10. 2013年3月14日 01:27:06
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2013年3月13日 橘玲 橘玲×藤沢数希 特別対談 「金融幻想の終わり」を語る(4) 日本の国債暴落と中国の不動産バブルの崩壊 橘玲(以下、橘) 日本国債のバブルは、あとどれくらい続くと見ていらっしゃいますか? 藤沢数希(以下、藤沢) 全然わかりません。崩壊しにくい構造にはなっていると思います。みんな将来が不安でせっせと預金をするのだけど、銀行は貸出先がないので国債を買うしかなく、銀行が国債ばかり買うのでお金が回らずに不景気が続いて、ますます不安になるから銀行に預金が集まるという…。 橘 でも、いつか終わるわけですよね。永遠に続くバブルはない。 藤沢 永遠に続かないことはわかっているけど、いつ終わるかはわからない。終わるタイミングを狙っている人はいっぱいいますけど、今のところそういう人はみんなやられています。 橘 結果的に終わるに終われない。どうやって儲けましょうか? 藤沢 日本国債が暴落するということは日本円が暴落するということですから、普通に外貨建ての資産を買っておけばいいんじゃないですかね。財政破綻するとしても、その仕方によりますけど。国債が暴落して銀行が経営危機に陥って、国債の会計基準が変わって、公的資金が注入されて…っていう程度で落ち着いてくれたらいいですけどね。 橘 もっと最悪の事態になったら、外貨建て資産を持っていても口座を凍結されてしまうと考える人もいるようですね。 藤沢 そうなったら海外に移住するしかないです。でも、いま60−70歳の人が国債暴落に備えて海外に住むことがいいことかと言えば、たぶんいいことではないんですよ。だからもう防ぎようがない。逆に、海外に住んでもいいという若い人は、守るべき資産なんてないわけで、預金封鎖されても構わない(笑)。だからどっしり構えていたらいいと思います。 橘 若い人は「どうせなら早く破綻してくれたほうがいい」と思っているかもしれない。老人たちの社会保障費の負担とかを考えたら…。 藤沢 もし財政破綻が貨幣的な現象だけで済むのなら、インフレになって、いま老人が抱えている預金を目減りさせて、そのぶん若者が将来返済させられるはずだった借金を軽減させるというシナリオでしょう。リフレ派の人たちが唱えているのは、そういうことですよね。金融システムが破壊されちゃって、貨幣的な現象だけでは済まなくなっちゃう可能性もあるわけだけど。 橘 安倍さんはあそこまで言い切っている以上、インフレ政策をやるんじゃないですかね。選挙前に「やる」と言ったことを実行できないとどうなるか、民主党の例で目の当たりにしたわけだから。 編集部注:この対談は、2012年12月12日に行われました。 藤沢 どうですかね。僕は結局そこまでドラスティックなことは起こらないと思いますけど。自民党の公約もよく読んだらマイルドなことしか書いてなかったし、いざやろうとすれば識者や官僚も反対して、結局うやむやになっちゃうのでは。 橘 抱えている借金のサイズが莫大なだけに、誰にも予想がつかないところではあります。 藤沢 根源的には「お金」というもの自体がバブルなんですよね。みんなが価値があると思っているから価値があるだけで、中央銀行が裏付けとして金(きん)を持っているとかではないから。国債の信用とお金の信用は中央銀行のバランスシートで完全にくっついていて、それがどういう結末を迎えるのかは、なかなか興味深いところです。
橘 もちろん未来は誰にも予想できないわけですが、少なくとも生きている間には見られるんじゃないですか。 藤沢 経済学のあっさりしたモデルの「貨幣中立説」とか考えると、お金なんて単なる媒介なのでどうでもよくて、モノやサービスを生産する能力こそに価値がある。そうすると老人の貯金を“なし”にして「じゃ、もう1回やり直しますか」ってなことで終わるんですけど…、それで止まるか、どうか。 橘 相殺しちゃうわけですか(笑)。システムを効率的に設計した後で、貯金と借金を相殺してリセットしちゃえばいいという説ですね。 藤沢 金融システムが壊れずに、資本主義社会の私有財産権とかそういうソフトなインフラが破壊されることを考えなければ、老人の貯金がなくなるだけで終わります。インフレを通してお金の目盛が置き換わるだけ。それで済むかはわからないですけど。 橘 まず済まないでしょうね。 藤沢 まあそれも面白いですよね。 橘 私は不安だけが増幅していくのが、いちばん問題だと思っているんです。将来のことはわからないんだけれど、年金にしても医療費にしても、このままじゃ持たないことだけはなんとなくわかる。 藤沢 基本的には国債を発行してお金をバラまけば一時的に景気は良くなる。でも、今の日本は借金がとてつもなく大きすぎるから、バラまけばバラまくほど不安が増幅して、お金を貯め込んでしまうという構造なんですよね。でも、本当に日本の借金が大きすぎることが不安なら、日本円で貯金するというのも矛盾しているんですよ。外国の資産に逃避するというならわかるけど。国民そろってそこまで頭が回ってないのかな。 橘 外国の資産を買うことも不安なんですよ。消去法でいちばん落ち着くところが、預金残高を増やすっていうことなんじゃないですかね。 藤沢 そして結果的にこの5−10年を見たら、円預金を増やした人がいちばん儲かってるわけです。金や石油などのコモディティは別として、普通の人が普通にアクセスできる金融商品だけで見たらね。 次のページ>> 過去10年最強の金融商品は… 橘 リスクリターンを考えたら、円預金が最強でした。 藤沢 でも、これからもそうかはわかりません。 橘 高齢者のことを考えたら、もう預金でいいでしょう。今さら投資を勉強してもしょうがないし。 藤沢 僕も橘さんも国際分散投資の本を書きましたけど、僕らが本を出した2006年とか2007年ぐらいが国債分散投資の最悪のタイミングでした(笑)。株が下がって円が上がってダブルパンチになってしまった。いまは、外国株を買おうという本を書いている人がいないから、逆にチャンスかもしれません。 橘 何がいいと思いますか? 藤沢 「MSCIエマージング」とかいいと思いますね。いま、新興国のPER・PBRって先進国のそれとあまり変わらないんですよ。成長性は高そうなのに。だから新興国株が割安なのかなと思います。あ、これは「当たるも八卦・当たらぬも八卦」なんですけど(笑)。 橘 先日中国に行って来たんですが、不動産が凄まじいバブルでその結末に興味があります。はじけたら相当なインパクトだと思うんです。ちょっと想像を絶してますよ。 藤沢 香港の不動産バブルとはまた違うんですか? 橘 私が見てきたのは中国の本土です。上海から高速鉄道で3時間のところに、安徽省の合肥っていう省都があるんです。安徽省は中国でも一番貧しい省だったんですが、そこに巨大都市開発のバブルがきて、見渡す限りグレーの粉塵が立ち上っていて、スゴイ状態です。何もないところに、いきなり六本木ヒルズが10棟できちゃうような感じ。 藤沢 なんでそんなことになるんですかね。 橘 正常な市場経済が機能してないからだと思います。都市計画は政府や省の役人が決めるんですが、下町にはもう人が大勢いるから、空港近くの何もないところに用地を確保するんです。それを不動産開発業者が入札するんですけど、不動産会社は役人と結託してて、役人は国有銀行と結託してて、みんなで一等地を分け合うんです。 藤沢 めちゃくちゃですね。 橘 誰もが自分さえ売り抜けられればいいと思っているんです。きちんと計画を立ててやれば辛うじて六本木ヒルズ1棟分の需要は作り出せるかも知れないけど、他人に出し抜かれるわけにはいかないというだけで、10棟もできてしまう。いくらなんでもムリだろう、という感じです。3年くらいで結果が出ると思うんですけど。 藤沢 中国の金融政策はマクロ経済的にとても興味深いんです。基本的に「独立した金融政策」「固定相場」「自由な資本移動」の三つは同時に成り立たないという有名な為替制度のトリレンマがあるのですが、中国は“元”を固定相場制にしているので、残り2つのうちのどちらかを諦めないといけない。にもかかわらず、だましだまし両方とも達成しようとしているから、“元”を安く固定するために米国債を買い続けなければならないんです。金融政策がとれないから金利はものすごく低くて、結果、バブルを抑えることができない、という。 橘 しかも、反・市場経済だから、バブルを止めるものは何もない。 藤沢 危ないですね。 橘 日本の国債バブル崩壊よりも、中国の不動産バブル崩壊のほうが先に来るかもしれないですね。そちらのほうがインパクトは大きいし、中国のバブルが崩れたら、新興国経済は壊滅的な打撃を受けるでしょう。実はその後に、本当の投資チャンスが来るのかもしれませんけど。 次のページ>> 中国の不動産バブル崩壊は? 藤沢 だから新興国投資にはそれなりのリスクがあるということで、さっき「MSCIエマージング」がいいと言った発言に付け加えておきます(笑)。中国は不動産も通貨も株も、日本人は無制限には買えないので直接の影響はないとはいえ、世界経済に与えるインパクトは極めて大きいですからね。
橘 製造業はますます苦境になってしまう。 藤沢 反日デモみたいなこともあるし、日本の製造業は少しずつ拠点を中国から他のアジアの国なんかに移そうとしてるみたいですけど。 橘 私たちはどうしても「中国」というひとかたまりで考えてしまいます。「中国」があって「タイ」「ベトナム」「インドネシア」があってっていう。でも、その把握の仕方はたぶん正しくないんです。だって規模が全然違う。13億人の巨大市場に、代替なんてないんじゃないかと感じました。 藤沢 いろんなシンクタンクの予測では、あと10−20年したら中国がいちばん大きな経済規模になってるはずなんですけどね。それは中国のGDPが世界一になっても、一人当たりGDPはまだまだ小さいので成長の余地があるという、理論上のものですが。 橘 長期で見たらそうかもしれませんけど、今のバブルの延長線上に右肩上がりの繁栄があるとはちょっと思えないです。中国のバブル崩壊が引き金になって、日本の国債バブルもはじけるのか。それとも安全資産への逃避ということで、また国債や日本円が買われるのか。 撮影/和田佳久 藤沢 円が買われるでしょうね。基本的に世界で何か悪いことがあれば、円や日本国債が買われます。基本的に、アメリカと日本みたいなお金持ちの経済大国が、世界に投資資金を提供しているので、世界経済にショックが起こると、アメリカ国債とか日本国債に資金が戻って来るんですよ。そうすると円高で、もう一回不景気になりますね。
橘 その可能性が高いですね。 藤沢 国債はどうなるかは難しくて、みんな違うことを言うんです。こんなに金利が低いということは、需要に対してまだまだ国債の発行量が足らないんだ、という人すらいるわけで。そもそもお金そのものが説明不可能なもので、国債もまたしかり。お金がお金である理由は、お金はお金であるという「循環論法」だけなので、どうなるかわからないですね、本当に。 橘 私は安倍さんは、それなりの決意をもってインフレ政策を実行すると思います。竹中平蔵さんが「産業競争力会議」に登用されたりして、あのとき円安政策でうまくいった成功体験もありますし。インフレにするのか、もろもろの抵抗にあって失敗するのか、いずれにしても退路はない。 藤沢 すごく面白い経済実験ですね。何が起こるかわからないので、やはり資産は分散させておいたほうがいいですね(笑) ※この対談は、2012年12月12日に行われました。 (構成/渡辺一朗 撮影/和田佳久) 【第17回】 2013年3月14日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 中国不動産バブルについて、中国語で解説を読む これまで、簡単な方法で中国語の文献を読むことを探ってきた。これをさらに推し進めることとしよう。
普通の中国語講座で 教えることと教えないこと 中国語の文献を読むテクニックとしては、つぎのようにいくつかのものがある。 1.日本語の助詞に当たる文字を識別すること。「的」を「の」と置き換えるだけでも、かなり読むことができることを示した。中国語の文法をさらに学習すれば、さらに読み進むことができる。 2.簡字体を学習する。これらの中には、一度聞けばすぐに覚えられるものも多い。 3.関心のある分野に特有の表現法や述語を覚えること。これは、さらにつぎの2つに分けられる。 3−1 ある程度広い分野(例えば、経済や統計など)に共通の表現や述語を覚えること。例えば、「◎比」(前期比、◎は王へんに不)など。 3−2 特定のテーマに特有の表現や述語を覚えること。例えば、「不動産バブル」というテーマに興味があるのであれば、「次級貸款」(サブプライムモーゲッジ、級と貸は簡字体では別の文字)と言った言葉を知っていることが重要だ。こうした言葉は、一般の日常会話には出てこない。 以上のうち、普通の「中国語講座」で扱っているのは、1と2である。この2つは、どんな分野の文献を読むにも必要だからだ。つまり、この2つは、中国語の文献を読むための必要条件である。 しかし、この2つに関して学習しさえすれば中国語の文献を読めるかと言えば、決してそんなことはない。新聞の社会面の記事は読めるかもしれないが、専門分野の文献は読めない。「◎比」という表現を知らなければ、統計の表さえ、意味を正確に把握することができない。 つまり、1、2の段階までの中国語学習では、中国語の文献を読むことはできないのだ。これらの学習は、十分条件にはならないのである。 ビジネスで使える中国語を どのように勉強すればよいか? したがって、3の段階の勉強がどうしても必要である。しかし、語学教室では、この段階は提供できない。専門分野の知識を有する教師を揃えることができないからだ。 「ビジネス中国語」という本を見かけるが、ここにあるのは、「ビジネスに関連のあるシチュエーションで話されている中国語」という程度のものであって、実際のビジネスで使えるレベルのものとはほど遠い。 以上のことに対する認識は十分でない。これは、中国語に限ったことではなく、あらゆる外国語の教育・学習について言えることだ。英語の場合もそうである。多くの日本人ビジネスマンの英語は、英語でグローバルビジネスを行なえるような段階には至っていないのである。それは、専門用語を知らないからだ。 専門分野のコミュニケーションのためには、専門用語が必要である。逆に、専門用語さえ分かれば、専門家同士ではかなりのコミュニケーションができる。だいぶ前のことだが、税の問題に関する国際会議で、同時通訳の人に、「あなたがたは『税語』で話している」と言われたことがある。 中国語の場合には、文法が規則的なので、専門用語さえ知っていれば、かなりの程度のコミュニケーションができるだろう。 では、専門用語を学習するには、どうしたらよいのか? 一番良いのは、その分野の講義を、学習したい外国語で受けることだ。ただし、これは容易に実行できることではない。 それ以外の方法もある。ここでは、ウィキペディアと百度を用いることを提案している。また、随時、ウエブの中国語辞書を参照する。「読む」ということに目的を絞れば、これによってかなりの程度のことができる。 百度で検索したとき、候補がいくつも表示される。それらのうち読むべきものを選択するには、数行で表示されている文章を読まなければならない。そのためには、専門用語を読解できることが不可欠だ。 また、検索の際に、キーワードをできるだけ多く用いて、できるだけ絞り込んだほうがよい。知りたい命題そのものを打ち込んでもよいくらいだ。 中国不動産バブルの説明を読む 前回紹介した、中国不動産バブルに関するウィキペディアの記事(「房地产」の項目にある記述)を、もう一度取り上げよう。前回は、「およそ何が書いてあるか」を把握しただけだが、これを詳しく読むこととしよう。以下では、一般的語句・文法の説明と、専門的用語の説明を区別して行なうこととする。 (第1文) 2008下半年,受美国次级贷款危机影响以及自身调整的要求,中国大陆的房地产业开始一次普遍的调整。 (訳) 2008年下半期において、アメリカ・サブプライム金融危機の影響を受けて、また、中国の不動産価格自身を調整する必要もあり、中国大陸の不動産業に、一次普遍的な調整が起こった。 (一般的語句・文法の説明) 影响(yǐngxiǎng)⇒影響。「以及」(yǐjí)⇒及び。 (専門的用語の説明) 「次级贷款」というのは、サブプライムモーゲッジ(subprime mortgage)のことである。そうであろうという見当はつくが、この言葉でウィキペディアを検索すると「次貸危機」というページがあって説明があるので、確かめることができる。ちなみに、「住房抵押貸款證券」がMBS(住宅ローン担保証券)のことだ。 したがって、「美国次级贷款危机」は、アメリカ・サブプライム金融危機。 (第2文) 房地产交易量大幅萎缩,但是平均成交价格并没有下降。 (訳) 不動産の取引量は大幅に萎縮したが、平均成立価格は下落しなかった。 (一般的語句・文法の説明) 没有(méiyǒu)は、否定を表す。これは、しばしば使われる言葉だ。そして、并(並)(bìng)は、没有の前について否定を強める働きをしている。「并」がついているのは、「不動産の取引量が大幅に減ったにもかかわらず、価格が下落しなかった」というニュアンスを出しているのであろう。 (専門的用語の説明) 「房地产交易量」⇒不動産の取引量。「平均成交价格」⇒平均成立価格。 (第3文) 之后中国众多城市地方政府纷纷出台相关政策直接补贴开发商,并放宽了征地政策,部分城市甚至允许开发商分期付款拿地。 (訳) その後、多くの地方政府がさまざまの関連する政策を打ち出して、都市デベロッパーを直接に補助しようとした。その上、土地収用政策を緩和した。一部の都市は、都市デベロッパーが分割払いで土地を持つことさえ許可した。 (一般的語句・文法の説明) この文章には、一般用語が多く含まれている。「众(衆)」(zhòng)、あるいは「众多」(zhòngduō)は、「多くの」。 纷纷(fēnfēn)は、「さまざまの」。「出台」(chū▼tái)は「登場する」。「相关」(xiāngguān)は相関、関連する。「甚至」(shènzhì)は、さらには。「允许」(yǔnxǔ)は、許す。「并(並)」(bìng)は、その上。部分(bùfen)は、一部の。 (専門的用語の説明) 「补贴」(bǔtiē)は、補助。「放宽」(fàngkuān)は、緩和する。「开(開)」(kāi)、「发(發)」(fā)は「開発」。「开发商」は、土地デベロッパー。 「征」(zhēng)は徴収。「征地政策」は土地収用政策。「款」(kuǎn)は金銭、「拿(拏)」(ná)は受け取る。「分期付款拿地」は分割払いでの土地所有。 (第4、5文) 之后不久,中央政府宣布将首次购房的按揭首付比例降低至20%,并允许按揭利率最低可以执行同期贷款利率的70%。并大幅减免了购房契税。 (訳) その後すぐに、中央政府は初回の住宅購入のローン頭金を比例的に20%に低下させると宣言した。また、ローン利率の最低限を、同期の貸付レートの70%で執行することを許可した。また、不動産購入取引税を大幅に減免した。 (専門的用語の説明) 购房的按揭⇒住宅購入のローン。购房契税⇒不動産購入取引税。「购」は購入、「契税」は不動産取引税。 (第6文) 时对之前地方政府出台的“救市”政策予以肯定。这普遍被解读为中央政府开始放弃之前的抑制房价政策,转为重新希望通过刺激楼市来刺激中国经济。 (訳) 同時に、地方政府発表の救市政策を肯定した。これは中央政府が以前の住宅価格抑制政策の放棄の開始と解読して、不動産相場を刺激することを通じて中国経済を刺激するという希望を高めた。 (一般的語句・文法の説明) 「转(轉)」(zhuǎn)⇒転じる。 (第7文) 但也有人认为在中国房地产泡沫并未破裂之时便放弃对房价的抑制,会埋下更大的隐患。 (訳) ただし、中国の不動産バブルがいまだ破裂しない時に住宅価格の抑制を放棄することは、さらに大きな隠れた問題を隠すことになるという人もいる。 (一般的語句・文法の説明) 「为」(rènwéi)⇒と考える。「弃(棄)」(qì)⇒放棄する。「对(對)」(duì)⇒対し。 (専門的用語の説明) 房地产泡沫⇒不動産バブル。 (第8文) 2009年,政府为了保证经济长达到8%的摯摶レ标,放开了银行信贷,以适度宽松的货币政策,新贷款10万亿人民币。 (訳) 2009年、政府は経済成長率8%の目標のため、銀行貸付を開放し、適度の金融緩和政策によって、新規貸付金を10兆人民元にした。 (第9、10文) 由于国际经济环境低迷,国内可投资行业单一,大量资金涌入了股市和楼市,股市从08年低点1700点上升至09年7月的3130点,楼市由于开发商资金充裕,又掀起了一波涨价风潮,地价楼价很快超过07年的高点,有观点认为:“以09年的价格来看,07年还是太便宜了”。截至09年底,甚至有大城市的房价租售比达到了不可思议的1:574。 (訳) 国際経済環境の低迷によって、国内投資は一つの業界でのみ起こった。大量の資金は株式市場と不動産市場に流入した。株式市場は08年の最低点1700から、09年7月の3130まで上昇した。不動産市場では、デベロッパー資金に余裕があったので、価格上昇の風潮がわき上がり、地価・不動産価格は07年の最高水準を超えた。つぎのような考えもあった「09年の価格を見れば、07年の価格はたいへん安かった」。09年末まで、甚だしきに至っては、ある大都市の住宅価格対賃貸料比は、1:574という不可思議なレベルにまで達した。 (一般的語句の説明) 「由于」(yóuyú)⇒理由を示す。「行业」(hángyè)⇒業種。「涨价」⇒値上りする。「认为」(rènwéi)⇒と思う。 (専門的用語の説明) 「租」(zū)⇒賃貸料。「售」(shòu)⇒売る。 ●野口教授が監修された経済データリンク集です。ぜひご活用ください!● ●編集部からのお知らせ● 野口教授の最新刊『金融緩和で日本は破綻する』発売即重版!
安倍政権による金融緩和策が経済再生の「魔法の杖」のごとく喧伝されているが、いかに追加緩和がなされようと、デフレ脱却は見込めない。安易な緩和策は問題を先送りする「麻薬」でしかなく、その先に待っているのは、財政規律の弛緩と制御不能なインフレである。日本経済論の第一人者が金融政策の限界を検証する。 〈主な目次〉 第1章 金融政策はどう行なわれるか 第2章 効果がなかった量的緩和 第3章 大規模為替介入と円安バブル 第4章 日銀による財政赤字のファイナンス 第5章 金融緩和でデフレ脱却はできない 第6章 世界を混乱させるアメリカ金融緩和QE 第7章 金融緩和のエンドレスゲームに突入する世界 第8章 金利高騰は大問題 第9章 財政赤字と金融緩和で国家は破綻する もう擁護できない英国の緊縮財政 2013年03月14日(Thu) Financial Times (英エコノミスト誌 2013年3月9日号) デビッド・キャメロン首相は緊縮しか選択肢がないと述べているが・・・〔AFPBB News〕
英国のデビッド・キャメロン首相が英国経済について先週行った、「(手段は)ほかにない」と述べたスピーチが批判を巻き起こしている。 無理もない。自分の政権の財政緊縮プログラムを貫くしかないという首相の議論は、著しく間違ったものだったのだから。 失敗しつつある最重要政策を擁護しなければならない事情は容易に理解できる。この連立政権は2010年6月の緊急予算により財政緊縮プログラムに取り組み始めた。そのころ回復の兆しを見せていた景気は、これ以降ずっと低迷している。肝心の財政状況もお粗末だ。 実際、権威ある財政研究所(IFS)のリポート「グリーン・バジェット」の最新版によれば、本財政年度の借り入れは前年度を上回る可能性がある。 危ないところを救ったのは生産性の低下だけだった。生産性の低下が失業率を驚くほど低位に抑えたことが、国内総生産(GDP)の急減が社会に及ぼす打撃を弱めてくれたのだ。 このような実績をどうすれば擁護できるのだろうか? オクスフォード大学のサイモン・レン・ルイス氏や全英経済社会研究所(NIESR)のジョナサン・ポルテス氏などにより、首相の主張は完全に論破されている。以下ではその要点を紹介しよう。 「カネのなる木」は存在するし、格下げの理解も間違っている キャメロン氏はこう言った。政府はもっとカネを借りられると考える人々は「カネのなる魔法の木があると思っている。そういう人には、本当のことを教えてあげよう。そんなものはこの世には存在しない」。これは完全に間違っている。 第1に、カネのなる木は存在する。英国ではイングランド銀行と呼ばれており、資産を購入する資金としてこれまでに3750億ポンドを作り出している。第2に、支払い能力のあるほかの機関と同様に、政府はカネを借りることができる。 第3に、英国政府には支払い能力があると市場は見なしている。英国史上最低の金利でカネを貸す姿勢を示していることがその証拠だ。そして最後に、市場が政府にカネを貸す姿勢を示しているのは、民間部門と対外部門が構造的な資金余剰にあるからだ。 キャメロン氏はまた、「先月の(英国の)格下げは、我々が直面している債務問題をこれ以上ないほどキッパリと注意するものだった」と語ったが、これも違う。理由は3つある。 英国はムーディーズのトリプルA格付けを失った〔AFPBB News〕
第1に、格付け会社のムーディーズは、英国の最大の問題は経済成長が中期的に低迷していることだと強調しており、緊縮財政はこの低迷をさらに悪化させていると述べている。 第2に、自国通貨建ての債務でデフォルト(債務不履行)するはずがない国の格付けには、そもそもほとんど意味がない。 第3に、長期金利が将来上昇すると考えるのは、インフレ率が高くなって短期金利も高くなると予想しているからだ。しかし、それは景気が回復した後の話であり、景気が回復すれば緊縮財政は効果的で時宜を得たものになるだろう。 キャメロン氏はこんなことも言っている。「独立機関である予算責任局(OBR)が明らかにしているように・・・経済成長が押し下げられてきたのは金融危機や・・・ユーロ圏の問題や・・・2010年8月から2011年4月にかけて原油価格が60%上昇したことによるものだ。OBRは財政赤字削減計画にその責任がないことを完全に明白にしている」 この発言については、当のOBRのロバート・チョート局長が反論し、次のように述べた*1。「OBRが2010年6月の予算以降に公表した予測はいずれも、増税と歳出削減は短期的に経済成長率を押し下げるという広く知られた想定を織り込んだものになっている」 この問題を真剣に考えている研究者たちは、国際機関に籍を置く人たちも含め、緊縮財政の乗数効果は(少なくとも、経済が落ち込んだ現在の状況では)OBRの従来の想定よりはるかに大きいかもしれないと論じている。 またOBRは、現状が予測以上に悪いのは乗数を過小に見積もったからではなく景気を落ち込ませるショックがあったからだと考えているかもしれないが、たとえそうだとしても、そうした考え方は積極的な政策を支持するものであり、その逆ではない。 「信じられない」のはどっち? さらに、首相は次のようにも述べていた。「(労働党は)政府がもっとカネを借りれば、奇跡的なことに結局はあまり借りずに済むのだと考えている・・・そう、本当に信じられないことだ」 本当に信じられないのは、キャメロン氏が次の理屈を理解できていないことの方である。民間部門が支出を切り詰めている時に、GDPの半分近い支出をしている経済主体が支出を削減したら、その国全体のGDPは減少するし、減少幅があまりに大きいために財政状態はかえって悪化するかもしれない、という理屈だ。 *1=チョート局長はキャメロン首相宛てに書簡を書き、政府の緊縮策が過去2年間でGDPを1.4%下振れさせたと述べる異例の対応に出ている カリフォルニア大学バークレー校のブラッドフォード・デロング氏と、米国の財務長官をかつて務めたローレンス・サマーズ氏が論じているように、著しく落ち込んでいる経済においては、キャメロン氏が「信じられない」と考えることが実現する可能性が高い。 国際通貨基金(IMF)も先日公表した論文で、「財政の改善が国内総生産の減少によって一部相殺されてしまうため、財政緊縮は短期的には債務比率を高める恐れがある」と述べている。 NIESRのポルテス氏も、たとえ英国にはそれが当てはまらないとしても欧州については当てはまる公算が大きい、ほぼ全員が同時に支出を切り詰めているからだ、と論じている。 財政赤字と債務が膨れ上がった本当の理由 歴代政権の向こう見ずな歳出と借り入れは、英国が巨額の構造的財政赤字を抱えている最大の理由ではない〔AFPBB News〕
さらに、キャメロン氏はこう語っている。「この財政赤字は、世界金融危機だけのせいで突然できたわけではなかった。政府が向こう見ずで完全に度を越した歳出と借り入れを何年も続けてきたことによるものだった」 ある意味で、最もやっかいな認識の誤りはこれである。 その当時政権を握っていた労働党の財政政策が完璧だったからではない。実際、完璧にはほど遠かった。労働党政権は財政をもっと引き締めておくべきだった。しかし、英国が巨額の構造的財政赤字を抱えている最大の理由はこれではない。 問題は経済なのだよ、キャメロン君。IMFによれば、2007年には英国の純債務はGDP比38%で、先進7カ国(G7)では2番目に低かった。これは英国の過去の基準に照らしても例外的な低水準だった。 また、英財務省は2008年3月予算案で、経常予算における構造的財政赤字(景気循環調整後ベース)を2007〜08年度でマイナス0.7%、2008〜09年度でマイナス0.5%と推計・予測していた。財政赤字と債務の膨張をもたらしたのはGDPの落ち込みなのだ。 この脆弱さについてはほとんどの人が過小評価していたし、保守党の指導部もそうだった。経済危機が起こる前に保守党は、キャメロン氏が「向こう見ずで完全に度を越した」と批判している諸々の計画の継続を約束していた。 向こう見ずな歳出が行われたせいで、2007〜08年度に40.7%だった政府の歳出のGDP比が2年後に47.4%に跳ね上がったのだ、と考える人もいる。しかし、1996〜97年度(労働党が政権を握る前年)から2007〜08年度(金融危機の前年)までの間に、歳出の対GDP比は1.2%しか上昇しなかった。 そう、GDP比で見た歳出の急増と歳入の減少をもたらしたのは、GDPが事前の予想に比べて著しく落ち込んだからなのだ。 事前予想との大きなズレ IFSのグリーン・バジェットは、2008年3月予算案と2012年秋季財政報告に収められた2012〜13年度の予測値を比較している。これによると、名目GDPの予測は13.6%引き下げられおり、歳入の予測は17.6%、歳出の予測は5.7%それぞれ引き下げられている。そして借入額の予測は372%引き上げられている。 これは、この失われたGDPの大半は戻ってこないから先行きは厳しそうだとOBRが(そしてほかの人々が)考えているからにほかならない。 柔軟な財政政策に反対するキャメロン氏の議論は間違っている。しかし、ここから先は、我々はなぜ経済がこれほど脆弱なのか、そしてなぜリバランス(再調整)がこれほど難しいのかを考えなければならない。この議論は来週続けることにする。 By Martin Wolf
ユーロ圏経済:まだ続く信用収縮 2013年03月14日(Thu) The Economist (英エコノミスト誌 2013年3月9日号)
融資の不足が南欧の景気回復の可能性を損ねている。 先月のイタリアの選挙で明確な結論が出なかったことに当初動揺した後、金融市場は概ね落ち着きを取り戻した。今のところ投資家は、無制限の国債買い取りによって市場から包囲された国々を助けるという欧州中央銀行(ECB)の公約に信頼を置き、資金を投入している。 だが、各国が景気後退から抜け出せずにいる間は、イタリアのみならず他の地中海沿岸諸国でも、政治的ショックのリスクは高まるばかりだ。 ユーロ圏全体の第4四半期の国内総生産(GDP)は、前四半期と比べて0.6%減少した。ドイツも同様の落ち込みを経験したが、ユーロ圏周縁国の景気後退はそれよりはるかにひどかった。GDPはイタリアで0.9%、ポルトガルで1.8%減少した。両国では過去1年間、失業率がユーロ圏全体よりはるかに大きく上昇している。 緊縮策のみならず信用不足にも苦しむ南欧の窮状 南欧は過度の緊縮策だけでなく、信用の不足にも苦しんでいるため、成長が実現しにくい状態が続きそうだ。今年の厳しい赤字削減目標に関しては、いくらか目標が緩和されるかもしれない。だが、著しく欠けているのは、金融市場の回復に伴う銀行融資の回復だ。 最新の信用統計は、南欧の悲惨な現状を浮き彫りにしている。 1月の家計向け融資は、ユーロ圏では前年同月比0.5%増加したが、スペインとポルトガルでは約3.5%減少した。非金融企業では、状況ははるかに悪かった(図1参照)。
企業向け融資は、ユーロ圏では2.5%減少したが、全体の数字は大きなばらつきを覆い隠している。 ドイツでは融資が0.9%増加したが、イタリアでは3.2%、ポルトガルでは6.6%、スペインでは11.4%減少した(スペインでは12月に行われた国営「バッドバンク」への債権移転によって落ち込みが実際より大きくなっている。それを除くと8%の減少)。 企業向け融資のコストではドイツと周縁国との格差が依然大きく、特に資本市場にアクセスできない中小企業向け融資では開きが顕著だ。
100万ユーロ(130万ドル)未満の1年物新規事業融資の平均金利は、ドイツでは2.8%だが、イタリアでは4.4%、スペインでは5.1%、ポルトガルでは6.7%に上る(図2参照)。 欧州の企業は米国の企業よりも銀行への依存度が相当高いため、企業向け融資の不足――そして融資が提供される時のコスト――は大きな懸念要因だ。 良い知らせと悪い知らせ 良い知らせは、銀行の資金調達面の制約がもはやかつてほど厳しくないことだ。強い銀行は今は市場で資金を調達できる。また、弱い銀行は、ECBの惜しみない流動性プログラムによって支えられている。 悪い知らせは、銀行が貸し出しを減らす理由をまだたくさん持っていることだ(弱い資金需要を別にしても、その状況に変わりはない)。 自己資本比率を引き上げるという規制面の重圧にさらされた状態下で、多くの銀行にとって明白な対応策は融資残高を減らすことだ。不良債権が増えているため、銀行はよりリスク回避的になっている。 また、欧州の政府支援ルールが意味するのは、救済された銀行が事業をスリム化しなければならないということだ。 その他の銀行は実務的な理由から、その穴を埋めるのが難しいと感じることがある。スペインの大手銀行は、借り手が適切な書類を持っていないために、現在縮小されつつある貯蓄銀行「カハ」の顧客を引き受けることが難しくなっていると言う。 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のルイス・ガリカーノ、クラウディア・シュタインヴェンダー両氏は最近の論文で、スペインにおける金融面の制約の影響を考察している。 両氏は、外資系企業、それゆえ別の形の資金を利用できる企業と、国内企業、それゆえ国内銀行に多く依存する企業とを比較することで、資金へのアクセスに関する不確実性がこれらの企業の、2008年危機後の意思決定にどのような影響を与えたのかを明らかにしている。スペイン資本の企業は外資系企業よりも投資を19%多く削減し、雇用を6%多く減らしていた。 ECBが優先すべき課題 信用不足が続けば、南欧は成長するのに苦労するだろう。 ECBの政策理事会は、3月7日(本誌=英エコノミスト=が印刷に回された後)に会合を開く予定になっていた。信用の流れを容易にすること――例えば、中小企業向け融資の証券化を奨励すること、あるいは貸し出しを増やしている銀行に低利資金を供給すること――がECBの優先課題であるべきだ。 世界長者番付で見るロシア経済の変遷 プーチン側近がランクアップするなか、目立ち始めたIT長者 2013年03月14日(Thu) 大坪 祐介 今年も恒例のフォーブス誌ビリオネアーランキングが発表された。今年の1位は4年連続でメキシコの通信会社を保有する実業家カルロス・スリム氏(資産総額730億ドル)、2位が米マイクロソフト設立者のビル・ゲイツ氏(同670億ドル)であった。 あとは26位にランクされたサウジアラビアのアルワリード王子が同氏の資産評価(200億ドル)が不当に低いとクレームを申し立て、今後フォーブス誌の調査に協力しないことを明らかにしたことが今年の話題であろうか。 米国がダントツトップ、ロシア人は111人、日本人22人 ロシア人のビリオネアー(出典「フォーブス」誌) 拡大画像表示 2013年のリストにランキングされたビリオネアーは1426人、国別では米国が442人でトップ、中国は122人、ロシアは111人、日本は22人である。
ロシアではリーマン・ショック以前にはロシア人ビリオネアーが幅を利かせ、ロシア国内メディアもこの話題を大きく取り上げたものだが、ここ数年はいまひとつ盛り上がりを欠く話題となっている。 今年のロシアのトップにランキングされたのは資産総額176億ドルでウズベキスタン出身の実業家アリシェル・ウスマノフ氏(60歳)である。彼はソビエト時代はウズベキスタンのKGBの職員であった。 しかし多くのオリガルヒのように90年代の混乱期に巨大な財を築いたわけではなく、中小金融機関の顧問を務めるなど裏方に徹していたようである。ビジネスで頭角を現したのは比較的遅く、2000年代に入ってガスプロムのビャヒレフ社長のアドバイザーを務めたあたりからである。 現在はガスプロムとつながりの深い鉄鋼コンツェルンMetalloinvest、国内2位の携帯電話会社Megafonなどの大企業の主要株主である。またIT投資にも積極的でロンドン市場に上場しているMail.ru(前 Digital Sky Technology)を通じてFecebookやZyngaに上場前から投資を行っているほか、ロシア国内の大手SNSであるVkontakteやOdnoklassnikiのオーナーでもある。 ビジネス以外では国内主要経済紙コメルサント、複数の国内テレビ放送局に加え、ブログ系ニュースサイトとして人気の高いLivejournalやロシア国内のインターネットニュースサイトGazeta.ruも保有するなどメディア界でも支配力も強めている様子がうかがえる。 さらには英サッカーチームのアーセナルの主要株主でもあり、ウィキペディアによると国際フェンシング連盟の会長も務めているという多彩な人物である。 今年のランキングをロシア経済が絶頂であった2008年のランキングと比較してみよう。 意外にもウスマノフ氏はベスト10圏外、2008年には国内19位、資産額は93億ドルであった。 彼がリーマン・ショックを挟んだ世界経済の混乱期に、資産の多様化をうまく図って資産を倍増させたことが分かる。 ベスト10の半数は5年前と入れ替わった 2008年のビリオネアー(出典「フォーブス」誌) 拡大画像表示 ところで、2013年のランキングで色付けされた人物は2008年にもベスト10にランキングされていた人物であるが、その数は半分にとどまっている。
つまりベスト10の半分は入れ替わったということである。 ロシアのオリガルヒにとってもこの5年間は難しい時期であったと見えるが、もっとも資産の絶対額で見れば庶民感覚とはかけ離れた資産を依然として保有していることは間違いない。 2013年のランキングでもう1つ顕著なのは、いわゆる「ウラジーミル・プーチンの側近」と言われる実業家がランクを上げていることである。例えば今年9位のティムチェンコ氏はロシアのオイルトレーディング会社Gunvor、そして天然ガス会社ノバテックの大株主である。 さらに昨年10位から本年3位に急上昇したミケルソン氏は同じくノバテック、そして大手石油会社シブール社の株主であり、資産総額は昨年119億ドルから154億ドルに急増している。 もちろん、ロシアのビリオネアーの中にはいわゆるベンチャー、特にテクノロジーベンチャーから成功を収めた人物も少なくはない。 今年のリストで目についたのは、世界順位1107位、ロシア81位の Valentin Gapontsev 氏(資産総額13億ドル)である。 同氏の業種には「レーザー」と書かれている。彼は高出力光ファイバーレーザーで世界的に有名な米IPGフォトニクス社の設立者であった。 同社は米国に渡ったガポンツェフ氏が1990年に米マサチューセッツ州で設立、ナスダックに2006年上場、現在の時価総額は30億ドルを超えている。 増え始めたIT長者 フォーブスの表紙と特集で取り上げられた実業家プロホロフ氏 ナスダックと言えば、同じくロシアIT企業で2011年に上場したロシア最大の検索エンジンYandexの創業者 Arkady Volozh 氏も世界1250位、ロシア94位にランクインしている(資産総額11.5億ドル)。
Yandexが目指す巨大なライバルGoogleの共同設立者の1人セルゲイ・ブリン氏もロシア系であるが、彼は世界順位21位、資産総額は228億ドルである。 こうした成功事例がロシア国内外で起業を目指すロシア人のアントレプレナーにとって大きなモチベーションになることは間違いない。 最後に興味深いのは、今回のビリオネアーランキングを掲載したフォーブス誌の表紙である。 ロシアの実業家プロホロフ氏が、特集記事も一緒に取り上げられてている。 同氏はいわゆる金融産業グループのオネクシムグループを経営、傘下にはポリュスゴールド(本年2月売却)、ノリリスクニッケル、ルスアル、ルネサンスキャピタル、MFK銀行などを擁する。 2009年には全米NBLのブルックリン・ネッツに2億ドルを出資、80%の大株主となっている。 プロホロフ氏は2012年大統領選挙に無所属出馬、プーチン大統領の当選を脅かすほどの存在とはならなくとも、得票率は8%と第3位になった。 現在も世論調査では一定の支持率を得ていることからフォーブス誌では同氏を次期大統領選の有力候補と見ているようである。 しかし、ロシア国内ではオリガルヒに対する批判的な見方は依然根強く、2018年大統領選で彼が有力候補となるためには国内世論をどれだけ味方につけられるかが鍵となろう。
韓国大統領が初の閣議で出した衝撃の指示 政府機関の大規模人事予告、地下経済摘発に強い意欲 2013年03月14日(Thu) 玉置 直司 2013年3月11日、発足から2週間経ってようやく朴槿恵(パク・クネ)政権の最初の国務会議(閣議に相当)が開かれた。省庁再編関連法案や閣僚人事聴聞手続きなどが国会で難航し、閣僚の任命が大幅に遅れたためだ。
最初の国務会議で、朴槿恵大統領は政権初期の政策実行の大きな方向を示した。 異例ずくめのスタート 就任から2週間経って主要閣僚の任命に漕ぎ着けた朴槿恵(パク・クネ)大統領〔AFPBB News〕
3月11日午前、朴槿恵大統領は柳吉在(リュ・キルジェ)統一相や尹炳世(ユン・ビョンセ)外交通商相など13人の閣僚に任命状を渡した。朴槿恵氏が大統領に就任したのは2月25日だから2週間経ってようやく主要閣僚の任命が実現したことになる。 それでもこの日、新政権の目玉人事である「経済副首相兼企画財政相」や「未来創造科学相」、さらに緊迫する朝鮮半島情勢を受けて欠かせない「国防相」は任命できなかった。国会の聴聞手続きに手間取っているためだ。 省庁再編関連法案が国会を通過していないため、「未来創造科学部」はいつできるかも未定だ。 また、外交通商部から通商機能を取って「外交部」とするなどの省庁の名称変更も国会で法案が通っていない状態で、李明博(イ・ミョンバク)政権の省庁の名称のまま閣僚を任命する事態になった。 13人の閣僚を任命すると、すぐに新政権で初めての国務会議が開かれた。経済副首相や国防相の席には、次官が「代理」として出席した。与野党の激突で国会審議が動かず、新政権は異例ずくめのスタートとなった。 政府関係者を驚かせた第一声 メディアや官界、経済界は、この最初の国務会議で新大統領がどんな指示を出すのか、大きな関心を持って見守った。 「内閣がすべて構成できたわけではないが、今日から国を正常な形で運営し、国民が抱えるさまざまな難しい問題を解決するために強力な政府となることができるように努力しよう」 朴槿恵大統領はこう切り出した。ここまでは儀礼的な発言だが、次に口から出てきた言葉を聞いて政府関係者は驚いた。 「新しい政府が多くの問題を解決するためには人事が重要だ。各省庁の傘下機関、さらに公共機関で今後、多くの人事があると思うが、新政府の国政哲学を共有できる人物を任命していただきたい」 なんと第一声は、「人事」だったのだ。 閣僚や青瓦台(大統領府)の秘書官人事が一段落し、あとは国会の聴聞手続きを残すだけになっている。情報機関である国家情報院や検事総長の人選も終わった。ではこの日、新大統領が言及した人事とは何なのか。 公企業や公共機関で大々的なトップ交代か? 韓国は大統領制度で、大統領は強大な権限を持っている。そのパワーの源泉の1つが、もちろん人事権だ。大統領(政府)が事実上の人事権を持つ政府機関、公共機関などのトップは500〜600人ほどいると言われる。 韓国電力、韓国鉄道公社などの公社のほか、国民年金管理公団、韓国土地住宅公社などの準政府機関、韓国産業銀行、韓国輸出入銀行などの公共機関がそれだ。 だから大統領が交代すると大幅な人事があるのは当たり前に聞こえるかもしれない。だが、李明博政権から朴槿恵政権への交代は、同じ与党同士の大統領の交代劇で「政権交代」というよりは「大統領の交代」だった。 さらにこれまで朴槿恵大統領は、公企業や公共機関のトップ人事については「既存の任期を全うさせる」方針と言われていた。 だから、政権交代期に頻繁に見られた「大統領選挙が終わると公企業のトップが辞表を提出する」という光景が、今回はほとんど見られなかった。 これまで李明博大統領の側近と言われた国民年金管理公団理事長と仁川国際空港の社長の2人が早々に辞表を出して退任したことが目立つ程度だった。 だが、この日の新大統領の冒頭発言は「大々的人事の号砲」と受け止められている。 問題は、大統領の意中がどこまでの人事であるかだ。500〜600人の公企業や公共機関トップのうち、年内に任期を迎えるトップは100人ほどと言われる。なかには3年近い任期を残しているトップもいる。任期に関係するのかしないのかが、まず第1の関心事だ。 もっと大きな問題は、「人事」の範囲がどこまでなのかだ。この点で大統領発言を最も衝撃をもって受け止めたのは金融界と一部旧公企業だ。 金融界に大きな衝撃、ポスコなどの旧公企業も戦々恐々 韓国の金融機関(銀行)のうち、国策金融機関である韓国産業銀行を傘下に持つ産銀持ち株会社の会長である姜萬洙(カン・マンス)氏(67)は李明博政権が掲げた経済政策「747政策」(年7%成長、1人当たり国内総生産=GDP=4万ドル、世界7位の経済大国の実現)を作った張本人だ。 李明博政権で初代企画財政相も歴任したが、事実上の「経済副首相」と言われた。2014年3月まで任期があるが、早期退任の可能性が出てきた。 政府が株式の大半を保有するウリィ金融持ち株会社の李八成(イ・パルソン)会長(69)は李明博氏と同じ高麗大出身で親交が深かった。 ウリィ金融グループの政府保有株式売却は、新政権の大きな課題の1つで、これを実現するためにも新政権とより近い人材を会長に起用するとの観測が多い。任期は2014年3月までだがすでに1度留任しており、「本人はいつでも交代する覚悟」(韓国紙デスク)だという。 民間銀行最大手の国民銀行を傘下に持つKB金融持ち株会社の魚允大(オ・ユンテ)会長(67)も高麗大OB。学者出身で高麗大総長まで歴任した。純然たる民間銀行だが、会長就任には李明博政権の強い意向があったとされる。任期が2013年7月までということもあり、早期交代の可能性が高まった。 前政権時代の金融機関トップ人事には政権の意向が強く反映されたと言われる。このため、主要金融機関のトップ交代を当然と受け取る声もある。一方で、政権交代のたびに金融機関のトップを交代させることで政府の金融機関への影響力が維持されることへの懸念も根強い。 「韓国で強い金融機関が育たないのは政府の影響力が強すぎるため」(韓国紙デスク)との意見もあり、新政権がどんな人事をするのかに注目が集まっている。 一歩間違えば国民の不信を買う恐れも もう1つ、産業界で注目を集めている人事がポスコと韓国通信だ。ともに旧公企業で今は民間企業になっているが、政権交代のたびにトップ人事に影響を与えてきた。ポスコの場合、李明博政権が介入して現会長が「逆転就任した」とも言われている。 ポスコも韓国通信も、民間企業として「普通の人事」をすることを強く望んでいるが、どうなるのか。新政権の性格を探る上で重要な試金石となる。 人事は政権の基盤固めには欠かせない。だが、一歩間違えば、国民の大きな不信を買う恐れもある。 歴代政権では、ごく一握りの大統領側近が大きな「人事権」を行使した。こうした側近には「人事ロビー」がつきもので、汚職の温床となった。また、李明博政権は高麗大出身者や自身が通う教会関係者、同郷の人物などを重用し、「偏った人事」との強い批判を浴びた。 側近をできるだけ作らず、「ロビー活動」を異常なほどに警戒するのが朴槿恵大統領の特徴だ。一方で、閣僚や青瓦台秘書官人事の際には、その秘密主義や「人物の検証不足」が批判を浴びた。人事をどうこなすののかが、政権初期の大きな課題である。 3月11日の初めての国務会議でもう1つ注目を集めたのは、朴槿恵大統領の「地下経済」摘発への強い意欲だ。 地下経済の摘発で「脱税の根を絶つ」、インサイダー取引も取り締まり 朴槿恵大統領は「福祉公約の財源を巡って公約遵守は難しいとか、増税は不可避だなどの指摘もあるが、約束した公約は必ず守る。財源確保のためにも地下経済を摘発し、わが国に蔓延している脱税の根を絶つ」と強く宣言した。 朴槿恵大統領はさらに「個人投資家を犠牲にして莫大な不当利益を上げている各種の株価操作事件に対して法違反事項と資金の出処、利益の行方、投資の経緯などを厳しく調査すべきだ」と指示した。 「地下経済」との戦いは、朴槿恵大統領がこれまでも繰り返し強調してきた。原則と法秩序を重視する朴槿恵大統領は、一部の人間が脱税で巨額の利益を上げていることを放置することは統治の根幹に関わる問題ととらえている。 さらに地下経済を摘発することで年間6兆ウォン(1円=12ウォン)もの税収増効果があるとの試算もあり、「福祉政策重視」を掲げる新政権にとっては一石二鳥でもある。 特に「株価操作」に言及したことで、当面、集中的な取り締りがあることは確実だ。韓国では、一部のコスダック株式公開企業の株式が虚実入り乱れたネット上の情報で乱高下を繰り広げ、結果的に一般投資家が大きな損失を出す例が多い。インサイダー取引での摘発も多いが、「氷山の一角」と見る国民が圧倒的だ。 政権発足100日間の重点政策 この日の国務会議では朴槿恵大統領は「北朝鮮が核を放棄するように外交チャンネルをフル稼働させること」(外交通商相)、「司法改革、検察改革の推進」(法相)など閣僚ごとに細かく当面の重点政策について指示を出した。 この日の指示内容が「政権発足100日間の当面の重点政策」になるはずだ。 朴槿恵大統領は近く、国防相などを任命して政府を1日も早く正常な軌道に乗せる考えだ。国会審議の遅れなど紆余曲折を経て、韓国の新政権はなんとか本格的なスタートを切った。
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