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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130227-00000306-bjournal-bus_all
Business Journal 2月27日(水)17時48分配信
日揮の社員を含む多数の日本人が死亡したアルジェリアのテロ事件が経済界に与えた衝撃は凄まじいものだった。治安が悪い新興国での事業展開に大きなリスクが伴うことを改めて思い知らされたからだ。
資源開発に絡む大型プロジェクトを請け負えば業績への貢献は小さくない。だが、危険と表裏一体のビジネスを、これまでのような手法で進めていっていいものなのかどうか。苦悩は深い。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によるとアルジェリアに拠点を持つ日本企業は15社程度。外務省によると2011年時点では16社だ。現在はエネルギー関連のプラント設備や高速道路建設が中心だ。今後は自動車など消費財の販売拡大も見込めるだけにアフリカで最重要市場の一つとなる。
【アルジェリアに進出している主な日系企業】
企業名 事業概要
日揮 天然ガス関連のプラント建設
三菱重工業 肥料プラントの建設
IHI 液化石油ガス(LPG)プラントを建設
国際石油開発帝石 天然ガスの生産
鹿島 高速道路の建設
大成建設 高速道路の建設
西松建設 高速道路の建設
ハザマ 高速道路の建設
コマツ 建設機械の販売・修理
伊藤忠商事 プラント事業や化学品販売
三井物産 液化天然ガスの輸出
丸紅 自動車や建機の販売
住友商事 自動車販売
双日 液化天然ガス(LNG)生産工場への機器納入
伊藤忠丸紅鉄鋼 鋼管の販売
NEC 携帯電話会社向けの通信設備の販売
日揮は石油・天然ガスの精製や液化天然ガス(LNG)生産などを手掛けるプラント設計や建設を行うエンジニアリング会社の最大手。アルジェリアには1969年に進出した。高い技術力が認められ、アフリカや中近東など世界約70カ国で2万件以上のプラント建設の実績がある。
三菱重工業やIHIは肥料プラントやLPGのプラントをそれぞれ建設。三井物産はLNGの輸出業務を手掛ける。丸紅や住友商事などの総合商社は自動車販売に力を入れている。家電大手は現地に生産拠点はないが代理店を通じて販売しているケースが多い。
エネルギー関連のビジネスが多いのはアルジェリアがアフリカ有数の資源国だからだ。天然ガスは世界シェア5位。日揮はこれらプラントの設計、建設を行ってきた。
エネルギー関連以外の事業も拡大している。アルジェリアはアフリカの中でも資金が豊富で高速道路の建設が目立つ。
現在、日本企業が手がけている最大の案件はアルジェリアの東西を結ぶ高速道路の建設である。金額でみても日本のゼネコンが海外で受注した過去最大のプロジェクトだが、リスクの高い案件でもあった。
アルジェリア政府が主導する国家プロジェクトで東はチュニジア国境から西はモロッコ国境までを結ぶ、国内を東西に横断する総延長1200キロメートルの高速道路を建設する計画だ。
東、中、西の3つの工区に分割され、東工区400キロメートルを鹿島、大成建設、西松建設、ハザマ、伊藤忠商事の共同企業体(JV)が受注した。事業費は5400億円で、過去最大の案件となった。
工事は2006年10月に着工。完成は当初、2010年2月のはずだった。だが、工事は遅れに遅れて、完成したのは7割程度。トンネルだけでも14本あるのに地盤が脆く崩壊しやすい山を掘削する難工事だ。ゼネコンが得意とする耐震性に優れたハイテク工法がまったく役に立たなかった。さらにテロ対策で火薬の持ち出しが制限されており、発破などの作業が具合良くできなかったなど様々な制約があって遅れた。
アルジェリア側は工事の遅れを理由に、完成している部分の代金の支払いを拒否している。JVの代表である鹿島は発注者であるアルジェリア高速道路公団と交渉したが、交渉は難航。JV各社は2011年3月期決算で800億円の工事損失引当金を計上した。
いま、高速道路建設はどうなっているのか。
日本経済新聞電子版(2013年1月30日付)はライター中川美帆氏が日経BP社の建設・不動産サイト「ケンプラッツ」(1月30日付)に掲載した「アルジェリア高速工事の現場は今」を転載している。
中川氏の現地レポートは凄まじいばかりの警備体制を伝える。日本人が暮らしている総合事務所とキャンプはコンクリートの壁に囲まれ、壁の上部には鉄条網が張りめぐらされている。銃を構えた見張りが24時間体制で警備。日本人がキャンプの外に出る際はアルジェリア軍の憲兵が同行することになっている、という。
では、工事の状況はどうなっているのか?
「現在の開通区間は250kmにとどまり、全体の進捗率は80%程度。完成までに、あと2年かかる見通し。しかも、インターチェンジの新設など膨大な追加工事を求められている。既設工事の未払い分だけで現在の損失は1000億円を上回る、との見方が関係者の間にある」
それでも人質事件で日本企業を取り巻く環境に変化の兆しが出てきた。
アルジェリア政府は1月28日付で国際石油開発帝石の子会社に対して、天然ガス開発の新たな許可を与えた。人質事件が起きたイナメナスのガス施設と同じイリジ県にあるブランドで、アルジェリア国営ソナトラック社(権益67%)、イタリアENI社(同22%)、国際帝石(同10%)のシェアになっている案件だ。
人質事件後、治安への懸念から、このガス田から外国人労働者250人が離脱した。朝日新聞(1月31日付)はアルジェリア発として<現地では「外国企業の流出を防ぐため、この時期にあえて(許可を)発表した」との見方が出ている>と報じた。
高速道路を請け負ったJVの中からは巨額な赤字を出していることもあって「(工事から)撤退すべきだ」との声が出ているが、高速道路はアルジェリア政府の国家プロジェクトだ。「追加工事分の一部を支払うというアメを差し出して、撤退を食い止めようとするのではないか」と囁かれている。
アルジェリアに進出している企業はテロなどの物理的、人的リスクだけでなく、投資リスクにもさらされている。
だからといって、商機を逃がすわけにはいかない。原油埋蔵量122億バレル、天然ガス4兆5000億立方メートルといわれ、鉄鉱石なども豊富な“宝の山”だ。新たな資源として注目されているシェールガスもある。フランスやスペインにも近く、企業にとってアフリカ進出の足がかりとなる国なのである。おいそれとは逃げ出せない。
(文=編集部)
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