07. 2013年1月23日 10:36:07
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コラム:白川日銀の粘り勝ち、アベノミクスに軌道修正の気配 2013年 01月 22日 20:29 JST トップニュース 日経平均は3日続落で始まる、円安一服で輸出株中心に売り先行 イスラエル総選挙、首相率いる右派統一会派が第1党維持へ 米IBM第4四半期は収益ともに予想上回る、新興国市場が好調 米株上昇、S&P総合500は終値で5年ぶり高値更新 田巻 一彦 [東京 22日 ロイター] 日銀が22日に決めた物価目標2%の下での新しい緩和政策の枠組みは、事前の予想に比べ、日銀の裁量がより広く認められ、当面は極端な緩和政策の推進が回避されたとみていいだろう。中銀の独立性をギリギリで確保し、結果として日銀の粘り勝ちとも言える。 一方、政府は2013年度予算案で新規国債発行額を税収以下に収める方向を打ち出しつつ、円高がかなり修正されつつあるとの認識を麻生太郎副総理兼財務・金融担当相が表明。大胆な財政出動と円安進展を中核にしてきたアベノミクスの軌道修正を図る気配も見せ始めている。22日の政府・日銀の一連の動きは、より現実的なマクロ政策運営にカジを切る可能性があることをうかがわせている。 <日銀の新システムと緩和策、予想より現実的> 今回の日銀の決定では、物価目標2%が導入され、2014年から長期国債が毎月2兆円ずつ買い増しされ、資産買取基金の残高が10兆円増加された後に、残高が維持される仕組みもスタートする。 表面上はかなり極端な緩和に走ったかに見えるが、市場の一部で取りざたされていた2%の目標達成まで、毎月一定の国債を購入する「無制限緩和」と比較すると、かなり常識的な内容であることがわかる。もし、毎月2兆円ずつ自動的に買い増すシステムが導入されれば、2013年に長期国債だけで24兆円の購入増となる。2014年度の日銀の消費者物価(CPI)上昇率の見通しはプラス0.9%であるため、14年も24兆円増加することになるだろう。 これに対し、今回の新システムでは、2013年の資産買取基金の買取ペースは、前回の金融政策決定会合で決められた内容通りであり、14年の増加額も10兆円となっている。「無制限緩和」では急増しかねなかった資産買取基金の残高の増加ペースは、より緩やかになった。 <独連銀総裁が懸念した政府の日銀への干渉> 欧州中銀(ECB)の理事会メンバーであるバイトマン独連銀総裁は21日、ドイツ証券取引所主催のイベントで講演し、日本政府が日銀にさらなる金融緩和を迫ったことは、ハンガリー政府の同国中銀に対する行為と同様、日銀の独立性を危険にさらしていると指摘。「両国では政府が積極的な緩和を求めて圧力をかけることで、中銀の領域に大いに干渉し、その独立性を脅かしている」と懸念を表明していた。 このバイトマン総裁の発言は、私が想定した「無制限緩和」的な手法を前提にしている可能性が高いと思う。もし、「無制限緩和」のような仕組みが導入されれていれば、日銀は甘んじてバイトマン総裁の批判を受けなければならなかったと考える。しかし、白川方明総裁が率いる日銀は、かつてない粘り腰を発揮し、独立性の放棄という危機を何とか脱したかたちだ。 <共同声明に入った不均衡リスク点検の意味> 白川総裁は22日の会見で、政府と発表した共同声明に関連し、物価安定の重要性や成長力強化が必要との項目が盛り込まれていると指摘。その上で「政策運営の柔軟性を確保することの重要性についても明記されている」と指摘した。加えて「中央銀行の独立性という考え方は世界的に確立された考え方であり、政府においても十分に理解頂いていると考えている」と述べた。 この説明は決して自己弁護ではなく、中銀が独自の裁量で具体的な金融政策の中身を判断する権限は、今回の"大改革"でもかろうじて守られたとのではないか。具体的には、「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく」と、共同声明の中で日銀のなすべきこととして明記された。 例えば、米景気の回復が鮮明になり、米長期金利が2%を超えて上がり出せば、日銀の緩和強化姿勢が強いだけに、外為市場でドル高/円安に弾みがつきやすくなるケースがありうる。政府・日銀の想定している"心地よい"水準を超えて円安が進んでも、2%の物価目標に達していない時に、緩和を継続する必要があるのか、という問題が発生する。この時に上記の項目が有効に機能すれば、日銀は緩和を止めることができる。白川総裁は会見で、不均衡が顕在化した場合の対応は「日銀が責任を持って判断する」と明言した。 <大規模な財政出動路線、麻生財務相は修正を示唆> 一方、政府・与党サイドにも昨年12月の衆院選前後とは違ったトーンが出てきている。麻生財務相は22日の会見で、2013年度予算案の編成に関し、新規国債発行額は「歳入面で、税収が新規国債(による歳入)より大きい形にしたい」と表明。さらに「新規国債発行は12年度当初(44.2兆円)を下回る方向で収めたい」と述べた。また、足元の外為市場でドル/円が89円台で推移していることに関連し、「円高がだいぶ修正されつつある」との認識を示した。 麻生財務相は政権発足当初、新国債発行額は44兆円という民主党政権時代の枠にこだわらないと発言。円安基調の相場についても、超円高の修正過程であるとの認識を述べ、円安進展のゴールについて明確な水準を指摘してこなかった。 <アベノミクス軌道修正なら、市場が反応へ> 安倍晋三首相が提唱するアベノミクスは、積極的な財政出動と大胆な金融緩和を組み合わせ、円安の進展を起点にして株価上昇を演出することで、国内の経済主体の心理を好転させようとしてきた。だが、日銀は2%の物価目標を選択したものの、当面は現実的な緩和政策を実施することが明らかになり、政府もその方針を容認した。これまでよりも財政規律を重視するメッセージを出し、円安のゴールが近いことをにおわせる発言も出てきた。 この一連の政府の動きは、アベノミクスをより現実的に運用するための「軌道修正」ではないだろうか。多くの市場関係者は、日銀の物価目標2%に目を奪われ、政府が微妙にカジを切り始めていることに気付いていないが、もし、私の想定が正しければ、いずれ市場へのインパクトが明確に出てくる時が来るだろう。円安/株高の修正局面が到来するとともに、日本国債格下げや長期金利上昇のリスクはひとまず後退するという現象だ。 これから1─2カ月の政府要人の発言をフォローしていけば、自ずと答えがわかってくるだろう。 *筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 *このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。 日銀が無期限緩和、総裁「効果的と判断」:識者はこうみる 2013年 01月 22日 18:30 [東京 22日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は22日、金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価上昇率目標と無期限の資産買い入れによる追加緩和を決定したことについて「物価目標のできるだけ早い実現には、期限を定めない資産買い入れが効果的と判断した」とし、目標達成に向けて政府・民間・日銀の相当思い切った努力が必要と述べた。 市場関係者の見方は次の通り。 ●付利めぐる発言で円買い、次期総裁視野に入れば緩和期待高まる <ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト 村田雅志氏> 日銀総裁が付利撤廃は市場機能や金融機関の収益に悪影響と述べたことで、一時的に円買いが強まったとみている。緩和政策の切り札の1つとして付利撤廃が当然意識されていたが、白川総裁は従来の見解を繰り返したため、付利撤廃に関しては白川総裁の考えは変わっていないと受け止められた。白井さゆり審議委員が付利撤廃による円安効果を講演で述べる中での発言となったことで、材料視されやすい。 ドル/円の方向感を考えるうえで、日本サイドでは日銀の金融緩和への過剰な期待がはく落する格好となったが、逆に米国サイドの要因でドル/円が上昇する余地があるとみている。債務上限の問題は5月まで引き延ばされることがほぼ決まった。この中で、米国景気の先行き懸念が後退しているからだ。 ここからドル/円がどんどん下がっていくというよりも、値固めを経て、90円を再び目指す展開になるだろう。今回の会合だけで日銀の姿勢を判断するべきではない。白川総裁の次の総裁が視野に入れば、マーケットでは再び緩和期待が強まるだろう。 ●劇的変化はない、付利下げ観測を打ち消す <三菱UFJモルガン・スタンレー証券・債券ストラテジスト 稲留克俊氏> 日銀総裁会見で、物価目標2%導入に佐藤委員・木内委員が反対した理由が実体経済とのバランスで2%が高すぎるとの判断があったことが明らかになった。こうした考えは従来から日銀スタンスからずれていない。 さらに総裁は、超過準備の付利撤廃はマーケットへの悪影響があるとの認識を示した。12月の会合で付利撤廃の議案を提案した石田委員が今回、議案提出を見送ったことを踏まえると、日銀としても付利撤廃に踏み切りたくないとの本音が透けて見える。共通担保資金供給オペの札割れを回避するためには、付利を引き下げるか、付利引き下げ観測を打ち消すか、どちらかの選択が必要となってくるが、日銀としては後者を選択したのだろう。 国債買入が財政ファイナンスにつながるリスクにも引き続き言及。総裁会見内容を見る限り、日銀が劇的に変わったとは感じられない。円債市場への影響も限られるのではないか。 ●在任中は政策金利枠組み維持 <セントラル短資 執行役員総合企画部長 金武審祐氏> 日銀会合の決定は、安倍新政権の要請に極力歩み寄る中でも、日銀としての考え方をしっかりと盛り込んだと受け止めている。白川方明日銀総裁の発言内容も、政策の柔軟性の確保、日銀の独立性などを明確に語っている。 また、付利撤廃に関しては、市場機能や金融機関の収益に悪影響と述べており、付利があることでマーケット安定の効果があるとはっきり打ち出した。白川日銀総裁の在任中は政策金利の枠組みは維持されると受け止めている。 ●主体的な姿勢弱い、2月下旬の人事提示に注目 <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏> 日銀の腰の重い体質は変わっていないとの印象だ。今回の追加緩和は政府からの要望を受け入れただけで、日銀サイドから主体的に動くという姿勢が感じられない。物価目標の早期実現に向けて無期限の資産買い入れが効果的としているが、2014年以降のことであり、大胆な金融緩和とは言えないのではないか。総裁会見を受けてドル/円が一時88円台まで下落しており、日経平均先物もイブニング取引で下げ幅を拡げる場面があった。市場にとって小手先との印象をぬぐえないのだろう。 ただ2%の物価目標を掲げたことは素直に評価されるべきであり、マーケットに大きな失望感が広がるとは考えにくい。今後は米企業決算、国内企業決算が材料となるほか、2月下旬にも一体で提示するとみられる次期日銀総裁・副総裁の同意人事が注目される。 ●デフレ脱却には規模・スピードにおいて不十分 <トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 チーフストラテジスト 濱崎優氏> 長引くデフレを脱却するには、染み付いたデフレマインドを覆すだけの規模、スピードで取り組む必要がある。当然、財政支出についても大規模で行うことが大事だ。それに比べると、今回の金融緩和は思い切って行った措置とは言えないのではないか。 20年も続いたデフレ経済を終息させるには、従来とは異なる政策を打ち出さないとだめだ。バブル崩壊以降、様々な経済・金融対策を行ってきたが、息切れしたり、芽を摘むようなことがあった。 最終的には政府の役割が重要で、そのためにも安定した政権が必要になってくる。しかも、それには実績を上げなければならず、弱い立場の中で日銀にも協力してもらうことが必要だ。 関連ニュース 日銀が無期限緩和、総裁「効果的と判断」:識者はこうみる 2013年1月22日 日銀が2%物価目標と無期限緩和、政策運営には裁量余地 2013年1月22日 共同声明で政権の実行力演出、大胆な緩和で「3の矢」へ時間稼ぐ 2013年1月22日 ドル/円が急上昇、日銀は無制限金融緩和を決定 2013年1月22日 |