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聞くところによると、現在年をまたいで8週連続でガソリン価格が高騰しているとか。8週前と言うことは、すなわち解散総選挙が決まった直後から、ということです。要するに、「政権交代→アベノミクスに期待」という観測が広がり、為替が円安にふれ始めた頃とちょうど時期を同じくしているわけです。ガソリンメーカーの言い分はやはりというか思ったとおり、「原油価格の高止まりと、円安の影響」ということらしいのですが、なんか少し怪しい気がしています。
思い起こせば80円を割り込む急激な円高局面に入った頃に、巷でもけっこう話題になっていたのが、「急激な円高になっても、ガソリン価格が安くならない」という類の消費者サイドからの不満の声でした。この時に供給サイドが言っていたことは、「為替の動きとガソリン価格の間は一定のタイムラグあり、すぐに価格に反映されるものではない」と。しかしその後は、「原油価格の高騰」もあって結局円高によるガソリン価格への恩恵は感じることが出来ずじまいでした。
タイムラグというのは、原油価格や為替レートが影響するのは日本企業が原油を仕入れた段階の話で、その後原油が日本に運ばれて精油されてガソリンスタンドで販売されるまでに2〜3ヶ月はかかるという価格反映へのズレの話でした。では、今回の為替が円安にふれたのとほぼ同じタイミングで動き出したガソリン価格の8週連続高騰の要因は何なのでしょう?
先のタイムラグを勘案すれば、ガソリン価格が高騰し始めた12月初旬よりも2〜3ヶ月前の段階での為替と原油価格を見てみる必要があるのですが、昨年9〜10月の円ドルレートは78円台でかなり安定した円高傾向が続いていた時期で、原油価格(WITI)に至っては9月から10月にかけてはむしろ若干ですが相場を下げているのです。こうなると、国内メーカーが円高のときに主張していた「為替や原油価格がガソリン価格に及ぼす仕入れと販売のタイムラグ」はどうも怪しいということになりはしないでしょうか。
会計における在庫管理の原則で、「先入れ先出し法」というのと「先入れ後出し(後入れ先出し)法」というものがあります。前者は、先に仕入れたものから順次販売するというやり方で、まさに国内メーカーが円高時に言っていたところの価格反映される商品が市場に出るのはその前の仕入れ分を売り切ってからというやり方のこと。後者は、とりあえず後から仕入れたものを在庫の有無に関係なく先に販売して、即座に仕入れコスト増を販売価格に転嫁するというものです。
ということは便乗値上げでこそないものの、どうもガソリンメーカーは円高や原油価格下落の時には「先入れ先出し法」で価格を決め、円安や原油価格高等局面に入ると「先入れ後出し法」に転じるという、同一ルールを貫くという会計原則を逸脱するかのようなやり方をしているのではないかと思えてくるわけです(会計処理上はもちろん一定ルールでやっているのだとは思いますが)。しかも今回の件に関して言うのなら、冬の掻き入れ時に「後入れ」した分がまだ製品化される前から値上げをしているわけで、今後の値上がりを見込んで「安い仕入れの商品で、販売価格を上げて稼げるときに稼いでおけ」というちょっと悪どい商法が透けて見えるように思うのです。
背景には、安倍政権が掲げる「インフレ目標2%」というものが“免罪符”になっているのかもしれません。要するに、自民党政権ベッタリの大手企業であるメーカーの経営サイドには、「今ならガソリン価格を上げたところで、それはインフレに寄与する要因であり、言ってみれば国の政策を後押しするのだから文句は言われまい」ぐらいの思惑もあったりするように思えてならないのです。
本当に原油価格や為替レートの実態を反映して仕入れ価格が上昇した商品の販売に際して価格が高騰しているのなら、それは正当な価格決定プロセスをへた商品価格であり納得もいくところですが、今回の背景を見るにどうも怪し感じがして納得がいかない気がしてなりません。もし本当に私が思っているようなことがあるのなら、これは広い意味での「コンプライアンス違反」と言っていいマネジメントであると思います。メディアには、不透明なガソリン価格を見える化していくという観点からも、ぜひこのあたりの検証を正確にして欲しいところです。
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