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市場を思い通り動かそうとする政策に危うさ=退任会見で白川日銀総裁  ロイター
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/397.html
投稿者 ダイナモ 日時 2013 年 3 月 19 日 20:15:49: mY9T/8MdR98ug
 

[東京 19日 ロイター] 白川方明日銀総裁は19日の退任会見で、市場の期待に働きかけるというリフレ派の金融政策について「危うさを感じる」と懸念を示し、資金供給量(マネタリーベース)の拡大で物価を引き上げられるとの考えにも疑問を呈した。

金融政策のみで2%の物価目標は達成可能とする黒田東彦新総裁や安倍晋三首相の見解をけん制し、成長力の底上げと金融緩和の合わせ技によるバランスのとれたデフレ脱却の重要性をあくまで主張した。

<資金供給量と物価の関係、断ち切れている>

黒田氏や岩田規久男・学習院大教授など新たに就任する正副総裁は、緩やかなインフレを起こして景気回復につなげようとするリフレ派。金融政策で期待物価上昇率を高めることを重視している。このような考えに対して往年の白川氏は「中央銀行は呪文を唱える組織でない」と強く反発していた経緯があるが、この日の会見でも「期待に働きかけるということが、言葉で市場を思い通りに動かす政策なのであれば、危うさを感じる」と明言。また「市場が望むことと、長い目で経済安定に望ましいことは必ずしも一致しない」とし、市場の期待に金融政策が振り回される形を戒めた。

また金融政策は「判断の根拠を説明するのが重要」とする一方、「我々の金融政策に関する知識は十分でなく、従来の理論のみに従うのは責任を果たしていないのでないか、との思いにも駆られる」と述べ、効果が十分検証されてはいない非伝統的な金融政策に対する判断の難しさを吐露した。

岩田規久男新副総裁もかねてから日銀が当座預金残高を拡大すれば、期待物価上昇率が引き上げられ、結果として円安・株高になると繰り返している。新日銀は岩田氏の学説が中心的教義と位置付けられる公算が大きい。これに対して白川総裁は「マネタリーベースと物価の関係は近年断ち切れている」とし、金融緩和のみではバランスの取れた物価上昇にはつながらないとの持論をあらためて強調した。

<金融政策の評価は出口脱却後初めて可能>

デフレ脱却で目指すべきは、「単に物価が上がればよいのでなく実質経済成長率が高まる結果、物価上昇率が高まる姿だ」と強調。日銀の試算でも「実質GDP成長率は向こう2年間、単純平均でプラス1.6%が見込まれる」と述べ、「金融緩和効果と競争力、成長力強化が相乗作用をもたらせばデフレから早期に脱却し、物価安定の下での持続的成長を実現することは可能だし、そうしなければならないと思っている」と述べた。

任期中の政策に対する自己評価についてはコメントを控えた。日本のバブル期や米国の2000年代半ばにかけての金融政策の評価は「時の経過とともに随分変わっている」とし、評価を後世の判断に委ねた。日米欧の中央銀行が現在展開している金利の上げ下げによらない非伝統的金融政策は「出口から円滑に脱却して初めて評価が可能になる」と述べ、市場の混乱を避けて巨額の保有国債を売却可能にするという難事の可否こそが評価を決めるとの考えを強調した。

白川氏は総裁就任前の京大教授時代に金融政策について教科書を執筆しているが、「通貨の信認維持には財政の持続可能性が非常に大事である点をもっと強調して書くべきであった」と指摘。強力な金融緩和を進める前提として政府による財政再建の取り組みが不可欠との考えを改めて強調した。

会見ではお気に入りの薄緑のネクタイ姿で淡々と質問に答える「白川節」を貫き通した後、満面の笑みで拍手で送られ会場を後にした。

(ロイターニュース 竹本能文、伊藤純夫:編集 山川薫)


http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92I05A20130319?sp=true  

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コメント
 
01. 2013年3月19日 20:43:23 : xEBOc6ttRg
言っていることは正論なのだが、白川はコミュニケーション能力に問題があり、おまけに運も悪かった

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130319-OYT1T01211.htm?from=ylist
2013年度の国民負担率、4年ぶり低下見通し

 財務省は19日、税と社会保障の負担が国民所得に占める割合を示す2013年度の国民負担率が、前年度より0・2ポイント下がって40・0%になるとの見通しを発表した。


 低下は4年ぶり。景気回復で所得が伸びるとみているためだ。

 国と地方自治体の財政赤字を加えた潜在的国民負担率も、前年度より0・5ポイント低い53・2%となる見通しだ。

 日本の国民負担率は、フランス(10年で60・0%)、ドイツ(同50・5%)、英国(同47・3%)など欧州諸国に比べて低い水準となっている。

(2013年3月19日20時27分 読売新聞)


02. 2013年3月19日 20:58:17 : sIFkxh0qhc
白川総裁はどうみても日本じゃなかったようだな。バクが祖先じゃないのか。あまりにも韓国の手先すぎたようだ。

03. 2013年3月19日 21:58:33 : xEBOc6ttRg
2013年 3月 19日 16:29 JST
日銀の雨宮理事が復帰─黒田体制下で金融政策の企画立案


By GEORGE NISHIYAMA

 【東京】デフレ克服に向けて非伝統的な金融緩和措置をかつて作成したことで知られる日銀幹部が政策担当に復帰する。従来以上に野心的な緩和措置の採用に熱心な日銀新指導部の下で金融政策の立案を担当する。

 日銀の雨宮正佳理事が、金融政策の企画・立案を担う企画局を再度担当する。日銀ではこのような再指名は珍しく、今週就任する黒田東彦新総裁の下で日銀が新たな緩和策を準備しようとしている兆候とみられている。

 雨宮氏は日銀の大阪支店長を務めてきたが、それまでは大半のキャリアを日銀本店の企画局で過ごしてきた。同氏は57歳。一部の日銀関係者によれば「引き出しが多い」人物として知られ、日銀の現在の「包括的金融緩和プログラム」の立案に貢献した。金利を事実上ゼロに設定し、不動産投資信託のようなリスク資産のほか、国債を購入するプログラムだ。

 黒田氏を含む日銀政策の批判論者は、このプログラムが不十分だと主張してきたが、一層の緩和措置を求めるこのような声と、日銀は十分な措置を講じたと信じる白川方明現日銀総裁との間で、雨宮氏が妥協点を見いだしてきた、と多くの関係者が話している。

ある政府当局者は「白川氏が原則にこだわると政府は困るわけだが、そのような時、彼は政府・日銀の間に立って皆の顔を立ててくれる」と述べた。

 また、政府関係者や日銀内部の議論に詳しい関係者は、雨宮氏が白川総裁との間で金融政策が経済にどう影響するかをめぐって食い違いが生じていたかもしれないと指摘している。白川氏が日銀の金融政策の限界を繰り返し強調したのに対し、雨宮氏はこうした措置の効果に期待を持っていたという。

 しかし、安倍晋三首相のアドバイザーを含め、日銀を厳しく批判する人々は、日銀の「エース」としばしば呼ばれていた雨宮氏は究極的には、20年間近く経済に居座ったデフレを脱却できなかった日銀の責任を共同で負っているとみている。

 あるアドバイザーは「雨宮氏は芯では伝統的な日銀哲学の信奉者だ」と述べた。

 雨宮氏の企画担当復帰は、19日に退任する白川総裁らに代わって黒田氏と2人の新副総裁が日銀指導部に就く直前に発令された。日銀を長年批判してきた岩田規久男氏(副総裁に就任する)を含む新指導部は、4月3、4の両日開催する初の金融政策委員会会合で追加的な緩和措置を講じると予想されている。

 西村康稔・内閣府副大臣(経済再生担当)はウォール・ストリート・ジャーナルが19日に主催した安倍首相の経済政策に関するセミナーで、4月の日銀金融政策決定会合では「これまで総裁が所信表明で言われていることを総合すると、国債買い入れを増やすとか長期の買い入れを行っていくといったことが言われているので、そういった種類の提案がなされるのでは」と述べた。黒田氏は国会での所信聴取に対し、これらは日銀が検討すべき選択肢だと述べた。

 金融市場では、黒田氏が金融政策会合前に緊急会合を招集するかもしれないとの臆測すら一部にある。しかし、政府当局者は、準備に必要な時間を考えるとそれは難しいだろうと述べた。黒田氏の日銀総裁としての実質的な初執務は、就任日の20日が祝日のために21日になる。


04. 2013年3月19日 22:04:08 : xEBOc6ttRg


[話題]リフレ派の邪魔をしてた人間(雨宮正佳)が「日銀リフレ派」といわれる怪奇

 Twitterのコメントをみて思わず笑った。
From: hongokucho at: 2013/03/19 08:30:40
雨宮理事が再登板、「真打ち登場」との声=企画担当は日銀リフレ派

この「本石町日記」の記者も日本銀行理論(反リフレ派の立場)を主軸にネットなどでもずっと私たちとは違う見解を書いてきた人だ。その人が雨宮正佳(あまみやまさよし)理事を「日銀リフレ派」と形容している。とんだお笑い草である。

最近、思うが、リフレ派というのがすごくお安くなってしまったようだ。雨宮氏は民主党政権時、民主党内のリフレ派の有力議員を懐柔するために工作していた人物だ。「懐柔」と書いたことでもわかるように、彼の活動の狙いは、リフレ派の活動の抑制である。事実上のデフレ維持のための工作員の典型であった。民主党政権時(もちろんそれ以前からだが)のリフレ実現を直接妨害していた人のひとりである。
つまり簡単にいうと、黒田総裁、岩田副総裁を籠絡するために、その「実績」を買われて大阪からよびもどされ、そのことをさっそく「支援」するかのように、彼を「日銀リフレ派」」などと形容することでイメージ戦略を使うなどちょつと意図がみえすぎでこれまた笑える。
ちなみに雨宮氏の当時の工作や発言は見え見えの手口で、僕は彼が何をいうか事前に予想して、その議員の方々にアドバイスしたものである。例えば以下みたいな感じだ。
1 日銀の人は面会するとき、日銀的な権威の象徴でしか会うことはしない(相手の懐に飛び込む器量も度量もないが、自分のみかけの権威は全力利用)。
2 「先生がたリフレ派と私ども(=日銀)の見解はいささかも違いません!」
などである。今回も2みたいなことはよく利用するレトリックだろう。
僕の知人が、この雨宮理事の復帰の記事を読んでこういった。
「日銀の面従腹背の準備は着々だな」
と。まさに言えているだろう。冒頭の記事を書いた記者も、また日銀の内部もあいかわらず、デフレを維持したいようにしか思えない集団のままである。そう僕は思う。
このブログの読者よ、雨宮理事をはじめ日銀内部の動きにいま以上に注意しよう。官僚も人の子である。完全無敵な精神はもっていない。むしろ1に代表されるように、ある意味、権威主義の裏側の幼児性をもっている。いうなれば打たれ弱い一面を個々の人間はもっている。そのことを逆手にとり、その個別の行動を名前を挙げて今後も批判的に検証するべきだ。もちろん冒頭の明らかに日銀シンパな記者の「誘導」」記事もさらに注意する必要がある。
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20130319


 

 

日銀が突然の担当理事交替、政策の継続性が焦点に
2012年 05月 14日 18:52 JST
[東京 14日 ロイター] 日銀は11日、金融政策を立案する企画局の門間一夫局長が理事に昇格する人事を公表した。門間氏の異動とともに発表された人事で、日銀ウオッチャーが注目したのは政策担当理事の雨宮正佳氏の大阪支店長への異動だ。「包括緩和政策」の立案に携わってきた中心人物であるだけに、政策が変化する契機になるか、注目される。

雨宮氏はこれまで銀行保有株の買い取りや量的緩和政策、最近では2010年10月に開始した基金で国債などを買い入れる「包括緩和政策」の立案に携わってきた。夕方にロンドン市場が開くとなぜ円高が進むのか、など「市場の癖を熟知することも市場との対話で重要と指摘してきた」(日銀OB)とされる。政府・日銀のパイプ役としても雨宮氏の実績を評価してきた一部の政府・与野党関係者には、今回の人事は寝耳に水だったようだ。

日銀は公式には今回の雨宮理事の大阪行きについて、支店長経験がないためと説明している。2月に事実上のインフレ目標導入と追加緩和を打ち出し、デフレ脱却のため物価上昇率1%が展望できるまで強力な金融緩和を進める姿勢を示すなかで、「政策の継続性は担保される」(幹部)と説明している。

日銀が2月以降、景気の下振れがないなかで2度も国債買い入れ増を中心とした追加緩和に踏み切ったのを背景に、市場・政府関係者の間では、今後も景気が下振れなくとも追加緩和に踏み切るとの期待が膨らんできた。四半期に一度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」公表時には、物価上昇率1%が展望できないことを理由に、長期国債の買い入れ増を軸に追加緩和するとの期待も広がりつつある。

門間氏の理事就任で後任の企画局長に就任した内田真一氏は、企画局ナンバー2の審議役より3年後輩にあたる。現職最年少である点が話題を呼んでいるが、2006年の量的緩和解除時に企画局担当者を務めており、企画局長としての手腕が注目されている。新体制による日銀の政策姿勢は今後の決定会合ごとに徐々に明らかになってくるとみられる。

(ロイターニュース 竹本能文:編集 石田仁志)


 


日銀企画局長、異例の若手抜てき 雨宮理事は大阪支店長に  
 日銀は11日付で金融政策を企画・立案する企画局の体制を刷新した。局長に就任した内田真一氏(49)は現職局長として最年少で、異例の抜てき人事。企画畑が長かった雨宮正佳理事(56)は担当を外れて大阪支店長に就く。白川方明総裁は任期が残り1年を切るなかで、スタッフを入れ替えてデフレ脱却への道筋をつけたい考えだ。

 内田氏は4月まで新潟支店長だった。金融政策に携わる企画局長は入行年次の高い幹部が就くことが多いが、同日付で理事に昇格した門間一夫前局長(54)から大幅に若返る。企画局のナンバー2に当たる梅森徹審議役(51)の3年後輩で、局内の年次が逆転する異例の人事になった。

 量的緩和政策の導入などに携わった雨宮氏は大阪支店長に就く。ただ門間新理事が企画局を担当するため、抜本的に政策方針を見直すわけではない。長期国債などの資産買い入れと事実上のゼロ金利を組み合わせた現在の「包括緩和」の路線は維持されそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC11011_R10C12A5EE1000/

 



05. 2013年3月20日 09:09:11 : xEBOc6ttRg
 
白川日銀総裁が退任 受け身終始 市場そっぽ
東京新聞

退任記者会見をする日銀の白川総裁=19日、日銀本店で

 日銀の白川方明(まさあき)総裁が十九日、四月八日の任期満了を待たずに退任した。リーマン・ショックや東日本大震災など未曽有の危機下で金融システムの安定に尽くした功績は大きい一方、デフレ脱却や本格的な景気回復を果たせないまま、表舞台を去る。 (白石亘)
 「激動の五年間だった」。白川氏は同日の退任会見で開口一番こう振り返った。長引くデフレから脱するため、在任中の金融緩和は十五回に及び、引き締めはゼロ。中央銀行としては異例となる値下がりリスクが大きい資産の購入を含む「包括緩和」にも踏み出した。それでも脱デフレを果たせず、責任を問われ続けた。
 日銀の対応は「受け身」との印象がぬぐえなかったことも、批判をさらに強める結果となった。例えばリーマン・ショック後、大胆な金融緩和をした米連邦準備制度理事会(FRB)より、緩和の規模が小さかった点を市場に突かれ、急激な円高が進行。市場や政治に促される形で緩和を繰り返した。今年一月の「2%の物価目標」の導入も、日銀法改正をちらつかせる安倍政権に押し切られた。
 また、市場への発信力でも、「副作用を強調し、自ら効果をそいでいる」(大手証券)との批判がついて回った。白川氏は「政策の効果とコストを丁寧に説明することが、独立した中央銀行の誠実な対応」と反論したが、二月に前倒しの退任を表明すると、新体制への期待から円安株高が加速。市場は残酷ともいえる反応を示した。
 二十日に就任する黒田東彦(はるひこ)新総裁の下で、日銀は「白川路線」と決別。大胆な金融緩和で市場への期待に働き掛けて緩やかなインフレを起こし、景気回復を目指す「リフレ政策」に転換する。これに対し、白川氏は会見で「市場を思い通りに動かすということであれば、そうした市場観や政策観には危うさを感じる」と懸念を示した。
 国内外の中央銀行を取り巻く環境については「(政府による)必要な経済、財政改革は十分に進まず、金融政策への要求が高まっている」と、中央銀行頼みの現状をやんわり批判した白川氏。自らの金融政策については「評価するには長い時間が必要」と述べるにとどめた。


「黒田日銀」新体制きょう発足 量的緩和策強化へ 臨時会合も焦点
2013.3.20 08:00

 日銀は20日、19日付で退任した白川方明総裁の後任に、前アジア開発銀行総裁の黒田東彦(はるひこ)氏が就任し、新体制が発足する。黒田新総裁は21日に記者会見し、2%の物価上昇率目標の早期達成に向けて、国債購入の拡大などを通じて市場への資金供給量を増やす「量的緩和」を強化する考えを打ち出す見通し。これを受けて、日銀は具体的な金融緩和策の検討を本格化する。

 日銀は、白川総裁の下で2010年10月から「包括緩和」と呼ばれる金融政策を実施している。基金を通じて国債や、社債などのリスク資産を購入。資金供給を拡大して金利の低下を促すと同時に、投資家がより安心してリスク資産を購入できるようにする手法だ。市場に出回るお金の残高を増やすことを目的とする本来の量的緩和とは異なるが、結果的に残高が積み上がる量的緩和の側面も持つ。

 これに対し、黒田氏や新副総裁に就く岩田規久男学習院大教授は、資金供給量そのものを拡大して物価の上昇期待に働きかけることを重視しており、新体制の緩和策はより量的緩和色が強まる見込みだ。

 具体的には、国債の買い入れ対象の拡大や新たな資金供給量目標の設定、14年導入予定の「無期限緩和方式」を前倒しし、基金による国債購入と通常の金融調節の国債買い入れ(輪番オペ)を統合する、などを軸に検討するとみられる。

 一方、緩和を打ち出すタイミングも焦点になる。4月3、4日に予定する定例の金融政策決定会合を待たずに、臨時会合を開く選択肢もあるからだ。臨時会合で政策変更に踏み切れば、白川時代からの「レジームチェンジ(体制転換)」を強くアピールできる。

 ただ、決定会合の臨時開催にはリスクもある。

 白川氏の前任の福井俊彦総裁は、10年前のイラク戦争開戦に対応するため、就任5日後に臨時会合を開いた。そうした緊急性がない中で会合を開けば、「臨時会合の位置づけがあいまいとなり、政策運営に不透明感が生じる」(大手証券アナリスト)との指摘がある。

 また、政府は21日に、4月8日までの白川氏の残り任期後の黒田氏の再任を国会に提示し同意を求める。拙速な緩和の印象を与えると、国会で民主党などの反発を招くとの見方もある。

 黒田新総裁は、早期の追加緩和を想定する市場の期待にどう応えるのか、就任早々、手腕が問われる。(池田昇)


 

 
「黒田日銀」新体制きょう発足 量的緩和策強化へ 臨時会合も焦点
2013.3.20 08:00

 日銀は20日、19日付で退任した白川方明総裁の後任に、前アジア開発銀行総裁の黒田東彦(はるひこ)氏が就任し、新体制が発足する。黒田新総裁は21日に記者会見し、2%の物価上昇率目標の早期達成に向けて、国債購入の拡大などを通じて市場への資金供給量を増やす「量的緩和」を強化する考えを打ち出す見通し。これを受けて、日銀は具体的な金融緩和策の検討を本格化する。

 日銀は、白川総裁の下で2010年10月から「包括緩和」と呼ばれる金融政策を実施している。基金を通じて国債や、社債などのリスク資産を購入。資金供給を拡大して金利の低下を促すと同時に、投資家がより安心してリスク資産を購入できるようにする手法だ。市場に出回るお金の残高を増やすことを目的とする本来の量的緩和とは異なるが、結果的に残高が積み上がる量的緩和の側面も持つ。

 これに対し、黒田氏や新副総裁に就く岩田規久男学習院大教授は、資金供給量そのものを拡大して物価の上昇期待に働きかけることを重視しており、新体制の緩和策はより量的緩和色が強まる見込みだ。

 具体的には、国債の買い入れ対象の拡大や新たな資金供給量目標の設定、14年導入予定の「無期限緩和方式」を前倒しし、基金による国債購入と通常の金融調節の国債買い入れ(輪番オペ)を統合する、などを軸に検討するとみられる。

 一方、緩和を打ち出すタイミングも焦点になる。4月3、4日に予定する定例の金融政策決定会合を待たずに、臨時会合を開く選択肢もあるからだ。臨時会合で政策変更に踏み切れば、白川時代からの「レジームチェンジ(体制転換)」を強くアピールできる。

 ただ、決定会合の臨時開催にはリスクもある。

 白川氏の前任の福井俊彦総裁は、10年前のイラク戦争開戦に対応するため、就任5日後に臨時会合を開いた。そうした緊急性がない中で会合を開けば、「臨時会合の位置づけがあいまいとなり、政策運営に不透明感が生じる」(大手証券アナリスト)との指摘がある。

 また、政府は21日に、4月8日までの白川氏の残り任期後の黒田氏の再任を国会に提示し同意を求める。拙速な緩和の印象を与えると、国会で民主党などの反発を招くとの見方もある。

 黒田新総裁は、早期の追加緩和を想定する市場の期待にどう応えるのか、就任早々、手腕が問われる。(池田昇)
http://www.sankeibiz.jp


06. 2013年3月20日 09:30:18 : xEBOc6ttRg
西村内閣府副大臣、日銀新体制下での強力な金融緩和を予想

By ALEXANDER MARTIN

 【東京】内閣府の西村康稔副大臣は18日、20日付で日銀総裁に就任する黒田東彦前アジア開発銀行(ADB)総裁の下で強力な金融緩和政策が打ち出されるとの見方を示すとともに、日銀は政策の一環としてより長期の国債の購入を検討すべきだとの見方を示した。

 西村氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版が開いた安倍晋三首相の経済政策をめぐるセミナーで、4月の日銀金融政策決定会合では、「これまで総裁が所信表明で言われていることを総合すると、国債買い入れを増やすとか長期の買い入れを行っていくといったことが言われているので、そういった種類の提案がなされるのでは」と述べた。

 また、円相場のこのところの下落について西村氏は、政府の政策と米欧の経済回復が組み合わさった結果として生じているとの見方を示した。

 さらに、「円は正常な状況に戻っていく過程のプロセスにある」と述べ、株価についても、イタリア総選挙や、キプロス支援の条件として銀行預金に課税する措置に関するニュースをめぐる不透明感を受けた最近の下押しにもかかわらず、上昇を続けることを期待していると語った。

 西村氏は「イタリアの選挙結果とか、キプロスのことで調整したが、(株価が)一呼吸おく意味ではいいのでは。ポジション調整してもらいながら緩やかに上がって欲しい」と述べた。

 20日には黒田氏が日銀総裁に、岩田規久男学習院大教授と中曽宏日銀理事が日銀副総裁にそれぞれ就任する。黒田新総裁は安倍首相が長期に及ぶデフレ脱却に向けて不可欠とみなす積極的な金融緩和を推し進める任務を負う。

 黒田氏は衆議院での所信聴取で、日銀が最近導入した2%のインフレ(物価上昇率)目標について、「やれることは何でもやる」として、目標実現に強い決意を示した。黒田氏が示唆した政策には長期国債やリスクのより高い資産の購入に加え、2014年に予定されている期限を設けない「オープンエンド方式」の資産購入に向けた一層の取り組みなどが含まれている。

 市場参加者はこうした政策は4月の次回日銀金融政策決定会合で発表されるのではないかとみている。

 一部には、新たな金融緩和策がそれより早く、黒田氏の日銀総裁就任後の早い時期に発表されると憶測する向きもいる。西村氏はそのようなことは総裁が決めるとの見方を示した。


米金融規制改革法でロンドンの鯨型損失は防げず−CFTC 
  3月19日(ブルームバーグ):米商品先物取引委員会(CFTC)のメンバー、スコット・オマリア氏は、金融規制改革法(ドッド・フランク法)のデリバティブ(金融派生商品)規定は当局にスワップ市場の全体像を伝えておらず、JPモルガン・チェース のいわゆる「ロンドンの鯨」事件のような損失がトレーディングで発生しても、その発見に役立つことはないと指摘した。
オマリア氏はフェニックスで開かれた米証券業金融市場協会(SIFMA)主催の会議で講演。事前原稿によると、CFTCが昨年末以降に決済機関デポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング(DTCC)を含む情報記録機関から受け取っているスワップ取引のデータは、大規模なポジションの特定には不十分なほか、政府のコンピューターシステムに大きな負担をかけていると述べた。
その上で、スワップ取引のデータは「現行の形では使用不可能」だと言明。「問題は非常に深刻で、スタッフは現行のデータファイルではロンドンの鯨事件のような損失を見つけ出すことはできないと指摘している」と続けた。
オマリア氏は、政府が基準を明確に規定しなかったため、スワップディーラーや取引相手がそれぞれ別個の報告形式を用いていると説明。「つまリ、70余りのスワップディーラーが特定するスワップの種類それぞれが、70余りの異なったデータ形式で報告されるということだ。スワップディーラーにはそれぞれ、内部のシステムで利用する独自のデータ形式があるからだ」とし、「データ言語の置換は度を超えている。悪夢としか言いようがない」と述べた。
原題:Dodd-Frank Swap Data Fails to Catch JPMorgan Whale,O’Malia Says(抜粋) 
更新日時: 2013/03/20 04:34 JST


07. 2013年3月20日 10:13:34 : xEBOc6ttRg
2013年 3月 20日 09:21 JST
白川日銀総裁、黒田新体制下での金融緩和に危惧―退任記者会見 

By TATSUO ITO AND TAKASHI NAKAMICHI

 【東京】日本銀行の白川方明総裁は19日の退任記者会見で、実施に長く抵抗してきた大胆な金融緩和策を黒田春彦新総裁が迅速に実行すると予想されることについて、懸念感を示した。

 また、2008年に起きた世界的な金融危機や2011年3月の東日本大震災、自身への政治的圧力など、数々の難問に直面した任期を振り返り、「激動の5年間だった」との感想を述べた。ただ、生まれ変わっても日銀総裁を再度やりたいかという問いには、「そんなふうには思っていない。人生それぞれ、チャレンジのしがいがあることがたくさんあるだろうと思っている」と、未練を見せなかった。

 日本の金融システムが金融危機や大震災によるダメージを免れたのは白川氏の功績と称賛される一方で、政治家からは思い切ったデフレ脱却策に消極的であるとの批判の声が上がった。

 安倍晋三首相は政権の座についた昨年12月、日銀に脱デフレ策の拡大を強く求めていくことを公約、さらにその独立性のはく奪さえ考えていることも示した。首相周辺は、インフレ期待を高めるために金融緩和を行う、いわゆる「リフレーション」政策を日銀が実施する必要があると主張しており、黒田氏もこの考えに同調している。

 白川氏への政治圧力が最高潮に達した今年1月、日銀と政府は安倍氏が提唱していた2%のインフレ目標を設定する共同声明を発表した。ただ、白川氏はそれに前向きではなかった模様だ。

 目標導入にためらいはなかったと言うものの、「『期待に働きかける』という言葉が、中央銀行が言葉によって思い通りに動かすという意味があるとすれば、そうした市場観、政策観には危うさを感じる」と語り、中銀が人々の物価上昇期待に影響を与えるという、リフレ派の理論的柱となっている考え方に対して警鐘を鳴らした。

 大学教授をしていたこともある白川氏は金融政策に限界があることを強調し、長期的なデフレの責任は全て日銀にあるという一部議員の意見に反論した。その上で、全てを一気に解決する特効薬が存在すれば、デフレが15年間も続くことはなかったとし、金融政策だけでなく、成長や競争力を促進する取り組みも必要であるとの考えを示した。

 日銀内での議論に詳しい関係筋によると、高齢化や国内総生産(GDP)の2倍以上に膨れ上がった政府債務残高など、構造的問題への取り組みが頻繁に起こる政権交代によって後回しになっている現状を白川氏は懸念していたという。在任中に協力して政策運営に当たった首相人数は6人、財務相は10人に上る。

 総裁在任中は金融政策について、改革に伴う痛みを和らげる時間稼ぎに過ぎないと繰り返し述べてきた。だが、そのような持論を強調することで、断固とした措置を講じることに消極的だという懐疑論が市場や政治家の間で生じた可能性もある。

 キャピタル・エコノミストの主任グローバル・エコノミスト、ジュリアン・ジェソップ氏は白川氏の業績について、日本国外では否定的にみられていると述べ、黒田新総裁の下で金融緩和策が拡大されることを予想する外国人投資家の間では日本株への関心が新たに強まっていると指摘した。

 ただ、ジェソップ氏は欧州先進国や米国と違い日本は金融危機時の国内金融システムの緊張度が低く、欧米ほど大胆な緩和策の必要性が薄かったことを挙げ、諸外国の見方が厳しすぎる面もあると述べた。白川氏は在任中の78回開かれた政策委員会で15回の金融緩和を実行し、引き締め策をとったことはなかった。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324823704578371070581880086.html

 

デフレ脱却の条件

スピーカー 渡辺 努 (RIETIファカルティフェロー/東京大学大学院経済学研究科教授)
モデレータ 森川 正之 (RIETI理事・副所長)
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関連リンク プレゼンテーション資料 [PDF:1.8MB]
開催案内文
我が国では1990年代後半以降、緩やかなデフレーションが続いている。現政権はデフレ脱却を最優先課題のひとつと位置づけ、政府と日銀が一体となった取り組みが行われている。現政権でのデフレ脱却に向けた取り組みはこれまでのところ総需要の喚起策が中心となっている。しかしミクロの商品の価格が需要と供給で決まるのと同様に、マクロの物価も総需要と総供給で決まる。したがってデフレ脱却には、総需要だけでなく総供給に働きかけること、つまり、メーカーや流通業者の価格づけ行動を変化させることが不可欠である。本BBLでは、過去15年間のデフレ期における価格づけ行動の特徴を明らかにした上で、それを是正するための方策について議論する。

需要サイドと供給サイドの条件
日本経済新聞(2月11日付)によるアンケート調査では、日銀が掲げた2%物価上昇目標の達成について、世論の見方は「実現する」「実現しない」でほぼ二分しているようです。実現する理由として「政権の強い意志が見える」を挙げる人が多い一方で、実現しない理由として「国内の景気回復の遅れ」や「インフレ目標には物価を上げる力がない」など、さまざまな意見が出されています。

ミクロの商品価格は需要と供給で決まり、マクロの物価も総需要と総供給で決まりますが、これまで需要に関しては、さまざまな議論がなされています。ゼロ金利の下、金融政策で物価を押し上げることができるのか、どのようなチャネルが考えられるのか、といった問題については多くの研究が進められてきました。

一方、供給については、あまり議論されてこなかったと認識しています。少なくとも昨年末以降、供給サイドの議論は明示的に出てきていません。そこで本日は、需要を高めるだけで十分なのか? メーカーや流通業者の慎重な価格設定行動を変えられるのか? 価格の動きにくさ(硬直性)をどうすれば克服できるのか?――このような観点でお話ししたいと思います。

緩やかなデフレーション
1960年代からのCPI(消費者物価指数)伸び率の推移をみると、第1次石油ショックでは前年比20%超える高いインフレーションの状態でしたが、その後は急速に下がっています。そしてバブル崩壊後、90年代半ばからマイナスを示すようになり、デフレーションが起こってきたわけです。2008年辺りでプラスになっている部分もありますが、ほぼ一貫して長期的にデフレが継続していることがわかります。ただし、数値でみるとマイナス1〜2%を示しているに過ぎず、緩やかなデフレが15年以上にわたって長く続いているのが特徴です。

1880年代以降の120年間にわたるGDPデフレーターの推移をみると、第2次世界大戦を通して急激に上昇していますが、それを除くと戦前、戦後とも年5%前後のインフレ率で伸びています。ところが1990年代半ば以降になると、横ばいから徐々に下降しており、デフレが起きていることを示しています。このように長い時系列でみると、特異な現象が起きていることがわかると同時に、これを直すのは大変なことだと感じられると思います。

世界的に、デフレはそれほど多くの国で起きたわけではありません。その中で研究が進んでいるのは1930年代、米国大恐慌期のデフレといえます。年7〜8%という下落率で2年間急激にデフレが進んだわけですが、その後は上昇に転じています。やはり日本で起きているデフレとは、大きく異なります。

ケインズの「流動性の罠」
この日本で起きているデフレは、ケインズが「流動性の罠」といった現象に近いと思います。1947年のクラインによる"The Keynesian Revolution"の図をみると、右下がりの投資と右上がりの貯蓄が交差する点、つまり均衡する実質利子率がマイナスになる状況がありえることを示し、それこそケインズがいった「流動性の罠」であると主張しています。

実質利子率がプラスであれば、中央銀行の名目利子率を実質利子率と一致させることによって物価を安定させ、雇用水準を安定させることができます。ところが実質利子率がマイナスになってしまうと、名目利子率をマイナスにすることができず、完全雇用などを達成できなくなってしまうというわけです。

完全雇用を達成する実質利子率について、ヴィクセルは「自然利子率」というものゼロを下回ることがあるといい、クラインやトービンは、それが「流動性の罠」であると述べています。日米の自然利子率について分析すると、1980年代後半は日米とも実質利子率は同じ水準でプラスにありました。その後、日本は上下を繰り返しながらも急速に低下し、1998年と2009年で大きくマイナスになっています。つまり、クラインやトービンのいう流動性の罠が、まさに日本で起きているわけです。

一方、米国は90年代を通じて2000年代に入ってからも、引き続き高水準の自然利子率であったわけですが、リーマンショック後に急速に低下し、2010年初めにはかなりゼロに近づいています。

クルーグマンは、「流動性の罠」のもとでは、将来の名目利子率も現在と同じゼロにすることで、GDPギャップや物価上昇率のマイナス幅が縮小するという理論を1998年に発表しました。日本では時間軸効果ともいわれていますが、将来の金融緩和をコミットすることによって、将来にかけての物価上昇率がより高まるという期待を醸成し、それによって現在の状態を改善させるという考え方です。また昨年来、安倍政権でもこれと似たようなことがいわれていますが、研究者からみても理にかなっていると思います。

米国では、昨年12月のFOMCステートメントにおいて、失業率が6.5%程度まで回復し、あるいはインフレ率が一定水準を上回るまで、超金融緩和を続けていくことをコミットしています。これによって将来の状態が加熱することへの期待を喚起し、それをテコにして現在の状態が改善していくことを企図しているのだと思います。

日本銀行は本年1月22日、「物価安定の目標」と「期限を定めない資産買入れ方式」の導入について、文書を発表しました。その脚注には、「宮尾委員より、別途、実質的なゼロ金利政策について、消費者物価の前年比上昇率2%が見通せるようになるまで継続するとの議案が提出され、反対多数で否決された」とあります。宮尾委員の提案は、将来の緩和を約束することによりインフレ期待の醸成を図ろうとするものであり、理に適っています。しかし、残念ながら、現時点では日銀はそうした政策を採用していません。かつて福井前総裁の時代には、一定の条件が整うまで金融緩和を続けるという政策をとったことがあります。

ここで強調しておきたいのは、将来の金融緩和にコミットし、それをテコに現在の実質利子率を下げ、それによって投資や消費を喚起するという手法は、必ずしも非伝統的なものではないということです。実質利子率を下げるという意味でこれは金利チャネルです。金利チャネルは金融政策の中で最も伝統的な王道といえる手段です。通常の金利チャネルと唯一異なるのは、通常は名目利子率も同時に下げるのですが、今は名目利子率がゼロでこれ以上下げられないため、物価上昇率の期待に働きかけることによって実質利子率を下げていこうとする点だといえます。

今後、安倍政権のもとで2%の物価上昇目標を達成するためには、実質利子率を下げることに重点を置いた金利チャネルが使われていくものと思います。それによって需要が喚起されていくでしょう。

フィリップス曲線
では、金融緩和や財政出動によって需要が喚起されれば、本当に2%の物価上昇を達成できるでしょうか。デフレ脱却のためには、需要と供給の両面を考えることが不可欠です。しかし、企業の価格設定行動という供給サイドへの働きかけは、非常に難しいといえます。

失業率を横軸、消費者物価の上昇率を縦軸にしたフィリップス曲線の推移を見ると、1970年から80年代は曲線が右に大きく傾いています。つまり失業率を低下させようとすると、激しいインフレが起こることがわかります。しかし2000年代に入ると、フィリップス曲線はほぼフラットになっています。これは、景気変動に伴って失業率が上下したにもかかわらず、物価上昇率はほとんど変化しなかったことを意味しています。つまり、需要の変化に対して物価の感度が著しく鈍っているということです。このフラットの状態を前提とする限り、需要だけで物価を上げるのは難しいことを示唆しています。フィリップス曲線は総供給曲線とも呼ばれ、企業や流通業者の価格づけ行動の様式を表すものと考えられています。

1960年以降の名目GDP成長率と物価上昇率の関係を分析すると、近年の総供給曲線の状況を前提とする限り、物価上昇率を1%上昇させるには名目GDP成長率を5%引き上げる必要があります。物価上昇率を毎年2%上昇させたい場合、名目GDP成長率を毎年10%上げていかなければなりません。つまり需要の喚起は重要ですが、それだけで2%の物価上昇率を達成するのは難しく、供給サイドであるメーカーや流通業者の価格づけ行動に何らかの働きかけをしていく必要があります。

屈折需要曲線
フィリップス曲線のフラット化がなぜ起きたかを理解する上で屈折需要曲線という考え方が役立ちます。屈折需要曲線は、1970年代から研究者の関心を集めている現象です。価格を上げると需要は大きく減少する一方、価格を下げても需要が急増するわけではありません。これは、ライバル企業が価格を据え置く中で自分だけが価格を上げると顧客を失ってしまうということを示しています。このときには、企業の直面する需要曲線は直線ではなく屈折しています。そうなると、需要が増えて価格を上げる環境が出てきたとしても、企業は自分だけが先行して価格を上げ、その結果、顧客を失うのを恐れます。ライバルが上げるかどうかわからないので、とりあえず自分も価格を据え置くという選択をします。全ての企業が同じように考える結果、需要が増えてもさほど価格が上がらないということになります。フィリップス曲線のフラット化はこのようにして生じていると理解できます。

フィリップス曲線のフラット化は、単純に需要を増やす政策を採るだけでは、物価は十分に上がらないということを示しています。需要を増やすという需要面の対応に加えて、供給サイドでも、メーカーや流通業者が価格を上げる恐れを消していくことが大事です。そのためには、「ライバル企業が価格を上げそうだから自分も上げよう」という気分を醸成することが大事です。つまり、企業間で「よい協調」ができる環境を整えていくことが重要だと思います。その意味で、安倍政権が発動する「デフレ脱却の大号令」のもと、供給サイドで価格を上げる行動がとられるならば、近年の複雑な状況を脱出できるかもしれません。

日本のデフレ下における「商品の参入価格」「退出価格」「再参入価格」について検討したところ、インフレ期とデフレ期に大きな違いがみられました。商品のbirth、death、rebirthといった世代交代をとらえ価格の動向を分析すると、インフレ期には、deathからrebirthの際に平均8%の幅で商品価格が上昇し、世代をつなぐと階段状に価格が上昇する構造が存在しています。しかし、1990年代以降には商品価格が「ボックス相場」化しているため、このままでは物価上昇は見込めません。やはり、メーカーと流通業者が「よい協調」をすることによって、インフレ期のような価格設定に戻していく必要があると思います。

米国大恐慌期におけるデフレ脱却の経験
米国大恐慌期には、当時のフーバー大統領による金本位制、均衡財政、小さな政府といったレジームによって、人々はデフレの継続を予想して行動していました。その後、1932年に指名されたルーズベルト大統領は、金本位制を放棄してドルの切り下げを容認し、拡張的な財政政策へと転換しました。さらに"reflation"という言葉を提唱し、インフレの効能を強調しました。これによって人々のデフレ予想がインフレ予想に変わった結果、実質利子率が低下し、デフレ脱却につながったという見方が、最近の研究で示されています。

ここでの成功の鍵は、政策のレジームを丸ごと取り替えるというレジームの転換があったことと、それに伴って人々の将来に対する予想が変化したことです。この「予想の変化」がターニングポイントを作る大事なものであるということが主張されています。

ルーズベルト大統領は1933年のステートメントにおいて、物価が大恐慌期以前のデフレが起こる前の水準に戻るまで、徹底的に物価を押し上げていくことを強調しています。そして「もし、リフレーションができなければ、別の方法を試すだけだ。とにかく、やりきれるところまでやりきるのだ」ということを述べています。大統領が強い意志でレジームを転換し、さまざまな反対の中で物価の上昇を実現したわけです。

当時の米国では、名目利子率ではなく物価上昇の期待が高まったことによって実質利子率が下がっています。そして、マネーの量は決して増えていません。つまり、中央銀行のバランスシートの拡大が効果を発揮したのではなく、人々の物価上昇の期待を変えたことでターニングポイントをつくったということです。

質疑応答
Q:
人口減少や非正規雇用の増加による実質賃金の低下といった要因は、どのようにお考えでしょうか。

A:
人口減少は、自然利子率の低下に反映します。自然利子率自体をプラスにできればいいわけですが、人口減少を食い止める、あるいは人口を増やすのは難しく、少なくとも短期的に変えられるものではありませんから、今回は自然利子率がマイナスの状況を前提に、ご説明しました。

物価上昇率を高めると、実質賃金は一時的に低下すると思います。物価を上昇させる施策は、多くの人々に負担を強いる面を持っています。しかし、物価が下落を続ける状況を放置するのは望ましくありません。現在、物価は「糸の切れた凧」のように下落しており、中央銀行は制御できていません。現在のデフレ率は1%なので小幅ですがこれがもっと大幅なデフレになったときにはデフレの弊害が顕著になります。できるだけ早く、政府や中央銀行が物価を制御できる状態に戻すべきです。とにかく物価のグリップを取り戻すことが大事ですから、そこで生じるさまざまな弊害については、別途対応していくことが必要だと思います。

Q:
日本の物価水準は、世界でも最高レベルといわれています。今後、さらに物価が上がれば、給与水準も上がらない場合、マイナスの影響が大きいと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

A
たしかに東京や大阪は物価が高いわけですが、80年代にいわれたような内外価格差は、規制緩和等によって大幅に縮小しています。日本全体として物価が高すぎるということは、それほど気にする必要はないと思います。むしろ、物価の下落をコントロールできないことのほうが問題だと思います。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/13021201.html


08. 2013年3月20日 18:38:21 : L13KjR4QOU
市場原理主義、と言っても見えざる手で動いていない。

世界金融資本家でコントロールされている。
資本主義は、巨大資本家の意向で動くのだ。

当然だよな〜
日本株式をやっていると良くわかります。
最後は収奪されますから、くれぐれもご注意を!
うかれないように、アホノミックス!


09. 2013年3月20日 21:37:05 : GJkVoWdewM
理智派の蒙昧主義者みたいな評論家や政治家などから日銀がデフレ対策を強硬に求められたとしたらたまったもんではないだろうな。白川元日銀総裁に対して世間は勇退と評価する機会を逃したのかもしれない。おそらく自尊心を失うことはなかったはずだと思う。


10. 2013年3月22日 11:49:20 : xEBOc6ttRg
米債務上限問題、共和党が再び交渉材料に利用も
2013年 03月 22日 10:31 JST
[ワシントン 21日 ロイター] 米共和党のベイナー下院議長は21日、歳出削減を実現するため、債務上限問題を再び交渉材料に利用する可能性を示唆した。議長が債務上限の引き上げには相応の歳出削減が必要との認識を示したことで、2011年の米国債格下げにつながった債務上限問題が繰り返される恐れもある。

連邦債務は5月19日頃に上限に達する見通し。上限到達後も、財務省の緊急措置で7─8月までは国債の利払いなどに支障はないとみられるが、その後は再び債務上限の引き上げが必要になる。

ベイナー議長は定例会見で、歳出削減を目指す方針を表明する一方、「連邦政府の信頼と信用を危険にさらすつもりはない」と発言。

議長の事務所はその後、議長の目的はデフォルトではなく、オバマ政権から歳出削減を引き出すことだと述べた。

共和党が債務上限問題を実際に駆け引きの材料にするかは不透明。

同党は以前から歳出削減を迫る材料として債務上限問題を利用してきたが、今年1月には方針を転換、債務上限を5月19日分まで引き上げることに同意している。

米格下げリスク後退、暫定的な債務上限引き上げ合意で=フィッチ 2013年1月29日
焦点:暫定的な米債務上限引き上げ、財政赤字削減への道筋は何も示さず 2013年1月25日
オバマ米大統領、短期的な債務上限引き上げ支持へ=ホワイトハウス 2013年1月23日
米債務上限4カ月延長法案、下院共和党が23日に採決方針 2013年1月22日


2013年 3月 22日 09:01 JST
米下院、暫定予算案を可決―政府閉鎖を回避

By JANET HOOK

 【ワシントン】米下院は21日の本会議で、2013年会計年度(12年10月‐13年9月)の年度末までの暫定予算案を可決した。前日に上院が同案を可決しており、これで今月末の政府閉鎖が正式に回避された。

 また、下院予算委員会のポール・ライアン委員長(共和、ウィスコンシン州)が提出した14年度予算案も下院本会議で可決したが、この計画は共和党が中心となったまとめた党派性が強いもので、民主党が多数を握る上院での通過は絶望的だ。

 共和党は、この暫定予算案で民主党に大きな譲歩をせずに一律歳出削減条項を盛り込むことができたと評価している。

 暫定予算案は318票対109票の大差で可決された。継続動議と呼ばれるこの案は今後半年にわたり国内及び防衛予算について850億ドル(約8兆円)の一律削減を義務付ける条項を維持しつつも、影響の大きい一部の項目については、支出が停止した場合の支障を軽減する措置が盛り込まれた一方、それ以外の削減幅を拡大した。

 賛成票の内訳は、共和党が203票、民主党が115票。反対票は27票が共和党、82票が民主党だった。

 成立した暫定予算案は、両院にまたがる稀な超党派の妥協策といえる。防衛関連のオペレーションや装備の国防総省関連予算を強化したい下院共和党の意向と、女性や子供に対する栄養支援と低所得家庭やその子弟への教育、健康、栄養支援などを確保する「ヘッド・スタート」プログラムなど国内向け諸策を充実させたい上院民主党の意向を取り入れたものだ。下院は今月初めに当初の暫定案を可決していたが、今回の案はそれを上院が微調整して20日に73票対26票で可決したものだ。

 また、この暫定案に続いて下院は10年以内に年度での財政赤字解消を約束したライアン委員長の14年度予算案を221票対207票で可決した。12年の大統領選挙では共和党の副大統領候補でもあったライアン氏は10年にオバマ大統領が主導して成立した医療保険法に絡む予算項目の削減がその40%を占める4兆6000億ドルの財政支出の削減を通じて政府債務を減少させることを提唱している。

 ただ、この予算案は党派色が強く、共和党は下院議長を務めるベイナー氏(オハイオ州)らが賞賛する一方、民主党側は同案が景気回復を危うくするとし、予算委で同党のリーダーを務めるクリス・バンホーレン氏(メリーランド州)は「妥協しようとする姿勢の見えない共和党のイデオロギーに染まった案だ」と批難した。

 民主党側も上院で今週独自の予算案を可決する見込みとなっているが、1兆ドル近い増税を盛り込む一方、メディケアの抑制などは小幅で年度の財政赤字を減少させはするが解消には至らず下院の共和党案と対照的だ。こちらも党派色が強く成立の見込みは薄い。


11. 2013年3月22日 16:50:29 : xEBOc6ttRg
債券先物は最高値更新、日銀緩和強化の観測−超長期債に投資家の買い

  3月22日(ブルームバーグ):債券先物相場は過去最高値を更新した。日本銀行が新体制下で金融緩和を強化するとの観測が買い手掛かりとなった。長期金利が10年ぶり低水準に達する中、投資家が利回り水準の高い超長期債中心に買いを入れたことも相場を押し上げた。
東京先物市場で中心限月の6月物は前日比9銭高の145円66銭で取引開始し、午後に入ると一段高となった。取引終盤に日経平均株価 の下げが加速すると、買いが増えて145円75銭まで上昇し、過去最高値を更新した。結局は16銭高の145円73銭と、この日の高値圏で引けた。
現物債市場で長期金利 の指標となる新発10年物国債の328回債利回りは前日比1.5ベーシスポイント(bp)低下の0.565%で開始し、前日に続いて2003年6月20日以来の低水準を記録した。その後は同水準での推移が続いた。
超長期債利回りは大幅低下となった。20年物の143回債利回りは2bp低い1.49%と5日以来の低水準。30年物の38回債利回りは5.5bp低い1.62%と、10年8月以来の低水準を記録。40年物の5回債利回りは6bp低い1.67%と、10年8月以来の水準まで下げた。
三井住友海上あいおい生命保険経理財務部の堀川真一部長は、「長い年限は日銀オペの買い入れ増額期待があるほか、10年債利回りが0.6%を割り込み、利回りが1%台半ばの超長期債でインカム(金利収入)を稼ぐため持ち高を積み上げる動き」と説明した。
超長期債の堅調推移について、パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、日銀の黒田東彦総裁の就任会見で日銀券ルール撤廃の話が出て、「長い年限の国債を買うことは確実になってきた」ためだと説明。堀川氏は「日銀が長い年限も買い入れてくるとの期待で買い安心感が出ている」と話した。
黒田総裁会見
日銀の黒田総裁は21日夜の就任会見で、物価上昇率2%の目標について「達成すべきである、達成できると確信している」と述べるとともに、「可能な限りあらゆる手段を講じていく」と決意を示した。長期国債買い入れで、保有残高が日銀券発行残高を上回らない範囲にとどめる「日銀券ルール」については、「そのようなものがないと、財政ファイナンスになるとか、その懸念があるということはない」と述べた。
SMBC日興証券経済調査部の土井俊祐氏は、債券市場は需給が良好で来週も金利低下のトレンドは変わらず、日銀による大胆な金融緩和の期待も継続していると指摘。「先物は高値更新で短期的に上値めどがなくなっている。長期金利は来週に0.5%台前半が視野に入ってくる」との見方も示した。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net;東京 池田祐美 yikeda4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/22 15:25 JST

 


 

米FRB議長が緩和策継続を再表明、タカ派の警告に動じず
2013年 03月 22日 14:52 JST
[サンフランシスコ/ニューヨーク 21日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のタカ派は、3兆ドル超のバランスシートを抱える危険性に懸念を示しているが、バーナンキ議長は動じていないようだ。

議長は20日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、景気回復が続いた場合には債券買い入れプログラムを縮小することに前向きな姿勢を示唆した。ただプログラムのリスクは重要視していないことも鮮明にし、目先の政策引き締めを想定していないことを明確にした。

むしろ意見を変えたのはタカ派の側で、タカ派の見解は今や、議長を始めとするFRBの中核メンバーのスタンスにやや近づいたと言える。

失業率は先月低下、小売売上高や製造業も予想外に強い内容だったが、FOMC終了後の20日に公表された予想では、年内の利上げを望んだのはわずか1人。12月の予想では2人が年内利上げを予想した。

実際、FRB政策当局者の圧倒的多数が、今のところ債券買い入れの継続と、2015年までの低金利維持を支持していることが判明した。

15年末の政策金利予想は12月時点では平均1.4%だったが、今回は1.3%。より段階的な引き締めを想定していることが分かった。

大規模な債券買い入れは金融市場を混乱させ、資産バブルを誘発すると、スタイン理事ら複数のFRB当局者が強い警告を発していたことを考えると、こうしたスタンスの変化は、投資家には意外かもしれない。

前回2回のFOMC議事録では、政策の方向性への懸念が強まっていることが浮き彫りになった。議事録が公表されると、投資家は緩和予想を後退させ、より期間が長めの国債の利回りが上昇する場面があった。

バンク・オブ・ザ・ウェストのチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「タカ派はややトーンダウンした」と指摘。「タカ派は今や完全に少数派であり、政策に関する影響力は大きくない」と述べた。

20日公表されたFRB経済見通しによると、大半の当局者が、インフレ率は2015年いっぱい、目標の2%かそれを下回ると予想した。

ただし、当局者のうち少なくとも1人は、インフレ率が2.6%に上昇すると予想。つまり、失業率押し下げに向けてFRBが容認しているインフレ率の上限(2.5%)を突破する、とみていることになる。アンダーソン氏は「物価よりも雇用を重視する姿勢の表れ」と指摘した。

<債券買い入れの早期停止観測は後退>

FRBは20日、月額850億ドルの米国債とモーゲージ担保証券(MBS)の買い入れを続けると表明した。また、インフレ率がFRBの目標の2%付近である限りにおいて、失業率が少なくとも6.5%に低下するまで、実質ゼロ金利を続ける、との方針をあらためて示した。

バーナンキ議長は、労働市場の回復を指摘したうえで、労働市場の見通しが改善すれば、資産買い入れを縮小することも可能だ、との認識を示した。ただし、早すぎる勝利宣言はしない、との姿勢を鮮明にした。

2月の米失業率は7.7%に低下し、1月の7.9%から改善。また、雇用者数の増加幅も11月以降、月平均20万人を上回っている。

バーナンキ議長は20日、FOMC終了後の記者会見で「雇用増が30万人となった期間もあったが、その後再び弱まった」とし、「重要なのは、ただ改善するだけではなく、何カ月も持続することだ」と述べた。

FRBが債券買い入れ継続を決めたこと、議長がそのリスクを「管理可能」と表現したことを受け、タカ派の懸念は今は沈静化したようだ。

タカ派の警告は先月、スタイン理事のコメントでピークに達した。理事は、債券買い入れを続ければ、クレジット市場が過熱すると述べた。

1月のFOMCの議事録では、当局者のうち多数が、QE3(量的緩和第3弾)のコストは大きく、労働市場が期待ほど改善しないうちに、打ち止めに追い込まれる可能性がある、と考えていることが分かった。

タカ派の一部からは、金融市場への影響に加えて、インフレ率が上昇し、FRBのバランスシートに損失が生じる、との意見が出たという。

フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁と、ダラス地区連銀のフィッシャー総裁の2人は、債券買い入れの即時縮小を要求していた。

一方、バーナンキ議長とイエレンFRB副議長は、政策を強硬に擁護。債券買い入れが早期に終了するのではないか、との市場の懸念を払しょくした。20日の決定を受けて、こうした懸念は一段と後退した。

シティグループのエコノミスト、ロバート・ディクレメンテ氏は、顧客に対して、資産買い入れプログラムのコストと利益は「スタイン理事の講演以来、注目度が高まった」と指摘。「政策声明は、労働市場が大きく改善する前にQEを停止する可能性は警告しなかった」と述べた。

先物データによると、トレーダーは最初の利上げを2015年4月と予想している。1月には、最初の利上げは14年末と予想されていた。

シカゴ大教授で、FRB元理事のランディ・クロズナー氏は、インフレ率が低水準であるため、バーナンキ議長は緩和政策を「着実に」押し進める余地があると指摘。「インフレの影も形も見えない今、パンチボウル(緩和的金融政策)を引っ込める必要はない」との見方を示した。

(Ann Saphir記者、Jonathan Spicer記者;翻訳 吉川彩;編集 内田慎一)


12. 2013年3月22日 17:14:36 : xEBOc6ttRg
欧州株 小幅安で始まる 独DAXは0.1%安(17:13)
香港株 ハンセン指数は0.5%安で取引終了(17:12) 
ロンドン市場 3月の仏景況感は90、前月並みで上向かず(17:02)
アジア・コモディティ騰落率 軟調 上海ゴムと大連ポリは約0.8%安(16:55)
ロンドン市場 ユーロ相場、売り一服も戻り鈍い(16:48)
独財務相 キプロス支援、国内金融セクターが負担共有する必要(16:43)
ロシア財務相 キプロスについてトロイカの行動を待って決定(16:25)

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麻生財務相が岩田副総裁を嫌いな訳
2013/03/22 (金) 13:59


 麻生財務大臣が21日、国会で次のように述べました。

 「(政府と日銀の共同声明に盛り込んだ2%の物価目標について)いきなりそこまでいくのは簡単な話ではない」

 「学者とはこんなものか。実体経済が分かっていない人はこういう発言をするんだと正直思った」

 どう思います、この麻生財務大臣の発言?

 麻生さんが急に白川元日銀総裁さんのように見えてきましたね。

 麻生財務大臣は、何故、日銀の新体制がスタートした矢先に、水をかけるような発言をしたのか?

 もちろん、私はリフレ派的な考え方に否定的な方ですから、この麻生財務大臣の発言は支持できる。

 しかし、麻生財務大臣は安倍総理をサポートしてアベノミクスを推進する立場にある訳で、その麻生大臣が安倍さんの考えをあたかも否定するようなことを何故言うのかという思いがするのです。

 この麻生財務大臣の発言を聞いて、安倍総理はどんな気持ちになっているでしょう?

 麻生さんは経済通と自負しているが、やっぱり金融のことは分かっていないのだ、と安倍総理は思ったのか?

 そして、逆に麻生財務大臣の方は、安倍総理は今アベノミクスで人気絶頂だけども、経済を分かっているのは自分の方なのだ、と思っているのか?

 いずれにしても、そうして改めて意見の相違が表面化してくると‥小さな波が立ち始めるのです。

 でも、繰り返しになりますが、どうして麻生財務大臣はそんなことを言ったのか? 学者とはこんなものか、なんて。そして、実体経済が分かっていない人は、こういう発言をするんだなんて。

 はっきり言って、麻生財務大臣は岩田副総裁にダメ出しをしたということなのです。俺は、岩田なんて当てにしないぞ、と。よっぽど気にいらないのでしょうね。

 でも、もし、麻生財務大臣が岩田教授のことを気に入らないとすれば、浜田教授のことも気に入らない筈。そして、クルーグマン教授のことも気に入らない筈。

 そうなるでしょう? 理屈として。

 つまり、麻生さんは、正真正銘のケインジアンだということなのです。

 世の中が不況に陥っているときには、少々金利を下げたって効果はない。否、ゼロ金利にしたってお金を借りる人は現れなかったではないか、と。

 だから、そんな時には財政出動するしかないではないか!

 これが麻生流の経済哲学なのです。

 まあ、ある意味非常に分かり易い。

 でも、そうやって麻生財務大臣が、岩田教授や浜田教授の考えを否定するのであれば、それは即、安倍さんのリフレ政策を否定することにもなるのです。

 もう一度言います。今、安倍総理は、この発言をどのように感じているのでしょう?

 でも、心配は要らないのです。安倍さんのリフレ政策だって、信念に基づいた考えではないからです。つまり、借り物の考えであり、状況に応じて如何様にでも変わり得る。

 その証拠に安倍さんは、筋金入りのリフレ派たちが言うように、インフレを起こし、それを起爆剤として経済を活性化させるべしという考えに必ずしも固執していないのです。そうではなく、実体経済が回復する結果として、マイルドなインフレが起きるのでも結構であるというのが安倍さんの考え!

 その一方で、麻生財務大臣の考えは長年の経験に基づいたものだから、誰が何と言おうと一朝一夕で変わるものではないのです。

 自分の考えを曲げないと言う意味では、麻生財務大臣と岩田教授はともに同じであり、二人が今後、意見の一致をみることはないでしょう。

 その反対に、リフレ派的な政策を掲げながらも、黒田総裁と安倍総理は割と柔軟な考え方をしているので、今後の状況次第ではどのようにでも自説を変える可能性がある。

 つまり、今は絶対にマイルドな‥具体的に言えば2%のインフレを起こすことが必要であると言っている訳ですが、この先、さらに株価の上昇が続き‥そして、実体経済が着実に回復しつつあることが確認できる状態になれば、この二人は必ずしもインフレを起こすことに拘らなくなると思うのです。

 いずれにしても、麻生財務大臣にしてみれば、何でもかんでも「金融」で解決できるなんて考えよりも、「金融」政策には限界があると認める、伝統的な日銀流の考えの方が都合がいいのです。

 何故かと言えば、金融に限界があると認めればこそ財政の出番となり‥そうなれば、公共事業が復活する、と。

 逆に、「金融」で全ての経済問題が解決できるなんて言われた日には、財政の出番がないからです。


 (財務省のサイトより)

 つまり、麻生さんにとって、白川さんはマイナス面ばかりではなかったということなのです。

以上


 

 

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来週の日本CPIは弱めも、特殊要因あり
2013/03/22 (金) 12:48


来週金曜日に発表される2月の日本消費者物価指数(CPI)は
総合で前年比-0.7%(1月は-0.3%)、
生鮮食料品除く総合(コア)で-0.3%(1月は-0.2%)
生鮮食料品、エネルギーを除く総合(コアコア)は-0.9%(1月は-0.2%)と
いずれもデフレ傾向が強まる展開となっています。
ちなみに、物価目標2%においてターゲットとされているのは、
生鮮食料品を除く総合(コア)です。

アベノミクスがインフレ動向に与える影響には
まだ時間がかかりますので
特に問題視する必要のある数字ではありませんが、
デフレが強まるという見通しはそれなりにインパクトがあるように見えます。
ただ、今回に関してはあまり気にする必要がないと思われます。
今回の発表では
昨年モデルチェンジで急上昇したテレビの反動による押し下
げ圧力が相当強いと見られ
これが指数全体の押し下げ要因となっているため
数字ほど深刻に捉えるべきではないと見られているからです。
予想程度のデフレ進行であれば、影響は限定的でしょう。
予想以上にデフレが進んだ場合には、要注意といったところ。

なお、同じ時間に2月の失業率、鉱工業生産も発表されます。

日本では景気に対する遅行指数としての意味合いが強い失業率は
1月と同じ4.2%に留まっていますが
鉱工業生産は前月比+3.5%と
1月の+0.3%と比べて相当好調な数字が予想されており
注目されるところです。


 


13. 2013年3月25日 10:00:46 : GnRfb4ci8o
高齢者から奪い、若者に与える安倍首相は正しい
2013年03月25日(Mon) Financial Times
(2013年3月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 日本の新政府が導入したリフレ信仰「アベノミクス」に対する1つの異議は、それが苦労して手に入れた貯蓄を目減りさせることだ。欧州のある地域で流行になったように、週末に貯蓄を取り上げる代わりに、政府は緩やかなインフレによって貯蓄を徐々に吸い上げたいと思っている。

 これは卑劣な計画だ。この計画が、日本の人口の4分の1を占める一方、膨大な家計資産の3分の2を支配する60歳以上の人たちの人気を集めることはないだろう。それでもやはり、この計画は名案だ。

若い世代の利益より古い世代の利益を優先してきた日本

 この世代間の窃盗を歓迎する理由は、日本が20年間にわたり、若い世代の利益よりも古い世代の利益を優先してきたからだ。

 これは不公平なだけではない。若者を不利にすることは、国の未来を築く最善の方法でもない。インフレを通じて高齢者に課税することは、長年続いてきた1つの世代による別の世代の搾取を是正する1つの方法だ。

 そうした搾取のほとんどは、職場で起きてきた。1990年に資産価格が暴落する前に仕事を得たバブル前の世代には、繁栄に至るかなり真っ直ぐな道があった。彼らは「受験地獄」を乗り越えた後でいい大学に進み、そこから卒業直後に彼らを雇う大企業に向かった。会社員は生涯の忠誠と引き換えに、序列と給料が上がっていく仕事を退職するまで与えられた。

 この幸福なシステムは、万人のためにあったわけではない。高度成長の数十年間でさえ、終身雇用モデルは会社員の30〜40%程度しか対象にしていなかった。だが、終身雇用の信仰はそれより広範囲に広がっていた。1990年には、非正規社員に分類される従業員は5人に1人しかいなかった。

 バブルが弾けると、状況が一変した。企業は債務を返済し、悪化する収益見通しと釣り合いを取るために徐々に経費を抑制し、コストを削減した。当然、ある程度の解雇もあった。だが、労働法がもっと柔軟で現存する従業員に対する忠誠心が薄い社会に比べると、日本では職を失う労働者ははるかに少なかった。

若年失業率は全国平均の2倍超


働く人の約35%が非正規雇用やパートタイム〔AFPBB News〕

 そのためリストラの矢面に立ったのは、大手企業に採用されずに非正規雇用に追いやられた日本の若者だった。その結果、今では労働者の約35%が非正規雇用あるいはパートタイムとなっている。

 こうした仕事に就いているのは、圧倒的に若い労働者と女性だ。若者の失業率は約10%と、全国平均の2倍を超えている。

 若者にとって雇用見通しが暗いことだけが問題になってきたのではない。若い労働者は、現在の退職者よりも多く国の年金制度に貢献することが期待されている。さらに追い打ちをかけるように、年金の支給額も減少する。

 多くの若者は、国の年金制度から完全に身を引いている。日本の財政状況――財政赤字は慢性的で政府債務残高は国内総生産(GDP)比230%に上る――を見て、若者は自分たちが退職する頃には支給がゼロになるかもしれないと結論付けているのだ。

 日本の20年間の経済ドラマでは、デフレが悪の根源だった。だが皮肉なことに、デフレは救世主でもあった。

悪の根源でもあり救世主でもあったデフレ

 パートタイム労働者はわずかな賃金しか得ていないかもしれないが、物価が1990年の水準に戻っている時は、それほど苦しくない。貯蓄に付く利子は微々たるものだが、下落する物価に照らして評価すると、プラスのリターンを提供している。

 また、政府も巨額の債務を負っているかもしれないが、10年物日本国債の利回りが1%を切っている時には返済が楽だ。

 日本の家計は約12兆ドルの純資産を持っている。政府債務残高をわずかに下回り、政府の純債務を大幅に上回る額だ。国債の90%以上が日本人によって保有されていることから、問題はデフォルト(債務不履行)のリスクというよりは、痛みの配分だ。

 日本の債務を見る1つの方法は、繰延税金と見なすことだろう。日本の貯蓄家は税金を払う代わりに政府に資金を貸し付け、政府が(デフレで抑えられた)歳入で調達できるよりも多くの資金を使えるようにしてきたわけだ。

 政府は今、所得税の引き上げを通して直接的に、あるいは法人税の引き上げを通じて間接的に労働者に課税することができる。だが、若者は機会と所得の可能性の減少を通じて既に代償を払っているため、これは不公平に思える。

 代わりに政府は、好況期に富を蓄えた人たちに課税することができるだろう。インフレはその1つの方法だ。相続税もそうだ。実際、政府は相続税の最高税率を50%から55%に引き上げることを計画している。

 世代間の対立は、上記の分析が思わせるほど激しいものではない。実際には、高賃金でない仕事を持つ若者はしばしば両親と同居している。彼らを差す用語まである――パラサイト・シングルだ。

 祖父母は、自分たちの貯蓄を切り崩して贅沢品や教育費を支払って孫を甘やかしている。現在、世代間の一定の所得移転に対する非課税措置によって奨励されているパターンだ。

 世代間のリバランシング(再調整)は行き過ぎることもある。72歳の財務相、麻生太郎氏は、高齢者は国の財布を空にしないように「さっさと死ねるようにすべきだ」と言った。このようなひどい無神経さは別にしても、次世代の費用を支払うために退職者からお金を強奪することは万能薬ではない。

将来の稼ぎ手と富の創造者を助けよ

 資金を貯め込んでいる企業から資金不足の家計に資金を移動させるためにも、もっと多くの対応を講じなければならないし、生産性も向上させなければならない。

 実際、長年にわたり低迷ないし減少してきた賃金が、期待されているインフレと歩調を合わせることができなければ、安倍晋三首相の計画は失敗する可能性がある。

 それでも、デフレからインフレに移行することのポイントの1つは、将来の稼ぎ手と富の創造者を助けることだ。その過程で日本の貯蓄家が多少富を失わざるを得ないとすれば、それはそれで仕方がないだろう。

By David Pilling

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37421

市場に響くか日銀「黒田節」 不動産にもアベノミクス効果

2013年3月25日(月)  松村 伸二


日銀の金融政策が黒田東彦総裁の就任で「新次元」に入った。取り得る策は量的緩和など経験済みの手法が軸と見られる。政策効果を高める同氏の情報発信力が注目される。
 黒田東彦氏の就任で、財務省(旧大蔵省)出身の日銀総裁は松下康雄氏以来、15年ぶりとなる。現日銀法下で続いた日銀出身総裁は3代で途切れた。
 デフレ脱却に向けて歴代総裁が実施してきた金融緩和の「量」と、その時代の景況感を示す日経平均株価の推移を比較したのが下のグラフだ。

 この15年間、日銀が金融緩和を拡大し続けても、一向に景況感が上向かなかった歴史が確認できる。日銀にはこれが「金融政策の限界」に映った半面、安倍晋三政権はこれを問題視して「金融緩和が足りない」と日銀にプレッシャーをかけ続けてきたわけだ。
 過去3代の日銀出身総裁について、市場関係者の評価も「市場へのメッセージの出し方がうまくなかった」(欧州系銀行の為替担当者)と手厳しい。せっかくの政策効果が心理面で十分に行き渡らなかったことは否めない。
 黒田氏が財務官として巨額の円売り介入で円高に立ち向かっていた同時期に日銀総裁だった速水優氏。折に触れ「自国通貨が強いことは国益に反しない」と述べ、円高場面を作り出した。
 福井俊彦氏が総裁だった2006年3月、日銀は政府の反対を押し切って量的緩和策を解除。デフレが完全には解消していないとの指摘が根強い中で、福井日銀の主張は説得力を欠いた。当時、官房長官だった安倍首相の日銀に対する不信感も、ここに由来する。
 そして白川方明氏。マネタリーベース(資金供給量)を最大規模に膨らませてきた。にもかかわらず、「(物価上昇の)『魔法の杖』はない」と漏らすなど自ら緩和効果の限界に言及。半身の姿勢に市場には白けムードも漂った。
対外情報発信の強化に意欲
 元財務官の黒田氏が情報発信力を金融政策に生かせるかどうかが注目されるのは自然の流れと言えるだろう。
 過去の旧大蔵省出身の日銀総裁は事務次官の経験者。一方、黒田氏のように、次官級ポストではあるが国際金融担当の財務官経験者の就任は異例だ。
 財務官は通貨政策の責任者。国益のため他国と難しい調整をこなす「通貨マフィア」「国際金融マフィア」と呼ばれる。水面下の攻防以外に、積極的な情報発信による主張もためらわない。
 そんな人材が総裁に就いた日銀は、今までにないメッセージ力を持ち得たわけだ。今後、強力な金融緩和を進める際、政府の赤字を日銀が穴埋めする「財政ファイナンス」への懸念や、日本の積極的な金融緩和に対する「円安誘導策」との批判が高まらないよう説明責任を果たすうえで重要な能力と言える。
 黒田氏は財務官時代、各国協調リフレーション策を英紙への寄稿で提唱した過去を持つ。政府関係者によると、今回の日銀総裁就任を機に寄稿を含め対外情報発信を強めていくことに意欲的という。
 黒田氏の出身県は白川前総裁と同じ福岡。市場では、同県で歌い継がれる民謡に重ね合わせ、今後の豪胆な「黒田節」の影響力に注目が集まっている。

松村 伸二(まつむら・しんじ)
日経ビジネス記者。



時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20130321/245361/?ST=print

不動産にもアベノミクス効果
2013年3月25日(月)  山崎 暢之


不動産マーケットが急回復している。REITだけでなく、私募ファンドの投資も活発になった。背景には新政権下で将来の賃料上昇に対する期待感がある。
 不動産マーケットが急回復している。東京証券取引所などに開示された不動産売買取引は、2012年度下期は10月から2月までの累計で約1兆2500億円に上る。半期ベースで1兆円を超えるのは、実にリーマンショック以前の2007年度下期以来、5年ぶりに当たる。
 この背景には、日本版REIT(不動産投資信託、通称JREIT)市場への資金流入に加え、REITの新規上場も相次いでいることがある。REITによる物件取得は、2月末までで9200億円。不動産売買の7割以上を占めた。
 2〜3月に大型オフィス売却で話題となった「ソニーシティ大崎」の1111億円や「パナソニック汐留」の507億円の一部もREITが取得している。

 REIT以外の私募ファンドの動きも水面下で活発になっている。三菱UFJ信託銀行が私募ファンドを運用するアセットマネジャーを対象に1月に実施した調査では、この半年間で物件を取得したと回答した割合が過去6回の中で最高となった。
 私募ファンドの中では、安定的なキャッシュフローを生む不動産に投資し、長期的なインカムゲイン(配当収入)を狙う「コア投資」が勢いづいている。1月の調査では、コア投資への投資意欲が、半年前に比べ軒並み上昇した。国内の個人投資家や事業法人、アジア太平洋地域の投資家の投資意欲は、「強い」「やや強い」の合計が6割を超え、不動産投資に慎重と言われてきた国内年金も関心を高めている。
銀座など一部地域で上昇

 不動産投資が急回復した背景には将来の賃料上昇に対する期待感がある。東京・銀座など都心の一部地域では実際に賃料相場が上昇し始めた。東京のオフィス空室率は全体ではなお高止まりし、平均賃料も下落している。しかし、新政権の「アベノミクス」の経済政策により、デフレから脱却して目標とする2%のインフレが実現すれば、名目賃料も全般的に反転上昇することが期待される。
 市場参加者が抱く将来の期待インフレ率が上昇すれば、仮に現在の賃料は横ばいでも、不動産価格の理論値が上昇することになる。現在の活発な不動産取引は、このような将来への期待感を先取りしている格好だ。
 不動産市場の活況が本格的に持続するかは、金融政策、財政政策に続き、現政権が議論している様々な成長戦略が日本経済に定着するか否かがカギになると言える。
(構成:馬場 燃)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/research/20130319/245281/?ST=print


資源相場に一喜一憂は短絡的

丸紅・朝田照男社長に聞く

2013年3月25日(月)  北爪 匡

 大手総合商社の経営が岐路に立たされている。この10年、商社の好業績を支え続けてきた資源相場が踊り場を迎え、大手5社中4社が2013年3月期に最終減益となる見通し。資源に次ぐ成長のモデルを描けるのか。大手商社トップに戦略を聞く。
これまで資源・非資源の事業バランスの重要性を訴えてこられました。資源相場が大きく変動する中で、今後のバランスをどう考えますか。

朝田:これから総合商社の活躍の場を考えると、やはり新興国だと思うんですね。そこで新興国を考えると、やはり資源は決して無視できない。当然のことながら資源価格というものは変動が激しく、上がったり下がったりするわけです。ですが、それに一喜一憂して、資源価格が下がったから資源への取り組みをやめようとか、抑えようとかいうことは、僕はあまりに短絡的かなと感じています。

 石炭や鉄鉱石の価格が調整局面であるという問題以上に、現在の資源の問題は採掘コストが上がっていることにあります。建設や機器のコスト、完工した後も人件費がこれまでの資源ブームに乗っかって非常に高い。ですからそこが見直されて、まともな状況に戻ることが必要です。


朝田 照男(あさだ・てるお)氏
1948年東京都出身。1972年慶応大学卒業後、丸紅入社。財務畑を歩み、大手商社の中で同部門出身初の社長となった。2002年執行役員。2008年から現職(写真:新関雅士、以下同)
 例えば同じ銅の開発プロジェクトにしても、僕が社長になったばかりの2008年に手掛けたチリの「エスペランサ」と、同じチリ国内でこれからやろうとしている「アントコヤ」のプロジェクトでは、設備投資やその後の運営にかかる金額がまったく違うわけです。倍とは言いませんけど。コストが上限に張り付いているわけで、こういう状況ではやはり高値掴みになってしまう。でも我々商社はある一定割合は常に資源は手掛けていかなければいけないと僕は思いますね。

商社が資源を手掛けなければいけない理由とは。

朝田:新興諸国が経済発展していく過程において、当然資源は必要になってくるわけで、何をやるにしても設備投資には鉄が必要になる。鉄が必要になれば原料炭や鉄鉱石が必要になる。同じように銅のようなベースメタルや石炭は、レアメタル(希少金属)と比較した時に、今後とも永続的に需要が高まっていくと思います。

 リーマンショック後のような世界同時不況にならない限りは、やはり資源市況は調整局面はあっても暴落は絶対にないと見ています。もちろん2割くらいの上下はあるでしょう。原油が1バレル=100ドルが75ドルとか、銅で言えば1トン=9000ドルが7000ドルとか。もちろん、このようにボラティリティー(変動性)は高いわけですが、それ以上の大きな暴落や暴騰が起こりにくい値動きになるんじゃないかと思います。その中でこれはという優良案件は、初期費用、運営費用を見ながら手掛けていきます。

資源一極集中では商社の強みが出ない

 ただし、商社ですから、やはり資源一極集中はダメですよ。逆に言えば、資源一極集中してしまうと商社の強みが出ないんですね。ですから、まず事業を大きく4つから5つのグループに分けます。当社では資源・エネルギー、インフラ、生活産業、もう1つは環境その他になります。こうした4つか5つの分野を均等に攻めていく。そしてそれぞれの分野で強みを発揮することが極めて重要です。

 (米穀物トレード大手の)ガビロン買収手続きが今期中に終了するという前提ですが、この3年の新規の投融資は1兆円の規模になります。この内訳は、ガビロンがありますので生活産業がこのうち35%と、やや高くなりますが、ほかの分野はそれぞれ20〜25%ずつです。

 あのリーマンショックの時も、10年前の丸紅では赤字になっていたかもしれないけれど、1000億円前後の利益が稼げたということは、我々のポートフォリオが分散されているということ、収益構造がバランスしているということです。商社のコンピタンスが何かを考えると、やはりそれだけ多くの事業を抱えて、あらゆる方面に投資をしながらトレードしていくことじゃないでしょうか。

一方で丸紅はこの数年間、電力インフラや食料といった部門に重点投資してきた印象もあります。

朝田:やはり業界随一という分野がいくつかあることが必要。苦しかった12〜13年前からV字回復をしていく過程で、商社業界一の強い分野、ビジネスモデル、営業部隊をできるだけ増やしていきたかったわけです。ほかの商社がどうやっても追いかけられない、追いつけない、そういう分野をできるだけ多く持ちたかった。それが丸紅の企業力の強みの部分になっていくと考えました。

 強いところをますます強くし、弱い部分を補う形になります。弱い部分というのは、結局丸紅としても競争力がないわけですから、そこに一気に多額の投資をすることは冒険になります。知見がないからリスクが高い。だからそういう意味からすれば、我々が大型投資をするところは自信のある分野です。

 なぜガビロンに36億ドルも投資することを決めたか。ガビロンという会社は穀物取引の会社で、北米が大凶作に見舞われた2012年は決して業績は良くないわけです。しかし、それは当然想定されることで、トレーディングをする会社の浮き沈みが激しいことも知っている。ビジネスを知り、商品もマーケットもわかっている。お客もたくさん抱えている。穀物市場が大変苦しいときに、ほかの穀物トレード会社が4割減益になるところを、我々であれば10〜20%の減益で済ませることができる。そういう自信があるから投資ができたわけで、それは電力も同じです。

 だからこうした強みがあるところを、どんどん強くしていって、他商社との間の差別化を図っていくということが極めて重要だと思っています。そのためにこうした分野への投資を加速したということです。

朝田社長は以前から、商社がトレードから事業投資へと経営モデルをシフトするなかでも、トレードの重要性を訴え続けていますね。

朝田:ええ、今申し上げた通り、自分たちがトレードで実績がないような商品分野であれば、事業投資をして何かが起きた時に、どうやって業績を改善したらいいのかというノウハウがないわけですよね。トレードで実績があれば、どうやって強い収益力が得られるかがわかります。トレードを通じて得られるものはいくつかありますが、やはり商品に対する知識、それと最も重要なのはお客さんです。お客とのネットワークなくして商売なんかできっこない。投資なんかできっこない。それが市場のメカニズムです。

 それでは新しい分野にいつまでもいけないことになります。それじゃあ、やはりダメなので、新しい分野もやらなくてはいけない。しかし、最初から大型投資なんていうのは絶対にやっちゃいけない。過去にも成長分野だということで、50億円単位の投資をやって失敗した経験がいくつかありますよ。医療のような分野で。結局知らないんですよ、その業界を。やるならば、どこかすごく信頼できるパートナーと一緒に、小さいところからスタートすることが大事ですね。

トレードの現場に入って内部の深い情報を得ていく力が、資源権益から得る巨額の利益に安住したことで弱くなってしまったという声もあります。

朝田:そうですね。それがやはり成長を果たしていく過程においては極めて重要なことだろうと思いますね。分野で言うと、当社の従来強かったところで現在、大苦戦しているのが紙・パルプですよ。丸紅と言ったら電力や穀物以前に紙パ。「紙パの丸紅」と言われたんです。

 しかし、何が強かったと言われれば、国内市場ですね。日本の新聞社や雑誌社といったところのつながりで、それを製紙メーカーとの間でうまくコーディネートして、圧倒的に強かった。

 それが国内の紙の市場がこうなってしまった。反省も込めて言えば、紙の販売に関しては海外にまったくアクセスしていなかった。海外で紙を売る営業がまったくいなかった。国内の良さに安住してしまった部分があります。市況が悪化したこともありますけどね。だから喫緊の課題は、従来強かった分野であるだけに、紙パの立て直しでしょうね。

キャッシュフローを犠牲にしても投資は続ける

 それと、今後を見据えた上では、今期の連結最終利益2000億円達成が見えて、新しいステージに入ってきた。次にやらなくてはいけないのは、やはりスケールメリットの追求です。商社で極めて大事なことは、やはり規模の利益だと思います。

 現在、業界4位の住友商事との最終利益の差が300億〜400億円、3位の伊藤忠商事とは700億〜800億円。これは総資産の差なんです。丸紅の総資産が5兆5000億円くらいで、大手商社のROA(総資産利益率)が4〜5%ですから、総資産が1兆5000億円違ったら、ROAを4%で計算すると利益は600億円の差が出ます。

 もちろん規模を拡大して、今と同じROAを継続的に確保できるかという問題はあります。ですが、やっと2000億円という利益水準に達し、1兆円を超える自己資本を確保して財務体質も良くなってきたわけですから、今しばらくは攻め続けて規模の利益を取りに行かなきゃいけない。1つの目標が総資産7兆円だと思っています。それによって、投資先を間違えなければ2700億〜2800億円の利益は見えてくると思います。

 だから僕は次の3年間くらいは、フリー・キャッシュ・フローのマイナスはあまり神経質になっていないんです。攻めの体制は続けていきたい。そこは十分マネージできる。だから今後3年くらいはまだチャレンジャーでいい。

投資に関しては、これだけ世界経済の不透明感が強まっている中で、投資基準を厳しくしなければいけないのか。それとも長期的な視野で、多少のリスクを承知でも成長のために積極投資をしなければいけないのか。どうお考えでしょう。

朝田:これだけ多くの営業ユニットを抱えて、あらゆる分野で投資をやっているわけで、やはり一律の投資基準というのはダメだと思いますね。例えば中東において、その国の国債格付けがAAだとして、プロジェクトにはその国の保証がつき、30年間の売電契約に基づく発電案件があったとする。その国のリスクは何かといったら、30年の間にはその国の格付けがAAからBBBに落ちるリスクはもちろんありますが、そこもある程度の安全が見込めるのであれば、こうしたビジネスモデルへの投資は安定していると言えます。

 逆に米国のカントリーリスクがゼロに近いと思っても、例えばシェールガスを初期の開発から手掛けるとなったら、開発が終わった案件に後から参加する場合に比べて稟議のハードルは高くしなければいけない。したがって、今まで以上にきめ細かく、業種ごと、ビジネスモデルごとに投資基準は設定していかなきゃいけない。

 投資の回収期間にしても、今までの丸紅では、基本は10年で設定してきましたが、案件によっては13年とか15年といったものがあってもいいと思います。より細かく、ありとあらゆるビジネスモデル、領域に当てはまるように、投資基準と回収期間はフレキシブルに対応してもいい。この件に関しては社内の作業部会が現在検討しています。


5年間の社長職を終える朝田社長は、攻めの姿勢を崩さない。
これだけ地域や事業分野によって変化がさまざまで、かつ激しくなっています。その変化に対して、現在の従業員の対応力をどう見ますか。

朝田:古いと思われるかもしれないけれど、やはりいかに現場を多く経験するかが重要だと思いますね。これだけスピードの速い変化に対応する行動力や適応力は、やはりいくつもの現場を経験しなくては絶対に身につかないものです。やはり体で覚えないと。

 昔はみんな先輩の背中を見ながら体に叩き込んで、商売を覚えて、国内外で適応してきました。今はそれだけではダメなので、同時並行で別途研修プログラムは充実させなければいけないとは思います。何も米国のMBA(経営学修士)を取得することだけがいいわけじゃありませんが、いろいろな国で研修プログラムに若い人をできるだけ参加させていきます。

 我々の利益の源泉は今や海外ですから、できるだけ頭の柔らかい若いうちに、いろいろな国を経験させて、自分を磨かせる。そうやって若い人たちにチャンスを与えることが会社として必要です。それで20代で入ってきた人たちには、20代のうちに必ず一度は海外を経験させるという仕組みがうまく回り始めました。だからこれを途中でやめることなくやっていきたいですね。早い人は女性でも3年目で中東やアフリカにも出ていきますよ。

エリート学生の意識を変えられるか

商社はこの数年で就職活動の学生人気ランキングでも上位に入っています。優秀な学生は集まるのでしょうが、一方で本来は泥臭い商社マンの仕事に適応できるのかという心配もあります。

朝田:会社の風土がそういったエリートっぽい学生の意識を変えなきゃいけないと思いますね。頭でものを考えて、社内の検定試験とかをやったら一番になるけれど、まったく行動力が伴わないで、営業をやらせたら全然ダメということもあるかもしれない。その場合は、自分で活動して、行動して新たなビジネスをとってくることが、自分たちにとっていかにプラスになるかを認識させる。そういうシステムを作らないと、本当に頭でっかちの議論ばかりを振りかざす連中が増えてしまいますので。

社長が考える商社人材に必要な素養とは。

朝田:3つか4つありますけれど、まずは明るい、それから机に座っているのではなくて常に行動する。それと情熱家であること。自分のやっている仕事に対して情熱がないと、やはり前進しないですからね。常に胸がどきどきするような仕事ばかりじゃない。時にはつまらない仕事や後ろ向きの仕事を与えられることもあるわけですが、それでも明るく情熱をもって対応していくことが商社の人材には極めて重要です。

最後に、この4月1日に、社長から会長へと退かれます。この5年間を振り返っていかがでしたか。

朝田:簡単に言えば、最初の2年間はしんどかったですね。リーマンショックという、あれだけの金融恐慌、世界同時不況はなかなか経験しようと思ってもできませんから。社長になった2008年4月1日は順風満帆、いけいけどんどんという時でした。それが半年たって突然すとんといったわけです。2008年度の第4四半期は赤字でしたから。それで2009年度は財務体質が悪化して、やりたい投資もできなかった。

 それでも、あの時みなで一致団結して、守りを固めて財務体質を強化していったから、その後に現在の中期経営計画の3年間があります。常に順風だったわけではありませんが、厳しい2年間からスタートし、まもなくその次の3年間が終了する。いい終わり方ができたと思っています。


北爪 匡(きたづめ・きょう)

日経ビジネス記者。


どこへゆく大手商社

ここ10年、資源価格の上昇で好業績を謳歌してきた総合商社。だが、足下では資源ブームに一服の感もある。大手商社の中には、次なる安定収益源を確保するために、非資源事業への投資に力を入れるところも現れ始めた。業績急拡大とともに注目を集めてきた商社の今後の戦略を大手5社のトップに聞く。


14. 2013年3月25日 12:38:44 : GnRfb4ci8o
【第792回】 2013年3月25日 週刊ダイヤモンド編集部
黒田日銀に集まる三つの関心
真価問われる政府への姿勢

19日の退任会見で白川氏は「生まれ変わっても総裁をやりたいか」との質問に対し、「そんなふうには思っていません」と回答した
Photo by Ryosuke Shimizu
 黒田東彦・前アジア開発銀行総裁が3月20日、日本銀行の第31代総裁に就任した。その約1週間前の12日、市場では日銀新体制による臨時の金融政策決定会合の観測が駆け巡った。10年前、福井俊彦氏が日銀総裁に就任した際のサプライズ会合に倣うのではないかとの見方が浮上したからだ。

 黒田氏がいつ“大胆な”緩和策を打ち出してくるのか。第一の関心はそこにある。

 本稿執筆の3月20日時点では日銀の事務方は臨時会合開催には否定的だが、総裁(議長)である黒田氏が踏み切れば法律上は可能となる。

 もっとも今、市場のメインシナリオは、4月26日の2回目の会合に移っている。この日は展望レポートで物価見通しを示し、直後には経済財政諮問会議での報告も予定されている。日銀自身、こうした市場予想を認識している。

 第二の関心は緩和策の中身だ。緩やかなインフレを目標としつつも、国債価格の安定を維持するという極めて難しい状況が続くだけに、黒田氏が打ち出す策には限界がある。選択肢としては、国債購入の増額と対象国債の年限長期化(現在は3年以下)、リスク資産購入の増額などが考えられる。

 このうちリスク資産の購入は、日銀のバランスシートが大きく毀損すれば財政出動が必要になってくる。財務省にしてみれば、「簡単には認められない」(財務省関係者)話だろう。

 ただでさえ日銀は2012年度上半期決算で、外国為替関係損失が主因で2329億円の最終赤字に陥っている。通期では何とか最終黒字を確保する見込みだが、リスク資産の購入を増やせば不透明感は増す。そもそもリスク資産の市場規模は国債に比べて小さく、購入金額は自ずと限られてくる。

 一方、国債の年限長期化は最もあり得る緩和策だ。実は、白川方明前総裁下で任命された審議委員6人の立ち位置が第三の関心だ。総裁、副総裁3人を合わせた計9人の多数決で決まるが、今後、円滑に運営し、緩和策を強力に推進するためには反対票は極力減らしたいところだ。

 年限長期化に関しては「1月会合では2人の審議委員が5年程度の延長案を述べ、2月には3〜4人に増えている」(岩下真理・SMBC日興証券債券ストラテジスト)模様で、その点ではハードルが低い。

 財務省出身である黒田氏のほうが白川氏に比べると、「より強く政府に対して財政健全化を求めてくるはず」(政府高官)という意味で期待は高い。黒田氏と最近面会した政府関係者によれば、黒田氏は「大胆な金融緩和策を打ち出す際には財政を引き締める必要がある」との認識を示したという。

 政府に対してどこまで強い姿勢を貫けるのか。緩和策もさることながら、黒田新総裁の真価はここで問われることになる。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

 

【第1回】 2013年3月25日 金森重樹 [ビジネスプロデューサー]
現物不動産の投資環境はこう変わった!
『1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法』から8年、この間の環境変化を概観する
不動産投資の破壊的成功法』に至るまでの8年間の環境変化について語る。 アベノミクス効果が不動産にもおよび、不動産マネーが動き出したといわれる今、果たして不動産は「買い時」なのか?2005年に出版した『1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法』で現物不動産投資の世界に革命を起こしたといわれる金森重樹氏が、2月末に上梓した『改訂版
金融工学の数字に、古いも新しいもありませんが……
前著出版から8年。前著はもともとファンドの金融工学を個人投資家に使えるように噛み砕いた内容でした。数字に古いも新しいもありませんので、8年経った現在もそのロジックは100%妥当しますが、不動産投資を取り巻く環境が変わりました。この間の環境変化を概観してみます。 
2005年に日本の総人口はピークアウトしました。 
2007年頃までは世界的な金あまりの中で国内外の資金がファンドを通じて流入し、不動産価格は上昇しました。前著を読んですぐに不動産投資を始められた方の中にはこのタイミングで転売によって利益を得た方も多いです。前著で予測したとおりさいたま市のRC物件が値上がりして個人投資家の手が届かなくなったのもこの頃です。 
2007年夏頃から米国住宅価格が下落をはじめ、住宅ローンの延滞率の上昇からサブプライム住宅ローン危機が発生しました。サブプライムローンを組み込んだ債権が投げ売りされたことで2008年9月にリーマンブラザーズが倒産し、世界同時株安、金融収縮が発生します。実体経済も景気後退が起こります。 
2007年夏頃が都心分譲マンション価格のピークだったと思います。その後いくつかのデベロッパーが倒産します。国内金融機関もサブプライムローン関連の損失計上を余儀なくされる中でオリックス信託銀行(現オリックス銀行)、三井住友銀行が個人向けアパートローンのLTV(借入金比率)を引き下げます。その隙間をスルガ銀行が補います。 
2009年10月、ギリシャ国家財政の粉飾決算の暴露に始まる2010年欧州ソブリン危機によりユーロ加盟諸国(PIIGS)の経済危機が連鎖します。 
カネ余りで銀行の融資姿勢に変化が……
現在も邦銀がアパートローンに前向きではない状況は変わりませんが、金余り状況から、住宅ローンでは0.7%を切る商品もでており、実体経済の悪化の中で、住宅ローン以外の貸出先に困っています。貸出先の無い中でアパートローンに活路を見出すべく地銀数行はLTV=100%の融資を再開している状況にあります。また、関西ではフルローンが常態化するじゃぶじゃぶの状態です(2013年2月現在)。 
僕の会社が運営する「通販大家さん」は当初の予想に反して非常にたくさんの読者の方の共感をいただき、その間に延べ500棟以上の仲介を行いました。反省もあります。 
前著がサラリーマン投資家ブームの先駆けだったこともあり、サラリーマンでも億単位の投資が可能であるという部分を強調しすぎて、富裕層の木造投資、耐用年数切れ物件での節税目的の投資についての配慮を書いた部分がありました。 
その人の年収、職業、金融資産などの属性によって同じ物件でもフルローンがつくこともあれば、現金を20%以上入れなければならない場合もあります。 
ある物件が資産拡大局面にある人にとっては、キャッシュを費消する困った物件だとしても、富裕層にとっては節税のための美味しい物件だったりします。
不動産投資の破壊的成功法』ではそういう反省も踏まえて、サラリーマン投資家を意識した内容から、富裕層にも配慮した内容へと若干の軌道修正を図っています。 『改訂版
不動産投資はスーパーで野菜を買うのとは異なり、誰もが同一条件で不動産を取得できるわけではないということに配慮して読んでいただければと思います。 
という内容ですのでリスクが取れる人はレバレッジを掛けて投資すればいいですし、そうでない方は自分が負えるリスクと相談しながら投資してください。 また、本書はサラリーマンをやりながら将来の年金として不動産収入が入る状況を準備してはどうですか? 
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【第842回】 2013年3月25日 週刊ダイヤモンド編集部
値上げ前の駆け込み需要が旺盛な学資保険
高い戻り率を掲げた日生には注意が必要
「また日生がやったか」――。保険業界には、驚嘆ともため息ともつかぬ声が広がった。 

 4月から標準利率の改定によって多くの保険商品の保険料が引き上げられる中、1月早々に主力商品の保険料の据え置きを発表し、業界を驚かせた日本生命保険。それに続いて3月1日には、事実上の“値下げ“となる新たな学資保険を4月2日から発売すると発表したからだ。

 各社が驚いたのは、値下げだけではない。日生の学資保険は満期時に受け取る給付金が、払い込んだ保険料総額を大きく上回る114%(戻り率)にも上ることだ。

 実は、戻り率が100%を越える学資保険はそう多くはない。表にあるのが100%を越える代表的な学資保険で、これ以外の大半が元本割れとなる。


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 ちなみに、学資保険といえば想起されがちなのは簡保(現かんぽ生命保険)の学資保険だが、その戻り率は99.9%しかなく、元本割れしてしまうのが現状だ。

 というのも、保険会社にとって受け取った保険料をほぼそのまま支払う学資保険は、まったく儲けが出ない。長らく低金利が続いているため運用益が稼げないからで、「本音を言えば、学資保険は売りたくない商品」(大手生保)なのである。

 状況は日生といえども同じ。にもかかわらず、日生が高い戻り率の学資保険を発売するのはなぜか。複数の大手生保幹部は、「鳴り物入りで発売した主力商品の売れ行きが鈍いからだろう」と見る。

 学資保険は死亡保障と異なり、将来、必ず必要になる学費に備える保険のため、とても売りやすい。そのため業界では「ドアノック商品」と言われており、学資保険をきっかけにして本当に売りたい商品を売り込むための“撒き餌”とされている。つまり日生は、高い戻り率の学資保険を餌にして、売れ行きの鈍い主力商品のテコ入れを図るのではないか、と目されているのだ。

 もっとも、この手法は日生に限らず他社も同じ。戻り率の高さで知られるソニー生命保険やアフラックもかつては通販で学資保険のみを買うことができたが、今では、営業マンや代理店経由でしか買えなくなった。すなわち、対面で学資保険を販売することで、他の保険商品を売り込みたいからだ。

 とはいえ、保険会社が売り込みたい商品にさえ気をつければ、表にある生保が販売する学資保険は悪い商品ではない。

 その学資保険で注意すべき点は、三つ。まずは、これまで述べてきた戻り率で、最低でも100%を超える商品を選ぶべきだろう。

 とりわけ、先述のとおり、標準利率の改定によって4月2日以降、保険料が上がる商品が多い点には注意が必要だ。学資保険の代名詞といえるソニーとアフラックが値上げに踏み切ることに加え、今年1月、大々的に戻り率の高さを喧伝して新しい学資保険を投入した明治安田生命保険も、発売からたった数ヵ月での値上げとなる。

 一方、富国生命保険は販売員の手数料を下げることで帳尻をあわせたもようで、4月以降も保険料は据え置きだ。

 すでに値上げを見込んだ「駆け込み需要が増えている」(大手保険ショップ幹部)というほどで、もし値上げする会社の学資保険に入りたければ、3月中に契約を済ませる必要がある。また、あまり知られていないが、学資保険は出産予定日の140日前から加入できるため、近々出産予定があり、学資保険を検討している人は、早急に手を打った方がいいだろう。 

 次いで、注意すべきは、給付金の受け取り方だ。大学入学時に一括で受け取るか、入学時に一部を受け取り、その後3年間にわたり毎年受け取るなどの分割方式がある。

 戻り率でいえば、一括で受け取るよりも、分割で受け取った方が高くなる。その分だけ保険会社にとって運用期間が長くなるからだ。どちらの受け取り方がいいかは、それぞれの家庭の事情によって異なるし、戻り率にも違いがあるので、慎重に見極めてほしい。

 三つ目は、給付金を受け取るタイミングだ。契約するタイミングや契約内容によっては、給付金の受け取りが、大学の入学金納付後になることもあるからだ。学資保険の給付金を受け取れるのは、子どもが17歳や18歳になった後の契約した月日となるためで、とりわけ、18歳満期の契約の場合は、入学金に間に合わないケースが少なくない。

 加えて、かんぽの学資保険には17歳満期の契約自体がなく、18歳満期の契約となるため、注意が必要だ。

 以上のような点に注意した上で、学資保険を選んで欲しい。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)

【第86回】 2013年3月25日 高城幸司 [株式会社セレブレイン 代表取締役社長]
アベノミクスを巡るバブル世代とゆとり世代の温度差
「アベノミクス」の恩恵を受けてか、久々に景気の良さを肌で感じられるようになってきました。もちろん、地域等で認識に違いはあるでしょうが、約25年前のバブル景気と今の景況感を重ねる人も少なくありません。

 ただ、25年前といえば、今の20代どころか30代の社員も当時の状況を職場で体験していないほどの昔。そのため、現在の景況感に対する受け止め方は、年齢によって大きく異なっているといいます。

 そこで今回は、「アベノミクス」の受け止め方は年齢によってどのように異なるのか、そしてそれによって生まれる職場でのギャップをご紹介していきましょう。

スポーツカー、高級時計が売れまくる!?
目に見え始めた「アベノミクス効果」

 ここ最近、繁華街に活気が戻ってきています。3月は送別会シーズンなどで例年忙しい時期ですが、加えて今年は夜遅くまで繁盛している店が増えているようです。私の会社がある赤坂界隈では、これまで1次会で終了していた飲み会が2次会、3次会まで続くなど、職場の同僚たちと深夜まで飲み歩く会社員の姿をたくさん見かけるようになりました。

 また、大手新聞社の報道によると、ある外車の販売店は、2013年に入ってから1000万円を超える高性能スポーツカーなどが続々と売れ始め、デパートでは高級外国時計を買い求める主婦が増えてきたそうです。また、東京のホテルで開かれた世界各国のワインの試飲販売会では、数万円する限定ワインが飛ぶように売れたとのこと。個人消費は回復基調にあるようです。

 乗車したタクシーの運転手に「景気はどうですか?」と尋ねてみても、「どん底は超えたようですね」「チケットで長距離を乗るお客様が徐々に増えてきました」と明るい声が返ってきます。まさにアベノミクス効果が出てきた証なのかもしれません。

 では、ここで『アベノミクス』とは何かを改めて少しだけ解説しておきましょう。アベノミクスとは、安倍晋三首相が第2次安倍内閣において掲げた一連の経済政策に対する通称で、「安倍」と「エコノミックス」を合わせた造語です。主に以下の3つを基本方針としており、安倍首相はそれを「3本の矢」と表現しています。

1.大胆な金融政策
2.機動的な財政政策
3.民間投資を喚起する成長戦略

 なかにはアベノミクスを『プチバブル』を政策的に仕掛ける方針として批判する経済評論家もいるようです。

 ちなみにバブルとはバブル景気のこと。1986年末から1991年に起こった資産価格の上昇と好景気、それに付随して起こった社会現象で、企業や富裕層のみならず、一般人まで巻き込んだ一大消費ブームとなりました。

 あれから25年以上。今では、当時を知らない社員が職場で半分以上を占めるなど、もはやバブル景気は遠い過去の話になりました。それだけ日本経済は長い間、厳しい時代が続いていたのです。

 振り返れば、民主党政権において数回、円売りドル買い介入をしたものの円高や株安は改善されず、貿易赤字は毎月膨れ上がり、昨年10月には過去最高の5490億円を記録しました。ですが、安倍首相がアベノミクスでデフレ脱却・無制限の量的緩和策を打ち出したことで、日経平均株価と円安の動きが連動し、日経平均は戦後の好況時に近い状況になってきたとも言われています。

“バブル再来”に浮かれる!?
40代後半以上の大人たち

 そんな景気のいい状況を勘も鋭く察知できるのはバブルを経験している40代後半以上のビジネスパーソンたち。証券会社で営業部長をしているFさん(49歳)は、

「まさにビックウェーブがやってきた。国内株を売りまくろう」

 と威勢のいい掛け声を部下たちにかけてきます。そんな掛け声をかけるのはいつ以来でしょうか?

 特にリーマンショック以降は、「お客様に謝ることしかなかった」と嘆きたくなるほどで、株式市場の低迷が現場の若手営業にとっては苦痛そのものだったのです。その当時のことを若手営業の1人が

「お客様の金融資産が大幅に目減りして追証を取りに行く毎日でした」

 と話してくれました。

 ちなみに追証とは信用取引で買った銘柄の株価下落などによって、 追加で支払わなければならない保証金のこと。この追証を取りに行ってお客様から怒鳴られることも少なくなかったようです。

 さらに社内からのノルマのプレッシャーは常に重くのしかかり、いつも胃がキリキリする毎日を若手営業は過ごしてきました。ゆえに、いくら株式市場が回復基調になったからといって、なかなか仕事に対して強気になれないのも仕方ないのかもしれません。

 ところがバブルを経験している40代後半以上の部長たちは違います。長年の不況を背景にした弱気なセールスばかりに辟易していたので、好機到来に大騒ぎする状態になっています。これだけ世代によって、景気の回復に対する認識が違うのです。

 バブル景気は、それを経験した人々にとって、忘れられない懐かしい憧れの時代でした。2007年に『バブルへGO!!』という映画が公開されたのを覚えていますか?主演は阿部寛さんで、役柄は財務官僚。時代はバブル崩壊以降、800兆円の借金を抱え、破綻の危機に瀕した日本経済で、阿部さん扮する窓際官僚は、破綻の危機にある原因が1990年に行われた総量規制の行政指導をきっかけとするバブル崩壊にあると考え、タイムマシンで歴史を遡りバブル崩壊を阻止しようと計画します。そして、タイムマシンに乗って1990年の世界へタイムトラベルするというものです。かなり、無茶な設定のドラマ展開ですが、意外と40代以上に人気を博しました。

「あんな夢のような時代がくることは2度とない。懐かしい昔話に対して郷愁の念を感じる」

 そう懐かしさがこみ上げた人が随分いたようです。確かに、上映当時の日本経済はどん底をさまよっていましたから、無理もなかったかもしれません(20代の若手社員にしてみれば、ドン底でなく普通に思えたかもしれませんが)。

イケイケどんどんの40代上司と
相変らず弱気な20〜30代若手営業

 そして今、「夢よ、もう一度」ではないですが、バブルの再来を感じられる気配が漂ってきました。すると、バブル景気を体感した人々はアベノミクスの恩恵を受けて再び“イケイケ”で仕事をしようかと思案し始めました。

 ところが、イマドキの若手社員はバブル景気を知りません。取材した証券会社の営業部でも若手社員は、アベノミクスによる市場の回復に懐疑的で果敢に動こうとはしません。まさに部長が笛吹いても踊らない状態です。

 しかし、部長にしてみれば千載一遇のチャンス。とはいえ自らがセールスしたいのにもかかわらず、部下は営業同行を入れてくれません。その苛立ちはかなり大きくなり始めていましたが、仮に部下に対する怒りが爆発しても、

「何に怒っているのか、意味わからない」

 と若手社員は感じることでしょう。それだけアベノミクスに対する温度差があるのです。

 広告代理店に勤務しているDさん(25歳)にとってバブル景気は、ほぼ生まれる前の出来事。当時の状況を理解するのは相当難しいものがあります。ゆえにアベノミクスで景気が戻りつつあるから、積極的にクライアントから予算を取りに行こう、そのために接待もガンガンやっていい…と言われても戸惑うばかり。

「そもそも接待なんて大したものをやった経験がありません。これまで予算がないから居酒屋で1次会ならいいとか世知辛いことしか承認してくれなかったのに、急に180度変わった指示をされてもついていけませんよ」

 これが本音なのです。ゆえに上司からそう言われたとしても、営業スタイルを大きく変えることはありません。いつものようにクライアントに訪問して、計画された予算の仕事をきっちりとこなしていくだけ。これまで、こうした地道な仕事ぶりを評価されて競合に比べて高い実績を上げてきました。まさにDさんはDさんなりに時代にあった営業スタイルが確立しているのです。

 もちろん、たまにはクライアントと会食はします。ただ、お互いに割り勘であったり、5000円以下で済ませてしまう軽いものくらい。ゆえにクライアントと高級割烹とか、2次会でクラブに誘うことなんて「想像できない」のは当たり前かもしれません。

 ですから、アベノミクス効果に便乗して派手な接待、もっと上席の役員に会って、大きく予算を引っ張る提案を仕掛けろ…と上司から指令を受けても、Dさんはどうしていいのか、頭を抱えてしまうのが実際のところなのです。

過剰な接待は必要なし
今こそ新たな戦略・戦術を立てるチャンス!

 バブルが再来したとしても、すでに時代が変わり、バブル期と同じような営業手法が正しいとは限りません。例えば、過剰な接待は時代の変遷で淘汰されることでしょう。1980年代のようなド派手な段取りをする必要はありません。予算があるからと、むやみやたらな経費消化は慎むべきでしょう。

 ただ、景気が回復して右肩上がりの状況で「攻める」「強気」な戦略・戦術を立てて、組織で実践すべき時期であるのは間違いではありません。景気が上向きに変化したときに、具体的にどのようなアクションをすべきか?さらに不況時の発想で捨てるべきことは何か?こうした行動のあるべき姿を具体的に提示することが重要です。

 例えば、

「景気が回復基調になったときのお客様の気持ちは消費に対して意欲的になる。それに応えるべく、これまでより大がかりな提案をするのは当たり前のこと」

 と不安に駆られる若手社員の背中を押すマネジメントを心がけましょう。さらに組織で果敢に攻める体制をつくるためには、長く続いた不況で腰が引けている若手社員たちの視点や発想を転換させるべく、以下の3点を実行しましょう。

・いま日本経済で起きていることを細かく理解させる
・そのような環境で何をすべきか?考えさせる
・答えが出ない場合には、その回答をサポートする

 さらに具体的なToDoをイメージできると、動きはバブル経験者も安心する方向に向かうことでしょう。バブル経験者は長く職場で仕事してきた経験を活かして、アベノミクスで職場に勢いをつけていくことが重要ではないでしょうか。

◎編集部からのお知らせ


 本連載の高城幸司氏が共同執筆をした最新刊『新しい管理職のルール』が好評発売中!

 時代が変ればマネジメントの手法も変わります。会社組織や会社に関するルールが変わり、若者 の組織に対する意識も変わっていますから、マネジメントも変わらなくてはならない。では、どのように?「戦略」「業務管理」「部下育成」「コンプライアン ス」をどうマネジメントに取り入れるのか。新しいマネジメントのルールを教える1冊です。


 

【第269回】 2013年3月25日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
金融マンの報酬とバブルの関係
 欧州連合(EU)は、銀行員のボーナスに上限をつける制度を導入するという。基本的に、ボーナスは年間給与(ベースサラリー)と同額までとして、銀行の株主の過半数の承認があれば、2倍まで許容する、という内容になるようだ。EUは、まだ決まったわけではないが、投機取引を抑える方法として金融取引税の導入も検討しているという。

 外資系の投資銀行マンがベースサラリー2000万円、ボーナス8000万円といった構成で報酬をもらっていたとすると、同額の年収を得るためには、ベースサラリーを5000万円に増額しなければならない。

 金融関係の人材を扱うヘッドハンターに話を聞くと、外資系の会社では、かつてよりもベースサラリーを高めに設定する動きがすでに始まっているようだが、これが高給取りの外資マンリストラの一因になっているという。

 毎年、絶対に前年と同等ないしそれ以上に稼げる社員なら問題ないかもしれないが、会社から見るとベースサラリーは固定的に払うコストなので、コスト削減を考える場合に、ベースサラリーの高い社員から目を付けられやすい。

 筆者は、かつて外資系証券会社で働いていたときに、「外資系では、ベースを低めに抑えておいて、ボーナスで稼ぐのがいい」という趣旨のアドバイスを何人かから聞いたことがある。

 もっとも、規制をくぐり抜けて利益を得ることにかけては努力を惜しまない金融マンたちのことだ。会社を分けるとか、子会社の株式の形で利益を得るとか、あるいは、何らかの年金や金融商品の仕組みで実質的にボーナスをもらうとか、上手な抜け穴をすぐに開発するだろう。例えば、トレーダーがヘッジファンドの会社に移って、そちらで高額な報酬を得ることが、すでに行われている。

 金融マンの報酬を規制することは、大衆の嫉妬に迎合した愚策のようにも見えるが、バブルが起こる仕組みを考えると、「急所」の一つを突いている。

 バブルとは「長期的に維持できない高過ぎる資産価格が形成される現象」だが、その背後には信用の膨張を伴うことが多い。1980年代に日本で起きたバブルでは、不動産への過剰融資と、借り入れを伴う財テク運用が背後にあった。サブプライム問題に端を発した世界的金融危機でも、米国、欧州の両方で主に不動産に対する過剰な信用膨張があった。

 市場全体を個人に置き換えると、ローンで資金が増えるとリスク資産をより大量に高値まで買える一方、借金でつくった投資ポジションは、いつか巻き戻さなければならないので、脆弱なポジションだ。前者がバブルをつくり、後者が崩壊の必然性と崩壊過程での不良債権累積につながっている。

 問題は、後で不良債権につながりかねない過剰な信用膨張が起こることだ。しかし、これを止めるのが難しい。資産価格が上昇すると担保の価値が上昇するので、より大きなローンを組むことができる。これは、金融ビジネス、ひいては金融マンにとって収益チャンスだ。永続するビジネス主体として、正しくは将来の不良債権化のリスクを考えると信用供与を控えるべき場面でも、金融マン個人も金融機関の経営者も、一つには単純に近視眼的だ。合理的に考えるとしても、後で損失に見合う負担を求められないので、会社・株主・顧客にリスクを取らせて、「今、たくさん稼ぐ」ことに傾く。

 金融ビジネスおよび金融マンの制御は難事である。


15. 2013年3月26日 03:55:23 : GnRfb4ci8o
【第269回】 2013年3月26日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
話題を呼ぶ米「ミシュキン論文」
白川前総裁も強調した財政従属
「フィスカル・ドミナンス」(財政による支配)と超金融緩和策の関係に関する議論が海外のエコノミストの間で活発になっている。白川方明・前日銀総裁も退任前の講演などで何度も言及していた。3月19日の退任記者会見でも、財政規律と通貨の信認の重要性について白川氏は語っていた。

 2月22日にニューヨークで開かれた「US金融政策フォーラム」で発表されたF・S・ミシュキン(コロンビア大学、元FRB理事)、J・D・ハミルトン(カリフォルニア大学サンディエゴ校)らによる論文は大きな話題を呼んだ。過去の20の先進国の政府債務状況を分析した結果、政府・議会が財政健全化に向かって適切に対処しているときは、金融緩和策はその動きに貢献する。しかし、逆の場合は、金融政策は財政政策に支配されてしまう。

 特に、政府債務がGDP比で80%を上回り、かつ経常赤字の国は、その危険性が高い。彼らは議会が機能していない米国の場合、今後、財政の悪化を制御できない事態が訪れる恐れがあると心配している。財政赤字の維持可能性が市場から疑われ始めたときに、FRBの資産が膨張していると問題はより深刻である。

 FRBは市場からいわゆる“QE”(量的緩和策)で購入した巨額の長期証券を持っている。ただでさえそれは景気回復局面で大きな損失を発生させ得るのに、財政懸念から米国債のリスクプレミアムが跳ね上がって価格が急落したら、FRBのバランスシートに凄まじい損失が生じる。「FRBは大丈夫か?」という話が市場で広まると、米国債のリスクプレミアムはさらに大きくなり、恐ろしい悪循環が起きることになる。

 また、超金融緩和策の弊害・リスクを警告し続けている元BIS(国際決済銀行)のW・ホワイトは、中央銀行の国債購入の危険性を指摘している。政治サイドが中銀の国債買いオペによる長期金利低下に甘えて経済・財政の改革を遅らせると、かえって事態は深刻化する恐れがある。日米でそれは既にある程度起きてきた。

 黒田東彦総裁が率いる日銀新体制は、長期の国債を大規模に購入していく模様だ。白川体制下でも日銀は政府の年間の新規国債発行額に匹敵する額の国債を市場から購入していた。それをさらに上回る勢いで日銀が国債を購入し続け、かつ「日銀券ルール」(日銀が保有する国債は日銀券発行額以内とすると定めた“内規”)が完全に捨て去られる場合、将来の日本で「フィスカル・ドミナンス」が顕在化することはないか注意して見ていく必要がある。

 (東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130313/244948/?ST=print
社長だって仕事に行きたくない最終回 自分へのご褒美があれば頑張れる

2013年3月26日(火)  小山 昇

 カリスマ社長、小山昇氏が新入・若手社員にアドバイスをする連載も今回が最終回。第1回は「失敗することの重要性」を、第2回では「数字にこだわることの大切さ」を説いた。
 およそ仕事とは、おおむねつらくてしんどいものです。

 趣味に没頭しているうちに、それが仕事になった人をニュース記事などで見ることがありますね。あなたはそれを「好きなことをやって生活できるなんてうらやましい」と思うでしょう。


「明日仕事に行きたくないと思うこともある」という小山昇氏(写真:陶山勉)
 しかし、マスコミが伝えているのはあくまでも一側面に過ぎません。実際に本人に会って話を聞いてごらんなさい。いくら趣味の延長線上で仕事をしているといっても、必ず何らかの悩みや苦しみを抱えていますから。

 楽な仕事、苦労せずにできる仕事なんてものは、この世には存在しません。「ユートピア」という言葉は「理想郷」という意味のほかに、「どこにも存在しない場所」というニュアンスを強く含んでいると聞きます。あなたがストレスのない職場を望んでいるとすれば、まさにそれこそユートピア幻想です。

社長だって仕事に行きたくない

 第一、私だって65歳になってもなお、寝床に就く前には「明日は仕事をしたくないな」と思います。朝起きても「今日はかったるい」と思います。皆さんと同じ年の頃は、午前と午後で1回は仕事をしたくないと思いました。時には、1日に5回に及ぶこともありました。

 年間ざっと300日は働いており、しかもそれをかれこれ10年余り続けた。実に1万5000回以上も「仕事に行きたくない」と思っている計算になります。と、前回述べた「数字で考える」を身をもって示してみたわけですが、こうしてみると改めてびっくりしますね。自分で言うのもなんですが、その後、考え方を変えたので、昔と比べれば仕事をしたくないという気持ちは減りました。

 でも社長の私ですらそんな具合なのだから、社会に出て日が浅いあなたが、仕事がつらい、もう嫌だと思うのは当然のことではあります。あるのですが、しかし私とあなたとでは、決定的に違う点が1つあります。

 私は「仕事とは基本的にしんどいものだ」という事実を、全面的に受け入れている。だからつらいと感じても「自分で決めたこと」だと思って、毎日仕事に向かうことができる。あなたは逆に、その事実を受け入れていない(あるいは部分的にしか受け入れていない)。だから嫌だの辞めたいだのとネガティブな感情にとらわれるのです。

同期や友人と飲んでうっぷんを晴らせ

 ここで私があなたに示せる処方箋は2つあります。

 1つは、同期の友人と酒でも飲むことです。あなたの会社でも、「同期会」とか称して定期的な飲み会をやっているでしょう。そういう場で「お前のとこは最近どうよ?」と聞いてごらんなさい。もしかしたら、彼はあなたよりもしんどい環境で苦労しているかもしれませんよ。

 そうであれば、あなたは居ずまいを正さねばなりません。あるいは彼は、あなたより多少は恵まれた状況で働いているかもしれません。それなら、どうしたら彼のようなポジションが獲得できるのか考えてみてください。

 仕事に不平不満を持つのは、多くの場合で視野狭窄(きょうさく)に陥っているからです。自分だけが苦しんでいると錯覚したり、ほかの部署やほかの会社に幻想を抱いたりするのは、そのためです。

 それを解消するには、同じような立場にある人の声を聞くのが一番です。別に会社の同期でなくてもかまいません。学生時代の友人と飲み、語るでも大いに結構。うっぷんは、それを人に話すだけでもずいぶん軽くなるものです。

自分へのご褒美を設定しよう

 もう1つの、そしてより有効な処方箋は、常に短期的な目標(あるいは自分へのご褒美)を設定することです。

 例えば「次のボーナスは新車の頭金につぎこもう」とか、「給料が出たら恋人とちょっと豪華なディナーにでも行こう」とか。もちろん「来年はチーフくらいにはなりたいな」でもかまいませんよ。嫌だと思っている仕事でも、出世して相応の待遇と権限が与えられるようになれば、それなりにやりがいも持てるようになってくるものですからね。

 あなたが受験生だったころのことを思い出してください。第一志望は○○大学だ。模試の結果は合格率50%、B判定。やや危ういと見るべき状態です。あなたはそれで諦めてしまいましたか? 諦めませんでしたよね。なんとか入試当日まで少しでも学力を高めておこうと一所懸命に勉強したはずです。

 それは「○○大学に入りたい」という具体的で明確な目標があったからです。だから努力できた。もしかしたら健闘及ばず、滑り止めの大学に入ることになったかもしれません。しかし、それでも第一志望の大学に合格したいと思って努力したことは、あなたにとって大きな財産になっているはずですし、そのつもりでがんばったからこそ、滑り止めの大学にはきちんと合格できたのです。

 そういえば以前、こんな話を聞いたことがあります。場所はどこかの独裁国家の思想矯正所。そこに収監されている政治犯に100本の杭を示し、「これを全部地面に打ちつけろ」と命令する。それが終わると「では杭を全部抜け」。そしてまた別のところに打ちつけろという。

 これを繰り返すと、どんなに体を痛めつけられても屈しなかった百戦錬磨のパルチザンも、ついには発狂してしまうのだとか。人間は、自分の行為に目標や目的(あるいは「意味」といってもいいでしょう)がないと耐えられない生き物なのだというエピソードです。

 仕事もそれと同じです。あなたが仕事はつまらない、楽しくないと感じるのは、具体的な目標を持っていないからです。目標といっても大したものでなくてもかまいません。前述したように意中の人をデートに誘うとか、趣味に散財するといったことでいい。そういう短期的な目標を常に持つことです。そうすれば、仕事にも少しずつ意義や意味が見出せるようになってきます。

 先ほど「およそ仕事はどのようなものであっても、おおむねつらくてしんどいもの」だと言いました。大きく言えば確かにそうですが、心掛け次第では、そんな仕事の中にも楽しさややりがいをいくつも見出すことができます。あなたはまだそれを見つけていないだけなのです。

高杉晋作だって同じことを言っている

 私は断言しておきますが、これからあなたが社会人として成長していく過程においては、これまで出会ったつらいことなど目じゃないというほど不条理な目に遭います。お客様には無理難題を吹っかけられ、嫌な上司や先輩には無茶振りをされ、手柄は持っていかれ、逆に責任は押しつけられ…。それはもう踏んだり蹴ったりの、文字通りのサンドバッグ状態になることもあるでしょう。

 私はそういう世の中が正しいとは必ずしも思いませんが、現実として確かにそういうことは起きる。そこで腐ってダメになるか、「これも成長のための試練だ」と自分を奮い立たせ、ファイティングポーズを保ち続けるのか。それによって、あなたの将来は大きく違ってきます。

 幕末に長州藩の志士・高杉晋作は「おもしろきこともなき世をおもしろく」と辞世の句を詠みました。有名な句ですから、あなたもどこかで目にしたことがあるかもしれません。この句には(本人が詠んだかどうか分かりませんが)続きがあり、「住みなすものは心なりけり」と結ばれています。

 面白くない会社を面白く、楽しくもない仕事を楽しくするのは、ひとえにあなた自身の心掛けにかかっているということです。

(この記事は日経BP社刊『会社脳の鍛え方』を基に再構成しました。構成担当:吉岡陽)
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小山 昇(こやま・のぼる)

株式会社武蔵野・社長
1948年山梨県生まれ。89年にダスキンの加盟店業務を手掛ける武蔵野の社長に就任。経営改革のノウハウを生かし、現在500社余りに経営を指導。その多くが過去最高益を達成しており、倒産はゼロ。現実に即し、人間の本性をとらえた組織作りの手法が高く評価されている。経営者向け月刊誌「日経トップリーダー」にて、「小山 昇のこれができなきゃ社長失格!」を好評連載中。


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130314/245052/?ST=print

 

 
【前編】 2013年3月26日 藤野英人,山田真哉
「スリッパの法則」と「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」にみる、潰れない会社の見分け方
160万部を突破した『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』など多くの著書がある公認会計士の山田真哉氏と、抜群の成績を誇る「ひふみ投信」ファンドマネジャーで、伸びる会社とダメな会社の見分け方を指南したベストセラー『スリッパの法則』で知られる藤野英人氏。独自の視点を持つ2人が、日本人の「お金」観を語る!

※今回の記事はジセダイ(星海社)のページでも読むことができます。

スリッパの人!と
呼ばれたことも(藤野)

藤野 今日は「さおだけvs.スリッパ対談」、どうぞよろしくお願いします(笑)。会計の本をたくさん出していらっしゃいますが、山田さんといえばやはり『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』ですよね。「さおだけの人」なんて言われたりしませんか?僕は昔『スリッパの法則』という本を書いたら、以来「スリッパの人」と言われることがあるんですよ。


藤野英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)1966年、富山県生まれ。1990年、早稲田大学卒業後、国内外の運用会社で活躍。特に中小型株および成長株の運用経験が長く、23年で延べ5000社、5500人以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。2003年に独立し、現会社を創業、成長する日本株を組み入れる「ひふみ投信」を運用し、ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。この「ひふみ投信」はR&Iが選定するファンド大賞2012の「最優秀ファンド賞」を受賞した。著書に『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金よりも大切にしていること』(星海社新書)ほか多数。明治大学講師、東証アカデミーフェローも務める。
ひふみ投信:http://www.rheos.jp/ Twitterアカウント:twitter@fu4
山田 『さおだけ屋〜』は、日常の身近な疑問から会計の考え方を楽しく学んでもらおうと考えて書いた本だったんです。

 どんな商売でも「『売り上げ』から『費用』を引いたものが『利益』」「『利益』は企業が継続していくためには必要不可欠」という会計の原則があります。さおだけ屋が潰れない理由には「さおだけ屋は、実は売り上げが高い」「さおだけ屋は、実は仕入れの費用が低い」という2つの仮説が立てられます。この仮説を検証していくと……といったように、謎解きをしながら会計の本質をつかんでもらおうというわけです。

 実は、「さおだけ屋」は身近な事例の一つでしかないのですが、確かに「さおだけの人!」というイメージは強いみたいです(笑)。藤野さんの「スリッパの人」もかなりインパクトがありますね。

藤野 『スリッパの法則』は04年に書いた本なのですが、「社内でスリッパに履き替える会社に投資しても、儲からない」という法則を紹介したら、それが朝日新聞の「天声人語」で取り上げられたんです。もちろんスリッパに履き替える会社は絶対ダメだということではなくて、問題はスリッパに履き替えることに表れる「会社と家を同じようなものと考える悪しき家族主義」。
私が伝えたかったのは「閉鎖的な会社になっていないかどうか注意する必要がある」ということだったのですが、「ウチの会社はスリッパを履いているが、ダメなのか」といった反発の声も寄せられるなど、予想外に大きな反響がありました。

山田 新刊『儲かる会社、つぶれる会社の法則』にも「スリッパの法則」が出ていましたね。

藤野 この本はいわば“スリッパの法則の最新版”です。時代の変化に対応して古びた法則は大きく見直していますが、スリッパの法則は変わっていません。

時価総額上位10社で役員の写真を
載せているのはたった1社!

山田 会計の世界では企業は継続することが大前提にあって、会社が継続するためには何が何でも「利益」が必要です。会計で考える「潰れない会社」は「利益」が出ている会社と言うこともできるんですが、藤野さんが考える「潰れない会社」とはいったいどんな会社ですか?

藤野 ちゃんと儲かる会社を見極めるための法則は、たくさんあるんです。会社に行かなくても判断できる例を一つ挙げると、時価総額上位200社の企業のウェブサイトで「社長と役員の写真が出ているところ」と「社長しか写真が載っていないところ」を比べると株価の差がすごいんですよ。役員の写真まで載せている会社のほうが過去10年間で株価が上がっていて、その差は劇的です。

 楽天、ヤフー、日揮、それから三菱商事や三井物産、伊藤忠などの総合商社もこの法則にあてはまります。業績を見るより、簡単に儲かる会社を見抜けるんじゃないかと思うほどですよ。ちなみに、時価総額上位10社で役員の写真をウェブサイトに載せているのは1社だけで、あとはNTTもNTTドコモもキヤノンも三菱UFJも、みんな社長だけしか載ってないんです。載せているたった1社はどこかというと、ソフトバンク。

山田 ソフトバンクですか、なるほど!しかし、この「役員の写真の有無」は何を示しているんでしょう?

藤野 おそらく、企業の「覚悟」や「勇気」、「透明性」が表れるポイントではないかと思います。写真を表に出すことは多少なりともリスクがありますよね。事なかれ主義の会社なら「社長くらいはしかたがないけれど、役員を出すのはやめておこう」となるでしょう。あるいは、役員の位置づけの違いかもしれません。役員が会社の経営に責任を負っているのか、それともただの“お飾り”なのか……。

山田 私は会計士として監査する立場で会社の中に入ることが多いのですが、確かに、役員と社長が侃々諤々の議論をしている会社もあれば、社長が役員をコマのように扱っている会社もあります。役員を大事なメンバーと考え、チームで経営しているんだと思っていれば、おのずと「役員の写真もウェブサイトに出そう」ということになるのかもしれませんね。

藤野 会社の良し悪しは素人の目線である程度判断できるものですし、その「素人目線」がものすごく大事なんです。なぜかというと、会社の価値を決めるのは素人だから。お客様って、別にプロじゃないんですよね。その意味で、企業の収益や株価ってわりと人間くさいところで決まっているものだと思います。投資やお金のことについて考える時は、数字だけを見るのではなく、株価やお金に対して人間的な部分を感じられるかどうかが投資家としてのレベルを左右するんです。

お金を語ることは
人生の哲学を語ること

山田 藤野さんは新書の『投資家が「お金」よりも大切にしていること』で、お金について真面目に考えることが必要だと書かれていますよね。日本人はお金について考えることを避けがちだけれど、お金を語ることは人生の哲学を語ることだ、と。


山田真哉(やまだ・しんや) 一般財団法人芸能文化会計財団理事長・公認会計士・税理士。1976年神戸市生まれ、大阪大学文学部卒。著書に160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)、シリーズ100万部でテレビドラマ化もされた『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫ほか)、『世界一やさしい会計の本です』(日本実業出版社)など。年間25回ほどの講演会を8年間続け、延べ4万人を動員している。
Twitterアカウント:twitter@kaikeishi1
確かにこの本を読むと、日本人はお金とちゃんと向き合えていないと感じます。この本で僕が「そうだったのか」と思ったのは、日本人が一時すごい勢いでブラジル株に投資していたのに、最近はみんないっせいに引き上げてしまっているという話。

 日本人は外国企業が日本企業を買収すると「ハゲタカだ」と言いますが、藤野さんの「日本人のブラジルへの投資は、ブラジル人にとってなんの役にも立たなかったばかりか、ブラジルの通貨や経済を混乱させてしまった。日本人こそがハゲタカだ」という指摘にはなるほどと思いました。僕は株や投資信託、外貨MMFなどで運用をしていて、ちょっと前までブラジル関連の投信の宣伝をよく目にしていたのですが、確かに最近あまり見かけないんですよね。

藤野 ブラジルの話は一例で、日本人は世界で最も投資の回転率が高いと言われているんです。投資信託についていえば、海外では10年、20年単位で保有するのが一般的ですが、日本人の投信の平均保有期間はたった2.3年にすぎません。とにかくソンするのが嫌で、少しでも危険なにおいがすればすぐに売ってしまうので、一つの投信を買っても1年以内に乗り換える人が多いんです。

山田 もともと投信って長期で資産形成するためのツールですよね。長期保有している人が少ないというのは、なぜなんでしょうか。

資産形成のためのはずの投資信託は
「義理人情」で販売されている

藤野 それは、日本では投信が義理人情で売られているからでしょう。たとえば、定年退職して銀行口座にぽんと数千万円の退職金が入ると、取引銀行の支店長と入社1〜2年目の若手が一緒に訪ねてくるんです。菓子折りを持って「おつかれさまでした、今後はゆっくりセカンドライフをお過ごしください」なんて言われると、それだけで舞い上がってしまう。その後、担当になった若手行員が何をするかというと、お客さんの家に行って昔の武勇伝を聞き出すんですよ。

山田 じっくり話を聞いてあげるわけですね。

藤野 そうするようにマニュアルに書いてあるんです。2〜3回も訪問されればすっかり心を許すようになって、“自分から”「君は退職金運用の提案のために来ているんだよね、そろそろ考えないといけないよなぁ」と言い出します。

 そこですかさず若手行員が投信を勧めると、「あなたを信用して買いましょう」となる。半年、1年経ったら、今度は「お客様のポートフォリオを見直しましょう」と言って投信を入れ替えさせる。そうやって投信を回転させて、販売手数料を何回も得るんですよ。

山田 販売手数料が3%とすると、退職金3000万円を投信購入に充ててもらえば、銀行は一度に90万円の手数料収入が入る。それなら、話を聞きに行くくらい、いくらでもやるでしょうね。結局、日本人の投信の保有期間が短いのは、金融機関が回転売買を勧めるからということなんでしょうか?

藤野 金融機関側の問題は大きいですね。投信販売が、お客さんの資産形成のためではなく、一定期間で利益を上げるための手段になってしまっているわけですから。しかし私は、買う側にリテラシーがないのも問題だと思っています。定年退職まで勤め上げてきた人は、ある意味でこれまで“レールに乗っていることが正解”という人生を送ってきて、お金について考える時間がなく、考える必要性も感じなかったでしょう。それこそ、お金に向き合うことがなかったのだと思うんです。日本人には、「お金について無垢であるほうがよく、お金のことを考えるのは汚い」という思想がありますから。

山田 みんな、「Mr.Children」や「innocent world」といった“少年”や“無垢”が大好きですよね。

藤野 日本人は誰もが「清貧の思想」に共感を覚えますよね。でも本来、「清貧」でいう貧しさとは、「理念に生きるためにあえて豊かな生活を拒否する」という考え方だったんです。ところが、これが曲解されて「豊かになるためには理念を捨てて汚れなければいけない」という考え方に変わってしまったんです。ここから「豊かになることは汚れることだ」「お金持ちは何か悪いことをしたからお金を稼げたんだ」「お金=悪」といった価値観が生まれているんでしょう。でも、貧しいことは正義でも何でもない。目指すべきは「豊かで清らか」になることなんです。

儲かっているという理由で
叩かれるのはおかしい!(山田)

山田 お金を儲けている人を批判するのはおかしい、という指摘も面白かったです。

藤野 日本人には「清豊(せいほう)の思想」がないので、「汚れてもいいのでお金持ちを目指す」か「貧しくてもいいので清らかさを目指す」の2択しかないと誤解しているんです。だから、金儲けに大成功している企業やその経営者は汚くて、ベンチャー企業やNPO、NGOを立ち上げる人は清らかだと思っている。

山田 NPOやNGOが日本で評価されるのは、儲かっていないから信頼されているという面は多分にあると思います。利益を出したらすごく叩かれるでしょう。私のクライアントに公益社団法人があるんですが、儲かると内閣府がうるさい。公益社団法人とはいえ、「何を社会に提供できているか」で評価されるべきで、お客さんがたくさんいて儲かっているのはいいことのはずなんです。

 私自身には「儲かっているという理由で否定されるのはおかしい」という思いがありますが、どうも「儲かっているのはお金をもらいすぎているからでしょう?」という発想があるみたいなんですよね。

藤野 その点、アメリカにはお金持ちが尊敬される文化があるんです。たとえば、マイクロソフトのビル・ゲイツにしても、アップルの亡きスティーブ・ジョブズにしても、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグにしても、多くの人から尊敬されています。それは、彼らが社会のため、世の中のために貢献していると考えられているから。

 ある国際機関がビジネスマンを対象に行った調査によると、「あなたの社会では、新しい事業や会社を始めることは、立派なこととして認められていますか?」という質問に対して、アメリカでは91%の人が「イエス」と答えたそうです。ところが、同じ質問でイエスと答えた人は、日本ではたった8%。この結果も、「清貧の思想」からきているのではないかと思います。

(後編は4月29日更新予定です。)
取材・文/千葉はるか

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5時間目 自殺と資本主義オルターナティブ

2013年3月26日(火)  小川 仁志

<ゼミのメンバー>
小川先生:42歳、市民との対話をこよなく愛する哲学者。
兼賀大治:56歳、おカネが一番大事だと思っている投資が趣味のサラリーマン。
大飯奈弥美:30歳、消費と貯蓄の間で揺れる独身のキャリアウーマン。
新実三郎:35歳、知的で現実主義的なビジネスマン。

小川仁志氏
小川:日本の自殺者数は悪名高いですね。昨年ようやく年間の自殺者数が3万人を割りましたが、それまでは14年もの間3万人を超えていたのですから。

新実:3万人という数も大きいですが、人口比で見た場合の自殺率も非常に高いんですよね。たしか世界でも10番以内に入るとか。

大飯:世界第3位の経済大国なのに変ですよね。

兼賀:まじめすぎるのかなぁ。

新実:というよりも、社会問題としてとらえるべきだと思いますよ。経済大国ゆえの問題としてね。

小川:つまり、経済大国だからこそ格差があり、そこで苦しむ人が自殺をしているという意味ですか?

新実:そうです。だってこの14年といえば、「失われた20年」といわれる格差社会と重なるでしょ? 反貧困運動なんかが起こったように、生活費が高い国だからこそ生活苦を感じる人は増えたはずです。

自殺の犯人は資本主義?

小川:確かに日本の自殺者は、男性の方が圧倒的に多く、年齢も家庭を支える50代が1位、しかも無職の状態の人が多いといいますね。さらに、自殺理由も健康上の問題に続いてやはり経済・生活問題が挙がります。

兼賀:ちょっと待ってくださいよ。それじゃまるで資本主義が自殺の犯人みたいじゃないですか。

大飯:もっというとおカネを儲けるために働くのが、実は死への道になっているってことでしょ。

新実:いくら働いても生活苦じゃ、そりゃ絶望するって。

小川:キルケゴールの『死に至る病』じゃないですけど、絶望感が自殺に至るということですね。

大飯:もしそうなら、資本主義は必ず「負け組」を生むわけですから、それをやめるしかないですね。

兼賀:そんなばかな、マルクスじゃあるまいし。今さらそんなことできるわけないじゃないか!

小川:まぁ落ち着いてください。ただ、その可能性を探ってみることは意義があるのではないでしょうか。まずはそのマルクスの『資本論』を振り返ってみましょう。


カール・マルクス(1818-1883)。ドイツの経済学者・思想家。マルクス主義と呼ばれる社会主義思想を確立。『資本論』は1867〜94年刊。
小川:『資本論』はご存じのようにマルクスの主著で、資本主義の矛盾に対して、社会主義に基づく平等な社会を提案したものです。

兼賀:先生が矛盾といわれるのは、先ほどの文脈でいうと、働いても金持ちになるどころか、貧しくなってしまうってことですね?

小川:そういっていいでしょう。

大飯:そこがわからないんですよ。どうしてそうなっちゃうのか。

小川:たとえばマルクスの説明によると、工場では資本家が生産手段を提供し、労働者はそれを使って商品を生み出す代わりに、賃金を受け取ります。このとき同じ分量のものを生産するために必要な労働力は、設備投資などによる生産性の向上によってどんどん減少していく傾向にあります。そうすると労働者の数も減らされますし、同じ量の製品を作る時間が短くなるわけですから、賃金が減らされてしまうのです。

新実:ところが資本家は、余分に生産された分については自分の利益にしてしまうって「日経マネー」2013年4月号の連載に書かれてましたね。

小川:ええ。その余分に生産された分の利益を「剰余価値」といいます。その意味で労働者は余分にただ働きさせられていることになるのです。いわば労働力を「搾取」されているのです。

大飯:それじゃやる気もなくなりますね。人間は機械じゃないですから。

労働からの疎外

小川:労働からの疎外ですね。疎外というのは遠ざけられるという意味ですが、まさに労働者は、単に資本家の命令のもとで分業させられるだけですから、労働から遠ざけられてしまうわけです。

大飯:それは革命を起こしたくもなりますよ。

小川:そうですね。だからマルクスは、そんな疎外状況を克服して新たな社会を築くために、まずは生産手段を労働者みんなの共有にする必要があると主張するのです。そして、生産したものはみんなで分けるという経済システムを導入しなければならないというわけです。

兼賀:それはわかるけど、現に失敗してるじゃないですか。旧ソ連はどうなるんですか。マルクスは社会主義に向かうのが歴史の必然みたいにいってましたけど。

小川:唯物史観ですね。マルクスによると、生産性の向上によって生産力が現行の経済の仕組みにそぐわなくなったとき、その矛盾を原動力として歴史は次の段階へと進展するといいます。原始共産制に始まり、奴隷制、封建制、資本主義を経て、社会主義、共産主義に至るというふうに。

兼賀:現実には冷戦で勝ったのは資本主義ですよ。もともと社会主義には無理があるんです。人間はやはり自由を求めるんですから。

小川:フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』でそう主張して話題になりましたね。資本主義の勝利で歴史は終わるんだと。

新実:ところが終わってないのが問題だってことですね。

小川:そういうことです。だって3万人の自殺者を出しながら、勝利といえるのかどうか。

兼賀:いや、私だって今の状態がいいとはいってませんよ。ただ、代替するシステムがあるのかということをいってるんです。

小川:コモンウェルスという考え方があります。イタリアの政治哲学者アントニオ・ネグリとその弟子マイケル・ハートが提唱している概念です。

新しい〈帝国〉とマルチチュード

新実:確か『〈帝国〉』で話題になった人たちですよね。

大飯:帝国主義の帝国ですか。

小川:いや、そうではないのです。〈帝国〉というのは、グローバル時代の全く新しい権力の概念なのです。支配的な国民国家に加え、IMFや世界銀行、それにNGOや巨大メディアなど、さまざまな権力がネットワーク状に結びついて協同している様子を表現したものです。そしてこれに対抗する形で「マルチチュード」という多数多様な集団が政治的主体として想定されています。

大飯:なんだか壮大ですけど、グローバル社会をうまくとらえているような気もしますね。

小川:そうですね。そしてここからが面白いところなのですが、彼らは著書『コモンウェルス』の中で、さらにその新たな世界秩序の中で創出される領域として、〈共〉(コモン)という提案をしているのです。

兼賀:それと社会主義とどう関係してくるんですか。

小川:そこなんですよ。つまり、今の世の中は、なんでも私的なものか公的なものかという排他的な二者択一になっていて、それが資本主義か社会主義かという単純な二項対立の発想につながっているとするわけです。でも、物ごとは〈共〉なものととらえることだってできるわけです。

大飯:たとえば?

小川:知識や情報といった知的所有権の中でも、とりわけインターネットに絡むものは比較的オープンになっていますよね。あのようなイメージです。

〈共〉的な富を求め始める

大飯:みんなのものだってことですね。

小川:ええ。いわばオープン・アクセスの共有と、それを担保するための民主的かつ集団的な自主管理運営をいうわけです。

新実:なるほど。私的管理でも公的管理でもない民主的かつ集団的な自主管理が、資本主義や社会主義の代替システムになり得るのですね。

兼賀:そんなこといったって、企業も国家も簡単に財を手放したりはしませんよ。知的財産権なんてドル箱ですから。

小川:ネグリは本来マルクス主義者です。ですからマルクスの革命という発想は受け継いでいるのです。

兼賀:革命なんてぶっそうなことできないでしょ?

小川:彼らのいう革命はもう少し民主的なものです。現在、実際に世界規模で生じている民衆の蜂起を思い浮かべてもらえばいいと思います。アラブの春、ウォール街占拠、日本の反原発デモのような。

大飯:その意味では、マルクスの見た夢が形を変えて実現しつつあるのかもしれませんね。

新実:確かに、これで人々が疎外状態を克服できるならね。

小川:そしてみんながおカネじゃなくてコモンウェルス、つまり〈共〉的な富を求め始めたとき、ようやく自殺者も激減するのかもしれません。


小川 仁志(おがわ・ひとし)
徳山工業高等専門学校准教授。

1970年生まれ。京都大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。台湾の民主化運動に啓発され伊藤忠商事を退社、アルバイト生活をしながら司法試験を目指す。その後、名古屋市役所に勤務、哲学を目指すため社会人大学院に通い、博士号を取得。2007年4月から現職、現在に至る。主な著書に『市役所の小川さん、哲学者になる』『人生が変わる哲学の教室』『人生が変わる 愛と性の哲学』など


元フリーターの哲学者 小川仁志の「お金の哲学」熱血ゼミ編

 デフレ、減収、年金危機、貿易赤字、財政赤字…、とパッとしない話題が続く日本。これらを解決するために金融緩和、財政出動、消費税増税、年金給付の繰り上げが実施され始めていますが、いっこうに変わる気配が見られない。はたして有効な対策とは、どのうようなものか。
 それを考えるにはおカネの本質を理解することが欠かせない。おカネを哲学的に考察するのが本コラム。筆者は伊藤忠商事のサラリーマンからフリーターになり、そして市役所勤務を経て哲学者になった異色の経験を持つ小川仁志さん。本コラムは『日経マネー』の熱血教室「お金の哲学」と連動しています。


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