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昨年11月14日に野田首相が国会で解散を表明してから2カ月以上が経過した。日経平均株価は、8600円台から直近高値の1万0900円台まで2300円もの大幅上昇を達成した。ドル円は同期間に1ドル=79円台から90円台まで10円強の円安となった。
株価上昇のドライバーは間違いなく円安であり、為替と株式が一体となって「リフレ相場」を演出した2カ月であったと言える。
日経平均のドル円相場に対する感応度(ベータ)は、平均的に見て為替1円当り200円強であったが、過去2カ月間の株価と為替の累計変動幅はほぼそれに該当する。
■株価に反応しなくなってきた日本国債の金利
一方、日本国債10年金利は、昨年11月中旬の水準と直近を比べると0.75%近辺でほぼ同水準である。昨年12月上旬にいったん、0.7%割れまで低下した後、今年1月上旬にかけては0.85%まで15bp(bp=100分の1%)の上昇を見た。しかし、その後、ドル円相場や株価がまだ上昇基調を続ける中で、長期金利は反落に転じたのである。
2カ月前と現在との2時点だけを取って見れば、日本国債の金利の日経平均に対するベータは完全にゼロであったということになる。
日本国債10年金利の日経平均に対するベータは、過去の平均的な水準では、日経平均100円あたりで1.5bp程度であり、その数値を当てはめると、この2カ月間で1.1%程度まで上昇してもおかしくなかった。しかし、現実の日本国債市場は、為替相場と株式相場の演出する「リフレ相場」からは完全に切り離されているのである。
そもそも、日本国債の金利の株価変動に対するベータは、2011年後半頃から低下傾向にある。昨年11月以降は株価が急伸しているために、日本国債の金利の感応度の低さが特に目立ったが、日本国債の対株価でのベータ低下は恒常的なもののようにも見える。その要因は幾つか考えられる。
■日本国債はなぜ、「リフレ相場」に反応しないのか?
(1) 株価は景気サイクルに対して一定の反応を示すが、通常の景気サイクルの範囲では金融政策の変更はまだ行なわれない可能性が高い。
(2) ディレバレッジや財政再建など、グローバルに見てもディスインフレーションが長期化する可能性が高く、インフレ期待の上昇がなかなか起きない。
(3) 日銀の国債購入拡大で需給的に金利が固定化されやすくなっている。
これら3つの要因のうち、(1)と(2)の材料に関しては、日本だけではなく欧米市場でも織り込みが共有されているように見える。日本ほどではないが、欧米の長期金利の株価変動に対するベータ値も低下しており、直近ではゼロに接近している。
ただし、欧米では日本のように趨勢的なベータの低下が起きているとまでは言えず、日本国債の金利のベータ低下傾向には日本固有の要因が寄与していると考えるのが妥当だろう。その意味で、(3)の「日銀による国債購入拡大」の影響をやはり考えざるを得ない。
もちろん、米国でもFRB(米国連邦準備制度理事会)が長期債まで含めて国債を大量に購入してきた経緯があるが、日銀の国債購入政策は2012年2月以降に本格的に強化されている。12年に入ってからの「日銀の変貌」が、日本国債の金利の対株価でのベータを海外対比でも特に低下させてきている可能性があろう。
そういった日本国債市場の状況がある中で、日銀は22日にインフレ目標2%の内容を含む政府との共同文書を発表し、あわせて国債等の資産購入策を「オープンエンド」(期限なし)の方式に変える決定を行なった。日銀の資産購入の中心は国債であり、債券市場からすると、「オープンエンド」への変更が国債市場の需給に及ぼす影響が注目されるところである。
しかし、22日の決定においては、実質的に日銀の国債購入政策の強化は見送られている。2013年中は現行の購入方法が継続されることに加え、2014年以降の月間2兆円という購入ペースも、直近までの月間購入ペースとほとんど変わらない(若干下回る程度)。「オープンエンド」=「金融緩和強化」という理解は今回においては当たっていない。
■日銀の国債購入拡大で金利は固定化
そもそも、金融緩和の程度を測る尺度として、ストックを重視するのか(従来からの残高目標管理)、毎月の購入額というフローを重視するのか(オープンエンド)という点について、実は明確なコンセンサスは存在しない。
日銀はこれまでストックを重視してきたが、これは、フローベースで購入量を決めてしまうと償還額の増減を吸収できないという理由があったと思われる。
しかし、市場の実感としては、フローの方が国債市場需給へのインパクトという点ではよりマッチしている。その意味では、今回、毎月の購入額と資産買入基金残高の年間増加額目途の両方を示しているのは、金融緩和の度合いを正確に示すという点では妥当な手法だと言えよう(基金残高も2014年中に10兆円程度増加するとしている)。
しかし、金融緩和の程度についてより正確な表現が採られるようになった上での判断として、今回は、日銀は実質的な金融緩和を見送ったということなのである。
為替市場では、日銀がFRB型の「オープンエンド」の資産購入方式に切り替えれば金融緩和の度合いが強まるとの期待もあったようだ。しかし、上述したようなストック、フローの意味合いを考えれば、「オープンエンド」に切り替えることそれ自体が実質的な金融緩和を示すものではないことが分かる。
ただ、逆に言うと、すでに、2012年2月以降、日銀の国債購入政策によって国債需給は極めて大きな影響を受けるようになってきており、その程度は欧米市場と比べて決して小さなものではない。それが日本国債の金利を「リフレ相場」から遮断している一因なのである。
それが日銀の政策意図であるとはいえ、この先、さらなる国債購入政策の強化が図られて行けば、日本国債市場の特異な動き(株価変動にも全く反応しないというような)は一段と目立ってくる可能性があるだろう。
■国債市場の機能低下か長期金利急騰か
白川日銀総裁が強調するように、長期的には、日銀の政策が財政ファイナンスと受け取られれば、長期金利は急騰し得るという見方も一面においては正しい。しかし、2013年の日本国債の市場における懸念は、むしろ逆方向にあるように思える。すなわち、日本国債の市場が一段とそのダイナミズムを失い、他市場との相関も失って行くような姿である。
最終的には「日本国債市場の機能低下」というような状況にまで至る可能性もあるだろう。それは明らかに過剰な金融緩和の副作用と言えるのだが、市場予想の観点からすると、「長期金利の低位安定が予想以上に長期化する方向」と見ざるを得ない。
もちろん、そういう状況に至るかどうかは、総裁人事も含めた今後の日銀の国債購入政策次第ではあるのだが、「リフレ」=「金利上昇」という先入観を、しばらくは封印しなくてはならないのではないだろうか。
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