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毎年3月になると、ほぼ全国の鉄道会社で一斉にダイヤ改正が実施される。2013年は3月16日にJRグループがダイヤ改正を行う。そして大手私鉄もたいてい同じ日だ。理由は簡単で、鉄道会社間の相互乗り入れが各地で行われているから。相互乗り入れ路線はお互いの列車を共有する関係にあるから、相手と同じ日にダイヤを改正しないと車両のやりくりができなくなる。直通しない路線でも、同じ日のほうが利用客に認識してもらいやすいから、どの会社もなんとなくJRのダイヤ改正日に収束していく。
3月16日のダイヤ改正では、JR東日本は「スーパーこまち」の登場、E5系による時速320キロメートル運転が大トピック。JR東海は東海道新幹線の新型「N700A」と最大1時間10本の「のぞみ」運転が大きい。JR西日本とJR九州は両社直通新幹線の拡充や在来線特急などが目玉になる。
しかし、こうした派手な話題だけではなく、私たちに身近な通勤路線でもダイヤの見直しが行われる。京葉線のラッシュアワーから快速列車が消える
例えば、JR東日本のダイヤ改正では、京葉線と武蔵野線関連のダイヤが興味深い。朝の通勤時間帯に運転されていた「快速」を「各駅停車」にするという。また、武蔵野線から京葉線の東京駅方面に乗り入れる列車については、従来はすべて「武蔵野快速」だった。これもすべて各駅停車になる。ただし、蘇我と新木場をノンストップで結ぶ「通勤快速」はそのまま残るようだ。
京葉線のダイヤ改正(出典:JR東日本千葉支社) プレスリリースによると、従来の快速通過駅に停車する列車が増えるため、それらの駅からの乗車機会が増える。つまり「サービス向上になる」と説明している。しかし、海浜幕張―千葉みなと間と東京方面を利用している人にとっては、途中停車駅が増えるため所要時間が伸びる。伸びるといっても3分〜数分程度であるが、都会の朝の数分はとっても貴重な時間だ。
ダイヤを寝かせて増発する
しかし、この例は京葉線にはそのまま当てはまらない。なぜなら、京葉線の混雑率は2007年にピークの198%を迎えたあと、増発の効果もあって混雑率が下降している。千葉県が公開したデータによると(参照リンク)、最混雑時間帯の混雑率は175%だ。都内の通勤路線としてはこれでも低いほうである。ただ、千葉県のデータは快速が停まらない葛西臨海公園と新木場の間を計測しているから、これは各駅停車のみの数値かもしれない。それなら、快速列車への乗客集中を改善する意味はあるだろう。
おそらく、京葉線ラッシュ時の快速運転中止は、別の目的がある。それは、運行本数の増加である。今回のダイヤ改正で、京葉線については朝の通勤時間帯に武蔵野線から東京へ直通する列車が1往復だけ増える。また、武蔵野線から京葉線の逆方向、新習志野方面に乗り入れる列車も1往復増える。京葉線は列車の増発によって混雑率を下げてきた。だから、混雑への特効薬は増発だ。
実は、この増発のために必要な措置が「快速の各駅停車化」だ。
鉄道路線をもっとも効率よく運行するには、すべての列車を同じ速度で等間隔に運行したほうがいい。これは「平行ダイヤ」と呼ばれている。山手線もそう。東急池上線など、都心の私鉄の各駅停車のみの路線もそうだ。路線になるべくたくさんの列車を走らせるには、平行ダイヤがベストな選択となる。速度の違う列車を走らせると、運行間隔がまばらとなって、列車を詰め込めないのである。
タテが距離、ヨコが時間、ナナメが列車を示す。平行ダイヤ化によって列車の運行本数は増える 京葉線の場合は、ラッシュ時間帯の快速電車を取りやめ、特急列車にも遠慮してもらって、平行ダイヤを作ろうとし、増発を達成するのだ。平行ダイヤ至上の考え方で言うと、通勤快速もやめたいはずである。しかしこれはなかなかやめられない。京葉線の整備の理由のひとつが、大混雑していた総武線のバイパスだったからだ。
千葉と東京を行き来する乗客を総武線から移転するために、まず地下鉄東西線が造られ、都営新宿線が延伸し、さらに京葉線が造られた。東西線も新宿線も、地下鉄では珍しく快速運転をしている。これも総武線からの誘導を狙ったものだろう。
JR東日本の不動産事業にも注目
JR東日本が、混雑率ではマシな京葉線について輸送強化をしたい理由は、もしかしたらほかにもあるかもしれない。現在の快速通過駅付近で再開発が始まるなら、その鍵をにぎる要素が「鉄道の便利さ」である。東京駅から2つ目にもかかわらず乗降客が少ない越中島駅などは、住宅物件としてはもったいない立地だ。
この越中島・潮見・葛西臨海公園の各駅は、ラッシュ時間帯の快速中止だけではなく、日中の武蔵野線直通快速がすべて停まるため、1日の停車回数が126回も増える。新線開業を除くと、こんな駅は近年めったにない“出物”である。
私がJR東日本の社長なら、とっくにこの3駅周辺の土地取得を指示している。むしろ、不動産開発とダイヤ改正はワンセットで考える。国鉄時代にできなかった「多摩田園都市」方式を、いまJR東日本はやろうとしているのではないか。(以上:抜粋記事)
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