36.5%と、小泉政権時の05年7−12月の35.9%を抜き、1972年7−12月の37%以来の大きさに達した。ブルームバーグ・データによる。
72年当時は、同年7月に「日本列島改造論」を打ち出した田中角栄内閣が発足、同9月に日中国交正常化が実現した。
立花証券顧問の平野憲一氏は、「72年当時と今の経済環境や株価の動きはものすごく似ている」と言う。平野氏にとっては70年4月に証券界に足を踏み入れて間もなく、「国際会社型投信(IOS)の破たんやニクソン・ショック後に超金融緩和が起こり、株価が上昇しているときに列島改造論の田中内閣が発足し、結局14カ月連続して株価が上昇した」と当時を振り返る。
一方で現在は、「リーマン・ショック後の金融緩和で株価が上昇しているときに安倍内閣が誕生し、8カ月連続で株価が上昇している。もし当時と同様の動きをするなら、なお上昇が続くことになる」と平野氏は述べた。
大和総研の試算によれば、東証1部の72年末の実績PERは27.6倍、予想PERは19.2倍。足元はそれぞれ27.4倍、22.7倍となっている。PBRは当時の2.88倍に対し、現在は1.27倍と低い。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 長谷川敏郎 thasegawa6@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Nick Gentle ngentle2@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/29 18:15 JST


05. 2013年3月30日 01:32:46 : GnRfb4ci8o
2013年 3月 29日 21:55 JST
日銀当座預金残高、過去最大─長短金利は低下

 日銀は29日、民間の金融機関が資金決済などのために日銀に預けている当座預金残高が前日比3900億円増の58兆1300億円(速報値)と発表した。日銀の資金供給などが増加の要因。残高は21日以降、7営業日連続で過去最大を更新して2012年度を終えた。

 こうしたことを背景に、短期金利は低下した。指標となる無担保コール翌日物の加重平均(同)は前日比0.003%低下の0.058%。年度末としては06年3月31日の0.004%以来の低い水準。3月末は金利が上昇しやすいが、日銀の強力な金融緩和で抑え込まれた格好だ。 

[時事通信社]


 

 
【クレジット市場】AKBより安倍首相、個人投資家が国債離れ 

  3月28日(ブルームバーグ):個人投資家にもっと日本国債を保有してもらいたい−。財務省の期待に安倍晋三首相が水を差している。インフレを引き起こそうとする首相の政策は債券から株への資金移動を促すからだ。
日本銀行のデータによると、日本の家計による債券の保有高は昨年12月時点で32兆円と、1年前から9.3%減った。一方で株式保有は12%増えた。国債保有の内訳を見ると家計は2.5%にとどまる一方、金融機関は65%だった。
国債保有者が金融業界に集中している状況は、市況が悪化した時に急激な一斉売りが起きるリスクにつながると、BNPパリバは指摘する。しかし金融緩和で5年債の表面利率が0.06%まで落ち込む中で、主婦が多いことから「ミセス・ワタナベ」のニックネームで呼ばれる日本の個人投資家の国債離れが進んでいる。これに対して米5年国債 の表面利率は0.75%。
BNPパリバ証券の伊藤篤チーフ円債ストラテジストは「保有者の多様性を日本の債券市場で増加させる必要がある」として、「保有者の比率が偏っているだけに、銀行セクターがマーケットに対する見方を変えただけで市場でパニックを巻き起こしてしまう可能性がある」と警告する。
財務省は昨年、日本の家計資産を国債に振り向けさせようと、人気アイドルグループのAKB48や横綱・白鳳を広告キャンペーンに起用した。
ミセス・ワタナベを株へ誘導
しかし結果は芳しくなく、財務省のデータによれば2013年3月期の個人向け国債販売高は2兆円と、前年度の2兆9300億円から減少する見込み。財務省は今月、2年債の募集を中止。1日の声明で「金利低下等のため」と説明した。
ミセス・ワタナベたちを国債から株へと誘導しているのは、安倍首相が「無制限の」金融緩和で2%のインフレ実現を目指すと公言して以来の株式相場上昇だ。TOPIX は安倍氏が経済政策方針を明らかにした昨年11月半ば以降、40%超上昇した。同氏は翌月に首相に選出された。
株価上昇を追い風に日本の家計資産は12年10−12月に3.1%増え、1547兆円に達した。今週公表された日銀の資金循環統計によれば、昨年10−12月の家計資産の増加率は07年以来で最大だった。
BNPの伊藤氏は日銀が低金利維持と緩和拡大を約束し株価が着実に上昇している中で、個人投資家が債券より高いリターンを求めようとするのは自然な成り行きだと指摘した。
メルトダウンの防波堤
日本国債の大半を国内投資家が保有している状況は、債務膨張にもかかわらず市場のメルトダウンを防ぐ歯止めになっている。財務省は日本の債務が14年3月までに1107兆円という前例のない規模に膨らむと見積もっている。日銀のデータによれば、海外投資家の日本国債保有比率は昨年末に8.8%だった。
クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは「多様性を増やすことは大事だが喫緊の課題ということではない。日本は国内で債券を消化する余力がまだある」と指摘。「今後の超低金利継続の見通しを考えると、財務省はおそらく家計の保有者を増やすことはあきらめなくてはならないだろう」とも語った。
原題:Mrs. Watanabe Fretting Over Inflation Spoils Sales: JapanCredit(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/28 06:00 JST


06. 2013年3月30日 08:21:24 : GnRfb4ci8o
焦点:日銀がバランスシートなど量的目標導入、コミットメント強化
2013年 03月 30日 08:09 JST 

トップニュース
アングル:東電が柏崎刈羽再稼働へ準備着々、世論分断の再燃も
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アングル:マイナス幅拡大する消費者物価、2%へ道遠し
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[東京 30日 ロイター] 日銀は4月3、4日に開く金融政策決定会合で2010年10月以来進めてきた金融政策を大幅に転換する。資産買い入れ基金を通じた金融緩和に代わり、日銀のバランスシートおよびマネタリーベース(資金供給量)全体を緩和の目安とし、拡大していく。

2%の物価目標達成に対する姿勢も強化、量の拡大による期待インフレ率の引き上げを通じデフレ脱却を狙う。具体的には長期国債の買い入れ年限を長期化し、ペースを現在の月3.6兆円から数兆円増額する方針。ただ、最終的な緩和規模など具体策についてはぎりぎりまで調整が続く見通しだ。

黒田東彦総裁が2年を念頭に達成をめざす2%の物価目標について、達成できるまで大胆な金融緩和政策を続けるなどコミットメント(約束)を大幅に強化する見通し。日銀は1月に2%の物価目標を導入していたが、ゼロ金利の継続期間や、基金による資産買い入れの終了時期が曖昧だったため、日銀の確固たる緩和姿勢を示す。

同時に満期が3年以内の長期国債のみを買い入れている基金を解消し、超長期債を含むすべての年限の国債を買い入れている輪番オペと統合する方針を示す。現在毎月1.8兆円買い入れている輪番オペをいくら増額するのか、輪番オペで0.1兆円にとどまっている10年超の超長期国債の買い入れをどの程度増やすかなどの詳細はこれから詰める。

<基金・輪番統合、銀行券ルールに代わるルール模索へ>

今後の金融緩和の規模を示すために、当座預金残高やマネタリーベース、バランスシートなどの量で示す案と、「無期限感」を演出するため毎月の資産の買い入れ額を示す案などが検討されている。ただ黒田総裁や岩田規久男副総裁は、当座預金残高やマネタリーベースを引き上げれば、期待インフレ率の上昇を通じて物価が上昇するとの考え。黒田総裁は海外中銀との緩和ペースの比較がしやすいようにマネタリーベースやバランスシートの大きさや拡大ペースを新たな緩和目標にしたいとみられている。

これまで区分していた基金による国債と輪番オペによる国債を一体化することで、国債買い入れによる財政ファイナンス(穴埋め)懸念を払しょくするために導入していた、保有国債を紙幣の発行量内に収めるとの銀行券ルールに抵触することになる。日銀としては、大量の国債購入が財政ファイナンスとみなされないため新たなルールを作る方向だ。

<岩田副総裁らリフレ派は量による期待インフレ率引き上げ持論>

日銀が2010年以降進めてきた現行の金融政策は、基金を通じて国債や社債、上場投資信託(ETF)などを買い入れ、企業の資金調達を容易にすることで景気や物価を刺激するのが狙い。この結果、日銀のバランスシートは1.4倍に拡充、当座預金残高も過去最高水準まで拡大したが、量の拡大はあくまで手段で、金利や各種金融資産のリスクプレミアムの引き下げが主眼との立場だった。

これに対して岩田副総裁らリフレ派は、物価目標は必達とし、当座預金残高やマネタリーベースを引き上げれば、期待インフレ率が上昇、円安や株高につながると主張している。岩田氏は副総裁就任前の今月4日「当座預金残高が10%増えると予想物価上昇率が0.44ポイント上昇、期待インフレ率が2%ポイント上がれば為替は15円の円安、日経平均株価は4000円上昇する」と主張していた。

黒田総裁は26日の衆院財務金融委員会で「量的にも質的にも大胆な金融緩和を推進していく」と強調しているが、量の拡大とともに各種リスク性資産の買い入れを進め、リフレ理論を主軸としつつ、従来の緩和思想も残すことで政策委員会内の意見統一を図りたい意向とみられる。

(ロイターニュース 竹本能文、伊藤純夫;編集 石田仁志)
 

新年度入り相場、上値余地も
来週の日本株は、重要イベント目白押しで波乱含みだが、下値は限定的となりそう。日銀会合でサプライズがあれば上振れも。

 

求人倍率0・86倍に悪化

 和歌山労働局は29日、2月の県内の有効求人倍率を発表した。倍率は前月を0・02ポイント下回る0・86倍。2か月連続で減少し、近畿2府4県では10か月ぶりに、2位に転落した。大阪府を中心に改善傾向が強まっているためで、同局は「都市部に比べ、景気回復の波及が遅れているのでは」と分析している。

 新規求人数は、6108人(前年同月比7・3%増)、求職者数は4202人(同6・7%減)と前年同時期に比べると、雇用情勢は改善傾向。主な産業別でみると、教育・学習支援業などで求人数が増えた一方、製造業は117人(21・5%)減の426人に落ち込んだ。

 製造業では、各社が求人数を抑える傾向がみられるといい、同局の担当者は「和歌山製鉄所を抱える新日鉄住金の動向に不透明感もあり、県内の関連企業の雇用意欲に影響した可能性がある」とみている。

 県内の有効求人倍率は近畿地方では1月まで9か月連続でトップ。しかし、2月は大阪が0・88倍(0・03ポイント増)、京都が0・85倍(0・01ポイント増)と他府県の改善が進んでおり、下落したのは和歌山のみとなった。

(2013年3月30日 読売新聞)
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13年度公共工事の労務単価 需給逼迫影響 15.1%増1万5175円に改定 
2013.3.30 07:00

 国土交通省は29日、2013年度の公共工事の労務単価(事業の発注費用などで、現場工事の人件費などを積算する基準)を全国・全職種の平均値で前年度比15.1%増の1万5175円に引き上げると発表した。労務単価が上昇するのは2年連続で、2桁増の伸びは初めてという。

 都道府県別では、震災の復旧・復興事業が続く東北の被災3県(岩手、宮城、福島)の平均値が同21%増の1万6503円。残る44都道府県の平均値は同14.6%増の1万5059円。

 今回、労務単価が急上昇した背景は、建設労働者の担い手が減少傾向にあるほか、東日本大震災ををきっかけに、被災地だけでなく、全国各地で労働者の需給が逼迫(ひっぱく)しているためだ。

 民間発注工事を中心に、建設現場で労働者を確保するため、「被災地はこの1年で7割増」(建設業者)などと賃上げが加速している状況もある。今回の改定値は昨年10月の調査結果をふまえた。国交省では、13年度に適用する労務単価は「約10年前の02〜03年ごろの水準にまで回復した」(建設市場整備課)とみている。

 ただ、他の産業に比べると、建設労働者の賃金水準はまだ低いという。安倍政権の「国土強靱化」政策で今後も労働者不足が懸念されることから、国交省は29日、国内建設業界や公共事業、民間事業の各発注者に対し、労働者確保の面で賃上げなど適正価格で工事を発注するよう求める通知を出した。


政策・市況ニュース

株価の刻み幅「10銭」単位に 日本取引所、来年1月に試行の背景3.30 08:00
政府の関電・九電値上げ幅圧縮了承に産業界は悲鳴 「日本経済が立ちゆかない」3.30 07:40
13年度公共工事の労務単価 需給逼迫影響 15.1%増1万5175円に改定 3.30 07:00
節電期間が終了 電力不足は回避 今冬、沖縄除く全国3.30 06:30
産業競争力会議 減税・特区で外資誘致提言3.30 06:30
電気料金に上乗せ 月108〜132円試算 再生エネ買い取りで経産省3.30 06:00
財務官に古沢氏 理財局長は林氏 財務省人事3.30 06:00
2月の住宅着工数、6カ月連続プラス 3%増6万8969戸3.30 06:00
本予算成立せず 暫定予算が可決 5月20日まで、歳出13兆円3.30 06:00
2月の鉱工業生産マイナス、雇用も悪化… 景気回復 輸出振るわず一服感3.30 06:00
東証、時価総額2割増の359兆円 年度末終値 5年ぶり1万2000円台3.30 06:00
【東京市場の注目銘柄】(29日)三井金属11%高3.30 05:00
ブラックストーンと協議 デルCEO、買収案を好意的に検討か3.30 05:00
キプロス規制、早期解除を 欧州当局者 2週間ぶりに銀行営業再開3.30 05:00
アイルランド 競争力回復、戻る外国人 低税率で海外投資呼び込み3.30 05:00


07. 2013年3月30日 08:28:32 : GnRfb4ci8o
2月の鉱工業生産マイナス、雇用も悪化… 景気回復 輸出振るわず一服感
2013.3.30 06:00

 景気の回復基調に一服感が出ている。29日出そろった2月の主要経済指標は、プラスが予想された鉱工業生産がマイナスになるなど軒並み悪化した。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」への期待による円安・株高で企業や消費者の景況感は改善しているが、実体経済に効果が波及するにはなお時間が必要だ。

 経済産業省が29日発表した企業の生産活動状況を示す鉱工業生産指数は3カ月ぶりにマイナスに転じた。

 米国経済の持ち直しや円安を背景に輸出が改善し、2カ月連続で上昇していたが、中国などアジア向けのスマートフォン(高機能携帯電話)の電子部品が減産となったのが直撃した。

 事前の市場予測はプラス2.5%。国内企業の輸出の改善が遅れていることが響きマイナスとなった。主要自動車8社の2月の輸出は14%減少。円安の中でも需要のある地域での現地生産化を加速したためだ。

 ホンダは北米や欧州向けに輸出していたスポーツ用多目的車(SUV)「CR-V」を現地生産に切り替え輸出が約7割もダウン。日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」の生産を1月から米国でも始めたことなどで約5割減った。日産の志賀俊之・最高執行責任者は「円安でも、輸出はなかなか戻らないだろう」と話す。

 雇用や物価も悪化している。2月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント上昇し、4.3%と2カ月ぶりに悪化した。

 所得の改善が遅れる中、小売り現場での値下げ競争が激しく物価の下落にも歯止めがかからない。2月の全国消費者物価指数(2010年=100、生鮮食品を除く)は前年同月比0.3%下落の99.2で4カ月連続のマイナスになった。テレビやエアコンなど家電製品の価格が2割超下落したことが響いた。

 先行指標となる東京都区部の3月の消費者物価指数(中旬速報値、生鮮食品を除く)も0.5%下落の98.7。耐久消費財の価格下落が続くことが予想され、菅義偉官房長官は29日の会見で「引き続きデフレ状況にある」との認識を変えなかった。

 一方でアベノミクス期待を背景に改善したのが消費者心理だ。2月の家計調査は2人以上の世帯の支出が、1世帯当たり26万8099円と前年同月比0.8%増加。収入は増えていないものの株高などで高額消費が伸び支出は2カ月連続で高い伸びを示した。

 


政府の関電・九電値上げ幅圧縮了承に産業界は悲鳴 「日本経済が立ちゆかない」
2013.3.30 07:40

 政府は29日、物価問題に関する関係閣僚会議を開き、関西電力と九州電力が申請した家庭向け電気料金の値上げ幅について、関電は申請の平均11.88%を9.75%程度に、九電は8.51%から6.23%程度にそれぞれ引き下げることを了承した。東北など他電力も値上げを計画しており、回復の兆しを見せる景気の足を引っ張る懸念が高まる。政府も事態を重視し、火力発電で使う液化天然ガス(LNG)の調達価格を引き下げる環境づくりなどを通じ、電力コスト低減に本腰を入れる構えだ。

 「できる限り(査定を)深掘りしたつもりだが、家計や企業には値上がりになってしまう」。関係閣僚会議後、茂木敏充経済産業相は値上げによる影響への懸念を示した。関電と九電は来週にも内容を修正して再申請し、5月1日の値上げ実施を経産相が認可する見通しだ。

 7月の値上げを計画する東北、四国の両電力について審査中のほか、27日には北海道電力も値上げの方針を表明。産業界からは「エネルギーがしっかり下支えしないと日本経済が立ちゆかない」(東芝の佐々木則夫社長)と悲鳴が上がる。

 政府は、原発の再稼働が遅れることで電力各社が電気料金のさらなる値上げに依存しないように、電力コストの低減策を矢継ぎ早に打ち出している。

 経産省の協議会は29日、2014年度をめどにLNGの先物市場の創設を目指すとした報告書案をまとめた。輸入が増大するLNGの価格交渉は、中東などの産ガス国側が主導権を握り、日本は割高での調達を余儀なくされている。世界初となるLNG先物市場の創設で価格交渉力を付け、安価な調達を狙う。

 また自民、公明両党は29日の政策責任者会議で、大手電力の発電、送配電部門を別会社にする「発送電分離」を明記した政府の電力システム改革の基本方針案を了承。「改革で新規参入が進めばコスト低減に向かう」(茂木経産相)と期待する。

 ただ、いずれも「中長期的な対策」(経産省幹部)で、短期的には原発再稼働以外に抜本策は見当たらないのが実情だ。


 

 

本予算成立せず 暫定予算が可決 5月20日まで、歳出13兆円
2013.3.30 06:00

 2013年度予算が3月末までの12年度内に成立しないため、政府が編成した暫定予算は29日午後の参院本会議で、共産党を除く各党が賛成して可決、成立した。4月1日から5月20日までの50日間が対象で、一般会計歳出は過去最大の13兆1808億円となった。

 昨年12月の衆院選により政権が交代した影響で、13年度予算の成立は5月の大型連休後にずれ込む見通し。暫定予算はこの間に必要となる経費を手当てする。菅義偉官房長官は29日の記者会見で「安倍内閣が掲げる日本経済再生に向けて着実に進んでいる」と歓迎する意向を表明。「暫定予算の成立により、国民生活に支障を来さないようにしたい。13年度予算も早く成立するよう全力を挙げて取り組んでいく」と強調した。

 主な歳出は年金や医療、生活保護などの社会保障に5兆4323億円、地方自治体に配分する地方交付税に3兆6678億円を計上。景気下支えのため公共事業に1兆5427億円を充てる。

 一方、歳入は2兆4192億円にとどめ、差額を財務省証券の発行で賄う。


 


http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130330/


08. 2013年3月30日 14:39:22 : GnRfb4ci8o
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黒田総裁の手腕に世界が注目 〜日銀金融政策決定会合
2013/03/30 (土) 12:00


早いもので来週から4月
新年度のスタートです。
市場はキプロス情勢を強く注視しながらの展開が続くうえに
週初はイースターということで
市場参加者がほとんどお休みに。
さらに、来週は経済指標/イベントなども盛りだくさんの週になっており
月初ということで金曜日に米雇用統計の発表が控えているほか、
英、欧、豪、日で金融政策の発表。
米国では雇用統計のほかにISM製造業/非製造業景気指数、ADP雇用者数の発表などが控えています。

雇用統計については、
いつも通り日曜日の更新として、
今回は、珍しく日本初の材料に世界が注目している
日銀金融政策決定会合についてみていきましょう。

黒田東彦総裁にとって初めてとなる今回の会合では
今後、大胆な金融緩和を進めるために
どこまで踏み込んだ決定ができるかが
市場の注目ポイントとなっています。

今回の会合でもっとも注目されているポイントの一つが、
国債買い入れの一本化を決定できるかどうかです。

現状では
国債の買い入れに際しては
資産買い入れ基金によるものと、
金融調節上の必要性から実施されている輪番オペの二つの方式がとられています。
表面上異なった目的の下で運営されている二つの買い入れ制度について、
黒田総裁は衆院財務金融委員会に出世息した際にわかりにくいと発言
一本化を検討することを明言しました。

この一本化が決定されると、
これまで緩和目的での資産買い入れ基金における規定では
満期まで1年以上3年以下となっている国債の買い入れ対象が
年限制限を持たない輪番オペのルールにすりあわされる形で
黒田総裁がかねてから主張する
買い入れ国債の長期化が可能となります。

もっとも、その場合輪番オペに課せられている銀行券ルールについて
今後どうしていくのかなど、
解決しなければいけないポイントが残っているだけに、
そう簡単に決定はできないと思われます。

3月6日7日に行われた前回の会合でも
白井審議委員が一本化案を提出したものの
残り全員の委員が反対し、否決されています。

今回の会合で、正副総裁が入れ替わったとはいえ、
前回会合で反対に回った8名のうち5名の委員が残っている状況だけに
黒田新総裁がしっかりリーダーシップを発揮して
実施に持っていくことができるのかが注目されるところです

なお、今回のすりあわせ議論とあわせ
来年から導入予定のオープンエンド方式の資産買い入れの前倒しも
導入の議論が行われる見込みです。

さらに、当座預金残高やマネタリーベースなど
量的な指針も示す可能性が指摘されています。

その他、社債やCPなどのリスク性資産の買い入れ拡大や、
国債買い付け額の一気の引き上げなども
可能性として話題に上っています。

期待値が相当上がっているだけに、
どこまで踏み込んだ決定が行われるか
黒田総裁の最初の手腕に世界中が注目しています。


 

小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
日銀当座預金がこんなに増えている訳
2013/03/30 (土) 13:00


 日銀当座預金残高が史上最高値を記録しました。

 2013年3月29日の時点、つまり2012年度末時点で58兆1300億円に達したと報じられているのです。


 (資料:日本銀行)

 では、日銀当座預金とは何か?

 それは日銀のお金なのか?

 そうではないのです。民間の銀行や証券会社などが日本銀行に預けているお金が日銀当座預金と呼ばれるものなのです。

 では何故民間銀行などは、日本銀行にお金を預けるのか?

 それは、民間銀行同士の資金決済、或いは日本銀行との資金決済などを行うために日本銀行に預金口座を開いているということなのです。

 そうした口座を保有していないと資金の決済ができないでしょ?

 貴方だって、公共料金の自動引き落としをするために民間金融機関に普通預金の口座を有しており、そこから毎月の電気代など引き落とされる、と。

 但し、民間銀行が日銀当座預金口座にお金を預けるのは、それだけが目的ではないのです。というのも、民間銀行は規定により保有する預金の一定割合を日本銀行に預けておかなければならない仕組みになっているからです。

 そうしないと、イザというときに資金不足に陥ってしまう恐れがあるからなのです。

 私たちだって、そうなのです。日常の生活に必要のないと思われるお金は定期預金にしたり、国債で運用したり、或いは、株や社債で運用するかもしれませんが、その一方で、急な出費に備えて現金を多めに持っていたり、或いは、いつでも引き出しが可能な普通預金を持っていたりするでしょ?

 その我々の普通預金と同じような意味を有する預金が、民間銀行が日銀に預けている日銀当座預金になるのです。

 では、民間銀行は、どのようにしてその日銀当座預金の残高を管理しているのか?

 今は金利がスズメの涙よりも少ないので説得力はないのですが‥本来であれば、我々は余分な資金があれば、そういった資金はなるだけ現金や普通預金で保有せず、定期預金などで運用しようとする訳です。

 何故?

 だって、現金で持っていると利子が稼げませんから、普通預金でも殆ど同じ。一方、定期預金にしておけばそれなりに利子が稼げる、と(但し、今は、ゼロ金利政策が実施中なので、それも叶いません)。

 そういったことから言えば、民間銀行というものは、日銀当座預金の残高をギリギリまで絞り込みたいと考えるのが本来の姿なのです。

 必要以上に日銀当座預金を保有して‥本来稼げる利子収入を放棄するなんて民間企業では考えられないことですから。

 にも拘わらず、2012年度末の日銀当座預金残高がこれまでの最高値を記録したなんて言っている訳なのです。 一体どうしたことなのか?

 いずれにしても、10年ほど前までなら、5兆円もあれば十分であると考えられていた日銀当座預金残高が60兆円に近付こうとしているのです。

 もちろん、その背景には、日銀が民間銀行等の保有する国債をどんどん買い上げているという現実があるのです。つまり、超緩和策を実施しているので、民間銀行の保有する長期国債などを日銀が買い上げ‥そして、その代金が当座預金勘定に放り込まれるので残高が増える、と。

 岩田副総裁が言っていましたよね。日銀当座預金残高が80兆円ほどになれば、インフレ率2%が実現できる、と。

 本当に、リフレ派の人々は金融の実務について疎いですよね。

 百歩譲って、世の中に出回っている銀行券の残高が現在の80数兆円から90兆円、或いは100兆円になったらインフレ率が2%程度は実現できるというのならまだ分かるのです。

 何故ならば世の中に出回る日銀券が実際に90兆円、100兆円と増えるということは、それだけ経済活動が活発になっていることの証拠でもある訳ですから。

 でも、日銀券が10兆円増えるということと、日銀当座預金残高が10兆円増えるということは同じではないのです。

 そもそも、本来なら利子の付かない当座預金口座に余分のお金を預けておくようなバカな真似を何故民間銀行がすると考えるのか?

 その辺りを岩田副総裁は分かっているのでしょうか?

 だから、物事の自然の成り行き任せるのであれば‥世の中に出回るお金が90兆円、或いは100兆円と増えることはあっても、日銀当座預金残高が80兆円になることなどあり得ないのです。幾ら大量に、日銀が国債を買い上げてもです。

 おかしいでしょ?

 では、何故今、日銀当座預金残高が過去最高値を更新しているのか?

 既に60兆円に近づこうとしているのだから、岩田副総裁の言うように80兆円に達することもあり得るのではないのか?

 実は、何故民間銀行が日銀当座預金を多額に保有していても平気な顔でいられるかと言えば‥それは、日本銀行が民間銀行などに対し超過準備部分の当座預金に対しては、0.1%の金利を付けて上げているからなのです。

 0.1%なんて大したことはない?

 馬鹿を言っていはいけない。

 我々が民間銀行に1年物の定期預金をしても、0.1%の1/4の0.025%程度しか金利はつかないのです。

 それに、例えば、3か月ものの国庫短期証券で余資を運用する場合、これまでは0.1%程度の利回りを確保することができていたのが、最近では、アベノミクスの掛け声の下で金利が低下しているものだから、例えば、0.04%程度まで利回りが低下しているのです。

 ということは、日本で一番安全な運用先である日本銀行にお金を預けて‥しかも、そのお金は何時でも引き出し可能だというのに‥そレに対して、な、な、なんと0.1%も利子を付けて上げているということになるのです。日本銀行はなんと太っ腹であることか!

 だから、短期金利が益々低下するなかで、民間銀行などは日銀に預けている日銀当座預金の残高を増やしているという訳なのです。

 でも、言っときますが‥そうやって幾ら日銀当座預金残高が増えても、世の中に出回るお金が増える訳ではないのです。だから、物価を押し上げる力はない、と考えるべきでしょう。

以上


09. 2013年3月31日 10:14:03 : GnRfb4ci8o
日本のインフレ率はマイナス幅を拡大した後、反転の見込み

2月の全国CPI(除く生鮮食品)は、テレビ価格の歪みによりマイナス幅拡大。3月はテレビ価格の影響
こそ和らぐが、ガソリン価格が昨年上昇していた反動が顕在化し、更にマイナス幅を拡大する見込み。
その後、緩やかな上昇へ転じると見込むが、テンポは企業行動に大きく依存。

全国 CPIは前年比マイナス幅拡大

2013年2月の全国消費者物価指数(CPI)統計によると、「生鮮食品を除く総合(日本型コア)」が前年比
▲0.3%(1月▲0.2%)、「食料及びエネルギーを除く総合(米国型コア)」は▲0.9%(1月▲0.7%)と共に
マイナス幅が拡大した。市場及び当社予想通りの結果であり、サプライズはない。

主因はテレビ

2 月の下落幅拡大は、前年同月においてテレビの調査対象品目入れ替えに伴いマイナス幅が急縮小した反
動で、今年はテレビ価格が1月前年比6.2%から2月は▲28.9%へ急低下した影響が極めて大きい 1
。テレビの前年比寄与度は、対総合(ヘッドライン)で1月0.03%Pt→2月▲0.26%Pt、対日本型コアで 0.03%Pt
→▲0.22%Pt、対米国型コアで 0.05%Pt→▲0.33%Ptへといずれも大幅なマイナスに転じている 2

。但し、こうしたマイナス幅拡大の動きは、統計の歪みによるものであり、過度に強調すべきではないだろう 3

エネルギー価格は上昇

テレビ以外の項目を見ると、ガソリン価格の上昇(1月前年比 4.6%→2 月 8.1%)を受けてエネルギー価
格(1 月 3.9%→2 月 5.0%)が上昇し、日本型コアの前年比を 0.1%Pt 程度押し上げたのが目立つ。ま
た、エネルギー価格変動や円安の波及により外国パック旅行(1月▲6.2%→2月 8.2%)や航空運賃(▲
12.7%→▲1.1%)も上昇している。

他に大きな動きはないが…

そのほかの品目については2月段階で目立った動きがない。但し、当社が物価トレンドを把握するため
に試算している刈り込み平均 CPIは、1月前年比▲0.15%が 2 月は▲0.30%へとマイナス幅が拡大した。
これは、1 月段階で刈り込まれていなかったテレビ(プラス寄与)が、2 月段階で刈り込まれた(マイ
ナスが刈り込まれたが、1月のプラス寄与は消えた)影響が含まれるため、やや割り引く必要がある。と
は言え、少なくとも現時点で、日本経済のデフレ脱却に向けた動きを、全国ベースの物価統計から確認する
ことはできない。

東京都区部に基づくと3月全国は日本型コアのマイナス幅が拡大

3 月以降の全国CPIを占うために、まず 3 月の東京都区部を見ると、日本型コアは前年比▲0.5%(2 月▲
0.6%)へ、米国型コアは▲0.8%(2 月▲1.0%)へ共にマイナス幅が縮小した。主因はテレビの下落率縮小
であり、東京都区部データに基づく限り、全国の2月に生じたテレビによる押し下げは 3 月に緩和する見
込みである。その一方で、前年同月に上昇していた反動からガソリン価格が押し下げへ転じている。ガソリ
ン価格は前月比ベースでは上昇しているが(1月3.9%、2 月 0.6%)、昨年急上昇の反動から前年比では 1 月
7.1%が 2 月は▲1.6%と低下に転じた。ガソリン価格の下落により 1 月の日本型コアは 0.1%Pt程度押し下
げられている 4

(寄与度1月 0.06%Pt→2月▲0.02%Pt)。全国では東京都区部に比べ、ガソリンのウェイ
トが高いため、押し下げ寄与が更に膨らむ。以上を踏まえ、当社では、3 月の全国CPI前年比はテレビの
押し下げ寄与縮小で米国型コアが▲0.7%(2月▲0.9%)へマイナス幅を縮小する一方、ガソリン価格の下
落により日本型コアは▲0.4%(2月▲0.3%)へマイナス幅を拡大すると見込んでいる。

1〜3 月期をボトムにインフレ率は反転へ

当社予想通りであれば、1〜3月期のインフレ率(日本型コア)は前年比▲0.3%となり、昨年 10〜12月期
の▲0.1%からマイナス幅が拡大する。しかし、テレビの押下げ寄与は既に述べたように 3月から縮小へ向
かい、前年の裏によるガソリン価格の下落も3月がボトムとなる見込みである。加えて、4月以降は、テ
ィッシュペーパーや食用油、小麦など多くの品目について、原材料価格や円安などを理由とした卸売段階
の値上げがアナウンスされている。また、自賠責保険料などの引き上げや消費税率引き上げ前の駆け込み
需要なども、インフレ率を押し上げる方向に作用する。こうした要因を踏まえると、1〜3 月期をボトム
にインフレ率は徐々に高まっていく可能性が高いと判断される。

インフレ率の上昇ペースは期待の変化に依存

但し、そうしたインフレ率の上昇ペースは、今後の企業行動がどのように変化するかに大きく左右される。
デフレ下の日本では、輸入価格の上昇が卸売価格を経由して消費者物価上昇に及ぼす影響(パススルー)
は限定的であったが、企業行動が変化しなければ、今回も卸売価格の引き上げが消費者物価に及ぼす影響
は限られてしまう。しかし、レジームチェンジと企業が判断、すなわち為替やインフレに対する企業側の
期待が変化すれば、徐々に価格転嫁が浸透していく可能性がある。日本銀行の金融政策が、企業や家計の
期待に働きかける影響が注目される。

http://www.itochu.co.jp/ja/business/economic_monitor/pdf/2013/20130329_2013-063_J_CPI-Feb2013.pdf


10. 2013年4月02日 02:12:10 : niiL5nr8dQ
【第7回】 2013年4月2日 野地 慎 [SMBC日興証券為替ストラテジスト]
現在の金利低下に潜む反転の芽 国債利回りと貸出金利差が拡大
 日本銀行の新総裁となった黒田東彦氏は、就任会見で「2%の物価目標を2年程度で達成するため何でもやる」と述べた。日銀による資産買い入れ拡大への期待が一層高まった格好だが、黒田総裁は国債買い入れについて「国庫短期証券のような短期金利に近い水準の国債購入に政策効果がない」ことを強調した。国庫短期証券ではなく期間の長い国債の買い入れを大幅に増額すると示唆したわけであり、債券市場では10年債利回りが0.6%を大きく割り込んだ。
 ただし、今回の金利低下には特殊要因もある。円安と株高が急速に進んだことで、年金によるアセットアロケーション(資産配分)見直しが発生したのだ。1月から3月にかけて、年金は大規模に外貨建て資産や株を売って円債を買う動きを行っており、公社債投資家別売買高(1月、2月)を見ても年金(信託銀行)が巨額の債券買いをしている。
 1月から3月においては、このような特殊需給の影響も大きく、新年度入りする4月以降も10年債利回りの低下傾向が続くと判断するのは早かろう。
拡大画像表示
 今回の長期金利低下局面では「2003年以来」とのヘッドラインをよく目にするが、その03年にはいわゆるVaR(バリュー・アット・リスク)ショックと呼ばれる長期金利急上昇が起きている。過去10年超にわたって、10年債利回りと銀行の貸出金利(新規・長期)との高い連動性が観測されているが、03年をはじめとして、10年債利回りが貸出金利を大幅に下回った後には長期金利上昇という水準訂正が生じやすい。
 デフレ構造に変化がない限り、銀行貸し出しが伸びない環境は容易には変わらないと予想されるが、黒田日銀のリスク資産買い入れ拡大に伴い、不動産など実物資産の価格上昇への期待も高まりやすく、いずれ債券から貸し出しへの資金シフトが生じやすい環境も整うだろう。
 日本国債フォワード(将来)レートを見ると、4年後も1年物国債金利が0.2%程度であることが示唆されており、現在の債券市場はデフレ脱却に懐疑的というより、悲観的であるとすらいえる。
 黒田日銀が、今後、市場との対話を重視し、特に資産価格の上昇基調維持をもくろむと考えれば、いずれ市場の期待インフレ率とフォワードレートの間に齟齬も生じると予想され、この点も長期金利の上昇要因となると予想される。
 世界経済の緩慢な回復スピードに鑑みれば、内外債券市場で「よい金利上昇」が早期に観測される可能性は低い。日銀の毎月の国債買い入れ額は1.2兆円であった03年と違い、既に4兆円近くまで拡大している。金利上昇局面における日銀のプレゼンスは当時に比べ格段に高いと考えられ、03年同様の金利急騰の可能性は低かろう。
 ただし、現在の金利水準は特殊需給によるところも大きく、また、多くのデータが下がり過ぎを示唆している点には十分留意が必要である。デリバティブ取引等によって金利上昇に備えることも役立つと考えている。
 (SMBC日興証券為替ストラテジスト 野地 慎)
http://diamond.jp/articles/print/34064



第80回】 2013年4月2日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役社長]
2040年の日本では高齢化が大都市部を直撃する
 国立社会保障・人口問題研究所は、3月27日、日本の地域別の将来人口推計を行った結果を公表した。これは2040年までを睨んだものであるが、わが国の総人口は、2010年の1億2806万人から2040年には1億728万人まで減少し(全ての都道府県で減少)、かつ、65歳以上人口の割合も、2010年の23.0%から2040年には36.1%へと上昇する。今更ながら、わが国の高齢化のスピードには凄まじいものがあるが、公表資料の内容を子細に見てみると、問題点がよく分かる。

人口の減少・65歳以上人口の割合
いずれもトップ10のうち7県が東北・四国

 わが国の今後30年の総人口の減少を地域別に見ると、秋田・青森両県が30%以上減少し、トップ10の内、過疎地域の東北・四国が実に7県を占める。これを市区町村別に見ると、約半数近い785自治体(全自治体の46.6%)で人口が2〜4割以上減少する。ちなみに、4割以上の減少が385(同22.9%)、0〜2割の減少が433(同25.7%)、これに対して増加に転じるのはわずか80(同4.8%)でしかない。


 人口が減少すれば、高齢化が進むのは理の当然であり、2040年の65歳以上人口の割合(高齢化率)を見ると、ここでも秋田・青森両県が1、2位を占めている。そして、同様にトップ10の内、東北・四国が7県を占めている。これを市区町村別に見ると、高齢化率が40%以上を占める自治体は、2010年の87(全自治体の5.2%)から、2040年には836(同49.7%)まで増加する。実に自治体の約半数が、65歳以上人口を大幅に(40%以上)抱え込むことになる。


 次に、全国の総人口に占める各地域ブロックの総人口の割合を見ると、南関東を除いて、全てのブロックで占率が低下している。特に、東北、四国、北海道の減少幅が大きい。


 これを見ると、首都圏である南関東(埼玉、千葉、東京、神奈川)への人口移動が止まらず、過疎地域との格差はさらに拡がっていくように見える。しかし、では、首都圏は相対的に安泰かと言えば、実は決してそうではないのだ。

65歳以上の増加人口(実数)は、
首都圏が全国の4割を超す

 ここで、65歳以上人口の増加率を見てみよう。そうすると、全く別の姿が浮かび上がってくる。トップ5のうち、首都圏が2、3、4位を占めている。加えて、愛知、福岡、大阪等の大都市部がもれなくランクインている。今後30年に増加する高齢者919万人のうち、実に388万人が首都圏に在住することになるのだ。2040年の首都圏には、わが国の30%の人口が住んでいるが、今後30年間の間に増える高齢者は、首都圏に住む人が42%を超える計算になる。


 こうした大量の高齢者を首都圏等の大都市部は、本当にスムーズに吸収できるのだろうか。例えば、ケアマネージャーの数は足りているだろうか。介護施設の整備は滞りなく進んでいるのだろうか。後期高齢者である75歳以上人口を見ると、全国で2040年までに、804万人増加するが、うち首都圏が284万人を占める。その割合は35%を超える。65歳以上人口の急増振りに比べれば、少し低いように見えるが、首都圏の総人口のウェイトが30%であることを忘れてはならない。 

 即ち、今後30年を展望すれば、首都圏をはじめとするわが国の大都市部で高齢化が加速するのである。しかも、例えば東京都は1人暮らし世帯が多いことでも知られており、このような急速な高齢化を念頭に置いた効率の良い医療・介護体制を首都圏で構築していくことは、極めて難度の高い営為であることが、容易に想像される。

 我々は、これからの高齢化は、むしろ地方ではなく、首都圏等大都市部を直撃するということを片時も忘れてはいけないだろう。そうであれば、コンパクトシティの発想も地方ではなく、首都圏等大都市部でこそ活かされなければならない。以前にも触れたが、コレクティブハウスのような社会実験は、先ず首都圏等から始めるべきであろう。

究極の高齢化対策は
出生率の向上

 急速な高齢化に対応するためには、結局のところ、社会保障と税の一体改革を成し遂げるしか方法はない。即ち、マクロレベルで給付と負担のリバランスを行うしかないが、根本から考えれば、負担人口を増やすことが、グローバルに考えても、やはり王道であろう。

 即ち、当面は、女性(特に専業主婦)と、高齢者(例えば70歳くらいまで)に、もっと働いてもらうしかないが、長い目で考えれば、出生率を向上させる必要があろう。わが国の長期的・本質的な成長戦略の根本は、必死で人口を増やすことに尽きるのだ。人口政策は、効果が表れるまでに一定の時間を要するので、直ちに着手すべきものであることは多言を要すまい。

 わが国は、「キャッチアップの時期はとうに過ぎた」「既に課題先進国となっており、真似をする国はどこにもない」と言われて久しいが、本当にそうだろうか。シラク3原則に象徴されるフランス等欧州の先進国の少子化対策は、個人の自由な意思が前提となっており、今でもなお、十分真似をする価値があるのではないだろうか。いつも言っていることだが、人類5000年の歴史の中で、人口が減って栄えた国も地域も社会も、どこにも存在しなかったという事実は、とてつもなく重い。

(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)



オバマ時代の評価を左右する米国の所得格差
2013年04月02日(Tue) Financial Times
(2013年4月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


バラク・オバマ大統領は中間層を復活させられるのか?〔AFPBB News〕

 バラク・オバマ大統領は、米国の中間層を復活させることが自身の最大のゴールだと述べている。

 今年1月の大統領就任演説では、「数が減っていく一握りの人たちがとても裕福な暮らしを送る一方で、生活していくのがやっとだという人たちがどんどん増えている状況では、この国の成功はあり得ない」と語っていた。

 オバマ氏がほのめかしているように(そして、一部のエコノミストたちが恐れているように)所得格差の拡大が米国の経済成長率を低下させるのか否かはまだ分からないが、恐らく低下させるだろう。

 いずれにしてもオバマ氏は、米国の所得分布が1920年代以降で最も不平等なものになっている状況に歯止めをかけられずにいる。この問題は、オバマ氏の手に余るものなのだろうか?

減り続ける中間層の所得

 確かに、オバマ氏は強い逆風にさらされている。ワシントンはこの3年間、財政を巡る攻防に明け暮れている。だが来週に予定されている予算教書の提出はオバマ氏にとって、2014年の中間選挙の前に論点を財政赤字削減から裾野の広い経済成長に移す最大の好機となるだろう(もっとも、財政赤字削減と経済成長は完全に両立できるのだが)。

 米国の国内総生産(GDP)比の財政赤字は既に5年以内に約4%に低下する軌道に乗っている。そして米国の財政が本当の試練に直面し始めるのは、メディケア*1などによる退職関連の費用負担が急増に転じる10年後のことだ。今は当面の問題に向き合うのに適した時期かもしれない。

 今年の6月で米国の金融危機後の景気回復は5年目に入る。しかしこの間、中間層の所得は毎年少しずつ減少している。

 調査会社サンティエ・リサーチのデータによれば、米国の世帯所得(年収)の中央値は今年1月から2月にかけて1.1%減少し、5万1404ドルになった。これは景気が回復し始めた2009年6月の水準(5万4437ドル)を5.6%下回る水準で、今世紀が始まった時の水準に比べれば8.9%の減少だ。

 このペースでいけば、オバマ氏の努力もむなしく、この中央値の減少率は大統領の在任中に2ケタの大台に乗りかねない。

*1=連邦政府が運営する高齢者・身障者向け公的医療保険制度

 一方、所得階層の最上位の様子は全く異なる。シラキュース大学のデビッド・ケイ・ジョンストン氏によれば、米国で2009年以降に実現した所得の増加分のうち、所得階層の最上位10%が手にした割合は149%に達するという。つまり、残る90%は逆に所得を減らしているのだ。

 またこの割合は、最上位1%――年収36万6623ドル以上――では81%となり、最上位0.1%――年収797万ドル以上――ではなんと39%に上るという。所得の増加という景気回復の果実の半分近くを最上位の1万5837世帯が取り、残る1億5840万世帯が残りの半分を取っている計算だ。

正当化できなくなった所得格差

 オバマ氏が望んでいるのはこういう類いの記録ではない。米国の偉大な政治思想家ジョン・ロールズは、最も恵まれない人々が最も大きな利益を得られるのであれば不平等は正当化されると述べた。ロールズが課したこの条件がもう満たされていないことは明らかだ。

 所得格差が大きいことそれ自体は悪くない。大きな報酬が期待できれば有能な人々はやる気を出すし、その恩恵は全員にもたらされるからだ。しかし、所得格差の拡大が所得の絶対額の減少を伴うとなれば、話は別だ。社会はこれを容認しないだろう。

 また、格差があまりにも大きい場合には経済成長が鈍化すると示唆する証拠も少なくない。国際通貨基金(IMF)は2011年に発表した論文の中で、格差が小さい方が経済成長率は高くなると論じた。過去30年間の東アジアの成長率が中南米のそれを上回った大きな理由はここに求められるという。

 IMFによるこの議論については、所得の不平等と低成長率の相関関係を示しただけであって因果関係を示したわけではないとの指摘が懐疑論者から出ている。確かにその通りだ。

 しかし、米国の経済成長を牽引するのは個人消費だ。超富裕層の支出の増加がそのほかの米国民の倹約による需要の減少を今後もずっと穴埋めするとは思えない。米国経済のエンジンが全開になることは、1兆4500億ドルもの資金を投資せずにため込んでいる米国企業の経営者たちも含めた全員の利益につながるのだ。

 大きな所得格差は米国の金融政策の有効性をも低下させている。これについては、異論を差し挟む人はほとんどいない。ウォールストリート(金融市場)に強気相場が戻ってきたことは間違いない。先週にはダウ工業株30種平均株価とS&P500種株価指数がそろって過去最高値を更新した。

 しかし、米連邦準備理事会(FRB)が安価に供給した資金のうち、メインストリート(実体経済)に流れたものはごくわずかだ。

 このようにしっかり根付いたトレンドは簡単には修復できない。米国の所得格差の拡大には、ロボットの台頭、グローバル化の加速、主に利益集団のためにカスタマイズされている国内税制など様々な要因が寄与している。

 理解しやすい格差緩和策、例えば法定最低賃金の引き上げや社会保障税の累進強化などを実行すれば、その効果はすぐにでも所得に及ぶだろう。これ以外の策、例えば米国の教育の質的向上などは実を結ぶのに20年かかるだろう。米国のインフラの質的向上が実を結ぶ時期は、両者の中間ぐらいだ。

 オバマ氏はこれらの施策を2009年以降、手を替え品を替えて提案してきた。しかし、実行に移せば自分たちも利益を得られると共和党が思わない限り、これらが法律になる見込みはほとんどない。

グランドバーゲンしかない

 ホワイトハウスにとって現実的なチャンスは、「投資のための歳出削減(cut to invest)*2」という提言と、1世代に1度の税制改革の約束とを組み合わせた財政の「グランドバーゲン(大型取引)」にしかない。

 グランドバーゲンが実現する可能性は小さいかもしれないが、それでも現状維持に比べればマシだろう。共和党も、金持ちの党という烙印から逃れるチャンスを得るだろう。口先だけでもよいのであれば、機会の均等という概念に敬意を払いたがらない人などいない。

 グーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏のような人たちが多額の財産を持っていることを妬む人は、米国にはほとんどいない。そもそも、妬むべきではない。問題は、所得が横ばいだったり減少したりしている状況下で高い経済成長率を、外部からの支援なしで維持することなどできるのか、ということだ。

 これについては、懐疑的になる理由がいくつかある。オバマ氏はこれまで、中間層の低迷は米国経済の成長にとって良くないことだと連邦議会に説いてきたが、まだ納得させるには至っていない。今後も説得を続けるべきである。中間層の復活が重要だと大統領が本気で考えているのであれば、これはオバマ時代最大の課題となる。

*2=ムダの多い政策や効果の弱い政策への支出を削り、浮いた資金を大きな成果が得られそうな分野に振り向けようという施策

By Edward Luce
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37491


11. 2013年4月02日 02:18:07 : niiL5nr8dQ
第4回】 2013年4月2日 金森重樹 [ビジネスプロデューサー]
地価上昇したとしても、それは需要によって発生したものではない
アベノミクスに浮き足立つな
アベノミクス効果で地価も上昇に転じたと言われる今、これを利用して資産形成する戦略とは?不動産投資家は、まず、今後空き家が増加する一方であることを前提に考えなければならないとした上で、ヒントを提示する。

賃貸住宅市場の未来は暗い

 今回は「この後くるかもしれない地価上昇を利用して資産形成する戦略」について考えてみたいと思う。
 前提として考えなければならないのは、日本の人口は天井を打って歴史上初めて自然減少し、これから空き家は増加する一方であること、つまり今後地価上昇したとしてもそれは需要によって発生したものではないということだ(ただし、都市開発などによって一定の地域の需要が発生して一部地域で地価が上昇する場合は除く)。

 みずほコーポレート銀行産業調査部の「賃貸住宅市場の現状と展望」によれば、2030年の賃貸住宅市場の市場規模予測は以下の通りだ。

1. 我が国の賃貸住宅市場は、今後2030年に向けて大きく縮小することが予想される。2010年12.6兆円→2030年8.8兆円 ▲30%
2. 内訳で見ると、特にファミリー向け(40平方メートル以上)賃貸住宅市場の縮小が著しい。2010年8.8兆円→2030年5.6兆円 ▲37%
3. 非ファミリー向け(40平方メートル未満)においては、若年居住者が減少し、単身高齢者の居住者が増加する見込み

 このレポートによれば、賃貸住宅市場の未来は非常に暗いということだ。アベノミクスでバブル到来かと浮き足立っている向きはこの市場見通しについてよく考えてみてほしい。

 では、これらのデータを前提とした場合の投資戦略はどのようにすればいいのか?

賃貸物件への投資をどう考えるか

 サラリーマン投資家が取り組みやすいアパート・マンションなどのレジデンス分野での投資については賃貸需要が減少する中で中長期的に入居率を落とさずに運営していくことは次第に困難になっていく。

 その中でも、少子高齢化に伴って高齢者層の賃貸需要が増加する一方で若年層の賃貸需要が減少するなど、需要の内訳の変化はあるが具体的にその変化を捉えて賃貸物件の投資に反映させることは難しいだろう。
 せいぜい言えるのは、今まではファミリー向けの賃貸物件は供給が少なく一度入居すれば長期間入ってくれるという理由でファミリー向けの一棟ものマンションに絞って投資をしていた人はよく考えてください、というのが関の山だ。

 ファミリー向け賃貸物件が単身者向け賃貸物件と違っている点は、入居者募集において他のファミリー向け賃貸物件と競合するだけではなく売買市場と競合するという点だ。単身者向けのワンルームを実需として購入する層は非常に稀なのに対して、ファミリー物件の場合には現在の支払い家賃とローンの支払い額を比較してローンの支払額のほうが低い場合には賃貸物件から退去して購入するという点で売買市場との競合になるということだ。長期にわたる低金利、35年間固定金利のフラット35、住宅ローン減税など持家を促進する要因をあわせて考えるとファミリー向け賃貸物件の将来は暗い。

【既に収益物件を保有している方の場合】
 地価上昇の局面で売却して利益がでるのなら売却してもいいのではないか。
 今回地価上昇があったとしても、次に日本にそのタイミグが訪れるとは限らないし、その物件の耐用年数から考えて、今回が最後の地価上昇の可能性もあり得るのだから。
 物件売却で種銭ができたら、後述のように通常のレジデンス系以外のものを検討してみるというのも一案だ。

【まだ収益物件を保有していない方の場合】
 現在賃貸物件を保有していない層にとっては、銀行は地価上昇の局面しか融資の扉を開かないため、地価上昇途中で銀行が不動産融資に積極的になった段階でしか物件を取得できないことは理解しておく必要がある。
 銀行は地価下落局面では担保割れなどを理由に融資を絞り込むが、地価上昇の局面ではそのような事態が発生しにくくなるため、融資に積極的になる傾向がある。

 物件を所有していない方にとっては融資の扉が開くタイミングを見極めながら、レジデンス系であれば比較的短期で売却するスタンスで臨む必要があるかと思う。
 あるいはレジデンス系に手を出さずに、後で述べる投資を模索する方がいいのではないか。

 不動産に資産価値があるのも不動産で収益が生み出すことができるからで、賃貸市場が縮小して収益を生み出すことができなくなれば、不動産の価値の前提が崩れてくることになる。物件を買えばそれで投資が上手くいったという訳ではなく、価値が減少する可能性があるものを取得したに過ぎないので売却によって利益を確定させるまでは安心できない。
 収益物件を保有していない方も悲観する必要はない。

 地価の上下のみに依存して売買によって利益を出すキャピタルゲイン狙いはあまりお勧めできない。
 いつが買い時でいつが売り時なのかは、後になってから初めてわかるがそのただなかにいる時にはわからないからだ(僕は今回のファンドバブル崩壊については旧版『1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法』で予想していたが、それがいつ起こるのかは全く予想できなかった)。

違う用途間の価値の差に着目する

 それよりも確実だと考えるのは、中・上級者向けかもしれないが、違う用途間の価値の差に着目して利益を上げるというものだ。
 これであれば、自分のコントロールできない地価というものに依存するのではなく、物件を取得したあとに価値を引き上げて売却によって利益を出すことができるからだ。
 何例か挙げておく。

【マンションとホテルの価格の差】
 たとえば海外ではairbnbというのが流行している。
 B&Bとはベッド・アンド・ブレックファストの略で主に英語圏の宿泊施設で、宿泊と朝食の提供を料金に含み、比較的低価格で利用できるもののことを言う。
 airbnbは個人の家やアパート、余っている部屋を旅行者とマッチングして旅行者が安価で宿泊できる施設を見つけることを支援するサイトだ。

 日本では旅館業法、マンション管理規約などの問題をクリアする必要はあるものの、現実には六本木を中心とする日比谷線沿線エリアの外国人がマンションを借りてそれを1泊7000円程度でB&Bとして提供して収益をあげている。
月額12万円ほどの単身者向けのマンションが1泊7000円のバーチャル(air)なホテル(bnb)に化ける。ホテルとマンションという違う用途の物件間での価格の差を活用して外国人が稼いでいる例だ。

【オフィス賃料と住宅賃料の逆転現象】
 地域によっては、通常であれば同じ地域の賃料単価はオフィス賃料>住宅賃料のところ、住居賃料>オフィス賃料と逆転しているエリアがある(レントギャップ)。特に老朽化した小規模ビルは都心におけるオフィスビルの供給過剰の中でテナントが集まりづらくなっている。
 このような都心の事務所ビルを建築基準法上の問題や耐震改修の問題をクリアして住宅にコンバージョンして共同住宅や一戸建て専用住宅として賃貸するというのもありかと思う。

 建設業界においてはこの市場を有望視して早くから参入しているが、個人の大家さんの取組み事例はまだ少ない。事務所として賃料がとれないものでも、住宅としてなら採算にのる小規模ビルは都心部には存在する。

【多世帯住宅】
 最近、僕自身が着目しているのは多世帯住宅の処理だ。
 世帯構造の変化によって2世帯住宅、3世帯住宅が不要になるケースは多い。そのような場合、まだ建物は比較的新しくて使えるケースであっても、長期間売れ残っているものが多い。

 これをコンバージョンしてシェアハウス化するというのは、余力のある投資家にとっては十分に可能性があると考えるが、融資がネックになっていて、現在はごく少数の銀行しか取組みをしていない。
 曰く、「専用住宅をシェアハウス化した場合には、出口がなくなってしまうので大幅に担保評価を引き下げざるを得ない」、「当行では先例がないため取組みはできない」、「オペレーションについての信頼性を銀行側で評価できる状況ではないため、できない」など理由は様々であるが、要するに事例の蓄積を待たないと融資のしようがないということが理由だ。将来的には可能になってくるかと思う。

 以上ざっと概観してきたが、マンションならマンション、商業ビルなら商業ビルのジャンルの中で割安のものを取得して賃貸収益をあげたり売却益をあげたりというのではなく、ある用途のものを別の用途に転用する形で利益を作り出していくというほうが、日本全体の人口が減少し、賃貸需要も減っていく中では有効な投資手法かもしれない。
 マンションなり商業ビルで割安なものがあったとしても、全体的な需要がなくなっていけばいずれはその分野は衰退してしまうからだ。

 トランクルームや貸し会議室、コイン洗車場など不動産活用のアイデアの中には皆が一斉に飛び付いてあっというまに飽和してしまうものもあるが、これから市場が拡大していくシェアハウスやサービス付き高齢者向け住宅などもある。
 読者諸氏がアベノミクスの波のなかで良質な資産形成をされることを祈って筆を置く。

http://diamond.jp/articles/print/34080

【第51回】 2013年4月1日 藤井 英敏
貿易統計速報より全国百貨店売上高に
投資家が注目すべき理由とは?
 東証一部の騰落レシオ(25日移動平均)は3月29日現在118.31%でした。前週の133.49%から低下しました。低下は3週ぶりのことです。また、3月22日の信用評価損益率はマイナス1.30%で、前週のマイナス0.86%から悪化しました。悪化は5週ぶりのことです。

 一方、日経平均の26週移動平均線(29日現在、1万384.63円)は20週連続で上昇しました。


日経平均週足チャート(1年)。緑が13週、赤が26週、青が52週の移動平均線(出所:株マップ)
 13週移動平均線(同、1万1493.95円)は19週連続で上昇です。29日時点において、日経平均は26週移動平均線も13週移動平均線も、共に上回っています。また、13週移動平均線・26週移動平均線共に上昇しています。基調は完全に上昇です。

 しかし、29日現在、13週移動平均線との乖離率は7.86%(前週は8.81%)と2週連続で10%を下回りましたが、26週移動平均線とのそれは19.39%(同20.39%)と引き続き超過熱状態です。

 信用評価損益率が5週ぶりに悪化し、騰落レシオが3週ぶりに低下したことから、東京株式市場は上昇一服となる可能性が出たようです。ただし、相場の先高観は強く、3月21日の1万2650.26円をブレイクするようなら、まずは心理的節目の1万3000円が視野に入ると見ておく必要はありますね。

 一方、下値メドは3月18日の安値1万2220.63円です。これを割り込むと、次のメドは3月の日経225のSQ値は1万2072.98円です。SQ値を下回ると、3月4日の安値1万1613.59円が視野に入るでしょうが、相当な悪材料が飛び出さない限り、3月の日経225のSQ値1万2072.98円が押し目限界と考えておけばよいでしょう。

足元の経済指標が悪いのは当たり前

 それはさておき、あなたが株式投資で成り上がりたいのなら、大量の相場の肥やしになるためのカモが必要であることは忘れてはいけません。

 このカモは、一般的には「曲がり屋」とも呼ばれています。多くの場合、このカモはネギの代わりに的外れな相場観や、経済・景気認識をしょって相場に参加しています。そして、その間違った相場観や経済・景気認識に基づいて投資をするから曲がり、そして損失を抱えるのです。

 ところで3月29日、株式市場の一部では日経平均が、ほぼ5年ぶりに10年移動平均を上回ったことが話題になっていました。過去10年間で株を買った投資家が、平均的に評価益状態になったのです。非常に喜ばしいことです。

 しかしながら、この期に及んでも、いまだに株式相場の先行きや、日本の景気・経済の先行きに弱気をいうカモネギが沢山います。この多くのカモネギがほざく内容は“「アベノミクス」は期待先行で実体経済は何も変わっていない。むしろ、足元出ている経済指標は悪いものばかり”ということに集約されているようです。

 まず、この連中が最も分かっていないことは、安倍政権が誕生してから、わが国の政策当局が採用する「金融政策」が最新のものに変更され、メチャクチャにバージョンアップしたことです。しかし、鴨葱は、最新の金融政策の凄さ、素晴らしさを全く評価していないのです。

 一方、株式市場や為替市場などのマーケットは、鴨葱とは全く逆にこれを高く評価しています。

 安倍政権になって、脱デフレ・卒円高に全く効かなかった、古臭くて役に立たなかった、かび臭い金融政策から、浜田宏一・内閣官房参与(米エール大名誉教授)が提唱する新しく、そして、バーナンキFRB議長などが実践している米国流金融政策を、ようやく日本も正式採用したことを、マーケットは非常に高く評価しているのです。

 だからこそ、日本株は上昇し、円相場も円高修正に動いたのです。

足元の数字が悪いからこそ金融を緩和している

 また、カモネギは、足元出てきている経済指標は悪いものばかりで、「アベノミクス」と世間は騒いでいるけど、足元発表されている指標はちっとも改善していないと指摘しています。

 例えば、「2月の貿易統計速報(通関ベース)では、貿易収支は7744億円の赤字で、赤字は8カ月連続で2月としては過去最大の上、円安なのに輸出は2カ月ぶりに減少した」また、「アベノミクスと騒ぐけど、2月の鉱工業生産指数速報値が89.0と前月から0.1%低下した。マイナスは3カ月ぶりのことだ」などと、ドヤ顔で指摘しています。

 しかし、そもそもそういう指摘をすること自体が、私には全く理解できません。政府・日銀は、足元の景気が悪いことが分かっているから、大型補正を組み、金融をさらに緩和しようとしているのです。また、政策の効果なんて、すぐに出るわけでもないのです。

 大体、常識で考えれば、足元発表される指標が良かったら、政府も日銀もそんなことをする必要がないのです。また、過去の悪い指標なんて、悪いということだけなら、小学生でも分かります。ちなみに、マーケットとは、過去ではなく、数カ月、数年先の将来の指標を予想し、今が買いか、売りかを判断する場所なのです。

 眉間にしわを寄せて、「過去の経済指標は悪い、アベノミクス効果はまったくない」とか言っちゃっているカモネギの頭を割って、マジで中をみてみたいものです。

むしろ百貨店売上高に注目すべき理由

 株式投資で成り上がりたいあなたは、当たり前のように過去の悪い指標は完全に無視して、むしろ、同じ過去でも、2月の全国百貨店売上高が、既存店ベースで前年同月に比べて0.3%増となり、2か月連続で前年実績を上回ったことなどに注目しましょう。

 株価上昇による富裕層の資産効果や景気回復への期待感から消費マインドの好転を背景に、輸入特選雑貨や高級時計など美術・宝飾・貴金属品などの高額品がけん引しました。このような資産インフレ効果の発現は今後ますます続出することでしょう。

 そうは言っても、こういうカモネギが相場の肥やしになってくれるから、相場がすくすくと育ち、今回も晴れて日経平均が、ほぼ5年ぶりに10年移動平均を上回ったのです。だから、株式投資で成り上がりたいあなたは、数多くのカモネギへの感謝の気持ちを忘れないようにしないといけません(笑)

http://diamond.jp/articles/-/34086?page=2


12. 2013年4月02日 02:24:57 : niiL5nr8dQ
【13/04/06号】 2013年4月1日 週刊ダイヤモンド編集部
経済好転は本物か? 給料はいつ上がるのか?
徹底検証 アベノミクスの“裏側”

安倍マジック!?
賃上げラッシュの真相

 トヨタ自動車、一時金約205万円の満額回答。日産自動車、同5.5ヵ月の満額回答。ホンダ、同5.9ヵ月の満額回答──。

 春闘の大手企業集中回答日となった3月13日、自動車メーカーなどを中心に一時金の満額回答や昨年実績を上回る回答が相次ぎ、“賃上げラッシュ”への期待が高まっている。

 集中回答日の約1ヵ月前の2月12日、首相官邸。安倍晋三首相はデフレ脱却に向けた経済界との意見交換会で、経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体のトップにこう語った。

「安倍政権の目標は、頑張った人が報われる社会。業績が改善している企業においては、報酬の引き上げを行うなどの取り組みをご検討いただきたい」

 米国やユーロ圏と比較すると、日本だけ賃金下落が続いている。こうした状況を踏まえての発言だった。

 異例の賃上げ要請に最初に応えたのは流通業界だった。ローソンを口火に、セブン&アイ・ホールディングス、ファミリーマート、ニトリホールディングスなどが次々と賃上げを表明した。

 こうした流れだけを見れば、安倍首相の発言がマジックのように浸透し、一連の賃上げを引き起こしたように思える。しかしタネを明かせば、そこには2つの誤解がある。

賃上げは一部だけ
実現には3年かかる

 まず、賃上げはまだ一部企業に限られているということ。円高による輸入物価低下で追い風が吹いていた流通などの内需企業や、円安で早期に業績回復が見込める自動車など、業績のいい企業から賃上げが始まっているだけで、しかも上がっているのは業績に連動する一時金の部分。ベースアップを実施する企業はごくわずかだ。

 また、3月14日時点の春闘第1回回答集計結果を見ると、賃上げ額、賃上げ率共に昨年実績より減少しており、安倍首相の発言が、昨年以上の賃上げをもたらしているわけではないことがわかる。

 もう1つの誤解は、業績がいいからといって賃金はすぐには上がらないということである。

 内閣府がまとめた「平成22年度年次経済財政報告書」の資料によれば、米国や英国などでは企業業績と一緒に賃金も増えていくのに対し、日本では業績の好転から2年たっても賃金は前年比でプラスに転じていない。

 今回も同じようなトレンドをたどるとすれば、円安への大転換で企業業績が回復に向かったとしても、賃金に反映されるのは3年後の15年度ということになる。

 今春の賃上げに、安倍首相の発言がまったく影響を及ぼさなかったとは言わない。景気が回復し企業業績も改善するだろうという期待感を醸成し、企業のマインドを多少なりとも変えたことは間違いない。

 しかし、「実体の裏付けがない期待感はバブルにつながる」(岩本康志・東京大学大学院教授)。その点で、安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスは、「未完の政策体系」(山田久・日本総合研究所チーフエコノミスト)であり、今後、景気回復への期待感を持続させながら実体化していく政策へのシフトが不可欠だ。

すべてが順調に見える今こそ
アベノミクスの冷静な検証が不可欠


「アベノミクスをレポートで批判しないように」──。

 ある大手証券のエコノミストは、安倍政権の経済政策に水を差さないよう社内に大号令がかかっていると明かします。証券会社にしてみれば、大胆な金融緩和に端を発した株高は、投資家の取引を活発化させ収益を拡大させる要因であり、大歓迎だからです。

 安倍政権が掲げている経済政策は、決して目新しいものではありません。それにもかかわらず、円安と株高が進行し、一部企業では賃上げも始まりました。まさに「安倍マジック」です。

 しかし、マジックには必ずタネがあり、見えていることと実際に起きていることは違います。鵜呑みにすれば思わぬ落とし穴があるかもしれません。

 一見順調に思える今こそ、一度立ち止まって、冷静にアベノミクスの効果と弊害を整理し理解しておく必要があるのではないでしょうか。

 『週刊ダイヤモンド』4月6日号の特集「給料は上がるのか? 安倍マジックのタネ明かし」では、安倍政権の経済政策、いわゆる「アベノミクス」を徹底検証しました。

 特集全体を「マジックショー」に見立て、第1幕から第4幕までアベノミクスの仕組みと効果、そしてリスクをわかりやすく解説し、終幕ではアベノミクスの「ワーストシナリオ」をまとめました。

 また、安倍マジックの「タネ明かし」を通して、為替や株、金利はどうやって動くのか。金融緩和の仕組み、深刻な日本の財政状態など、日本経済の「基本のき」が簡単に理解できるようになっています。

 新しい年度が始まります。良かれ悪しかれ、今年度はアベノミクスが日本経済を左右することは間違いありません。ぜひこの特集をお役立てください。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 前田 剛)


米ISM製造業景況指数:3月は予想以上に低下−受注が減速
  4月1日(ブルームバーグ):米供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数は前月から低下し、市場予想も下回った。生産や受注の落ち込みが目立った。
米供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景況指数 は51.3と、前月の54.2から低下。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は54だった。同指数で50は製造業活動の拡大と縮小の境目を示す。
ジャニー・モンゴメリー・スコット(フィラデルフィア)のチーフ債券ストラテジスト、ガイ・リーバス氏は「統計はまちまちな内容だ」とし、「政府の歳出削減のマイナス面が浮き彫りになっている。ただ民間セクターがかなり安定している状況もはっきり示された」と続けた。
項目別に見ると、生産指数は52.2(前月57.6)に低下し、半年ぶり低水準。新規受注は51.4(前月57.8)に下げた。
一方、雇用指数 は54.2(前月52.6)に上昇。輸出は56(前月53.5)に上げた。
受注残は51(前月55)に低下。在庫も49.5(前月51.5)に下げた。顧客在庫は47.5(前月46.5)だった。
仕入れ価格指数は54.5(前月61.5)に低下した。
原題:Manufacturing in U.S. Expanded Less Than Forecast in March(2)(抜粋)
更新日時: 2013/04/02 00:44 JST



• REAL TIME ECONOMICS
• 2013年 4月 01日 14:13 JST
米で大卒者の最低賃金就業者が増加、28.4万人
By BEN CASSELMAN
 2012年に米国の大卒者のうち最低賃金で働いていたのは28万4000人に上った。
 最低賃金にまで転落した大卒者は非熟練労働職からなかなか抜け出せず、経済が好転してもそのままとなる可能性があることが分かった。大卒者は非大卒者にくらべ、同一職種でも賃金が高い傾向がある。だれそれは、全員ではない。労働省によれば、大卒者のうち最低賃金の労働に従事しているのは28万4000人を数えている。このうち、大学院レベルの学歴を持つ者は3万7000人。ピークだった2010年の32万7000人からは減少したものの、07年の倍で、10年前に比べても70%増となった。

最低賃金で働く米国の大卒者
 ただ、最低賃金就業者のうち大卒者以上の比率は約8%で、過去10年間を見ると上下しておりはっきりした傾向はなく、ならせば平均水準にある。大卒者が就業者全体に占める比率は徐々に上昇しており、最低賃金労働者に占める比率が同じく上昇していないのは、絶対数は増えていても大卒者のうち最低レベルの賃金に落ち込む者の比率が低下していることを示している。
 時給労働者に占める大卒者の比率は、2002年には13%だったのが12年には17.8%に上昇した。数では1340万に達し、リセッション(景気後退)の開始以来で19%増加した。労働省の統計では時給労働者の賃金は明らかにされていないが、大方の大卒者にとっては大学時代に希望していた職種ではないのは確かだろう。
 経済が好転すれば、高賃金就業者に対する求人が増加し、それにつれて中低賃金就業者の求人も増加、就業をあきらめていた人も労働市場に戻ってくるという期待がある。だが、そうならない可能性もある。多くの統計では、雇用の伸びが比較的安定していても、景気回復期には賃金・所得は伸び悩みとなる。それには、高い失業率が継続しているなど、さまざまな理由が挙げられる。少なくともこれまでのところは、雇用市場は回復の途上にあり、就業者が自分の技能に見合う職を見つけられるまでには至っていないようだ。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324474804578395620447602556.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsThird


13. 2013年4月02日 11:43:36 : xEBOc6ttRg

TPP交渉は7月参加目指す、産業再編へ財務負担軽減策=担当相
2013年 04月 2日 10:49 

予想インフレ率上がれば2%に必要な需給ギャップ改善幅縮小=日銀総裁
13年度想定為替レート、自動車83.95円・電機84.87円=日銀短観
シリア3月の死者6000人超、過去最悪に=人権団体
物価目標の2年達成念頭に政策総動員=黒田日銀総裁

[東京 2日 ロイター] 甘利明経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は2日朝の閣議後会見で 7月にもTPP参加国間で開催する見通しの全体総会に、日本政府も出席する意向を示した。

担当相は「全体総会(開催)が7月という情報が流れている。日本はできるだけ直近の全体会に参加をして、国益を踏まえた交渉を行っていきたい」との考えを表明。「7月開催ということであれば、それに間に合うようにしたい」との意向を示した。国内の対策本部は「スタートは60人規模ぐらいで立ち上げる。その後、迅速に100人態勢を敷きたい」という。

<今後5年間は「緊急構造改革期間」>

政府はこの日朝の日本経済再生本部で、成熟産業から成長産業への労働者の移動促進や石炭火力発電所の活用などについて議論を行った。安倍晋三首相は会合で、それぞれの分野について検討を進め、迅速に実行するよう指示。今後5年間を産業再編を進める「緊急構造改革期間」と位置付け「構造改革に伴う財務負担の軽減」策を策定することなどを求めた。

担当相は財務負担軽減策の具体例として「日本の場合は予選で疲弊し、決勝戦で体力が残っていないと言われることがよくある」と指摘。「同じような部門を抱えて競争が激化し、その部門の採算が取れなくなってくると、部門を切り離して再編する際に、税制がマイナスに働くことがある。自社で抱えている部分は損益通算ができるが、切り離した場合にそれが効かないという指摘がある。再編に伴うマイナスに働いている部分を全体的に見直して、競争力を持つために再編する環境を整えていく」と説明した。

(ロイターニュース 基太村真司)
 

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黒田総裁:日銀券ルールに代わる歯止めを議論へ−長期国債の保有で 

  4月2日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は2日午前の衆院予算委員会で、日銀の保有する長期国債残高を日銀券発行残高以下にとどめる「日銀券ルール」に代わる、新たな歯止め策を検討する意向を示した。
総裁は「各国の中央銀行は長期国債を含めいろいろな資産を買い入れて金融緩和を行っている」としながらも、中銀による国債の直接引き受けは日本も含め原則禁止していると指摘。日銀の国債保有について日銀券ルールを「もはや超えた形になっており、どのような歯止めが適切か、政策委員会で十分議論したい」と語った。
一方、金融緩和に伴う為替相場への影響に関しては、一般論とした上で「大胆な金融緩和をすれば、円安になる傾向がある」と述べた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/02 10:55 JST


 


13年度想定為替レート、自動車83.95円・電機84.87円=日銀短観
2013年 04月 2日 10:02 JST


 
[東京 2日 ロイター] 日銀が2日発表した3月日銀短観調査全容によると、主要輸出業種である自動車や電気機械(いずれも大企業ベース)の2012年度下期の想定為替レートは、自動車が1ドル=81.36円(12月調査では78.97円)、電機は81.38円(同78.14円)とそれぞれ前回12月調査時と比べ円安に想定していたことが明らかになった。

13年度の想定為替レートは自動車が1ドル=83.95円、電機は84.87円となった。
 

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関連キーワード:
日銀短観想定為替レート自動車 

処分売り加速で一時300円下落
日経平均は大幅続落。取引時間中としては3月7日以来の1万2000円割れとなり、下げ幅は一時300円を超えた。


14. 2013年4月03日 01:10:21 : xEBOc6ttRg


【第274回】 2013年4月3日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
安倍マジックの「タネ」はどこにあるか?
安倍マジックの「タネ明かし」
「期待」は市場にどう効くのか

『週刊ダイヤモンド』4月6日号は、「安倍マジックのタネ明かし」の大特集を組んでいる。今やほとんど一般名詞のように使われる「アベノミクス」の仕組みの解説に、賛否両論、さらにデータを網羅している大特集なので、経済に関心のある読者は、ぜひ一冊手元に置いておかれることをお勧めする。

 しかし、タイトルに「マジック」とあることからもわかるが、アベノミクスの仕組みは、一般にもうひとつよく理解されていないように思う。

 最大のポイントは、アベノミクスの金融緩和政策で、どうして、円安・株高が起こるのか、という部分だろう。

 特集号の35ページには、市場参加者がインフレ期待を持てば、日米の物価差の縮小が起こり、これを(投機勢)が評価して、円安になる、といった説明が載っている。

 しかし、特集内の記事ではないが、22ページの野地慎氏のコラムに載っている日本国債のフォワードレートを見ると(4年後の1年物レートが0.2%程度である)、債券市場は近い将来インフレが起こると予想していないような金利形成になっている。

 前記の説明では、「インフレ期待が大事だというが、インフレにする方法がないのに、どうしてインフレ期待を持つことができるのか?」「現にインフレ期待が起きていないではないか」といった批判に対して反論しにくい。

 マジックのタネは、将来のインフレ率そのものではなく、将来の実質金利の期待値の変化にある。

 将来の物価は様々な要因で変動し、少なくとも小幅な上昇が起こる「可能性」はある。この場合、たとえばインフレ目標が「1%」であれば、日銀が遠からず金融引き締めに入る可能性を心配しなければならない。

 一方、インフレ目標が「2%」であれば、少々の物価上昇があってもゼロ金利が続くと予想することができる。

 したがって、「インフレ目標2%」の“約束”が固いものであると認識されれば、将来の実質短期金利の期待値が低下することになる。そして、実質金利の低下は円安要因なので、円安が進むという仕掛けだ。

予測が難しいインフレ率ではなく
予測可能な資金コストの変化を重視

 また、十分に高いインフレ目標が掲げられていると、短期金利のゼロ状態が長く続くことになると予想できる。これは、円資金を調達して他通貨資産に投資する、いわゆる「キャリー・トレード」を行う場合の期待コストがほぼゼロでいい期間が長期化することを意味するから、特集で言う「投機勢」にとっては、強力な円安材料だ。

 つまり、市場(参加者)は、将来のインフレ率といった予測が難しい曖昧なものに賭けているのではなく、近い将来の実質金利への影響や投機のファンディング・コストといった、もう少し直接的に予想可能で現実的な資金コストの変化に賭けている。

 そう理解すると、まだインフレ予想に対して半信半疑であっても、為替市場の参加者が「とりあえず円安!」と反応することは不思議ではない。

 なお、特集の37ページの「インフレ期待」を説明した用語解説で、「経済学で使われる『期待』という言葉には、“望む”という意味は含まれていない。一般的な言葉で言えば、“予想”に近い」という説明が入っていることは適切である。「期待」という言葉は時に誤用されたり、過剰なニュアンスを含んで使われたりするので注意が必要だ。

約束の固さは市場の期待に働きかける
岩田副総裁の「約束」は正しかった

 ここで大切なのは、「約束の固さ」だ。

 為替市場では、参加者が日銀(及び政府)の将来の行動の可能性を予想して、通貨を取り引きしている。

 たとえば、「2%」という目標が必ずしも達成しなくてもいい曖昧なものだと考えられたり、日銀が将来の判断でこれをより低く変更することがあり得ると考えられたり、2%まで物価上昇率が上がらなくても政策金利を引き上げたりする可能性がある、と考えられたりした場合には、「インフレ目標2%」というメッセージの効果が減殺されることになる。

 逆に、インフレ目標を政府が日銀に与えるような日銀法の改正や、インフレ目標の2%から3%への引き上げは、将来の期待実質金利をさらに引き下げる効果を持つだろう。

 こうした文脈を理解すると、日銀の総裁人事や、日銀法の改正、ひいては日銀首脳や閣僚の発言などが、市場(特に為替市場)に影響することの意味がわかる。

 たとえば、岩田規久男副総裁が、就任会見で、「2年で2%」が実現しない場合の責任の取り方について「辞任」に言及したことは、単に「男らしい」というだけでなく、「約束」を強めて、期待への働きかけを強化する点で正しいのだ。もっとも、安倍内閣としては、将来、任命責任を問われる可能性を避けたいだろうから、この発言を歓迎していない可能性はある。

 ともあれ、為替レートにしても、株価にしても、資本市場で形成される価格は、将来の変化を現在の価値に織り込んで形成される。日銀や政府が将来の行動パターンを現時点で「約束」することで、現在の価格に影響を与えることができる、というのがアベノミクスの「大胆な金融政策」の仕掛けである。

 ちなみに、福井総裁時代の量的緩和は、日銀当座預金に積まれた資金の量に「日銀はまだまだゼロ金利を止めない」というメッセージ効果があったが、後に極めて速やかに資金を回収して、ゼロ金利を解除してしまったので、この手段のメッセージ効果は薄れてしまった。白川総裁時代の量的緩和には、あまり大きな効果がなかった。

 一方、白川時代に行われた昨年2月の通称「バレンタイン緩和」では、日銀が「1%の物価上昇率のめど」を示したことによるサプライズ効果が約1ヵ月続き、数円の円安をもたらした。「物価目標なし」から「物価上昇率のめど1%」への変化は、「どケチ」が「普通のケチ」になった程度の変化であったが、市場は「期待」の変化に反応した。本来であれば、このケースから、「期待」に働きかけることの有効性を学ぶことができたはずだ。

インフレ目標を強い約束にすることで
為替介入プラス金融緩和と同様の効果を

 インフレとは通貨の価値が下がることであり、通貨の価値を下げるには、為替市場に介入して同時に通貨供給量を増やす(非不胎化介入を行う)ことが直接的で効果的だ。

 ところが、現在、為替レートの誘導を目的とした市場への直接介入は、先進国としては批判の対象になる。

 しかし、インフレ目標と金融緩和を組み合わせ、特にインフレ目標を強い約束とすることによって、為替介入プラス金融緩和と同様の効果をつくり出すことができたのだ。安倍マジックにタネがあるとすれば、ここが一番タネらしい部分だろう。

 一方、株価も、理論的には将来の実質金利に反応していい面を持っているが、株式市場は、主に為替レートに反応してきたと考えられる。

 特集の35ページで、「つまるところ、日本の株価、そして景気の今後は、現在の円安が続くかどうかに左右される」とあるが、この通りだろう。

 政策パッケージとしてのアベノミクスは、初期の段階で為替レートを通じた影響経路に対する依存が大きいことには注意が必要だ。当然のことながら、為替レートは一国だけの要因では決まらない。

 先般のキプロス問題で生じた円高のような、海外要因に基づく円高が、政策の効果に水を差すリスクは絶えずある。

 ただし、米国の経済が比較的順調であることと、インフレ目標に関するコミットメントの強化や目標値の引き上げなど、為替レートをより円安に誘導する効果を持つ政策の持ち駒には、まだかなりの数がある。

デフレ癖がついている企業や消費者
物価上昇率2%までの経路は長い

 特集記事は、「円安・株高が続けば給料は上がる?」(36ページ)、「物価目標の達成を左右する消費者物価の全貌と問題点」(42ページ)、「大胆な金融緩和だけでデフレ脱却できるの?」(46ページ)と、アベノミクスが物価に対してどう作用するかを探る考察を、様々な観点から巡らせている。

 端的に言って、「2%物価目標は高いハードル 需要喚起だけでは難しい理由」(48ページ)という渡辺努氏の記事にあるように、道のりは長いと言わざるをえない。

「企業の価格設定行動を変えることが不可欠」(49ページ)であるとすると、相当に時間がかかりそうだ。企業にも、消費者にも、長年の「デフレ癖」がついているから、意識と行動の変化には時間がかかる。

「2年で2%は可能か?」と訊かれたとすると、期待に働きかけるべき政策担当者(日銀幹部や経済閣僚など)は「可能だ」と答える必要があるが、正直を旨とする評論家としては「わからない」というしかない。

 ただし、円安と資産価格の上昇によって、成長率が高まり、失業率が低下する効果があるなら、期限内のインフレ目標未達成は大きな問題ではないと言える。もちろん、マイルドなインフレが実現している方が、成長にあっても、分配にあっても、問題が解決しやすいし、少なくとも「デフレ期待」の状態は脱しておきたいところだが、デフレ脱却は、成長率の向上と失業率の低下のための手段でもあるのだから、インフレ率の十分な高まりがない中で、これらが実現するとすれば「まあまあ」だろう。

成長戦略が重要であることは
金融政策の重要性を否定しない

 現段階で、「期待」に働きかけて、金融緩和の効果をつくり出そうとしている政策努力はおおむね適切だ。

 特集で岩本康志氏がインタビューに答えて(70ページ)、「『成長』はどんな時代でも大事なキーワードだが、そのために一番重要なのは、規制緩和を行い、あるいは既得権益の保護をやめて、民間経済の成長機会を引き出すことだ」と述べておられる。筆者は、この意見に全面的に賛成だし、この点については、左のページにおられる竹中平蔵氏も賛成だろう。

 だが、上記のような成長戦略が実行できた場合、その効果はマイルドなインフレの下で、あるいはそこまで行かずとも、円安で資産価格が高い状態の下で行う方が高いのではないか。成長戦略が重要であることは、金融政策の重要性を否定するものではない。

 インタビューの標題は「実体なき『期待』はバブルを生み、国民生活も財政も危険にさらす」となっているが(編集部がつけた見出しだろう)、経済にあって、「期待」は損得に直結する「実体」と同等に重要な要因だ。

 また、個人的な予想として、今後何らかの「バブル」が生じる可能性は小さくないと思うが、「バブル」に対しては具体的な判断基準を持つことが必要だ。現在の株価は、「まだ」バブルではないと筆者は判断している。

 また、個々の資産市場のバブル対しては、これを全般的な金融政策で制御しようとするのではなく、個々の市場に働きかけることと、将来バブル崩壊で傷を負う可能性を持つ信用の質と量及び金融機関の体力を、個別にコントロールすることが重要だと思う。
http://diamond.jp/articles/print/34137

 


 
第1回】 2013年4月3日 山田 久 [日本総合研究所調査部長 チーフエコノミスト]
【新連載】
アベノミクス:未完の政策体系
――日本総研調査部チーフエコノミスト 山田 久
第2次安倍内閣が発足して3ヵ月余りが経過した。円安・株高が進み、家計・企業のマインドも好転し、日本経済に久方ぶりの明るさが戻っている。その一方で、その持続性への懐疑や思い切った金融政策の副作用に対する懸念も指摘される。いずれにせよ今回の政策転換が、これまでの縮小均衡に歯止めをかけ、将来への期待を取り戻した点では評価する声が大勢である。加えて、失われた20年を脱して、日本経済を再び一流国に浮上させるラストチャンスである、との見方を多くが共有しているところだろう。
そうした認識に立って、本シリーズでは、安倍内閣が掲げる経済政策、いわゆるアベノミクスが本当に経済再生・デフレ脱却をもたらすことができるのか、むしろそれらをもたらすためにはどういった修正が必要になるか、「建設的批判」の観点から検証・提言を行っていく。


やまだ・ひさし
1987年京都大学経済学部卒業(2003年法政大学大学院修士課程・経済学修了)。同年 住友銀行(現三井住友銀行)入行、91日本経済研究センター出向、93年より日本総合研究所調査部出向、98年同主任研究員、03年経済研究センター所長、05年マクロ経済研究センター所長、07年主席研究員、11年7月より現職。『雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか』(2009年、日本経済新聞出版社)『デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか』(2010年、東洋経済新報社)『市場主義3.0 「国家vs国家」を超えれば日本は再生する(2012年、東洋経済新報社)』など著書多数。
非伝統的金融政策の効果

 安倍首相は自らの経済政策の基本方針を@大胆な金融政策、A機動的な財政政策、B民間投資を喚起する成長戦略、の3本の矢からなると説明している。これらのうち、首相はとりわけ大胆な金融政策を重視し、日銀にいわゆる非伝統的な金融政策を思い切って行うことを要請してきた。しかし、ゼロ金利下で中央銀行が、バランスシートを拡大していく、非伝統的金融政策の効果をめぐっては、これまで激しい論争が繰り広げられてきた。

 なかなか見解の合意が得られないのは、そもそもこれらのツール適用の経験が乏しいことのほか、金融政策の波及経路、いわゆるトランスミッション・メカニズムが必ずしも明確でないことがある。金利の上げ下げを通じる伝統的政策は、それが企業や家計の借入コストを直接左右するため、設備投資や住宅投資を増減させるというルートが明確である。

 これに対し、非伝統的政策は、中央銀行が国債や株式などのリスク資産を購入することにより、まずは@長期金利の低下(国債需給のタイト化)、Aリスク資産価格の上昇(信用緩和)、B自国通貨の減価、に影響を及ぼし、その結果、実体経済に影響を及ぼす経路を想定しているといえる。中央銀行がコントロールし切れない資本・為替市場を経由するルートだけに、政策効果には不確実性が残ることになる。

 この点に関し、リーマンショック以降、思い切った金融緩和を行ってきたバーナンキFRB議長が、昨年8月31日にワイオミング州ジャクソンホールで示唆深い講演を行っている。非伝統的金融政策の効果に関するコメントの要点は以下の3点にまとめられる。

@過去数年における米国内外での経験から、ゼロ金利下の金融政策は有効であることは明確である。
A現段階の我々の有する知見のもとでは、非伝統的政策は適用が難しいツールだ。その経済や物価に対する効果の計測は不確実なものであり、伝統的な政策に伴う以上のコストが内在する。
B金融政策はそれのみでは、より広くバランスのとれた政策が達成できる目標を達成することはできない。とりわけ、財政や金融市場のリスクに対してそうである。

 このように、非伝統的な政策の提唱者であるバーナンキ議長が、自らの実践を踏まえ、非伝統的金融政策の効果を主張する一方、効果の推計の不確実性、コストの大きさなど、限界を指摘しているのである。

 要するに、非伝統的金融政策は、それが長期金利・リスク資産価格・為替相場といった中央銀行がコントロールし切れないものを政策の中間的な目標としているため、マーケットの「期待」に働きかけることが出来るかどうかがその効果を決める。このように「期待」への働きかけが中心になるため、「時間稼ぎ」の面が強く、「期待」を「現実」のものにしていく、金融政策以外の政策手段の併用が重要になる、といえよう。

昨年11月以降の円安を
どう評価するか

 このようにみれば、昨年11月以降の円安の急進をどのようにとらえればよいのか。安倍内閣の誕生による金融政策の方針転換が直接的な要因であることは間違いないが、金融政策の効果を過大評価すべきではないと思われる。

 長期的にみれば、為替相場の動きは内外物価格差から与えられる購買力平価によって規定されている。円ドルレートの場合、2000年代以降の動きをみると、企業物価基準で算定される購買力平価を円安の上限、そこから25%円高水準を円高の上限とする、一定のレンジ内で推移してきている(図表1)。

 この観点からすれば、昨年秋段階では円高の上限近くで推移しており、何らかのきっかけがあれば円安方向に大きく振れる状況にあったことがわかる。そのきっかけが、安倍内閣の誕生による金融政策の転換への「期待」であった。


 ここで重要なのは、円相場に影響を与えたのが、金融政策の「実弾」よりも「期待」であったことである。安倍内閣発足以降、日銀は2%のインフレ目標政策の導入というレジームチェンジを行ったが、実際のオペレーション上に大きな変化はない。昨年11月以来の円安は、大局的にみれば、購買力平価から算定される変動レンジ内での行き過ぎた円高状況からの修正ととらえることができる。金融政策がマーケットを自由にコントロールできるという見方があるとすれば、それは大きな勘違いであるといえよう。

 さらに、2月のG7・G20以降、金融政策を明らさまに円安誘導のため使うということは、国際的に許されない状況になっている。積極的な金融緩和で円安基調は定着すると予想されるものの、1ドル=100円を超えてどんどん円安が進むかどうかについては、疑問が大きいといえよう。

金融政策のみに頼った
経済政策は危い

 そうしたなか、3月20日にスタートした黒田新体制のもとで日銀は、残存期間の長期化を含む国債の買入れペースのスピードアップと、リスク資産の買入れ増加を組み合わせながら、ベースマネーを積極的に増やすスタンスを強めることが予想される。

 では、これがデフレ脱却につながるのか。この点に関し、消費者物価上昇率に対する、マネーサプライ、為替レート、名目賃金など、物価変動に関連する主要指標の影響度を90年代以降について計測してみた。それによれば、名目賃金の影響力が最も強く認められ、次に為替相場の影響力が強く、マネーサプライの影響力は劣る、との結果が得られた(図表2)。

 名目賃金は、首相の異例ともいえる要請で、2013年春闘では大手企業では賃上げの動きが広がった。しかし、あくまで一時金が中心であり、中小企業の賃上げは難しいとみられ、持続的な賃上げの見通しが立ったわけではない。さらに、すでに指摘した通り、円安進行に限界が予想されるなか、確実に消費者物価を上昇させる賃金上昇・円安進行というルートは短期的には期待できない。そうしたなかでマネタリーベースをハイペースで拡大していけば、資産価格の上昇が生じやすくなる。


 これは80年代後半の平成バブル期直前と状況が似ている面がある。当時も消費者物価が安定していた。米国の株価急落への配慮もあり、金融緩和が継続された結果、バブル的な資産価格の上昇が発生した。現地点ではバブルには程遠く、下がり過ぎた資産価格の適性化の過程というべきであろう。

 しかし、かつてない積極的な量的緩和が数年間にわたって継続されれば、株価や地価はファンダメンタルズで正当化される水準を上回って上昇していく。平成バブル期とは規模は異なるにしても、株価や地価の上昇で実力以上の需要が生まれ、モノ余りが解消されていずれ消費者物価は上昇に転じるであろう。その結果、2%は達成できるかもしれない。

 ただ、80年代末と同様、それは経済に大きな不均衡が生じた状態、つまり所得のトレンド的な増加を上回る、将来の需要を先食いする形での需要増加に伴う物価上昇であり、いずれはバブル崩壊という望ましくない結末が待ち受ける。その意味で、金融緩和のみに頼った経済政策は危ういと言わざるをえない。

未完のポリシーミックス

 アベノミクスが市場の「期待」を変え、企業・個人のマインドが好転し、経済の縮小トレンドを拡大トレンドに変えつつあることは高く評価できる。円安・株高が進む一方、金利が抑えられていることからすれば、初動としては大成功といえる。

 しかし、上で指摘してきたように、現状の金融政策のみが先行する手法には危うさが伴う。しかも、アベノミクスの3本の矢は必ずしも互いに整合性がとられていない。大胆な金融緩和が期待する円安や金利低下は、金利押上げに働く積極的な財政政策と矛盾するし、拡張的な金融・財政政策は構造改革の先送りにつながりやすく、成長戦略との整合性が十分でない。

 筆者は、日本経済の再生・デフレ脱却には、最終的には賃金が持続的に増加していく状況を作ることが不可欠と考えるが、そのためには政策の重点を金融・財政政策から成長戦略にシフトする必要がある。そのうえで、成長戦略を、産業活性化策と分配政策をリンクさせた形に修正し、生産性向上と賃金引上げを同時達成するものにバージョンアップすることが望まれる。

 加えて、国家債務がGDPの2倍を上回るという、先進各国で最悪という財政の危機的状況を直視し、財政健全化を経済再生・デフレ脱却に並ぶ最優先課題として取り組む段階にある。その際、重要なカギを握るのが社会保障制度の改革であり、万人の歓心を買うばら撒き政策に、本格的にメスを入れることはもはや待ったなしである。

 アベノミスクスは縮小均衡のなかで閉塞感のみが高まる状況を変え、ジャパン・ナッシングといわれる状況を打破して世界の注目を惹きつけている。この点で、堅調に滑り出したといえる。しかしそれは「未完のポリシーミックス」であり、「発展途上の政策体系」である。これを経済再生・デフレ脱却・財政再建につながる「完成された政策体系」にどう修正・発展させていくのか、次回以降、日本総研の河村小百合主任研究員、西沢和彦上席主任研究員とともに、より具体的に考えていきたい。
http://diamond.jp/articles/print/34167

 

 

 

日銀さん大丈夫? 「日本はスタグフレーションです」

藻谷俊介氏が指摘する「停滞と物価高」

2013年4月3日(水)  金田 信一郎

 アベノミクスによる株高と円安で、中間層は沸き上がっている。だが、輸出数量が減少し続ける中で、物価が上昇する景気の現況は、経済の教科書にある「スタグフレーション」そのものだ。人気エコノミスト、藻谷俊介スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表が、日銀と安倍政権の「連携」を憂う。
(聞き手は金田信一郎)
日本銀行の新総裁に黒田東彦氏が就任しましたが、2%の物価上昇率を達成することを約束させられる格好になりました。そもそも、日銀総裁は、就任当初からこれほど金融政策を縛られるものなのでしょうか。

売れないのに値段が上がる

藻谷:その約束させられたことを、張り切ってやっているような感じがします。この人もなかなかフレキシブルな人だな、と思いました。


藻谷 俊介(もたに・しゅんすけ)氏
スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表取締役エコノミスト。1962年生まれ。85年東京大学教養学部卒業。住友銀行、ドイツ銀証券をへて96年に独立。日経ヴェリタス「人気アナリストランキング」の常連
 自我を強く持った人ですと、他人から横やりを入れられることを好まないものです。ある程度の要望を言われて仕事を受けたとしても、「過剰サービス」だと思ってしまいます。報道を通して見ているだけですが、黒田さんはハッスルしているみたいで、それが少し気になりますね。

 とにかく「常識人」としてやってほしい。(金融緩和を)やめる、やめないという判断について、(安倍晋三首相の)期待に応えることをベースにするのでなくて、黒田さんが専門家として、自分で考えて決めてほしい。当たり前のことなのですが、本当にそれができるのか、報道を見ていると不安になります。

安倍首相は日銀との連携を強化すると言っています。でも、つい10年ほど前には、「日銀の独立性が重要だ」と議論されていました。中央銀行の独立性を強化するという話はどこに行ってしまったのでしょうか。

藻谷:時代と状況が変わったんでしょうかね。でも、中央銀行の独立性は、今のような状況こそ必要なんです。

 政府は「景気をよくしたい」「中央銀行にカネを刷らせたい」と思っている。それに対して、中央銀行が金融政策の専門家集団として、違った意見を持って臨むことが重要です。これはバブル経済の反省から生まれた議論でした。しかし、今では「バブルを作ったっていいじゃないか」という雰囲気になっている。黒田さんも、「これをバブルと言われても、私は構わない」と実は思っているんじゃないか。

 景気について言えば、経済データは、実はよくないんですよ。特に気になるのは、輸出数量が毎月のように減っていることです。ただ、25%も円安になったおかげで、輸出は金額ベースで大幅に手取りが増えている。でも、数量が減っているのだから、国際競争に負けているということです。

 だから、なぜエコノミストが指摘しないのか不思議なんですけど、これこそが「スタグフレーション」なんですよ。

あの、社会の教科書に載っていたヤツですね。

藻谷:だって、販売数量が減っているのに、物価が上がるんですから。今こそ「スタグフレーションの状態だ」と言わなければならない。でも、言わない。どう見ても、今こそ「スタグフレーション」に一番近い状態です。だとすれば、こういう状況下で株と地価だけが上がるとすれば、まさに「バブル」でしょう。今こそ、中央銀行の独立性が、本当は必要な時なんです。

現代の建艦競争

この状況を日銀が放置すると、どうなるんでしょうか。

藻谷:かつての建艦競争を思い出しますね。軍事力の優劣を決するのは、軍艦の数だとされて、各国が建艦計画を競っていく。その結果、「あっちが造るなら、こっちも」と無益な国際競争に巻き込まれてしまう。

 現代の通貨戦争においては、カネを刷って金融緩和をする国際的な競争が起きています。でも、無益であるばかりが、害が出てくる。だって、カネばかり刷っていても、世界の需要はそれほど伸びていませんから。リーマンショック前まで、米国は3.5〜4%の成長率で推移し、中国は10%成長を続けていた。しかし、当時と今では、需要の伸び率が全然違うわけです。それなのに、当時を上回るようなお札の刷り方をしていたら、全人類が不利益を被るようなインフレが発生する危険が高まる。それなのに、やめようとしない。それどころか、日本がその流れを助長するようなことをしている。それが、建艦競争の後の破滅を予感させます。

 タイミングが悪いことに、キプロスの財政危機という問題が浮上して、ECB(欧州中央銀行)も建艦競争に参加する理由ができてしまった。そこにもってきて米国のQE3(量的緩和第3弾)が本格的に始動して、マネタリーベースの伸び方がぐっと上がってきています。

 そこで、黒田さんは早速、金融政策決定会合でまた供給を増やそうとしている。考えられる理由は、「米国がまた始めたから」としか言いようがないんですよ。

 これまでは、日銀の方が(米連邦準備理事会より)ペースが速かったけど、今はマネタリーベースで見ても、(中央銀行の)バランスシートで見ても、連銀の方が勢いがあります。すべて黒田さんに責任を押しつけることはできないけれど、ここは中央銀行としての良識を見せないといけません。

しかし、黒田総裁と日銀は「建艦競争」に負けじと、金融緩和の手を次々と打ってきます。

藻谷:中国人民銀行も困っていると思いますよ。日本と米国は「ゲームで勝とう」と思って必死になっているけど、巻き添えを食って付き合わされる側はたまったものではありません。だから、ECBも辛いでしょうね。

 中国はどうするのか。為替をコントロールしている国ですから、すぐに通貨が動いてしまうわけではありませんが、それでも強い「元高プレッシャー」に直面します。悩ましいのは、最近になって中国の地価がまた上がり始めていること。バブルが起きることを嫌うなら、元を高くするしかない――。そういう選択を突きつけられている状況です。先進国がカネを刷りまくることによるインフレの危険は、我々よりも中国などの新興国の方が深刻でしょう。

 そう考えると、金融緩和競争は、本当に建艦競争に似ている。誰にとっても利益にならないし、明らかにリスクを高めています。でも、止めようと思っても、誰にも止められない。そういう意味で、すごく類似性が高い。

 そこに、「どんどん軍艦を造るぞ」と言っている人を総裁に選んだ国が出てきた。「イケイケ」という雰囲気が止められなくなっている。

成功するほど、反動が大きい

20世紀末に続いて、また日本でバブルの生成と崩壊の悲劇が起きるかもしれない。

藻谷:すでにあちこちで、バブルが生まれています。「国債バブル」もそうです。本来、インフレ政策をとっていれば、長期金利が上昇して、債権は売られなければいけないはずです。

ところが、「日銀がガンガン買います」と宣言している。

藻谷:だから、それを多くの人が期待して、国債を買ってしまっているわけでしょう。こんなことが続けば、いつか大規模な修正が起きることになります。

 だから、アベノミクスは成功すればするほど、大規模な調整が必要になってくる。まさに危険な政策というわけです。国債が売られ始めれば、下落が止まらなくなり、円安を伴いながらさらに落ちていく。しかも、実体経済の“健康状態”はかんばしくない。

 結局、「インフレが望ましい」という理由は、健全な景気状況を反映して、物価上昇が起きるからなんです。それが、インフレ自体を目的化して、「物価が上がれば何でもいい」という発想になってしまった。だから、スタグフレーションに陥るわけです。実質成長を伴わない物価上昇になってしまうと、それは「お門違いのインフレ」なんですね。

 でも、今はその区別をメディアも認識していない。私も「本当に2%のインフレになるのか」とばかり質問されます。それは、どういう「2%」を意味しているのか、そこが重要なんですね。見かけ上の「2%インフレ」なんて、円安にすれば達成可能ですよ。だけど、それでは経済にとって逆効果になってしまう。


黒田総裁も、アベノミクスとは一線を画した政策判断が求められます。

藻谷:今の日銀は、グローバル経済のダイナミクスと、突然のごとく現れた安倍首相に流されていますね。

 それにしても、安倍首相は何をやりたいのか。というのも、第1次安倍政権というのは、戦後史上、最もマネタリーベースを増やさなかった政権だったんですよ。その人が、まったく違う政策を掲げている。「君子豹変す」と言えばかっこいいのかもしれないけど。本音は、「憲法を改正したい」ということで、経済は「人気を高める道具」程度にしか思っていないのかもしれません。

でも、今のところ円安と株高に沸いて、アベノミクスは成功すると思っている人が多い。

藻谷:でも、これほど一気に円安に振れて、米国が文句を言わなかったことはありませんからね。しかも、実体経済を見れば、輸出数量は下がり続けているという恐ろしい状態が続いています。

 まあ、「日本企業が国際化して、海外に工場を建てているからだ」という見方もあるでしょう。でも、海外生産移転を最も進めたのは米国です。その米国が、今は国境の外に向けて輸出数量を伸ばしている。この瞬間において、リーマンショック前のピークの数字を上回っていますから。欧州ですら、ちょっと(リーマンショック前の数字を)上回っている。そう考えると、日本の数字は尋常ではありません。

最後の日本脱出

藻谷:でも、アベノミクスに沸いて、センチメントだけは上向いています。消費がちょっと改善して、貯蓄率が減ったんですね。そうした変化は現れていますけど、テレビもクルマも、エコポイントなどで需要の前倒しをしてきたので売れない。

 では何が売れているかというと、食料品などが上がっています。ささやかな贅沢をしているんでしょうね。和牛ステーキとかを買っているのかな。あとは、衣料もちょっといい。でも、大型商品である自動車やテレビは売れないんですね。

 センチメントだけが急上昇している。2カ月でこれほど上昇したことは、過去にありません。日本人のみなさんが、気持ちよくなっていることは間違いないんです。でも所得は増えていないから、結局、貯蓄率が下がってしまう。

 もう1つ重要なことは、消費性向が上がっている人々の分析です。実は、年収360万〜870万円の「中間層」のセンチメントが上向いている。所得が少ない人々は下がっています。物価上昇に身構えて、逆に不安になっていると思うんですよ。民主党の時はこの層がちょっと上がっていたんだけど、今は逆方向になっています。「また二極化するんじゃないか」という恐怖ですかね。そして、最も所得が高い「お金持ち」のセクターも下がっている。「アベノミクスで景気回復なんて、信じちゃいないよ」という感じでしょうか。

 こうした経済データを定点観測している立場からすると、見れば見るほど「これでいいのか」と思ってしまいます。

安倍首相は、アベノミクスがもたらすリスクも見据えた上で、判断しているのでしょうか。

藻谷:そこは懐疑的ですね。将来に禍根を残すという意味では、非常に懐疑的です。みんなでこんなに浮かれて、後でひどい目に遭うのではないか、と。

 中国も今、地価が再び上昇してきて、また引き締めに走るような予感もあります。それでも、中国の方が中長期的な視点で経済政策を打っているという見方もできるかもしれません。中国が発展途上国、日本は先進国、という目で見たら、日本のやっていることは、先進国らしからぬ経済政策であることは間違いありませんね。

 もちろん、中国の方がまだしっかりしている、と見えてしまうのは、中国への目線を若干低くしているからかもしれません。しかし、そうだとしても、日本の方が将来の問題を把握しないまま政策を打っている気がしてならないんです。そこが怖い。中国は、将来の舵取りを共産党がやり遂げられるかどうかは別にしても、迫り来る問題を把握しているのではないでしょうか。

 一方、この安倍首相という人は、これから先に起こる問題が分かっていないように見えます。アベノミクスが掲げる「三本の矢」を見ても、国際競争力という点では、まったく役に立ちません。「おカネを刷る(金融緩和)」と「堤防造る(公共工事)」は論外ですが、「規制緩和」の効果も期待できない。規制を撤廃する分野がサービス業中心なので、製造業の復活が描けないからです。

 これだけ中国のコストが上がってきているにもかかわらず、日本の競争力は回復せず、むしろ落ちている。このままでは「最後の日本脱出」が始まって、日本の産業基盤がガタガタになってしまうのではないでしょうか。


金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス副編集長。日経ビジネス記者(1990〜2006年)、ニューヨーク特派員(2006〜2009年)、日経ビジネス副編集長(2010年)、日経ビジネスオンライン副編集長(2011年)を経て、2011年9月から現職。

 

第93回】 2013年4月3日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
2%のインフレは、3%の消費税増税とどう違うのか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
 デフレ脱却を急ぐために、日銀は2年以内に2%の消費者物価上昇を目指すという。2%の消費者物価上昇率を達成すれば、デフレを脱却できるのだろうか。

 注意したいのは、多くの人が景気を良くして物価の下落を止めるということを指して、「デフレ脱却」と言っていることだ。単に経済指標としての消費者物価を上げることを望んでいるのではない。

 単に消費者物価を上げるのならば、消費税率を引き上げればよい。消費税は、事業者が販売価格に税率をかけた金額から、仕入代金に消費税をかけた金額を控除して納税する。3%分は事業者のものにならない。

 付加価値の中から抜き取られた税額の部分は、事業者から政府へと所得移転されるだけだ。最終的に税金を負担するのは消費者だ。だから、消費税増税は、消費者物価を上げることになっても歓迎されない。

 一方、金融緩和を通じたデフレ脱却は、マネーを増やすことによって起きるという説明になっている。純粋な貨幣数量説に基づくと、貨幣流通量を増やせば、物価の水準自体が書き換えられて、デフレが解消されることになっている。

 貨幣流通量が10%増えれば、物価も10%上昇するという論法だ。ここで注意したいのは、尺度としての貨幣が増加した結果、物価が上がっても、正味の生産性は変化しないことだ。これは、実質成長率は不変(中立的)という意味である。

 3%の消費税率の引き上げでも、2%の消費者物価上昇でも、実体経済を良くする効果がないのに、なぜ大胆な金融緩和が推進されようとしているのだろうか。筆者は、インフレに隠れた思惑があると見る。

 実際は、貨幣数量説の説明とは異なって、マネーを増やすと経済成長率には中立的ではない刺激効果が表れるから、実体経済に与える影響に期待する人が増えるのだと考える。

価格転嫁ができないと
企業収益が増える

 物価が上昇したときの効果について、数値例を用いながら考えてみたい。財務省「法人企業統計年報」(2011年度)を使って、価格が2%上昇して、売上(1381兆円)が2%増えたときのシミュレーションをしてみる。

 原材料・仕入価格も同様に2%上昇して、売上原価(1051兆円)が2.0%増える。当然ながら、売上総利益(=売上−売上原価)も2%増加である。

 ただし、ここで販売管理費(291兆円)が同様に2%スライドすれば、営業利益(39兆円)は2%の増加とそのままスライドする。

 しかし、固定費を多く含んでいる販売管理費がそのまま2%でスライドするかどうかはわからない。今、シミュレーションとして、人件費が(1)100%スライドした場合、(2)50%スライド、(3)0%スライド、の3つのパターンで営業利益の増加率を計算してみた(図表1、2)。

 スライドの率が変わると、営業利益の増加率がどう変化するのかは、それぞれ(1)2.0%、(2)7.1%、(3)12.3%と増え方が変化した。人件費の連動性が鈍くなるほどに、営業利益の伸び率は大きくなる。これは、物価に連動して人件費の引き上げが遅れれば、企業収益が嵩上げされることを示している。

 ここではわかりやすく、固定費のうち人件費がスライドしにくい事例を考えたが、別の費目(仕入価格、支払利息、賃貸料)などがスライドしない場合でも、企業収益がより大きく増える理屈に変わりがない。

 リフレ政策を推進して、株価が上昇するという背景には、価格転嫁が満遍なくは進まずに企業収益が増えるという期待感があるからだろう。

 また、リフレの効果は不動産投資にはより大きく表れそうだ。販売価格が上昇し、人件費などが完全に連動した場合でも、支払利息が不変のままであれば、不動産事業の収益がより大きく増えていく。

 不動産事業では、レバレッジを効かせてバランスシートを膨らませるという財務構造になるので、支払利息が低位に抑えられたときのメリットを享受しやすい。REITなどの不動産投資信託は、リフレ政策によって値上がりしやすいのは、賃料収入と支払利息の差が大きくなりやすくなるからである。

需給逼迫を抜きにして
物価を上げられない

 販売価格が一律で上昇していく世界では、企業が仕入価格や費用を低く抑えることでより大きな収益を稼ぎ出すことができる。だから、一斉値上げが成り立たないと考える。

 本当にデフレ脱却をするためには、全企業が一斉に値上げをすることが必要だ。しかし、誰かが抜け駆けをして価格転嫁を渋るインセンティブがあるから、経済メカニズムとして、川上から川下までの価格転嫁が同時に起こりにくい。

 では、なぜインフレ経済では、価格転嫁が進むのかと言えば、川上から川下まで需給がタイト化しているからである。需給が逼迫しているとき、仕入価格の値上げを渋る企業がいても、値上げを受け入れてくれる別の企業に売ればよい。買い手は、そうした競争を通じて値上げに応じるしかなくなる。

 労働市場でも、卸売市場でも、小売市場でも需給が逼迫しているから、競争圧力が各段階で働いて、全体的な物価上昇が起こる。裏返しに言えば、各市場の需給逼迫がなければ、インフレは起こらない理屈である。

 実際、企業が感じる製商品需給の状況と、消費者物価の動きはかなり連動している。日本銀行「短観」の非製造業の国内製商品需給判断DIと、消費者物価(除く生鮮食品)の推移を並べると、両者はほぼ一致した動きを見せている(図表3)。消費者物価がマイナスであるのは、やはり需給が緩和していることが背景にある。


 こうした需給悪化を考慮に入れずに、マネーを増やして物価をコントロールしようという構想は、机上の空論に終わってしまう。先ほどの需給判断DIと消費者物価の関係から考えて、消費者物価上昇率2%になった場合の需給判断DIを計算すると、10〜20の「需要超過」になっていなければいけない。

 2年以内に金融緩和を進めることで、需給判断を10〜20の「需要超過」のレベルに持っていくという計画は、過大目標に見える。


 http://diamond.jp/articles/print/34136

 


 


15. 2013年4月03日 09:38:33 : e9xeV93vFQ
黒田日銀きょう初会合、レジーム転換なるか−期待や量的緩和に懐疑も

  4月3日(ブルームバーグ):黒田東彦総裁の下で3、4の両日に初めて開かれる日本銀行の金融政策決定会合では、政策運営のレジームチェンジ(体制転換)に踏み切れるかどうかに注目が高まっている。エコノミストの間からは、期待への働き掛けを重視する黒田総裁の方針や、新たな量的目標の導入に対して懐疑的な見方も出ている。
黒田総裁は3月26日の衆院財務金融委員会で「日銀のバランスシートの負債側は非常に分かりやすい。マネタリーベースも日銀券と当座預金が大宗なので分かりやすい」とする一方、「資産側は輪番オペで買っている部分と資産買い入れで買っている部分がどういう状況になっているか、一見分かりにくい」と指摘。「量的、質的緩和を進める上で、負債側のマネタリーベースも重要だが、資産側も重要だ」と述べた。
こうした発言から、今回の会合では、バランスシートなど量的な指標を新たな目標に掲げるのではないか、との見方が出ている。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「黒田総裁は白川方明前総裁が推進した『包括緩和政策』を『バランスシート緩和』と書き換えることで、転換色を打ち出すのではないか」と予想する。
さらに「日銀がマネタリーベースを積極的に拡大していこうとすれば、日銀券ルールを適用外にするために創設した資産買い入れ等基金を操作するのではなく、バランスシート全体を使って資金供給をしていくだろう。日銀のバランスシートを膨らませることで、同時にマネタリーベースの伸び率を拡大できる」と指摘する。
バランスシート拡張政策  
3月20日現在の日銀のバランスシートは165.4兆円。白川前総裁は7日の会見で、既に表明した追加緩和措置により、年内に当座預金は約85兆円、当座預金と日銀券を合わせたマネタリーベースは約170兆円に達するとの試算を明らかにした。これをそのまま当てはめると、日銀のバランスシートは200兆円を超える水準になる。この規模一段と膨らませることで、量的な緩和をアピールするという考えだ。
日銀元副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長は26日のインタビューで、「金融政策運営において、国によって中央銀行の負債、資産のどちらに力点を置くかは異なっている。バランスシートは負債と資産の両方を含んでいるので、それらを『バランスシート拡張政策』と総くくりにしても良いと思う」と述べた。
バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは「日銀の負債サイドの残高目標は導入しない可能性が高く、資産サイドで残高とフローの二重目標となる可能性が高いのではないか」と予想する。一方、新たな量的な指標を設定するとの見方には懐疑的な声もある。
アピールのための表現ツール
野村証券の松沢中チーフストラテジストは「日銀は基本的にバランスシート拡大を目指すことはうたうが、マネタリーベースなど量的目標を設定することは避けるだろう」と指摘。「資産買い入れ額との整合性を保つことが困難になる可能性がある一方、マネタリーベースとインフレ率の相関について市場で見方が割れており、量的目標の設定がインフレ期待の上昇につながるか疑わしい」という。 
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストも「現在、海外の主要中央銀行の間では、金融危機後の経験を経て、単にマネタリーベースを拡大しても総需要や物価に働き掛けられないという見方が主流になっている」と指摘。「日銀が量的指標を仮に設定するとしても、『こんなにバランスシートを拡大してます』とアピールするための『表現ツール』であって、明確な目標にはならないのではないか」とみる。
一方で、黒田総裁は就任前から「市場の期待に働き掛けることが不可欠だ」と繰り返し、3月26日の衆院財務金融委では「期待外れにならないように量的、質的な緩和を行う」と述べた。これに対し白川前総裁は19日の退任会見で「期待に働き掛けるという言葉が、中央銀行が言葉によって、市場を思い通りに動かすという意味であるとすれば、そうした市場観、あるいは政策観には危うさを感じる」と語った。
安倍晋三首相は日銀に対し「次元の違う」を金融政策を求め、黒田総裁も「大胆な金融緩和を行っていく」とそれに応え、市場の期待を高めてきた。しかし、バークレイズ証券の森田氏は「特に債券市場で大量の国債購入が既に織り込まれつつある。市場の期待を上回ることはかなり日銀としても困難になってきている」という。
自分の尾を追う犬
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストは期待に働き掛ける政策について「白川前総裁に同感で、危うさを禁じえない」と指摘。「世間一般のインフレ期待を喚起して消費や投資を活性化させる一方、債券市場のインフレ期待をコントロールして名目金利の上昇を抑え込み、ひいては実質金利を押し下げるという『作戦』は、我田引水の感が強い」として、その実現に疑問を呈する。
同様に、SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジストも「レジームチェンジや異次元の金融政策という言葉を発するのは簡単だが、実際に取り組むには十分な議論の時間が必要であり、市場の期待するスピード感に応えるのは誰であっても難しいだろう」と指摘。白川前総裁の警鐘には「同感であり、新体制は『急いては事を仕損じる』で、じっくり取り組んで欲しい」と語る。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「大胆な緩和で株高・円安を維持することができたとしても、実際に物価の上昇傾向が見られなければ、市場はさらなる緩和を期待するようになる」と指摘。「金融市場には短期的視野で動く性質がもともと組み込まれているが、こうした期待に応えるべく、なし崩し的に緩和が続けられると『自分の尾を追う犬』のような危険な状態に陥りかねない」としている。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net 
更新日時: 2013/04/03 08:58 JST


 

 
ECBのクーレ理事:通貨安競争に警鐘、保護主義激化の恐れ 
  4月2日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のクーレ理事は、各国が景気浮揚のために通貨安を公然と追求すれば不安要因になるとの認識を示した。
クーレ理事は2日にワシントンで講演し、「各国が公然と競争的な通貨切り下げを直接追求するなら憂慮すべきことになる。外国資産の大量購入といった手段に出れば特にそうだ」と述べ、「経済論文では個々の国が近隣窮乏化政策や負担をシフトする政策を追求することの危険性が強調されている。このことは中銀当局者に十分理解されていると思う」と付け加えた。
安倍晋三首相は2月、公約に掲げていた外債購入について必要性は薄まっていると発言した。この構想は為替操作につながるとの懸念を招いていた。同理事は、こうした政策は「貿易や金融の保護主義を激化させる深刻なリスクに世界の市場をさらす恐れがある」とした。
その上で同理事は、為替レートは物価安定と成長にとって重要であるため、政策スタンスの妥当性の総合的評価に含まれると説明。ECBは為替レートを目標にはしないもののインフレ見通しに影響を与えた場合には通貨の変動を相殺する措置を講じる可能性があると述べた。
原題:ECB’s Coeure Warns Against Competitive CurrencyDevaluations(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:フランクフルト Stefan Riecher sriecher@bloomberg.net 
更新日時: 2013/04/03 06:56 JST


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