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焦点:G20声明、通貨安競争の議論終結とはならない可能性 (ロイター) 
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/275.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 2 月 18 日 14:01:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE91H00R20130218
2013年 02月 18日 ロイター


[モスクワ 16日 ロイター] 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同宣言では、輸出を押し上げるための競争的な通貨安を回避することが採択されたかもしれないが、これで為替相場の安定が維持されるとは言い難い。

声明には「通貨の競争的な切り下げを回避する」、「競争力のために為替レートを目的とはしない」ことが盛り込まれたが、景気回復に向けて主要中央銀行が緩和策を続ける中で達成の保証はない。

米連邦準備理事会(FRB)や日銀による超緩和的な金融政策がまさに、ドル安や円安を促しており、通貨安競争をめぐる議論に拍車を掛けたからだ。

中国や他の主要新興国が会議で警告するように、このトレンドが変わるという可能性は低い。

FRBのバーナンキ議長は15日、「米国は国内での目的を推進するため、国内政策手段を用いている」と述べた。日本も、日銀の無制限の国債買い入れに向けた動きは、景気後退局面からの脱出を支援することだけを目的としたものだと主張している。

G20はこのような政策に対して異論を投げ掛けてはいない。

ただし、意図的にせよ、緩和策の単なる副作用にせよ、通貨の切り下げはあくまで切り下げで、それを競争的と呼ぶかそれ以外と呼ぶかは、その動きの背景にある意図をどう呼ぶかにすぎない。

カナダのフレアティ財務相はG20会合の後に、金融政策の目的が景気刺激か為替レートかを見極める方法について問われ、「判断するのは困難だ」と述べた。

バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの為替ストラテジスト、ニール・メラー氏は「G20声明は、これまでの円売りにお墨付きを与えた、と市場は受け止めるだろう」と述べた。

低金利の米国などから資金が流入するブラジルなどにとっても、為替レートは市場によって決まるべきとの合意は支援材料にならないだろう。通貨に上昇圧力をかけ、輸出がさらに厳しいものとなるためだ。

欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁は、競争的な切り下げを回避するとのG20声明について、為替レートの変動のスピードに、より関係していると指摘。会合後の記者会見では「為替レートの過度な変動を回避するということが全て。為替レートの一方向への変動が維持されることはもちろん議論を呼び起こすだろうし、協議されなければならない」と述べた。

G20の関係者は、ブラジルが最初に言及した「通貨戦争」に関する議論をあまり取り上げなかったが、個人的なレベルでは、これからの多くの会合で為替レートが議題に上ることを見込んでいると明らかにしている。

ECBのコンスタンシオ副総裁は、為替レートの動向を引き続き注視しなければならないとし、もし不規則な動きがあれば協議が必要と述べた。

(Jan Strupczewski記者;翻訳 青山敦子;編集 関佐喜子)


 

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コメント
 
01. 2013年2月18日 16:02:30 : xEBOc6ttRg
小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
円安を何とも思っていない米財務省(G20総括)
2013/02/18 (月) 10:55


 G20が終了しました。

 結果は、思っていたとおり。では、私は、満足しているのか?

 Not at all.

一体この会議は何なのか? そんな疑問が湧いてくるのです。世界の主な国の財務大臣と中央銀行総裁が一堂に会して話合った結果が、これだけなのでしょうか?

 或いは、そのような国際会議でも開催しないと、彼らの暇つぶしができないということなのでしょうか?

 本日は、先ず突拍子もない質問を貴方にしたいと思います。貴方は、日銀総裁のポストが空席のままだったら、どのように思いますか?或いは、日銀総裁ではなく財務大臣のポストが空席のままであったら、どうなるでしょう?

 恐らく、圧倒的多数の方が、そのようなことになれば経済に悪影響を及ぼすから、そのようなことが起きないようにすべきだとお考えになるでしょう。ということで、次の日銀総裁も速やかに選出すべきだ、と。

 まあ、それが常識というものでしょう。
 では、もし、アメリカで財務長官のポストが空席のままであったら、どうでしょうか? というか、今、アメリカの財務長官を務めているのは誰でしょうか?

 ガイトナー氏?

 実はガイトナー氏は、1月26日に財務長官を辞めているのです。思い出しましたか?

 そうですよね、その後をルー氏が引き継ぐ予定なのですが‥彼はもう財務長官に就任したのでしょうか?

 答えは、ノー。財務長官のポストが空席のまま、そろそろ1か月間が過ぎようとしているのです。

 何と楽観的なアメリカと言うべきか!?


(写真は、財務長官が不在の財務省)

 それとも、今、アメリカには財務長官が頭を悩ませるべき問題が存在しないということなのか!?

 そんなことはないでしょ? 失業率は依然として高く、財政の崖の問題も先送りされたまま。オバマ大統領が先日行った一般教書演説でも、経済・財政問題に多くの時間が割かれていたのです。


 にも拘わらず‥

 一体、アメリカという国は何を考えているのでしょう?

 麻生さんがダンディーな格好で出席したG20の会合にも、当然米財務長官が出席することはなし。だって、不在なのですから。そうなると当然代理出席となるのですが、代理出席したのは国際問題担当のブレイナード次官。

 ちょっとレベルの低い話で恐縮ですが、総理まで経験した麻生大臣が2列目の席で写真に収まっているのに、何故代理出席の次官が前列で写真に収まるのか?

 そして、写真の前列にいて目立つのは、欧州勢とフランスから選出されたIMFの専務理事。

 IMFが財源問題を抱えながらも、どうにか資金繰りをつないでいるのは日本が大変な貢献をしているからなのです。でも、そうやって中央で写真に収まる厚かましさ。

 私、今回円安が起きているのも、本当の理由というのはアベノミクスにあるのではなく、それまでのユーロ危機によって引き起こされた超円高が、ユーロ危機の収束によって修正をされているところが非常に大きいと思うのです。

 つまり、欧州勢の日本非難は筋違いの面があり、だから、幾ら日本批判をしてみたところで、日本が為替介入をしていない事実を突き付けられると、それ以上は追及できなかった、と。

 しかし、それでも一応そうした欧州勢の不満を聞き入れる必要もあり、ああいう文章になっているのです。

 私、より深刻な問題は円安以外にあると思うのです。ユーロ危機は、今後どうなる見込みなのか? 本当に安心していいのか? そして、また米国に財政の崖の問題は、今後どうなるのか、と。

 むしろ、今回のG20の声明で円安を取り上げるのであれば、その前提として、昨年の夏、あれほど世界を揺るがしていたユーロ危機の問題が、どのような理由で現在は小康状態を保つことができているかについて総括をすべきだったのです。

 しかし、そうしたことに関しては、殆ど言及することなし!

 要するに、あれだけ世界に迷惑をかけておりながら、全く反省をしないのがヨーロッパ!

 そして、よりによって「中国経済の強じんさのおかげで、世界経済に対するテール・リスクは後退し‥」だなんてことを書く。

 テールリスクどころか、中国当局が環境問題に配慮することなく経済発展を優先するために、中国の人々の多くの生命と健康が重大な危機に晒されているのです。のみならず、悪影響は韓国や日本にも及んでいるのです。

 そんなことに対する配慮ことなど全くなし。それがG20。

 いずれにしても、米国は、今回の円安問題とかG20会合に対して全く関心を示していないと言っていいでしょう。

 何故それが分かるか?

 米財務省のサイトを訪れてみて下さい。

 米国の政府関係機関のサイトは、日本のそれよりもタイムリーに情報発信をするのが普通ですが‥そのアメリカの財務省のサイトが、今回のG20の声明どころかそれより先に発表されたG7の声明さえ掲載していないのです。

 何のためのG7であり、何のためのG20なのか?

 欧州と米国はもう少し自分たちの行動を反省すべきなのではないでしょうか?

 それにしても‥麻生さんと白川さんが仲よさそうに写真に収まっていたのが不思議です。意外と気が合うのでしょうか?

以上


02. 2013年2月18日 19:15:05 : xEBOc6ttRg
新政権の政策評価は時期尚早=S&P小川氏
2013年 02月 18日 17:46 JST  
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[東京 18日 ロイター] スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)のソブリンアナリスト、小川隆平氏は18日の電話会議で、安倍晋三政権が発足後に打ち出した政策を評価するには時期尚早とした上で、据え置きを決めた日本のソブリン格付けの判断について、前政権と政策が大きく変わったため、仕切り直しに近い考え方をしているとの認識を示した。

小川氏は、安倍政権がこれまでの政権と全く異なる財政政策と金融政策のコンビネーションを駆使した政策を打ち出しているとし「政策を評価するには早すぎる部分があるため、様子を見てみたいというのは正直なところだ」と述べた。また、過去1年のトラックレコードを踏まえると、高水準の財政赤字に歯止めが掛っていないことや政府債務の対実質国内総生産(GDP)比率が上昇するなど、日本の財政状況は悪化していると懸念を示しながらも、「必ずしも前と同じペースで格下げに向けて時計が動いているわけではない」と指摘した。

S&Pは18日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けを「AA─」に据え置いた。格付けの方向性を示すアウトルックは「ネガティブ」を継続。アウトルックは3分の1以上の確率で、2013年度中に格付けを引き下げる可能性があることを示している。

小川氏は、日本の2012年10─12月期実質GDP伸び率が3期連続のマイナスとなったことに触れ「12年度の成長率は1%に届かない可能性があるが、先行き13年度、14年度、15年度のマクロ経済がどのように動いていくのか、(格付け判断で)非常に大きなポイントになる」とみている。2014年と2015年に予定されている消費税率引き上げについて「増税分がすべて財政再建に寄与するとしても、それだけでは財政赤字の穴埋めに足りない」と指摘。マクロ経済への影響を踏まえると、財政再建にどの程度プラスに寄与するか不透明と述べた。
 


 

日本の格付けをAA─に据え置き、見通しはネガティブ=S&P 2013年2月18日
[東京 18日 ロイター] スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は18日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けを「AA─」に据え置いたと発表した。アウトルックはネガティブとしている。

S&Pでは、日本の格付けについて、高水準の対外純資産、豊かで多様化された経済、回復した金融システム、多額の財政赤字、少子高齢化、継続しているデフレなどの要因を反映。日本ソブリンの信用力が長期にわたる低下傾向から脱するには、安倍晋三新政権が発足後に打ち出した施策の成果が極めて重要になるとしている。

「ネガティブ」のアウトルックは、3分の1以上の確率で、2013年度中に日本の格付けを引き下げる可能性があることを示している。政府の政策が、デフレの終息や年度ベースの実質経済成長率の現行水準の維持に有効でないと判断した場合には、格下げとなる可能性がある。また、実質ベースの資金調達コストが上昇し、債務負担の状態がさらに悪化する見通しとなった場合にも、格下げの可能性がある。

一方、景気浮揚によって税収が増えるとともに、経済成長の拡大が見込めるような政策が実施されれば、今年中にも、日本の格付けが現在の水準にとどまる可能性がより確かなものになると指摘している。

(ロイターニュース 星 裕康)


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03. 2013年2月18日 20:42:27 : dpkt79AqMR
米欧が先に大緩和をやってきて、日本は今までそれを文句もいわず我慢してきた被害者であるから、少しぐらい円が安くなって何が悪い。というのが現内閣の言訳である。「アイツらもやってんだから俺だって」という論理はまったくお子様のそれである。悪い事は反面教師として、その反対を志向せねばならないのに、失敗を自ら進んでマネしようという根性には呆れるばかりである。しかし、実際日本の金融緩和傾向と大借金経済は今に始まった事ではないのである。米欧の今の有様を言訳にして、その傾向を強めようというのが本当のところである。

04. 2013年2月19日 00:57:43 : xEBOc6ttRg
欧州の「異教徒」キャメロン英首相の挑戦状に、EUはどう答えるのか

チャーチルが描いた英欧関係に帰る?

2013年2月19日(火)  熊谷 徹

 2013年は、欧州の歴史で分岐点になるだろう。年明け早々、英国のディビッド・キャメロン首相が欧州連合(EU)の未来を左右する演説を行ったからだ。彼は、「EUが改革されなければ、2017年に国民投票を行って、英国がEUに残留するべきか否かを国民に問う」という挑戦状を、欧州委員会に叩きつけた。

「民主主義の欠如」を批判

 私は前回のこのコラムで、「EUには民主主義的な要素が欠けており、その正当性(legitimacy)に大きな疑問が投げかけられている」と指摘した。この認識は、欧州に23年間住んでいる市民の1人として常々抱いてきた、皮膚感覚に基づいたものだ。キャメロンの演説も、正にこの点を厳しく突いている。

 日本のメディアは、1月23日にキャメロンが演説をした直後にはこれを報じたが、その後、この演説を詳しく論じた続報は見当たらない。今回はEU圏内で23年前から働いている者の視点で、この演説を分析してみたい。

 キャメロン演説に、歴史的な重要性を与えているものは、何か。それは2009年末に深刻化したユーロ危機を通じて指摘されてきたEU分裂の可能性を、欧州の大国の首相が初めて公式の場で確認したことだ。

 彼は「ユーロ危機のために、欧州は大きく変わりつつある」と指摘した上で、「EUが競争力を高め民主的性格の欠如を是正しなければ、英国人はEU脱退に向かうだろう」と断言したのである。

 ユーロ危機は、欧州大陸諸国と英国の関係を疎遠なものにした。私は、2009年以来ユーロ危機について執筆してきた中で、EUが2つに分かれつつあるという印象を、常々持ってきた。1つはユーロ圏に属する第1リーグ(17カ国)。もう1つはユーロ圏に属さない第2リーグ(10カ国)だ。

 過去3年間のユーロ危機に対する戦いで指導権を握ったのは、ドイツとフランスだった。頻繁に行われたEU首脳会議では、ユーロ救済が最重要の議題だった。このため、脚光を浴びるのは独メルケル首相や仏サルコジ大統領であり、ユーロ圏に属していない英国の首相ではなかった。キャメロンがリーダーシップを発揮する場は、皆無に等しかった。それどころか彼は、欧州大陸の国々が決めた改革案に「ノー」の票を投じて足を引っ張る「欧州の異教徒」と見なされる場面が多かった。EUで大きな存在感を持っていた前任のブレアー英首相に比べると、キャメロンの影は薄い。

 そのキャメロンがEU脱退につながりかねない国民投票の実施を宣言したことは、欧州大陸諸国と英国の間に横たわる溝を、決定的なものにした。

わずか4年間の猶予

 さらに注目すべきことは、キャメロンが「脅迫」ともとれるような厳しい条件をEUに突きつけたことだ。彼はEU残留に関する国民投票の時期を一方的に決め、欧州委員会に、改革のための時間として、わずか4年の時間しか与えなかった。これは不可能に近い要求である。EUの抜本的な改革には、EUの憲法とも言うべきリスボン条約の改正が必要だ。だが27カ国が加盟するEUで条約を改正するには、ふつう10年近くかかる。すべての国が基本路線に合意するだけでも、5年はかかるだろう。それを4年で行えというのは、かなり難しい注文だ。

欧州で3番目に大きい英国経済
各国の国内総生産(GDP)がEU全体のGDPに占める比率(2010年)

出所:欧州連合統計局
 欧州連合統計局によると、2010年の時点で英国の国内総生産(GDP)は、EUのGDPの14.1%を占める。独仏に次ぎEUで3番目の経済規模を持つ国が、これだけ困難な注文を行っているのだ。筆者は、ギリシャなどの債務問題がユーロ危機の第1章だったとすれば、EUの危機はこの演説によって第2章を迎えたと考えている。

 キャメロンの演説が大陸諸国に与えた衝撃がいかに大きかったかは、この演説の直後にブリュッセルを覆った氷のような沈黙に表われている。EU指導部は、この重大な演説に対して直ちに具体的な反論をすることはなかった。欧州委員会は、世界中で起きる重大な出来事に対して、ふつうホセ・マヌエル・バローゾ委員長の名前で声明を出す。だが今回バローゾは、EUの命運を左右しかねないこの演説に対して直ちに反撃に打って出ることはなかった。また欧州理事会のヘルマン・ファンロンパイ議長も、キャメロン演説に対して一矢を報いることはしなかった。

「単一市場だけでよい。干渉は不要」

 キャメロンは、EUに対して何を求めているのか。彼は、次の5つに要約している。

国際競争力の回復
柔軟性
欧州委員会に集中した権限の、加盟国への部分的な返還
民主的な説明責任の強化
ユーロ圏に加盟していない国に対する公正さ(フェアネス)
 この5つの要求は、密接にリンクしている。キャメロンは、ユーロ危機によって欧州委員会による規制がさらに増えて、各国政府と議会の裁量の余地が今以上に狭められることを危惧している。

 彼によると英国がEUに加盟している理由は、ひとえに「単一市場」の利益を享受できるからだ。EU域内では関税が廃止されている。加えて、金融サービス自由化指令によって、ある加盟国で銀行業や保険業を営む権利を取得すれば、他の加盟国でも営業できる。

 英国にとっては、EUが単一市場であれば十分で、他の点については干渉しないでほしいというのが本音だ。

 ユーロ危機を契機として、通貨同盟のメンバーである17カ国の間では、政治同盟を深化させる動きが強まっている。キャメロンは「ユーロ危機後のEUは、もはや以前のEUと似ても似つかないほど、違ったものになる」と指摘する。それは、将来ギリシャやイタリアが野放図な借金経営をしないように、政治統合を深めることだ。英国は正にこの点を最も恐れている。

政治統合の深化を拒否

 キャメロンは「EUが現在目指している政治的統合は、英国が我慢できる範囲を超える」と断言している。この発言は、英国と大陸諸国との亀裂を決定的にするものだ。ドイツやフランスは、「債務危機の再発を防ぎ、ユーロを防衛するには、これまで以上に政治的統合を強め、財政政策・経済政策を調和させなくてはならない」と考えている。これに対し英国は、政治統合を深めることに真っ向から反対している。

 つまりキャメロンは、欧州委員会やドイツ、フランスが目指す政治同盟の強化に、「ノー」と言ったのだ。

 キャメロンは「これまでEUが行ってきたリスボン条約の変更により、EUの力がどんどん強大になってきた。その一方、英国民は意見を言う権利を与えられてこなかった。英国民は、EUが不必要な規則や規制によって、自分たちの生活に干渉しつつあるという怒りを抱いている」と訴える。

 さらにキャメロンは、こう告発する。「欧州のすべてを調和させることは、不可能だ」。「例えば英国の医師の労働時間が、英国議会や医師たちの意向とは無関係に、ブリュッセルで決められるのはおかしい」。

 そしてブリュッセルで中心的に決める必要がない事柄については、権限を各国の議会に返すことによって、再び議会の力を強めるべきだと訴える。彼は、そのことがEUの民主性を高めると考えている。

 特に注目されるのは、キャメロンがユーロ圏に入っていないEUの10カ国もフェアに扱ってほしいとEUにアピールしていることだ。確かに、ユーロ危機をめぐる戦いでは、ユーロを導入しておらず、将来も導入する気のない英国にも、様々な「付随的被害」があった。

財政協定をめぐる造反

 その象徴が、キャメロンが演説で言及している「財政協定」と「銀行規制」だ。ユーロ圏加盟国に対する英国の造反が最初に露見したのは、2011年12月9日。欧州委員会がドイツ主導の下に、加盟国の財政規律を強化しようとした時のことだ。

 欧州委員会の目標は、EU憲法に相当するリスボン条約の改正によって、すべての加盟国に対し毎年の財政赤字を国内総生産(GDP)の0.5%未満、累積公共債務額をGDPの60%未満に抑える「債務ブレーキ」を導入させることだった。これらの基準を超えた国は、債務削減策を欧州委員会に提出して、その承認を受けなくてはならない。ドイツは既に2009年、GDPの0.35%を超える財政赤字を憲法違反とする「債務ブレーキ」を自発的に国内法として導入していた。欧州委員会は将来債務危機が再発するのを防ぐために、ドイツの姿勢を模範として、似たようなメカニズムをEU全体に導入しようとしたのだ。

 ところが英国はチェコとともにこの財政協定に反対した。キャメロンは、EUという国際機関が自国の議会の財政決定権を制限することを拒絶したのだ。リスボン条約の改正は不可能になり、残りの25カ国だけが新たな条約に調印しなくてはならなかった。欧州委員会とドイツにとっては一種の「敗北」であり、英国をますますEUの「異端児」と見なすようになった。

 さらにキャメロンは、「金融取引税(Financial Transaction Tax)に代表される、EU内で営業する銀行への規制強化にも強く反対している。

 ギリシャの債務危機が銀行危機に拡大しつつあった2011年の9月に、EUのバローゾ委員長は金融取引税に関する指令案を公表した。EUは、欧州だけでも、銀行救済に4兆6000億ユーロ(460兆円・1ユーロ=100円換算)の公金が投じられたと推定している。銀行取引税は、将来の銀行救済資金の一部とするべく、銀行間の株式売買やデリバティブ取引などに対して課税するもの。同委員長は「リーマン・ショック以降の銀行危機で公金によって救済された金融機関にも応分の負担を求める必要がある」と説明した。

 当時、ドイツなどでは、「銀行が黒字を出した場合は株主や役員、社員に還元される。しかし、巨額損失を抱え込んだ場合には、銀行を倒産させないために、市民全員が負担させられる」として、銀行から税金を徴収するべきだという声が高まっていた。欧州大陸では「銀行収益の私有化、損失の公共化」について批判が強い。

 金融サービス業界は、英国経済の重要な柱だ。金融取引税が導入されたら、欧州随一の金融センターであるシティの収益性は確実に悪化する。英国がオランダ、ルクセンブルクなどともに反対したために、欧州委員会はEU全域に金融取引税を導入することに失敗。EU財務大臣会議は、ドイツやフランスなど11カ国だけに金融取引税を導入する方針を今年1月に明らかにした。

EU予算案を一蹴

 今年2月8日に、EU加盟国の首脳はブリュッセルでEUの予算計画について合意した。この予算をめぐる議論でも、キャメロンが最も激しく欧州委員会の提案に反対した。バローゾ委員長は、去年11月に「2014年から2020年までのEU予算は、2007年から2013年の予算よりも5%多い約1兆450億ユーロ(104兆5000億円)にする」と提案していた。

 この提案に対し英国やドイツは、「節減努力が足りない」として激しく反対。このためバローゾは当初の提案よりも約850億ユーロ少ない、9600億ユーロの予算を受け入れざるを得なかった。これは、2007年から2013年の予算を3.5%下回るものだ。

 公的債務が欧州で問題化した2010年以降、英国政府は血のにじむような節減努力を続けてきた。2010年に英国の財政赤字がGDPに占める比率は、10.2%だった。これは当時アイルランドとギリシャに次いでEUで3番目に高い数字だった。同国は2015年までに公務員の数を約49万人減らし、すべての省庁のコストを最高40%削減するという、戦後最大の歳出削減策を実行している最中だ。その結果、2011年の財政赤字比率は7.8%に下がった。ただし、公的部門の人員削減によって、民間部門でも約50万人の雇用が失われると予想されている。

 EUは、加盟国の国民から税金を直接徴収することはできない。その財源は、加盟国が経済力に応じて納める「会費」である。EUの歳出の大半は、新興国の道路などインフラ改善や競争力向上のための援助金(約45%)と農業補助金(約42%)である。

 加盟国には、納める「会費」がEUから受け取る援助金よりも多い「歳出超過国」と、EUから受け取る援助金の方が会費よりも多い「歳入超過国」がある。払っている額と受取額の差が最も大きいのがドイツで、約90億ユーロ(900億円)。英国も支払額が受取額を約56億ユーロ上回っている。つまり英国はドイツやフランスと並んで、EUの財政に大きく貢献しているのだ。

 加盟国政府が国民に節減の痛みを強いているのに、各国からの「会費」を財源とするEUが予算を5%増やすのは、理不尽だ。ブリュッセルの「象牙の塔」に閉じこもっているバローゾら欧州委員会の高級官僚は、歳出削減のあおりで職を失う民草の状況に思いを馳せていないのであろう。キャメロンが去年11月のEU首脳会議で予算増額に猛反対し、会議を決裂させたのも、無理はない。

EU公務員は高給取り

 今欧州で市民の怒りの対象となっているのが、EU公務員の手取り給与の高さである。今年2月にドイツ連邦議会が行った審議で、EU公務員の中には手取り給与がメルケル首相よりも多い者が、少なくとも4400人いることが明らかになった。

 メルケルの手取りの月給と手当は、昨年1万2200ユーロ(122万円)だった(連邦議員としての給与は除く)。

 これに対し、EU公務員のうち、AD13という給与レベルに属し、子どもが2人おり、出身国の外で勤務している者の手取りの月給は、1万2500ユーロ(125万円)。最高の給与レベルであるAD16に属する公務員は、毎月1万6500ユーロ(165万円)を受け取っている。 手取り給与が高くなる理由は、EU公務員が潤沢な国外勤務手当を受け取ることにある。この手当は、勤務先の国で課税されない。さらに大学卒のEU公務員の初任給(基本給と国外勤務手当)でさえ、手取りで平均5490ユーロ(54万9000円)に達する。

 EUで働いていたある通訳は、現在、毎月40万円の年金を受け取っている。これは、欧州の大半の管理職ではないサラリーマンの年金水準を大幅に上回るものだ。

 EU予算のうち、職員の給与などの管理費は約6%にすぎない。それでも、キャメロンは「EUには税引前の年収が私よりも多い公務員が何百人もいる」と述べ、管理費の削減を強く要求している。ちなみにキャメロンの税引前の年収は、14万2500ポンド(2090万円、1ポンド=147円換算)である。

 公務員の給与の問題は、1兆ユーロ近いEU予算をめぐる議論の中では、瑣末な問題であり大海の一滴かもしれない。しかしこうした事実が、EUに対する欧州市民の反感を強め、欧州委員会を彼らにとって疎遠なものにしていることは、確かだ。

英国民の半分以上が脱退に賛成

 キャメロンは演説の中で「人々のEUに対する幻滅は、これまでになかったほど高まっている」と指摘する。彼は国内で、この圧力をひしひしと感じているはずだ。例えば英国では、EUからの脱退を目指すUKIP(英国の独立)という党が、2009年の欧州議会選挙で16.5%の得票率を記録し、保守党に次いで2番目に多い票を確保した。英国のオピ二アム・リサーチが去年11月に実施した世論調査によると、回答者の56%が「国民投票が行われたらEU脱退に票を投じる」と答えている。「EUは利益をもたらす」と答えた回答者は28%にすぎず、「弊害をもたらす」と答えた市民(45%)に大きく水をあけられている。

 当然のことながら、政治同盟の強化を目指す独仏からは、キャメロン演説に批判の声が上がった。ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外相は、「欧州のすべての事柄がブリュッセルで決められる必要はないというのは、事実だ。だが、EU統合によって自国にとって利益となる点は維持したいが、別の点は拒否するという選り好みは、許されない」と指摘。フランスのローラン・ファビウス外相も「国民投票は、英国にとっても危険だ。EUから脱退したら、英国の状況は悪化するだろう」と述べた。

 欧州議会のマルティン・シュルツ議長は「キャメロン演説は、保守党が自国民の歓心を買うためのものであり、欧州全体の現実を反映していない」と批判している。特にキャメロンが演説の中で、EUに譲渡しているどの権限を各国議会に戻すのかについて、具体的に言及しなかったことは、批判の的となっている。

脱退は双方に不利益をもたらす

 現状を見る限り、EUが今後4年間で英国民を満足させる改革を実行できるとは思えない。むしろ独仏は、債務危機の再発を防ぐために、英国が拒否する政治同盟の深化を実現させようとしている。

 英国はEUから脱退した場合、関税撤廃や金融サービスの営業の自由などの利益を失う。少なくとも、EUと交渉してこれらの権益を維持しなくてはならない。現在英国で適用されている金融サービス規制に関する法律の80%は、EU指令に基づく。英国はEUに加盟していることで、そうした指令案についての討議に参加して、その内容について影響を行使することができる。英国がEUから脱退すれば、この権利も失う。

 英国の経済界でも、キャメロン演説が今後4年間にわたって英国の将来について不確定性を増大させるという懸念が強まっている。特に英国に投資を考える米国企業は、同国がEUの域外となることを歓迎しないだろう。ドイツの商工会議所連合会でも、「多くのドイツ企業は、今後英国への投資をためらうだろう」という見方を明らかにしている。外国企業の投資が減れば、英国での雇用にも悪影響が出る。

日本企業にも影響

 キャメロン演説は、日本企業にも影響を及ぼす。現在英国に進出している日本企業は、在英日本商工会議所の会員だけでも、326社。英国は独仏に比べると言語の壁が低いため、日本企業の欧州での製造拠点として重要な役割を果たしている。独仏に比べると労働市場の規制が緩く、社会保障コストが高くないことも、魅力だ。日本企業の間では、コスト削減のために欧州大陸の支店や営業所を閉鎖して、英国に統合する動きも目立っていた。これまで、英国の日本企業はEUの一角に橋頭堡を持っていたことになるが、キャメロン演説によって英国が「蚊帳の外」になる可能性が浮上してきたのだ。

 客観的に見れば、英国にとってもEUにとっても、脱退がもたらす不利益は、利益を上回る。EUにとってGDPが14%減るのは、痛手だ。英国はEUで3番目に多く「会費」を払っている国であり、英国の脱退は財源が大きく減ることを意味する。さらに英国は、EUの中で米国政府と最も緊密な関係を持つ国だ。英国の脱退は、EUが米国政府との重要な外交チャンネルを失うことにつながる。キャメロン自身、演説の中で「私は孤立主義者ではない。英国がEUに留まることを望んでいる」と語っている。それにもかかわらず彼が英国の未来を4年後の国民投票に委ねることを決めたのは、EUに対する疎外感、民主主義の欠如への失望が、英国でいかに大きくなっているかを、浮き彫りにしている。

チャーチルも大陸に距離を置いた

 私はキャメロン演説を読んで、もう1人の英国人が67年前に行った演説を思い出した。ウィンストン・チャーチルが1946年9月19日にチューリヒで行った演説である。キャメロンは、今回チャーチルの演説を意識したに違いない。キャメロンは、欧州の未来を左右する彼の演説を、「This morning I want to talk about the future of Europe.今朝は、欧州の未来について話したいと思います)」という言葉で始めた。チャーチルの演説は、「I wish to speak to you today about the tragedy of Europe(今日は欧州の悲劇について話したいと思います)」という言葉で始まった。

 チャーチルのこの演説は、欧州の多くの都市に瓦礫の山が残り、米国とソ連との間で新たな戦争の脅威が影を落としていた時に行われたもの。彼が初めて「欧州合衆国(United States of Europe)」という概念を使った演説として歴史に残っている。つまり今日のEUの構造を予見した先駆的な演説だった。

 彼は、欧州に荒廃をもたらした惨禍を防ぐためには、フランスとドイツが中心となって、「欧州の家族」を形成し、「欧州合衆国」を築くべきだと訴えたのである。

 1946年に英国の首相が欧州に国際機関の設立を提唱し、その67年後に英国の首相がEUからの脱退につながる危険をはらんだ演説を行う――。この2つの演説を並べた時、多くの人が時代の激しい変化を感じるだろう。

 ただし、チャーチルの演説には興味深いディテールがある。彼は、「英国が欧州合衆国に入るべきだ」とは言っていないのだ。彼は「英国、英連邦、米国、ソ連は新しい欧州の友人となり、欧州が生きて輝く権利を擁護しなくてはならない」と述べたにすぎない。フランスとドイツに、「早くリーダーシップを取って共同体を作れ」と、いささか突き放した口ぶりで迫った。つまりチャーチルは、欧州合衆国に参加するかどうかについて明言していなかったのだ。

 第一次世界大戦、第二次世界大戦と2度にわたって大陸の泥沼に巻き込まれた英国としては、当面「外様」でいたいと思ったのかもしれない。英国がEUに加わったのは、チャーチル演説から27年もたった、1973年のことである。

 その意味で、キャメロン演説は40年以上にわたる欧州大陸との同居生活に終止符を打ち、「先祖返り」するための第一歩になるのかもしれない。

 ユーロ危機が引き金となったEUの急激な変化は、英国の挑戦状で思わぬ方向に進み始めた。欧州でビジネスを行う日本企業にとっても、2017年までの英国とEUの動向から、目が離せない。


熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト。1959年東京都生まれ。早稲田大学政経学部経済学科卒業後、日本放送協会(NHK)に入局、神戸放送局配属。87年特報部(国際部)に配属、89年ワシントン支局に配属。90年NHK退職後、ドイツ・ミュンヘン市に移住。ドイツ統一後の変化、欧州の安全保障問題、欧州経済通貨同盟などをテーマとして取材・執筆活動を行う。主な著書に『ドイツ病に学べ』、『びっくり先進国ドイツ』『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』『顔のない男―東ドイツ最強スパイの栄光と挫折』『観光コースでないベルリン―ヨーロッパ現代史の十字路』『あっぱれ技術大国ドイツ』『なぜメルケルは「転向」したのか――ドイツ原子力四〇年戦争』ほか多数。ホームページはこちら。ミクシィでも実名で日記を公開中。


05. 2013年2月19日 01:37:58 : xEBOc6ttRg
【第264回】 2013年2月19日 加藤 出 [東短リサーチ取締役]
欧米も学んだ「白川ドクトリン」
日銀の付利撤廃観測を検証する
 日銀は超過準備に対して0.1%の利息を付与している。白川方明総裁はその金利(付利)を引き下げるつもりはないことを記者会見で再三主張してきた。

 理由は第一に、短期金利がほとんどゼロ%になると、お金は市場でかえって流れなくなる(利息がほとんど得られないなら、市場で資金を運用する人は激減する)。第二に、このように短期金融市場の機能が停止した状態が長期化すると、将来、金融政策を正常化させたいときに大きなトラブルが起きる恐れがある(金融機関の現場に短期金融市場での資金調達・運用の経験者がいなくなれば、元に戻すのは大変である)。第三に、付利を下げても、銀行が超過準備を貸出に回す可能性は限りなく低い(現代の銀行は自己資本比率など様々な規制を受けており、優良な借り手がいなければ貸出を増加させることはできない)。

 そういった白川総裁の考え方、「白川ドクトリン」はFRBのバーナンキ議長やイングランド銀行のキング総裁に影響を与えてきた。バーナンキは付利を日銀よりも高い0.25%に維持し続けており、昨年2月の議会証言では、「(付利を下げても)金利への効果、信用拡張の効果は極めて小さい。他方、ゼロ金利に近づくことが、様々な金融機関に悪影響を与えることを我々は懸念している」と述べた。イングランド銀行も同様の考えを持っており、付利を0.5%で維持している。ECBだけは昨年、超過準備への付利をゼロ%に下げたが、事情が異なる。欧州では信用不安で短期金融市場が壊れており、「守るべき市場機能」がなくなっていたのである。

 白川総裁は付利の引き下げを否定しているが、しかし市場は「次の総裁はやるかもしれない」と警戒している。財務省が1月31日に実施した2年国債の入札(発行額2.7兆円)で、大手銀行が2兆円以上を落札したことが市場で話題になっている。入札の平均落札金利は0.07%だった。もし新総裁が早々に付利を下げれば、その国債は「お宝」になる。実際、2月に入って2年国債が市場で不足する現象が起こり、一時期、利回りは0.025%まで下がった。

 ただし、超過準備の付利をゼロ%にすると、銀行は超過準備を持つ動機がなくなり、日銀の資金供給に今よりも応じなくなってしまう。それは資産の買い入れを推し進めようとしている日銀にとって、技術的な困難となる。また、G7で確認されたように、円安誘導を目的とする政策は今は打ちにくい。付利の引き下げは「円安狙い」とみられるため、新総裁もしばらくはやりにくいのではないか。

 (東短リサーチ取締役 加藤 出)


【第48回】 2013年2月19日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー)
米金利との連動はいったん断裂
ドル円は90円台での上昇継続
 アベノミクスは5年に及んだ円高トレンドの潮目を変えた。安倍晋三首相は「これまでの次元を超えた金融緩和」を公約として掲げ、円安・株高を促してきた。昨年11月半ばに前政権が総選挙実施を表明して以降3カ月で、ドル円は79円台から94円台へ18%上昇した。ここ何年もドル円相場を読む最善のシグナルだった米国債2年物金利は今も0.25%前後にとどまり、80円以下のドル円水準を示唆している。なぜ円相場は金利シグナルからかけ離れて下落したのか。金利シグナルは死んだのか。

 過去の景気低迷局面には、1年後程度の景気や金融政策の予想を反映する中期金利で為替を読むことに有効性があった。最近は5年間も景気低迷が続き、金利シグナルが有効に働き続けた結果、市場参加者が逆にその関係を強く認識し、金利と為替の相関が自己実現的に強められた面がある。

 米国では、金融緩和が続く一方、景気は徐々に回復しつつある。やがて米2年物金利が上向き始めると、ドル円は投機やヘッジ関連の短期の売買主導で上昇する場面が多くなってくる。今年のドル円はこのパターンに沿って、上下動を繰り返しつつ90円へ向かうと、安倍相場以前には想定していた。

 しかし、現実には米2年物金利が底をはっている間にドル円だけ急上昇した。過去のパターンと何が異なるのか。第1に、日本のマクロ政策への期待がドル円相場に先行的に作用した。長年、日本のマクロ経済・政策が米国の景況・市況に受動的、遅行的に反応するのみだったことに目が慣らされていた。


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 第2に、安倍相場に煽られて、長年の円高基調に沿って積み上がった為替ヘッジなどの円買いポジションの修正が予想外に早く始まった。過去には、日本の機関投資家の為替ヘッジの巻き戻しが、米国の景気回復と利上げにかなり遅れて動くパターンであった。しかし今回、外国人や年金に委託された為替ヘッジ専門業者の円売りなど、旧来と異なる取引フローが先行した。

 投機主導の円売り相場なら、昨年2、3月のように、彼ら自身の買い戻しで早々に揺り戻され、金利シグナルからそう離れられない。しかし、円高基調の変化に見合った中長期ポジションの修正は、円安が進むほどあぶり出され、しかもその修正の揺り戻しは簡単には起こらない。

 そのためドル円相場は押し目もないまま加速した。3月決算期末前には95円かそれ以上でも過熱感は出にくいと思われる。金利シグナルから上方に乖離した状況が続き、米2年物金利への関心は薄れ、自己実現的な相場形成力もいったん損なわれよう。ただし為替相場もやがてトレンド転換に伴うポジション調整が一巡し、ファンダメンタルズ回帰の場面に移る。

 そこでようやく円安相場の時間調整もなされようが、米景気回復が続くとのメインシナリオでは、安倍政権の円安志向は基調的に追い風を受けられる。ドル円は今年、安倍相場以前の金利シグナルとの随伴軌道から離れたまま、90円台での上昇基調を維持するだろう。

(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)


 


【第76回】 2013年2月19日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役社長]
G20とアベノミクスと次期日銀総裁
 モスクワで開かれていた20ヵ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)は、2月16日夜に共同声明を採択して閉幕した。各紙は軒並み一面のトップで報じたが、日経新聞(2月17日朝刊)の見出しによれば、「アベノミクス薄氷の支持」という結果となったようだ。ところで、G20は何故、これほどまでに注目されるのだろうか。

グローバリゼーションが
G20を押し上げた

 世界の主要国の集まりとしては、1976年に発足したG7がよく知られているが、G7は首脳会議(サミット)と財務大臣・中央銀行総裁会議から構成されていた。ところが、グローバリゼーションの進展に伴い、G7だけでは激変する世界の金融・経済情勢に対応できなくなってきたので、1999年より、G7にロシアや新興国11ヵ国が加わり、G20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されるようになった。

 この会議には、国際通貨基金や世界銀行等、関係する主な国際機関も参加している。アメリカのサブプライムローン問題(2007年)を契機とした世界金融危機の高まりを受けて、2008年からはG20の首脳会議も開かれるようになった。そして、2009年、アメリカで開催されたG20は、「G20を国際経済協力の第1の協議体」とすることで合意した。即ち、G20は、国際金融・経済に係る実際的な「世界の司令塔」となったのである。

 ちなみに、世界のGDPに占めるG20のウェイトは約9割、貿易総額に占めるG20のウェイトは約8割と、圧倒的なシェアを占めている。少し旧聞に属するが、例えばエジプトのアラブの春(2011年)は、原因も結果も共にワシントン発であったと揶揄されることがしばしばある。

 その意味は、アメリカの金融緩和政策(QE1・2)が、エジプトの食料価格を押し上げ、市民がフェイスブック等、アメリカ初のソーシャルネットワークを介して集まり、政権を打破したというところにある。事の真偽はともかく、このようなグローバリゼーションにおける世界経済の一体化という現象を直視すれば、G20が世界の司令塔となることは、必然的な流れであったと理解されよう。

 ところで、今回のモスクワG20共同声明のポイントは、概ね以下の通りである。


 要するに、新興国の円安懸念等を反映して、G20の共同声明には「通貨の競争的な切り下げを回避する」と明記されたのである。

次期日銀総裁の条件

 このようなG20財務大臣・中央銀行総裁会議の位置付けや、G20共同声明の内容を吟味・勘案すると、次期日銀総裁選びの重要性がよくわかるのではないか。

 何よりもまず、次期総裁は、1月22日に公表された「物価上昇率目標2%を実現すべく、金融緩和を続ける」という政府・日銀の共同声明を実践しなければならないが、同時にその目的は、「デフレ脱却という国内問題の解決にあり、円安誘導ではない」と国際的に説明(公約)してしまったこととの整合性を取らなければならないのである。このような難しい職務をこなすためには、次期総裁にいくつかの条件(資質)が課せられるのは、けだし当然であろう。

 第1に、国際金融や現代の金融政策について、深い専門的な知見を有していることが必要である。従来の金融政策は、金利を変動させることがその眼目であったが、ゼロ金利が広く世界に蔓延した現状では、量的緩和が金融政策の中心に据えられつつある。しかし、量的緩和が、どのような経路を経て、どのように実体経済に影響を及ぼすかについては、未だ確たる定説はなく、各国とも手探り状態で、未踏の領域に踏み込みつつある現状である。白川総裁が、G20等、国際金融の場で高い評価を勝ち得たのは、その深い専門的な知見故であったと思われる。

 第2に、G20を前提とすれば、各国の金融界首脳と、丁々発止と渉り合える語学力が必須であろう。政治任命されるわが国の財務大臣が、常に語学には堪能であるとは限らないとすれば、なおさらではないか。

 第3に、中央銀行は決して小さな組織ではない。経営者として組織をきちんと掌握できるバランスの取れた経営能力も、また必要であると考える。「バランスの取れた」という意味は、優れた経営者と同様に、市場と真正面から向き合って、堂々と対話ができるIR面での能力を兼ね備えているということである。

 日銀総裁は、国会同意人事である。一部の政党は、官僚出身者であれば同意できないと主張しているが、理解に苦しむところである。国家にとって枢要なポストは、その人の能力・資質によって選ぶべきだとするのが人類普遍の考え方である。例え出身が官僚であっても、資質や能力が十分であれば、どこに問題があると言うのだろうか。

 このような「官僚たたき」は、国民におもねる悪しきポピュリズムそのものではないか。そもそも官僚は、国家・国民の公僕である。官僚をたたいて、優れた人材が官界に集まらなくなれば、それはとりもなおさず、国家・国民の損失に他ならない。官僚をたたいて目先の溜飲を下げるような愚は、決して犯すべきではないだろう。

円安は決してバラ色一色ではない

 わが国は、アベノミクスによる円安株高・景況感の改善を謳歌している。それは、率直にいいことだと考える。円安の恩恵は、海外展開を行っている企業に広く浸透し始めた。

 例えば、日経の調査によると(2月8日時点、1373社の決算集計)、為替差損益が前年同期より約5300億円改善し、自己資本も商社を先頭に、(2012年12月末で)約187兆円と、1年前から約13兆円(7%)増加した。これはリーマンショック前の2008年6月末の約186兆円を上回る水準である(日経新聞2月11日朝刊)。

 しかし、円安には、G20の新興国の懸念以外にも、負の側面があることを見逃してはならない。何事によらず、プラス面とマイナス面があるのである。

 財務省が1月30日に発表した2012年の貿易統計(通関ベース。輸出確報、輸入速報)によると、貿易収支は2年連続の赤字となり、その赤字幅は6兆9307億円と、第2次オイルショック時(1980年)の2兆6129億円を大幅に上回る過去最大を記録した。輸出は63兆7436億円(対前年−2.8%)、輸入が70兆6743億円(対前年+3.8%)である。

 輸入の内訳を見ると、構成比で34.1%を占める原油や液化天然ガス等の鉱物性燃料が、対前年10.4%の伸びを占め、鉱物性燃料の増減寄与度だけで、輸入全体の伸び率3.8%の実に3.3%を占めているのである。しかも、今年に入って、原油価格は上昇している。産油国の政情不安を材料に、ヘッジファンドなどが先物市場で原油を買い増しているためだ(日経新聞2月16日朝刊)。

 この傾向に円安を加味すればどうなるか。その典型は、ガソリン価格等の上昇だろう。資源エネルギー庁が2月14日に公表した石油製品価格調査の結果によると、レギュラーガソリンが153.8円/リットルと前週に比べて+2.1円(10週間連続の値上がり)、軽油が133.2円/リットルと+1.9円(10週間連続の値上がり)、灯油が101.2円/リットルと+1.0円(11週間連続の値上がり)、何れも値上がりが続いている。即ち、鉱物性燃料の輸入が不可欠なわが国の貿易構造を考えれば、円安は所得の海外流出を増やすばかりではなく、先ず家計負担を増やす可能性が高いと思われる。

 貿易赤字がこのまま拡大し、仮にも国際収支が赤字に転じれば、国際収支の黒字によって最終的な担保がなされているわが国の財政赤字にも激変が生じるのではないか。円安と貿易赤字や家計負担の問題からも、決して目を背ける訳にはいかないのだ。

(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)


06. 2013年2月19日 08:27:14 : xEBOc6ttRg
2013年 2月 19日 07:37 JST
安倍首相、インフレ目標達成に向け日銀法改正に言及

【東京】安倍晋三首相は18日の衆議院予算委員会で、インフレ目標の2%を達成できなければ「日銀法改正も進めなければならない」と発言した。改正内容については触れなかったが、インフレ目標の明文化や、政府や国会に日銀総裁を交代させる権限を与えるといった内容が含まれるとみられる。

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Reuters
安倍首相(18日)

 自民党が圧勝した昨年の衆議院選挙で安倍氏は、今まで以上に積極的なデフレ脱却を目指す政府と日銀が同調できなければ日銀法改正を検討すると何度も発言し、遠回しに圧力をかけていた。選挙で勝利した後は、日銀は2%のインフレ目標を達成するためにどのような措置をとるか決定する必要があると述べている。

 新たなインフレ目標達成に向けて日銀は何ら具体的な行動をとっていないのではないかとの野党の質問に対し、安倍首相は自身の見方を表明することは控えたが、「市場から国債を買うということもあれば、外債を買うという考え方もある。株式市場に影響を与えるという考え方もある。デフレ脱却に資する手段をとっていただきたい」と述べた。

 エコノミストの間では1月のコア消費者物価指数は前年比マイナスになることが予想されている。だが安倍首相は、昨年12月に自民党が政権を奪回して以来、インフレ期待が強まり、急速な円安が進み、株式市場は上昇が続いていることを引き合いに、20年間日本経済を疲弊させたデフレからの脱却を目指す政策の効果は出てきているとの認識を示した。

 こうしたトレンドは民主党政権時代から始まっていたとの主張は退け、国民はそうみていないと反論した上で、様々な経済指標が1月に上向き始め、消費者態度指数も2004年以来最大の上昇幅となったことを指摘、重要な点は、国民に政府の意図と日銀の政策変更が明確に示されているかどうかという点だと述べた。

 また、民主党政権下でも日銀のインフレ目標はあったが、自民党政権の目標はそれを大きく上回る2%であり、できるだけ早期に達成することを日銀に求めている点で根本的に異なるとした。

 2%のインフレ目標については、それが上限との認識を示し、2%のゴールに達するまで金融緩和を続けていくが、その後は2%近傍にインフレを維持するということだと説明した。

 3月19日には白川方明日銀総裁と2人の副総裁が退任する予定で、今回の発言は日銀のトップ交代を前に行われた。

 後任の日銀総裁はまだ指名されていないが、政府筋と自民党筋の先週の発言によれば、日銀の元副総裁2人の名前が有力候補として浮上している。元財務次官の武藤敏郎氏と、非伝統的な金融緩和政策推進派の学者、岩田一政氏だ。

 この日の記者会見で菅義偉官房長官は正副総裁人事案を2月末までに提示する方針を明らかにした。


07. 2013年2月19日 08:30:10 : xEBOc6ttRg
 

為替レートは政策目標でない、インフレの下方リスク=ECB総裁

[ブリュッセル 18日 ロイター] ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は18日、欧州議会で証言し、為替レートは政策目標ではないものの、インフレへの「下方リスク」との認識を示し、インフレ見通しへの影響を見極める必要があると述べた。

ユーロは今月に入り、対ドルで1年3カ月ぶり高値に上昇、ECBの政策運営を困難にしており、一部ではECBが追加措置を余儀なくされるとの見方も出ている。

ドラギ総裁は「為替レートは政策目標ではないが、成長と物価安定にとり重要」とし、ユーロ高がインフレ率を押し下げる可能性があると指摘した。

「インフレ率は目先、2%を下回る」との見方を示した上で、「為替相場がわれわれのインフレ見通しに影響を与えたかどうか判断する必要がある。なぜならこのような問題に対処するのは、常に物価安定の観点に基づくからだ」と述べた。

また「為替レートはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映すべき」とし、ユーロの名目・実質レートは「おおむね長期平均に一致」しているとの認識を示した。

週末にモスクワで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議をめぐっては、G20声明は期待外れではないとし、「発言に関し、極めて厳格な規律を関係各国に求めた」ことを明らかにした。

ドラギ総裁は「為替動向の大半は、景気浮揚を目指した国内マクロ経済政策の結果であり、明確な目標を設けたことに起因するものではない」とも述べ、「通貨安競争の議論はかなり行き過ぎ」との見解を示した。

ユーロ圏経済については、2013年の早い時期は景気が弱含み、その後年内に極めて緩やかな回復を見込むとしたが、「経済見通しをめぐるリスクは依然下向き」とした。ただ、ユーロ高が成長へのリスクとの見方は示さなかった。

一方、インフレに対するリスクはおおむね均衡しているとしたものの、ユーロ高が物価安定に対する下方リスクの1つである点には言及した。

またECBの金融政策は「緩和的」と繰り返し表明し、ユーロ圏全体への金融政策の波及を強化することが、ECBの優先課題と強調した。

EU残留希望は英有権者のわずか3割超、半数は離脱望む=世論調査
欧州外為市場・終盤=ユーロ/ドルが下落、ECB総裁の証言が重し
新政権の政策評価は時期尚早=S&P小川氏

 


ドラギECB総裁の議会証言要旨
2013年 02月 19日 04:04 JST

[ブリュッセル 18日 ロイター] ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は18日、欧州議会で証言を行った。総裁の証言原稿の要旨と質疑に対する応答は以下の通り。

<為替>

為替レートは政策目標ではないが、成長と物価安定にとり重要だ。

ユーロ高は(インフレ率下振れの)リスクとなる。

為替レートはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映すべきと常に述べている。

為替動向の大半は、景気浮揚を目指した国内マクロ経済政策の結果であり、明確な目標を設けたことに起因するものではない。そのため通貨安競争の議論は、かなり行き過ぎと考えている。

ユーロの名目・実質レートはおおむね長期平均に一致している。

為替相場がわれわれのインフレ見通しに影響を与えたかどうか判断する必要がある。なぜならこのような問題に対処するのは、常に物価安定の観点に基づくからだ。

<G20に関するコメント>

モスクワ20カ国・地域(G20)会合の声明は期待外れではない。私は発言に関し、極めて厳格な規律を関係各国に求めた。

<インフレ>

全体のインフレ圧力は、政策に関わる期間において引き続き抑制される。

<財政改革>

ここ数年以上に安定した金融環境の下で、2013年を迎えた。これは、各国政府や議会の協調した各種改革や、欧州各機関の決定的な行動を通じ達成されている。

ただ、欧州が確実に、危機から浮上し続けるためには相当な追加的努力が必要だ。

<経済見通し>

2013年の早い時期は景気が弱含み、その後は年内に極めて緩やかに回復すると予想している。世界的な需要回復、ECBの緩和的な政策スタンス、ユーロ圏全体における金融市場の信頼感改善が消費や投資決定に効果をもたらし、回復を支援するだろう。

<銀行>

期間3年流動性供給オペ(LTRO)第1弾の早期返済額が予想を上回ったことも信頼感改善の兆候だ。銀行の資金調達環境をめぐる不透明感が1年前と比較して低下していることを示している。

<銀行の負債圧縮>

仮に銀行が適切な負債圧縮をしなければ、われわれが現在苦労している信用(供給)を行うことができなくなるだろう。それが第1の政策課題で、各種の信用指標が上向くことを望んでいる。

負債圧縮の道のりがまだ長い国では、信用が経済に行き渡るには一段の時間が必要になるとみられる。借り手のバランスシート上に負債が残っており、清算される必要があるためだ。

<政策の影響>

ECBは低金利および潤沢な流動性が長期間続くことによる問題を認識している。

<アイルランドによる約束手形の長期債への交換>

アイルランド政府とアイルランド中銀の間の取引であり、ECB理事会として判断を下す必要はなかった。ただ、ユーロ圏加盟国の金融情勢に関する年次評価で理事会としての見解を示す方針だ。

判断を示すことはしたくないが、この件をめぐる一部の動向は前向きだ。今後極めて重要になるのは、アイルランド中銀が当該債券をどのように処理するかをめぐる政策だ。

<アイルランドの支援プログラム脱却>

アイルランドは支援プログラムのほぼ全ての側面において目覚しい成功に向かって軌道に乗っており、これまでの成果は非常に有意義だ。金融セクターでさらなる行動が必要な部分もあるが、全般的に見て実に立派な取り組みを行ってきている。支援プログラムは今年末に期限が切れるはずで、その際に判断される。

<キプロス>

覚書案へのキプロス政府のコミットメントを歓迎し、合意された改革の第一弾を当局が実施し始めたことを評価している。キプロスの大統領選後は、プログラムで合意することが非常に重要だ。ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)の声明では、プログラムが行われるとしており、選挙後はこのプラグラムを政府が責任を持って進めていくことが絶対的に重要だ。このプログラムの持続可能性を確保する方策を見つける必要もある。

今後の協議に関して予断を持ちたくない。この債務の持続可能性がどのように達成されるのかについて現時点で触れたくない。ただ、この問題は両面性を帯びていることを認識する必要がある。一方でキプロスが持続可能で、金融の安定性を喪失しないよう確実にしたい。

また、金融部門に対する政府の監督を強化する必要がある。融資の提供や情報公開を含む流動性規制は修正され、調整プログラムの最終版も反資金洗浄・脱税の観点で監視を強化することも盛り込まれるだろう。

<金融情勢改善>

昨年の今頃は、ソブリン債発行の90%以上が中核国によるものだった。現在は周辺国が約60%を占めている。

投資家の幅が大きく広がり、政府や銀行、非金融大手が発行する債券を購入するのは国内投資家だけではなくなっている。

<ECBによる英中銀式の融資向け資金供給>

条件に注意しなければならない。仮に金融機関に誤った借り手へ融資させ、借り手が破産したり返済しなかったりすれば、(金融機関の)決定にわれわれが責任を負う必要がある。

ユーロ圏は17カ国を抱える。こうしたプログラムを監視する場合、各金融機関が実際に融資向けに資金を(ECBから)借り入れているか確認する必要があり、1国で行う以上に相当複雑なものだ。

<通貨ユーロ>

各国が個別の通貨を採用していたとしたら、2008年の危機の際にはどうなっていただろうか?実際よりもはるかに不安定な状況になっていただろうというのがわれわれの答えだ。

ユーロ加盟は完全に、個別の国家・政府の決定だ。

通貨ユーロには多くの利点がある。ユーロ導入により、それまで存在しなかった米国に匹敵する規模の金融市場が誕生した。また、それまで多くの国で見られなかった物価安定も実現した。

<欧州システミックリスク理事会(ESRB)理事長として、銀行の資金繰り>

ESRBは、金融機関がそれぞれの資金調達計画を自国の監督当局に提出し、欧州銀行監督機構(EBA)がそれらの計画の審査をEUレベルでとりまとめることを勧告する。銀行セクターが実際に資金調達目標を達成できるかどうかについて、各国およびEUの双方のレベルで監督当局が総合的に把握できるようにすることが主な目的だ。
 
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為替、インフレへの下方リスク
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EUが対北制裁強化、取引禁止を追加
産業競争力会議、具体化へ集中議論
ヒッチコックの「鳥」現実に、米都市で


08. 2013年2月19日 10:43:02 : xEBOc6ttRg
緩和手段として外債購入する気ない=麻生財務相
2013年 02月 19日 09:31 J 
イスラエル首相「北朝鮮の核実験が教訓」、イラン攻撃も示唆
米フィスカーの資本提携先、中国・浙江吉利が有力=関係筋
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[東京 19日 ロイター] 麻生太郎財務相は19日の閣議後会見で、金融緩和手段としての外債購入について「考えはない」と否定した。日銀総裁人事ではあらためて出身母体で決める考えはないとの認識を示した。

安倍晋三首相は18日午前の参議院予算委員会でデフレ脱却に向けた金融緩和の手段に関して、外債を買うという考え方もあるとの見方を示していた。16日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議で日本の金融政策を名指しで批判することは回避されたが、日銀の外債購入は事実上の為替介入と受け止められ、「通貨の競争的な切り下げは回避する」としたG20声明に反しかねない。麻生財務相は「外債購入する気はない」と否定した。また、日銀法改正については「当面、考えていない」と語った。

一方、3月19日に退任する白川方明日銀総裁の後継人事に関してはあらためて「出身母体で決める考えはない」と述べ、財務省OBや日銀OBも排除しない考えを示した。総裁人事をめぐって安倍首相と協議する考えを問われると「わからない」と述べるにとどめた。

(ロイターニュース 吉川 裕子)
 

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円は対ドルで93円台後半、日銀の緩和強化期待で円売り圧力根強い
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  2月19日(ブルームバーグ):日本時間朝の外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=93円台後半で推移。市場の焦点が日本銀行の次期総裁人事に移行する中、金融緩和強化への期待感から円売り圧力が根強く残っている。
午前8時39分現在のドル・円相場は93円92銭付近で推移。前日の取引では、前週末にモスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を無難に通過し、一時94円22銭と、4営業日ぶりの水準まで円安が進んだ。プレジデンツデーの祝日で米金融市場が休場だった海外時間に93円76銭まで円が値を戻す場面も見られたが円高の進行は限定的となっている。
コモンウェルス銀行の為替ストラテジスト、ジョゼフ・カパーソ氏(シドニー在勤)は「日銀の次期総裁がどんな人物になろうと、市場は一段の緩和に備えている」と指摘。さらに、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)面では、日本の経常収支が赤字に転落していることが主要な円の変動要因になってきていると付け加えた。
ユーロ・円相場は前日の海外時間に一時1ユーロ=125円90銭と、2営業日ぶりの円安値を付け、125円台前半で日本時間朝の取引を迎えている。
菅義偉官房長官は18日の記者会見で、白川方明日銀総裁の後任人事を月内に国会に提示したい意向を明らかにした。山口広秀、西村清彦両副総裁の後任と併せて提示し、国会の同意を得た上で両副総裁の任期が終わる3月19日までに新体制を整える方針。
そうした中、日銀はこの日、1月の金融政策決定会合の議事要旨を発表する。同会合では、消費者物価指数の上昇率目標を前年比2%で設定することを決めている。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 三浦和美 kmiura1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/19 08:40 JST


09. 2013年2月19日 12:42:29 : xEBOc6ttRg
日銀会合、2%物価目標で応酬 反対派「無理がある」
1月21〜22日の決定会合議事要旨
2013/2/19 11:13
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 日銀は19日、2%の物価上昇率目標の導入を決めた1月21〜22日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。複数の政策委員が現状の物価水準を大きく上回る2%を目指すことに「無理がある」と否定的な姿勢を示し、物価目標を巡る応酬があったことが分かった。追加の金融緩和策として、日銀が買う国債の年限を5年まで延長する議論も交わされた。



金融政策決定会合に臨む白川日銀総裁(中央)ら(1月22日、日銀本店)=代表撮影
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 1月会合では、日銀がこれまで採用してきた「物価安定のめど」を「物価安定の目標」に改め、「当面1%」としていた目標水準を「2%」に変更した。採決では9人の委員のうち、佐藤健裕氏と木内登英氏の2人が反対していた。

 佐藤氏と木内氏は、2%がこれまでの物価水準を大きく上回っており、目標として掲げるだけでは「期待形成に働きかける力はさほど強まらない」と指摘。いきなり2%を目指して政策運営することは「無理がある」としたうえで、目標達成の不確実性が高いことから「金融政策の信認を毀損する」などと反対理由を述べた。

 これに対し、複数の委員は、政府が競争力や成長力の強化に積極的な姿勢を示した点を踏まえ、「政府と日銀が一体となって取り組む姿勢を明確にすることにより、企業や家計の期待形成に働きかける効果も期待できる」と反論。大方の委員が2%を目標とすることが望ましいとの認識を示した。「他の先進国が目指す物価上昇率である2%にそろえることが、長い目でみた通貨価値のバランスにも資する」との意見もあった。

 2%目標の実現に向けた日銀と政府の政策連携について、白川方明総裁は、金融緩和の効果を発揮するうえで「政府の役割は重要」と述べた。1人の委員は2%の目標達成に向けて「政府と責任を分かち合うことが明示されなければ、企業や家計が期待形成に働きかける効果は限定的」との見方を示した。

 一方、財務省からの出席者は、日銀が「自らの責任において」物価目標の早期実現の決意を示したと評価。物価目標の実現にむけた政府と日銀の間の責任の所在で、認識のズレも見られた。

 また、日銀が資産買い入れ基金で買い入れる長期国債の償還までの残存期間について、複数の委員が「5年程度まで延長することも考えられる」と述べたことが分かった。現在は残存期間が1〜3年の長期国債を買い入れ対象にしている。

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10. 2013年2月19日 13:01:22 : xEBOc6ttRg
[FT]ECBの緩和策が生んだユーロ圏の「分裂」
2013/2/19 7:00日本経済新聞 電子版
(2013年2月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 ユーロ圏主要国の企業が金融緩和策によって記録的な低金利で資金を調達している一方、周辺国の企業は今なお市場からの資金調達に苦しんでいることが、最近のデータで明らかになった。

■主要国は好循環、周辺国では貸し渋り


ECBの政策はユーロ圏主要国の企業に恩恵をもたらした(ECBのドラギ総裁)=ロイター
 英バークレイズが欧州中央銀行(ECB)のデータを分析したところ、ユーロ圏主要国に本拠を置く企業は、ECBが昨年6月に表明した「ユーロを守るためにあらゆる措置を講じる」という公約の最大の受益者となってきた。ECBの方針を受けてフランス、ドイツ、ベルギー、オランダの企業は昨年後半に市場から破格の低金利で、純増で370億ユーロ(約4兆6400億円)の資金を調達できた。

 一方、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなど周辺国の企業では、市場からの調達額が120億ユーロほどしか増えていない。市場調達ができたのはテレコム・イタリアやスペインの通信大手テレフォニカといった大企業だけだった。この間、周辺国の企業に対する銀行融資は650億ユーロの純減となった。金融危機で打撃を受けた銀行が財務体質を強化するため、貸し出しを絞ったためだ。銀行融資はユーロ圏主要国でも減少したが、資本市場からの調達がそれを補って余りあるほど増加した。主要国では市場からの資金調達が容易になって企業の経営状況が改善し、さらに投資が促される好循環が生まれている。

 バークレイズのチーフ国際エコノミスト、ジュリアン・キャロウ氏は「(ECBの政策によって)ドイツとフランスの企業は不相応な恩恵を受けているようだ」と語る。そのうえで「(ユーロ圏の)分裂を示唆する証拠はまだ消えない」と話す。

 例えば、スペインでは昨年下半期に銀行融資が430億ユーロ減少し、市場調達の純増もわずか15億ユーロにとどまった。これに対してドイツ企業では、銀行融資の減少幅もスペインより小さかった。

■市場の格差続けば危機は解決せず

 こうしたデータはユーロ圏の「金融市場の分裂」、つまり2年にわたってこの経済圏を悩ませてきた金融環境の激しい格差への懸念を強めるだろう。

 ECBのデータからは、中小企業の調達コストにも格差が生じていることがうかがえる。ドイツとフランスの中規模企業の借入金利は3.7%だが、スペインやイタリアでは5.2〜5.6%の水準にある。オールド・ミューチュアルのファンドマネジャー、スチュワート・カウリー氏は「主要国と周辺国の格差が続くかぎり、根本的にはユーロ圏の問題は終わらない」と指摘する。

 2012年第4四半期のユーロ圏経済の縮小幅は金融危機以来で最大となった。ようやく始まった景気回復が早くも危ういのではないかとの不安が高まっている。

By Michael Stothard and Ralph Atkins


 

サヨナラ、円とウォン 「通貨戦争」敗者の筆頭
2013/2/14 7:00日本経済新聞 電子版

(2013年2月9日 Forbes.com)


市場は想定よりも早く、安倍首相主導の通貨膨張が始まるとみている(辞職表明の記者会見を終え、会場を立ち去る日銀の白川総裁。2月5日、日銀本店) 
 通貨戦争の可能性が取り沙汰される中、筆者を含む専門家からは敗者となりそうな国の名を挙げている。多くの場合、リストの筆頭にくるのは、日本円と韓国ウォンだ。だが勝者となりそうな国についてはあまり聞かれない。通貨市場は突き詰めればゼロサムゲームであり、下落する通貨があれば、必ず上昇する通貨もある。私はシンガポール、次いでタイとマレーシアが相対的な勝者となるとみている。またオーストラリア、中国、カナダ、スイス、ノルウェーなど通貨市場でセーフヘブン(安全な投資先)と思われがちな国々はそれほど期待できないだろう。

 金も通貨であり、通貨戦争の最終的な勝者となるという見方もある。筆者自身、金には強気であり、投資ポートフォリオを組む際には必ず中核の要素として組み込むべきだと考えている。とはいえ、金については過去の記事で書いてきたので、今回は通貨に的を絞る。

■通貨戦争は始まったばかり

 筆者は1月初旬、『円よ、サヨナラ』と題したニュースレターに以下のように書いた。

 「日本円は暴落する可能性がある。1ドル=200円、300円もありうるかもしれない。(中略)だが日本で金融危機が起これば、影響は国内にとどまらない。なんといっても日本は世界第3位の経済大国で、世界GDP(国内総生産)の8.3%を占める。日本の金融機関はアジアをはじめ世界中で多くの企業に資金を提供している。さらに日本は高性能のエレクトロニクス製品、自動車、生産財の分野で、主要輸出国として韓国や台湾と競争関係にある。

 輸出がGDPの52%を占める韓国への影響を考えてみよう。(中略)韓国をはじめ諸外国は、自国の輸出産業が日本のライバルに対して完全に競争力を失っていく事態を放置しないだろう。輸出産業を支援するため、通貨切り下げ競争に参戦するはずだ」

 この記事が出て以降、日本円は暴落した。2月に入れば円安も一服すると考えていたが、そうなってはいない。日銀の白川方明総裁が任期を3週間残して3月19日に辞任する意向を表明したのが原因だ。安倍晋三首相は自らの主導するインフレ政策に合致した新総裁を任命できるわけだ。要するに、市場が想定していたより早く通貨膨張が始まるということであり、この結果円安が一段と進んだ。

 同じくらい重要なのが、円安に対する反応だ。多くの国が懸念を表明しており、ユーロ高を受けた欧州を中心に懸念は強まりつつある。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、政策立案者の間でユーロ高によってインフレが抑制され、景気回復の妨げとなるとの懸念が高まっていることを示唆した。ユーロ上昇については特にフランスが声高に批判している。

 根本的な問題は単純だ。先進諸国は過大な債務を抱えており、削減するにはインフレを起こし、通貨の価値(ひいては債務の価値)を下落させなければならない。経済成長や歳出削減では債務を圧縮することは不可能だろう。

■勝者にならない通貨

 通貨戦争の負け組は比較的わかりやすい。筆頭候補は日本円、韓国ウォン、英ポンドだ。セーフヘブンとなりそうな通貨は特定しにくい。今は安全と思われていても、実際にはまったく違ったということになりそうな通貨は多い。

 資源国通貨から見ていこう。通貨価値が下落すれば、商品のような有形資産の相場はそれなりに堅調に推移するはずだ。商品相場に大きく依存する資源国通貨も相対的に上昇するだろう。だが長期的(5年)に見れば、現在のような商品の上昇相場は終了する可能性が高い。オーストラリアドル、カナダドル、ノルウェー・クローネの安全通貨という地位は脅かされそうだ。

 オーストラリアドル(通称“オージー”)の状況を見てみよう。長期的に見ると、オージーは極めてリスクが高い。オーストラリアは30年にわたる不動産相場の上昇と、12年にわたる商品相場の上昇の恩恵を享受してきた。だが問題は、多額の債務を抱えた消費者がその圧縮に努め、また失業率の上昇によって雇用への不安が広がるなか、不動産市場の好況に陰りが見えていることだ。商品の好況も収束すれば、代わりとなるものが存在しない。

 オーストラリアではここ10年、政治の機能不全が続いており、鉱業を除くと国際競争力を持つ産業がほとんど残っていない。国の財務状況が健全であれば、それでも問題はないのかもしれないが、残念ながら好景気の間も財政赤字、貿易赤字が続いてきた。要するに、オーストラリアは長期投資の対象から外したほうがいい。オーストラリアの住人である筆者自身、こうした見立てが誤りであってほしいと思うのだが。

by  James Gruber, Contributor


11. 2013年2月19日 18:27:52 : xEBOc6ttRg
[FT]日本国債、インフレ予想でも強気の見通し
2013/2/19 14:00日本経済新聞 電子版
(2013年2月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 投資家はジレンマに直面している。来年度は約25兆円の5年物日本国債が償還期限を迎える。

■今後1年は「逼迫感が強まる」


所信表明演説に臨んだ安倍首相(1月28日)=AP
 この巨額の国債につく加重平均金利は約1%と、国債入札で現在実現可能な利回りの約6倍に相当する。

 単純に入札を6倍にして利益を一定にするのがよいのだろうか。それとも、長期の国債を買い増して少しでも多くの利益を捻出しようとするのが得策だろうか。

 いずれにしても結果は国債に強気な見方になると、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストは指摘する。これは、安倍首相が経済成長を推進しデフレを根絶する手段として財政支出を増加させているにもかかわらず、今年の日本の国債市場が持続的に低迷すると予想する向きがほとんど見あたらない主な理由の1つでもある。

 今後1年間は「発行増加による過剰感どころか、日本国債の需給状況には逼迫感が強まるだろう」と石井氏はみている。

 これが世界第2位の債券市場に対する「アベノミクス」の現実だ。株式や為替の市場参加者は多くが実質1%、名目3%の経済成長率を実現するための政策に目がくらんでいるが、債券投資家はほとんど動じていない。

 利回り曲線では、すでに低水準にある5年物までの利回りがさらに低下している。これは12月と1月に日銀が相次いで行った異例の金融緩和によるもので、投資家は3月に就任予定の日銀新総裁がより徹底した措置を講じるとみているからだ。

 5〜10年物もかなり安定している。これは、943兆円の発行済み国債のうち5分の2超を保有する銀行が利回り曲線をさらに押し上げることで利益を増やそうと決意した結果とも言える。

 BNPパリバ証券の金利ストラテジストである藤木智久氏は「短期国債と中期国債は今後しばらく抑制されるはずだ」とみている。

■10年物以上の利回りは上昇か

 11月中旬に総選挙の日程が決まって以降、インフレ率上昇の見通しと金融緩和政策のリスクを考慮した投資家による売りが見られたのは、超長期国債だけだ。

 例えば、JPモルガン証券の山下悠也ストラテジストは、新年度に財務省は30年物国債入札を今年の8回から12回に増やす意向だとみている。

 外国人投資家は、日銀によって短期の利回りが固定されるのに対し、長期の利回りは上昇するはずだと踏んで、利回り曲線の傾斜が険しくなる「スティープ化」を前提とした取引に特に熱心になっている。

 メリルリンチ日本証券の藤田昇悟チーフ債券ストラテジストは「利回り曲線から明らかになりつつあるのは、日本が何とかデフレから脱却すれば、影響を受けるのは10年物かそれ以上の年限のものだということだ。脱却できなければ財政規律の欠如が理由となり、利回り曲線はいずれにしてもスティープ化するだろう」と指摘する。

■インフレ2%実現は「16年度以降」

 だが今のところ、多くのアナリストはインフレが実質利回りを早期に低下させることに懐疑的だ。安倍首相の成長目標によって、1997年から名目で年平均0.7%の縮小を続けてきた経済が大転換するとの見方もある。

 金融情報会社QUICKが実施した債券市場参加者に対する直近の調査では、予定されている消費増税の影響を除いて2%のインフレが「2016年度かそれ以降」に実現すると72%が回答した。

 ピムコジャパンの正直知哉ポートフォリオ・マネジャーは「人口動態の悪化により潜在成長率がゼロに近く、そこからさらに低下する可能性さえある国で、2%という目標がどれほどの説得力を持ち得るだろうか」と疑問を呈している。同氏は「この目標を持続可能な方法で実現するには、はるかに積極的な金融緩和が不可欠だが、政府は構造政策も実行する必要がある」とも指摘する。

 モルガン・スタンレーMUFG証券のレー・ゴック・ニャン金利ストラテジストは、日本がデフレによる景気低迷を脱しつつあることが経済指標により示されるようになるまで、国債価格は「レンジ内」にとどまるとみている。

 一部の海外ヘッジファンドは、長期の利回りが6〜7%に急上昇すると予想し、行使価格の高いオプションを買い続けるとみられるが、その勢いは1年前より低下している。ニャン氏によると「日本の『破産』シナリオはもう一般的ではない」と言う。

By Ben McLannahan


12. 2013年2月19日 20:38:22 : xEBOc6ttRg
外債購入への発言控える、日銀法改正の議論は有意義=首相
2013年 02月 19日 18:39 
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[東京 19日 ロイター] 安倍晋三首相は19日午後の参議院予算委員会で、外債購入については発言を控えさせていただきたいと語った。

日銀法改正については常に視野に入れているとし、日銀法を時代を経て適したものにするためにどうするかは、専門的な知見を持つ人が議論していくことが有意義だと思うとの考えを示した。

安倍首相は変動相場制導入以降、金融政策は経済、財政運営の重要な政策手段だったが、日本は金融政策を手段として活用できなかったとの考えも示し、日銀は実体経済にしっかり責任を持ってもらう必要があると思うと述べた。

日銀総裁人事について、参議院では野党の協力が必要となることについて首相は「策を弄するのではなく、誠意をもってお願いしたい。この総裁と2人の副総裁によってこそ、デフレから脱却できるということで各党各会派にお願いしたい」と述べた。

片山虎之助委員(維新)、舛添要一委員(改革)の質問に答えた。

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ベルギーの45歳双子兄弟、視聴覚障害に苦しみ安楽死選ぶ
2013年 01月 15日 12:09 JST  

[ブリュッセル 14日 ロイター] 聴力と視力を失ったベルギーの双子の兄弟が、同国で合法化されている安楽死によって死去していたことが分かった。ブリュッセルの病院担当者が14日、明らかにした。

2人はいずれも45歳で、生まれつき聴覚に障害を持ち、後に視力を失った。互いの声も聞けず、顔も見られないことが耐え難いとして安楽死を選択。2人はコーヒーを飲み交わした後、互いに別れを告げ、薬物注射によって死去した。病院の担当者によれば、2人が死去したのは昨年12月14日で、家族も2人の意思を尊重していたという。

ベルギーでは2002年に安楽死が合法化され、11年には1133件の安楽死があった。そのうち86%が60歳以上で、72%ががんに冒されていた。

同国で安楽死を希望する患者は、成人で判断能力がある人物でなければならないほか、持続的で耐え難い精神的・肉体的苦痛を感じていなければならないなどと制限が設けられている。


13. 2013年2月20日 00:22:26 : xEBOc6ttRg
アベノミクスでも日本国債が買われる理由
2013年02月20日(Wed) Financial Times
(2013年2月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 投資家は今、1つのジレンマに直面している。日本では来年度に約25兆円の5年物国債が満期を迎える。

 この大量の国債のクーポンレート(表面利率)は、加重平均で見れば約1%。最近の国債入札で得られる利回りのざっと6倍だ。

 ということは、投資家は利金収入を維持するために、単純に同じ年限の国債をこれまでの6倍購入すべきなのだろうか? それとも、利金収入が少しでも多くなるように、償還された資金でもっと年限の長い国債を買うべきなのだろうか?

 いずれにしても国債相場にはプラスだと、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ債券ストラテジスト、石井純氏は指摘する。

インフレ見通しなどどこ吹く風の債券市場


「アベノミクス」の国債増発を懸念する向きもあるが、市場では逆に需給が逼迫するとの見方が出ている〔AFPBB News〕

 そしてこの状況は、新首相の安倍晋三氏が経済成長率の押し上げとデフレからの脱却を目指して財政支出を増やすにもかかわらず、今年の日本国債市場の持続的な下落を見込む関係者がほとんどいないことの大きな理由の1つになっている。

 石井氏は向こう1年間の相場について、「発行量の増加によって荷もたれ感が生じるどころか、日本国債の需給には逼迫感が強まるかもしれない」と述べている。

 これこそが、世界で2番目に大きな債券市場にとっての「アベノミクス」の現実にほかならない。実質で1%、名目で3%の経済成長を実現するという政策に株式市場と為替市場は大いに沸いているにもかかわらず、債券市場では大半の投資家が平静なのだ。

 日本国債のイールドカーブ(利回り曲線)を見ると、既に低位にある5年以下の年限の利回りはさらに押し下げられている。日銀が昨年12月と今年1月に、異例と言える2カ月連続の金融緩和に踏み切ったことによるもので、投資家の間では、3月に決定する日銀の新総裁はもっと大胆な施策を講じると見られている。

 5〜10年の利回りもかなり落ち着いている。これは銀行――発行残高が943兆円に上る日本国債の4割超を保有する最大の市場参加者――がこれまで以上に年限の長い国債を購入して利金収入を増やすことにした結果でもある。

 BNPパリバ証券の債券ストラテジスト、藤木智久氏は「短中期債の利回りはしばらくの間、抑制された状態が続く公算が大きい」と指摘する。

 上昇しているのはこれよりさらに年限の長いもの、すなわち超長期の利回りだけである。超長期債は、昨年11月半ばに総選挙の実施が決まってから小幅に売られている。インフレ率が上昇する可能性や財政政策がさらに緩和されるリスクを投資家が考慮したからだ。

 例えば、JPモルガン証券の債券ストラテジスト、山下悠也氏によれば、財務省は4月から始まる新年度に30年債の入札を12回予定しており、今年度の8回より回数が増えるという。

どう転んでもうまくいく「ウィン・ウィン」の取引

 外国人投資家が特に熱心に取り組んでいるのは「スティープナー」と呼ばれる取引である*1。期間の短い金利は日銀によって今後も低位に抑えられるだろうが、期間の長い金利は上昇する公算が大きいと読んでいるのだ。

 メリルリンチ日本証券のチーフ債券ストラテジスト、藤田昇悟氏は、国債10年物の利回りと20年物の利回りの格差(スプレッド)が先月、1999年以来の水準に拡大したことに触れながら、このスティープナーはどちらに転んでもうまくいく「ウィン・ウィン」の取引だと見なされていると話している。

 「もし日本がデフレ脱却に成功するなら、その時には10年以上の長期金利が影響を受けるということをイールドカーブは我々に教えようとしている。もしデフレ脱却に成功しなくても、財政規律の喪失という過程を経て、やはりイールドカーブはスティープ化するだろう」

 ただ、今のところは、近いうちにインフレ率が上昇して実質利回りが押し下げられるとの見方を疑問視するアナリストが多い。一部には、日本の名目国内総生産(GDP)は1997年以降、平均0.7%のペースで毎年縮小しているのだから、安倍首相の成長目標が実現するとしたらそれは劇的な大転換だという指摘もある。

*1=イールドカーブの傾きが急になる(スティープ化する)と利益が得られる取引のこと

 金融情報サービス会社QUICKが債券市場の参加者を対象に行っている月次調査の最新の結果によれば、2%のインフレ率――予定されている消費税率引き上げの影響を除いたベース――が達成されるのは「2016年度かそれ以降」になるとの見方が全回答の72%を占めたという。

 ピムコの日本での運用統括責任者を務める正直知哉(まさなお・ともや)氏は、「人口動態が悪化しているために潜在成長率がゼロに近く、さらに低下するかもしれない経済において、2%という目標はどの程度当てになるのだろうか」と疑問を呈している。

 この目標を「持続可能なやり方で」達成するには、「今よりもはるかに積極的な金融緩和が必要不可欠だろう。しかし政府も、構造改革の面で約束を果たす必要がある」という。

日本「崩壊」シナリオは後退気味

 モルガン・スタンレーMUFG証券の債券ストラテジスト、レーゴック・ニャン氏も同意見で、日本がデフレから回復しつつあることが経済指標に表れ始めるまで債券価格は「ボックス圏に」とどまる見通しだと述べている。

 また、海外のヘッジファンドの中には長期債の利回りが6〜7%に跳ね上がると予想してストライクプライス(権利行使価格)の高いオプションを買い続けるところもあるだろうが、その勢いは1年前ほど強くないという。「日本『崩壊』シナリオはもう流行の戦略ではない」そうだ。

By Ben McLannahan


 


 

「安倍トレード」の次は「カーニー・ショート」か
英ポンドに狙いを定める有力ヘッジファンド
2013年02月20日(Wed) Financial Times
(2013年2月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 いくつかの世界最大級のヘッジファンドに、世界市場で次に大きな変化が起きる場所として注目しているのはどこかと聞けば、多くのファンドが同じところを指すはずだ。英ポンドである。

 昨年11月以降、円売りに成功して巨額の利益を上げた世界トップクラスのグローバルマクロファンド――ソロス・ファンド・マネジメントやチューダー・インベストメント・コーポレーション、カクストン・アソシエーツ、ムーア・キャピタルなどのファンド――は今、ポンドへの関心を強めている。英国の窮状と日本のそれの間に強力な類似性を見いだしているからだ。

 経済見通しの悪化を受けて、ポンドは既に他通貨に対して下落してきた。輸出は弱く、生産性は比較的低く、政府の財政は逼迫している。

イングランド銀行新総裁の研究に勤しむファンドマネジャー


マーク・カーニー氏は今年7月、初の外国人としてイングランド銀行総裁に就任する〔AFPBB News〕

 だが、ことヘッジファンドに関しては、本当に彼らの興味をそそるのは、現在、カナダ銀行(中央銀行)総裁を務めるマーク・カーニー氏が間もなくイングランド銀行(同)総裁に就任することだ。

 カーニー氏は英国で、前任者のマーヴィン・キング現総裁よりも高いインフレ率を容認する意思があることを明確にしている。実際に就任したら、同氏はもっと踏み込むと見る向きもある。

 多くの人は、「アベノミクス」――日本の新首相の安倍晋三氏が推進する、経済成長を目的とした積極的な金融緩和政策――と似た響きが聞こえてこないかどうか、耳をそばだてている。

 「今年は劇的なポンド安が起きるかもしれない」。世界トップクラスのマクロヘッジファンドの運用担当者は、自分の会社のポジションを公にしたくないことから匿名を希望しつつ、こう語っている。

 この担当者いわく、カーニー氏はイングランド銀行の運営方法とイングランド銀行が自らに課す目標について足跡を残そうとしている。実際、唯一の問題はタイミングだという。

 このため、カーニー氏が過去に書いたすべての論文と調査報告が、メイフェア地区に集中する多くのヘッジファンドにとって必読書になった。

 「Future of Central Banking Under Post Crisis Mandates(危機後の使命の下での中央銀行の未来)」から「Whither Monetary Policy?(金融政策はどこへ行く?)」「Dutch Disease(オランダ病)」に至るまで、どんなに古い論文もひっくり返され、どんなに長い講演の記録も捨てられずに読まれている。

 ヘッジファンドへの投資で世界最大規模を誇る資産運用会社パーマルの最高投資責任者(CIO)、ロブ・カプラン氏は「(ヘッジファンドは)今、ポンドで何ができるか綿密に検討している」と言う。「カーニーの着任により、ポンド売りや、ポンドのボラティリティー(変動率)上昇に賭けるオプション取引などで面白い機会が生じている」

 一方、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズで債券担当のグローバルCIOを務めるケビン・アンダーソン氏は「イングランド銀行はこれまで非伝統的な金融政策をためらわなかったし、カーニーはその路線を継続するだろう」と話している。

高まるポンド売り圧力、魅力増すインフレ連動債

 ポンドに対する売り圧力は既に高まっている。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータは、先物契約のポジション(ネット)が、2月第1週の1174枚の買い持ちから、2月半ばの1万6776枚の売り持ちに転じたことを示している。売買高で見ると、ポンドは現在、円の次に空売りされている通貨だ。

 また、ファンドマネジャーが英国の経済不振とより積極的なイングランド銀行から利益を上げるチャンスを嗅ぎ取っているのは、外国為替市場だけではない。

 ここ数カ月、英国を避難先として魅力的に見せていたユーロ圏の債務危機を巡る懸念が薄れるにつれ、英国債の利回りは大幅に上昇してきた。大方の人がカーニー氏はインフレ目標の緩和を支持していると見ていることから、インフレ連動債はとりわけ魅力的に映る。

 「ポンドはさらに弱くなり、インフレ連動債への買い意欲が高まるのではないか」。米国の銀行で国債売買を担当するあるシニアトレーダーはこう話す。

 「すぐに思いつくのは、利回り曲線のスティープ化を手がかりにした売買だ。短期の金利が近く上昇することはあり得ない半面、インフレ率の上昇と信用格付けの引き下げが長期の金利を一段と押し上げる可能性があるからだ」

 一般的な英国債とインフレ連動型の英国債の価格差から推計される「ブレークイーブン」レートによれば、投資家は今、今後10年間の年間インフレ率が3.2%を超えると予想している。主要経済国の間では最も高い水準だ。

 円相場の下落と連動した日経平均株価の上昇で利益を上げた一部の投資家は、ポンドの下落は英国企業にも波及効果をもたらす可能性があると指摘する。ただし、マクロ経済的な投資の代理指標として使うには、FTSEは難しい市場だ。というのも、株価指数を構成する企業がより国際的だからだ。

8年ある総裁任期、対応には時間も

 しかし、慎重な関心はまだ激しい投機にはなっていない。

 カーニー氏は今のところ、慎重に言葉を選んでいる。また、イングランド銀行総裁としての任期が始まるのはまだ数カ月先で、同氏が劇的ないし衝動的に行動するという印象を受けた人はほとんどいない。

 資産運用大手ピムコのポンド建てポートフォリオの責任者、マイク・エイミー氏は「カーニーは恐らく、先行き見通しを公表し始め、インフレ目標を1〜3%のターゲットバンドに変えようとするだろう。だが、いずれも徐々にやっていくはずだ」と指摘する。任期は8年あることから、カーニー氏には時間がたっぷりある。

 「英国と同じくらいひどい状況の場所はいくらでもある。他国の状況が好転し始めたら、英国で圧力が高まり始める可能性はあるだろう」とエイミー氏。「けれども私には、それが起きるとは思えない」

By Sam Jones and Robin Wigglesworth


 

イタリア総選挙:誰がイタリアを救えるのか?
2013年02月20日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年2月16日号)

欧州で最も経済が低迷しているイタリアには、マリオ・モンティの改革がもっと必要だ。

 欧州の単一通貨の危機は薄らいだように見える。ユーロ圏周縁国の国債利回りは低下し、離脱を強いられる加盟国が出るのではないかという懸念は収まった。財政赤字も縮小し、アイルランド、さらにはスペインでも経済に回復の最初の兆しが見え始めている。

 それでも、ユーロ圏の危機が去ったとはとても言えない。むしろ、急性期から慢性期に移行しただけだ。懸念の対象は、財政の破産や銀行の破綻といった問題から、失業や低成長に移った。

 競争力の喪失、高い失業率、経済の停滞は、欧州の単一通貨ユーロにとって常に最大の長期的リスクだった。これらのリスクが最も顕著なのは、ギリシャやスペイン、ポルトガルといったお馴染みの周縁国かもしれないが、問題はこれらの国々にとどまらない。

 ユーロ圏はいまだ景気後退局面にある。ドイツとフランスの経済は、2012年第4四半期に縮小した。フランスはなかなか改革できずにいる。しかし、ユーロ圏で最悪の状態にあるのはイタリアだ。

目立たないが最悪の状態にあるイタリアの窮状


イタリアでは、ユーロ創設時より1人当たり実質GDPが小さい(写真はイタリアの商都ミラノの大聖堂)〔AFPBB News〕

 イタリアの問題は、他の国ほどはっきりとは見えにくい。

 公的債務は国内総生産(GDP)の130%近くまで膨れ上がっているが、財政や銀行はギリシャやポルトガルより健全な状態にある。イタリアは、スペインやアイルランドに大打撃を与えた不動産バブル崩壊も回避している。

 しかし、ユーロ創設時より1人当たりの実質GDPが下がった国は、イタリアともう1カ国しかない。全世界のランキングを見ても、2000年以降の1人当たりのGDP成長率は179カ国中169位だ。下にはハイチ、エリトリア、ジンバブエといった極度の貧困国しかない。

 そして現在、イタリアは近隣諸国にも後れを取る恐れがある。ユーロ創設以降、ユーロ圏に属する大半の地中海諸国では単位労働コストがドイツをはるかに上回るレベルで上昇したが、ユーロ危機が始まって以降は、大部分の国で急激に低下している。

 ところが、イタリアの製造業では2008年以降、フィンランドを除くユーロ圏のどの国より単位労働コストが上昇している。

 イタリアがこうした経済問題を抱えているため、2月24〜25日に実施される同国の総選挙の影響はアルプス山脈を超えてはるか広範囲に及ぶ。

 ユーロ圏3位の経済規模を誇り、この地域で最大の公的債務を抱えるこの国が再び成長に転じ、新たな雇用を創出できなければ、イタリア国民が最終的に希望を失うか、さもなければ北の国々がしびれを切らすだろう。いずれにせよ、そうなればユーロ圏は崩壊してしまう。

ウィン・ウィンは可能


首相に就任して改革を進めてきたマリオ・モンティ氏〔AFPBB News〕

 幸い、イタリアが進むべき道筋はある。それは、規制過多の経済を広く深く改革することだ。

 2011年11月、シルビオ・ベルルスコーニ氏の首相退陣に伴って政権を引き継いだマリオ・モンティ氏率いる実務家内閣は、就任以来この道を歩み、年金、規制、労働市場の改革を実行した。

 複数の試算によれば、これらの施策により既にイタリアの潜在成長率は0.5%近く上昇しているという。しかし、さらなる大幅な改革が必要とされている。

 イタリアでは公証人から薬剤師、タクシー業からエネルギー供給業者まで、保護の対象となっている経済的権益があまりに多い。行政も階層が多すぎる。州、県、自治体の行政は中央政府の業務を肩代わりすることが少なく、むしろ重複しているケースが多い。

 硬直化した司法制度により契約に関する紛争はあり得ないほどに長引き、費用も高くつくうえに、結果も予測がつかない。イタリアの民事裁判は平均で1200日もかかる。これに対し、フランスは331日で終わる。雇用関連の税金は非常に重く、公共支出は今後への投資よりも所得移転に向けられるものが多い。

 だが、これは裏返せば改善の余地があるということだ。国際通貨基金(IMF)が最近行った調査では、他国での事例も参照し、イタリアが製品市場と労働市場を改革すれば、1人当たりのGDPを5年間で5.7%、10年間で10.5%引き上げられると結論づけている。

 もし両方の改革を同時に実施し(既得権益にまとめて対応する方が1つずつ当たるより容易かもしれない)、理になかった財政改革でこれを補完すれば、10年後のGDPは20%以上の大幅な成長を遂げる可能性もある。

 これは次期政権にとって明確な目標設定となるはずだ。

最良の選択肢とその他の選択肢

 イタリア国民には良い道、悪い道、概ね受け入れられる道という3つの選択肢が用意されている。

 最良の結果は、モンティ氏が首相の座にとどまることだろう。モンティ氏は複数の中道政党からの支持を受け、改革の推進を掲げている。残念ながら、もとは学者のモンティ氏は行政の実務は得意だが、選挙活動は不得手だ。同氏の支持率はめったに15%を上回ることがなく、立候補者の中では4位に甘んじている。


イタリアにとって最悪の結果は、シルビオ・ベルルスコーニ氏の返り咲き〔AFPBB News〕

 最悪の結果は、ベルルスコーニ氏の右派連合が勝利を収めることだ。

 本誌(英エコノミスト)は同氏個人の資質、さらに政治的な数多くの理由から、メディア王のベルルスコーニ氏は政権を率いるのに不適当だというこれまでの見解を持ち続けている。

 ベルルスコーニ氏は8年以上も政権の座にありながらイタリアを改革できず、同氏が率いる党も、他の問題国で活動する同種の中道右派政党と異なり、いまだに選挙運動では改革を無視した政策を掲げている。

 国を犠牲にし、自らの利益を優先してはばからないベルルスコーニ氏の態度を見ると、いまだに同氏を支持するイタリア国民が存在すること自体が驚きだ。

 ところが世論調査では、ベルルスコーニ氏はピエル・ルイジ・ベルサニ氏率いる中道左派の陣営を追い上げている。この勢いだと、代議院(下院)で多数派となる可能性はある。ただし、(組閣に必要な)元老院(上院)での多数派確保は難しそうだ。

 それでも、ベルルスコーニ氏は政治システムを麻痺状態に追い込むことはできる。そうなれば恐らく、議会はまたしても選挙に追い込まれ、市場は警戒を高め、ユーロ危機が再燃するだろう。ベルルスコーニ氏の基準からしても、これは目を覆いたくなるような惨状だ。


世論調査でリードするピエル・ルイジ・ベルサニ氏〔AFPBB News〕

 残る選択肢はベルサニ氏だ。ベルサニ氏を擁する中道左派の陣営は選挙の実施が決まって以来、世論調査でトップを走り続けている。

 ベルサニ氏の支持勢力にはかつての共産党支持者も含まれ、陣営には極左政党も参加している。とはいえ、ベルサニ氏は過去の政権で改革者としてそれなりの実績を残している。

 仮にベルサニ氏が選挙に勝利し、なおかつ元老院での多数派獲得に至らなければ、モンティ氏と連立を組まざるを得なくなるだろう。そうなれば、モンティ氏は自らの交渉力を発揮し、経済分野を統括するスーパー大臣の座を要求することもできる。

市場と国際機関の信任を維持するために

 ベルサニ氏が率い、モンティ氏が経済を担当する政権はイタリアにとってまずまずの結果だ。イタリア経済の破綻を回避するためには市場や国際機関の信任が不可欠であり、この形であれば彼らの信頼を勝ち取れるはずだ。

 そして何より、経済改革に本腰を入れることが期待できる。もしベルルスコーニ政権の時代と同じ道をたどれば、いずれイタリアの経済は破綻し、ユーロも道連れにされるだろう。


 


2月独ZEW景気期待指数が急伸、3年弱ぶり高水準
2013年 02月 19日 22:36 JST

アングル:中東で高まる無人偵察機への需要、地域の不安定化背景に
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[マンハイム(ドイツ)/ロンドン 19日 ロイター] ドイツの欧州経済センター(ZEW)が19日に発表した2月の独景気期待指数はプラス48.2となり、前月の31.5から大幅に上昇、2010年4月以来の高水準となった。

ロイターがまとめたエコノミスト予想中央値35.0も大幅に超えたほか、予想レンジ上限も上回った。

現況指数は5.2で、1月の7.1から低下。予想は9.0だった。

調査はアナリストや投資家など272人を対象に2月4日─18日に実施された。

ZEWのアナリスト、ミヒャエル・シュレーダー氏は、「上昇要因は2つある。ひとつはユーロ危機の後退で、資本市場関係者の多くが最悪期は過ぎたと考えている。金利がこの10年で最低水準にあることとあわせて、ドイツと欧州の経済成長促進につながっている」と述べた。

今後6カ月では、インフレ期待はごく緩やかに上昇する程度と見込まれている。

回答者のうち、今後6カ月間で欧州中央銀行(ECB)が利上げすると見込んでいるのは31.7%で、3分の2は据え置きを予想している。

対ドルでユーロは小幅に上昇する程度との見通しで、通貨戦争は懸念していないことが示された。

ベレンベルグ銀行のクリスチアン・シュルツ氏は、「2012第4・四半期のマイナス成長の後、第1・四半期にV字回復している可能性が高いことが一段と示された」と述べた。

欧州債券市場では、独連邦債先物が発表直後は下落したものの、現況指数の低下を手がかりに上昇に転じた。

「最初は、予想を大幅に上回った期待指数に反応したが、その後、現況指数の低下に関心が向いた。発表直後の熱狂が急速にしぼみ、独連邦債先物は回復した」とバイエルン州立銀行の金利ストラテジストは指摘した。


 

ギリシャ経常収支、2012年は赤字幅が急減しユーロ導入後最小
2013年 02月 19日 19:19 JST
[アテネ 19日 ロイター] 2012年のギリシャ経常収支は55億8000万ユーロ(74億5000万ドル)の赤字となり、赤字幅は前年から73%減少してユーロ導入後で最小となった。輸入と国債利払いの減少が寄与した。

ギリシャ中銀によると、11年の経常赤字は206億3000万ユーロ。国内総生産(GDP)比では9.9%から2.9%に低下、少なくとも1999年以降で最小となった。記録的な経常赤字を記録した2008年には14.7%だった。

政府は、緊縮財政策により2014年には赤字がゼロになると予想している。

2012年の石油製品を除く輸入は12%減の416億ユーロ。ソブリン債の利払いも債務減免により急減、所得収支は75%減の21億6000万ユーロとなった。

観光収支は100億2000万ユーロと前年から4.6%減少したが、引き続き最も経常収支に寄与している。

12月末の外貨準備は55億ユーロ。


関連ニュース

2月のNY州製造業業況指数は7カ月ぶりのプラス 2013年2月16日
ドル指数が上昇、1カ月ぶりの高水準=欧州市場 2013年2月11日
1月の米ISM非製造業総合指数は低下、新規受注が押し下げ 2013年2月6日
1月のユーロ圏総合PMI改定値は48.6、前月から上昇 2013年2月5日


伊銀モンテ・パスキ、追加損失1870億円計上か−デリバティブで 
  2月19日(ブルームバーグ):イタリアの銀行、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ はデリバティブ(金融派生商品)取引の会計処理修正で最大15億ユーロ(約1870億円)の追加損失を計上する可能性がある。同行救済に異議を唱える訴訟での提出資料から分かった。
世界最古の銀行であるモンテ・パスキは、デリバティブを使った損失隠しの疑いで監督・検察当局の調査・捜査対象となっている。株主に情報が十分開示されていなかったある取引では、融資に見せかけた仕組み取引でイタリア国債の動きを読み違えていたと、ブルームバーグ・ニュースが1月17日に報じている。
訴えを起こしている消費者団体のコダコンスの提出資料によると、モンテ・パスキはこの取引をクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に分類し直す必要があり、契約成立後にイタリア国債が下落していることから損失計上が必要になる。
モンテ・パスキの関係者と監督当局のイタリア銀行(中央銀行)はコメントを控えた。
原題:Monte Paschi Accounts Questioned in Suit Opposing StateBailout(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ミラノ Elisa Martinuzzi emartinuzzi@bloomberg.net;ミラノ Sonia Sirletti ssirletti@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Frank Connelly fconnelly@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/19 21:21 JST


14. 2013年2月20日 00:26:16 : xEBOc6ttRg
日銀新総裁を待ち受ける難題
超金融緩和策には大きな副作用(日銀ウォッチャー)
加藤 出:東短リサーチ取締役・チーフエコノミスト2013年2月19日


  次期日銀総裁には難題が待っている(辞任を表明する白川総裁)

先週から週末にかけてのG7(7カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)、G20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)では、日本の円安誘導が「名指し」で批判される事態は回避することができた。しかし、それら国際会議で通貨安競争が話題になったことの契機は「アベノミクス」にある。

これまで日本の当局は、次期日本銀行総裁の下で発動されるであろう「大胆な金融緩和策」に対する期待感で市場を引っ張ってきた。日本政府、日銀がこれまでのところは、円安誘導のために「実弾」(円売り介入や外債購入オペ)は打ってこなかったために、許容されたと言える。もし「実弾」を打っていたら、G7、G20で日本は遥かに厳しい批判を浴びただろう。

注目される次期日銀総裁人事に関しては、岩田一政氏(元日銀副総裁、現在日本経済研究センター理事長)、黒田東彦氏(元財務官、現アジア開発銀行総裁)、武藤敏郎氏(元財務事務次官、元日銀副総裁)の3人が候補の第一グループと思われる。第二グループとしては、伊藤隆敏氏(東京大学公共政策大学院院長)、渡辺博史氏(元財務官、現国際協力銀行副総裁)、竹中平蔵氏(元総務大臣、現在、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所所長)らの名が聞こえる。

外為市場参加者は「次期日銀総裁が、岩田一政氏なら円売り、武藤敏郎氏なら円買い」といった話をよくする。しかし、意外に、誰が総裁をやっても、政策にそう決定的な違いは現れないかもしれない。

長い国債を買えば買うほど出口政策は困難になる

新総裁は、安倍首相の期待に応えようと、デフレ脱却に向けてアグレッシブさを強調するだろう。おそらく、白川氏と比べて、より残存期間が長い国債を多く買うと見られる。しかし、外債オペや官民共同外債ファンドによる円安誘導については、国際社会の反発を招くため、実施は困難と思われる。一方で、ETF(指数連動型上場投資信託受益権)などのリスク資産の購入を増やす可能性はある。しかし、将来の損失のリスク(つまり納税者負担発生のリスク)を考慮すると、その増額幅は限られる。

新総裁が長めの国債の購入を最初は大胆にやって見せても、徐々にそれによる将来のリスクが気になって彼は頭を抱えるようになるだろう。なぜなら、長い国債を買えば買うほど、金融政策正常化策(出口政策)は困難になっていくからである。経済が回復したときは、金融緩和の行き過ぎを避けるために、市場から購入した証券を売却していく必要がある。しかし、期間が長い証券の売却は、長期金利や住宅ローン金利を急騰させる恐れがあり、技術的な難しさに直面する。

「バーナンキFRB(米国連邦準備制度理事会)議長はそんなことを気にせずに買い続けているではないか」と思う人もいるだろうが、FRBはゼロ金利解除時期にその問題で七転八倒して苦しむ可能性がある。FRB幹部は、超過準備への付利の引き上げや、短期資金吸収策(リバースレポなど)を組み合わせれば対処できる、と表向きは述べているが、内心では不安を感じ始めている。

それゆえ、先月の本欄(「賃金を上げるには成長戦略が必要」)でも触れたように、米ダラス連銀のフィッシャー総裁は「一度入ったら出られない」という意味で、米国の今の政策を「ホテルカリフォルニア的金融政策」と呼んでいる。

米FRBがQE3で抱える評価損の試算を公開

また、昨年12月のFOMC(米国連邦公開市場委員会)議事要旨によると、12人の投票メンバーのうち、1人(カンザスシティ連銀のジョージ総裁)はQE3(MBSと長期国債の買い入れ)の継続に反対し、7人前後がQE3を今年末までに縮小か終了させることを主張していた。彼らはQE3の拡大が出口政策を困難にすると恐れている。

また、中央銀行が民間から長期国債を買い取るという行為は、金利上昇リスクを民間部門から公的部門にシフトさせることを意味する。FRBのスタッフが先月発表した今後の収益見通しでは、QE3をもし今年末まで続けて資産を膨張させると、最悪のシナリオの場合、2018年にFRBは円換算で30兆円を超える巨額の評価損を抱えることになる。

2016年の選挙では共和党が多数派を握るかもしれない。彼らがFRBの評価損を見て怒り、FRBの独立性を剥奪しようとしたら、米国のインフレ期待は不安定化していくだろう。

なお、FRBのその収益シミュレーションにおけるQE3の継続期間の想定は、ケース1)2012年末で終了、ケース2)13年央で終了、ケース3)13年末で終了、となっていた。14年以降も継続した場合については表示されていなかった。先行きの評価損の計算が凄まじいことになるので、恐ろしくて公開できなかったのではないかと推測している。

次期日銀総裁が「大胆な金融緩和策」を続けていくと、彼は徐々に超金融緩和策は「フリーランチ(ただ飯)」ではなく、副作用を伴うことを意識せざるを得なくなるだろう。また、市場のインフレ期待を急に変化させるような「次元が異なる緩和策」は、国債を暴落させる恐れがあると警戒するようになるだろう。来年の今頃、彼の発言は「白川化」し始めているかもしれない。

今後は日銀の資産膨張が突出して目立つ局面に

その実例は、イギリスにおいて実際に見られる。キング・イングランド銀行総裁は、09年に国債購入を中心とする量的緩和策を開始したときは、その政策がいかにイギリス経済を浮揚させるかを熱心に説いていた。しかし、最近では、量的緩和の効果が限られていることを認めざるを得なくなっており、白川総裁に非常に似た発言をたびたび行っている。

日銀がこれまで決定してきた緩和策を実行するならば、今年年末の日銀資産のGDP比は40%を超える。1990年代半ばまでその比率は長く10%前後だったので、異様な膨張となる。

FRBが仮にQE3を今のペースで継続して年末で終了した場合、年末のFRB資産のGDP比は20%台前半にとどまるだろう。ECB(欧州中央銀行)の資産のGDP比は昨年末時点で日銀よりも小さかった。1月下旬から3年物LTRO(3年物の資金供給)の早期返済を受付け始めたことで、ECBの資産はすでに明確に縮小し始めている。こうして見ると、今後は日銀の資産膨張が突出して目立つことになる。

日銀は超過準備に0.1%の利息を支払っている。新総裁がそれを引き下げる可能性を排除することは現時点ではできないが、外為市場や株式市場の関係者が思っているほどその決断は容易ではないだろう。

付利の撤廃に効果はなく、副作用ばかり

なぜなら、付利をゼロ%に引き下げると、金融機関にとって、超過準備を持つインセンティブがなくなる。日銀の資金供給に応じようとしなくなる金融機関が急速に増加する。その場合、日銀は資産膨張でデフレ脱却への努力姿勢をアピールしようとする「量のイリュージョン」を利用できなくなってしまうからである。

また、付利をゼロ%にすると、貸出支援基金が機能しにくくなる恐れもある。その他にも議論しなければならない話は、山ほどあらわれてくる。その割に、付利をゼロ%にしたところで、銀行の貸し出しが伸びることはまずない(優良な企業に資金需要がなければ、現在の銀行は様々な規制を受けているため、貸し出しを増やしたくても増やせない状況にある)。

さらに、付利の撤廃によって短期金利をゼロ金利に限りなく近づけると、短期金融市場の機能が悪化し、資金はかえって流れなくなる。FRBは超過準備への付利を日銀よりも高い0.25%に維持している。バーナンキは、マクロ経済に与えるメリットとデメリットを比較考慮すると、FRBは付利の引き下げを行うべきではない、とこれまで議会などで何度も説明してきた。

そういった議論が海外からも聞かれる中で、日銀が付利を下げる場合、その意図は円安効果を狙ってのものと受け止められやすい(実際に外為市場に及ぼすことができる円安効果は小さいと思われるが)。先日のG7、G20でさらなる露骨な円安誘導は牽制されてしまっただけに、新日銀総裁が付利を下げようとする場合は、そういった数々の軋轢を乗り越えていく必要があるといえる。

つまり、新総裁が行える金融緩和策には、どれも悩ましい問題が付随してくるのである。


15. 2013年2月20日 01:11:41 : xEBOc6ttRg
【第269回】 2013年2月20日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
アベノミクスとプラシーボ(偽薬)効果
効果があると言われると本当に効く?
経済政策の「プラシーボ効果」

 ある英語のテキスト(注)の受け売りだが、次のような話を聞いたことがある。

 かつて胃潰瘍の薬としては「ザンタック」という薬が有力で、1981年以前のある調査によると、患者への有効率は72%だった。ところが、1981年以降に「タガメット」というより有効な薬の臨床データが出回るようになると、薬の内容は何も変化していないのに、ザンタックの有効率は大幅に低下して、80年代後半に行われたある調査では、37%まで低下していたという。

(注)ブレンダン・ウィルソン、山本史郎著『大人のための英語教科書』(IBCパブリッシング株式会社)。東大の授業からできたという、中身の濃いテキスト。英文の内容自体が興味深く、また、米国英語と英国英語、両方の朗読CDがついている点もいい。
 原因は、「タガメット」の登場によって、医師の「ザンタック」に対する信頼が低下し、患者がこれを医師の態度から感じ取るようになったからだという。

 これは、薬効成分のない薬でも「効果がある」と言われて服用するとしばしば効く「プラシーボ効果」(偽薬効果)と言われる現象が、投薬する医師の態度にも関係していることを示す事例だ。近年では、薬の治験が医師にも新しい薬と対照実験用の偽薬とがわからないような形で行われるそうだ。

 この話を聞いて(テキストに付属のCDで聞いたのだ)ただちに筆者の頭に浮かんだのは、日銀の白川方明総裁の顔だった。

 日銀は、過去に何度にもわたる金融緩和措置を、彼らなりのペースと規模でしかなかったが実施してきた。しかし、白川総裁は、経済が成長しなければ、金融政策だけでは物価は上昇しないという趣旨のコメントを付け加えるのが常だった。

 白川氏の態度は、医師が投薬にあって、「この薬はよく効きますよ!」と言うのではなく、「あなたの健康管理が悪いと、この薬は効かない場合が大いにあり得ます」と言うような、ネガティブなプラシーボ効果をもたらしていたように思う。

経済の参加者に対するプラシーボ効果は
ネガティブからポジティブへ陽転

 政権交代によって、金融政策の主導権が実質的に変わって、「2%の物価上昇率目標」を持ち、「大胆な金融緩和」を行うと安倍首相が繰り返し述べるようになったことで、まだ金融政策が大きく変わらないうちから円安・株高になったことには、経済の参加者に対するプラシーボ効果がネガティブなものからポジティブなものに陽転したことの大きな効果があっただろう。

 この意味で、次の「担当医」に相当する次期日銀総裁の人選は重要だ。

 原因が心理的なものに過ぎなくても、いったん効果があってみると、円安は(少し時間がかかるとしても)企業の業績や雇用の改善につながるし、株価や不動産価格の上昇も信用や消費の拡大に寄与するので、「実体経済」にもプラスの影響が生じる。

 プラシーボ効果に腹を立てても仕方がない。他方、プラシーボ効果が常にあてになるわけでもない。

 経済人もエコノミストも、そこにある現実をもとにして物事を考えなければならない。

 もっとも、金融政策の方針変更には、単なるプラシーボ効果だけではなく、具体的な“薬効成分”もある。

 たとえば、インフレ目標が「1%」から「2%」に引き上げられると、金融市場の参加者は、ゼロ金利政策を含む金融緩和政策が多少の物価上昇があってもより長く続き、実質金利が低い(マイナスも含む)状況がより長く続く確率が高いと予想を変更する。この予想の下では、たとえば為替レートは円安に振れることが妥当だ。

 市場参加者は、将来、本当にインフレになるか否かについては、まだ半信半疑であるとしても、当面の損得計算はできるので、この「材料」は円安材料として機能するのだ。

「貨幣錯覚」を期待した政策?
賃金でもプラシーボ効果を起こせるか

 アベノミクスは、円安やインフレを実現することによって、1つには実質金利の低い状態をつくって投資や消費を活性化させることを目指し、もう一方では、円安と実質賃金を下げることによって失業を減らすことを目指していると理解される。

 後者は、インフレを通じた一種のワークシェアリング的な効果を持っている。多くの労働者が実質賃金の低下を我慢して、相対的に少数な雇用市場の弱者を救う構図だ。

 問題は、ここで消費者でもある労働者が、インフレ予想の高まりから自分の実質賃金低下を認識して、超合理的に行動して、消費を抑制してしまうと、消費が減少して景気にマイナスの影響が出てしまうことだ。

 理想的には、たとえば2%の物価上昇と共に1%の名目賃金の上昇があって、労働者である消費者が、自分の実質的な賃金が上がっているような錯覚を持って、消費を維持ないし拡大するような状態がしばらく続くと、政策は効果を発揮する。

 製品価格の(≒物価)上昇率以上に賃金が上昇すると、企業が儲からなくなり、投資も雇用も縮小する。政策的には、上記のような「ムシの良い話」を何とか実現したい。

 これは、労働者である消費者に対して、経済学の言葉で言う「貨幣錯覚」を起こして貰うことを期待した政策だ。悪く言えば、人々を騙そうとするインチキ政策(「ブードゥー・エコノミクス〈呪術経済学〉」といった悪口もある)だが、少々の賃金上昇と共に、これから景気が良くなって自分の収入も増えるのだという予想を人々が持つようになって、消費を維持ないし拡大すると、経済が実際に好転することになる。

 ここで、再びプラシーボ効果に期待がかかる。

 安倍首相が経済団体の幹部に賃上げを要請していることは、一方では政治的な人気取りのポーズでもあろうが、他方で、消費者に対して収入がこれから増えるとのメッセージを届けて、消費が伸びる環境をつくろうとの心理的効果を狙ったものだろう。

ローソン新浪社長のやり方は上手い
「心理的効果」も動員する経済政策

 これに上手く乗ったのが、産業競争力会議のメンバーでもある、ローソンの新浪剛史社長だった。ローソンは、若手社員の年収を3%引き上げると発表し、話題となって好印象を得た。おそらく、数億円のコスト増だろうが、広告効果と社員のモチベーション向上を考えると、十分元が取れるのではないか。機敏で効果的なメッセージだった。

 また、現在政府が検討中の、社員の報酬を引き上げた企業の法人税を減税する仕組みも、なかなか良く考えられている。多くの国民は、減税で可処分所得が増えたとしてもこれに気づかないだろうが、会社が給料やボーナスを増やしてくれたら、「収入が増えた」と感じることだろう。

 ついでに、会社の先行きにも自信を深めたり、仕事のモチベーションがアップしたりするかも知れない。経営者も、社員に対して報酬を増やすのは悪い気分ではないはずだ。

 前述のように、アベノミクスでは、インフレに遅れて賃金が上がることによって企業の利益を増やし、雇用を改善するチャネルが正攻法だが、収益拡大を先取りして賃金がプラスに変化して消費が伸びるのであれば、景気が後押しされることになるので、ここでも心理的な効果が好循環を生む可能性がある。

 とはいえ、ローソンの新浪社長のような消費者と直接関わっているビジネスパーソンは痛感しているところだろうが、長年にわたって「物価は上がらない。むしろ下がる」と予想し、事実からそのことを再確認してきた消費者心理の「デフレ癖」を「インフレ期待」に反転させるのは、容易なことではあるまい。

 心理的効果も動員する経済政策の先は長い。

 
【第89回】 2013年2月20日 高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]
安倍政権下で到来するマインド改善の絶好の機会
日本株と日本円は「失われた3年」を取り戻せるか?
――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト
日本株の「失われた3年」

 先月の当連載で、過去3年は日本の株式市場の「失われた3年」とも言えるとした。図表1は、過去15年にわたる日米独株価指数の推移である。

 1990年代の日本のバブル崩壊局面においても、長期にわたり日本株は他の主要株式市場である米・独と連動した動きにあった。しかし、2009年半ば以降、明らかに日本株だけが出遅れた状況にあった。

 昨年11月14日以降、過去3ヵ月の日本の株高は、確かに急な回復ではあったものの、過去の米独との乖離から見れば、依然としてほとんど修正されていない状態とも言える。仮に、日本株に対して海外から見直しが生じれば、日本の市場参加者が当初想定していた水準よりも大幅に日本株が上昇する可能性もある。

 過去3年余り、これだけの乖離が生じるということは、海外投資家を中心にインデックス対比で大幅なアンダーウェイトが続いたと考えられる。それだけに、その水準の修正が生じれば想定以上の株高も生じることになる。


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 日本の株式市場の「失われた3年」が生じた要因として、@当該期間の為替の円高状況、A民主党への政権交代が考えられ、2009年半ばに非連続的な変化が市場に生じた。

 なかでも、民主党政権における「生活者重視」とするスローガンのなか、企業との一体感など「プロビジネス」的な動きが後退したとの印象が生じたことが、海外投資家の日本株への不安を生じさせた可能性がある。海外投資家は、経済成長を下げる政策が行われる日本の「空気」を嫌い、理論に忠実に日本株アンダーウェイトを行ったと考えられる。

為替市場の「失われた3年」

 第二の「失われた3年」は、為替市場の円高であった。今日、日本で生じているマインド改善は、為替の円安による面が大きいが、それは対ドルによる影響に止まらない。むしろ、産業界の意識としてこれまで日本の輸出産業と競合してきたのは、欧州ではドイツであり、アジアでは韓国であった。

 その結果、産業界では対ドルの円高に止まらず、対ユーロ安や対韓国ウォン安の影響を強く問題視してきた。足もとのマインド改善とそれに伴う日本の株価上昇は、図表2に示されるように、2009年以降、円がドルだけでなくユーロからもウォンからも安くなっていたことにあった。昨年11月以降、一転して円がこれらの通貨に対して円安になったことを好感したものである。


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 したがって今後の問題は、現状の各通貨に対する円安の持続性をどう見るかにある。本論での認識を結論的に申し上げれば、対ドル、対ユーロでの円安は日米、日ユーロ圏の金融政策のバイアスの乖離にあると考えている。そうだとすれば、当面の金融政策に対する思惑が変わらない限り、相応の水準で円安が続くとするものである。

 一方、対ウォンについては、米国との関係が重要であり、日本にとっては一段の対米関係緊密化が為替ウォン高の鍵を握る。もちろん、対米関係の緊密化は対ドルでの円安にも大きく影響する。以下で、その背景を改めてレビューすることにする。

 対ドルに関しては、2012年12月のFOMC以降、米国ではエグ゙ジットの目安として失業率水準6.5%が示されたことで、金融政策のエグジット観測が生じやすくなっている。米国の1月の失業率はいまだ7.9%であるものの、6.5%の水準が視野に含まれるとの意識が市場では生じやすい。

 一方、日本で2013年1月に新たに共同声明で設定された物価目標2%は、まだまだ市場の視野に含まれないことから、日米のエグジット観測の大きな乖離が円安バイアスに機能しやすい。

 ユーロ圏では、金融市場安定化が半自動的な金利上昇につながるジレンマ状況にある。すでに、ドイツからは円安への批判も生じているが、今回のユーロ高の背景には欧州固有の事情で金利が上昇しやすい制度的背景がある以上、欧州が他国に対して為替水準の不満を主張できる筋合いではない。

 一方、韓国ウォンについては、対米関係のなかでの「だるまさんが転んだ」として議論してきた。円ドルやウォン・ドル相場は、結局米国の為替政策によって左右されてきたとするのが、筆者の基本認識の背景にある。

 このフレームワークにおいては、子どもの遊びの「だるまさんが転んだ」のごとく、主導権を持つ鬼(米国)が目隠しをしているうちに参加者(日本)は鬼に向かって動くことができる(日本が円安に向かう)が、鬼が振り向くと(日本の円安は)止まらざるを得なくなるゲームである。

 同様に、韓国も鬼に向かってウォン安を志向してきた。すなわち、主導権を持つ「鬼」である米国が「いつ振り向く」かということが、どこまで円安水準を許容するかにある。

日米関係の「失われた3年」
による為替水準の変化

 2009年以降の民主党政権下、対米関係悪化で為替政策上も米国から円高で牽制される状態が続いた中、韓国ウォンについてはウォン安が許容される状態が続いた。オバマ政権としても、2007年以降のバランスシート調整以降は、ドル安による輸出を期待してきただけに、米国が日本からの円安対応を一方向で容認するとは考えにくい。

 ただし、米国サイドからも許容される水準に変化が生じた可能性もある。特に、昨年末に自民党政権になり、民主党政権下と較べ日米関係が外交・地政学的に緊密関係に向かうことで許容される円安水準が引き上がった可能性があり、一方対ウォンでは、ウォン安への許容姿勢が転換した可能性が高い。同様に、このところ対中国でも元の引き上げ圧力が高まる状況に転じている。

 これまでの日本における悲観の主因は、円高に伴う産業の弱体化にあった。そこでは、対ドルに限らず対ユーロ、対ウォンでの円高が、産業界のマインドを大きく引下げた。一方、以上で議論したように、足もとは為替のマイナス要因が一転した状況にあり、日本のマインド改善に絶好の機会が到来したことを利用すべきだろう。

 ただし、欧米の景気回復期待が2013年一杯、このまま続くとも限らないし、米国の為替許容スタンスにも変化が生じ得る。日本としては、こうした極めてラッキーな状況が続くうちに、その期間をあくまでも猶予期間として、競争力強化に向けた改革に着実に取り組むべきだろう。

 その期間は、同時に第三として日米関係の「失われた3年」であったとも言える。当面は、3月の期末までに株式市場と為替市場における「失われた3年」を取り戻す動きが、日本の市場の最大のテーマである。


16. 2013年2月20日 02:41:16 : Pj82T22SRI
米NAHB住宅市場指数:2月は46に低下、予想外の落ち込み 

  2月19日(ブルームバーグ):米建設業者の景況感を示す2月の住宅市場指数は前月から予想外に低下した。前月と前々月はいずれも2006年4月以来の高水準だった。
全米ホームビルダー協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが発表した2月の米住宅市場指数は46と、前月の47から低下した。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値 は48への上昇だった。同指数で50を下回ると住宅建設業者の多くが現況を「悪い」とみていることを示す。
RBCキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、トム・ポーセリ氏(ニューヨーク在勤)は「雇用の伸びと賃金の増加を伴う消費者からの力強い需要が一段と必要だ」と指摘した。
一戸建て販売の現況指数は51と、前月の52から低下した。向こう6カ月の販売見通し指数は50と、前月の49から上昇した。購買見込み客足指数は32と、昨年9月以来の低水準。
住宅市場指数は全米4地域のうち、北東部と西部で指数が上昇した。北東部は41と前月の36から上昇。西部は60と、2006年6月以来の高水準だった。  
原題:Homebuilder Confidence in U.S. Unexpectedly Fell inFebruary (1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Shobhana Chandra schandra1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/20 01:17 JST


 

米財政責任委の元共同議長、債務削減で2.4兆ドルの計画提案 

  2月19日(ブルームバーグ):オバマ米大統領が2010年に設置した財政責任・改革国家委員会の元共同議長は、向こう10年間で政府債務を削減する2兆4000億ドル(約225兆円)規模の計画を提案した。
提案したのはクリントン政権で大統領首席補佐官を務めたアースキン・ボウルズ氏と元共和党上院議員のアラン・シンプソン氏。同計画は債務の抑制を1つの大きな法律を通じてではなく、段階的に実施する内容になっている。
両氏は計画の概要で「われわれがここで提示している内容は決して完璧なものではない」としながらも、「財政赤字を減らし経済を成長させる計画をめぐる、真の意味での超党派による交渉に向けた基準にはなり得る」と説明した。
民主、共和両党の間では、3月1日に発効する一律歳出削減の回避策をめぐり意見の対立が続いている。
ボウルズ、シンプソン両氏の提案では、削減全体のうち4分の1はメディケア(高齢者向け医療保険制度)やメディケイド(低所得者向け医療保険制度)を含むヘルスケア関連の制度変更で、また別の4分の1は税法を改正し最大免除・控除額の規模を縮小することで対応する。こうして生まれた節減分は、一部は財政赤字の削減に、残りは所得税率の引き下げに充てられる。
このほかの節減方法としては、インフレ指標改正による社会保障給付金の抑制に加え、農家向け補助金の縮小や軍関係者を含む年金の減額なども提案している。
ただこうした節減を実施しても、「この財政赤字削減は、この10年間の経済規模に対する債務の比率を低下傾向に抑えるには決して十分ではない」と指摘した。
原題:Obama’s Deficit Commission Leaders Offer Spending-CutProposal(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Heidi Przybyla hprzybyla@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Jodi Schneider jschneider50@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/20 01:56 JST

 

米大統領の成長見通し、あまりに楽観的か−予想金利と矛盾 

  2月19日(ブルームバーグ):2期目がスタートしたばかりのオバマ米大統領に対し、米債券市場は早くも政権の今後4年間の米経済成長見通しが楽観的過ぎると警告を突き付けている。
米行政管理予算局(OMB)は、2期目後半の経済成長が4%前後になるのに伴い、米国の10年国債利回りは上昇し、2015年に平均4.1%、17年には4.9%に達すると予想。これに対し、ブルームバーグが集計した米国債市場の利回りデータに基づき算出するインプライド・フォワードレートは、現在2%の10年国債利回りが2年後も平均3%未満にとどまることを示している。このことは国内総生産(GDP)もOMB見通しを下回ることを意味する。
オバマ大統領が次の政権に何を遺すかは景気回復に左右される見込みだが、米債券市場は、今後数年間のGDP伸び率が金融危機前の10年間の平均成長率である3.3%を上回らない可能性を示唆しており、税収も財政赤字の穴埋めに必要な額に届かない見通しだ。しかし、米国債の借り入れコストが昨年の過去最低に近い水準にとどまることは、消費者と企業の借り入れを容易にし、株など比較的リスクの高い資産に対する需要の維持が見込まれるため、悪い点ばかりではない。
バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの米金利戦略責任者、プリヤ・ミスラ氏は8日の電話インタビューで、「金利が急ペースで上昇すると考える米当局と、債券市場とが両極端の立場であることは明らかだ」と指摘。「10年国債利回り が4年間で約5%に達するとの予想はあまりにも楽観的だ。連邦準備制度 の債券購入や債券ファンドへの資金流入を考えれば、現在の金利が若干押し下げられた状態にあるとの見方は可能だが、これは通常の回復とは別物だ」と話している。
原題:Obama Clashes With Forwards Showing Bonds Below GrowthForecasts(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Liz Capo McCormick emccormick7@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Dave Liedtka dliedtka@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/19 12:39 JST


 



17. 2013年2月20日 02:43:53 : Pj82T22SRI

米国の金利上昇や景気回復が円安の前提であり、日銀にできることがほとんどないことが明らかになっていくとすれば、そろそろアベノミクス効果の限界は近い

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