07. 2013年2月04日 03:02:40
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【13/02/09号】 2013年2月4日 週刊ダイヤモンド編集部 安倍政権誕生で大盤振る舞い 公共工事バブルで狂喜乱舞のゼネコン 建設族のドンのお膝元で 始まる公共事業ラッシュ「うれしい悲鳴とはこのことや。関西の業界内じゃ、“和歌山バブル”って呼んでるわ」(地元ゼネコン幹部) 紀伊半島の南西、和歌山県の南部に位置し、風光明媚な海岸線で知られる田辺市。1市4町村が合併しても人口わずか8万人余りの小さな街が、突然にぎわい始めた。 市北部の山沿いに立ち並ぶ巨大な橋脚。これは紀伊半島を貫く近畿自動車道紀勢線の建設現場で、朝早くから多くののダンプカーが砂煙を巻き上げながら列を成して走っている。 「紀伊半島をグルッとつなげる!!」 和歌山3区選出の自民党議員で、建設族のドンとも呼ばれる二階俊博・元経済産業相は、昨年末の総選挙でそう繰り返した。 何をつなげるのか──。民主党時代、無駄な公共事業のシンボルとされてきた高速道路だ。 現在、近畿自動車道紀勢線は、南紀田辺インター(田辺市)〜紀勢大内山インター(三重県大紀町)間が、未開通、いわゆるミッシングリンクとなっている。それをすべてつないで開通させようというわけだ。 これは巨大な事業だ。例えば南紀田辺〜すさみ間は、2015年度の供用開始を目指し、急ピッチで工事が進められているが、山深い土地だけにわずか総延長38キロメートルの区間に造るトンネルは22本。総事業費は1970億円にも上る。 それだけではない。ひそかに車線拡張の動きも進む。民主党政権下の09年に全面凍結されたはずの御坊〜南紀田辺の4車線化事業。その復活を見込んで、測量工事が進められているというのだ。 事業が相次いで進む背景について国土交通省は、「東南海・南海地震による津波発生時の代替ルートなどの役割が期待されている」と説明する。 国の地震被害想定により 庁舎の高台移転まで 和歌山県内では、「コンクリートから人へ」を掲げ、公共事業の削減を進めた民主党政権の3年間で、約300社の建設業者が姿を消した。 だからこそ、「自民党は『人からコンクリートへ』をやってくれるはず」と、大物議員の“約束”に地元建設業者は大きな期待を寄せていた。そして昨年末の総選挙で自民党が圧勝。業者たちのボルテージが一気に上がったのは言うまでもない。 そもそも和歌山県では、11年9月、紀伊半島を中心に死者、行方不明者、合わせて100人近い被害者を出した台風12号を受け、復興費用として600億円の特別予算を組んでインフラ整備が行われていた。 また、15年に開催予定の国民体育大会に向け、ハコモノ建設も急ピッチで進められていた。そうしたところへ、ミッシングリンク解消事業である。ゼネコン幹部の言葉通り、バブルそのものだ。 そんなバブルをさらに膨らませる、巨額の公共事業が発生する可能性も高まっている。 東海・東南海・南海地震の同時発生を想定した既存の津波ハザードマップで被害軽微とされてきた沿岸部の各自治体が、昨年8月末に内閣府が発表した「南海トラフ巨大地震」の被害想定では大津波に巻き込まれるとされてしまったからだ。 例えば、田辺市では市役所が浸水する可能性は少ないとされていた。ところが、内閣府の想定では、市役所どころか、学校など指定避難施設の多くが津波に呑み込まれることが明らかになったのだ。 それまでは、築40年と老朽化した市役所について、耐震改修工事で対応する方針だったが、高台移転も視野に入れざるを得なくなった。市の試算では、現在地での耐震改修なら約20億円で済むのに対し、移転の上、新築するとなると、用地取得費用も含め約69億円と3倍以上に膨らむという。 田辺市以外も同様で、各自治体が高台移転を決めれば、さらに多くの仕事がゼネコンや建設業者に舞い込むことになる。 社員5人未満の業者が ダンプを買いそろえる こうした状況は、建設族のドンのお膝元だけに起きるわけではない。今後、全国各地で同様の公共工事バブルが巻き起きる。 経済の再生を「一丁目一番地」と位置付ける安倍晋三政権が、年明け早々、事業規模20兆2000億円の「緊急経済対策」を決定したからだ。 最大の特徴は公共事業だ。東日本大震災の復興事業に加え、天井板が崩落した笹子トンネル事故を受けたインフラの老朽化対策など、公共事業費に3兆8000億円を計上。今回特別に国が面倒を見る地方公共団体の分まで含めると5兆5000億円まで膨らむ。 これは12年度当初予算の公共事業費4兆6000億円を上回る。つまり、わずか数ヵ月間で、1年分の公共事業が降ってくるわけだ。 おまけに、13年度の当初予算でも、5兆2853億円の公共事業費が計上され、合わせて10兆円余りという大型の財政出動となった。 そもそも昨年末の総選挙の際、自民党は「10年で200兆円規模の公共事業」と訴えていたのだから、ゼネコン関係者の期待は否が応でも膨らんでいた。 02年度に小泉純一郎政権で10%以上削減して以来、公共事業は無駄の象徴として、リーマンショックや東日本大震災の後を除いて削減され続けてきた。 1998年度に14兆9000億円だった公共事業関係費が、11年度には6兆2000億兆円と半分以下にまで減少していたほどだ。 そのあおりを受け、中小の建設業者を中心に倒産が相次いだ。たとえ生き残れたとしても、リストラを実施するなど、ひたすら身を縮めて「どうにか生きているだけの状態」(建設業者幹部)だった。そうした厳しい環境から、いきなり目の前に大量の仕事をぶら下げられた建設業者は、「まさに狂喜乱舞している」(同)。 社員が5人に満たないある建設業者は、周りから借金をしてショベルカーとダンプカーを買いそろえた。また別の業者は、リストラなどで自らがクビにした技術者に頭を下げ、復職を求めている。 一方、地方自治体の首長や議員たちは毎日、国交省に集結し、事業を獲得しようと精力的に担当者回りをこなす。中には、国交省の廊下で円陣を組み「ガンバロー」と拳を上げる集団まで。民主党政権時代には見られなかった光景だ。 だが、こうしたバブルが思わぬ事態も生んでいる。 和歌山県のゼネコン幹部は、「仕事は山ほどあるが、人手とモノが足りない。業者間では技術者だけでなく、重機やダンプカーの奪い合いまで起きている」と明かす。 これまで苦しめられ続けてきたゼネコンは、公共事業バブルで本当に復活することができるのだろうか──。 『週刊ダイヤモンド』2月9日号では、「公共工事バブルで踊るゼネコン」と題し、13年ぶりに到来した公共工事バブルが、ゼネコンに与える影響や、今後の姿について多角的に分析しました。
なかでも注目は、大手・準大手30社を対象に、独自の視点でランキングした「バブルに乗れるゼネコンランキング」。公共事業の恩恵にあずかることができるゼネコンはどこか明らかにしています。 一方、バブルがきても準大手のゼネコンは相次いで赤字に陥るなど苦しんでいます。その背景に潜む理由を詳しくお伝えします。 そして、地方の建設会社の“今”をお伝えする全国縦断レポート。北海道、岩手、富山、大阪、広島、そして九州の状況を余すところなくお伝えします。 最後は全国1026の建設会社を都道府県別にランキングした「公共事業バブルに乗れないランキング」も掲載。合わせてご覧ください。 (『週刊ダイヤモンド』副編集長 田島靖久) 【第262回】 2013年2月4日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] アベノミクス相場のチェックポイント 総選挙が決まってから、安倍政権の経済政策に期待が集まり、円安と株高が急激に進んだ。初めは懐疑論もあったが、今やほとんどの一般雑誌が「株価はまだまだ上がる」という論調になった。そうすると雑誌が売れるのだという。目下の市況を「アベノミクス相場」と呼ぶとして、当面のアベノミクス相場と付き合う上でのチェックポイントを挙げておこう。
まず、「インフレ目標2%」がどのくらい強く日本銀行を拘束するか、その程度の機微が重要だ。 「インフレ予想が起こり、その通りにインフレと円安になっても、景気はよくならない」という杓子定規な批判を聞くことがあるが、インフレ目標が円安をもたらすのは、インフレ目標達成までの期間に日銀は金融緩和を止められないので、この間実質金利が下がり(たぶんマイナスになり)それがしばらく継続すると市場が予想するからだ。インフレ目標がすぐに実現するわけではないからこそ、円安への反応が起こるといういささか皮肉なメカニズムが働く。この効果は、日銀が金融緩和の手を緩めるのではないかと疑われると減ずる。したがって、政府と日銀の政策合意の形態、日銀総裁の人事などを、投資家はこの観点から評価しなければならない。 日銀は1月22日の政策決定会合で「2%のインフレ目標」を受け入れ、政府と「共同声明」を発表した。声明は歯切れの悪い文章だが、最低限の格好はできた。今後、経済財政諮問会議の議事を通じた圧力や、日銀法改正の議論などを通じて、インフレ目標の効力を強化する手段がある。これは、政府が持つ市場介入カードだ。 日銀総裁人事は注目の的だが、財務省系の大物の就任は、将来政府を動かす力を持つ可能性があり「目標」の効力を弱める可能性があると解され、相場的にはややマイナスの評価になる。インフレ政策に熱心な学者のほうが相場的には高評価となるだろう。 インフレ目標と円安まで話を進めたが、今のところ、円安が進むと日本株はほぼ連動して上昇してきた。「円安=株高」はその逆まで含めて投資家の実感だろう。大まかには1ドル85円で日経平均1万円、円安1円ごとに株価200円高なので、円レートの行方が問題だ。金融危機前が1ドル100円、サブプライム問題の前が120円なので、100〜110円くらいまでは円安の余地が十分あると筆者は考えているのだが、動きが急なものになった場合、外国が日本を為替操作と非難する可能性があり、これが大きなリスク要因だ。日本人がオバマ大統領を好きなほどには、オバマ政権は日本を好いていない。影響力の大きさから見ても、米国の反応には注意しておきたい。 非難のきっかけを与えないためには、政治家や経済政策関係者は、金融緩和の必要性のみを強く言い、決して為替レートの水準に言及しないことが重要だ。 投資家は為替レートとにらめっこをする日々になるが、もう一つ注意しておきたいのは長期金利だ。 インフレ率が上昇し、成長率が高まった際には、相応の金利水準になって当然なのだが、長期金利が先行してどんどん上がるようになると、アベノミクスの継続が難しくなる心配がある。日銀が残存期間の長い国債を買えばある程度抑えられるはずだが、将来の損を恐れて嫌がるかもしれない。投資家は、長期金利が「1.5%」を超えたら長期金利を気にし始め、「2%」を超えたら一度手じまうか否かを真剣に検討する、というくらいの心積もりでいいと思う。 ご幸運を祈る! 【第5回】 2013年2月4日 野地 慎 [SMBC日興証券為替ストラテジスト] 悪性ではない20年国債金利上昇 保険会社の購入減と円安が要因 アベノミクスへの期待で円安・株高が進む中、円債市場では10年国債利回りが低位で安定している。銀行が日本銀行に預ける日銀当座預金の法定必要額を超過する部分に対する金利撤廃や、長期国債買い入れ増額への期待が強いことなどを反映している。しかし、20年国債利回りなど超長期国債の金利が上昇傾向にあり、悪い金利上昇の前兆と捉える向きも多い。 拡大画像表示 上のグラフには10年国債と20年国債の利回り格差を示したが、実はこの格差が拡大し始めたのは2012年春だ。安倍政権発足をきっかけとしたものではない。12年の円債市場を振り返れば、日銀の資産買い入れ等の基金拡大に伴う債券需給逼迫で、中長期国債利回りの低下(価格は上昇)傾向が続いたと説明できる。
他方、基金拡大の影響は購入対象ではない超長期ゾーンには及ばず、また、超長期ゾーンの主な購入者である保険会社が20年国債などへの投資を控えたために、長めの金利の上昇(価格は下落)に拍車がかかった。 10年度、11年度に比べ、保険会社の超長期国債買越額は月間平均で2000億円程度減少しており、「日銀の購入が増えた中長期債」と「保険会社の買いが鈍った超長期債」という対照が生じた。保険会社の買い控えは、10年度に1.9%程度、11年度に1.8%程度であった20年国債利回りが、12年度上半期に1.6%台半ばまで低下したことによるところが大きい。 アベノミクスが超長期国債利回りに大きな影響を及ぼしたとすれば、それは円安を介してだ。下のグラフは円30年スワップ金利とドル円の関係を表したものだが、12年11月以降、円30年スワップ金利とドル円の連動性は90%を上回っている。 急激な円安で為替絡みの仕組み債の早期償還の可能性が高まっている。仕組み債の発行体から見た場合、早期償還で自らの負債の平均年限が急激に短期化する。発行体はこれを調整するために、超長期スワップ市場で変動金利を受け取り固定金利を払う取引をする。そうした取引が増えた結果、超長期スワップ金利が上昇し、超長期国債利回りを引き上げた。 財政拡張懸念も多いが、超長期国債利回りの上昇は、需給環境や円安によるスワップ金利上昇の影響というほぼ二つの要因で生じた。 20年国債の利回りが11年度平均である1.8%近くまで上昇したことで再び保険会社の投資積極化が期待でき、13年度発行計画で20年国債増発が決定されなかったことも超長期国債の需給緩和懸念払拭に役立つ。ドル円も節目の90円を超え上昇ペースが緩み、92〜95円程度が当面の上限との声も増してきた。超長期スワップ金利の上昇もそろそろ止まりそうだ。 もちろん安倍政権には中長期的な財政規律維持が求められるが、現時点で、悪い金利上昇懸念を過度に意識する必要はないものと考えられる。 (SMBC日興証券為替ストラテジスト 野地 慎)
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