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西武ホールディングスの公式ホームページより
西武ホールディングスが筆頭株主サーベラスのTOBに反対を表明!高圧的なハゲタカに反発する西武経営陣の"人間臭い"対立
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35270
2013年03月28日(木)伊藤 博敏「ニュースの深層」 :現代ビジネス
西武ホールディングス(HD)は、3月26日、筆頭株主の米投資会社サーベラスによるTOBに反対を表明した。また、サーベラスは五味広文元金融庁長官ら3人の取締役起用を提案していたが、これにも反対の意向を示した。これにより、TOBは、経営陣の同意を得ない敵対的TOBに発展した。
それにしても、どうしてここまでこじれたのか---。
■双方にとって不毛な敵対的TOB
普通に考えても、なかなか理解できない。
サーベラスは、西武HDが再生する過程の2006年1月、約1,000億円の増資を引き受けて筆頭株主となった"恩人"である。対立が始まったのは、再上場が視野に入った昨年半ばからだというので、出資以来、6年半も友好関係を築いていたことになる。
ところが、上場の際の企業価値(株価)を巡って、対立を深めていった。
「サーベラスの提案では、西武鉄道の不採算路線や西武ライオンズの売却などが含まれており、当社の経営に影響力を強めることで、当社の中長期的な企業価値を毀損し、その結果、サーベラスグループ以外の中長期的に当社株式を継続保有する株主の皆様の共同の利益を害するおそれがあります」
TOB反対表明の記者会見で、西武HDの後藤高志社長は、こう述べて、サーベラス提案は株主のためにならないと強調した。
サーベラスは投資家のために1,000億円に利益を乗せ、出口戦略を完成させなければならないのだから無理もいう。
しかし、西武鉄道沿線の地域住民もまたステークホルダーなので、多摩川線、秩父線など5つの路線を列挙、「不要路線」と切り捨てるのは乱暴だろう。ファンの多い西武ライオンズの売却も同様だ。
ただ、そうした見解の相違があったとしても、敵対的TOBは、西武HDにとっても、サーベラスにとっても得策ではない。そんな不毛の争いになる前に、どうして「再上場」という共通の目標に向かって折れ合うことができなかったのか。
再上場すれば、西武HDは、これまでの守りから旧赤坂プリンスホテル再開発、旧池袋本社ビル建て替えなど、前向きな投資資金を確保でき、サーベラスはあおぞら銀行に次ぐ出口戦略を実行したことになり、日本撤退のスピードを上げることができる。
実は、その誰もが想定できる解決法を取らず、TOBを巡って双方がにらみ合ったのは、西武経営陣を叱りつけるようなサーベラスの強硬姿勢のためである。
■カネと権力だけでは、人は動かない
強い意思を見せつけるように、サーベラスは西武HD経営陣や、弁護団に強圧的な手紙を送り続けた。この姿勢が、経営陣と弁護団を硬化させた。
会員制月刊誌『FACTA』(2月号)は、サーベラスが12月25日付で後藤社長ら西武HDの経営陣に送り付けた内容証明付き郵便を紹介している。
「もし、万が一にも貴殿が西武ホールディングスの取締役としての善管注意義務に反し、上記の著しく不当な行為に反し、(中略)貴殿に対してもいかなる法的措置を講じることも辞さない所存であることを、念のため申し添えます」
また、同じく会員制月刊誌『選択』(3月号)は、今年1月11日に送られてきたファインバーグCEOの手紙を紹介、そこには「バリュエーションを下げることを不当に強制」「全く根拠のない主張」「イニシアティブを無視することによって会社の業績に数カ月にわたり損害を与え」といった、非常に直截的な表現が並んでいた。
ひとことでいって「サーベラス文書」は、感情を刺激するのである。それは、サーベラスの体質もあるが、西武HDとの交渉が、サーベラス・ジャパンではなく、ニューヨークのサーベラス本社が窓口となり、弁護士作成のストレートな表現が、そのまま和訳されているからではないだろうか。
経緯を知るM&Aの専門家が苦笑する。
「問題があれば弁護士に任せ、成功報酬と結びついている弁護士が、相当、強圧的に責め込み、相手から譲歩を引き出すのが米国流で、サーベラスは投資ファンドとして、これを激しく実践してきた会社。問題がこじれて以降、西武HD経営陣も弁護団も、その高飛車で失礼な物言いにうんざりしています。だから、西武HD側の対応も居丈高となり、火に油を注ぐ形となった」
確かに、私自身、この問題の取材に入ったのは今年初めからだが、最初、サーベラスの窓口を探すのにさえ苦労した。なにしろサーベラス・ジャパンは、今時、ネットにホームページを持っておらず、代表電話番号さえ公表していない。ようやく、代理人に辿り着いたが、背景説明はしてくれるものの、「正式コメントは出さない」という。
サーベラス・ジャパンが窓口を設け、広報対応をするようになったのは、TOBの発表をした3月11日前後からで、その時も本社を通じた発表だったので、「わかりにくい和訳文」に驚いた。
もちろん対応が、ウェットな日本流ではなく、法に則って黒白をつける米国流であっても悪くはない。サーベラスには資金力だけでなく、前金融庁長官らを呼び込む人脈もある。なにしろサーベラス幹部には、ダン・クエール元副大統領、ジョン・スノー元財務長官などもいて、政府にも影響力を行使する。
ただ、カネと権力だけでは、人は動かず、納得もしない。今回、サーベラスは力に頼り過ぎている。だから西武HD経営陣は感情的に反発する。ただ、筆頭株主への遠慮もあって、どれだけ強圧的な仕打ちを受けているかは、前述のような会員制月刊誌の報道を通じて知るのみで、新聞テレビのマスコミは、オブラートに包んで報道、それだけにいがみあいの原因がよくわからない。
経営者もまた感情の生き物---。
「西武HD対サーベラス」の対立の根っこは、意外に人間臭いのである。
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