04. 2013年3月15日 02:04:43
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第426回】 2013年3月15日 岡 徳之 この春、憂鬱な“つながり予備軍”が急増の予感? ビジネスマンが悩む新手の「SNS疲れ」解消法 上司、部下、同僚、そして取引先の新しい担当者――。企業で人事異動が行なわれる4月は、ビジネスマンにとって1年のうちで最も人間関係の変化が大きい季節だ。今やビジネスの絆を深める重要なツールの1つとして認識されているSNSだが、あなたにとっての新たな「つながり予備軍」はさらに増えていくことになる。そうしたなか、仕事を円滑に進めるために、相手の求めに応じて否応なくSNSでつながらなくてはならない人が増え、疲れてしまうケースが増えそうだ。一方、SNSの「暗黙の作法」がわからずに、自分が気づかぬうちに相手を疲れさせてしまうこともあり得る。そうした事態が続くと、人間関係がギクシャクし、ゆくゆくは仕事そのものにも悪影響を与えかねない。今回は、ビジネスマンが気をつけたい「SNS疲れ」の現状とトラブル対策について、リサーチしてみたい。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)最初は便利だと思ったけど 何だか最近疲れるんです――。 「最初は便利だと思ったけど……何だか、最近疲れるんですよね。自分がTwitterやFacebookに書き込んだコメントが物議を醸していないかどうか、心配で……いつもチェックしていないと落ち着かない。正直、しばらくSNSをやめたいんですが、仕事でつながっている『友達』も多いので、やめるとカドが立ちそうだし、世間から取り残されそうで……」 こう語るのは、大手商社で働く30代の男性。こうした「SNS疲れ」の症状を訴えるユーザーが急増していることは、すでに多くのメディアで報じられている。「自分もその1人」と納得する読者も多いだろう。 SNSが生活に欠かせない魅力的なインフラとなった一方、「SNS疲れ」という言葉が登場して久しい。最近では「LINE」のようなメッセンジャー機能を主とする「クローズドSNS」も存在感を強め、SNS利用の状況は刻々と変化している。それに伴い、新たな「SNS疲れ」のトレンドが出始めているようだ。 もうすぐ4月。ビジネスマンのなかには、人事異動で新しい部署に異動し、上司、同僚、部下が変わる人、新入社員が自分の部署に入って来る人、そして取引先の担当が変わる人もいるだろう。ビジネスの現場において、1年のうちで最も人間関係の変化が大きい季節と言える。今やビジネスの絆を深める重要なツールの1つとしても認識されているSNSだが、あなたにとっての「つながり予備軍」はさらに増えていくことになる。 そうしたなか、仕事を円滑に進めるために、相手の求めに応じて否応なくSNSでつながらなくてはならない人が増え、疲れてしまうケースが増えそうだ。一方、SNSに関する「暗黙の作法」がわからずに、気づかぬうちに他人を疲れさせてしまうこともあり得る。そうした事態が続くと、人間関係がギクシャクし、ゆくゆくは仕事そのものにも悪影響を与えかねない。 そこでこの機に、ビジネスマンが気をつけたい「SNS疲れ」の現状とトラブル対策について、改めてリサーチしてみたい。 「オールウェイズ・オン」 高頻度でSNSを利用する人も 現状を明らかにすべく、まずはSNS利用のトレンドを把握しよう。インターネット調査のネオマーケティングが、SNSを利用する全国の20歳〜49歳の1000人の男女を対象に、昨年実施した調査の結果を見よう。1日の間にSNSを利用する平均時間を聞いたところ、1位は「30分以内」(27.7%)、次いで「10分以内」が23.7%、「1時間以内」18.6%という結果になった。 仮に、一度SNSを起動してからある程度の更新情報を閲覧し終わる時間を3分と仮定すると、1日に3回以上、多い人は10回以上の頻度でSNSを起動していることになる。 多くの利用者が定期的に、人によっては「オールウェイズ・オン」とも言えるほどの頻度でSNSを利用していることがわかるが、それにはスマートフォンの普及も影響している。どんな状況下でも、携帯の電波さえ届けばパソコン並みにSNSの機能を快適に利用できるようになったからだ。 これほどまでに我々の生活に浸透したSNSだが、ユーザーはSNSにどんなメリットを感じて使用しているのか。 本調査によると、メリットを感じる1位は「暇つぶしができるようになった」(50.2%)。確かに、電車や待ち合わせ場所で周囲を見ると、おそらくはSNSを表示させているであろうスマートフォンの画面を、上から下にスワイプする人の姿がよく目につく。筆者自身の生活態度を振り返っても、そうだ。 2位は「昔の友人などと再会することできた」(30.4%)、3位は「友人が増えた/友達の輪が広がった」(25.3%)と続く。「古い友人が今やっている仕事の取引先にいたり、意外と近くに住んでいたりすることを知り、久しぶりに会話の種ができて再開することになった」「飲み会で知り合った友人の友人とSNSでつながり、これまで参加したことのないコミュニティが開催するイベントに呼ばれた」など、オンラインのつながりがきっかけで、オフラインの交友関係が広がったという人も少なくないだろう。なかには、新しい営業先や転職先企業の発掘など、仕事に発展した人もいるはずだ。 このように、我々の生活を充実させているはずのSNS。それに「疲れ」を感じてしまうのは、いったい何故なのか。調査結果から、ユーザーがSNSの何に疲れているのかを見てみたい。 実は、SNSの利用に不満を感じたことがある人は、想像以上の割合に上る。前述の調査では、男性は57.2%の利用者が、女性はそれを上回る70.8%の利用者が不満に思ったことがあるという。 その理由を聞いたところ、最も回答が多かったのが「面識がない人からのリクエストがあること」。前出の「よかったこと」では、オフラインの「友人が増えた/友達の輪が広がった」が3位に挙がった一方で、オンラインだけの関係しか持たない利用者とつながってしまうことには、不満が大きいようだ。 またこの他にも、「自らの書き込みの返事があったか気になってしまうこと」や、「SNSに拘束されるようになったこと」などが挙がった。これは、冒頭で紹介した男性の悩みにも通じる理由である。 前述のメリットに関する質問では「暇つぶしができるようになった」が1位に挙がった一方で、多くの利用者が手段(SNS)に翻弄され、達成された目的(暇つぶし)とは異なる新たな課題を抱え込むという、矛盾を感じていることがわかった。 SNSの人気は衰えないものの 半数のユーザーが「面倒」と感じる そうした矛盾は、SNSへの愛着を失わせるようだ。SNSを利用していて面倒に感じることがあるかを聞いたところ、41.9%の利用者が「ややそう思う」という結果に。「とてもそう思う」の9.7%を合わせて51.6%と、約半数の利用者が「SNSを面倒に感じることがある」という。 それなら、SNSなんてやめてしまえばいいじゃないか――。実際は、そう簡単に割り切れるものでもないようだ。 今後についてSNSの利用頻度を聞いたところ、「現状の頻度を維持して続けたい」が66.5%で最多、続いて「現状の利用頻度を減らして利用し続けたい」(24.1%)という結果に。SNSに不満を持つ人が多い一方で、享受するメリットがそれを上回っているからなのか、それとも止むを得ずなのかはわからないが、いずれにせよSNSの利用を続けたいと思っている利用者は少なくないようだ。 あなた自身も「誰かのSNS疲れ」 の原因になっていないか? 一方で、視点を変えて考えてみる必要もある。自分自身も、「誰かのSNS疲れ」の原因になり得るということだ。 前述の通り、SNSに対する不満の最大の原因は、「面識がない人からのリクエストがあること」だ。「自分は友だちだ」、もしくは「友だちになりたい」と思っていたとしても、相手はそう思っていないこともある。リクエストに限った話ではないが、相手が望んでいないことを「無意識に」やってしまうことは多い(意識的にやっているとすれば、それはそれで問題だ)。 職業柄、インターネットに身を晒すことで本人も「SNS疲れ」を感じながら、同じ境遇の知人にも取材を重ねてきたフリーのITライター、池田園子氏はこう警鐘を鳴らす。 「SNSを利用するとき、私たちは自分をたった1つの個人と認識しながらも、つながっている他の利用者からすれば、異なる複数の人格をまとっていることを、前提として認識すべきです」 よい例として、池田氏は「SNS疲れ」を感じている知人(20代女性)のケースを紹介してくれた。 その女性は、年に数回通う地元のマッサージ店の先生からFacebookで友達申請が来て、それを承認したところ、自分が行うほぼ全ての投稿に対して「いいね!」が付いたそうだ。 そのマッサージ店の先生は40歳くらいの独身男性。その女性に対して、特別な好意を抱いているわけではないらしい。しかし彼女は、「せっかく通い慣れていたマッサージ店なのに、行きづらくなった」という。 池田氏が、その先生のFacebookアカウントページでつながっている友達の数を確認したところ、その数は10人。おそらく先生のニュースフィードは更新性が低く、起ち上げるとほぼ先ほどの女性の投稿で埋め尽くされてしまうのだろう。 先生からすれば数少ない友達の近況だが、女性からすればたくさんいる友達の中で「やたらと『いいね!』してくる人」という印象になってしまい、どことなく気味悪さを感じてしまう。 おそらくこの先生に悪気はないはずだが、かと言って真意も測りかねる。だからこそ、その女性は本人に指摘するわけにも、ブロックするわけにも行かず、ストレスを抱え続けているのだ。 この事例を見てもわかる通り、意外なことに、相手を疲れさせる原因は、我々がオフラインの場では当たり前のように自覚していることにもかかわらず、オンラインの場になると途端に無自覚になってしまうことばかりだ。 また、自分が無自覚に疲れさせている相手は、ほとんどの場合、自分には一言も告げずにただブロック(=つながりを拒否)し、疲れさせた本人は自分に問題があることに気づかない場合が多い。これは、オフラインの関係までもが傷ついたまま終わるという、やるせないパターンである。 「SNS疲れ」の原因と対策を 3大ツールで徹底検証してみよう プライベートだけならまだしも、こうした感情の行き違いでビジネス上の人間関係を悪化させてしまうと、ダメージは大きい。SNSで疲れる側にも、疲れさせる側にもならないためには、どうしたらいいいか。前出の池田氏に詳しく話を聞いた。 SNSと一口に言っても多岐に渡る。ここでは代表的な3つ、Facebook、LINE、Twitterの3つに的を絞り、各サービスについてビジネスで「SNS疲れ」の原因となるトラブルと、それでもSNSと上手く付き合っていくための対処法を教えてもらおう。 第一に、形成された規模の大きさゆえに、「SNS疲れ」という言葉が登場するきっかけにもなった、Facebookについて見てみる。 まずは、自分の行動や投稿が仇となるトラブル事例と解決策から。気を付けたいのは「不用意な投稿」である。 仕事がどうしても片付かないまま、予定されていた飲み会の開始時刻になり、適当な言い訳をして自分は会場へ。お酒の酔いも回ってきた終盤に参加者で記念撮影。その写真に幹事がタグ付けをして投稿し、上司や顧客に発見される――。こういうパターンはよくありがちだ。会社員として、まさに面目丸つぶれである。こうした事態を防ぐためには、どうしたらいいのか。 「他の利用者による写真のタグ付けや、つながりを制限するなど、自分のアカウントのプライバシー設定を見直すことは、Facebookの技術に関する知識が必要であり、また手間もかかるので避けてしまいがち。でも、実は簡単にできる。面倒臭がらずに、定期的に確認した方がよいでしょう」(池田氏)。 「今日はタグ付け禁止で!」は必須 仕事関係者に飲み会がバレない心得 写真のタグ付けを制限するための方法を教えよう。Facebookのトップページ右上にある『鍵』マークから『その他の設定』にアクセスする。左に並んでいるメニューから『タイムラインとタグ付け』を選択し、他のユーザーによって追加されたタグやタグの提案の管理を『オン』にすれば完了だ。 この方法以外にも、「今日はタグ付け禁止で!」と撮影者に口頭で伝えておいた方がよい。また、撮影する側も「タグ付けして大丈夫ですか?」と一声かけた方がよいだろう。 また、酔っぱらうと気持ちが大きくなってしまいがちな人は、つい熱くなって、自分の仕事論や自慢話ともとれるような「語り」の投稿に気をつけたい。「語り」が普段の行動に伴っていない場合は、その後、周囲の同僚から冷ややかな目で見られることになる。 「Facebookは基本的に近しい友達とつながっているため、我慢できずにどうしてもつぶやきたくなってしまうときはある。そういうときは、せめて投稿の公開範囲を設定するべき」と、池田氏は指摘する。 やり方は、『近況アップデート』を入力すると、『投稿』ボタンの左に『公開』ボタンが表示される。『▼』でリストを表示させると、「友達」や「自分のみ」などから選ぶことができる。 特に活用したいのは、『カスタム』だ。『特定の人またはリスト』を選択すれば、名前を入力した人のみに対して投稿が表示される。また逆に、『シェアしない相手』に名前を入力すれば、その人は投稿を閲覧できないようになる。 さらに、自分に関する投稿が原因で発生するトラブルを防ぐ手立ては、Facebookアカウントの設定だけではない。池田氏は、「そもそも投稿する内容に関するマナーにも気をつけるべきだ」という。 最近、「シェアさせていただきます!」というコメントを使うと嫌われると話題になった。なぜか。本人にその気がなくても、周囲には「自分よりも力関係が上の人(上司、先輩など)に取り入られようとしている」と受け取られたり、「わざわざ許可を得る行為が面倒なのではないか」と不快に感じられてしまうこともあるからだ。コメントする内容についても、Facebookならではの「空気の読み方がある」ということを覚えておきたい。 友達申請もコメントも防げないなら 「いかに疲れないで済むか」の工夫を では逆に、自分を疲れさせる投稿の事例と、その相手に対処する方策を考えてみよう。上司、先輩、同僚からの『友達申請』は断わりづらいものだし、コメントの投稿を止めさせることもできない。ならば、「いかに疲れない工夫をするか」が大切になる。 池田氏は、相手が行った投稿の『ニュースフィードへの表示頻度』の設定し直しを推す。友達のFacebookアカウントページにアクセスすると、カバー画像のすぐ下に『友達』ボタンがある。ここをクリックすると、『ニュースフィードに表示』にチェックが付いているので、一度クリックしてそれを外す。すると、その友達の投稿は自分のニュースフィードに表示されなくなる。 また、特に同氏が薦めるのが、『ニュースフィードに表示』の下にある『設定』で『重要なアップデートのみ』に切り換える方法だ。全くニュースフィードに表示されなくするのではなく、たくさんの利用者に評価されている投稿内容だけを表示させるようにすれば、自分にとってある程度有益な投稿だけがニュースフィードに集まることになる。これなら「疲れ」も半減するだろう。 「Facebookの『いいね!』が脅威に変わることもある」(池田氏)ことを自覚し、公開範囲設定などのハード面、Facebookならではの空気の読み方など、ソフト面の両面から対策を心がけたい。 第二に、Facebookに次いで人気急上昇中のメッセンジャーアプリ「LINE」のトラブルと対策についても見ておこう。LINEはメッセンジャーとしての役割が主でありながら、限られた親しい友達とつながることができる「クローズドSNS」の役割も果たしている。池田氏は、「LINE疲れ」の原因となり得るトラブルを3つ挙げてくれた。 1つ目は「電話帳」について。LINEは、電話のアドレス帳に登録している人がLINEを使っていると、自動的に「ともだち」一覧に追加される仕組みになっている。 しかし連絡先を交換していても、上司、先輩、後輩など、LINEではプライベートでつながりたくない人がいる場合は、『設定』の『プライバシー管理』で『ともだち自動追加』をオフにすると、そうした人たちが自動的に「ともだち」一覧に追加されることはなくなる。 また逆に、LINEでつながりたくない人の「ともだち」一覧に追加されたくない場合は、同じく『設定』の『プライバシー管理』で『ともだちへの追加を許可』をオフにしておこう。 会社の携帯で「LINE」はタブー? マメに返信しないと同僚から不満も また同氏は「会社から支給された携帯でLINEは使わない方がよい」という。言わずもがな、会社の携帯には顧客や同僚ばかりが登録されており、SNSでつながりたい友達ばかりとは限らないからだ。 2つ目は「既読」について。LINEではメッセージを送った相手がそれを読むと、『既読』という文字が表示される。 この「既読」でよく発生するのが、「読んでくれているはずなのに、返信してくれない」と相手を急かしたくなってしまうことだ。特にメッセージのやり取りをしている相手が近しい同僚などの場合、「トイレでスマホいじっているんなら、そのときに返せよ」(池田氏の友人談)とも思われかねない。こうしたことが続くと、仕事上の関係が疎遠になってしまうこともあるだろう。 そもそも、クローズドなSNSだからこそ、利用者が積極的にコミュニケーションを図らなければ、コミュニティとして成立しずらくなる。自分自身が疲れてしまわない程度に、小マメに反応するのがよいだろう。 3つ目は「スタンプ」について。スタンプはLINEならではの新しいコミュニケーションツールであり、文字を打つことなく感情を伝えられる便利な機能だが、Facebook同様、LINEならではの空気の読み方が求められると池田氏は言う。 たとえば、遅刻や仕事上の失敗などが原因で「謝罪」をしなければいけないシーンにおいて、ギャグスタンプで笑いに変えて許しを請うというのは、とても高度かつリスキーな行為である。笑いに変えられなかったときには、「きちんと自分で考えた文章で謝らないなんて、本当は反省していないんだ」「そもそもLINEで謝罪を済ませようとするなんて、おかしい」と、謝罪すべき事象のすり替えさえも引き起こしてしまう。普通の感覚では考えにくい行為だが、ついついやってしまう人が多いのだという。 たとえ相手が同僚であっても、近しい人とつながっているからこその礼儀や、そもそもLINEで伝えるべきことなのかも含めて、上手に使いこなしたい。 そして第三に、Twitterの傾向と対策についてはどうか。TwitterはFacebookのように実名制でなく、LINEのように電話帳でつながることもないので、3つのSNSの中では最も匿名性が高く、自然と投稿の自由度も高くなりがちだ。 池田氏は「Twitter疲れ」の原因となり得るトラブルについても、事例を2つ挙げてくれた。 1つは、「過去の投稿」について。Twitterは現在、過去のツイートを全てダウンロードできるように仕様の変更を進めている。 現在は、英語、ドイツ語、ペルシア語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、ヘブライ語、ヒンディー語、ハンガリー語、マレー語、ノルウェー語、ポーランド語、そしてスペイン語の13ヵ国語であるが、いずれ日本語も含まれる可能性がある。 仕様変更で、過去につぶやいた 会社や上司の悪口がバレバレに? そうなれば、最近Twitterでフォローされた人でも、それより前の投稿をどこまでも遡って閲覧することができるようになるため、過去につぶやいた会社や上司に対する愚痴、ネガティブな投稿などが筒抜けになる。また、『Togetter』などの投稿をまとめる周辺サービスも盛り上がっているため、いつそうしたつぶやきを人に発見されるか、油断ならない。 Twitterには自分の投稿を限られた人にだけ開示する『鍵』をかける機能や、アカウント名やアイコン画像を自由に設定できるポリシーがあるので、不安な人は活用してみるといいかもしれない。 もう1つは、その匿名性ゆえに投稿の自由度が高くなるからこそ、FacebookやLINEに比べてネガティブな投稿が行われがちであること。池田氏いわく「特にそれは経験や知識が豊富な“オトナ世代”に見られる傾向で、フォロワーからすると悪口やディスりと捉えられかねないような投稿をしがち」という。 オフラインの場では議論に参加しないような人でも、Twitterになると気持ちが大きくなりがちのため、よく投稿するという人は他人を疲れさせないように気をつけたい。 SNSで疲れないための秘訣 「役割」と「友達の基準」を分ける 今回の取材を踏まえてたどり着いた「SNS疲れ」を引き起こさない秘訣は、「それぞれのサービスに求める役割」と「つながる友達の基準」を、自分の中で明確にすることだ。 たとえば、Facebookは「仕事につながる関係を増やす場」(役割)だから、「誰とでもつながっておく」(友達の基準)。LINEは「親友とだけで集う内輪の場」(役割)だから、「2人だけでも気兼ねなく遊べる人だけとつながっておく」(友達の基準)。そしてTwitterは「愚痴をこぼす場」(役割)だから、「鍵をかけてできるだけ誰ともつながらない」(友達の基準)という風にである。 そのように自分の中で線引きをしておけば、万が一基準に当てはまらない上司、同僚、部下から友達のリクエストが届いても、迷うことなく無視したり、投稿の公開範囲や相手の投稿の閲覧頻度を設定するなどの対処が打てる。また、その場にそぐわない投稿を思わずしそうになったときにも、別のサービスで投稿するなど、空気を読んで他の利用者を疲れさせずに済む工夫もできる。 そうやってサービスを使い分けているうちに、いずれかのサービスと疎遠になってしまうのは、仕方のないことでもある。忙しいビジネスマンにとって、1日に使える時間は限られているからだ。 もしかしたら、そうやって使用頻度の低いサービスから自然と離れていくことが、健康的な状況なのかもしれない。前述のように、最も良くないのは、手段(SNS)やそこにいる“友達”に翻弄され、目的(暇つぶし)とは異なる新たな課題を抱え込んでしまうことだ。 むろん、ここで紹介した「SNS疲れ」のパターンは、ビジネスだけでなくプライベートでも普通に起こり得ることだ。とはいえ、仕事上のつながりのなかで起きる「SNS疲れ」は、自分が疲弊する立場になっても、相手が疲弊する立場になっても、お互いに本音で問題提起をしにくいため、よりストレスフルと言える。 「つながり予備軍」が増えそうなこの春、あなたの対策は大丈夫だろうか。
英国に必要な成長宣言:もう少し速くできないか? 2013年03月15日(Fri) The Economist (英エコノミスト誌 2013年3月9日号)
英国経済は行き詰まっている。構造改革、金融緩和、そしてインフラ投資の増加が必要だ。 本誌(英エコノミスト)は過去170年間にわたって英国経済を追い続け、いくつかの壊滅的なショックも見届けてきた。1857年の世界不況は銀行を破綻に追い込み、輸出需要を冷え込ませた。1930年代の世界恐慌は英国に大打撃を与えた。2度の世界大戦は住宅やインフラを破壊した。 それでも、それぞれの出来事の5年後には必ず経済が成長していた。今回はそうではない。 英国は辛うじて前に進んでいるかどうかという状況だ。イングランド銀行は、2007年に1.5兆ポンド(3兆ドル)を記録した経済生産は、実質ベースで、2015年までその水準に達しないと考えている。逆風が吹けば、英国はいとも簡単に10年の歳月を失いかねない。 一向に増えない賃金としつこいインフレは購買力を蝕んでいる。ポンドは下落しているが、貿易収支は悲惨だ。悲観論が強まりつつあり、英国人の12%が来年には家計が楽になると予測する一方、52%は悪化すると考えている。 経済にガソリンを 英国のジョージ・オズボーン財務相は、成長促進にもっと力を入れる必要がある〔AFPBB News〕
成長できない状況は企業や家計の痛手となるだけではない。財政を均衡させることも著しく困難になる。 英国財務相のジョージ・オズボーン氏は、称賛すべき緊縮計画の途上にあり、2017〜18年度までに現在は国内総生産(GDP)比3.6%の構造的財政赤字を解消し、対GDP債務比率を低下に転じさせることを目指している。 だが、鈍い成長のせいで、給付金の支払額が高止まりする一方、税収が落ち込み、その目標に手が届かなくなっている。 2008年に6000億ポンドだった債務は現在、1.1兆ポンドに膨れ上がっている。投資家がオズボーン氏を信頼しているため政府の借り入れコストは今も低いままだが、中期的な成長への懸念から英国の格付けは引き下げられた。 オズボーン氏は一体どこに成長を見いだせるのだろうか? 銀行融資は今も大きな問題だ。イングランド銀行が金利を過去最低水準に引き下げたにもかかわらず、民間銀行は企業に対し、政策金利よりはるかに高い金利を課している。これで2009年以来、企業の借り入れが減り続けている理由の一端が分かる。 金融政策が解決策の1つだ。本誌はこれまで、オズボーン氏はイングランド銀行が名目GDPが今より10%増えるまでは金利を引き上げないと明確に表明できるよう、イングランド銀行の権限の解釈を改めるべきだと論じてきた。こうすれば、急激な金利上昇への恐怖を緩和できるはずだ。 イングランド銀行と協力してすべきこと 成長促進に向け、財務省はイングランド銀行(写真)と協力する必要がある〔AFPBB News〕
また、オズボーン氏はイングランド銀行と協力して、同行の「ファンディング・フォー・レンディング(FFL、融資用資金供給)」枠を拡大する必要もある。 FFLを使うと、商業銀行は資金調達コストを引き下げることができ、その分を融資先に還元できる。 この枠組みはうまく練られているが、規模が小さく、銀行が抱える既存の国内融資残高の5%と今後新たに提供される融資をカバーするに過ぎない。今のところ、FFLのおかげで住宅ローン金利は多少低下したが、英国企業への恩恵はほとんどない。 さらに財務省は、資本が流れるようにする手立てを講じるべきだ。配当ばかりを気にする英国の金融市場は、同国の将来的な成長に必要な研究集約型の中小企業の役に立っていない。政府はそうした企業に重点を置く官民投資銀行を設立することで、イノベーションを後押しできるはずだ。 破産法の改正も効果的だろう。生産高が激減したにもかかわらず、倒産した企業は少ない。銀行は損失を被るのを嫌がるし、経営者は倒産の汚名を嫌い、低利融資のおかげで倒産を回避することができる。 だが、完全に死なないゾンビ企業は、より優れたアイデアを持つ企業から資本を遠ざけてしまう。中小企業に対する買収の規則を緩和すれば、勝者が敗者を吸収できるようになるだろう。また、事業に失敗するコストを小さくしなければならない。起業家の再出発を可能にするという点では、英国は依然、米国に立ち遅れている。 成長を促すインフラ整備 インフラ投資は成長促進効果が高い(写真はロンドン中心部のウォータールー橋で渋滞するバス)〔AFPBB News〕
もう1つの優先事項がインフラだ。鉄道と道路、橋、そしてブロードバンドは、それ以外の歳出に比べ、公的資金1ポンド当たりの成長促進効果が高い。 それなのに、歳出が最も削減されたのがこの分野だ。公的部門の純投資額は2009〜10年度から2011〜12年度にかけて、485億ポンドから280億ポンドに減少した。 財務省は予算配分を待つ「今すぐ着工できる」大型プロジェクトがいくつかあると主張する。確かにその通りだが、プロジェクトは大規模である必要はない。道路や鉄道、信号機の補修工事などの小規模で地味な仕事はすぐに着手できる。投資額は楽に560億ポンドに倍増させられるはずだ。 成長を促すために税制を変更してもいい。企業が開発用地をそのまま眠らせている理由の1つは、オフィスや倉庫が建設されるまで税金を払わなくてもいいからだ。地価に対して課税した方がずっと賢明だ。そうすれば、土地を抱え込んでおくことが高くつくようになり、所有者はその土地を活用できる人への売却を余儀なくされるだろう。 いったん利用されるようになれば、地価と税金が上昇し、好循環を生むことになる。税収がより良いインフラに投じられ、土地の価値をさらに高めるからだ。 最後に、オズボーン氏は英国が能力のある人材を必要としていることを明確に示すべきだ。移民削減を目指す政府のポピュリスト的な取り組みは若者と高学歴者の入国を阻むものであり、経済的な大惨事だ。ブラジル人のビザを巡る最近の茶番は特に愚かだった。 過去1年間の移民の減少の大半は、学生数の減少がもたらしたものだ。これは撤回すべき経済的自傷行為だ。 潤滑油をどこで見つけるか こうした改革の多く――名目GDPの目標、破産法、移民政策など――はお金がかからない。一方で、お金のかかる対策もある。追加的な280億ポンドのインフラ整備がその代表例だ。 オズボーン氏は生産性の低い政府事業から資源を移すことにより、3月20日発表の新年度予算案の中で必要な資金の大半を捻出できる。何しろ、緊縮論が叫ばれているにもかかわらず、2011〜12年度の政府支出は2001〜02年度実績より3000億ポンドも多かったのだ。 この間に598億ポンドから1214億ポンドに増加した医療費は特別に保護されている。それは間違いだ。これほど急激なコスト増加を許す民間企業の経営者がどこにいるだろうか? また、年金生活者向けの燃料費補助など、現在は一律で支給されている福祉給付金を貧困層向けに絞ることで支出を削ることができるはずだ。 本誌は今も、主に歳出削減によって赤字を減らすというオズボーン氏の計画の趣旨は支持している。政府は肥大化してしまった。そして本誌は、英国の経済問題はすべて財政引き締めのせいだとする、労働党が唱える考え方を否定する。ユーロ危機と傷んだ金融システムが主たる原因だ。 しかし、財務相は成長を促すうえで、今よりはるかに大胆になる必要がある。オズボーン氏は贅肉のついた公的部門に切り込むことで、本誌が提唱するインフラ整備に必要な280億ポンドの少なくとも半分、あわよくばそれ以上を簡単に捻出できるはずだ。 成長のためなら借り入れを増やせ では、倹約家のオズボーン氏は、残りの資金を借りるべきなのだろうか? もしそれが長期的な成長を促すインフラに投資されるのなら、本誌の答えはイエスだ。140億ポンド借り入れても、英国の債務額はGDP比でわずか1%増えるだけだ。 批判的な向きは酷評するだろうが、債券市場は成長のためにオズボーン氏が多少借り入れを増やすことを許してくれるだろう。結局のところ、成長がなければ英国は完全に行き詰まるのだ。
早期の財政均衡を図るドイツの予算に賛否両論 2013年03月15日(Fri) Financial Times (2013年3月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 他のユーロ圏諸国に慎重な財政の手本を示す優れた導き手なのか、それとも回復を促すことを断固拒む身勝手なただ乗り行為なのか? 来年の純借入額を40年ぶりの低水準まで削減して財政を均衡させるというドイツの決定は、他のユーロ圏諸国とは好対照だ。ユーロ圏諸国の大半は――危機に見舞われたスペインから徐々に衰退するフランス、さらにはオランダに至るまで――、赤字削減目標を達成できないか、達成するのに四苦八苦するという状態にある。 「景気刺激は超低金利で十分、債務ブレーキは絶対必要」 ドイツが「債務ブレーキ」と呼ぶものをこれほど急激に踏むという選択は、ドイツ自身にとって、あるいは他国にとって経済的に意味があるのかどうかという問題が意見を二分している。 ドイツの失業率はスペインの5分の1の低さで、欧州中央銀行(ECB)の過去最低の金利のおかげで企業は簡単に資金を調達できる。そのため表面的には、政府支出を減らして2014年に構造的な財政赤字をゼロにしても、国内経済に害を与えることはないし、自らが他国に説教していることを実行するだけだ。 「これは絶対に必要だ」。コメルツ銀行のチーフエコノミスト、イエルク・クレーマー氏はこう言う。「我々はソブリン債務危機の真っ只中にいる。他国に債務ブレーキを踏むよう忠告してきたのはドイツだ。ドイツが自身の債務ブレーキを撤廃するようなことになれば、壊滅的なシグナルを送ることになる」 だが、ドイツ経済は実際、2012年第4四半期に縮小しており、今年は良くてもわずかな成長率しか達成しないだろう。成長率を高めるためには、減税その他の財政刺激策――ひいては赤字の拡大――は価値あるトレードオフになるのではないか? 「ドイツに決して必要ないものは財政出動だ」とクレーマー氏は言う。「ECBの超低金利を考えると、ドイツには非常に大きな刺激策が存在し、そのうえに財政出動を加えるなんて馬鹿げている」 「ユーロ圏を無視し、財政均衡に誇りを持つのは全く見当違い」 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のポール・デ・グラウウェ教授は、意見を異にし、低金利環境では追加的な利下げはもはや大きな効果を持たないため、刺激を与えられるのは財政政策だけだと主張する。 「ユーロ圏が景気後退に陥っている時に、財政を均衡させることに誇りを持つのは完全に見当違いだ」とデ・グラウウェ教授。「ユーロ圏が全体として刺激を加えることについて誰も責任を感じておらず、全員が緊縮策によってデフレ圧力を加えようとしている」と言う。 ユーロ圏に渋々カネを出す主計官というイメージによく似た自己像にもかかわらず、ドイツの輸出主導型経済は単一通貨の加盟国であることから恩恵を受けてきた、とエコノミストたちは主張している。ユーロの為替レートは、ドイツマルクが維持された場合に見込まれた水準より低かったからだ。 また、ドイツの銀行はスペインのような国々で、後に危機を招くことになった信用バブルを煽るうえで重要な役割を果たした。 「この危機の責任は共通だ」とデ・グラウウェ教授は言う。「確かに南欧諸国は無謀だったが、無謀な債務者が1人いれば必ず無謀な債権者が1人いるはずで、そうした無謀な債権者たちは欧州の北部にいる。だが彼らは、自分たちは立派で、今のやり方から逸脱してはならないという神話を喧伝してきた」 財政を均衡させる代わりに、ドイツ政府が安定した対国内総生産(GDP)債務比率を維持できる2〜3%の財政赤字を計上すれば、ドイツとユーロ圏はもっと良い状態になる、とデ・グラウウェ教授は主張する。 「景気後退期に債務を減らそうとするのは好ましいことではない。誰もが債務削減を図っているからだ。我々が景気後退に陥るのはこのためだ。ドイツには(赤字を出す)余裕がある。世界中の人が呆れるほどの低金利でドイツ国債を買ってもいいと思っている。つまり、これは間違いなく市場がドイツに『もっと国債を発行してくれ!』と言っている兆候だ」 ドイツ国内では賛成派に分か しかし、どんな債務にも道徳的な汚点が付くドイツでは、こうした見方が勢いを得る可能性は低い。 クレーマー氏は、高い雇用水準に対する重点的取り組みを維持することの方が重要だと述べ、どのような財政出動も、大抵フランスのような隣国に後れを取る内需を促すことには成功しないだろうと主張する。「人は皆、将来増税で赤字を返済しなければならなくなることを知っているため、赤字の財政支出によって持続的な民間消費を生み出すことはできない」 By Michael Steen アジアの高成長に乗れない欧米大手銀行 2013年03月15日(Fri) Financial Times (2013年3月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) アジアは業界の救世主となるはずだったが、過去2年間は、この地域に進出している法人向け金融機関と投資銀行にとって厳しい時期だった。 株式市場での大型上場が相次いだ2009年から2010年にかけての中国主導の好況期に代わり、今では世界的な銀行が手がける事業の中核分野の多くで活動が減速し、各社はどの分野で収益を追求すべきか、いかにして経営と事業を再編すべきか真剣に考えざるを得なくなっている。 大手銀行で目立つアジア地域の減収や減益 年次報告書でアジア地域の業績を公表している欧米銀行では2010年以降、HSBCとスタンダードチャータード銀行――および2012年はゴールドマン・サックス――を除き、売上高や利益、あるいは収益双方が減少してきた。 新株発行や売り出し、借り入れ資本の調達、M&A(合併・買収)、株式の売買仲介という伝統的な投資銀行業務では、比較的健全なアジアの成長率にもかかわらず、軒並み売上高が落ち込んだ。 加えて、アジアのM&Aの手数料はかねて他地域より少ないうえに、今なおアジアで事業を築こうとしている世界各地の銀行との競争がかなり熾烈だ。 「アジア地域の銀行、HSBC、スタンダードチャータードと、世界的な巨大投資銀行との最大の違いは、ビジネスを獲得している分野がかなり異なることだ」。CLSAでアジア地域の銀行調査部門を率いるデレク・オビントン氏はこう話す。 「シティグループも存在感がある資金決済・取引サービスなどの伝統的な法人向け金融業務は相対的にかなり堅調だった」 赤字転落したクレディ・スイスは経営刷新 この2年間の業績が最も悪かったのはクレディ・スイスで、アジア地域での利益が2010年の3億6800万スイスフランから徐々に減り、2012年には1億5100万スイスフランの赤字に陥った。同社は業績悪化を受けてアジア部門の経営陣を交代させ、アジア太平洋地域の最高経営責任者(CEO)だったオサマ・アバシ氏を解任した。 アジア在勤のシニアバンカーらによると、アバシ氏の解任は、複雑な経営構造を全面刷新し、現場のバンカーに迅速に事業を獲得する自由を与えることを目指した取り組みの一環だという。 一方、ドイツ銀行などはターゲットを絞り込んだアプローチを取ろうとしており、法人金融・投資銀行業務の顧客数と、顧客に提供する商品数を一段と減らしている。ドイツ銀行はアジアについて限られた業績内容しか開示していないが、直近のデータである2010年から2011年にかけては、法人金融・投資銀行業務の売上高が減少した。 ドイツ銀行でアジアのグローバル市場部門を率いるディクシット・ヨシ氏は、業界が失った株式売買のビジネスの半分程度はもう戻ってこない可能性があると言う。同氏によると、市場ではこの2年ほどで資金の流れが20〜40%減少している。 「その半分程度は、パッシブ(受動的)な投資スタイルへの転換や電子取引へのシフトによって恒久的に失われたものだ。これに対する当社の対応は、我々が最大の価値を付加できる最大顧客と、我々が技術的な優位を持つ最も流動性の高い金融商品に焦点を絞り込むことだった」 やはり近年投資を行ったものの、現在アジアで事業を縮小している銀行がバークレイズだ。同社CEOのアントニー・ジェンキンス氏は、アジアの顧客の獲得を目指すのではなく、むしろアジアのサービスを欧州や米国、アフリカの顧客に提供したいと考えている。 ゴールドマンはコスト削減で業績急回復 一方、ゴールドマンの業績は昨年、劇的に回復した。同社は早くに景気減速に気付いたおかげだとしている。日本を除くアジア地域担当の会長、デビッド・ライアン氏は、ゴールドマンは全体でアジアにおける事業経費を2011年の41億ドルから2012年の39億ドルに減らす一方、報酬を増やしたと言う。 「こうして見ると、我々のコスト削減の大半は2011年に行ったコスト管理策から来るもので、昨年になって効果が出たことが分かるだろう。もちろん今後も事業基盤からコストを取り除く方法を見つけていく」とライアン氏。 グリニッチ・アソシエーツのコンサルタント、アビ・シュロフ氏(シンガポール在勤)によると、株式は昨年末まで売買高が乏しく、為替相場もよくて横ばいで推移してきたが、債券市場は堅調で、特に地元市場で売買する力を備えた銀行は好調だったという。 「債券の多くは今、現地通貨建てであるケースが増えている」とシュロフ氏。「5〜6年前にこの分野をカバーしたいと考えた多くの銀行が、結局やめた。特に進出してから日が浅い時には利益を上げるのが非常に難しいからだ」 シティグループによると、同社は3年前に、サムスンなどの多国籍企業「数百社」の法人顧客に専念することを決めた。 シティは昨年、株式、債券、M&Aのランキングで上位3位に入り、同社によれば、おかげで中核の投資銀行業務の売上高が昨年30%増えたにもかかわらず、アジア地域の証券・銀行部門は2010年から2012年にかけて28%の減益を報告している。一方で、アジアの資金決済・取引サービス事業の利益は同じ期間に10%減少したという。 これに対し、HSBCのアジア地域のグローバルバンキング・市場部門の利益(中国の提携先からの貢献を除く)は同じ期間に31%伸びた。しかも、これは大規模な香港事業を除いた数字だ。両社が報告する数字は同一ではないが、その規模と業績の方向性は有益な比較となる。 現地通貨建ての債券市場の重要度の高まりは、アジアで本格的な事業展開を望む銀行にとって、現地に陣容を構える必要性を浮き彫りにしている。この状況は現在、HSBCとスタンダードチャータードに有利に働いており、シティとドイツ銀行も地域に有力なネットワークを持っている。 アジアの地元銀行に大きなチャンス だが、この状況は何にも増して、マレーシアのCIMBやインドのコタック・セキュリティーズなどの地元の金融大手が域内で法人金融・投資銀行業務の利益を伸ばす余地を生み出した。 CLSAのオビントン氏によると、特に中国の市場規制当局が今も多くの新規株式公開(IPO)の障害となっていることから、多くの投資銀行が東南アジアに重点を移そうとしてきたが、スピードが不十分だという。「今でも香港と中国に過度に資源が配分されているが、これらの市場は今も脆弱だ」と同氏は話している。 By Paul J Davies
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