http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/199.html
Tweet |
本当に儲かるのはこれからだ どこよりも詳しい「安倍バブル」の実情
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34771
2013年02月04日(月)週刊現代 :現代ビジネス
発射台から打ち上げられるロケットのように、猛烈なスピードで空高く舞い上がった日本株。だがその勢いに、少し翳りも見え始めている。日本経済は、またも途中休止してしまうのか。そんなことはない。「本番」は今から始まる。
■25%以上も上昇していた
金融緩和で円高を是正し、2%のインフレ目標を定めてデフレ脱却を図る―。
「アベノミクス」による景気回復への期待が高まり、昨年末以来、日本株は右肩上がりで上昇を続けてきた。
ところが1月23日、瞬間的に異変が起きる。この日、日経平均株価は222円超も下落し、沸きに沸いてきた市場参加者たちに冷や水を浴びせたのだ。
引き金となったのは、日銀による「抵抗」だった。この前日、日銀は政策決定会合を行い、アベノミクス路線に則ったインフレ目標の設定と、金融緩和の拡大を発表。しかし、市場が期待していた「無制限緩和」などの大胆な路線に踏み切ることはなく、再び為替が円高方向に振れ、それが市場の嫌気を誘ったのだった。
"宴"は早くも終わりを告げてしまうのか……。
「そうではない」と語るのは、金融・経済アナリストの津田栄氏である。
「これまで株式市場は、アベノミクスによる円高の是正やデフレ脱却、景気回復への期待から、昨年11月中旬の日経平均8700円を底に、ほとんど休まず上昇を続けてきました。1月中旬に到達した1万950円まで、なんと25%強の上昇幅です。大きく値上がりした後は、その熱をいったん冷やすための調整が必要になります。その際、急激に株価が下がれば調整の期間は短くなるし、少しずつ下がるようであれば、調整の期間は長くなるものです」
市場はこの1~2ヵ月の間、いわばエンジン全開で走り続けてきた。この状態が永遠に続くわけがなく、どこかでスロットルを緩め、スピードコントロールをしなければならない。
つまり、ちょっとした"中休み"があったとしても、それが直ちに、日本市場の再失速に繋がるわけではない。むしろ、株価が上がって本当に儲かるのは、「これから」なのだ。
信州大学経済学部の真壁昭夫教授も次のように語る。
「今株価が下がり気味なのは、為替が調整をしているから。調整の大きな要因は、大手のヘッジファンドが1ドル=86円65銭から90円65銭の間で『ダブル・ノータッチ・オプション』を形成しているからです」
ダブル・ノータッチ・オプションとは金融取引の一種で、一定期間、為替がその範囲内に収まっていれば、最初に賭けた金額の数倍にもなる儲けを出せるというもの。逆にもし、期間内にその設定値の上下どちらかに到達するようなことがあれば、大損害を被る。
そのためヘッジファンドは期間中、「範囲内」に為替が収まるよう、必死で売り買いを繰り返す。
「このため、為替が1ドル=90円65銭に近づくと円が買われて円高になり、86円65銭に近づくと円が売られて円安になるという状況になっています。このオプションの期限は2月上旬なので、それまでドル円の相場はこの範囲内での動きとなり、円高に振れる場合は、株価も下落していく。
ただ、逆に期限が来れば、90円65銭を超える円安になる可能性が出てくる。中長期的には円安の流れは変わらないので、大手のヘッジファンドも、次はもう少し円安水準でオプションを設定する可能性があるからです」(真壁氏)
■日本はもう遠慮するな!
現在のアベノミクス相場を支えているのは、何と言っても「円安期待」だ。
異常な円高水準によって苦しめられてきた日本の主力輸出企業、自動車、電機メーカーなどが、円高是正によって息を吹き返しつつある。日銀がそれに水を差したため一時的に株価は下落したが、「期待」はまだ持続している。過熱したエンジンが一旦冷やされて調子が整えば、再び株価は加速し、日本経済は復活に向け驀進していくだろう。
とはいえ、このニッポンの快進撃と復活劇を、苦々しい思いで見ている向きが存在するのも間違いない。日本とは逆に、自国の通貨安を演出することで景気の下支えをしてきた諸外国は、さっそく円安=自国通貨高に歯止めをかけようと、釘を刺し始めている。
たとえば韓国だ。韓国銀行の金仲秀総裁は1月14日、「大幅な円の下落が起きた場合、積極的に対応する」と異例の声明を発表し、日本を牽制した。
サムスン、ヒュンダイといった韓国の基幹企業がウォン安の恩恵で業績を伸ばし、日本のメーカーを圧迫してきたのは周知の事実。円安が進めば攻守が逆転し、一転、韓国企業が存亡の危機を迎える。円安・ウォン高など「あってはならない」ことなのだ。
そしてそれは米国、欧州にとっても同じ。ゼネラル・モーターズ(GM)などの自動車大手を代表し、米自動車政策会議のブラント会長は1月17日、円安について、
「貿易相手国を犠牲にして自国の成長を図る『近隣窮乏化政策』であり、受け入れられない」
などと非難声明を発表した。さらにドイツのショイブレ財務相も同日の議会演説で、「非常に懸念している」と公言。あたかも日本が、自分勝手な円安誘導で世界経済の秩序を乱しているかのように批判した。
このままだと安倍晋三首相は、次回のG20で各国首脳から非難の集中砲火を浴びかねない雰囲気ではある。
だが、ここはきっちりと、「日本の主張」をしておかなければなるまい。
「今までさんざん円高を助長する政策を繰り返し、自分たちは通貨安で儲けてきたのは誰でしょうか」と。
金融緩和&円安誘導は大した効果はない、むしろ諸外国との軋轢を高めて「通貨安戦争」を引き起こし、逆に損害を被ることになる―。そんな批判は、日本国内にもある。しかし、それに反論するのは、嘉悦大学教授で元財務官僚の高橋洋一氏だ。
「この20年間で、日本に出回っているおカネの量は40兆円から130兆円に増えました。でもGDPは横ばいだったから、金融緩和は効果がないと言う人もいます。しかしこれはまったくの誤り。そういう人は日本国内のデータしか見ておらず、国際的視点が完全に抜け落ちている。
20年で日本のおカネの量が3倍になったと言いますが、OECD(経済協力開発機構)の他の加盟国はもっと大量におカネを増やしている。特に、'07年の金融危機以降、米国はドルの量をどんどん増やしましたが、日本は円をほとんど増やさずにきたのです」
各国は、金融危機だ、このままでは国家破綻だと言って、凄まじい勢いで金融緩和をしてきた。たとえばドルやユーロ、ウォンの量が2倍になったのに、円の量が変わらなければ、円のみ価値がハネ上がって超円高になる。われわれはその状況に、ひたすらじっと耐えてきたわけだ。
現在の為替相場は、言ってみればこうした「行き過ぎた円高」が是正されているだけのこと。ところが諸外国は、それを「日本の横暴だ」と非難しているのだから、正直、開いた口が塞がらない。
「私が第一次安倍政権の内閣参事官をしていた時は、政府が日銀に睨みをきかせて金融緩和を続けていたため、1ドル=120円程度の円安を維持できていました。これによって株価が上がり、GDPも上昇、前の安倍政権では末期でも日経平均が1万8000円ほどあったのです」(高橋氏)
■「景気の潮目」ここに注目!
そもそも同じ海外の目線でも、外交や政治のパワーバランスに関係ない「投資家」の目線では、日本経済復活に大きな期待が集まっているのは事実。
世界的な経済誌『フォーブス』などに寄稿し、市場ウォッチを担当している金融コンサルタント&投資家のニガム・アローラ氏はこう語る。
「私たちは日本市場にとてもポジティブな見解を持っています。我々の社は昨年末の衆院選前に日本株を購入し、為替相場でも、円安になるのを見込んで円を売っていました。おかげさまで大きな利益を得ることができましたよ。
日本はこれから、米国のFRB(連邦準備銀行)がやったのと同じ、金融緩和政策を取ろうとしています。米国でも効果があったわけですから、日本でも必ず良い効果が出ます。たとえば日本企業は韓国企業と比べても競争力が上がり、絶対に強くなると見ています。
現在はトヨタ、ソニー、キヤノンといった日本の輸出企業の株を買っています。私はクライアントに対し、日本株を買うよう推薦していますが、他の多くの金融アドバイザーも同じことをしている。米国から日本への投資は、これからも増えていくと思います」
アローラ氏は、今後為替相場はさらに円安に進み、1ドル=100円を目指すと見て"仕込み"を続けているという。マーケットは、マーケットにとって望ましい方向に動く。投資家たちが「円安、日本株高」に期待し、そちらに動き始めた以上、この流れは少々のことでは止まらないのだ。
ここで日本の個人投資家にとって、気になることと言えば、「では次に市場のエンジンが全開になるのはいつか」ということだろう。そのタイミングを待ち、うまく流れに乗ることができれば、この12月~1月に起きたように、誰でも気楽に、資産を増やすことも可能なはずだ。
経済評論家の森永卓郎氏は、「注目すべきは日銀の総裁人事」として、こう語る。
「2月になると総裁人事が明らかになってくるかも。もしも日銀プロパーの総裁が誕生するようなことになると、(市場の期待を裏切ることになるので)株価は下がる。株はすべて処分したほうがいい。元財務官僚などの場合も、株価はその後1万2000~1万3000円くらいの水準までは上がるでしょうが、大きな値上がりは期待できません。
しかし、そうでない金融緩和推進派の学者などが総裁になれば、株価はロケットのように打ち上がります。夏までに、日経平均株価は2万円に到達する可能性も出てきます」
また、前出の津田氏は、日銀総裁人事以外にも、注目すべきこんなポイントがあると指摘する。
「3月になると企業業績の上方修正予想が相次いで発表されます。為替の想定レートを1ドル=78円くらいに設定している場合が多いので、かなりの数の会社で業績が予想よりよくなるはずです。
その後は、6月にまとまる『骨太の方針』で明らかになる成長戦略の内容が、規制緩和やイノベーションの推進など、市場の期待にマッチするものであれば、さらに企業活動が活発になるとの期待が高まり、株価はもう一段の値上がりをしていくでしょう。7月の参院選まで、株価は調整をしながらも上昇していくと思います」
■チャンスの「芽」を摘むな
安倍政権は、参院選で勝利を収めて国会の"ねじれ"を解消し、長期安定政権を確立することを狙っている。したがって、参院選まではあらゆる手を使って景気の下支えをするだろう―。そうした観測が、さらに株価を押し上げていく。
とはいえ、この"上げ潮"は結局参院選までで終わり、その後は株価が低迷することになるのでは? という不安がないでもない。
しかし実際には、その後も日本経済は力強く回復していく可能性が高い。
「夏以降になると、米国では不動産価格の底打ちが確認され、シェールガス(天然ガスの一種。世界のエネルギー事情に革命を起こすと言われている)の産出量が増えるため、米国の景気が良くなります。米国の景気が良くなることは、中国の景気が良くなることにも繋がります。日本の株価も、さらに一段の上昇があるかもしれません。
そのうえ、日本では来年4月から消費税が上がるため、その前の駆け込み需要もあります。株式市場では、その需要による企業の業績上昇を見込んで、住宅関連銘柄なども上がるでしょう。今年は年間を通して、株価が上昇していく可能性が大きいと思っています」(前出・真壁氏)
もちろん、円安だ株高だと、その部分だけを見て浮かれているわけにもいかない。円安で輸出産業の負担が減る一方、輸入品の価格が上がるなど、一般市民にとっては今後マイナスの影響が出てくることも予想される。実際、この厳冬期に灯油価格が急上昇を始め、ストーブ暖房などが必須の北日本地域では、すでに悪影響も出始めている。
そもそも投資などしない人にとってみれば、大事なことは日経平均株価ではなく、給与や収入がアップしていくことだが、「すぐに」というのは難しい。
「景気が回復したとしても、個人の所得が伸びなければ個人消費は変わらない。目先ではなく、本格的な景気回復には時間がかかります。企業が収益を増やし、それを労働者に分配し、個人の所得が増えたことが実感されて、初めて個人消費が増える。こうした本格的な景気回復には、2~3年はかかります」(一橋大学経済研究所・北村行伸教授)
日本が進む道は、相変わらず平坦ではない。
しかし、今重要なポイントは、途中経過はどうあれ、日本経済がようやく「動き出した」ということだ。
日本を代表する企業が他国のメーカーに打ち負かされていくのを見ながら、下を向いてじっと耐えるしかなかった「失われた20年」。日本はもうダメかもしれない……そんな中で、ようやく雲間から光が差してきた状態が「今」なのだ。
「アベノミクスの効果がすべての人に行き渡るには、おそらく3年程度はかかるでしょうが、ボーナスによる効果はすぐに現れます。業態にもよりますが、今夏ボーナスが上がる企業は多いでしょう。
経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、春闘での賃上げの可能性に言及しています。景気とは、結局は"気"なのです。景気が上向けば賃金は上がり、雇用も増えていく」(前出・高橋氏)
われわれは今、ターニングポイントに立っている。降り積もった雪の下からやっと出てきた"新しい芽"を、「危険なバブルの芽だ」と言って摘み取ってしまうか、どんな花実をつけるかを楽しみに、じっくり守り育ててみるのか。
果たしてどちらが正しい選択か、この失われた20年を生きてきた日本人ならば、自ずとその答えを「持っている」はずだ。
「週刊現代」2013年2月9日号より
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。