02. 2013年3月04日 01:36:29
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JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 半ば公然となった英国のポンド切り下げ計画 2013年03月04日(Mon) Financial Times (2013年3月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) この1週間ほど、筆者が少しも心配しなかったニュースが1つあるとすれば、格付け会社ムーディーズが英国の格付けをトリプルAから引き下げたことがそれだ。 格下げの重要性は、批判的な新聞記事と変わらない。米国とフランスは既に格下げされたが、波紋は広がらなかった。格付け会社は過去数十年間、世界経済にかかる重圧についても深い洞察力は示してこなかった。格付けは個々人の評価にとどまっている。 「為替レートの目標はない」と言うが・・・ ポンドの対ドル相場は1ポンド=1.50ドルの節目を割り込み、2010年7月以来の安値をつけた〔AFPBB News〕
それより重要なのは、英ポンドの下落だ。 2007〜09年の世界金融危機が勃発した時には、ポンドは公式の貿易加重指数で約25%下落した。その後、2012年には再び徐々に上昇し始めた。 ポンド高は「競争力」に悪影響を及ぼすと思われているため、財務省とイングランド銀行を不機嫌にしたはずだが、彼らは心配する必要はなかった。 過去数週間の混乱に対する反応として、ポンドは今、2009年以降の平均をわずかに下回るところまで下落しており、さらに下落しそうな勢いだ。 誰か公的な立場にある人に電話をかけて反応を聞けば、「為替レートの目標はない」という答えが帰ってくるだろう。目標はないかもしれないが、公言されていない政策はある。 「経済をリバランス(再調整)させること」に関する話はどれも、輸入に比べて輸出を増やすことを意味している。期待外れの第4四半期の国際収支統計が発表されてから、一段と重要度が増した目標だ。 2つの目的を果たすための手段 輸入に比べて輸出を増やす戦略には、2つの目的がある。成功すれば、財務省とイングランド銀行では眠れない夜の数が減るはずだ。また、完全に立派な方法で国内の経済活動と雇用も後押しするだろう。これを実現するための公言されていない手段がポンド安だ。 兆候は一目瞭然だ。イングランド銀行の金融政策委員会は2%というインフレ目標を、さらに遠のく地平線の先へ追いやることに新たな意欲を示した。また、過去数カ月間は英国の長期金利が徐々に上昇してきた。 では、これは近隣窮乏化政策に当たるのだろうか? 「当局」はこれを強く否定し、自分たちは単に経済のリバランスを図っているだけだと言うだろう。あたかも、生産高と輸出、輸入の「普通」の構成がどんなものであるべきかを知っているかのように・・・。 名目GDPを政策目標に据えよ それなら筆者の代案は何か、と問われるかもしれない。筆者がずっと主張してきたように、経済政策の立案者たちは名目国内総生産(GDP)を目標にすべきだ。この種の指標で通常使われる、仮定に基づいたインフレ調整後のマネーではなく、普通の現金という観点から測られる国民所得をターゲットにするのだ。 当局者は実質GDPを決定することはできないが、名目ベースでのGDPの動きに影響を与えることはできる。 例えば、5%の名目GDP成長率という目標を設定したとしよう。当局者は、どれだけが実質成長で、どれだけがインフレであるのかを決定することはできない。しかし、このような目標が公式政策であれば、賃金や価格を設定する人たちはそれに適応するはずだ。 この政策に対する反論は、GDP統計は四半期ごとにしか公表されず、遅れが出るうえ、改定されることが多いと言うことになるだろう。 政策が日々高い精度を必要としているのであれば、こうした反論は決定的に重要だ。だが、政策を引き締める必要があるのか緩和する必要があるのかを決定するうえでは、大雑把なトレンドが分かれば十分なはずだ。 イングランド銀行次期総裁も一定の共感 イングランド銀行の次期総裁マーク・カーニー氏は英議会の財政特別委員会への証言で、名目GDPを目標とすることに共感を示した。 「特に経済が(短期金利の)下限であるゼロ%近くにあって、政策の効果がインフレ期待を高め、より高い信頼度で実質金利を効果的に低下させることに基づいている時」には、理にかなうという。 何よりも、「名目GDPを目標にした場合には、過去が過去でなくなる。かつてのトレンドに戻るために経済に刺激を与えた当初の数年間に追加的な不足があれば、ギャップが広がっているため、中央銀行はそれを埋めなければならない」とカーニー氏は述べた。 そして、この事実を知ること自体が経済に刺激を与える。 開かれた議論に価値 カーニー氏は最後に、名目GDPを目標にすることに暫定的に反対の意を表明した。というのは「経済主体のかなりの割合がルールに従わず、中央銀行のやっていることを理解しなければ、名目GDPを目標にすることの主な利点がなくなってしまう」ためで、そうなると、インフレ目標に戻ることになるからだ。 だが、議論には価値があるとカーニー氏は付け加えた。言うまでもなく、枠組みを決めるのは財務相のジョージ・オズボーン氏だが、同氏ですら、開かれた議論から恩恵を受けるだろう。 By Samuel Brittan
イタリア総選挙:道化たちの登場 下手をすればユーロ圏全体が日本化する恐れ 2013年03月04日(Mon) The Economist (英エコノミスト誌 2013年3月2日号)
ベッペ・グリッロ氏とシルビオ・ベルルスコーニ氏がイタリアとユーロの未来を脅かしている。 注目の総選挙で勝ったのはシルビオ・ベルルスコーニ氏(上)とベッペ・グリッロ氏(下)という2人の“道化”だった〔AFPBB News〕 逆境の時にはユーモアのセンスが魅力となることもあるが、いつも役に立つわけではない。 イタリア国民は、1930年以降で国内最悪の景気後退と欧州単一通貨の内部崩壊という可能性に直面し、現実から目を背けることにした。 先日の総選挙では、有権者の4分の1が投票所へ行こうとさえしなかった。この投票率は戦後最低だ。 投票に行った人のうち、ほぼ30%がシルビオ・ベルルスコーニ氏を支持した。道化じみた首相として破滅的な政策を実行し、イタリアを経済的苦境に陥れた張本人だというのにだ。 さらに25%は、こちらは正真正銘のコメディアン、ベッペ・グリッロ氏率いる「5つ星運動」に票を投じた。 それに対して、改革志向の実務家として過去15カ月にわたってイタリアを率い、地に落ちた国の信用を大きく回復させてきたマリオ・モンティ氏は、わずか10%の票しか得られなかった。 イタリアにとっても欧州にとっても最悪の選挙結果 この結果は、イタリアにとっても、欧州にとっても、最悪のものだ。選挙前には、ピエル・ルイジ・ベルサニ氏率いる中道左派連合が本命視されていたものの、蓋を開けて見ればベルルスコーニ氏をわずかに上回る票しか得られなかった。 現在ローマでは、その中道左派連合が連立政権の樹立に向けて奮闘している。だが、それは安定した政権にも継続的な政権にもならない可能性が高い。 一方、欧州全域の金融市場は、このニュースに卒倒した。ほぼすべての市場で株価が急落した。地中海沿岸諸国の国債利回りが3カ月前の水準にまで跳ね上がる一方で、ドイツ国債の利回りが低下し、ユーロ危機が再び舞台の中央に戻ってきた。 実際のところ、危険が大きいのはユーロ崩壊よりも景気停滞だ。この2月最終週は、いずれ歴史によって、ヨーロッパ人が改革に興味はないという意志を明確に示した週だったと言われるようになるかもしれない。 9カ月前にはフランス国民が変革から逃げ去ったが、イタリア国民は全速力でフランスを追い抜いた格好だ。 イタリア国民の実に3分の2が、ドイツに押し付けられた緊縮策だけでなく、ほぼゼロ成長という惨憺たる自国経済を改善するための改革計画全体を拒絶した。この道を進んでいけば、イタリアは、ここ20年にわたって日本が苦しんできた経済の麻痺と政治の衰退に行き着く。 進路を変えねば日本の二の舞い 今回のイタリア総選挙の結果は、これまでに中道左派が勝利した最後の総選挙である2006年に恐ろしいほど似ている。その選挙の後、ロマノ・プロディ氏率いるほころびだらけの連立政権は、よろよろと走った挙げ句、結局は2年ももたずに崩壊した。 連立を模索するピエル・ルイジ・ベルサニ氏だが、再選挙なしで今年を乗り切ることは難しそう〔AFPBB News〕
今回のケースでは、ベルサニ氏が中道左派から中道右派までを寄せ集めた「大連立」の樹立を試みることもできるだろうが、そのためにはベルルスコーニ氏と取引しなければならない。 それよりは、モンティ氏と手を組んで少数与党政権を立て、政権外でグリッロ氏の5つ星運動と連携する方がうまくいくかもしれない。このやり方は、シチリアで多少なりとも機能している。 「グリッリーニ」と呼ばれる、グリッロ氏が新たに獲得した上下両院の議員たちは、ただ政権に反対して政治秩序全体をひっくり返したいだけなのか、それとも責任のある態度で賢明な改革を支持するのか、態度をはっきりと決めなければならない。 事態を複雑にしているのが、新議会でジョルジョ・ナポリターノ大統領の後任も選ばなければならないということだ。 最有力候補は、かつて中道左派の首相を務めたジュリアーノ・アマート氏だ。だが、誰が大統領に選ばれたとしても、そしてどんな連立が組まれたとしても、新たな選挙を実施せずに今年を終えるのは難しい。 どうせならその選挙は、新たな政治的指導者たちが、今の行き詰まり状態を再び招かないような新たな選挙制度の下で戦う形にする方がいいだろう。 その一方で、改革が止まってしまうことが懸念される。窒息状態のイタリア経済が活力を取り戻すためには、是が非でも改革が必要だ。何もしないという選択肢は――イタリアの有権者はそう願っているようだが――イタリアの問題を解決する答えにはならない。 実際、イタリアの1人当たりの国内総生産(GDP)は、ユーロが導入されてからの13年間で減少している。 一部のユーロ批判派は過度の緊縮財政に起因する需要低下を声高に訴えているが、イタリアの1人当たりGDPの縮小はそれとはほとんど関係がない。そもそもの原因は、長年にわたって毎年毎年、人件費が着実に上昇し、生産性が低下してきたことだ。それがイタリアの競争力と輸出を蝕んでいる。 イタリア政府が、労働市場と製品市場のさらなる自由化、そして法制度と福祉制度の改革により、失われた競争力を回復させ、成長に再び火をつけることができなければ、イタリア経済は苦しみ続け、若年失業率は現在の36%よりもさらに高くなるだろう。 大きすぎて潰すことも救うこともできない 大国イタリアを失ったユーロは・・・〔AFPBB News〕
それは危険だ。そうしたひどい苦境にあるイタリアが、ユーロ圏内にとどまるとは考えにくい。そして、イタリアを失ったユーロが生き延びられるとも思えない。 イタリアはユーロ圏第3位の経済大国で、財政赤字はごく小さいものの、公的債務残高(GDP比130%近くに相当)はユーロ圏で最も多い。救済するには大きすぎるのだ。 だが、経済成長がなければ、イタリアは債務を返済できなくなる。そうなれば、どんなパターンになるかは明らかだ。 危機を巡る一連の会合、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を抱き込むための中途半端ないくつかの改革の取り組み、不十分な成長、行き過ぎた緊縮財政、そしてまた新たな危機――という展開が続くわけだ。 ユーロは生き延びるが、膨大な経済的コストを支払うことになる。ユーロ圏は日本と化すだろう。 その道をたどる必要はない。イタリアの政治的動揺が如実に示しているのは、メルケル首相の書いた処方箋を状況に適応させなければならないということだ。これまでの処方箋は、緊縮策が非常に多く、改革は一部だけだった。それを逆にする必要がある。 地中海諸国全域に及ぶ深刻な景気後退と失業率の上昇は、大衆の反感の引き金になっている。 ユーロ圏の南部諸国が競争力を取り戻し、成長に再び火をつけたいと望むなら、今後も構造改革が必要不可欠だ。だが、有権者の反応と景気後退の規模を考えれば、今は緊縮財政継続の圧力を弱める必要がある。 緊縮の手を緩め、構造改革に軸足を いくつかの国――最新の例はフランス――では、今年の財政赤字目標を達成できないことが見込まれている。各国政府が改革を実行しているのなら、欧州委員会は目標の未達を容認しなければならない。そして、ユーロ圏の北部諸国、特にドイツは、減税と支出増により需要を刺激する態勢を強化すべきだ。 皮肉なことに、イタリアの道化は2人とも、それぞれ1つの点で正しい主張をしている。グリッロ氏は、イタリアの政治家の過剰な報酬と腐敗を正しく指摘した。ベルルスコーニ氏は、緊縮だけでは欧州危機を解決できないという点で正しい。 しかし、だからといって、イタリア国民が窮地から抜け出せるわけではない。このまま改革を拒み続ければ、現実が追いついてくるだろう。道化たちが何を言おうが、それは面白い話ではない。
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