★阿修羅♪ > 経世済民79 > 235.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
円安を容認する米国の地政学的事情=武者陵司氏
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/235.html
投稿者 palクン 日時 2013 年 2 月 12 日 19:22:05: mWJq7xP6mpLMg
 

http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE91B01L20130212?feedType=RSS&feedName=jp_column&virtualBrandChannel=13487&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter&pageNumber=1

 経済は一定の期間は、経済の論理で変動する。しかし、より長期の歴史を考えれば、経済の興隆と衰退を決定してきたのはひとえに政治であり、ことに安全保障を柱とする国家戦略であった。このことは、日本経済の今後の行方を占う上で非常に重要な視点だ。

 筆者は、安倍晋三自民党政権のリフレ政策の背景に、米国の地政学的要請を感じ取っている。円は11月以降のわずか3カ月間でドルに対して約19%下落した。本来ならば、米ビッグスリーなどによる円安批判にホワイトハウスが同調し、圧力をかけてきてもおかしくない。日本の最大の輸出先は、OECD(経済協力開発機構)公表の「付加価値ベースの貿易統計」を見れば、中国ではなく依然として米国であり、ドル高・円安の急激な進行による通商上の影響は、米国において大きく発生するからだ。オバマ政権が本気で圧力をかけてきたら、アベノミクスはひとたまりもない。

 ところが、現時点で、ワシントンから円安批判は全く聞こえてこない。それどころか、2月11日には、円安容認と市場に受け止められかねないアベノミクス支持の言葉が米財務次官の口から飛び出すなど、メルケル独首相を筆頭に、警戒感をあらわにしている欧州諸国や韓国、中国とは対照的なリアクションを見せている。誰の目から見ても、米国政府の意思がこうした言動に込められていると判断するのが妥当だろう。

 その意思の中身は、たとえば、昨年8月に米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)から発表された報告書、いわゆる「第3次アーミテージ・レポート」からも読み取ることができる。主な執筆者は、米国の歴代政権に大きな影響力を持つといわれるリチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ元米国防次官補(現ハーバード大学教授)だ。

 ここでは細かい内容には触れないが、重要なことは報告書の底流に通奏低音のように流れる日本弱体化への警戒感である。「米国は、日本が強力な米国を必要としているのと同等に、強力な日本を必要としている」との一文を読むだけで、ワシントンの空気が読み取れる。

 折しも、米国では中国異質論が勢いを増している。現在、中国の経済規模は米国のほぼ半分だが、名目成長率を米国5%、中国15%で、仮に人民元が2割切り上げられるとすれば、ほぼ5年あまりで名目国内総生産(GDP)は米国に肉薄する。中国のプレゼンス拡大は、市場主義、民主主義、法治主義、財産権、知的所有権などで同国が問題を抱える現状を考えると、世界最大のかく乱要因になりかねず、覇権国・米国にとって許容できるものではあるまい。

 しかも、中国の成長は、日本以上に技術・資本・市場を海外に依存したフリーランチの側面が大きい。この状況下、日本が長期経済停滞によって漂流し続ければ、特にアジアが大きく不安定化する。円高デフレによって日本経済がこれ以上弱体化することは、許容しがたいとオバマ政権が考えているとしても、不思議ではない。

<日本封じ込め策としての円高の終焉>

 そもそも日本経済は、これまでも米国の政治的利害によって突き動かされてきた。過去20年間の「日本病」と形容される停滞は、米国の経済圧力によってもたらされたと言っても過言ではない。強くなりすぎた日本を経済的に封じ込めるプロセスにおいて、異常な円高は決定的な役割を果たした。大幅経常黒字国の通貨が強くなるのは、変動相場制のもとでは当然である。しかし、円高の場合、通貨の購買力からみて異常だった。

 普通は購買力平価と比べてプラス・マイナス30%程度の為替変動が限度なのに、円の場合は一時2倍という異常な評価が与えられた。それによって国際水準に対して日本企業のコストは2倍となり、賃金も2倍となったために、企業は雇用削減、非正規雇用へのシフト、海外移転などを進めた。この結果、労働コストは大きく低下し、かろうじて競争力を維持できたものの、日本の労働者の賃金はいわばその犠牲となり、長期にわたって低下し日本にデフレをもたらしてきたのだ。

 ちなみに、多くの経済学者が「実質実効為替レートで見れば歴史的円高ではない」と主張するが、それは因果関係をはき違えた議論だ。そもそも実質実効為替レートで90年代前半ほど円高になっていないのは、円の名目為替レートがドルなどの主要通貨に対して上昇する一方で、製造業を中心に単位労働コストが相対的に低下したためである。実質実効レートは事後的に均衡したにすぎない。むしろ、円高が進行したことで、日本の労働者の賃金は、他国に劣らない労働生産性の伸びが続いたにもかかわらず、大幅に下落してきたと捉えるのが、円高デフレの正しい理解だろう。

 また、長年の円高デフレの心理的副産物なのか、日本経済の問題は需要不足ではなく、労働力減少などに伴う潜在成長率の趨勢的な低下にあるとの悲観論が論壇を中心にはびこっているが、こうした「反成長論」は聞くに堪えない。改めて言うが、日本の問題は賃金下落と内需縮小の悪循環だ。補足するならば、サービス価格のデフレによって、ハイテクなどの高生産性セクターから内需系の低生産性セクターへの所得配分のメカニズムが機能しなくなっている点にある。この解決には、リフレ政策が大いに貢献できる。

 いずれにしても、日本にデフレ宿命論者が増えたことは、米国の日本封じ込めが上手く行ったことの証左とも見て取れる。今、その米国が日本の弱体化に懸念を示しているのは何とも皮肉なことである。

<株価ターゲットを影の政策目標に>

 さて、米国の地政学的利害が転換する中で登場した安倍政権は、めぐり合わせという意味で、幸運だったと言えよう。
 アベノミクスの要諦は、端的に言えば、市場の想定を超える政策を打ち出し、市場の期待をリードし、人々のアニマルスピリットを鼓舞することにある。それによって需要を創造し、経済の好循環を作り出すことだ。これはまさに、リーマンショック以降、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が実践してきたことに他ならない。

 成否のカギは、株高の持続にある。株高がもたらす資産効果は絶大だ。米国の例でも、資産価格と貯蓄率の連動性は高く、株高は貯蓄率の低下をもたらし消費を刺激する。日本の政策当局は、円高デフレ脱却策の中心に、株価政策を置くべきだ。インフレターゲットも必要だが、公言せずとも「株価ターゲット」を念頭に置くぐらい大胆な経済政策運営を行ってもらいたい。株高を支える一の矢、二の矢、三の矢を次々と放ち、ようやく目覚めつつあるリスクテーカーたちの梯子(はしご)を外さないことが重要だ。

 幸い米国は、上記に述べた地政学的事情から、株高を演出している「異常な円高の是正」に当面、水を差すことはないと思われる。また、そもそも今回の円安局面は、ファンダメンタルズの変化に根ざしている。2012年、日本は原発稼働停止による化石燃料の輸入増もあり、6.9兆円という過去最大の貿易赤字に転落した。所得収支の黒字で経常収支では黒字が維持されたものの、世界の経常黒字順位では中国、ドイツ、主要石油輸出国に追随する立場になっている。

 加えて、米国では、バーナンキFRB議長に主導された創造的金融緩和策が功を奏して、経済活動もリーマンショック前に戻り、危機の後遺症は着実に癒されている。金融緩和の出口戦略も語られ始めており、米国の長期金利が上がり始めれば、円安圧力はさらに増すだろう。

 むろん、製造業復権を掲げるオバマ政権にも円安許容の限度はあり、ある水準以上に進めば牽制してくると考えられる。筆者の読みでは、リーマンショック前の100―110円あたりがひとつの目途になるのではないか。当面の株高基調を支えるには、十分なレベルだ。安倍政権がリフレ政策の手を自ら緩めるなどのオウンゴールさえしなければ、2013年はいよいよ日本復活の年になるだろう。  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2013年2月12日 21:51:58 : mb0UXcp1ss
米国のお墨付きで円安再開、独仏対立で日本への集中砲火は回避か
ロイター 2月12日(火)15時1分配信

2月12日、ブレイナード米財務次官が日本の「アベノミクス」政策にお墨付きを与えるような肯定発言をしたことを材料に円安が再進行。日本株も円安を好感し大幅反発した。写真は2011年8月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 12日 ロイター] ブレイナード米財務次官が日本の「アベノミクス」政策にお墨付きを与えるような肯定発言をしたことを材料に円安が再進行。日本株も円安を好感し大幅反発した。

【特集】外国為替フォーラム

次回20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、声明内に為替についての記述が盛り込まれる可能性もあるが、為替政策についてはドイツとフランス間でも温度差があり、日本への批判集中は避けられそうだとの見方が強まっている。

<注目される米財務長官の公聴会>

前週末の調整ムードは後退し、再び円安・株高トレンドが再開している。きっかけは米財務省のブレイナード次官(国際問題担当)の発言だ。同次官は11日、15─16日の日程でモスクワで開かれるG20を前に記者会見し、「われわれは、成長を再び活性化させ(デフレから)脱却する日本の取り組みを支持している」と発言。安倍政権の成長戦略、デフレ脱却策を米政府が支持していることを示した。

日米欧7カ国(G7)が「市場で決定される」為替相場へのコミットメントを再表明する声明を発表することを検討中とのG20関係筋の情報が伝わり、円安進行についての警戒感が広がる中での、米国からの「救いの手」だった。

次官の発言を受け為替市場では、米国が日本の為替政策を公式に批判しないとの観測が広がり、円は対ドルで94円前半と2010年5月以来の水準に下落したほか、対ユーロでも126円台まで下落。市場では「介入ではなく金融緩和の結果の円安であり、文句はつけにくいだろう。日本経済が立ち直れば米経済にとってもメリットになるはず」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏)との声が出ている。

ただ、足元の円安について米国では自動車業界から不満の声も聞かれる。このまま円安が急速に進めば、輸出業者からの圧力が大きくなる可能性は大きい。そうしたなか、米国政府の「腰の入り具合」を確かめることができそうだとみられているのが、13日に予定されているジャック・ルー次期財務長官の公聴会だ。「財務長官は為替についての唯一のスポークスマンであり、最初の言い方を在任中続けるものである」(三菱東京UFJ銀行シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏)として注目度が高い。

<ユーロ高への立場で独仏は対立>

欧州でもユーロ高に対する立場でドイツとフランスが衝突。フランスは11日、ユーロ高への対応に向けた協調を主要国に求めたが、ドイツは為替相場の価値は市場が決定するべき、との考えを示した。オランド仏大統領は、中期的なユーロ相場の目標を設定すべきとし、為替政策における政治介入の可能性に言及しているが、ドイツのショイブレ財務相は、ユーロ圏財務相会合後、為替相場を操作すべきでない、と反対の立場を示している。

1月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)改定値では、フランスが09年3月以来の低水準となった一方、ドイツの総合PMI指数は2011年6月以来の高水準となるなど「ユーロ高に対する抵抗力が為替に対する立場の違いを生み出している」(邦銀)とみられている。欧州各国で為替政策に対しての立場が一様ではないことが明らかになり、G20などでの円安への批判集中は避けられそうだとの見方が強まったことも円安再進行の背景だ。

ただ、このまま円安が急速に進むかには疑問視する声もある。「米財務次官の発言でドル/円は94円半ばまで上伸したが、そのままの勢いで95円を超えてゆくのは難しいだろう。G20を控えて、今週はあちこちから発言が出やすい時間帯にあり、どんどん円安に進める状況ではない」と三井住友銀行・市場営業統括部チーフ・エコノミストの山下えつ子氏は話す。

前場の日経平均は大幅反発したが、円安メリットを大きく受けるはずの自動車株はまちまち。トヨタ自動車<7203.T>は約4年5カ月ぶりに5000円台を回復、ホンダ<7267.T>も昨年来高値を更新したものの、日産自動車<7201.T>やマツダ<7261.T>、いすゞ自動車<7202.T>は軟調となった。自動車株は先行して株価が上昇してきたことから、「ドルが95円台といった次の円安ステージに入らないと選別色が強くなりやすい」(国内証券)という。来期以降の業績拡大への期待感は依然大きいが、足元では「自動車株のショートが目立つ」(外資系証券)との指摘もあった。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 内田慎一)

【関連記事】
コラム:円安を容認する米国の地政学的事情=武者陵司氏
日経平均は大幅反発、円安好感で一時300円超高
日経平均大幅反発、円安進行と過熱感後退で
トヨタ株一時5000円回復、円安進行で約4年5カ月ぶり高値
寄り付きの日経平均が大幅反発、円安好感で輸出株買われる
最終更新:2月12日(火)16時47分


02. 2013年2月12日 22:45:22 : sekAj4S9tQ
成長のほぼ止まった飽和的経済では、巨額の財政赤字を抱えた政府によるレフレ策は、期待感という幻惑による短期的付焼き刃でしかなく、中長期的には財政破綻か、インフレによる貧困層拡大への道を歩むという理屈がどうしても分からないのでしょう。

03. 2013年2月12日 22:56:20 : mHY843J0vA

円安株高は、確実に日本への投資を高める要因ですから、それだけでも、民主党に比べ、安倍政権は評価が高まるのは当然ですが

今後、本格的な景気回復と、日本経済の強化、そして実質賃金の上昇につなげるためには、規制緩和や税制改革などの成長戦略によって国内産業を強化し、高付加価値雇用を増やすこと、
一方では長期的な財政支出の削減、つまりは社会保障改革による効率的な再分配政策が必要不可欠になります


04. 2013年2月12日 23:35:14 : mb0UXcp1ss

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51841993.html
2013年02月10日 07:23
日本は不景気なのか
Krugmanがおもしろい記事を書いている。「日本経済は悪い悪いというが、その原因は労働人口が減っていることだ。労働者ひとり当たりのGDPをアメリカと比較すると、80年代とそんなに変わらない。2000年代の成長率はアメリカより高い」。

Noah Smithは「なぜ日本はこれほど力強く成長しているのに悲観しているのか?」と問いかけているが、その答はシンプルだ:問題は経済全体のサイズだからである。企業にとっては、売り上げが労働人口比で伸びても意味がない。毎年0.7%ずつ現役世代が減っていく国の活力が乏しくなるのはしょうがない。

問題は、これをどうすべきかということだ。Krugmanの求める財政刺激は、この統計と整合性がない。労働人口比でみると2000年代初めのGDPギャップはほぼ埋まっているから、今は定常状態に近い。したがって「デフレ脱却」なんて意味がなく、金融政策も財政政策も必要ない。必要なのは、まだアメリカに比べて25%ぐらい低い労働生産性を上げる改革(主として労働市場)だけである。

ただ人々が日本経済の実力を実態以上に悲観しているのはよくないので、「日本はそれほど悪くない」と知ることは重要だ。アベノミクスは偽薬だが、「病は気から」だから、偽薬にもそれなりの効果がある。

2013年02月08日 09:59 本
リフレはヤバい
BLOGOSの片岡剛士インタビューが笑える。「インフレと好景気の間には、どのようなメカニズムがあるのでしょうか?」という質問に対して「賃金が緩やかに上昇していくような形にならないと難しいでしょう」と苦しげに答え、「給料が上がるんですか?」という質問には「早くて大体1年〜1年半程度といった所ではないでしょうか」とごまかしている。

これは嘘である。本書も指摘するように、インフレで実質賃金は下がるのだ。インフレは労働者をだまして賃金を下げ、企業収益を上げて景気をよくする、というのがリフレ派の主張だ。しかし吉川洋氏も指摘するように日本の名目賃金は下がっているのだから、インフレにする意味はない。だから「インフレで景気がよくなる」というのも「格差が縮小する」というのも嘘である。インフレは労働者から企業への所得移転によって格差を拡大するのだ。
こういう嘘だらけの議論を政治家が好むのは、不景気を日銀のせいにできるからだ。選挙区で「景気がよくならない」といわれたら「政治はちゃんとやっているが日銀が緩和しないからデフレが止まらない」と言い訳できる。財政政策には金がかかるが、日銀を脅すのはタダだ。TPPに参加すると農協が怒って票が減るが、日銀はいくらたたいても抵抗できない。

彼らは日銀がどうやってインフレを起こすのかは知らない。馬淵澄夫氏は「金利が上がったら設備投資が増える」と信じ、安倍首相は「1万円札を印刷したら政府が9980円もうかる」と信じている。このように政治家にはいつもお札を印刷して財政赤字を埋める誘惑があるから、中央銀行の独立性が保証されているのだ。

政治家が日銀バッシングをするのは合理的だが、日本の特異性は彼らを応援する自称エコノミストがいることだ。10年以上前に日銀が量的緩和を始めたころは学会でも討論が行なわれたが、いま普通の経済学者でリフレを主張する人はいない。いまだに壊れたレコードのように同じ話を繰り返しているのは、浜田宏一氏のような旧世代のケインジアンと片岡氏のようなアナリストだけだ。

アナリストはインフレが好きである。金融緩和で相場が動くともうかるので、アナリストには(政治家と同じ)インフレバイアスがあるのだ。彼らにとって一番困るのは、物価が安定して相場が動かないことだ。インフレが結果的には金利上昇や財政破綻をもたらすとしても、彼らがその責任を負うわけではないから、アナリストや評論家はつねに「緩和が足りない」と叫び続ける。

本書も指摘するように、リフレ派の議論の最大の欠陥は、どうやってインフレが起こるのかを説明できないことだ。金利はすでにゼロになっているので「期待」に期待するしかないが、期待は実現しなければバブルになって大惨事をもたらす。期待だけでインフレが起こったことなんて一度もない。リフレは笑い話としてはおもしろいが、ヤバいのは政権がまじめにそれを実行しようとしていることだ。
「本」カテゴリの最新記事
• リフレはヤバい
• アベノミクスを考えるための文献リスト
• アンチフラジャイル
• デフレの原因は名目賃金の低下である
• アメリカは日本経済の復活を知っている
• 暗愚の保守主義
• 核燃料サイクルと核兵器
• コストを試算! 日米同盟解体
• 「世間」がそれを許さない
• アメリカという特殊な連邦国家

2013年02月06日 16:33 経済 テクニカル
クルーグマンの原始ケインズ主義
けさのKrugmanのブログがちょっと話題になっている。日本のマスコミは「ノーベル賞受賞者クルーグマン先生がアベノミクスを支持した」とか騒いでいるが、原文を読めばわかるように、彼は金融政策の効果には否定的だ。FRBのQEは副作用がなければやったほうがいいが、流動性の罠を脱却しないかぎりきかないので、いま必要なのは財政政策だというのが彼の意見である(テクニカル)。
これは理論的には正しい。現在の状況が定常成長経路から一時的に逸脱していて、総需要を追加して元の経路に復帰できるなら、財政政策は意味がある。ゴルフボールがバンカーに落ちたような状態なら、そこから思い切りボールを打てば元のコースに戻る。問題はそういうコースが存在するのかということだ。

図1 日本の労働者一人当たりGDP

図1のように日本の成長率は、労働者一人当たりでみると、90年代から2007年までの平均成長率は1.2%で、それほど悪くない。Krugmanは財政政策で上の図の緑の破線の水準に戻せるという。これは定常成長経路が不変だという前提にもとづいているが、1998年の信用不安のあと日本はデフレに入り、以前のトレンドには戻っていない。

図2は生産性本部の統計だが、日本の労働生産性は2008年に3.3%も落ち込み、その後5年でそれを取り戻しただけだ。2005〜11年の平均上昇率は0.5%と、大幅に落ち込んでいる。ところが内閣府などの出す潜在GDPは過去のトレンドを単純に延長して図1の緑色のような状態からのGDPギャップを計算するので、「日銀が量的緩和で3%のデフレギャップを埋めるだけで経済は成長する」というリフレ派の信仰が生まれるのだ。

図2 日本の労働生産性

Cochraneも批判するように、こういうケインズ的モデルはGDPギャップを過大評価し、過大な景気刺激を求めるバイアスがある。日本の場合は、構造的ショックで恒常所得が下がったと考えるのが自然だから、労働生産性上昇率はここ20年の平均の0.9%ぐらいに回復すれば図1の赤線ぐらいに回復する可能性はあるが、もとの成長経路には戻らない。

Rajanも、あれほど大きな金融危機で産業構造は不変だと考えるのが間違っていると指摘している。必要なのは構造不況業種から成長部門へ労働者を再配置する改革であり、生産性が最低の建設業の雇用を増やすアベノミクスが失敗するのは確実だ。

Krugmanの議論は日本のリフレ派に比べれば論理的だが、「政府が需要を追加すれば元の成長経路に戻れる」というのはCochraneやRajanのバカにするold Keynesianである。これはKrugmanのような団塊世代がいまだに昔の成長モデルを信じているという世代的な感覚の違いだろう。日本でも浜田宏一氏は「高度成長時代には数%のインフレが続いていた」というが、今は高度成長時代ではないのだ。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51840923.html
2013年02月04日 10:15 経済
アベノミクスについてのFAQ
私はマスコミ業界では「アンチ・アベノミクス」のコメンテーターという位置づけになったようで、このごろ同じような取材がたくさん来る。ほとんど同じ質問が出てくるので、説明する手間を省くためにメモしておく。この問題についての取材は基本的に受けるが、ここに書いたことぐらい理解してから来てください。
• Q. お金を増やしたらインフレになるのでは?

A. これは一番よくある質問だが、短い答は「そんな簡単な問題だったらとっくにデフレは終わってるでしょ」ということだ。けさのアゴラこども版でも書いたように、2002年からの量的緩和では日銀がマネタリーベースを2倍近くに増やしたのに、物価は上がらなかった。
• Q. なぜお金が増えても物価が上がらないのか? 

A. これもこども版に書いたように、バナナの値段がゼロになったら、いくらバナナを増やしても売れないのと同じだ。これ以上、金を借りたいと思う人がいないから金利がゼロになるので、日銀券を「押し売り」しても借りる人は増えない。
• Q. 金融緩和したら円安になるのでは?

A. マネタリーベースの変化率と為替レートには相関がない。物価に影響するのは金利であって通貨供給ではないからだ。2010年から日銀は、大規模な「包括緩和」を行なった。これでマネタリーベースが増えたので(リフレ派の貨幣数量説によれば)円は安くなるはずだが、図のように逆にドル安が進んだ。昨年2月に日銀がインフレの「めど」を発表したときは円が下がったが、すぐ戻ってしまった。

マネタリーベースの前年比増加率(青)と為替レート(赤)

11月後半から始まった安倍氏のリフレ発言で円安が始まったように思われているが、実は図のようにドルやユーロの値上がりは10月から始まっている。これはユーロ危機が一段落したために、リスクオフで円に逃避していた資金が欧米に環流しはじめた――というのが為替トレーダーや経済学者の説明だが、この流れに乗った安倍氏は運がよかった。
• Q. 日銀が国債を買えば長期金利が下がって緩和効果が出るのでは?

A. これは理論的にはありうるが、実際には日米ともにそういうことは起こっていない。ただ日銀が100兆円以上も国債を買っていることが相場を安定させ、国債バブルの原因になっている。邦銀は「金利が上がったら日銀が買い支えてくれる」と安心して国債を大量に購入しているが、これは潜在的なリスクを増大させている。
• Q. 「インフレ期待」を起こせばインフレになるのでは?

A. 為替や株価は相場の予想で動くが、物価は実需がないと動かない。これは80年代のバブルでも2000年代のアメリカの住宅バブルでもみられた特徴で、両者の乖離が大きいときは危険である。予想インフレ率は、物価連動国債の「ブレークイーブン・インフレ率」で知ることができるが、図のように2006(平成18)年までの量的緩和でほとんど上がっていない。

• Q. インフレが2%になるまで緩和して2%になったら止めればいいのでは?

A. ここ14年で平均−0.4%の物価上昇率を2%にするのは、普通の量的緩和では不可能だ。インフレ予想を起こすには、リフレ派のいうように「レジーム・チェンジ」で通貨の信認を毀損するしかない。たとえば日銀が国債を300兆円ぐらい買い占めれば、市場は財政ファイナンスが始まったと考えて国債が暴落し、金利が暴騰してインフレスパイラルが起こるだろう。それが2%で止められるだろうか。
• Q. 財政政策でインフレが起こるのでは?

A. 理論的には起こりうるが、かつての麻生政権で行なわれた91兆円の補正予算でも、景気も物価もほとんど変わらず、政府債務が積み上がっただけだった。これは投資需要が弱いので、公共投資が民間投資の「呼び水」にならないためだ。リーマンショックの直後のように大きなGDPギャップが発生したときは財政政策も意味があるが、今のような長期停滞には役に立たない。
• Q. ではなぜ安倍首相は日銀を脅しているのか?

A. 単に経済学を理解していないだけだと思うが、円安・株高で支持率は上がったし、TPPや規制改革など政治的に厄介な問題を先送りする目くらましとしても便利だ。ただ麻生財務相は金融政策がきかないことを理解しているので、日銀との共同声明はほとんど何もコミットしていない。今のままでは、よくも悪くも何も起こらない。

こども版ゼロ金利って何?
池田 信夫
小学生のみなさんはお金を借りたことがないと思いますが、日本ではお金を借りて新しい仕事をする人が増えないので、デフレが10年以上つづいています。安倍首相は日本銀行に「輪転機をぐるぐる回してもっとお金を刷れ」といっていますが、日銀がお金を印刷したら、デフレは止まるんでしょうか?

日銀はみなさんに直接お金を貸してくれません。お金を貸してほしいと思ったら銀行に行き、銀行はお金を日銀から借りるのです。このとき、日銀から借りたお金に何%か金利を乗せて返すことになっています。これを政策金利といいますが、今はほとんどゼロです。これをゼロ金利といいます。

昔は長期金利(10年もの国債などの金利)が8%ということもあったのですが、このごろ会社が金を借りなくなったので、金利が下がったのです。これはちょっとむずかしいと思いますが、景気のいいときは8%の金利で借りても10%の利益が出たらもうかりますが、景気が悪くなって7%しかもうからないと8%で借りる会社はなくなります。借りる会社が減ると金利が下がるのです。

金利というとわかりにくいので、バナナで考えましょう。1ふさ300円ぐらいしたバナナが、すごい豊作でどんどんお店に並んだとします。いくらバナナの好きな人でも、1日に何十本も食べられないので、バナナの値段は下がります。とうとうバナナが余って値段がゼロになったとしましょう。

ここでバナナをもっとお店に並べると何がおこるでしょうか。何もおこりません。バナナの値段がゼロだということは、みんなおなかいっぱいになって「バナナなんか見るのもいやだ」と思っているということなので、いくらタダでも買わないのです。

同じことが金利にもいえます。金利は「お金の値段」ですから、今のように金利がゼロになっているということは、会社が「もうお金が余って借りる必要はありません」といっているのと同じなのです。ここで日銀が無理やりお金を貸すのを、むずかしいことばで量的緩和というのですが、これはバナナの押し売りみたいなものです。



マネタリーベース(赤)と消費者物価(青)の前年比増加率(%)


日銀が押し売りしても、借りる人は増えないので、お金は銀行に「ブタ積み」になっています。上の図は日銀の出すお金(マネタリーベース)と物価を比べたものですが、日銀のお金の量(赤い線)がはげしく動いているのに、2000年以降はほとんど物価(青い線)は動いてませんね。ゼロ金利になって、お金が世の中に増えなくなったからです。

商売をやった人ならわかると思いますが、今「お金が足りなくて商売ができない」という会社はありません。お金はジャブジャブに余っていて、日本の会社の預金は借金より多いのです。問題はもうかる仕事がないことなので、これ以上お金を増やしてもデフレは止まりません。

安倍さんはお金を貸す側から見ているのでしょうが、借りる立場から見ると日銀と銀行の間でお金がどう動いたって関係ありません。いくらお金があっても、借りる人がいないとお金は動かないのです。たぶんお坊ちゃまの安倍さんも、お金を借りたことがないのだと思います。よい子は、よく知らないことに口を出すのはやめましょう。
関連記事:デフレって何? 
バブルって何?
円安って何?
国債って何?
.

2013年02月03日 14:00 経済
北欧はなぜ成功したのか
バラマキ補正とインフレ目標に続く「3本目の矢」は、成長戦略だそうである。潜在成長率を上げる政策には意味があるが、経産省の張り切っている「新ターゲティングポリシー」なんて有害無益だ。それより今週のEconomist誌におもしろい特集が出ている。

アメリカやEUが不況から抜け出せないのに対して、北欧諸国が元気だ。上の図のように一人当たりGDPは世界の上位を占め、成長率も高い。その最大の原因は政府の効率性だ、とEconomist誌はいう。政府への国民の信頼度は高く、「政府を信頼する」と答えた国民の比率は50〜60%とEU平均の2倍近い。

この一つの原因は政府が小さく、地方分権化されていることだ。人口が最大のスウェーデンでも900万人と大阪府ぐらいで、それがさらに小さな州にわかれて予算の独立性も高いので、国民は「足による投票」で地方政府を選べる。政府予算は公共事業や補助金ではなく所得の直接再分配に使われているので、負担と受益の関係がわかりやすい。

北欧といえば「高福祉・高負担」というイメージは過去のもので、スウェーデンの政府支出のGDP比は90年代の68%から今は50%以下にまで下がり、政府債務は欧米よりはるかに小さく、「経済的自由指数」でも英米とほぼ同じになっている。

北欧諸国に特徴的なのは、企業に対する補助金や解雇規制がほとんどない代わり、個人のセーフティネットが手厚いことだ。経営の悪化した企業は守らないで破綻させるが、失業者には職業訓練をほどこし、それを条件として手厚い失業手当を出す。産業別労組の組織率が高く再就職が容易なので、企業の破綻は多いが長期失業率は低い。労働者が失業を恐れないので、90年代の金融危機で自殺率は下がった。

このように企業の新陳代謝を進めて労働人口の移動をうながしたことが北欧の成功の原因だ、という点で多くの経済学者の意見は一致している。北欧の政府は、産業の中心が製造業からサービス業に変わるのに対応して産業構造の転換を促進し、エリクソン、イケア、H&Mといった新しい企業が成長し、知識集約型の産業に移行した。

日本政府の「成長戦略」は、これとは真逆である。ゾンビ企業を延命する一方で、個人に対するセーフティネットは生活保護ぐらいしかない。補助金などの形で間接的に所得補償をしているため、そのほとんどは農協などに中間搾取されてしまう。何より有害なのは、ゾンビ企業が優秀な労働者をロックインして新しい分野への挑戦を阻害していることだ。

幸か不幸か、こうした企業に依存した「日本型福祉社会」は限界に来ており、そう長く維持できない。政府が裁量的な介入から撤退して企業の保護や規制をやめ、個人ベースの福祉社会に移行することが最善の成長戦略である。

LinkWithin
2013年02月02日 14:48 経済 テクニカル
ゾンビ企業と破滅のオプション
アゴラで紹介した星=カシャップの「ゾンビ理論」には批判もあるが、日本経済のメタファーとしてはおもしろいので、これをタレブのアンチフラジャイル理論で考えてみた。
タレブが日本からヒントを得たことでもわかるように、安倍政権に代表される厄介な問題の先送りは、日本の政治と経済に共通の特徴である。欧米の金融危機の後処理の失敗も同じ原因で起きているので、日本独特というわけではないが、それが20年以上の長期にわたるのは特異である。

それをタレブはオプション性という概念で説明する。これは金融のコール・オプションのように、小さな失敗のコストを負担する代わりに大きな成功の利益を得るしくみだ。ここでは変化が大きくなればなるほど利益も大きくなるので、そこから利益を得るイノベーションが重要になる。

たとえばスティーブ・ジョブズのプロジェクトは、ハードウェアとソフトウェアが切り離されてモジュール化されているので、自分のつくりたいものをつくって失敗とわかるとすぐ撤退し、うまく行ったプロジェクトに資金を集中する。これによって図の上のようにペイオフは凸関数になる。これがイノベーションを生むしくみだ。

これに対して日本の企業のようにすべてのプロジェクトが相互補完的に組み合わさっていると、図の下のように凹関数になり、小さな利益を上げる代わりに大きな損失を抱えてしまう。プロジェクトは互いに密結合しているので、一部をやめることができず、その損失を他の利益で補填することで全体の効率が低下し、90年代の日本企業や2000年代の金融商品のように雪ダルマ式に損失がふくらむのだ。ここでも先送りはオプション価値を増やすのだが、それは破滅を拡大する逆オプション価値である。

このような非線形性は社会現象の本質的な特徴なので、それを線形の均衡理論で近似しようとするマクロ経済学の予想はつねにはずれる。競争に勝つのはオプション性を利用するイノベーターであり、負けるのは「もしかすると地価が戻るのではないか」というオプションに賭けてゾンビ企業に追い貸しする銀行である。

「モジュール化がオプション価値を生み出す」という話はBaldwin-Clarkのコンセプトで、拙著『ムーアの法則が世界を変える』でも紹介した。藤本隆宏氏などはこれを「組み合わせ」と矮小化して日本企業の「すり合わせ」と対照しているが、それは大きな間違いである。系列企業が「一家」になった日本企業は凹関数の逆オプション価値を拡大し、本質的なイノベーションを抑止しているのだ。

日本では企業も政治も互いに密結合しているので、逆オプション価値は極大化する。かつては政権交代すれば日本経済は回復する(かもしれない)というオプションが先送りの言い訳だったが、今度は日銀が輪転機をぐるぐる回せば回復する(かもしれない)という幻想に置き換わった。タレブも指摘するように、組織が複雑化するほど「一発逆転」に賭けて先送りする傾向が強まり、負けが込むほど賭け金が大きくなる。

ねばった結果、奇蹟が起こって回復する可能性も論理的にはあるが、普通は最後にちょっとした偶然ですべてが崩壊する。そのきっかけが何かは予想できないが、起こることは確実なので、ブラック・スワンは「想定外」の出来事ではない。アベノミクスは、破滅の賭け金を一段と大きくした笑劇として、歴史に記憶されるだろう。


2013年01月15日 13:56 経済
もう貿易立国には戻れない
きょうは久々にドルが1円以上も下げて88円台になった。甘利経済再生相の「過度な円安になれば輸入物価にはねかえって国民生活にはマイナスの影響も出てくる」という発言が利食い売りのgood excuseになったようだが、すぐ89円台に戻した。

ドル/円の名目為替レート(緑)と実質実効為替レート(赤)

某外銀のファンドマネジャーによると「現在のドル円レートは当社の予想レンジの上限をすでに突破した」とのことだが、上の図のように実質実効為替レートでみると、2008年まで毎年ほぼ3%ずつ下げていた円が金融危機の影響で跳ね上がり、過大評価されている。次期日銀総裁の候補とも目される岩田一政氏によれば「1ドル=95円が適正レート」だとのことだが、これは実質実効レートのトレンドを延長すれば出てくる(それでもまだ過大評価)。

現状の円レートは貿易財の購買力平価や日米の金利差で見ると過小評価だが、右の図のように経常収支が赤字になったことを考えると、長期的には円が弱くなる傾向は変わらないだろう。素直に実質実効レートのトレンドを延長すると、あと2割ぐらい下げても驚かない。

安倍首相は、こうしたトレンドの反転の時期に出て来た「時の氏神」である。彼の願望どおり1ドル=100円は不可能ではない。甘利氏は100円以下のレートは許容しない(逆にそこまでは許容する)と発言したが、そこで止めることができるかどうかはわからない。ドル売り介入をするとしても、数兆円が限界だろう。世界の外為市場で動く資金は1日5兆ドルを超えるので、相場が大きく動いたら政府の介入では円の暴落は止まらない。

要するに日本は貿易立国の時代を過ぎ、貿易赤字を所得収支の黒字(金利・配当収入)で補う「年金生活者」になったのだ。日本の長期停滞は、円安で解決するような簡単な問題ではない。これから大事なのは、もう余り増えない資産の価値を守ることだが、いまだに高度成長の夢を忘れられない政治家とマスコミが円の目減りを喜んでいるのは救いがたい。

「経済」カテゴリの最新記事
• 安倍首相のモラルハザード
• クルーグマンの原始ケインズ主義
• アベノミクスについてのFAQ
• 北欧はなぜ成功したのか
• ゾンビ企業と破滅のオプション
• 「面従腹背」のインフレ目標に喜ぶ首相
• 時代遅れの日銀万能論
• 浜田宏一氏のゾンビ経済学
• バブルの思い出
• もう貿易立国には戻れない


05. 2013年2月13日 00:28:46 : mb0UXcp1ss
2013年02月12日
第48回 ビッグマック指数からみると円安は行き過ぎの水準に?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週8日、麻生財務相が「我々が意図しないくらいに〜」といった表現でこのところの急速な円安に言及したことで、ドル/円相場が円高に振れる局面がありました。この2ヶ月あまりで15円近くも円安進行となっているドル/円相場、麻生財務大臣にとってもこのスピードは想定を超えるものだったということでしょうか。これを受けて「日本当局は90〜95円くらいが満足な水準なのであり、市場もそれを徐々に理解するだろう」「日本の姿勢が変化している兆しがあるなら市場は小休止することになろう」といった見方も浮上してきています。果たして日本にとってどの水準が満足なのか、浜田宏一内閣官房参与は100円くらいがちょうどいい、と発言しているのですから100円到達は想定内かと考えてもいいと思いますが、問題はそのスピードなのでしょう。しかし本当に100円くらいがちょうどいいのでしょうか?これは海外から見ても許容できる水準なのでしょうか。

英経済誌エコノミストは8日、世界中で売られているマクドナルドのハンバーガー「ビッグマック」の値段をドルベースで比較しどの国の通貨が割安か割高かを見る「ビッグマック指数」の最新値を公表しました。これは為替の適性水準は基本的に「モノの値段」で決まるとした考えに基づいていたものです。仮にアメリカのビッグマックが1個1ドルだった時に、日本のビッグマックが1個90円だった場合、同じ物の値段ですから1ドルと90円は同じだということになりますね。これは購買力平価といって、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという考え方なのですが、実際の為替レートは購買力の他にも様々な要因によって影響されて動く為、実際の市場は購買力平価から大きく乖離して動くこともあります。しかし、中長期的に大きく乖離した状態が続くことは難しいと考えられており、価格と為替レートは長期的に調整が進み、いずれは同じ貿易財の入った買い物かごが世界中で同一価格になっていくとされています。つまり現状において物価の高い国の通貨は長期的に下落し、物価が低い国の通貨は長期的に上昇するという考え方です。

この最新のビッグマック指数によると、日本の円はドルに対し20%近くも割安だという結果となりました。中心値となる米国のビッグマックの価格が4.37ドルなのに対し、日本は3.51ドルで、19.7%も安かったのです。確かに昨年11月から2ヶ月あまりで15円近くも円安が進みましたが、これはこれまで長きに渡って円高に苦しんだ分の「水準訂正」の範囲ではないのでしょうか?!歴史的円高水準の70円台にあったドル円相場が90円台に水準訂正が行われたくらいでドルより20%も割安だというのは腑に落ちないのですが...。

実は戦後の円の最高値をつけた2011年の1ドル=75.35円、この時は1%の割安にまで米国との格差が縮小していました。つまりビッグマック指数から換算すると70円台の水準が円相場の適正水準である、ということになります。輸出企業が赤字に苦しんだ70円台が適正水準だというビッグマック指数が正しいとは思えませんが、ただ、これまでも購買力平価を材料に日本には円高圧力がかけられてきた経緯があるため無視はできないのです...。今週15〜16日にモスクワでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。日本の当局者は、日本の新たな金融・財政政策と円安について議論がある可能性はあるものの、競争的な通貨切り下げを行っているとして日本への風当たりが強まる状況には至らないだろうとしています。しかし、ドイツやロシアの中央銀行からは通貨切り下げ競争が起きる危険性があるとして苦言を呈されており、もしG20で円安について批判が集中するようなことがあれば、ドル/円相場も一時的には大きく動く可能性があることに留意しておきたいところです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。


06. 2013年2月13日 00:35:17 : mb0UXcp1ss
「悲観的な未来」は我々の行動で変えられる

「地球社会への最終警告書」を読み解く(第2回)

2013年2月13日(水)  竹中 平蔵

 1972年に世界的シンクタンク、ローマ・クラブが出した世界予測『成長の限界』は、資源枯渇や持続可能性について全世界が考えるきっかけになった。40年後の今、著者の一人、ヨルゲン・ランダースが『2052 今後40年のグローバル予測』を発表した。『成長の限界』を受け継いだ「21世紀の警告書」の中身を、同書日本語版の解説を執筆した竹中平蔵氏と著者ランダースの言葉からひも解く。第2回は前回から引き続き、竹中氏による解説をお届けする。
未来への投資と資本主義・民主主義


『2052 今後40年のグローバル予測』(日経BP社)
 著者ヨルゲン・ランダースが『2052 今後40年のグルーバル予測』を書いた最大の目的は、私たちが「パラダイム」が変化したことを真に理解し、健全な危機感を持って速やかに行動を起こすように促すことだ。私は特に以下の二つの観点から、ランダースのメッセージを受け止めたいと思う。

 第一のメッセージは、我々は未来のために大きな投資をするという決意をしなければならない、という点だ。

 ランダースによれば、平均して人間は1年間に生産する財・サービスのうち、75%を消費し、25%を投資に回している。しかし今後、世界が資源枯渇、環境汚染、生態系破壊、気候変動に目を向けざるを得なくなり、その結果、従来の投資に加えて2種類の投資を増やさざるをえなくなる。

 一つは、資源枯渇や環境破壊を避けるための「予防的な自発的投資」。もう一つは、資源・環境問題によって引き起こされたダメージを修復するための、いわば「事後の強制的投資」である。これらを足し合わせると、投資は現在の1.5倍、つまりGDPの36%を占めるようになる。

 ちなみにこの比率は、第二次世界大戦末期の(つまり非常時の)米国の国家予算に占める軍事費の比率に相当する。著者が言うように、この比率は相当に高いものだが、かと言って決して実現不可能な比率ではないのだ。

ポピュリズムという短期主義が危機を招く

 第二のメッセージは、今後の国家の役割に関するものだ。ランダースは、以上のような投資の促進は通常の資本主義経済(市場経済)では、極めて緩慢なスピードでしか進まないことを、過去40年の経験から指摘している。

 現状では、短期主義、つまり近視眼的な視点が蔓延している。したがって今後は、これを実現させるための国家(政府)の役割が極めて重要になると結論する。そのため具体的な施策として、増税によって消費財・サービスの需要を縮小させ、資源配分を変えていくことが主張されている。賢い政府のより強い役割が不可欠、と述べているのである。

 以上、二つのメッセージから得られる示唆は、なかなか複雑で厄介なものだ。市場は確かに近視眼的である。

 多くの企業は40年先の地球社会を考えることなく、目の前の利益最大化に走っており、その結果、資源の枯渇と環境破壊が進んでいく。しかし、それに対して政府はどうか。政府の重要なプレーヤーである政治家や官僚は、時に企業以上に近視眼的である。

 19世紀のアメリカの牧師ジェームズ・F・クラークは、「政治家は次の時代を考える、政治屋は次の選挙を考える」という名言を残したが、残念ながら政府関係者の多くは、次の時代に思いを致していないように見える。

 多くの国で政治はポピュリズムという短期主義に走り、結果的に政府は愚かな政策を採ってきた。その結果が莫大な財政赤字であり、これが世界的な金融危機という新たなグローバル問題を惹起している。その政府に、まず愚かな政策をやめさせねばならない。そのうえで、長期の地球社会を運営する賢い政府になる、ということが求められている。これはとんでもない難題である。

 著者ランダースは、地球上の人々がそれぞれに前向きのアクションを起こすことを期待し、『2052』を通じて警告を発している。その中身としては、個人としての節約努力、企業としての社会貢献などさまざまなものがあろう。しかし、個人が起こすべき最大の行動は、地球問題を解決できる賢い政府を作るための健全な投票行動なのかもしれない。民主主義社会において、それができるのは我々以外にはいないのだ。

 今まさに、これまで人間社会を発展させてきた資本主義と民主主義そのものが問われていると言えよう。

グロークラインの先進国として

 これからの40年は、決して悲観一色の時代ではない。しかし、持続可能ではない今の地球社会のシステムは間違いなく綻びを拡大し、2052年以降の世界を決定的に悲観的なものにする可能性が高い。これからの40年こそ、人類の希望を繋ぐ最後のチャンスなのだ。


ヨルゲン・ランダース氏(写真提供:ローマ・クラブ)
 多くの示唆に富むこの本の中で、日本に関係する興味深い表現がある。「グロークライン」、つまりグロース(成長)とデクライン(衰退)の同時進行である。すでに日本では、GDP全体は伸びない、ないしは減少し、デクラインの状況にある。しかし、人口減少によって1人当たり所得は成長(グロー)している。日本はグロークラインの先進国だが、今後の世界、とりわけ先進工業国は、このグロークラインの状況になるとランダースは言う。

 グロークラインになれば、持続可能な地球を取り戻せるかもしれない。問題は、グロークラインは実現しても、すでに手遅れになっているかもしれない、という点にある。いずれにしても日本は、グロークラインの先進国として、こうした状況下でどのように社会を安定的に運営するか、その手本を世界に示さねばならない。


竹中 平蔵(たけなか・へいぞう)

1951年生まれ。1973年一橋大学経済学部を卒業後、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)に入行。89年米ハーバード大学客員准教授。2001〜06年に経済財政政策担当相、金融担当相、郵政民営化担当相、総務相を歴任。2006年から慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長。(写真:的野弘路)


2052年からの警告

1972年に世界的シンクタンク、ローマ・クラブが出した世界予測『成長の限界』は、資源枯渇や持続可能性について全世界が考えるきっかけになりました。40年後の今、著者の一人、ヨルゲン・ランダースが『2052 今後40年のグローバル予測』を発表しました。『成長の限界』を受け継いだ「21世紀の警告書」の中身を、同書日本語版の解説を執筆した竹中平蔵氏と著者ランダースの言葉からひも解きます


07. 2013年2月13日 00:44:30 : mb0UXcp1ss
第268回】 2013年2月13日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
アベノミクス相場が「バブル」になるとしたら
儲けたい潜在読者を刺激する
「安倍バブル」という言葉

 最近、メディアで「安倍バブル」という言葉を見かける。対象としては、昨年暮れから(正確には、野田佳彦前首相が「やりましょう」と解散に言及した11月14日の翌日から)最近までの株価上昇と円安を指しているわけだが、使われ方のニュアンスが2通りあるようだ。

 1つは、「バブル」という言葉を使って、上げ相場で一儲けしたいと考える潜在読者を刺激したいという目的に基づく「煽り」だ。背後には、ある週刊誌が約1ヵ月前の特集に「安倍バブル」と謳った号で大いに売り上げを伸ばしたので、その週刊誌ばかりでなく、他誌もこれに追随した特集を組むようになった、という事情がある。

「うちも、今は、これで行かざるを得ないのですよ」と、ライバル誌の取材記者が言っていた。

 もう1つのニュアンスは、現在までの株価の上昇に対する批判を含んでいる。安倍政権になって、まだほとんど何もしていないのに、株価が上昇するのはおかしいではないか、「これは、中身のない株価上昇だ」と言っている。

 今の株価を後から「中身がない株価上昇だった」と振り返ることが絶対にないとは言わないが、経済の実態が大きく変わったわけでないのに「期待」を反映して株価が上がることはよくある現象だ。

 たとえば、1980年代の後半に起こった日本のバブルの始点は1986年だった。この年、株価は日経平均で42.6%も上昇して、年末には1万8701円だった。このとき、前年のプラザ合意から大きく進んだ円高の影響もあり、企業業績はパッとしなかったが、金融緩和の進行と一段の緩和への期待を背景に、株価は大いに上昇した。

 当時、筆者は、投資信託のファンドマネージャーとなって最初の担当ファンドを運用し始めた頃だったが、「カネ余り」という言葉が、ちらほらと聞こえ始めたように記憶する。

 次の図は、経済状況と資産価格の変化を、時計の針の回転に喩えて説明したものだが(説明は楽天証券のホームページ掲載の拙稿を参照されたい)、経済と資産価格が「9時」を回って「10時」に向かう際には、株式市場用語で言うところの「金融相場」による株価の上昇が起こり、これに企業の業績や成長率で見た景気が、十分追いついていない場合が多い。

 ここから先、筆者の定義での「バブル」と言えるところまで、株式をはじめとする資産の価格が上昇するのかどうかは、まだわからないが、昨年末から今年にかけてのここまでの推移は、経済と相場の循環としては、典型的なものだ(前述の図参照)。

 日本経済の現状は「9時」を回りつつあるところだろう。バブル崩壊以来、日本は、主として金融引き締めバイアスのため、「9時」をはっきり回ることができなかった。

 最も近い「残念」は、サブプライム問題がきな臭かった海外の要因もあったが、これを的確に「フォワード・ルッキング」(当時の福井日銀総裁の言葉)できずに、金融緩和の終了からゼロ金利解除に突っ走った2006年だった。

 ちなみに、先んじて大規模に金融緩和してきた米国経済は10時を回り、問題解決には時間がかかりそうだが昨年が「最悪期」だったように見える欧州経済は7時といった辺りではないか。

妥当なバブルの定義は
長期的に継続不可能なほどの高騰

 筆者が妥当だと思っている「バブル」の定義は、「長期的には継続不可能なほどの(資産)価格の高騰状態」というものだ。

 ここで「長期」が具体的にどれくらいの期間を指すのかが問題だが、一般論として「数年」としておく。感覚的には「2、3年」と言い切ってみたいところなのだが、ここまで保たない場合もあるし、これを超える場合もある。

 さて、後述のように、現在の日経平均で1万1000円程度の状況を、筆者は「バブル」だとは思っていない。

 かつてのバブルを知る者からすると、「バブルとは、この程度の生やさしいものではないよ」と一言いいたくなる。

 バブルの生成と崩壊のメカニズムについては、別の機会に詳しく書いてみたいが、「金融緩和」はバブルにとって「必要条件」だが、「金融緩和」だけでは本格的なバブルは起こりにくい。

 バブルが本格化するには、金融ビジネスがリスクを過小評価して信用を拡大させ、この資金が資産市場に向かう「バブルの種」(=リスクを誤認させる仕掛け)が必要だ。

 これは、80年代後半の日本バブルでは、通称「握り」という利回り保証(当時も違法だが、一般的な取引慣行だった)を伴っていた「財テク運用」(事業会社による、大規模に借り入れを行った株式運用)と、日本の地価は下がらないという「土地神話」だった。

 また、1990年代後半に米国で起こったネット・バブルでは「ネットビジネス神話」が、サブプライム問題から2008年のリーマン・ショックに端を発する金融危機に至る米国の不動産バブルは住宅ローンの「証券化商品」が、実際には存在するはずのリスクを小さく見せる仕掛けとなっていた。

本格的な「安倍バブル」になるには
どこかの誰かがもう一工夫する必要が

 金融ビジネスは、これらの仕掛けを隠れ蓑にして、顧客や株主にリスクを取らせて信用を拡大し、金融マンが大いに稼いだのだった。

 現在の、せいぜい「アベノミクス相場」が、本格的な「安倍バブル」になるためには、「大胆な金融緩和」は必要条件として、どこかの誰かがもう一工夫することが必要だろう。

 筆者の心の中には、「久しぶりにバブルになるのは面白い」という期待が半分、またバブルになってその崩壊の悪影響を被るのはたまらないという警戒感が半分あるが、「これから何が出るのか?」については大いに注目している。

 良し悪しを別として、多くの場合、資産価格と経済は単なる「ブーム」をオーバーランして「バブル」に至る(原因は、主として、金融ビジネスと金融マンのインセンティブと行動によるものだと筆者は考えている)。今回はどうなるのが興味深いが、まだかなり先の問題だ。

 将来のバブルが心配だからと言って、早めに金融を引き締めたらいいというものではないのだが(バブル対策には別の政策手段を充てるべきだ)、この辺りの機微は世間にも日銀と金融監督当局にも、正確に理解されていないような気がする。

投資家も投資をしない人も必要!
バブルの具体的なチェック方法

 さて、投資家にはもちろん、投資をしてない人にとっても、「現状はバブルか?」という問いに対して、具体的なチェックの方法を持っていることが役に立つ。

 特に、株価のバブルに対する筆者のチェック方法をご紹介しよう。手順は以下の4段階だ。

 (1)東証一部の株価の「益利回り」を計算する。「日本経済新聞」に載っているPER(株価収益率)の逆数を計算して、%単位で表せばいい。

 (2)GDPの名目成長率の予想として自分が納得できる数値を決める(決められなければ、まずは政府の見通しを見てみよう)。

 (3)現在の長期金利(10年国債の利回り)を調べる(新聞に載っている)。

 (4)「益利回り」+「GDP名目成長率」−「長期金利」を計算する。

 (4)の計算結果を「暫定リスク・プレミアム」と名付けよう。この判定基準は以下の通りだ。

 ・7%以上なら、「株価は安い。投資のチャンスかもしれない」
 ・6%前後なら、「株価は普通の範囲内だ」
 ・5%以下なら、「株価は高すぎる可能性が大きい。警戒せよ」

 今の数字でやってみよう。

 東証一部のPER(今期。日本経済新聞社の利益予想に基づく)は20倍だ。これを益利回りにすると、5%(1÷20=0.05=5%)となる。

 2013年度に関する政府の成長率見通しは、現在、実質で2.5%、名目では2.7%だ。判定に使うのは名目成長率の方だ。消費税率を引き上げたい財務省の意向を反映してやや高めの数値になっているかも知れないが、これで計算してみよう。

 先週末の長期金利は、0.755%だったが、四捨五入して0.8%としよう。

 すると、「益利回り+GDP名目成長率」は「長期金利」に対して、6.9%ほど上回っている。

政府の想定通りに経済が推移するなら
現在の株価はむしろ「まだ安い」

 前者は、企業の利益が当面のGDP成長率と同一の成長率で将来均一に続くと仮定した場合に、株式が投資家に無理なく提供し続けることのできるリターンに相当し、長期金利と差の計算は、株式の期待リターンの国債利回りに対する「リスク・プレミアム」を求めており、ここではその大小を基に株価の高低を判断しようとしている。

 政府の想定通りに経済が推移するなら、現在の株価はむしろ「まだ安い」。政府見通しよりも1%くらい下回って推移する経済を想定した場合に、「株価は普通だ」というくらいが現状の水準のようだ。

 今後、折に触れて、「暫定リスク・プレミアム」を計算してみて、その構成要素について考えてみることが、株式市場と、ひいては日本経済全体と付き合う場合の「転ばぬ先の杖」になるだろう。

 (1)株価と企業利益のバランスでPERが上昇しすぎないか(益利回りが下がらないか)

 (2)予想される名目GDPの成長率が下がらないか

 (3)長期金利が上昇しないか

 といったことを時々気にしてみて欲しい。

 企業業績が改善して利益が増えてPERが下がり(益利回りが上がり)、さらに成長率見通しが上方修正されて、これらを追いかけるように株価が上がるような展開が到来するなら理想的だが、さて、どうなるだろうか。


08. 2013年2月13日 05:50:24 : eS5CPZpets
長いだけで迷惑なコメント。
長文が書きたければ自分で記事を投稿すればいい。

09. 2013年2月13日 10:57:19 : q99nVAyNSQ
>08
ほんと長いだけで意味の無い駄文は迷惑。


で。曲がり屋の大明神武者大先生のご託宣は

大和証券時代からいつも反対指標として重宝されている。


10. 2013年2月13日 12:51:05 : xEBOc6ttRg


 ビジネス知識源(本マガジンは無料版です) 

おはようございます、吉田繁治です。先ほど送ったVol.284号で
「円建て輸出」の記述に、当方の誤りがありました。正しくは以下
です。

◎「円建て輸出では、円安になっても、円の輸出価格は価格を上げ
ない限りそのままです。しかしドルから見た円での商品価格が下が
るため、価格競争力は強化され、輸出が増える要素になります。」

本稿は、これに関連する部分(目次の5.項)を訂正した全文です。
全体の論旨は同じですが、「5.項」の円安での輸出の予測が変わ
ります。お詫びし訂正します。前の284号は、廃棄してください。

日銀の、次の総裁として有力視されている岩田規久男氏の『デフレ
の経済学(2001)』の、骨子を解釈しながら、論述します。

この書の結論を言えば、日銀が「果敢に」、国債を買い増しして、
円を増刷することによって、マネー・サプライ(M2やM3)を、年率
で4%以上増やすことができれば、デフレは収束するというもので
す。M2は、その国の全部の現金と預金、M3はM+CD(譲渡性預金)
です。

マネタリズムを作ったフリードマンが言った「デフレもインフレも、
貨幣現象」であるというのがこれです。常に、経済事情が異なるあ
らゆる国で、これが正解かどうか、実は分からない。一種の学術的
なドグマでしょう。正解の時期と国はある。正解でない国と時期も
ある。

【マネタリズムの、基本式:簡単です】
数式では、「M(マネー・サプライの量)×Mの流通速度(V)=一
般物価水準(P)×実質GDP=名目GDP」、です。(注)名目は、物
価の下落率であるGDPデフレーターを、実質に加えたものです。

マネーの流通速度、言い換えれば、現金と預金が、商品の買い物と、
物的な設備投資に使われる速度(マネーの回転率=名目GDP÷マ
ネー・サプライの量)は、若干の低下傾向はあっても、ほぼ一定と
する(フリードマン)。

(注)預金で、他の金融商品やデリバティブを買っても、マネーの
流通速度は上がりません。収入や預金で、実物経済の商品を買い、
設備への投資をすることがマネーの流通速度です。

流通速度を、短期では一定とすると、マネー・サプライ量の増加
(例えば年率6%:日本では約70兆円)は、実質GDPを潜在GDPに近
づけて増やすか、それ以上なら、物価を上昇させる。潜在GDPは、
失業が自然失業率(日本では2%か)のときの、生産力です。日本
では、現在のGDP+2%くらいと、低い。

【4%以上の増加が必要】
●岩田氏の見解では、日本経済は、過去、年率のマネー・サプライ
の増加が4%(現在の金額では40〜50兆円)以下の時期は、物価が
下がるデフレになっていた。物価を上げるには、年率で4%以上(7
0兆円以上)が必要としています。

2012年12月での、日本のM3の残高は1135兆円です。
企業・世帯・自治体の、現金と預金の総額だと理解していい。

年率の実際の増加は、1〜3%の範囲でした。00年代の傾向は、ほぼ
2%増でしかない。4%増以上でないと、日本の物価は下がる傾向に
なるとするのが岩田氏です。
http://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms1212.pdf

日銀は、一般には、銀行や保険会社としか、取引しません。銀行・
保険がもつ国債・社債・債券・CP等を、債券市場で買い、「日銀当
座預金」に現金を振り込むことが、ベース・マネーの増発です。
ベース・マネーは、「現金(82兆円)+銀行が日銀に預けた当座預
金43兆円」です。

13年1月に125兆円になっているベース・マネーの増加だけでは、世
帯や企業が使えるマネー・サプライ(主は預金)は増えません。
(注)FRBは、住宅価格の下落を止めるため、住宅ローンのデリバ
ティブ証券(MBS)も買っています。

【マネー供給の段階】
日銀によるベース・マネーの増減 (注)現金+日銀当座預金
これを、中央銀行による金融調節と言う

銀行の、利用可能な資金量の増減

貸付金の増減

企業・世帯の預金(マネーサプライ)の増減

商品購買と投資の増減(GDPの変化)

銀行が、世帯には住宅ローン残が増加するように貸し、企業には設
備投資の資金を増加貸しして、そのマネーが、銀行システムの中の
預金となって回るようにならないと、使えるマネー・サプライは増
加しません。

【ゼロ金利下では、物価を上昇させねば、借入は増えない】
金利は、現在、短期がほぼゼロで、長期も0.7〜0.8%と低い。銀
行の、長短の平均貸し出し金利は、1.3%と低い。これ以上は、低
くはできない。貸し金の1%くらいは、貸し倒れ引き当てを見込ま
ねばならないからです。

現在のゼロ金利の中で、住宅ローンの借入が増えるには、ローンの
金利(固定)は2%以下には下がらないので、年率2%程度以上で、
住宅価格が、長期に上がるという期待が必要です。

2%は上がると予想されるように変わると、「ローンの名目金利2%
−住宅価格の期待上昇2%」で、実質金利は、ゼロになります。金
利の負担が0やマイナスになれば、世帯は、住宅購入を増やすだろ
うということです。

同様に、物価(企業の商品売上の価格)も、2%上がると期待され
るように変わると、売上増の見込みが立ち、押さえてきた借入での
設備投資を、増やすだろう。そうなると、経済は、設備投資の乗数
原理で成長するという説でもあります。

●岩田氏は、以上から、「日銀は、世帯と企業が使えるマネー・サ
プライが4%以上(6%程度)増えるように、国債・債券を買い、円
を増加印刷すべきである。」と結論づけています。(『デフレの経
済学』)

これは、米国のクルーグマンと、安倍内閣の顧問になった浜田宏一
氏の主張でもあります。他のリフレ派も同様です。

●重要なことを言えば、マネー・サプライの4%を超える増加も、
半年以内の短期では、インフレ期待に転じる効果がない。最短でも、
向こう2年間、「日銀は、物価を2%上げる目的で、マネーの印刷を
増やす」と、国民に確信されるものでなければならない。

【テーマ】本稿は、以上をめぐって、論を展開します。専門的な概
念やデータには、(注)で短い注釈やコメントを書いています。

日本経済の構造変化があるので、実は、以上のマネー・サプライ増
加論と円安は、経済に対し、有効ではなくなっています。

経済と企業にとってとても重要なことであり、経済・金融の理論的
なことでもあるので、数値実証で、丁寧に論を進めます。24ページ
です。

anyway、当方の予測シナリオ通りにならないことを希望しますが、
数値的・論理的に考えると、可能性が高く思えます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<284-2号:訂正版:『デフレの経済学』を解釈すると(2)>
2013年2月11日

【目次】

1.日銀が言う「物価の安定」は、ゼロ%だった。
2.名目金利は低いが期待実質金利は高い
3.日本の物価が下がっていたのは、マネー・サプライの要因から
か?
4.構造派と、マネタリストはどちらが正しいか?
5.円安効果は、実は小さくなっていて、輸入増になる。
(↑この項の文を訂正)
6.過去の通説に依存した誤り
7.結果は、悪い金利上昇になる

【後記】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.日銀が言う「物価の安定」は、ゼロ%だった。

日銀は、使命を「物価の安定」としています。
安定とは何か。ここには「日銀文学」があります。

日銀が、明治14年の設立以来130年の歴史で、はじめてインフレ目
標1%を言ったのは、1年前の、2012年2月14日でした。

(注)普通、中央銀行がインフレ目標を言うのは、例えば4%上が
っている物価を2%に下げるという抑制的なマネー供給です。この
点で、日本の、物価を上げるインフレ・ターゲットは異例です。

このため、年間の国債購入枠を、20兆円から10兆円増やして30兆円
とし、貸付金も35兆円に増やすとしました。この脱デフレ宣言で、
日経平均株価は8500円付近から、1万円超えに上がっています(12
年3月)。

その後、2012年4月からは、「日銀の量的緩和は、言うほどのもの
ではない」と、次第に市場に認識されて、6月には、株価は8500円
に戻っています。「円安(円売り)→株の購入→株価上昇」は、今
回のパターンと同じです。

(注)昨年も、ヘッジ・ファンドが先行して買い、上げて売り逃げ
ています。上げている最中は、1万2000円や1万3000円もあると言う
人が多かった。遅れて高値で買い、損をしたのが個人投資家でした。

日銀は、物価の安定が何%を言うのか、明らかにしません。しかし、
昨年の2.14にはじめてインフレ目標を1%と言ったことから、「物
価の安定は±0%」としていたことが分かります。

10年前の、2003年1月の日銀のバランス・シートは、124兆円でした。
このうち、長短の国債保有は、81兆円でした。

2013年1月のバランス・シートは、159兆円です。国債の保有は118
兆円です。「159兆円−124兆円=35兆円」。

日銀は、10年間、1年平均では、3.5兆円しかマネー供給の増加を
行っていません。(注)マネー供給増加=国債の増加買い+貸付金
増加

3.5兆円は、わが国のマネー・サプライ額(約1100兆円)に対して、
0.34%付近でしかない。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130131.htm/

口では何とでも言えます。しかし日銀の実際の行動では、「物価の
上昇は0%(またはそれ以下)を安定」としていたことが、以上の
金額で、分かります。国債を一時は増加買いしても、その後は減ら
すという行動でした。

この行動パターンは「80年代後期の資産バブル経済」への反省から
来ています。

マネー・サプライを増やしても、日本経済の構造からは、資産(株
と地価)が高騰する。資産の非合理な水準への高騰の結果は、1990
年からのような暴落であり、名目GDPの継続的な成長には効果がな
いという考えです。

事実、80年代後期から末の、バブルでも、
・一般物価(消費者物価)の上昇は、2%程度でしかなかった。
・地価は3倍に上がり、株価も3倍以上でした。

インフレ目標で、果敢な量的緩和をすれば、いずれ資産バブルが再
来するだけである。従って、日銀の、2012年までのマネー印刷
(ベース・マネー)の増加は、1年に3.5兆円でしかなかったので
す。

米国のマネー・サプライ(M2)は、年率8〜10%増の範囲で高い。
一方、消費者物価の上昇は、2〜3%程度です。
http://www.federalreserve.gov/releases/h6/Current/

EUでは、M2の増加は、年率3〜4.5%であり、消費者物価の上昇は2
〜2.5%です。
http://sdw.ecb.europa.eu/reports.do?node=100000141

日本のM3の増加は、年率2%程度でした。わが国で預金が使われる
構造では、消費者物価が上がる臨界点は、マネー・サプライでは、
4%増加です。

(注)これは、過去のデータで、実証されています。過去のデータ
です。10年以上前の過去の経済が、世界で1.5京円にもなったデリ
バティブ(新しいマネー)で変化した現在の経済に、当てはまるか
どうか、ここが、常に、経済学説における焦点になることです。デ
リバティブの急増は、2000年代だけのことです。90年代はなかった。
医学で例えれば、変容を繰り返す新しいウイルスで変化した病に、
過去のデータは無効です。

日銀は、2000年代も、マネーは十分に供給している。しかし、銀行
が国債を売って日銀に預けている当座預金が増えるだけだった。そ
れが、企業と世帯への貸付金の増加になっていないと、一貫して説
明しています。

中央銀行は、マネー・サプライ(M3)を増やすことはできないとも
言う。

■2.名目金利は低いが、期待実質金利は高い

ここで、岩田氏を含むリフレ派は、以下のように主張します。

(1)日本の物価は、期待インフレ率が1〜2%のマイナスである。
(2)名目金利は0%付近でも、マイナスの期待インフレ率を加えた
期待実質金利は、2%から3%と高い。

このため、借入が増えない。借入が増えないから、マネー・サプラ
イは増えず、物価のマイナスが続く。

日銀が果敢な量的緩和を行うと宣言し、実際に行って、物価の期待
上昇をまず1%、次は2%付近にまで高めると、期待実質金利は物価
上昇分、下がる。これで借入は増える。

この借入は住宅投資と設備投資の増加を生むから、実質GDPと、物
価上昇を加えた名目GDPは増加に向かうという。

このためには、日本の、2000年代の物価の下落は、
・円高での安価な輸入品や、人口高齢化による消費の減少という構
造的な要因からのものではなく、
・マネー・サプライの増加の低さが原因だったと、証明せねばなら
ない。

マネタリストが言うように、物価下落が貨幣要因なら、マネー・サ
プライ(M3)の4%以上の増加、メドは+6%(金額で1年に+70兆
円)によって、期待物価の上昇は2%に近づいて行くからです。

日本の1998年からの消費者物価の下落は、輸入品の安さからのもの
(代表してユニクロ現象と言う)ではなく、
・マネー・サプライの増加が4%以下だったからであり、
・このため、需要が減ったからだという証明を経済学的に行ったの
が『デフレの経済学』です。

安倍首相は、このマネタリストの論を採用し、「日銀は、物価上昇
目標を2%として、マネー・サプライを果敢に増やす金融政策をと
るべきである。」としました。

(注)マネタリストの主張が、現在の日本にとって、正しいかどう
か、経済理論的には、明らかではありません。1929年から33年の大
恐慌のときは正しかった。しかし経済は、新しく変わります。同じ
政策が、現代の日本経済にとっても正しいかどうか。問題はここで
す。

【期待で生じた円安と株高】
政権の交代ともに、「経済・金融政策が、マネー・サプライ量の増
加に変わる」という期待から、
(1)円はドルに対し、79円付近から93円にまで、17%下落し、
(2)円の下落が、減ってきた日本の輸出を増やすという期待にな
り、
(3)輸出企業の採算の上昇と、
(4)物価の期待上昇率も上がるという予想から、企業の売上・利
益の、増加が期待されるため、株価は35%上がったのです。

これを実現させたのは、ヘッジ・ファンドによる、
(1)円売りの増加と同時の、
(2)株の買い超の増加の継続です。

期待で円が売られ、同じ期待で株が買われています。まだ、マネー
供給の増加はないのです。日銀が、無期限で国債を増加買いすると
したのは、2013年ではなく2014年からです。

【円高の基底の原因は、貿易黒字だった】
経済指標のファンダメンタルズ(基礎データ)で言えば、日本の貿
易黒字は、2年前の2011年から、赤字に転落しています。

2011年は7.7兆円、2012年は10兆円の赤字です。1980年代から30年
間の、円高の基底の原因は、わが国の、恒常的な貿易黒字でした。
$1=80円台の円高になっても、貿易は、黒字を続けていました。

ところが貿易は、2011年から、はっきりと赤字に変わっています。

しかし、ユーロ危機とドル安予想から、円とスイスフランに、世界
の短期マネーが流れ、$1=75円を超える勢いの円高になっていた
のです。

$1=80円以下は、明らかに過剰評価でした。

これが、「安倍政権はインフレ策を取る」ということから、円売り
を呼びました。投機マネーが、円売り・ユーロ買い・ドル買いに戻
ったからです。

(注)今後、日本が、貿易黒字の、2010年までの体質に戻ることは、
ほとんどない。貿易赤字の恒常化は、長期的に見て円安の大きな要
素です。

マクロ経済で言えば、「貯蓄−投資=経常収支の黒字」です。貯蓄
額の増加が、高齢化で構造的に減っていますから、経常収支の黒字
も減少します。

経常収支は「貿易・サービス収支+海外からの配当・受取金利」で
す。海外から受け取る配当・金利は、1年に15兆円くらいです。

【日経平均の株価】
日経平均で、予想PERが10〜12倍、株価で8500円付近は、国際的な
株価水準のPER15倍から見て、過小評価と言われていました。

PER15倍とは、向こう15年分の、企業の純益予想の合計が株価にな
っているという意味です。(注)株価は、予想純益を、金利とリス
ク率で割って、現在価値にしたものです。

マネーを刷ると宣言した安倍政権を機会とみて、ヘッジ・ファンド
は、円を売って、株を買っています

ヘッジ・ファンドは、
・2012年10月の、8500円付近(予想PER12倍)で、PBR(純資産÷時
価総額)が1を割っていた日経平均を過小評価と見て、
・同時に、$1=80円未満の円を、10円は過大評価と見ていました。

これを、安倍政権の実現予想とともに、市場に先駆けて見直したの
です。

(注)日経平均の予想PER (株価時価総額÷予想純益)は、2011年
10月は、12.2倍と低かった。国際的に妥当な水準は、ほぼ15倍で
す。2012年2月には、すでに、20倍くらいに上がっています。

予想PERの20倍は、今後新たな、企業純益を増やす材料が出ないと、
危険な高値の水準です。株価は、安くなるときも高くなるときも、
行き過ぎます。
http://www.opticast.co.jp/cgi-bin/tm/chart.cgi?code=0168

2012年2月の、日銀のインフレ・ターゲット1%は、その後の日銀の
行動、つまり抑制的な金融政策の継続のため、信用されなかった。

●今回は、政権が交替し、本当に、マネー供給を増やすことを日銀
が実行するのではないかという予想からです。

これが、短期で、株価が20%上昇を超え、35%も上がっている理由
です。

【期待で動くのがマネー】
金融的なマネー動きは、実体経済の成長とマネー量の増加に、約半
年から1年先駆けた動きをします。

まだ、日銀の、マネー・サプライ量4%以上の増加に向かう量的緩
和も、インフレもない。

・円は、量的緩和とインフレの期待で下げ、
・株も、この期待で上がっています。

当方が金融に関心をもち続けるのは、実体経済に、数歩は先駆けた
動きをするからです。

■3.日本の物価が下がっていたのは、マネー・サプライの要因か
らか?

経済の指標には、(1)並行現象と、(2)原因現象があります。並
行現象は、それとともに起こるもので、原因現象は、AがBの原因に
なるものです。これの見極めは、実は、難しい。

経済では、AとBが、
・原因と結果の関係ではなく、
・並行現象であることも多いからです。

【リフレ派】
岩田氏とリフレ派は、マネタリズム学派の説を根拠に、マネー・サ
プライの増減が、物価の原因現象であると言います。

そして、日本ではマネー・サプライの増加が4%未満のとき、物価
が下がっていたという。これは事実です。

簡単には、預金が4%増えたときは物価上昇がゼロで、4%未満(現
在は2%増加)のときは、デフレになっていた。しかしこれは、原
因現象なのか、並行現象なのか?

経済学では、まだ決着はついていません。

デフレの研究をしたのは、1929年から33年の米国大恐慌の『大収縮
1929−33』(フリードマン)です。1920年代の、バブル的な好況の
あと、29年の株価暴落を起点にした銀行の不良債権の増加と、貸出
の減少を主因に、米国のマネー・サプライが35%減った。同時に、
GDPは37%縮小し、卸売り物価は40%も下がっています。

【構造派】
構造派(野口悠紀夫氏等)は、日本の物価が下落した原因は、海外
物価よりはるかに日本の物価が高かったこととします。

ユニクロやニトリのようなところが、中国からの開発輸入を行った
から下がったという判断です。それと、家電のような技術革新です。

マネー・サプライの増加率の低さ(2%)と、物価の下落(1%から
2%)は、並行して生じた現象であり、マネー量は物価の原因現象
ではなかったとします。

【民間の銀行システムでのマネー量の増加】
中央銀行がマネーを増発しなくても、「銀行借入→投資」が活発な
時期は、借入が他の預金になって行く銀行システムの中で、マ
ネー・サプライは増えます。

バブル期は、土地担保の評価増が原因で、借入が増え、不動産投資
が増え、マネー・サプライは、10%以上増えていました。

1992年からは、金融引締めと地価下のため、マネー・サプライの増
加は0〜2%に下がりました。1998年以降は、日銀がベース・マネー
を15%から20%増やしても、マネー・サプライの増加は、年1%〜3
%台でした。

同じ条件での実験ができない経済を扱う経済学が、科学でない理由
は、原因と結果の関係を、明らかにできていないからです。そのた
め、学派がある。(注)サミュエルソンの教科書、『経済学』は、
多くの学派の本質をとらえつつ網羅しています。

医学に例えれば、同じ症状で、原因の診断と治療法が異なっている
ようなものです。(注)多くの感染症は、原因が明らかになってい
ます。臓器毎に種類があるガンには、原因への定説がまだないよう
です。

▼「相対物価」と「一般物価」

輸入財の安い物価(相対物価)が、日本の物価(一般物価)を下げ
た主因という構造派に対し、マネタリストは、以下のように反論し
ます。根拠となる学説はフリードマンです。

「相対価格の変化と一般価格(物価)の区別をすることが重要であ
る。石油や食料が上がれば、それらに対する支出額は増えるが、企
業や世帯は他の商品に対する支出を減らすため、需要が減ってその
物価が下がるだろう。平均的な価格である物価が、相対価格の変化
によって影響を受ける理由はない。」『デフレの経済学(P123):
フリードマンの要旨1975』

ここから、岩田氏は以下のように、
・相対物価が下がれば、
・一般物価が上がる論を展開します。

「輸入財の価格(相対物価)が下がれば、企業や消費者は、輸入財
への支出が減った分を、輸入財とは競合しない他のものの支出に向
けるから、それらの価格は輸入財価格の低下を相殺するように上が
るだろう。その結果、(一般)物価は下がらない。」(同書:P124
:岩田氏)

同書と、岩田氏の考えで、肝心なところは、ここです。
どうでしょう? 岩田氏は正しいでしょうか?

具体的に言えば・・・
ユニクロやニトリの商品(相対価格で低い)を買うようになって、
衣料や家具への支出は減った。そのため、他の商品を余計に買うよ
うになり、他の物価は、需要が増えて上がるはずだ。

・・・ところが、日本では、他の物価も上がってはいない(ほぼ±
0%です)・・・だから・・・(ここからが肝心です)、日本の一
般物価の下落は、輸入物価と、生産および流通の技術革新(構造改
革)が原因ではない。

一般物価が下がった原因は、1100兆円のマネー・サプライが2%台
(20〜25兆円)しか増えなかったからである。

物価の原因は、マネー・サプライの量である。このため、日銀がマ
ネーを刷って、銀行がそれを貸しつけ、企業と世帯がその増加マ
ネーを使う需要と投資が増えれば、物価の下落は止まる。その後も、
更に量的緩和を継続すれば、一般物価は、1%、2%と上がるように
変わる。

(注)経済学では、世帯が消費財を買うのも、企業が機械を買い、
設備投資を行うのも、同じ「需要」の範疇(はんちゅう)です。

このための、日銀によるベース・マネーの必要増加額は、1年に70
兆円(マネーサプライの6%)くらいです。半年ではなく、2年(中
長期)は続けねば、マネーの要因からの物価は、2%は上がりませ
ん。

日銀の円の印刷による、140兆のベース・マネーの増加が必要でし
ょう。これが、物価を2%上げる、「果敢な量的緩和」の意味です。

■4.構造派と、マネタリストはどちらが正しいか?

確かに、輸入品と耐久財(家具、家電、IT、衣料)は、2000年代の
1年に4.5%のペースで下がっています。

ところが、「世帯は減った耐久財の分、他の消費財(食料、サービ
ス、医療、電気、交通、通信、教育)の合計購入を増やした」とは
言えません。耐久財以外の合計物価は、ほぼ±0%付近です。

原因は、マネー量よりも、1994年にはじまり、金融危機の98年から
はっきりした世帯所得の減少です。この要因が、大きいと当方は考
えます。

(注)この間、消費税の3%から5%への上昇もありました(1997年
4月以降)。これは物価を2%上げる要素でした。

▼名目所得の減少という特殊な現象が起こった日本

1994年の世帯所得は、664万円でした。2010年は538万円(19%減
少)です。生活が苦しいと答える世帯は、62%(3世帯に2世帯)に
増えています(厚労省)。

●輸入品や耐久財の価格が下がっても、ほぼ80%の世帯で収入が減
ったため、それで浮いた所得は、なかった。

このため、輸入品以外の、他の商品の需要が増えることはなかった。

マネタリストは、マネー・サプライが4%以上増えなかったから、
物価が下がったと言います。それもある。

しかしもっと大きな原因は、世帯の名目所得の減少です。
名目所得の、長期の減少(19%)は、世界にない現象です。

(注)スイスも0.6%消費者物価が下がるデフレですが、世帯所得
の減少はない。このため、実質GDPは、増えています。

日本の世帯所得の減少を指摘する人がほとんどいないのは、不思議
です。理由は、経済学では、不況期は世帯所得が減るより、失業率
が増えるとしているからでしょう(フィリップス曲線)。名目所得
には、なかなか下がらない下方硬直性があるとするのが、ケインズ
以来の近代経済学だからです。ところが1994年以降の日本では、失
業を増やすより、平均の名目賃金が19%も下がったのです。

▼日本の雇用構造の変化

●日本では、名目賃金が同じで、失業が増えるのではなく(現在の
失業は4.2%です)、雇用されている人の、平均の名目所得の減少
になった。こらは、2000年代の非正規雇用の増加が、最大の要因で
す。

(注)2010年で、正規雇用は3355万人、非正規雇用は1755万人(構
成比34.3%)です。3人のうち1名は非正規雇用です。うちパート
が847万人、アルバイトが345万人、契約社員や嘱託330万人、派遣9
6万人、その他が137万人です(厚労省)。

わが国では、米欧のような「名目賃金の下方硬直性」は薄かった。
1980年代までの正社員部分が、非正規雇用化して、全体の平均賃金
が下落しています。

【雇用の構造の違いがある】
米欧では、現場労働は、ほぼ100%が、時間給の社員です。フルタ
イム労働とパートタイムはありますが、同じ仕事(作業)なら、時
間あたり賃金に、格差はない。

日本では1980年代までは、ほぼ正社員でした。ここが、90年代から
次第に非正規化して、その結果、平均賃金が下方シフトしたのです。
以上は、米欧にはない、雇用構造の要因です。

日本は、現場の正社員の時間給換算は2000円くらいですが、パート
は同じ仕事でも700円から1000円です。

●賃金の下方硬直性とは、給与計算書の名目金額は、なかなか下が
らないことを言います。このため、不況期の雇用調整は、失業の増
加になる(米欧)。

米欧では、確かにこれがある。このため、失業率は米国で7.8%
(2012年12月)、ユーロ17ヵ国では11.8%(12年11月)と高い。
日本の2000年代は、米欧よりGDPが増えていないのに、失業は4.2
%と低い。

1998年以降の日本では、こうした労働事情から、賃金が低い非正規
率が34%にまで増えて、平均賃金が19%も下がっています。

●岩田氏は、賃金の下方硬直性(米欧の事情)を、前提にしていま
す。このため、マネー・サプライの2%増では十分ではなく、物価
が下がったという。しかし、これは100%の要因ではない。

当方、日本のデフレは、
(1)賃金の構造要因が50%から60%、
(2)マネー・サプライ要因が50から40%だったと見ています。

日銀がマネー供給を増やし、マネー・サプライが6〜7%増えれば、
物価は2%上がるというのは、40〜50%の正解です。

50%以上は、日本の特殊な、2000年代の賃金要因だからです。
経済では、多くが、複合的な原因です。
日本は、複合デフレでした。

以上から、マネー・サプライが6〜7%増になるように、日銀が量的
緩和分を増やしただけでは、一般消費者物価(マーケット・バスケ
ットの価格)を2%上がるには至らない。平均の名目賃金が、年2%
くらいは上昇しなければならないのです。

●経済理論は、残念ですが、ほぼ全部が、米国から来ています。岩
田氏の論もこれです。このため、失業を増やすより、名目賃金を約
10年で19%も下落させた日本の、固有の事情が、見えなかったので
しょう。

原因が何かを決定するのは重要です。
対策は、原因によって決まるからです。

世帯所得が減少傾向のままでは、物価が上がった商品への支出は増
えず、物価が下がる商品への支出も増えません。マネー・サプライ
を増やし、企業の設備投資価格は上がっても、消費者物価は、それ
だけでは上がりにくくなります。

所得が下がる中では、価格が上がると、消費量が減るからです。わ
が国GDPの60%は個人消費です。これは、80%の世帯の実感にあっ
ているはずです。

2012年12月の、需要面の名目GDP 473兆円は、
個人消費288兆円(構成比61%)
+民間住宅購入13.7兆円(同2.9%)
+企業の設備投資63兆円(同13%)
+政府消費98兆円(同21%)
+公共投資24兆円(同5%)
+純輸出マイナス10兆円(同−2%)、です。

(注)輸出は68兆円、輸入が78兆円です。

2013年は公共投資の10兆円増加(補正+一般会計)で、2%は増え
る要素になります。

しかし所得が増えて個人消費が増えないと、供給の超過のため、消
費者物価は上がることはない。15%の円安で、輸入物価が15%上が
る貧困化の要素になります。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2012/qe123_2/pdf/jikei_1.pdf

■5.円安効果は、実は小さくなっていて、輸入増になる。

2000年代は、輸出入の構造が、90年代とは変わっています。

◎以降の1.5ページ分が、訂正後のもの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

▼15%の円安で輸出が増える分は、10.2兆円

恒常的な円高に懲りていた輸出企業は、輸出契約のうち、50%を、
円建て契約に変えています。

円建て輸出では、円安になっても、円の輸出価格は、価格を上げな
い限りはそのままです。しかし、ドルから見た円での価格が下がる
ため、価格競争力は強化され、輸出が増える要素になります。

同時に、円安では、ドル建ての34兆円分の輸出(輸出の約50%)が、
15%ドルでの価格が下がって、増えるでしょう。

円建て・ドル建ての両方で、中期では15%くらいの輸出増が見込め
ます。金額で言えば、68兆円×15%=10.2兆円の輸出増加に向か
うでしょう。

この10兆円増で、貿易赤字になった分(10兆円)が解消し、貿易黒
字になるかと言うと、そうではない。2011年から輸入の金額が大き
くなっているからです。

▼15%の円安で輸入が増える分は、11.7兆円

輸入は78兆円です。輸入では、円建て契約は少ない。
円高(ドル安)が、輸入には有利だったからです。

・現在のように、昨年比で15%の円安なら、計算上、ほぼ11.7兆
円、資源・エネルギー・商品の輸入額が増えます。
・一方で、円安での輸出増は、15%(10.2兆円)です。

以上をまとめれば、
円安による輸出増・・・・・・・・68兆円→78.2兆円
円安による輸入財支出の増加・・・78兆円→89.7兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
貿易赤字 10兆円→11.5兆円

昨年比15%の円安で、貿易赤字が解消するかと思うとそうではない。
逆に11.5兆円に増加します。円安は、わが国の変化した輸出入の
構造では、貿易赤字を増やしてしまうのです。

そして輸入の資源・エネルギー・商品が上がることによって、輸入
支出が増えた11.7兆円(GDPの2.5%)の、物価の上昇が生じます。
コストの15%増という金額は、輸入企業がコストダウンできる分を
はるかに超えていますから、販売価格に転嫁せざるを得ません。

輸入されているのは、主に資源・エネルギー・食料の必需財です。
価格が上がれば購買を減らせる選択財ではない。つまり、円安で価
格が上がれば、輸入が減るという性格のものではない。

◎訂正・変更はここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

経済は、この10年で、以上のように、動いています。
輸出入にも、以上のように、大きな変化があります。

■6.「過去の通説」に依存した、マネタリスト派の誤り

▼「円安は日本企業に有利」というのは、過去のことです

上記のように、現在では、円安では、輸出の増加より輸入物価を上
げて輸入増になることが大きく、合計では、日本のGDPではマイナ
スの要素です。

金融市場とマスコミは、過去の通説を固定観念にし、変化した現在
を誤認しています。このため「円安は株の買い」になっているので
す。

【予測】人々は、2013年の7月ころになって、円安で輸出が増える
以上に輸入が増えて物価も上がると、「何としたことだ、これ
は?」と変わるでしょう。

▼悪い円安の部分が大きくなっている

繰り返せば、輸入資源と商品(78兆円)が、円安で、15%も支払い
価格が上がると、輸入物価の要素だけで、日本の物価を11.7兆円
(GDP比2.5%)も上げます。つまり、15%の円安で、物価は2.5
%も上がります。

具体的には、60%を輸入している食料、そしてほぼ100%を輸入し
ている資源とエネルギーが、上がります。経済成長どころではなく
なるのです。(例)豆腐や納豆は国産ですが、材料の大豆は輸入で
す。資源や原油も同じです。

不況下での物価上昇(スタグフレーション)です。輸入は、必需的
な品目です。円安で15%高くなっても食料、原油、資源の輸入は減
らない。

米国のように、車・家電・IT部品の輸入なら、15%も価格が上がれ
ば輸入が減ります。しかし日本の輸入品目は、円安で価格が上がっ
ても、原油のように減らないものが多い。

円安が、相変わらず、日本経済のためになると考えている安倍首相
と内閣、政府系エコノミスト、そして財務省と経産省は、国民経済
の運営を誤る事実誤認を犯しています。2000年後期の、輸出入の構
造変化を見ていないからです。

繰り返せば、この誤認は、輸出入と経済の、最近の傾向を見ず、20
00年代初期までの古い固定観念(通説)で見ているためです。

エコノミスト達、しっかりしなさい。常に、新しいデータを見なけ
ればならない。円の増発、インフレ、円安を奨めるクルーグマンも、
です。今年も、量的緩和は円安を招き、円安は日本経済のためにな
ると言い続けています。

経済の理論書を読むだけで、変化した新しいデータを見ていない。
最近の輸出と輸入の構造変化を見れば、以上は、誰にでも分かるこ
とです。

円安は、ドル建ての(古い)輸出企業だけにとってはプラスでも、
ドル建ての輸入が大きくなった日本経済の全体にとっては、すでに、
マイナスの要素になっています。それくらい大きな変化を、このほ
ぼ5年でしていたのです。

自民党は、現在のアベノミクス(円安と通貨増発)を修正しないと
いけません。2013年7月の参院選ころには、以上の、輸入物価だけ
が上がる予測データも出ます。

世論も「一体どうしたことだ? 生活を苦しくするアベノミクスは
変だった。」となって、選挙に負けるでしょう。安倍首相は、また
も、退任間近ということになってしまいます。

以上は、まだ誰も言っていないことです。

■7.結果は、悪い金利上昇になる

●円安が、日本のGDPにとって、実はマイナスの要素に変化してい
たと市場が認識したとき起こるのは、国債の売りによる悪い金利の
上昇です。

名目長期金利=
実質GDPの上昇率+物価の期待上昇率+国債の信用リスク率です。

すぐにこうなるというのではない。GDPや物価の、データの変化を
見て、債券市場での売買に変化が起こって、次第に、この式の金利
に、近きます。

15%の円安での、輸入物価(78兆円)の15%上昇は、日本の物価を
確実に、11.7兆円は上げます。GDPに対し2.5%にもなる価格上昇
です。(注)現在の円安($1=93円付近)のままなら、1年後には、
確実です。

【重要】実質GDPの成長を1%、物価上昇を2.5%とすると、それだ
けで、長期の期待金利は3.5%に向かって、上がるでしょう。

その時期の端緒はたぶん2013年秋です。15%の円安での輸入物価の
上昇だけが目立ち、物価の上昇がデータとしてはっきりするからで
す。

政府の総負債(中央政府、地方、独立行政法人)は現在、1133兆円
です。長短の債務の、平均償還期間は7年です。長期金利は0.76%
と低い。

輸入物価の15%上昇から、期待金利が3.5%に向かうと国債価格は
どう向かうか? いつもの、債券価格の計算式です。

国債価格=(1+0.76%×7年)÷(1+期待金利3.5%×7年)
=1.0532÷1.245≒84%・・・16%下落

1133兆円×16%=181兆円の国債価格(債券価格)の下落です。

こうした金利上昇の予想が出ると、国債をもつ金融機関は、どうす
るか? まず、90兆円の短期債をもつヘッジ・ファンドは、激しい
売りでしょう。

このように、輸入物価が上昇したとき起こるのは、一層の円安と金
利の上昇です。金利の上昇は、国債の売りの結果です。

▼南欧債とドイツの買い

南欧の国債の金利上昇(7%台)は、ECBが、南欧債を無制限に買う、
ユーロは絶対に破産させないという宣言によって、収まっています。

ECBの背後には、経常収支の黒字が$2185億のドイツ経済の信用が
あります。中国の黒字、$2085億を超えて世界最大です。1年だけ
ではない。ずっと続いています。

この富裕なドイツが、南欧債を買うと宣言したことに等しい。これ
で、南欧の財政危機とユーロは、小康を得ています(2013年の年
初)。

▼日本国債と日銀の買い

日本国債では、ヘッジ・ファンドと金融機関が売ったときは、金利
の上昇(国債価格の下落)を、止めるのは、売られる国債を買い受
ける日銀しかない。

【重要:国債の需給】実は、日本の都銀は、2010年から、はっきり
と国債の売りです。2011年からの、日本国債(特に短期債)の最大
の買い手は、海外ヘッジ・ファンドです。毎月10〜15兆円を買い越
し、円の国債価格を支えたのは、すでに国内の金融機関ではなく海
外です。ユーロ危機とドル安から逃げたマネーが、安全資産として
円の短期債を、買い越し続け、保有高は、12年9月に90兆円を超え
たのです。ここにも、通説の「変化」があります。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/toushika/index.html

日銀はドイツではない。日銀は、日本の政府部門です。政府の信用
をバックにした機関です。

日銀には、ゴールドのような固有の資産は少ない(4412億円)。資
産としては、政府信用の国債(118兆円)だけしかないからです。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013
/ac130131.htm/

従って、円国債の信用が、リスクで下落したとき、日銀がそれを買
っても、それは政府部門が、買い受けるのと同じと見なされます。
(注)市場の国債金利の上昇は、政府信用の下落です。

つまり「政府の信用リスクの高まりからの、悪い金利の上昇」のと
きは、日銀が国債を買っても、それが、国債の信用を高めて、金利
を下げることにはならない。

(注)実質GDPの増加から金利の上昇は、よい金利の上昇です。物
価の上昇とリスク率の上昇からの金利の上昇は、悪い金利の上昇で
す。

ある家庭が、借金の満期返済と利払いができない財政危機にあると
します。奥さん(日銀)が小切手を切ってご主人(政府)に貸して
も、その家(国家)の財政信用は高まらない。これと同じです。
ユーロのように、富裕な隣の家(ドイツ)が貸せば、話は別です
が・・・。

例えば、財政信用のないイタリア政府が、イタリア国債を買い支え
ても、イタリアの金利は下がりません。ドイツが、経常収支の黒字
が大きなドイツ経済の信用で買うから、下がるのです。

(注)米ドルの信用は、経常収支は大きな赤字でも、「代わる通貨
がない唯一の基軸通貨である」と世界が認めていることから来てい
ます。貿易に使う基軸通貨は、世界の貿易が増えると、それに対す
る需要が増えるからです。つまり米ドルは、赤字の米国だけではな
く、世界経済の信用をバックにしている通貨です。ここが基軸通貨
の特権です。

円安による貿易赤字の増加は、以上のような結果を招きます。そう
ならないように、現在の円安政策は止め、85円くらいには、戻さね
ばならない。

95円(18%円安)や100円に向かうと、輸出入の構造がすでに変わ
っているので、半年後からの結果は、日本経済にとって、悲劇です。

いや、好んでそうしたのですから、経済と金融が分からない安倍首
相がもたらす喜劇です。これは、国民を、ギリシアのように苦しめ
ます。

長期国債の金利が3.5%に向かって上がると、2014年は、大きな緊
縮財政に転じなければならなくなるからです。

【後記:アドバイス】
次期総裁が有力な、岩田規久男氏に申し上げます。13年4月の就任
直後は、「量的緩和期待」から、まだ、円安・株高でしょう。

問題は、輸入物価の高騰が明らかになる、13年7月ころからです。
その前に、円高と、円発行の抑制に戻さねばならない。

円安のままなら、2013年の秋は、悲劇的な、喜劇です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。
以下は、項目の目処です】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ
と記述の際、より的確に書くための参考になります。

気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、
うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ
ないときも全部を読み、共通のものは、記事に反映させるよう努め
ています。
 
http://www.mag2.com/m/0000048497.html
(以上)


11. 2013年2月13日 13:52:12 : xEBOc6ttRg
コラム:米経済成長に向けた4つの処方箋=サマーズ氏
2013年 02月 13日 13:04 JST
ローレンス・H・サマーズ

米経済は2012年の4四半期、1.5%ペースで成長した。米議会予算局(CBO)は先週、2013年の米国内総生産(GDP)伸び率が1.4%にとどまり、失業率は上昇するとの見通しを明らかにした。

米経済は現在、潜在GDPが実際のGDPを7500億ドル(1世帯当たり1万ドル)以上、上回っている。CBOの予想は、このギャップが向こう1年間で1000億ドル以上拡大することを示唆している。CBOは、米成長率が2014年以降は加速すると予想しているが、正常な経済パフォーマンスに戻るのは2017年以降と見込んでいる。

エコノミストや当局者の意見が異なることは多いが、米経済がCBOの予想水準の成長にとどまるならば、最も深刻な国家問題だということはコンセンサスであるべきだ。そうなれば、中間層の所得は伸びず、税収減により財政に圧力がかかり、企業の研究開発や若年労働者の訓練など将来を見据えた支出が減ることになる。また最も重要なことには、世界情勢が非常に微妙な今、米国の模範という力が弱まることになる。

今、米経済を取り巻く環境を俯瞰(ふかん)してみると、金融市場の緊張は後退し、低金利や株高という追い風もある。国内での低コストの原油・天然ガス生産に伴う投資機会があり、住宅セクターは底入れし、製造業には国内回帰の動きが見られる。米経済には10年ぶりの好機だ。

自信は最も安価な刺激策といわれる。米経済は今や1990年代のように、「自信─成長─財政赤字減少」という好循環が起きる可能性がある。

ただ、それには財政赤字抑制を超越する経済政策が必要。金融ショックを回避するために赤字削減は必要だが、赤字削減で資本コストが低下して投資を刺激した1990年代とは異なり、長期国債利回りが2.0%を下回るような現在においては、赤字削減だけでは景気の刺激には力不足だ。

米経済の成長押し上げに向けて私は以下の4つの処方箋を提案したいと思う。この4分野については、関係者の間に深いイデオロギー上の違いがあっても、意味のある政策行動への障害になることはないだろう。

第1に、大統領も指摘しているように、3月1日に発動される歳出の強制削減は、削減幅を圧縮するのではなく、一定の時間をかけて実施すべきだ。給与税減税の廃止で経済が打撃を受けている今、歳出をいきなり削減することは間違った財政政策であり、安全保障政策としても危険だ。

第2に、法人税改革をめぐる議論は国際的な視野で行い、2013年末を期限とすべき。われわれは最悪の状態にある。米企業はハイテク企業を中心に2兆ドル近いキャッシュを海外で保有している。それは、海外で得たキャッシュを本国に還流させるのは負担が大きい上、本国に還流した利益への減税が近い将来にあるとの観測が広がっているためだ。

米企業は海外で得た利益を本国に還流させ、それを再投資したり、株主に分配したりすることに意欲を持っているもようだ。これを踏まえると、利益の本国送還(リパトリエーション)に課す税率を引き下げる一方、過去の同様の減税とは異なり、長期的な歳入の減少にはつながらないような方法が可能なのではないかと思う。これが理想形だ。しかし、これが達成できないとしても、減税はないことをはっきりとさせれば、海外に滞留している資金を米国に戻す上で有益かもしれない。

第3に、どんなイデオロギーを持っていようとも、住宅金融の現状には誰も満足すべきでない。住宅ローンがあまりにも低コストで取得できる状況が続いた後、振り子は逆方向に大きく振れ、今ではローンが組みにくく、住宅市場の回復を妨げている。米連邦準備理事会(FRB)は既存のモーゲージ担保証券(MBS)の金利引き下げを図ったが、新規のローン取得やリファイナンスにかかる金利にはあまり影響がない。

住宅融資が得にくいこともあって、中間層の多くは借家住まいで、住宅保有にかかる費用よりも高い支払いを余儀なくされている。米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)や米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)といった政府関連住宅金融機関(GSE)は、モーゲージ市場を支援するという役割を持っている。その役割をきちんと果たすべき時だ。

第4に、経済的および環境上の利益のため、北米エネルギー資源の開発加速を最優先課題とすべきだ。キーストーン・パイプラインに関して決定を下す際には、カナダのタールサンドから採掘される石油が米国に来ない場合には、環境への配慮が乏しいアジアに流れる可能性があることを考慮に入れることが必要。天然ガス資源の活用にあたっては、温室効果ガスの排出削減には、再生可能エネルギーの促進よりも、石炭を天然ガスに置き換える方が有効であることを念頭に置くべきだ。天然ガスの生産・活用は相対的に低コストで済み、雇用創出にもつながる。

こうした対策には枚挙にいとまがない。「負け組」が出る歳出削減とは違って、成長を刺激するための政策はすべての利害関係者の利益となる可能性がある。経済政策をめぐる議論において、財政問題と同じぐらい成長や雇用創出を重視するならば、政策議論の質を向上させ、より強い経済を実現、ひいては財政赤字削減という恩恵を受けられるだろう。

(2013年2月10日)

(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官)


 


米大統領の一般教書演説、中間層雇用対策やインフラ整備提案
2013年 02月 13日 13:12 JST
[ワシントン 12日 ロイター] オバマ米大統領は12日、一般教書演説を行い、中間層の雇用創出、移民法改正、銃規制強化など、野心的な2期目の目標を掲げ、与野党ねじれ状態で激しく対立している議会に承認を迫った。

また、直前に3回目の核実験に踏み切った北朝鮮の脅威に対応するため、ミサイル防衛を強化する方針も示した。

オバマ大統領は、国民は政府がすべての問題を解決するとは期待していないものの「党利よりも国民の利益を優先すると期待している。理にかなった妥協を図ることを期待している」と表明した。

大統領は、現行7.25ドルの最低賃金(時給)の9ドルへの引き上げ、老朽化した橋梁の補修などインフラ(社会資本)整備に500億ドルを支出することなどを提案した。

だが、提案の多くは、議会通過が難しそうだ。最低賃金の引き上げは、野党共和党が企業のリストラの引き金になると反対している。インフラ投資についても、共和党内では1期目に大規模な景気テコ入れ策を打ち出したが失業率は下がらなかったではないか、との不満がくすぶる。

大統領は演説で「わが国の経済は雇用を増やしつつあるが、余りにも多くの人が依然フルタイムの職を見つけられないでいる」とし「企業利益は過去最高水準に増えているのに、賃金・所得はここ10年余りほとんど変わっていない」と述べた。

昨年の大統領選挙戦でも中間層にアピールするため、このような発言をしている。今回、選挙で自分を支持してくれた中間層に対し、「成長の真のエンジンを再点火する」として支援する姿勢を鮮明にした。

財政問題をめぐり、野党共和党は、オバマ大統領が債務削減に努力せず、歳入を増やすために富裕層を狙い撃ちした措置に終始していると批判している。大統領はこの批判に反論する形で、追加的措置で赤字を増やすことなく、1年半前に与野党合意した財政の枠組みを順守するとし、より大きな政府ではなく、優先事項を設定し、広範な成長に投資するよりスマートな政府を目指す方針を示した。

外交問題ではアフガニスタンに展開する米軍6万6000人のうち、3万4000人を2014年初めまでに撤収させる方針を示したほか、ロシアと協力して世界的に核兵器を削減する意向も示した。

テロ対策にも言及し、透明性を改善するために議会と協力し、国内法にも沿って対応する方針を示した。

今回の演説まで24時間弱というタイミングで北朝鮮が核実験を行った。オバマ大統領は「極めて挑発的な行為」で「地域の安定を損なう」と非難したが、演説では北朝鮮の脅威に対応するため、ミサイル防衛を強化する方針を示した。

さらに、欧州連合(EU)首脳が先に合意した、EUと米国の包括的な自由貿易協定(FTA)締結に向けて正式な交渉を開始するよう呼び掛けた。

オバマ大統領は、世界経済のほぼ半分を網羅する貿易圏の構築に強い意欲を示し「EUとの包括的な環大西洋貿易投資パートナーシップに関する交渉立ち上げを宣言する。大西洋をまたいだ自由かつ公正な貿易が実現すれば、高賃金の米雇用創出につながる」と表明した。


 

【コラム】黒田氏に日本への片道切符を贈ろう−W・ペセック

  2月12日(ブルームバーグ):アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁(元財務官)についての私のとっておきの思い出は、2011年3月13日に東京行きの航空機に一緒に乗り合わせたことだ。
東日本大震災の2日後で原発事故の危機が起こり始めたころ、地震発生時にフィリピンにいた私は、東京行きの便に飛び乗った。空席ばかりの機内で、黒田氏は私の近くの席に座っていた。マニラから東京行きの便はいつもほぼ満席だが、この時はチェルノブイリになりかねない日本を訪れる人などなく、日本から脱出したい人ばかりだった。
黒田氏は「われわれだけの貸し切り状態ですね」と話し掛けてきた。「自分のできることをするために戻るのだ」と語っていた。
黒田氏は再び、日本を助けるために戻ってくるかもしれない。あの時の言葉のように。今度は日本銀行総裁として同氏が戻ってくるとすれば、それは8年間をマニラで貧困と闘うことに費やした同氏にとってふさわしい時期の帰国と言えるだろう。11日東京で言葉を交わした同氏の無私無欲な姿勢を見て、私は黒田氏こそは15年にわたる日本のデフレを終わらせる人物かもしれないと思った。
同氏がブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、日銀が年内に追加緩和を行うことは正当化できるとの見解を示したことには勇気付けられる。日銀の白川方明総裁が2014年までは追加緩和の必要性を感じないとしているのとは大違いだ。黒田氏は3月に退任する白川総裁の有力後任候補だ。同氏は2%のインフレ目標達成に向けた手段が日銀には多数あるとも述べた。それだけでも今までの日銀総裁とは異なる。さらに、消費者物価の下落を根絶する必要があると同氏は明言した。
他候補にない能力
黒田氏(68)は次期日銀総裁に指名されたわけではない。発言はADB総裁としてのものであり、日銀を代弁したのものではない。安倍晋三首相は日銀総裁人事について手の内を明かしていない。しかし、黒田氏には日銀総裁として、日本経済を活性化できる他の候補にはない能力があるように思われる。
安倍首相について言われるのは、ヘンリー・ポールソン前米財務長官が2008年に述べたように、「バズーカ」砲を使おうとしているということだ。安倍首相が選ぶ日銀総裁の仕事は、バズーカを使って大量の流動性を市場に撃ち込むことだが、日本に必要なのはそれだけではない。日銀は火力を高めるばかりでなく、照準の正確さも求められている。ここで経済理論が重要になる。
豊富な経験
日銀ではなく財務省出身であることに加えて、黒田氏が成功するかもしれない最大の理由は、2005年以来のADB総裁としての経験だ。金融政策が持ち得る増幅力は1990年初め以降、日本では発揮されていない。銀行は依然、融資に後ろ向きで家計は借り入れに慎重だからだ。
問題は政治にもある。巨額の国債を抱え込んでいる銀行に罰則を科せば、与信拡大につながるかもしれない。個人や企業による借り入れを奨励する税制で融資を伸ばすことも可能だ。しかし政治は日銀にばかり依存し、自らの仕事をしてこなかった。
日本の官僚が縄張り争いをしている間、黒田氏はアジアで成長を促進し、その恩恵を域内各地に広めることに取り組んできた。限られた資源を駆使し、発展度合いが異なる域内からの多種多様な要求に対する理解が十分ではない場合でも行動してきた。この仕事には、新プロジェクトを通じて何が機能し、何が機能しないかを見極める発想力が必要になる。リスクに立ち向かい、柔軟な発想をするこうした姿勢こそ、日本が必要としているものだ。
限界超えた思考
日本は非伝統的政策をあまりにも伝統的に実践しようとしている。日銀にできることは数多くある。長期の国債、社債、上場投信(ETF)、中小企業向けローンの証券化商品の購入拡大や、不動産の購入、財政が破綻した自治体の債務の貨幣化などだ。日銀には現行政策の限界を超えた思考が必要だ。いかなる手段を使ってでもデフレ を終わらせる必要があるという黒田氏の発言は期待を抱かせる。
待望される日本経済の復活ほど市場を魅了するニュースはない。なのに、安倍首相の方法は革新を欠き、旧態依然の自民党的発想に依存し過ぎている。しかし、安倍首相は日銀総裁人事で世界を驚かすことが可能だ。黒田氏に日本への片道切符を贈るだけでいい。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Why Man Returns to Japan When Others Want to Flee: WilliamPesek(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:Tokyo Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Greiff jgreiff@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/12 14:04 JST


12. 2013年2月13日 14:01:25 : xEBOc6ttRg
G7声明で日銀の外債購入は困難との見方も−「為替目的」否定を確認

  2月13日(ブルームバーグ):主要7カ国(G7)が12日夜発表した、為替市場に関する共同声明を受けて、自民党などの一部で提唱されている日本銀行による外債購入は、難しくなったとの見方が出ている。
声明は、為替レートが「市場において決定されるべき」だとし、「為替市場における行動に関して緊密に協議すべきことを再確認する」と表明。「財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきている」と述べた。
麻生太郎財務相は声明を受けた会見で、日本のデフレ不況対策が為替操作に使われていないと「各国から正式に、正しく認識された」との見方を示した。
一方で声明は「今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する」と明記した。バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは、日銀による外債購入のみならず、明確に為替相場に影響するような金融政策は取りにくくなったと指摘した。
安倍晋三首相の要請も踏まえ、物価目標設定など強力な金融緩和措置を日銀が打ち出している。これを受け、市場では円安・株高が進行、輸出企業の業績改善につながっている一方、海外の一部からは批判も出ている。

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst

 

G7声明の解釈で為替市場が混乱−円安めぐり各国が矛盾発言

  2月13日(ブルームバーグ):為替相場の沈静化を図った主要7カ国(G7)当局者は、円安による経済への脅威の程度に関するちぐはぐな発言で市場をかえって混乱させる結果を招いた。
G7声明は当初、最近の円安を共同で容認すること示唆したと受け止められ、円が売られた。しかし、各国はG7の立場について相反する解釈を示した。英国はG7は特定の国や為替相場をやり玉に挙げていないと説明したのに対して、G7当局者の1人は、円の過度の動きに懸念があると述べた。
こうした混乱を背景に、モスクワで今週末開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、国際的な通貨戦争や日本の金融緩和推進姿勢が引き続き焦点になりそうだ。また、日銀が次期総裁らの下で検討する追加金融緩和策が制約を受ける可能性があると、バークレイズ証券は予想している。
英銀スタンダードチャータード(ニューヨーク)のシニア通貨ストラテジスト、マイク・モラン氏は「世界は先進国首脳からの明確で、一貫したメッセージを望んでいる。当面G20が最も重要だろう。責任が日本にあるのは明らかだ」と述べた。
G7は欧州の朝方の取引時間帯に、2011年9月以来となる為替に関する声明を発表し、財政・金融政策は国内目的を達成することに向け、為替相場を目標にしないと表明した。
この声明について市場は、一段の金融緩和を通じた経済再生への安倍政権の取り組みの副産物である限り、G7は円安を受け入れると解釈、円は対ドルで売られた。
異論
麻生太郎財務相もG7声明の発表後に、日本のデフレ不況対策が為替操作に使われていないと「各国から正式に、正しく認識された」との見方を示した。
こうした解釈に異論を唱えた形となったのは、1人のG7当局者の発言。同当局者は投資家が声明を読み違えており、G7は過度の円の動きと円相場を誘導する日本の行為を懸念していると説明。この発言を受けて円が大幅反発した。
しかし、その後今年のG7議長国として声明をめぐる協議に参加した英国の当局者1人が、声明は特定の国や通貨を指していないと述べたことから、円は再び売られた。
1980年代にドル相場の管理を目指したプラザ合意やルーブル合意で為替市場を支配した主要国は、円安を受けて再び為替に注目している。先進10カ国の通貨で構成するブルームバーグ相関加重通貨指数によると、円は過去3カ月間に18%下落、2010年以来の安値となっている。
世界の経済成長は依然ぜい弱なため、1930年代のような通貨切り下げ競争への懸念が高まっている。カナダやドイツなどの金融当局者は、デフレ脱却に向けた安倍政権の政策において円相場がどの程度重要なのか、その結果自国の輸出企業が打撃を受けるかどうかを問題にしている。
ゼロサムゲーム
TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、リチャード・ギルフーリー氏は、「今はG20の実際の結果に注目すべきだ。通貨切り下げはゼロサムゲーム的な特徴があり、日本の新たな成長は通貨高の国の犠牲で成り立つ」と述べた。
一方、ブレイナード米財務次官(国際問題担当)は11日、「経済成長の回復」に向けた日本の取り組みを歓迎した。この発言は、米国が日本を支持していることを示唆している。ルー次期財務長官は13日の上院財政委員会での指名承認公聴会で、米国の立場を補足説明するよう求められる可能性がある。
バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストと丹治倫敦・債券ストラテジストは13日付の顧客向け文書で、「日銀が外債購入を行えないことは当然としても、露骨に為替誘導に資するような形での金融緩和は行いにくくなる可能性はある」と分析している。
原題:G-7 Roils Currency Markets With Split on Concern Over Yen(1)(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net;ロンドン Gonzalo Vina gvina@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/13 13:25 JST


13. 2013年2月13日 20:38:18 : mb0UXcp1ss
ロシア中銀第1副総裁がG7為替声明を支持、通貨安競争けん制
2013年 02月 13日 17:46 JST
[モスクワ 13日 ロイター] ロシア中銀のウリュカエフ第1副総裁は13日、日米欧7カ国(G7)が前日発表した為替に関する声明について、G7の見解を支持すると表明した。記者団に対して述べた。G7声明では、為替は市場で決定されるべきとの認識を再確認した。

ウリュカエフ第1副総裁は「われわれはこの見解を共有する」とした上で、「われわれがかねてから指摘しているように、現在の相互に密接につながった世界においては、一方的な行動は逆効果だ」と語った。

第1副総裁は「自国通貨を切り下げることで、内需拡大や競争力強化を図っても、その効果は一時的なものにすぎない」との見方を示した。

また、世界経済の均衡の取れた成長を達成するため、各国に協調行動を呼びかけ、保護貿易主義や通貨安競争に手を染めないよう求めた。

ウリュカエフ第1副総裁は先月、安倍政権の政策について「保護主義的な金融政策」として批判的な見方を示していた。第1副総裁はこの日も、こうした見方をあらためて示したものの、日本の名指しは避けた。

第1副総裁はきょう、「国ごとの行動を通じて経済成長の問題を解決したいという誘惑が台頭している」として「保護貿易主義、通貨戦争、人為的な自国通貨安」を挙げた。

ロシアは今年の20カ国・地域(G20)議長国。今週末15─16日には、モスクワで、G20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。


コラム:「円安でデフレ脱却」シナリオの落とし穴=河野龍太郎氏
2013年 02月 13日 17:42 JST
河野龍太郎 BNPパリバ証券 経済調査本部長(2013年2月13日)

前回のコラムでは、最も蓋然性(がいぜんせい)が高いデフレ脱却のシナリオは、マネタイゼーションだと述べた。今後数年間、安倍政権の下で中央銀行ファイナンスによる拡張財政が続けられ、名目成長率が高まり、需給ギャップの改善によってインフレ率が高まる、というシナリオである。

この政策が行われると、当初は低インフレ、低金利の下で、高めの成長が続き、資産価格の上昇とともに経済はバブル的な様相を強めていく。しかし、最終的には低成長、高インフレとなり、財政破綻確率が著しく上昇する。望ましいとは言い難い政策である(前回のコラム here)。

これに対し、規制緩和などの成長戦略で潜在成長率を高める政策は、自然利子率の上昇をもたらし、伝統的な金融政策の有効性を復活させる望ましい政策といえる。ただし、この成長戦略によるデフレ脱却は、地道な努力と長い時間を要する上に、短期的には痛みをもたらす。政治経済学的な視点に立てば、実現する可能性は低い。結局、代議制民主主義の下では、人々は直ちに政策の結果を求めようとするため、「将来所得の前借り」である財政政策や「将来需要の前倒し」である金融政策といった近視眼的な政策に頼ってしまうのである。

今回はもうひとつ別のシナリオについて考察したい。為替介入を行い、円安誘導を図ることで、デフレ脱却を目指すシナリオだ。

このシナリオでは、円安によって輸出を刺激し、需給ギャップを改善させるとともに、輸入物価の上昇によって、インフレを高めていく。通貨外交の所管が財務省であるため、円安政策をとる場合は政府・財務省が政策の主体となり、日銀は政府がドルを購入するための円資金を供給(国債購入)することになる。この円安政策は、かなり確実なデフレ脱却策といえるが、無視し得ない問題点や副作用もある。以下、この円安シナリオについて、詳しく論じる。

<2000年代半ばの教訓>

2012年のドル円レートの平均は1ドル80円程度だったが、現在は90円を超え10%以上の円安水準にある。筆者の試算では、仮に10%の円安が1年間定着すれば、国内総生産(GDP)は輸出増などを通じて累積で0.3ポイント程度押し上げられ、消費者物価指数(CPI)は輸入物価の上昇と需給ギャップの改善から0.2ポイント程度押し上げられる。仮に105円程度の円安が1年間続けば、GDPはさらに累積で0.6ポイント押し上げられ、CPIはさらに0.4ポイント程度押し上げられる。もし実行可能なら、確かに、円安政策の効果はかなり高い。

実際、2000年代半ばには、2%程度の高めの成長率が続き、輸入インフレの上昇や需給ギャップの改善などによって、マイナス1%程度まで低下していたインフレ率は06年にはプラスの領域まで改善した。欧米経済が信用バブルに沸いていたということもあるが、円安政策が奏功したことも背景の一つにある。

しかし、この政策には、いくつかの問題点がある。

一つは、「近隣窮乏化政策」という諸外国の批判にどこまで耐えることができるかである。世界経済の拡大ペースが限られる中で、日本が通貨安によって外需を獲得することは、海外経済の需要を奪うことになりかねない。通貨政策も、世界経済全体で見れば、パイの分け方を変えるだけで、新たな付加価値を生み出すわけではない。

そもそも、2000年代半ばに日本の円安が容認されたのは、世界経済が欧米の信用バブルで好況に沸いていたためであり、現在とは環境が大きく異なる。金融危機後の現在、各国は輸出を増やすことで内需低迷を補おうとしている。このため、海外需要を日本に惹き付ける円安政策を各国が容認するかどうか、疑問である。現実に「通貨切り下げ競争」につながるとして、日本を批判する国が徐々に増えている。

もう一つの大きな問題は、国内の所得分配に大きな影響を及ぼすことだ。輸出セクターは確かに大きなメリットを受けるが、輸出主導の回復が訪れても雇用者報酬が増えなければ、家計部門は円安による輸入価格上昇によって、実質購買力が損なわれることになる。

実際、2000年代半ばも、大企業・製造業の多くが戦後最長の景気拡大の中で最高益の更新を続けた一方で、雇用者報酬は全く改善しておらず、円安による輸入物価の上昇は家計部門の実質購買力を抑制した。円安に加えてコモディティ価格の上昇が交易損失を拡大させたのである。

今回も円安が進めば輸出部門は大きなメリットを受けるが、雇用者報酬の拡大が期待できないとすれば、家計部門は交易条件悪化による実質購買力の低迷に再び直面する可能性がある。円安で輸出回復が続いても、消費の回復はむしろ遅れるということになりかねない。それが円安政策によるデフレ脱却の最大の問題だろう。

賃金や雇用を増やした企業には法人税の減免を行うといった政策が導入されるが、方向性は適切だとしても、大きな効果は期待できそうにない。さらに、今回は、原発停止による化石燃料の輸入が膨らんでおり、円安が進めば、交易損失が大きく膨らむ。100円を超える円安が進めば、分配面からの問題が広がってくる可能性がある。

ただ、誰も望まないような円安が進展するリスクも念頭に置く必要がある。前回のコラムで述べたマネタイゼーション政策が行われる過程で、副産物として「悪い円安」が進むリスクである。長期金利上昇を避けるために日銀が金融緩和を続ければ、それが「悪い円安」をもたらす可能性がある。円安は、輸入インフレを通じ、長期金利を押し上げる。あるいは、反対に、名目成長率やインフレ率の上昇によって長期金利が上昇を続ければ、円資産を回避する動きが広がり、円安が進む。いずれがきっかけになるにせよ、長期金利上昇と円安進展の負のスパイラルが生じるリスクがある。

<円安誘導が財政危機を招くリスク>

2000年代初頭に積極的な円安政策が可能だったのは、前述した通り、海外経済が良好だったことがあるが、実はそれだけではない。国内の公的債務残高が膨張していたとは言え、金利低下で利払い費の伸びが抑制され続けていたこともある。

現在、公的債務残高はGDPの2倍まで膨れ上がり、金利が上昇していないにもかかわらず、利払い費は増加に転じ始めている。円安と長期金利上昇のスパイラルが生じれば、利払い費の膨張から、公的債務はコントロール不能となる。ここ数年、日本政府が円安政策を選択してこなかったのは、海外から理解が得られないというだけでなく、実は円安進展が長期金利上昇の引き金となることを懸念し始めていたからではないだろうか。

ここ数ヶ月の円安の影響もあり、すでに輸入物価は上昇に転じたが、国内物価が明確な上昇を始める前に、輸入物価上昇が金融市場参加者のインフレ懸念を惹起し、長期金利上昇のきっかけとなるかもしれない。かねてよりお伝えしている通り、日本経済は「デフレ均衡」に陥っているというのが、筆者の仮説である 。それは、「低い長期金利、円高、デフレ」がセットになった一種のバブルである。本来、未曽有の公的債務を抱える国に整合的なのは、「高い長期金利、円安、インフレ」であるが、円に対するバブルが生じているために、いずれも反対の状況が生じているのである。

このため、どれか一つのバブルが弾ければ、全てが覆り「長期金利上昇、円安、インフレ」となる可能性がある。「円高」が「円安」になるだけで済めば本当に都合が良いが、そう上手く行くとは限らない。過大な公的債務を放置したままで「デフレ均衡」から脱却しようとすれば、一連のバブルが弾け、最悪の場合、財政危機、金融システムの動揺、資本逃避が訪れる可能性は否めないのである。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

ドル一時93円割れ、海外勢の投げにリパトリ重なる
2013年 02月 13日 15:56 JST
[東京 13日 ロイター] 東京外為市場午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べ、ドル安/円高の93円前半。前日の日米欧7カ国(G7)の為替に関する緊急共同声明を受け、一部の海外ファンドがドル買い/円売りを仕掛けたが、追随する動きがなかった上、国内投資家のリパトリ(資金の本国還流)も重なったことから投げが出て、一時92.82円まで下落した。

<海外勢の投げにリパトリ重なる>

ドル/円は軟調に推移した。朝方は海外ファンドの買いで93.51円まで上昇したが、G7声明直後だけに「フォロースルーの買いが出てこない」(外銀)といい、上昇モメンタムは高まらなかった。この日は米国債の償還・利払いが集中する2月15日の応答日に当たり、国内投資家の円転玉(ドル売り/円買い)も相場を圧迫した。

G7声明をめぐっては、これまでドル/円の「棒上げ相場」をけん引してきた海外ファンドを中心に「G7は特に変わったことを言っていない」(ファンド)、「(ドルの)下押しは買い」(同)との声が目立っており、表面上は声明を無視して、円売りを継続するムードが広がっている。

ただ、目先については「日本勢のリパトリが結構多いことに加え、G7声明もあり、想定していた91─94円レンジから少し調整が深くなるかもしれないと思い始めている」(大手邦銀)との指摘もあり、警戒を強めつつあるようだ。

市場では「(声明は)日本の円安誘導を不快に思うG7メンバーからの明確なけん制であり、一般的に言って、こうしたイベントがこれまでの相場の転機になることもあり得る」(運用機関)との声も出ていた。

大和証券投資戦略部チーフ為替ストラテジスト、亀岡裕次氏は「今後、日本がさらに金融緩和を大幅強化していくことは、少なくとも今の状況ではやりにくくなった」と指摘。その上で「そうした見方が広がれば、円安の動きは一服、むしろ円高に振れやすくなりそうだ」との見方を示した。

もっとも、中長期的には「米国を含め世界的な景気回復、金利上昇、言い換えればリスク選好の動きが円安要因になっていく可能性が高い」として「これまでの円安トレンドが崩れるとはみていない」という。

<短期筋が声明曲解で円売りも>

前日の海外市場では、G7声明発表直後にドル/円は94.41円まで上昇。「普通なら素直に円買い戻しで反応するところ」(機関投資家)にもかかわらず、上昇した背景について、市場では「短期筋はすでに相当規模の円売りポジションを抱えてしまっているので、ドル/円が急落したらおしまいという感覚が強くある。そこで声明を曲解して円売りを続けたのだろう」(同)との見方が出ていた。

その後、匿名のG7関係筋が「同声明は、円の過度な動きに対する懸念を示すもの」と念を押したことで、ドルは切り返して93円割れの水準まで急反落した。

(ロイターニュース 志田義寧)

ドル/円JPY=   ユーロ/ドルEUR=  ユーロ/円EURJPY=

午後3時現在   93.09/11  1.3444/48  125.16/20

正午現在     93.19/21  1.3450/54  125.35/39

午前9時現在   93.31/33  1.3450/54  125.51/55

NY午後5時   93.46/48  1.3453/54  125.74/78


14. 2013年2月13日 22:20:21 : Sgby0R8mJg
当面アメリカは良い物を買いながら国力を蓄えるということでしょ。

日本は得るものが少ないのに、輸出したら為替で増やしたいというミジメ。

経団連会長を更迭して世代交代しろよ! 経験則が通用しないぞ!


15. 2013年2月14日 07:42:32 : 4gh4sp6YZw
債券投資家はなぜアベノミクスに踊らないか・・異次元の地政学的実験に山を動かせない!
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/202.html

★この武者氏の記事は、一部抜粋=関連記事で既に読みましたが・・・掘りが浅いようだ。


16. 2013年2月14日 11:32:15 : xEBOc6ttRg
ルー米次期財務長官が強いドルへの支持表明、税制改革に意欲
2013年 02月 14日 08:42

トップニュース
AMRとUSエアウェイズの合併、両社取締役会が承認=関係筋
SARSに似た新型ウイルス、英国でヒト感染を確認
GDPマイナス幅縮小、消費など内需の一部に底堅さ=経済再生相
米アップルがMacBook値下げ、iPadとの共食いに懸念も

[ワシントン 13日 ロイター] 次期米財務長官に指名されているジャック・ルー氏は13日、上院財政委員会の指名承認公聴会で、強いドルを支持すると言明するとともに、税制改革に優先的に取り組むべきとの考えを示した。

ルー氏は質疑応答で「米財務省は民主・共和両党の政権下で、強いドルが米経済の成長促進および、生産性・競争力の向上にとって最大の利益との政策を長らく堅持してきた」とし、長官に就任しても「この政策を変えることはない」と述べた。

また中国人民元はなお過小評価された水準にあるとの考えを示し、「日米欧7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)などの場を通じて、市場原理に基づく為替政策の推進に取り組んでいく」と述べた。

公聴会では、税制改革の必要性に議論が集中し、とりわけ法人税に関する質問が相次いだ。

オバマ大統領は現行35%の法人税率の28%への引き下げを、共和党は25%への引き下げをそれぞれ求めている。

ルー氏は法人税率の引き下げをはじめ、税制改革を優先課題として取り組むべきだと主張し、「課税ベースの拡大に向け、どの程度まで踏み込むかが課題」と述べた。

ただ、1980年代の税制協議に関わった経験から改革が容易ではないことも認識していると発言。「原則として、税制改革について容易な決定が多くあるとすれば、それらはずっと以前に実施されているだろう」とし、「困難な選択が求められる」との見方を示した。

公聴会では、財政政策をめぐる民主党と共和党の相違が浮き彫りになったが、ルー氏は超党派を基本に議会と協力することへの意欲を繰り返し表明した。

先の金融危機で米シティグループが公的資金注入を受ける直前に、幹部だったルー氏が94万ドルのボーナスを受け取ったことなどをめぐっても質問が飛び交った。ルー氏はこれに対し、業界の基準に見合う額だったと冷静に答えた。

ケイマン諸島に関連したファンドに行った5万6000ドルの投資についても問われ、ケイマン諸島のファンドに関与しているとは当初把握していなかったと応じた。また売却により損失が生じたとし、投資により優遇税制の恩恵も受けていないと語った。

ルー氏の財務長官指名にあたり、金融業界幹部からは金融市場に関する同氏の経験不足を懸念する声も上がっていた。だがルー氏は、クレジットデリバティブや金融規制についての突っ込んだ質問にも首尾よく答えた。

公聴会が概ね、穏やかな雰囲気で行われたことに加え、ルー氏も上手くこなしたことで、承認の公算が大きくなっている。

ボーカス上院財政委員長は、同委でのルー氏の指名承認投票について、2月下旬の休会明けとなる可能性が高いと述べた。その後、上院本会議の承認を経て、正式に就任する運びとなる。

関連ニュース

日本の新たな政策スタンス、経済への効果は一時的=ムーディーズ 2013年2月1日
米上院、ケリー氏の国務長官就任を承認 2013年1月30日
米大統領、次期大統領首席補佐官に側近のマクドノー氏指名 2013年1月26日
米債務上限4カ月延長法案、下院共和党が23日に採決方針 2013年1月22日


実質GDPは3期連続マイナス成長、輸出減や設備投資落ち込みで
2013年 02月 14日 10:56 J

[東京 14日 ロイター] 内閣府が14日発表した2012年10─12月期国民所得統計1次速報は、実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.1%、年率換算マイナス0.4%と、3四半期連続のマイナス成長となった。ロイターの事前予測は年率プラス0.5%だったが、予測を下回るマイナス成長にとどまった。

厳冬により冬物商材中心に消費が伸びたほか、公共投資も増加基調を維持、被災地で住宅再建の動きの広がりもあって住宅投資も堅調に推移するなど、内需はプラスに寄与したが、海外減速により輸出が振るわず外需がマイナス寄与となった。設備投資も停滞した。安倍政権の政策によりマインド指標は大きく改善しているものの、GDP統計から実体経済が底打ちしたことを確認するには時期尚早だ。

<輸出落ち込み大きく内需好調を打ち消す>

10─12月GDP成長率の足を最も引っ張ったのが輸出だ。海外経済減速や円高の影響が残り、前期比3.7%の落ち込みとなった。7─9月に比較して落ち込みの程度はやや縮小したものの、それでもGDP成長率全体に占めるマイナス寄与度は大きい。自動車や産業機械が減少に寄与した。輸入も2.3%減少したものの、輸出の落ち込みの方が大きかったため、外需の寄与度はマイナス0.2%となった。

このため企業の投資意欲も回復せず、設備投資は前期比マイナス2.6%となり、4四半期連続の減少となった。自動車や産業機械への投資が減少した。

<消費が2期ぶりプラス、復興需要も内需下支え>

一方、民間最終消費支出、民間住宅建設、政府最終消費支出、公的固定資本形成が押し上げに寄与した。

民間最終消費は2四半期ぶりにプラスに転じた。自動車販売はエコカー補助金終了で落ち込んだものの、厳冬による冬物商材や灯油販売などがこれを補完し、前期比0.4%の伸びとなった。住宅投資も、住宅エコポイント終了を控えた駆け込み申請などの影響や、被災地住宅着工の好調から前期比3.5%伸びた。公的固定資本形成は被災地の公共工事中心に増加し同1.5%の伸びとなった。この結果、内需寄与度はプラス0.1%と2四半期ぶりにプラスに転じた。

<GDPデフレーター、前年同期比0.6%下落、13四半期連続で下落>

GDPデフレーターは前年同期比マイナス0.6%となり、2009年10─12月期以来13四半期連続で下落した。下落幅は7─9月期の0.8%下落から縮小したが、デフレから脱せない状況が続いている。

前期比では0.3%の下落。民間最終消費支出デフレーターなどの上昇によって、国内需要デフレーターは横ばいとなったが、輸入デフレーターの上昇が押し下げに寄与した。

<甘利経済財政相、先行き「当面弱さ残るが、緩やかに回復していく」>

全体として、政策効果などで内需が好調なものの、民間企業部門は停滞を脱せずにいる。安倍政権に交代して株高・円安により市場や企業・消費者のマインド面は明るさが出てきたものの、10─12月までの段階では輸出、設備投資といった民間経済活動のリード役は停滞したままの姿となった。

甘利経済財政政策担当相は談話の中で、先行きについて「当面弱さが残るものの、日銀の金融緩和や緊急経済対策による効果に加え、世界経済の緩やかな回復が期待されることから、日本経済は緩やかに回復していく」との見通しを示した。

<2012年は2年ぶりにプラス成長に>

2012年暦年では実質GDPはプラス1.9%と2年ぶりのプラス成長となった。内需寄与度が2.8%で、外需寄与度マイナス0.9%を補い、内需がプラス成長を支えた。

GDPデフレーターは前年比マイナス0.8%となり、1998年以来15年連続で下落した。ただ、下落幅は2011年の1.9%下落から縮小した。

(ロイターニュース 中川泉 石田仁志 吉川裕子;編集 宮崎亜巳)

*内容を追加します。

関連ニュース

10─12月期実質GDPは前期比‐0.1%、年率‐0.4% 2013年2月14日
日経平均小反発、円の落ち着きで輸出株の一角がしっかり 2013年2月14日
12月米製造業新規受注予想下回る、民間投資先行指標も小幅減 2013年2月5日
第4四半期の米GDPは3年半ぶりマイナス成長、政府支出減響く 2013年1月31日

アングル:「政治」が阻む一段のユーロ上昇、独選挙次第で急落リスク
2013年 02月 14日 10:55 JST
[東京 14日 ロイター] 外為市場で、ユーロの上値が重くなっている。スペインや総選挙を間近に控えるイタリアで政局不安が再び強まったほか、現在のユーロ高について独仏の立場の違いも鮮明になった。

景気の足取りが弱いなか、反対も多い財政緊縮策を実行していくには政治の安定が不可欠。前年のギリシャ総選挙当時のような市場の混乱は予想されていないものの、9月の独総選挙の結果次第でリスクオフが強まることへの警戒感もある。

<独仏の「対立」もユーロ圧迫要因に>

ユーロは昨年11月以降、大きく水準を回復した。2月高値まで対ドルでは5.8%、対円では23.5%の上昇率をマーク。欧州債務危機への警戒感が大幅に後退したほか、世界的な株高基調、欧州中央銀行(ECB)が危機対応で行ったLTRO(期間3年流動性供給オペ)で供給された資金の早期返済などがユーロの買い戻しを促した。IMM通貨先物における投機筋のポジション動向では、昨年末に1年4カ月ぶりに買い越しに転換、その後も買い越し幅が拡大している。

しかし、ここに来て「政治要因」がユーロの一段の上昇を阻んでいる。前週には折からくすぶっていたスペインやイタリアの政局不安が再燃、ユーロ売り材料となった。8日に公表されたイタリアの各種世論調査によると、24─25日に行われるイタリア総選挙ではベルサニ氏率いる中道左派がベルルスコーニ陣営を抑えて勝利する見通しだが、安定政権の樹立にはモンティ氏率いる中道派連合との連携が必要になる公算が大きい。

またユーロ高に対する立場でドイツとフランスの「対立」が鮮明になっていることもユーロ上昇の抑制要因となっている。フランスは、ユーロ高への対応に向けた協調を主要国に求めているが、ドイツは為替相場の価値は市場が決定するべき、との考えを示している。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田雅志シニア通貨ストラテジストは、欧州債務問題の大幅後退でユーロは底堅いとしながらも、危機対応では一枚岩に見えたドイツとフランスの立場の違いが鮮明になったことで、マーケットの焦点になっていると指摘する。ドイツ・ECBと、フランスやスペイン、イタリアなどGDPは大きいが景気はずっと低迷している国に欧州は分断されており、「ユーロが少し上がってくると景気低迷国からの不満が注目される」と話す。

<厳しいフランス経済>

14日には、ドイツ、フランスの12年第4・四半期GDP速報値が相次いで発表される。大和総研の山崎加津子シニアエコノミストは、ドイツのマイナス成長が一時的なものにとどまる一方で、フランス景気は厳しい状況が続くとみている。「ドイツは財政的に非常に健全で、財政健全化のために何かしなくてはならない国ではないが、フランスはかなり財政赤字が大きいので、スペインやイタリアが取り組んできた財政健全化にこれから本気で取り組まなければならない状況」という。

オランド仏大統領は12日、通商上の優位性を得るために、自国通貨を操作すべきではないとの見解を示した。ユーロ/円上昇の原動力となったアベノミクス期待による円売りは、12日のG7による緊急共同声明により一部巻き戻しを迫られている。市場では「中国や韓国が参加するG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)通過までは円売りには動きにくい」(大手邦銀)とのムードが急速に広がっている。

<ドイツ総選挙がリスクイベントにも>

前年5月にはギリシャにおける1回目の総選挙で反緊縮財政派が躍進してマーケットが混乱に陥ったが、アナリストやエコノミストの間では、ESM(欧州安定メカニズム)の正式発足やOMT(新たな国債購入プログラム)が準備されていることで、市場が混乱するリスクは低くなったとの見方が多い。

だが、三井住友銀行の岡川聡シニアグローバルマーケッツアナリストは、9月のドイツ総選挙がリスクイベントになる展開を警戒しているという。米国の不動産市場、日本のデフレ、ユーロ圏の周辺国といった先進国が抱える根本問題は解決されておらず、現在のようなリスクオン相場は年後半までは持続しにくいとみている。

ドイツの現時点での大半の世論調査では、3選を目指すメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)が、最大野党の社会民主党(SPD)を支持率で10ポイント以上リードしている。

しかし、総選挙の前哨戦と位置付けられ、1月20日に投開票された独ニーダーザクセン州議会選挙では、野党のSPDと緑の党を合わせた得票率が、CDUと、連立与党の一角を占める自由民主党(FDP)を合わせた得票率を上回り、メルケル政権が盤石なわけではないことを示した。

学界からも、今年の欧州の総選挙で反緊縮を掲げる勢力が勝利すれば、再びユーロ危機に陥るリスクを警戒する声が出ている。ユーロ危機の苦い教訓から、ユーロ圏は民主主義や国家主権よりも市場メカニズム・統合を重視するスタンスにシフトしようとしているが、「欧州がユーロ危機後に描いた民主主義対市場メカニズムの新しいバランスを支持しない陣営が勝利した場合に、マーケットがそれに乗って暴走すれば怖い事態になる」と慶應義塾大学・経済学部の嘉治佐保子教授は話している。

(ロイターニュース 和田崇彦 編集:伊賀大記)



ユーロ上昇、独連銀総裁による「過大評価」否定受け=NY市場 2013年2月12日
独連銀総裁がユーロ高議論を一蹴、「問題の本質から逸脱」 2013年2月12日
NY外為市場・午前中盤=ユーロ反発、弱地合いは継続 2013年2月12日
ドル指数が上昇、1カ月ぶりの高水準=欧州市場 2013年2月11日


17. 2013年2月14日 11:36:51 : xEBOc6ttRg
岩田前副総裁:1ドル=90−100円は均衡回帰、リスク資産購入拡大も
  2月14日(ブルームバーグ):岩田一政前日銀副総裁は14日、物価目標2%の達成には円高是正が必要不可欠とした上で、実質実効為替レートの均衡レートからのかい離は15%から30%あり、1ドル=90円から100円程度までは均衡への回帰であるとの認識を明らかにした。自民党有志で作る「デフレ・円高解消を確実にする会」(山本幸三会長)で配布した資料で見解を示した。
岩田氏は政府・日銀の掲げる2%の物価目標は「マクロ経済政策運営上、整合性のある目標」と指摘。それを実現するための将来の金融拡大策としては「いくつかの方法がある」と強調している。
具体的には超過準備に対する0.1%金利低下、買い入れ国債の満期延長、各種リスク資産の購入拡大のほか、金融危機対応としての財務省・日銀共同での基金を通じた外債購入を挙げた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 広川高史 thirokawa@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/14 11:06 JST

TOPIXが下落、金融や資源関連売り−GDPマイナス重し
  2月14日(ブルームバーグ):午前半ばの東京株式相場は、TOPIXが下落。取引開始前に発表された昨年10−12月の実質国内総生産(GDP)が、市場予想に反しマイナス成長となったことが重しとなっている。証券や銀行など金融株、石油など資源関連株が安い。日本銀行の金融政策決定会合の結果公表を見極めたいとのムードも漂う。
午前10時18分時点のTOPIX は前日比3.79ポイント(0.4%)安の953.23。一方、日経平均株価 は21円21銭(0.2%)高の1万1272円62銭。
マネックス証券の金山敏之シニア・マーケット・アナリストは、「GDPのマイナス成長は想定の範囲内だ。昨年10−12月の企業決算が良くなかったことを考えると、ミクロとマクロの整合性が取れている」としたものの、市場参加者のセンチメントを弱め、「上値を抑える一因にはなり得る」とも話していた。
内閣府がきょう午前8時50分に発表した昨年10−12月期の実質GDP は、前期比年率で0.4%減だった。エコノミストらの事前予想の中央値は0.4%増で、3四半期ぶりのプラス成長が見込まれていた。この日は、前日から開催されている日本銀行の金融政策決定会合の結果公表も控える。
金山氏は、「前日の米国株が高安まちまち、為替も動きに乏しく、外部環境の材料難でなかなか方向感が出づらくなっている」と言う。日銀会合での政策変更もないとみられているが、「実際何が出てくるかは、ふたを開けてみないと分からない。ひとまず見極めたいと考える投資家が多いだろう」としている。
東証1部33業種はパルプ・紙、石油・石炭製品、その他金融、証券・商品先物取引、銀行、不動産、鉱業、鉄鋼、建設などが下落。半面、為替市場での円相場の落ち着きを背景にゴム製品、電機といった輸出関連業種の一角が堅調に推移する。
売買代金上位ではみずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループの3大金融グループが売られ、野村ホールディングス、日立製作所、グリーが安い。半面、マツダ、ソニー、新生銀行、NTTは上昇。今12月期の増益増配計画、自社株買いの実施方針を示したアサヒグループホールディングスは急騰している。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 河野敏 skawano1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Nick Gentle ngentle2@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/14 10:28 JST


バイブル「四季報」在庫切れ、投資熱上がる個人−証券も電話殺到(1)
【個別銘柄】アサヒや太陽誘電が大幅高、日揮は急落、スクエニ安い
物流の日本プロロジスリートが上場、初値は27%高の70万円(1)
円買い優勢、G20控え急速な円安への批判を警戒−対ドル93円台前半
債券先物は反落、米10年金利2%台乗せで売り先行−GDP予想下回る



【第263回】 2013年2月14日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
次のバブルが来るなら
何が起こるか
 最近、雑誌の見出しなどで「安倍バブル」という表現をよく見かけるようになった。バブルは「長期的に維持できないほどの資産価格の高騰」とするのが一般的な定義だ。問題は、その最中に「今の株価はバブルだ」といった判断が可能かどうかだ。この問題については、グリーンスパン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長のように、バブルはそれが崩壊して資産価格が下がってみなければ(確か4割くらいと言っていたと思う)、バブルだと認識できないという考えと、ある程度は認識できるはずだという考え方がある。両説の差は、経済政策の望ましいあり方と責任について異なる意味合いをもたらすので、政策論として重要だが、投資家としては、「現在形」で判断するしかない。

 バブルは、たちの悪い信用拡大による資金が資産市場に向かい、経済全体として過剰なリスクテークが発生することに伴って起こる資産価格の高騰現象だ。

 緩和的な金融環境がバブル発生の必要条件だ。金融環境が緩和的であるか否かは、実質金利が十分低いかマイナスであるかといった点と、銀行貸し出しが伸びているかで判断できる。

 金融引き締めはほぼ必ずバブル崩壊を導くが、経験的にいって、最初の政策金利引き上げで、ただちに資産価格が暴落することはまれで、何度目かの利上げの後にバブル崩壊が始まることが多い。1980年代の日本のバブルが崩壊して株価が下げ始めるのは、3回目の公定歩合引き上げの後だった。

 バブルは、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、不動産の場合なら家賃利回りと金利の差といった一般的な資産価格の判断指標に表れる場合が多い。

 80年代末期の日本のバブルにあって、東証1部上場銘柄のPERは80倍前後の水準になった。これを正当化する説明を見つけることは当時も困難だったが、このときに登場したのが「Qレシオ」と名付けられた新しい株価尺度だった。Qレシオは、ある大学教授を座長とする証券経済研究所のワーキンググループの報告書で提唱された。これは、企業が保有する地価などの資産を時価で評価した実質純資産と株式の時価総額を比べる一種の実質PBRのような概念だったが、株価のバブルを、地価という別のバブルで測って、「日本の株価はバブルではない」という結論を出す、論理的な欠陥を持っていた。

 バブルの最中には、高騰した資産価格を正当化しようとする新奇なアイデアが登場することが多い。90年代の後半に発生した米国のネット株バブルの際には、PERを成長率(%)で割って計算するPEGという珍妙な株価尺度が登場した。これは、3桁になったネット株のPERを正当化してセールスするためのアイデアだった。

 バブルでは、投資家がリスクを過小評価する「リスク誤認の仕掛け」が登場することが特徴的だ。日本のバブルでは、「握り」という運用利回りを保証する取引慣行が財テク企業のリスク判断を狂わせた。また、金融危機に至った米国の不動産バブルでは証券化商品の金融技術と誤った格付けが不動産ファイナンスのリスクを過小評価させる仕掛けとして機能した。

「アベノミクス」が、米国並みの金融緩和に追い付いて、円高を修正し、米国並みの株高をもたらすのなら、為替レートが1ドル100円、日経平均株価が1万3000円くらいの水準が想定されるが、この水準は「バブル」にははるかに遠い。本格的なバブルを心配するのは、もっと先の話だ。


18. 2013年2月14日 11:38:01 : xEBOc6ttRg
ヘリコプターマネー擁護論
財政ファイナンスは必要不可欠な政策手段だ
2013年02月14日(Thu) Financial Times
(2013年2月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 「人が困った状況に陥ってしまうのは、何かを知らないからじゃない。知らないことを知っていると思い込んでいるからだ」――。マーク・トウェインが残したこの言葉は、金融政策や銀行政策にぴたりと当てはまる。

 世の中には、苦境に陥った欧米の国々はマネーが過剰であることに苦しんでいるのだと確信している人たちがいる。その一方で、オーソドックスな考え方をする政策立案者は、民間部門の支出をとにかく回復させることが経済を回復させる正しいやり方だと思っている。

 政府の支出を紙幣の印刷で賄う財政ファイナンスに手を染めるのは命取りだ、との見方にはほとんどの人が賛成している。しかし、こうした見方はすべて間違っている。

 金融政策は既に緩和されすぎていると主張する向きは、金利水準が異常に低いことや中央銀行のバランスシートが大きく膨らんでいることを引き合いに出す。しかし、第2次世界大戦後の金融経済学の大御所ミルトン・フリードマンは、重要なのはマネーの量だけだと主張していた。

 中央銀行のバランスシートの急激な拡大や超の字が付く低金利にもかかわらず、広義のマネーの量は金融危機が始まって以来伸び悩んでいる。

米国を苦しめているのは、マネーの過剰ではなく不足

 ニューヨークの調査会社、金融安定センター(CFS)の試算によれば、ディビジアマネー(広義のマネーを合計する際に用いられる著名な手法)で見た広義のマネー「M4」は、2012年12月時点で1967〜2008年のトレンドを17%も下回っていた。米国はマネーの過剰ではなく不足に苦しんでいるのだ。

 国際決済銀行(BIS)のクラウディオ・ボリオ氏が先日発表した論文「金融サイクルとマクロ経済学:我々は何を学んだのか(The financial cycle and macroeconomics: what have we learnt?)」で指摘しているように、「預金とは、ローンの組成に先立つ資金ではない。ローンが預金を生み出すのだ」。

 したがって、銀行が貸し付けをやめれば預金は伸び悩む。英国では、2012年末の「M4貸付」が2009年3月の水準を17%下回っていた。

 ハイパーインフレがすぐそこまで迫っていると信じ切っている人たちは、銀行が中央銀行に置いてある準備預金の水準に直接反応し、企業などへの貸し付けを増やすと考えている。金本位制であれば、準備預金には限界がある。銀行はその水準にいくぶん注意しなければならない。

 しかし不換貨幣(つまり、政府が作ったマネー)が流通する制度においては、準備預金は無限に供給することが可能になる。確かに、中央銀行は、準備預金は有限だという「ふり」をすることができる。だが実際には、支払い能力のある銀行には無制限に(そして、既に見られるように支払い能力のない銀行にも)準備預金を貸し付けることができる。

 中央銀行が準備預金を思いのままに供給できるのであれば、銀行による貸し付けを阻む要因は借り手の支払い能力と貸し付けの収益性となる。中央銀行が銀行への準備預金の供給を増やすという手法は、民間の銀行による貸し付けを増やす非効率なやり方であって、危険なやり方ではないのである。

金利水準に反応しなくなった貸し付け

 平時であれば、銀行による企業などへの貸し付けは、中央銀行が設定する金利水準の変化に反応する。しかし、英金融サービス機構(FSA)のアデア・ターナー長官が先週行った重要な講演「債務とマネーとメフィストフェレス(Debt, Money and Mephistopheles)」で指摘したように、このレバーは壊れてしまっている。

 政策当局者たちはこの状況を受けて、民間に貸し付けと支出を強いる取り組みをこれまで以上に推し進めようとしている。確かに、中央銀行は債券や株式、外貨その他の資産の価格を大幅に引き上げることができるし、そうすることによって民間の支出を刺激できる。

 しかしターナー長官も論じているように、このやり方では大きなツケが回ってくるかもしれない。「過去の過剰によって作られたデレバレッジ(負債圧縮)の罠から抜け出そうとする過程で、将来の脆弱性を高めてしまう恐れがある」からだ。

 かつてBISのチーフエコノミストを務めていたウィリアム・ホワイト氏も昨年、「超金融緩和策と意図せざる結果の法則(Ultra Easy Monetary Policy and the Law of Unintended Consequences)」と題した論文で同様な懸念を表明している。

 これに代わる選択肢がないわけではない。ターナー長官も指摘しているように、1930年代の大恐慌の際にシカゴ大学の経済学者たちは、民間部門への信用供給とマネー創造とのリンクを断ち切ればよいと提案した。

 その中心にいたのはヘンリー・サイモンズだったが、エール大学のアービング・フィッシャーもこの考えを支持したし、フリードマンも1948年に著した論文「経済安定のための金融および財政の枠組み(A Monetary and Fiscal Framework for Economic Stability)」でこれを支持した。

見直される「シカゴ・プラン」

 この提案の柱は、預金にはその全額について公的債務の裏付けを持たせるというものだった。そうすれば、民間の信用や債務の不安定性は解消され、公になっている公的債務も劇的に減少し、現在の形態の民間債務に見られる欠陥の多くも取り除かれると提唱者らは主張していた。

 国際通貨基金(IMF)が先日公表したワーキングペーパー「シカゴ・プラン再考(The Chicago Plan Revisited)」も、このスキームを実行すればそのような利益がもたらされると結論付けている。

 そこまで話を進めるのは、やめておこう。だが、この計画はやはり、2つの重要な点を浮き彫りにしている。

 まず、不換貨幣はもっぱら民間の借り入れと貸し付けの現行システムのみを通じて取引されるべきだとする一般的な見解を正当化することは不可能だ。多くの場合、無責任な貸し付けの副産物として銀行が生み出すマネーの裏付けとして、なぜ主に政府が作った通貨を用いねばならないのか?

 なぜ民間不動産のレバレッジを支援することが良いことなのに、公共インフラの提供を支援することは悪いのか? 筆者は、不換貨幣は公共支出ではなく、民間支出のみを促進すべきだという考えには、効果的な誘因を何ら見いだせない。

 次に、現在の異例な状況下で、民間の信用と支出を拡大させることが完全に危険でないにせよ非常に難しい時には、公共支出の支援のために信用とマネーを創造する政府の力を使うべきだという主張の根拠は強い。追加で必要になる中央銀行の資金の量は間違いなく、現在の何でもありの量的緩和の下で必要な量より少ないはずだ。

財政支出と金融拡張を組み合わせた強力な政策

 商業銀行の自己資本増強やインフラ建設、あるいは減税のために財政ファイナンスを利用してはどうか? 公になっている公的債務を過度に拡大することなく、財政赤字に民間のデレバレッジを促進させる正当性も確実に大きいだろう。

 この政策を極めて強力なものにするのは、財政支出と金融拡張の組み合わせだ。ケインズ派は前者を享受でき、マネタリストは後者を享受できるからだ。

 財政ファイナンスの規模の決定権を中央銀行が握っており、その中央銀行が政策が経済に与える影響を検証するのであれば、この政策はハイパーインフレはおろか、高いインフレ率を生み出してしまう必要さえない。

 財務省と独立した中央銀行の間の議論が必要になるが、それは仕方ない。極端な窮状にある時には避けられないことだ。

「日本は財政ファイナンスを行うべきだった」

 がんに苦しむ人たちは危険な治療を受けなければならない。それでも、結果はやはり回復である場合もある。ターナー長官は以下のように指摘している。

 「日本は過去20年間で、ある程度のあからさまな財政ファイナンスを行うべきだった。もしそうしていたら、日本は今、名目国内総生産(GDP)がもっと大きくなっており、今より高い物価水準と今より高い実質GDPの水準、そして今より低い対GDP債務比率の何らかの組み合わせが生じていたはずだ」

 伝統的な政策は結局、危険だった。現在の問題国にもこれが当てはまるかどうかは議論の余地がある。

 しかし、金融危機に対して、意識的に拡大させた財政赤字を埋める財政ファイナンス――手短に言えばヘリコプターマネー――で対処することは、どんな場合でも正しくないという見方は間違っている。これは絶対に政策手段に含まれていなければならないのだ。

By Martin Wolf


円安・株高で始まった「根拠なき熱狂」
「安倍バブル」でケガしないための4つの教訓
2013年02月14日(Thu) 池田 信夫
 安倍晋三首相の演出した円安・株高の勢いが止まらない。日経平均株価は12週連続で上昇し、1959年以来の大相場になった。株価はここ3カ月で30%近く上昇し、これはバブルのピークだった1988年の年間上昇率とほぼ同じだ。

 しかしバブルといっても25年前のことで、記憶しているのは今の40代以上だけだから、痛い目に遭ったことを忘れて「安倍バブル」をあおる人々が出てくる。私も、かつてバブルをあおったメディアの一員として、同じ愚を繰り返さないように当時の教訓を語り継いでおこう。

【教訓1】 過剰な「景気対策」がバブルを生む

 バブルが起こった直接のきっかけは日銀の過剰な金融緩和だが、その背景には実体経済のゆがみを金融政策でカバーしようとする無理な「景気対策」があった。

 1985年のプラザ合意で円高誘導が行われ、為替レートが1ドル=250円から1年で150円まで暴騰し、深刻な「円高不況」が起こった。これに対して不況で歳入の減った大蔵省が財政支出をきらったため、景気対策はすべて金融政策で行われた。

 80年には9%だった公定歩合が1987年には2.5%まで下がり、これが2年間続いた。1989年からは日銀が遅まきながら公定歩合を引き上げたが、政治家は強く抵抗し、橋本龍太郎蔵相は「日銀総裁を解任する」と脅した。

 この背景には金融自由化もあった。85年の日米円ドル委員会で預金金利などの自由化が決まり、大口定期預金の金利が上がった。他方、大企業はユーロ円債などで起債できるようになり、優良な融資先が減った銀行は、建設・不動産・ノンバンクの「バブル3業種」に融資を集中し、空前の地価・株価の上昇が起こったのだ。

【教訓2】 バブルで物価は上がらない

 安倍首相は日銀が「輪転機をぐるぐる回すとインフレが起こる」と思っているようだが、消費者物価指数は80年代後半にも年平均1.3%しか上がらなかった。ドル安で輸入物価が下がり、不況で賃金が抑制されたからだ。

 同じ時期に、株価は図のように3.3倍になったが、日銀は「物価の番人」なので、資産価格を抑制することは求められていない。当時も日銀の幹部が「物価が落ち着いているので利上げはしにくい」とこぼしていた。政治家は利上げをきらうからだ。


バブル期の日経平均株価(円)、Yahoo! Financeより
 資産価格が上がるのに物価が上がらないのは、2000年代のアメリカの住宅バブルでも同じだった。新興国の世界市場への参入で物価の国際的な連動性が強まり、国内の需給だけで物価が動かなくなったことも原因だろうが、これがFRB(連邦準備制度理事会)の対応の遅れの原因になった。

 今回も日銀が掲げた2%のインフレ目標は通常のインフレでは実現できないが、80年代と違うのは急速なドル高が起こっていることだ。特に原油の輸入はドル建てなので、ドルが20%以上あがると5兆円近く貿易赤字が増え、2008年のように1%以上の悪い物価上昇が起こる可能性がある。

【教訓3】 バブルには必ず「物語」がある

 ただカネ余りだけでは、バブルは起こらない。2000年代の量的緩和では、日銀のバランスシートは75%も膨らんだが、インフレもバブルも起こらなかった。80年代には日本企業が世界を制覇するという物語があり、国土庁は「東京のオフィススペース需要は供給の2.5倍に上る」という調査結果を出して地価上昇をさらにあおった。

 東京の地価が国土法の規制で抑えられると、地価上昇は大阪に飛び火し、ここでは「関西新空港で大阪はアジアの中心になる」という物語で地価上昇があおられ、一時は梅田の地価が銀座を抜いた。

 1坪1億円を超える地価は、収益還元価格で考えると家賃の100年分を超えるが、一部の経済学者は「家賃が安すぎる」と主張した。宮尾尊弘氏(筑波大学)は、次のように「パラダイムの転換」を唱えた。

 ついにパラダイムの転換が起こり始めている。それは、新しいストック経済のパラダイムが誕生しつつあることを意味する。[中略]このような視点からすれば、土地ブームや住宅ブームが、グローバルなストック経済化の過程で必然的に起こった現象であり、それが爆発的な内需拡大による大型景気の出発点になったことも容易に理解できるのである。(『ストック経済の時代』)

 地価が上がると企業の保有固定資産が上がるので、その資産価値から算出したQレシオ(株価純資産倍率)で見ると、日本の株価はまだ割安だという理論を紺谷典子氏(証券経済研究所)と若杉敬明氏(東大)が88年に発表し、証券会社がこれをもてはやして「内需関連株」が上がった。

 こういう話は原因と結果を取り違えたものだ。ストックの資産価格は将来のフローの収益の割引現在価値なので、資産価格が物価から大きく乖離しているときは、間違っているのは資産価格なのだ。

 アメリカのITバブルでは「ニューエコノミーでは在庫がなくなるので企業は無限に成長する」という物語が生まれ、住宅バブルでも「金融技術ですべてのリスクはヘッジできる」という物語で投資銀行がバブルをあおった。

 いま日本でリフレ派のエコノミストが「レジームチェンジ」を唱えるのも、昔のストック経済論の「パラダイム転換」とよく似ている。バブルのときは必ずこういう物語が出てくるもので、「新時代シンドローム」と呼ばれる。

【教訓4】 バブル崩壊が始まったら止まらない

 当時「バブル」という言葉は、誰も使わなかった。異常な時代だという実感はなく、景気のいい明るい時代だった。こういう状況が変わり始めたのは90年初めだったが、そのころも「バブルが崩壊した」と言う人はいなかった。

 マスコミも金融を引き締めた日銀の三重野康総裁を「平成の鬼平」などと称え、バブルで儲けた悪徳不動産業者をこらしめるためにもっと利上げすべきだという論調が多かった。メディアが「バブル」という言葉を使い始めたのは、91年に入ってからで、日銀も91年にようやく利下げに転じたが、もう遅かった。

 結果論だが、どこかでバブルを止められたかと考えると、日経平均が1年で1万円近く急上昇した87年に日銀が公定歩合を史上最低にしたのが決定的な失敗だった。せめて翌年には利上げすべきだったが、それは政治的に不可能だった。当時の日銀は大蔵省の支配下にあったからだ。

 今回の「安倍バブル」も今のうちなら撤退できるが、このまま夏の参院選で自民党が圧勝して資産インフレが拡大すると危険だ。20年前は銀行が破綻するだけで済んだが、今度は財政が破綻する。

 邦銀の保有する国債は200兆円を超えているので、長期金利が1%上がっただけで6.4兆円の評価損が出て、地方銀行は経営危機に陥る。日銀の保有する国債も100兆円を超えるので、長期金利が上がったら日銀も莫大な評価損を被るが、国債を売り逃げるとますます値下がりして損が膨らむ。「危ない」と思ったときはもう止まらないのだ。

 バブルといっても株価や地価が暴騰したのは5年間ぐらいだったが、バブル崩壊の影響は20年以上も尾を引いている。今度、日本の国債バブルが崩壊したら、日本は永遠に立ち直れないかもしれない。


19. 2013年2月14日 18:08:44 : xEBOc6ttRg
アングル:需給は黙っていても円安方向、市場は口先介入の「封印」望む
2013年 02月 14日 17:55 JST
[東京 14日 ロイター] 日銀が金融政策の現状維持を決めたが、円を買い戻す動きは限られた。新執行部発足後の緩和期待が根強いことに加え、世界的なリスク選好の動きが円売りの流れを後押ししているためだ。

とりわけ、円需給が円安方向にあることは見逃せない。黙っていても円安に振れやすい状況にあるだけに、市場では口先介入は無用の混乱を引き起こすだけだとして、「封印」を求める声が広がっている。

<基礎的需給は円売り超過>

円をめぐる需給環境は大きく変化している。対内証券投資や経常黒字の減少により円買い需要が縮小する一方で、対外直接投資の増大により円売り需要が拡大。

みずほコーポレート銀行国際為替部マーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏が、1)経常収支、2)直接投資、3)政府・銀行部門以外の対外証券投資、4)対内証券投資──を合計したものから、外貨のまま海外に残る再投資収益を控除した「基礎的需給」バランスを算出したところ、2011年が16.9兆円の円買い超過だったのに対し、2012年は3.2兆円の円売り超過となった。

足元では日米欧7カ国(G7)共同声明や週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が意識される中で、ドル/円はやや上値が抑えられているが、相場をけん引してきた海外勢は「長い目で見れば右肩上がりのトレンドはまだ続く」との見方を崩していない。短期筋だけでなく、長期プレーヤーも日本の構造変化に着目、「悪い円安」を視野に入れながら、円売りを進めている。

<口先介入せずとも円安圧力>

こうしたなか、14日の東京市場では、次期日銀総裁候補の1人として名前が取りざたされている岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)がドル/円相場の適正水準に言及したことから円安に振れる場面があった。市場では「足元では円需給やリスク選好など円安に行きやすい状況にあり、責任ある立場の人がこんなことを言う必要はないし、言ってはいけない。(海外に)突っ込んで下さいと言っているようなものだ」(外資系証券)と苦言を呈する声が出ていた。

需給環境や日銀新執行部による大胆な金融緩和期待、世界的なリスク選好の流れなど、「黙っていても円安方向にある」(大手邦銀)にもかかわらず飛び出す要人の口先介入。G7緊急声明やG20財務相・中央銀行総裁会議を前に、世界中が為替に関する発言に神経質になっているなかで、不用意な「口先介入」は逆効果ともなりかねない。

(ロイターニュース 志田義寧 編集:伊賀大記)

日経平均小反落、円安一服で輸出株に利益確定売り先行 2013年2月13日
G7声明めぐる発言で相場一服、大胆な金融緩和期待は継続 2013年2月13日
アングル:アベノミクス推進、G7の通貨安競争けん制でも変わらず 2013年2月13日
日経平均は5日続伸、米景気回復期待と円安で資金流入が継続 2013年2月4日


 

景気回復下でも大胆な金融緩和できるか、海外勢は見極めの段階に
2013年 02月 14日 1

第4四半期独GDPは‐0.6%、09年第1四半期以来の大幅マイナス
日経平均は反発、G20控えて為替動向に一喜一憂
韓国が巡航ミサイルの映像公開、核実験強行した北朝鮮に対抗
米ボーイング、787バッテリー問題で暫定的な対策検討=報道

[東京 14日 ロイター] 金融市場では海外勢が「アベノミクス」を見極める段階に入ってきた。日本の10─12月期国内総生産(GDP)は予想外の小幅マイナスとなったが、円安や公共投資増加で今年はプラス成長に転じる見通しだ。

景気回復局面の中でも、次期日銀総裁がフランスなど一部の海外勢からの批判に屈せず、市場が求める大胆な金融緩和ができるのかが注目されている。さらに、財政規律弛緩の懸念が強まる中で、年央に策定される予定の「骨太の方針」が安倍政権の最大の課題になると指摘されている。

<日本株の売買代金が徐々に減少>

日本株の売買ボリュームが徐々にではあるが減少し始めている。東証1部売買代金は6日の2兆8191億円をピークに5日連続で減少。「高値警戒感が強い中で、上値を追うためにはある程度の売買ボリュームが欠かせない」(準大手証券)として警戒感が強まっている。14日は2兆1344億円まで縮小しており、活況を示す2兆円の大台を維持できるかが焦点だ。

日経平均.N225は売買ボリュームがピークを打った6日に直近高値の1万1498円を付け、その後はもみあい商状となっている。「国内勢から売りが出ているのは変わらないが、それを吸収する海外勢の買いが減ってきた。期待先行の買いが一巡し、アベノミクスの実効性や効果を見極めたいとの段階に変わってきたようだ。新たな材料がないと安倍相場の第2ステージには移行しにくい」(大手証券トレーダー)という。

ドル/円もここ1週間ほどは93円台を中心としたレンジ相場色が強くなっており、「安倍相場」をけん引してきた海外勢が見極めの段階に入ってきた可能性があるとみられている。日銀決定会合は現状維持となったが、市場はほぼ無反応。視線は次期日銀総裁・副総裁人事に向いている。「日銀関連で動くとしたら、新体制の布陣を見てからだろう」(IG証券マーケットアナリストの石川順一氏)との声が聞かれる。

<次期日銀総裁はレジームを変更できるか>

海外勢が見極めようとしているポイントの1つは、景気回復局面でも大胆な金融緩和を次期日銀総裁が実行できるかという点だ。「これまでの日銀であれば、景気が持ち直せば追加緩和は止めるということになるが、新体制の下で、景気は回復しているが、その流れを強化し、デフレから脱却するために緩和強化策を打つというレジームに変えることができるかだ」(外資系証券エコノミスト)という。

日本の10─12月期実質GDP1次速報は前期比マイナス0.1%と、予想外の3四半期連続のマイナス成長となったが、「誤差の範囲内だ。中国向け輸出などが弱かったとみられるが、世界的に循環的な景気回復局面に入っているのは間違いない。1─3月期以降はプラスに転じる見通しだ」(マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏)として、今年は景気が回復するとの見方が多い。日銀も景気判断を上方修正している。

米国やロシアなどからの援護射撃もあるが、フランスや韓国など一部の海外勢からは「アベノミクス」に対し批判的な発言も出始めている。景気回復下での金融緩和は「口撃」の対象となりやすい。「デフレを止めるために金融緩和を行うのだから、とやかく言われる筋合いではない。欧州の一部で批判があるが、米国が容認してくれる限りは大きな問題にならない」(国内証券)との声が多いが、円安が急速に進み、1ドル100円を一気に超えてきた場合には、米国で自動車業界などからの圧力が強まる可能性もある。

<「骨太の方針」が最大の課題>

景気回復局面での大胆な金融緩和は金利上昇のリスクを抱える。現時点では、財政規律への信頼は損なわれておらず、円債金利は低位で推移しているものの、バラマキ的財政政策と中央銀行によるマネタイゼーションに近いとマーケットが受け止めれば、金利は跳ね上がり、「アベノミクス」の成否だけでなく、日本経済が大きな危機に陥る可能性がある。

この点で、市場が注目するのは年央に策定する「骨太の方針」だ。中長期の経済財政運営の基本方針であり、成長戦略を含め、安倍政権がどのように経済成長と財政再建のバランスを取るか、さらにそれが市場の信頼を得られるかが焦点となる。

シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「厳し過ぎる緊縮財政計画であれば、景気を圧迫し税収は減り、結局、財政再建は立ち行かなくなると市場は判断するだろう。かといって放漫な財政と金融緩和では財政規律弛緩への懸念が強まる。極めて微妙な均衡点を『骨太の方針』では求められることになる」と指摘、安倍政権の最大の課題になると位置付けている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 山川薫) 
関連ニュース

10─12月実質GDPは年率‐0.4%、輸出や設備投資落ち込みで 2013年2月14日
焦点:高まる成長期待、円安や公共投資で今年度2%台成長へ 2013年2月14日
日経平均小反落、円安一服で輸出株が下げる 2013年2月13日
G7声明「金融政策は国内目的」を明確化、新興国との衝突回避 2013年2月13日


 
金融政策、為替相場に影響与えること目的とはしていない=日銀総裁
2013年 02月 14日 16:38
 
[東京 14日 ロイター] 白川方明日銀総裁は14日、金融政策決定会合後に記者会見し、大胆な金融緩和を軸とした安倍晋三政権の経済政策に対し通貨安競争との批判が一部から出ていることに関連し、金融政策は国内経済の安定を目指して各国がしっかり政策を行うということであり、為替相場に影響を与えることを目的とはしていない、との見解を示した。

また、日銀が掲げている消費者物価の前年比上昇率を2%とする目標の達成に向けた考え方については、政府と日銀の間にずれはないと語った。
 

関連ニュース

アングル:アベノミクス推進、G7の通貨安競争けん制でも変わらず 2013年2月13日
日本のデフレ対策、為替目的でないとG7に認識されたことに意義=財務相 2013年2月12日
来週の日本株は底堅さ維持、金融緩和期待などが下支え 2013年2月8日
コラム:日本が円安相場を正当化して良い理由=唐鎌大輔氏 2013年1月30日

 


20. 2013年2月14日 21:36:49 : FvgGuLsnqg
アベノミクスなんて関係ないのですね。
TPPを成就するための下準備なのですね。
TPPが発行したとたんに円高に触れ、わずかに残る箪笥預金も奪われてしまうのですね。
何の力が働いているか良く考えると良い。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民79掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民79掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧