02. 2013年2月14日 12:01:31
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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ | G7緊急声明の意味すること 2013/02/13 (水) 11:47 昨日(2月12日)の夜、麻生財務大臣が記者会見を開き、G7の緊急声明の内容について説明を行いました。 緊急声明? 一体何ごとなのか? 聞いてみると、最近の円安に関してG7が声明を発表したのだとか。 麻生大臣は言うのです。 「デフレ不況対策の政策を、為替相場に使っているなどの話があったが、そうではないことを各国から正しく認識され、意味があった」 アベノミクスを米財務省の高官が支持する発言があったばかりですが、そうした認識がG7全体でも共有されたということでしょうか? 最初、マーケットはどうもそのように受け取ったようなのです。何故ならば、この麻生大臣の説明に呼応して円安に振れた訳ですから。 しかし、麻生大臣のような理解の仕方はおかしいと、あるG7の高官が指摘したとのニュースがロイターから流れ、今度は一転、円高に振れたというのです。 一体、G7の共同声明は、どのように理解すればいいのでしょうか? そのためにはまず、G7の声明文を入手する必要があります。早速、我が国の財務省のサイトにアクセスすると直ぐに声明文の仮訳が入手できました。 その一方で、米国の財務省のサイトにアクセスしても、いつもと違って今回のG7声明に関しては何の情報もアップされていないのです。 どうも米国では、それほど関心を集めていないようなのです。 (写真は、米財務省)
日本の円安に関して大いなる関心を示しているのは、韓国を別にすれば、ドイツやフランスなどの欧州勢が中心です。つまり、欧州は、円安ユーロ高を嫌がっている、と。 いずれにしても、G7の声明文を読んでみましょう。 「我々、G7の財務大臣・中央銀行総裁は、我々が長年にわたりコミットしている、為替レートは市場において決定されるべきこと、そして為替市場における行動に関して緊密に協議すべきことを再確認する。我々は、我々の財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している。我々は引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、適切に協力する。」(資料:財務省) 如何でしょう?何が書いてあるかお分かりでしょうか? それほど難しいことが書かれている訳ではないのですが、問題は、それらの文章が如何なる意味を有しているのか、ということです。麻生大臣が説明したように、先進各国は、米国と同様に日本のアベノミクスに支持を与えたと理解していいのでしょうか? 私は、麻生さんの説明は、どうも日本側にとって都合のいい解釈にしか思えないのです。 いえ、何も麻生さんが間違っているというのではないのです。そうではなく、あれほど円安を牽制する発言をしていた欧州勢、つまりドイツとフランスが、そんなに簡単に折れることがあるのか、ということなのです。 しかし、事実として、緊急声明が発表されたことはそのとおり。 では、一体何のための緊急にG7の共通認識としての声明を発表したのか? 麻生さんの言うとおり、日本のやっていることが正しいと認めるため? それは少しばかり甘いのではないでしょうか? そうではないのです。欧州が煩いことを言うものだから、この際、欧州の言い分も聞きつつ、そして、余りにも急速な円安の流れにブレーキを踏むことが必要だと米国が思ったからではないでしょうか? 何故そのようなことが言えるのか? それは、G7で通貨問題がどのようなときに議題になるかを考えれば分かることなのです。 例えば、この数年間、日本はずっと円高に悩まされてきた訳ですが、そうした局面で通貨問題を持ち出すのは、決まって日本だけだったのです。つまり、自国通貨が安くなって恩恵を受ける国は、通貨問題など持ち出す筈はない。 でしょ? だから、今回、余りにもドイツやフランスが日本のことを非難するので、このままではG7としての結束が守れなくなることを心配して、米国が仲介の労を取ったのだ思うのです。そして、今回のG7の緊急声明の露払いとして、米財務省のブレイナード次官が日本の政策を支持する発言をした、と。 しかし、そのブレイナード次官も、日本のやることを全て支持すると言っている訳ではないのです。取り敢えず、日本はデフレから脱却するために金融を緩和しているだけで、それは認めるべきだ、と。何故ならば、為替介入をしている訳ではないし、と。但し、その一方で、為替市場で為替の乱高下や無秩序な動きが生じた場合には、G7として協調介入を行うことがあるとも言っているのです。 つまり、G7の通貨問題に関するスタンスは、これまでと何ら変わっていないのです。 そして、そうしたこれまでのスタンスを分かっているならば、今回のG7緊急声明の意味するところもよく分かるのです。 「我々、G7の財務大臣・中央銀行総裁は、我々が長年にわたりコミットしている、為替レートは市場において決定されるべきこと、そして為替市場における行動に関して緊密に協議すべきことを再確認する。」 この文章は、為替レートは市場が決定するものだという原理原則をG7として確認するということで、その意味からすれば、今、日本は為替介入を行っている訳ではなく、そして、如何に急速に円安が進んでいるとはいっても、それは市場が決定したことであると認めざるを得ない、と。 つまり、この文章では、日本に取り敢えず軍配を上げ、独仏の円安批判を認めていないのです。 「我々は、我々の財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する。」 では、次のこの文章は、何を意味するのでしょうか? この文章では、一転、欧州の言い分を相当に斟酌し、日本のスタンスに釘を刺すことを忘れないのです。つまり、確かに金融緩和の結果、円安が進んでいるとしても、ただそれだけで日本を批判することはできないが、しかし、仮に、金融緩和の目的が明らかに円安を促進するためのものであるとすれば、それは認められないとも言っているのです。そして、そのようなことをする国は、これまでG7のなかにはなかったし、今後もその方針を維持して行く、と。 つまり、G7としては、日本の金融緩和策に何ら口をはさむ権利はないが、しかし、日本政府が露骨に金融政策によって円安を実現するというのであれば、それは決して認められないと言っているのです。つまり、日本は紳士として振る舞って欲しい、と。 「我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している。」 第3番目のこの文章は何を意味するのでしょう? これは、如何に為替レートが市場で決定されるべきだとは言っても、為替レートが過度に、そして無秩序に変動するような場合は例外とするということなのです。 でも、これ、実は解釈が大変難しいのです。ここ数年、日本の立場からすれば、まさに過度に円高が進行していた訳ですが‥欧米は全くそうとは理解しなかった。その一方、この数カ月間の動きを欧州勢からみれば、まさに過度なユーロ高が進んでいるということで、例外的状況だと認めて欲しいというこになるのです。 では、そうした例外的な状況が発生したらどうするのか? 何をどうするかは明確にされていないのですが、市場に任せ切りにする訳には行かないので、何らかの方策を打ち出すということになるのです。 「我々は引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、適切に協力する。」 最後の、この文章は、G7が緊密に協議することの重要性を確認したということで、何かが起きた場合に、どこかの国がどこかの国を批判するのではなく、よく話し合って互いにとって有益な方策を見つけましょうと言っているのです。 ということで、今回の声明は、日本と欧州の痛み分けといったところではないのでしょうか? 最後に一つだけ、大事なことを言っておきたいと思います。 確か、安倍さんは、為替政策の権限を財務省から日銀に移管すべきだという考えでしたよね? そうする方が、金融政策を強力に駆使して円安が実現できるからだ、と。逆に言うと、為替政策を財務省に任せたままだと、今までのようになかなか円高の是正ができない、と。 しかし、今回のG7の緊急声明では、各国の金融政策は為替レートを目標としないことが明確にされ、そして、それを安倍政権の一員の麻生大臣が認めた訳ですから、今回、アベノミクスが若干修正されたことにもなるのです。 以上 |