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通貨安戦争が起きれば日本が勝つ!・・超円高で弾薬はザクザク!インフレレーダも装備!
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/194.html
投稿者 墨染 日時 2013 年 2 月 03 日 08:56:32: EVQc6rJP..8E.
 

http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2013/02/02/018225.php

それにしても円安が止まりませんね。
しかし、これだけ円が安くなっても、まだまだ円はそれほど安くなっていないという人も多い。
つまり、数年前の日本の輸出産業は、1ドル=95円程度であればどうにかやっていけると思っていたところ、それより20円ほども円高が進んでしまっていた訳です。だから、それから考えるならば、円安といってもそれほどでもない、と。
一方、ユーロとの関係はどうかと言えば、一時1ユーロ=94円台をつけたことがあったのですが、それが今では126円台になっている訳ですから、対ユーロとの関係ではさらに円安に振れているのです。
韓国、ドイツ、ロシア、米国‥そうした国々が、アベノミクスの円安政策にクレームを付けているのです。
では、彼らの一部が言うように、日本が自重しなければ通貨安戦争に突入する危険性があるのか?
まあ、外国からそんなことを言われて、安倍政権としては面白くないのです。そもそも欧米が超緩和策を採用してじゃぶじゃぶマネーを放出するようなことをしたから急激な円安がもたらされたのではないか、と。
つまり、一言で言えば、安倍政権としてはこうした通貨安政策を今後も改めることはなく、インフレ率が2%ほどに達するまでは大胆な金融緩和を続け、従って、円安政策を続けることでしょう。

では、そうして日本が姿勢を改めないとすれば、世界的な通貨安戦争を引き起こす可能性があるのか?
私は、その恐れは殆どないと思うのです。それに仮に通貨安戦争に突入しても、日本が勝つと思うのです。
何故?
安倍総理の決意が固いから? それとも、日銀の新総裁になる人が、安倍総理の考え方に近い人だから?

そんなことが理由ではありません。そうではないのです。
いずれにしても、例えば米国がゼロ金利政策を比較的早期に打ち切ってしまうことはないでしょう。何故ならば、FRB自身がそのように言明している訳ですから。従って、米国はこれからもゼロ金利政策を続けるでしょうし、長期国債の買い入れも続けると思うのです。
しかし、そうはいっても、再び対円でドルの価値を80円を切るレベルにまで引き下げるために大胆な緩和策を取るようなことはしないでしょう。そして、欧州としても、もちろんユーロの価値がこれ以上上がらないことを望んでいるでしょうが、だからと言ってユーロの価値を引き下げることを目的として無制限な金融緩和策に打って出ることはないでしょう。
そして、もし、米国や欧州が通貨安を狙いとする無制限の金融緩和策に打って出ても、恐らく円高を引き起こすことは難しいでしょう。

私がこんなことを書くと、どうして?と思う方がいらっしゃるかもしれません。
というのも、つい数か月前までは超円高が続いていたではないか、と。そうして円高になっていたのは、米国や欧州の金融緩和の内容が日本よりも強力であったからなのではないか、と。

皆さんが、そのような考え方をしても仕方ないかもしれません。というのも、専門家のなかにも、そのような主張をする人が多いからなのです。安倍総理もその一人でしょう。
でも、それは真の理由ではないのです。但し、そうした主張を信じる市場参加者が増えているために、アベノミクスによって無制限というか大胆な金融政策が実施されるならば円安に振れるはずだと予想する向きが増えていることは否定できません。

★いずれにしても、この数か月間でドルもユーロも対円でこんなに急に価値を回復してしまったのは事実。では、その間に、日銀の保有する資産が急増し、大量にマネタリーが放出されたのでしょうか?
決してそんなことはありません。この先、そうなる可能性があることは否定できませんが、しかし、まだ現実には、日銀の保有する資産が急増し、急速にマネタリーベースが増大しているのではないのです。

しかし、円は急速に安くなった、と。
だとすれば、それは市場関係者の心理状態に変化が起きたためだと言うべきなのです。
アベノミクスで無制限の金融緩和が行われれば、大量にマネーが放出され、そうなればドルやユーロに対して円が安くなる筈だ、と。
もちろん、それが正しい考えであると実証された訳ではないのですが、著名な経済学者たちがそのようなことを主張し、そして、現実に円安が起きているものだから、その説が正しいと皆信じている。そして、そうやって、円安が進むと信じてドル買いをして儲ける投資家が続出するものだから、だからなおのことドル買いが勢いを増す、と。

今、ドルを買わずに何時買うのか、と。定期預金を下ろしても買うべきだ、と。
そして、そのようなアドバイスに従ってドルを買ったところ、更にドルが上がって、簡単に儲けることができたので、だから更なるドル買いを呼ぶのです。

いずれにしても、そうして円安が進むので、韓国やドイツは特に面白くない、と。
では、海外も日本の通貨安政策に対抗して、さらなる緩和策に踏み切ることになるのか?

でも、それはなかなかできないのです。
リフレ派の人々、そして、日銀が怠慢だなんて批判する人々はよく言うのです。米国や欧州の中央銀行は無制限の緩和や無期限の緩和を打ち出すのに、なぜ日銀は小出しの政策しか打たないのか、と。
それは全くの誤解です。
米国や欧州の中央銀行が、仮に無制限とか無期限と言う言葉を使用していたとしても、それは偶々そういう言葉を使用しただけの話で、心のなかでは常にインフレのことを懸念していて、いつも出口政策、つまり緩和策を打ち止めするときのタイミングと手法について気を使っているのです。だから、文字通り無制限に金融を緩和するなんてことが彼らの本意ではないのです。

いずれにしても、仮に米国や欧州や或いは韓国が、通貨安戦争に参加したと仮定してみましょう。その時に、誰が勝つのか?
★問題は弾をどれだけ保有しているかということです。
つまり、誰が無制限に金融緩和をできる弾を持っているのか、と。
韓国は日本に対する対抗意識が強く、そして輸出主導の経済だから、通貨安戦争に参加し日本に対抗するのでしょうか?
ある程度のことはするでしょう。
しかし、韓国を含め海外勢には限度があるのです。それは、幾ら金融を緩和して自国通貨の価値を引き下げたくても、その一方で、インフレに対して警戒する必要があるので、無制限の金融緩和を無期限で実施することなど不可能だからです。

その点、日本はどうか?
どれだけ金融を緩和し続けても、一向にインフレが起きなかったのは日本だけだと言ってもいいでしょう。そして、今後も、経済界はそう簡単に賃上げに応じることはないと言っているので、インフレが起きるとしても、相当先のことになる可能性が大なのです。

★そのように日本の場合は、インフレになる可能性が世界で一番低いと言ってもいい訳ですから、そのために、どれだけでも超緩和策を継続することができるのです。つまり、日本は無制限に弾を有している、と。だから、仮に通貨安戦争になっても、なかなか太刀打ちできる国は現れないでしょう。

そして、そのようなことは欧州勢も気が付いており、特にドイツなどはかつてハイパーインフレを経験したことがあるものだから、なおさらインフレを招く恐れのある金融緩和には及び腰になりがちなのです。
つまり、ドイツを中心とする欧州勢は、日本との通貨安戦争に参戦することはできない、と。
そして、そうやって日本と通貨安を競うことができないことが分かっているので、アベノミクスによる通貨安政策にいちゃもんをつけ、日本に対し自重することを求めるしか方法がないのです。
但し、こうして急激に円安が起きている原因としては、アベノミクスによって市場参加者の予想に変化がもたらされたことの他、ユーロ危機が収まってきていること、また、米国の経済が回復してきていること(第4四半期はマイナス成長になっているものの)、さらには日本の貿易赤字が拡大基調にあることなどがあるのです。

いずれにしても、通貨安戦争に勝つということは、自国の通貨が安くなるだけの話なので、本来は寂しい面もあるのです。(抜粋/小笠原誠治)


 

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コメント
 
01. 2013年2月03日 10:40:03 : iQIcY4FvLV
通貨安戦争で勝てるってことは、円暴落と輸入物価上昇による悪性インフレの可能性も高いって事ですねわかります。

02. 2013年2月03日 11:17:33 : Leq45E6jPg
>>01
最後の1行に最も大事な事が書いてあるではないですか。

立場上、ハッキリ書けないので「本来は寂しい」と婉曲表現をしているのでしょう。


03. 2013年2月03日 12:12:03 : sekAj4S9tQ
そもそも通貨安戦争に勝ち負けなど無いですね。すべての国が自国通貨の価値を破壊する競争とは、すなわち自滅競争。日本が「どれだけ金融を緩和し続けても、一向にインフレが起きなかった」のには理由があるはずです。むしろ原材料やエネルギーの上昇分を価格転嫁できない売り手が犠牲を払って来た結果、日本経済を慢性的不況に陥れて来たと見る事も出来るでしょう。

04. 2013年2月04日 05:36:51 : 4Gf7Fp3Nmo
中央銀行なんだから、無制限に金作れるだろう。

05. 2013年2月04日 23:35:40 : Atyw20tnCE
円安を悪にするのもどうかと
20年ゼロ金利で外貨や株に投資しようにも
目先延々と円高株安じゃ得するのは既に貯め込んだ
ジジババだけだろ
給与水準がどうとかいう発想からして
終身雇用前提でものを話すジジババの発想だ
いまどき会社勤めで給与に期待してるやつなんているかよ
善良な経営者なんて前世紀の遺物だろ
そんなもんより誰でも起業できる風土環境のが
はるかに意味がある

06. 2013年2月05日 22:24:10 : zBYc960RaI
バカ。びた一発も使わぬファンダだけでその弾薬を吐き出させられるわ。

07. 2013年2月06日 01:35:06 : xEBOc6ttRg
ビッグマック指数で見た通貨戦争
2013年02月06日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年2月2日号)

通貨戦争:ハンバーガーが下す裁定


ビッグマックは今の通貨戦争にどんな判定を下すのか〔AFPBB News〕

 昔からの不平不満*1が再び、国際金融の世界を分裂させている。「通貨戦争」への懸念である。

 ドイツ連銀のイェンス・バイトマン総裁は最近、低迷する経済を再生させようとする中央銀行の努力が「為替相場の政治化を強める」恐れがあると嘆いた。

 巨大債券ファンドを運用するピムコのビル・グロス氏は、経済成長を切望する国々が自国の輸出企業を後押しするために自国通貨を安値誘導する中、世界は1930年代を彷彿させる競争的な通貨切り下げのスパイラルに陥りつつあると考えている。

 バーガノミクス(ハンバーガー経済学)の見解はどうだろうか?

 ビッグマック指数は、本誌(英エコノミスト誌)が行う肩の凝らない外国為替相場の分析だ。その秘密のソースは購買力平価(PPP)の理論で、この説に従うと、価格と為替レートは長期的に調整が進み、いずれは同じ貿易財の入った買い物かごが世界中で同一価格になっていく。

 本誌の買い物かごに入っているのはビッグマック1個だけで、世界中どこでも同じ材料を使って同一商品を作ろうとするマクドナルドの努力を当てにしている(あるいは、世界中ほぼどこでも、と言った方がいいかもしれない。インドに関しては牛肉の代わりに鶏肉を使ったマハラジャ・マックで計算している)。

大きく過大評価されているのはノルウェー、スイス、ブラジル

 市場為替レートでは、米国のビッグマックの平均価格が4.37ドルなのに対し、カナダでは5.39ドルだ。従って本誌の計算では、カナダドルは米ドルに対してざっと24%過大評価されていることになる。

 対照的にメキシコでは、ビッグマックは市場為替レートでたったの2.90ドルで、ペソは対ドルの長期的な価値を33%下回っていると考えられる。ドルを使うと、国境の北より南の方がずっと多くのビッグマックを買えるわけだ。

*1=原文はbeef


 ビッグマック指数は、ノルウェー、スイス、ブラジルでは特に通貨が過大評価されていることを示唆している(表参照)。

 レアルの継続的な強さは、2010年に最初に「通貨戦争」という言葉を広めたブラジル財務相、ギド・マンテガ氏の苛立ちの原因となっている。

 ブラジルは外国人によるブラジル証券購入への課税という形で資本規制を導入して反撃したが、レアルはまだ過大評価されている。

 ブラジルは12月に過去最大の経常赤字を記録した。輸出が急減したためで、経済の成長見通しを悪化させる一因となっている。

 スイスは2011年に、スイスフランをユーロにペッグ(固定)することで過度なフラン高に対応した。そのおかげで、当時苦境にあったユーロに対するスイスフラン上昇は食い止められたが、ドルに対する上昇は止まらなかった。

 本誌の尺度では、ロシア、中国、インドを含む大半の新興国の通貨がドルに対して安すぎる。

一向に適正価格に近づかない人民元

 バーガノミクスに批判的な向きは、貧しい国では人件費が安いため、豊かな国よりも平均価格が安くて当然だと言う。PPPは中国のような国が豊かになるにつれて、長期的に為替レートが向かうべき方向を示すものであり、現時点で価格がいくらであるべきかを示唆するものではない、というのだ。

 だとしても、長年にわたり過小評価されている人民元は一向に、ビッグマック指数が示す適正価格に近づいていない。これは栄養を輸出の成長に頼る中国人民銀行のシェフたちの干渉が原因だと考える向きは多い。中国は昨年12月、輸出が前年比で14%増加したおかげで、予想を上回る361億ドルの貿易黒字を計上した。

 直近の通貨戦争の話題に火をつけたのは日本だ。財政、金融両面の刺激策で経済を浮揚させる新政権の計画は、ここ数カ月間で円相場を押し下げる一因になった。

円はやっぱり安くなり過ぎた?

 ビッグマック指数は昨年7月、円が対ドルで適正価格に近いことを示していたが、現在は円は19%以上も過小評価されている。これは日本の輸出企業にとっては美味い展開だが、ライバルにとっては消化しにくいニュースだ。

 欧州は特に苛立っている*2。ビッグマック指数によると、ユーロは現在、ドルに対して約12%割高になっている。2012年夏の時点では適正価格に近かった。

 ユーロはここ数カ月、ユーロ圏解体の不安が後退するにつれて値上がりしてきたが、多くの欧州市民は為替操作も非難している。

 米連邦準備理事会(FRB)やイングランド銀行を含む他の中央銀行が自国経済に刺激的なソースを加えるために積極的に行動したにもかかわらず、欧州中央銀行(ECB)は不振が続くユーロ圏経済を上向かせるためにほとんど手を打っていないからだ。もし今後もユーロが値上がりし続ければ、ユーロ圏の輸出企業は苦境*3に陥るだろう。

*2=chippy、*3=in a pickle

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/3/1/250/img_317bb173281e9f5de017a9328a95400a31823.png

 
 


【第16回】 2013年2月6日 渡部 幹 [早稲田大学 日米研究機構 主任研究員/客員准教授]
「ケネディ最悪の決断」の思考に日銀もハマった?
社会心理学にあぶり出される“集団意思決定”のワナ
――処方箋O皆で討議することが必ずしもいいとは限らない
浜田宏一氏との対話で知った
日銀の意思決定の不健全さ

 安倍政権が掲げるリフレ政策についての議論が活発だ。野党やマスメディア、ドイツ、韓国などが批判する一方、ポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツなどのノーベル経済学賞受賞者は評価している。

 彼らと並んで、リフレ政策にポジティブな評価をしてきたのが、浜田宏一・イェール大学名誉教授、現内閣府参与だ。

 彼がまだ安倍政権の内閣府参与になる前の昨年秋、私はお目にかかってお話をうかがう機会を得た。

 私の専門は社会心理学や組織行動学で、浜田氏の専門はマクロ経済学のため、お互いの分野については素人であり、突っ込んだ議論はできなかったが、浜田氏から非常に興味深い話を伺った。

 浜田氏は日銀の意思決定アドバイザーとして、金融政策に助言をしてきたが、早くからデフレを脱し、ある程度のインフレを推し進めるべきだという、リフレ政策を提言してきた。

 そして、その背景にある理論的根拠と、それを実行に移した場合の効果についても、関係者に丁寧に説明をしてきたという。

 しかし、安倍政権になるまで白川総裁をはじめとする日銀の幹部は、それを実行に移すことはしなかった。

 浜田氏の著書に詳しいが、白川総裁は東大時代の浜田氏の教え子であり、学問的な意味でも人格的な意味でも、これまで最も優れた学生の1人であったという。

 その白川氏率いる日銀は、デフレ脱却のための解決策を示せなかった。あるいはデフレを解決するつもりもなかったのかもしれない。しかし、少なくとも国民の目から見ると、日銀は効果的な策を講じることはできなかったように思える。

 若者は勤労意欲が下がり、しかしお金のためにシビアな環境で働くことを余儀なくされ、働くことに喜びを見出すにはほど遠い状況にある。企業は円高続きで、海外に拠点を移さざるを得ない。労働市場の空洞化が起こり、内需が冷え込む。したがって、海外での売り上げに頼らざるを得ないが、円高のために外貨をいくら稼いでも大した儲けにはならない。

 なぜ、日銀は効果的な策を提示できなかったのだろう。政治家が積極的にリードしない限り、意思決定できないのならば、日銀の意思決定システムは不全に陥っていると考えざるを得ない。浜田氏は、この日銀の意思決定システムの非効率性を「不思議だ」と語っていた。

日銀の意思決定システムは不思議
社会心理学に見る「ワナ」の正体

 この点に関しては、実際に調べてみない限り、確定的なことは言えない。しかしながら、集団意思決定については、様々な「ワナ」があることが、社会心理学の研究でわかっている。日銀のケースでも、そのようなワナのどれかにハマってしまった可能性が高いように思える。

 したがって、集団意思決定のワナについて知っておくことは、その大小に関わらず、組織を率いる者にとって重要なことだろう。

 以下に代表的な「集団意思決定のワナ」について述べたいと思う。

 集団の意思決定について、真っ先に考えられるワナは「集団思考」(group think)と呼ばれるものだ。

 この考えを学問的に提唱したのは、アーヴィング・ジャニスだ。彼は、歴史に残る様々な集団意思決定の「失敗」ケースを分析した。特に有名なのは、米国のケネディ政権初期における、「ピッグズ湾侵攻作戦」の失敗である。

 当時、米国とソ連が対立する中、キューバはフェデル・カストロ、チェ・ゲバラらの活躍によって革命がなされ、社会主義国家へ転じようとしていた。

 米国の目と鼻の先にあるキューバが親ソ連になることにより、米国にとっての軍事的脅威は飛躍的に高まる。さらに、これまでキューバに投資してきた米国の財がソ連側のものになってしまう。

 このため、ケネディ率いる当時の米国政府は、キューバ人亡命者1400人、空軍、海軍、CIAからなる総勢2000人の部隊を結成し、キューバのピッグズ湾から上陸後、カストロの革命政府を打倒するという作戦を決定した。

 しかし、その結果は惨憺たるものだった。侵攻1日目には、予備弾薬と兵糧を積んだ船4隻が到着しなかった。2隻は待ち伏せしていたカストロ軍に沈められ、2隻は恐れをなして逃亡したのだ。これにより、先に上陸した侵攻部隊は後方からの援助を完全に断たれ、孤立することになった。

 侵攻2日目には、待ち伏せしていた約2000人のカストロ部隊と交戦、800名の死者を出した。3日目には残り1200人のほぼ全員が捕虜となって、強制収容所に入れられてしまった。

 ケネディ政権が肝煎りで行った軍事行動はわずか3日で水泡に帰し、ピッグズ湾侵攻は米国政策上、最悪の意思決定の1つと呼ばれた。

「ピッグズ湾作戦」はなぜ失敗したか?
個人の思考より愚かだった集団思考

 当時の米国政府は、ケネディをはじめ、大統領府、顧問、委員会のメンバーは全て優秀なエリート揃い、人望も厚かった。これだけ有能な人材が集まっていたにもかかわらず、なぜこのような意思決定を行ってしまったのだろうか。ジャニスは、ケネディの側近であったシュレジンジャーの著作『一千日』を分析することで、その理由を探ろうとした。

 その結果、驚くべきことに、集団で決定したからこそ、個人で決定するよりも愚かな決定になることを発見し、それを「集団思考」と呼んだ。

 ジャニスによると、集団思考に陥った集団は、集団内に働く様々な規制的な力により、効率的な判断や道徳的判断が損なわれるという。彼は、トルーマン大統領の北朝鮮侵攻(朝鮮戦争)、ルーズベルト大統領の真珠湾攻撃への対処、ニクソン大統領のベトナム戦争拡大、ナチスドイツの意思決定なども分析し、重要な政策決定にも同じ現象が起こっていると結論づけている。

 ジャニスは集団思考の典型的症状を、次の3つのタイプに分類している

タイプ1:集団の力および道徳性への過大評価

 ・「失敗するわけがない」という幻想や過度の楽観論が支配的となり、極端にリスクを負いやすくなる

 ・その集団の持つ独特の価値観を無批判的に受け入れて、決定がもたらすより大きな目で見た場合の倫理的、道徳的結果を考慮しなくなる

タイプ2:閉鎖的な心理傾向

 ・不都合な情報や警告を割り引いて解釈した上に、それらに対する言い訳を集団でつくり上げてしまう

 ・敵のリーダーを、「悪人である」「強くない」「賢くない」などとステレオタイプ化して見る

タイプ3:斉一性への圧力

 ・集団の空気を読むように、自己検閲が行われる

 ・「満場一致の決定が正しいのだ」という思い込みによって、多数派の意見に少数派が同調しやすくなる

 ・異議を唱える者に対して圧力がかかる

 ・不都合な情報から集団を守る、監視人を自認する者が現れる

メンバーが気兼ねなく反対できる場を
ジャニスが唱えた「集団思考」の脱却法

 自分の所属する組織について、前述の点を考えてみてほしい。必ずある程度は当てはまるものがあるだろう。日銀を含め、多くの組織での意思決定はこのような集団思考に陥いる可能性を持っているのだ。

 では、集団思考を避けるためにはどうすべきだろうか。ジャニスの研究から引いてみよう。

 ・リーダーが批判的な評価者としての役割を取り、メンバーが気兼ねなく反対意見や疑問を表明できるようにする

 ・リーダーが最初から自分の好みや希望を述べて、偏った立場にあることを明らかにしてはいけない

 ・複数のグループに同じ問題について決定をさせ、比較する

 ・集団内に皆とは異なった意見を持つ役割の人を置く

 ・より小さなグループに分かれて審議をする

 これを実践したのが、同じケネディ政権が行ったキューバ危機への対応だ。一触即発で核戦争が起こりかねない状況を回避し、さらにキューバへの核配備を防いだケネディらの対応は賞賛された。彼らは、しっかりと自己学習できていたのだ。

 ここまで列挙した方法の最も重要な肝は、メンバーから様々な意見が出され、それを偏見や思い込みなく、皆で議論できるような環境をつくることができるように、リーダーが配慮することが重要だとわかる。つまり、集団思考を避けるために、リーダーの役割が非常に大きいことがわかる。

白川総裁は集団討議の良さを
引き出せるリーダーなのか?

 白川総裁はどうだったのだろうか。個人としては優秀でも、集団討議の良さを引き出せるだけのリーダーシップを発揮できていたのだろうか。

 日銀の政策決定には、様々な経済指標データや他国の決定の結果についてのレポート、経済理論による政策効果の推定、効果の持つポジティブ、ネガティブな側面についての専門家による詳細な分析結果、世論、政治家の意向などが考慮されるはずだ。

 それらを吟味する際に、最初から「リフレは危ない」というバイアスをリーダーが示してしまったら、同調の圧力が強まって反対意見が出にくくなる可能性が高い。官僚はクビにはなりたくないからだ。

 翻って、読者のみなさんの所属する組織ではどうだろうか。集団思考は働いていないだろうか。自分がリーダーの集団で物事を決めるときに、集団思考を避ける役目を果たしているだろうか。自己点検してみるとよいだろう。

 社会心理学では、この他にも集団意思決定の様々なワナが見出されてきた。それらについては、また稿を改めて紹介することにしたい。


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