01. 2013年1月31日 00:45:04
: mb0UXcp1ss
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 世界経済、完全回復までの険しい道のり 成功のカギは例外的な政策を打ち切るタイミング 2013年01月31日(Thu) Financial Times (2013年1月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 「経済の崩壊は回避した。しかし、今度は危機の再発を警戒しなければならない。2013年は、のるかそるかの重要な年になる」。国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は先週開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会にてこう語った。誠に的確な指摘である。 ダボスの地に集まった財界人や政策立案者、専門家の面々はほっと一息ついていた。2007年以降では初めて、金融危機が議論の最大のテーマにならなかったからだ。 危ない橋からは転落せず、まずは一息 しかし、高所得国の経済が今にも壊れそうな吊り橋から転落しなかったからといって、成長軌道にすぐに復帰できると保証されたわけではない。恐らくは復帰できるだろうが、確実だとはまだ言えない。 信頼感は改善してきた。その1つの証拠として、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)と翌日物金利スワップ(OIS)金利のスプレッド(金利差)が上げられる。このスプレッドは、銀行同士の資金の貸し借りで相手がデフォルト(債務不履行)に陥るリスクを測る指標となるが、ユーロ建てではわずか10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に、ドル建てでは16bpに縮小している。 米国株式市場は史上最高値をうかがう展開になっている〔AFPBB News〕
株式市場も2009年3月を底に力強く回復しており、特に米国の反騰が著しい。 ユーロ圏内の脆弱な国々の国債とドイツ国債との利回り格差も大幅に縮小している。イタリア国債との差は2012年7月後半の5.3%から2013年1月25日の2.6%に縮まっており、スペイン国債でも6.4%から3.4%に縮小している。 国家に対する信頼感が改善するにつれて、銀行に対する信頼感も改善してきている。 信頼感が改善しているのは高所得国だけではない。世界銀行は1月に発表した「世界経済見通し(GEP)」で、「途上国への国際資本フローは・・・過去最高の水準を更新した」「途上国の国債の利回り格差は・・・(2012年)6月以降で127bp縮小している」「途上国の株式市場は6月以降で12.6%上昇している」と指摘している。つまり、これは世界的な変化だということだ。 楽観論が盛り上がってきた理由 このように楽観論が盛り上がってきたのはなぜなのか。第1の理由は、恐れられていた惨事――ユーロ圏の分裂、あるいは米国の「財政の崖」からの転落――が回避されたことに求められる。 第2の理由は、危機後の調整がかなり進んだことにある。とりわけ米国では、民間部門のレバレッジと住宅価格で大幅なリバランスが行われており、例えば米国民間部門の債務総額は国内総生産(GDP)比で2003年の水準に戻っている。 さらに、政策当局者の能力に対する信頼が強まっていることも理由の1つに挙げられるだろう。特に中央銀行は、自国・地域の経済を牽引するために超の字がつく金融緩和策を長期にわたって実施している。 FRBは4年以上、FF金利を0.25%に据え置いている〔AFPBB News〕
米連邦準備理事会(FRB)のフェデラルファンド(FF)金利はもう4年以上にわたって0.25%という水準に置かれており、まだしばらくはここにとどまる見通しだ。 規模の大きな中央銀行の中では最も用心深い欧州中央銀行(ECB)でさえ、以前なら無責任なほど緩和的に見えたに違いない政策を採用し、昨年7月から政策金利を0.75%に設定している。 それでも、未来は黄金時代にはほど遠いように思われる。例えばIMFは1月に公表した「世界経済見通し(WEO)」の改訂版で、バラ色とはとても言えない見通しを描いている。 2つのスピードの世界経済はまだ続く 新興国や途上国については2013年の経済成長率を5.5%と予想しているが、米国については2%、日本は1.2%、英国は1.0%を見込んでおり、ユーロ圏については0.2%のマイナス成長になると予測している。成長のスピードが速い国々と遅い国々の2極に分かれる状況はまだ続いているのだ。 信頼感の改善はいずれ、経済成長率を押し上げることになるだろう。だが、それは信頼感の改善が続く場合に限られる。果たしてこの改善は続くのだろうか? これについては、楽観論と悲観論の双方に根拠がある。 悲観論の最大の根拠は、高所得国は「抑制された恐慌」からまだ抜け出せていないというものだ。例外的に低い金利や中央銀行のバランスシートの大幅拡大などによる超金融緩和政策が長期間続いていることが、その1つの証左だ。 多くの高所得国で多額の財政赤字が出ていること、さらにはそうした政策支援が大規模に行われているにもかかわらず景気は弱いままであることも、その証拠だと言える。 最大級の経済規模を誇る高所得国6カ国のうち、昨年第3四半期のGDPが危機前のピークの水準を上回っていたのは米国とドイツだけだった。しかも上回っている幅は小さく、米国で2.5%、ドイツで2%にすぎなかった。 フランスと日本、英国、イタリアのGDPは危機前のピークを下回っていた。フランスと英国のGDPは伸び悩み、日本のそれは不規則で、イタリアは落ち込んでいるといった具合で、まさに悲惨な状況だ。 ユーロ圏ではECBが、国債を買い入れるという約束についてドイツの支持を取り付け、ユーロ圏分裂というテールリスクの除去に成功した。大砲を1発も撃つことなく勝利を収めた格好だ。 財政・金融政策の運営で大問題が生じるリスク ECBがこれから実際、約束通りに国債を買い入れなければならなくなる可能性もある〔AFPBB News〕
しかし、だからといって、ECBが実際に大砲を撃ち始めなければならなくなったら何が起こるか分かっているわけではない。 ECBはまだ、国債購入の約束を果たさざるを得なくなる可能性がある。その時に何が起こるのか。特に、支援の条件は厳密に満たさなくてもよいということになったらどうなるか。これは誰にも分からないのだ。 財政・金融政策の運営で大きな問題が生じる事態も想定できよう。具体的には、政策を引き締めるタイミングが早すぎたり、逆に遅すぎたりする危険性がある。引き締めが早すぎれば、景気回復が途中で頓挫してしまうかもしれないし、引き締めが遅すぎれば、インフレ期待が再び埋め込まれてしまう恐れがあるだろう。 日本は「アベノミクス」で超金融緩和の流れに加わった〔AFPBB News〕
インフレ昂進の局面は既に近づいていると指摘する向きもある。日本が「アベノミクス」を打ち出して超金融緩和を行う仲間に加わったことで、インフレ率が高まるリスクは以前より大きくなったように思われる。 しかし、これまで予想を外してきた彼らが今回は的中させるとは考えにくい。筆者に言わせれば、時期尚早の引き締めが行われることの方がはるかに心配だ。 とはいえ、不確実性は非常に大きい。次期イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏のダボス会議での発言を受けて、ギャビン・デービーズ氏*1が指摘しているように、こうしたリスクを政策立案者がうまく管理できるかどうかは疑問だ。 早計な引き締めがなければ、1年後は完全回復に近づく可能性 しかし、未来について楽観的になれる根拠もある。新興国の経済は、がっかりさせられた場面もあったが勢いを持続している。また米国では前述のリバランスが進んでおり、エネルギー革命も始まっていることから、予想以上のパフォーマンスを示す可能性がある。日本もデフレ不況から抜け出すかもしれない。 さらに、ユーロ圏の周縁国に民間の資金が回帰していることは、信頼感と支出がスパイラル的に改善する過程の口火を切る可能性がある。どの国や地域においても、今後の成功のカギは、例外的な政策を打ち切るタイミングを計ることにある。 政策立案者の対応は成功だった。ユーロ圏においては手遅れ寸前だったが、土壇場になってECBが行動を起こすことを約束した。この約束はこれまでのところ、驚くほどよく効いている。欧州ではまだ小さいものの、持続的な経済成長軌道に復帰する可能性は出てきている。 財政政策と金融政策による大規模な支援はまだ必要不可欠だ。政策立案者が努力を続ければ、世界経済は今から1年後には完全回復に大きく近づいている可能性があるだろう。 *1=英国の運用会社フルクラム・アセット・マネジメントの会長で、マクロ経済のエコノミスト By Martin Wolf JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 成長鈍化に悩むインド、それでも財政赤字の上限は守る チダムバラム財務相にFTがインタビュー 2013年01月31日(Thu) Financial Times (2013年1月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
P・チダムバラム氏は過去にも2度財務相を務めている〔AFPBB News〕
インドは来年選挙を控えており、国民会議派率いる連立政権は経済成長率のてこ入れを求める圧力にさらされている。 この2つの大きな課題にもかかわらず、インド財務相のパラニアッパン・チダムバラム氏は今春の予算案で、中央政府の財政赤字削減に対するコミットメントを守り通すつもりだ。 世界の経済界にインドを売り込むために各地を回っているチダムバラム氏はロンドンで本紙(英フィナンシャル・タイムズ)のインタビューに応じた際、予算措置がどんなものになるか詳しく説明することは拒んだ。 だが、自身がインドに課す規律が急増する財政赤字を減らすということは明確にした。 今年度5.3%、来年度4.8%以内という一線は死守 「私は越えてはならない一線を決めた」。現在67歳で元顧問弁護士のチダムバラム氏はこう話す。「その一線とは、今年度の財政赤字は(国内総生産=GDP=比)5.3%を超えず、来年度の財政赤字は4.8%を超えないということだ。それが越えてはならない一線であり、私は違反する気はない」 財務相就任から7カ月経ち、インドの連立政権で最も尊敬されている閣僚の1人であるチダムバラム氏はインタビューの冒頭は、良いニュースから切り出した。同氏はこれまで何度も経済をてこ入れするための利下げを求めており、インド準備銀行(中央銀行)は29日、政策金利を0.25%引き下げた。 チダムバラム氏はそれでも、利下げはインドが年間成長率(近年は8%前後だった成長率は今では6%前後に落ち込んでいる)を引き上げるために必要な数多くの条件の1つに過ぎないと認める。 「我々はどうすれば行き詰まったプロジェクトを再開させられるのか? どうすれば貯蓄率を引き上げられるのか? どうすれば、公的部門、民間部門の双方で多額の現金をため込んでいる国内投資家に投資サイクルを再開してもらえるのか?」 これらは、チダムバラム氏が挙げた問題のほんの一部だ。 予算案の発表が近づく中、チダムバラム氏は具体的な課題に直面している。1つは、財政管理が難しい理由の1つとなっているインドの莫大な燃料補助金を削減することだ。同氏は、ディーゼル燃料価格は既に「是正」したと指摘しつつ、やれることには限界があると主張する。 燃料補助金の削減には「限界」も 「例えば灯油を取ってみるといい。灯油はインド農村部の非常に貧しい人々が調理用燃料として使っている・・・灯油に対する補助金を完全に是正したら、一体どうなるか? 農村部の貧しい人たちは灯油を買えなくなり、木材を求めるようになるだろう。彼らが木を求めれば、インドでは何エーカーにも及ぶ森林が破壊されることになる。こうしたことはバランスを取らなくてはならない」 もう1つの問題は、政府に厳重に支配されている銀行部門の将来だ。チダムバラム氏は、銀行改革は実施されると主張する。「今から2週間後には、インド準備銀行がより多くの民間銀行に免許を与える最終ガイドラインを発表する。新たに4〜5件の免許が与えられることになるだろう」 だが、チダムバラム氏はその一方で、インドには多様な銀行が存在する――「外国銀行、インドの民間銀行、公営銀行、貯蓄貸付組合」――ため、国家の銀行所有は自由化の障害にはならないとも話している。 チダムバラム氏は将来を楽観しており、中国が経済的な超大国としてインドの先を突っ走っているという不安をよそに落ち着き払っている。 「今後10〜15年にわたって世界経済が成長する様子を考えると、中国とインドは、米国ともしかしたらあと2カ国くらいと一緒に、世界のトップ5の経済大国になっているだろう」。チダムバラム氏はこう述べ、そのためインドが「中国より一段上か中国より一段下か」は問題にならないと言う。 国民会議派を率いる可能性は? チダムバラム氏は自信に満ちた雰囲気を漂わせることでよく知られている。本人はその点を喜んで認め、「一体いつ自信が悪癖になったんですか」と笑う。それでも自身の政治的な将来については語ろうとしない。一部には、同氏が国民会議派の首相になる可能性があると見る向きもある。そうなのかと問うと、チダムバラム氏は断固「ノー」と答える。 それでも食い下がると、「私は自分の限界が分かっているし、その限界に従って生活し、働いている」と説明し、自身の所属する国民会議派はソニア・ガンジー氏の次の総裁は息子のラフル・ガンジー氏になると宣言したばかりだと指摘する。 「それに、私はやりたいことをやるために人生の数年は取っておきたいと思っている」。チダムバラム氏はこう言って、旅行、読書、執筆、そして教えることなど、夢のリストを挙げていく。その言葉は笑顔で語られているものの、口調にはあまり説得力はない。 By James Blitz and Lionel Barber
|