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アベノミクス成功の条件 −終身雇用制の「緩やかな破壊」が日本を救う−
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/111.html
投稿者 佐藤鴻全 日時 2013 年 1 月 21 日 01:06:01: ubCRqOmrnpU0Y
 

日本の労働社会は、終身雇用制が本音と建前の中でランダムに、中途半端に壊れているから始末に悪い。
中高年は必要とされなくなっても会社にしがみ付き、会社は追い込み部屋を作って人格攻撃で自主退職に追い込む。
企業は、一度雇ったら辞めさせるのが難しいから新たな正社員雇用には及び腰だ。
正社員は社畜となって長時間のサービス残業を強いられ、一方の非正規労働者は遥かに安い賃金での不安定な雇用しか得られない。

◆アベノミクスの命取り◆
アベノミクスには期待が集まる反面、幾つかのリスクが考えられる。
当面最大のリスクは、瞬間風速の景気状況で2014年4月から消費税増税を強行するという自爆テロを除けば、デフレからインフレに反転しても少なくとも直ぐには給与が上がらない事だろう。
これにより単に国民から政府に不満がぶつけられるだけでなく、インフレになっても実質GDP成長率が伸びず不況から脱出出来ずに、財政出動での借金だけが積み上がったままに成りかねない。

安倍政権は、詳細は24日を目処に纏める与党税制改正大綱までに詰めるとの事だが、緊急経済対策として、企業が従業員の平均給与を上げた場合にその10%を2〜3年間法人税から差し引いたり、雇用を一定数増やした場合に20万円を法人税から差し引く予定だ。( http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS1202R_S3A110C1MM8000/

これは、問題点の認識と対策の方向は正しいが、企業の新規雇用と賃上げへの警戒心は非常に強固で、こういった一時的な措置では如何せん効果は限定的だろう。

GDP成長への寄与として、要は以下の式で国内の給与総額が伸びる事が重要である。
●給与平均額 × 雇用者数 = 給与総額

極端に言えば、給与平均額が下がっても雇用者数が増えて、給与総額が上がれば景気は好転する。
更に極論すれば、低賃金層の方が消費性向が高いから、上記の結果として、給与総額が同じ場合でも景気は好転する。

雇用者数を増やすという事は、具体的に言えば(1)若者の雇用機会を増やし、(2)女性を労働参加させ、(3)老年者のリタイア生活者数を減らすという事である。
なお、こうする事により、生活保護者数が減り、出生率は上がり、年金支給額が圧縮出来るだろう。

このためには、壊れかけているとは言え、まだまだ強固な日本の終身雇用制がネックとなる。
古来からの水稲農業で集団制と安定志向がDNAに刻み込まれた日本人には、米国やEU並みの転職社会をそのまま持ち込むのは不適当だが、産業構造の変化のスピード化に伴い、全体としてもう少し雇用流動性を増やし、終身雇用制が緩和される必要がある。

また、これにより、アベノミクス第三の矢である成長戦略に伴う、新規産業への労働移動が容易になるだろう。

◆脱終身雇用制への手段◆
しかしながら、一気に終身雇用制を壊すならば大混乱が起きる。
終身雇用制は、たとえればゴルバチョフのソ連解体のように最小限の流血で緩やかに壊さなければならない。

竹中平蔵氏や人事コンサルタントの城繁幸氏等は、解雇規制に守られる正社員を既得権層と見なし、法改正をしてこれを外す事を主張している。
しかし良し悪しは別として、あらゆる既得権層は、内側から壊す事は不可能である。
依然として日本の有権者の大部分は、正社員とその家族であるため、その既得権を強制的に外す事は、もし出来たとしても今回の安倍政権が終わった遥か後となり凡そ現実的な改革シナリオではない。

では、終身雇用制を壊す具体的な手段は、何だろうか。
筆者は、それは「同一労働同一賃金」、「給付付き税額控除」、「恒久的雇用減税」の3つであると考える。

正社員と非正規雇用の待遇格差を無くす「同一労働同一賃金」の導入により、労働者の側からも正社員を選択する動機が弱まるだろう。

米国、ドイツ他、先進諸国で導入されている「給付付き税額控除」により、一定条件の下、国費で低賃金労働者の所得を補い、最低賃金大幅引き上げにより中小雇用主に大きな負担を掛ける事無く、生活支援と労働参加を促進する。

期限を設けない「恒久的雇用減税」を導入し、正規、非正規に関わらず例えば雇用者一人当たり月額20万円を上限に給与の10%を恒久的に税額控除する事により、企業に雇用者数を常に多めにしておくインセンティブを与える。

現在の日本経済は、謂わば合併症患者である。
アベノミクスは、数多あるリスクに対して具体的な処方箋を打って行かなければ決して成功する事はない。
筆者は、終身雇用制の緩やかな破壊という労働システムの変革は、その必要条件の一つであると考える。

(随時、推敲予定。)
http://blog.livedoor.jp/ksato123/  

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01. 2013年1月21日 02:27:57 : mb0UXcp1ss
財政再建なくしてインフレ目標の成功なし

物価政策に奇策は存在しない

2013年1月21日(月)  藤原 一平

 日本では再び、金融政策に大きな関心が集まりつつある。デフレ、あるいは少なくともディスインフレーションが長く続く中、たとえ名目金利が非常に低水準にあったとしても実質金利(名目金利−期待インフレ率)は高く、これが経済活動を阻害しているとの意見も聞かれる。12月の総選挙で地すべり的勝利を収めた自民党は、日本銀行がこれまで以上に緩和的な政策を採り、インフレ率を引き上げるべきだと主張している。

 安部晋三首相は、中央銀行がインフレ目標を2%程度に設定すべきと提案している。これ自体には特に違和感がないが、これを必ず達成するために、日本銀行が将来、量的緩和政策を強化し、日本国債の大量購入に迫られる可能性がある点は気にかかる。

 まずあくまで筆者の主観的な見方に基づくが、2〜3%程度のマイルドなインフレ率が長期的には望ましいと考えられる。

マイルドなデフレからは大きな厚生損失があるのか?

 しかし理論的な研究からは、これまで日本が経験している「マイルドなデフレ」から、大きな厚生損失が生じていると報告しているものはいまだにみられない。長期的に見てインフレ目標を達成することは重要なのだが、過激な緩和政策を採ってまでインフレ目標の短期的達成を試みなくてはならない理論的根拠がはっきりしない。次に、例えば国債購入枠の増加といったさらなる非伝統的な金融緩和をしても、名目金利のゼロ制約の下ではマイルドなインフレ率を達成できるか分からないという論点がある。

 これらは重要な論点である。最初の論点は、どのレベルにインフレ目標を設定すべきかといった論点と関連している。理論的には複雑な問題になるが、インフレ率といった名目変数が、GDP(国内総生産)といった実質変数にどのような影響を与えるか(名目価格の硬直性のあり方)に依存する。重要な論点ではあるが、議論がテクニカルなものとなるため本稿では論じない。

 第2の点は、政策の実践という面でも重要な論点だ。言い換えると、中央銀行による国債買い入れの増加といったより一層の金融緩和によって、マイルドなインフレ率は達成できるのか否かといった疑問である。これに関して、インフレ率や物価の決定に関してマクロ経済学が提供する2つの見方を、まず紹介したい。1つ目は、インフレ率は金融政策によって決められるとする見方であり、もう一方は、財政政策がこれを決定するという考え方である。

 おそらく最初の見方の方が、読者には馴染み深いものであろう。中央銀行は名目金利の変更を通じて、名目総支出をコントロールする。名目金利が低ければ、家計や企業は借り入れを増やして支出を増加させ、結果として生産や生産コスト(賃金)が上昇する。この結果、インフレ率は上昇する。なお、マネーサプライのコントロールといった量的な金融政策も、名目金利がゼロ制約に直面していない限りはほぼ同じ働きをする。

 もう一方の見方は「物価水準とインフレ率は財政政策によって決定される」という考え方である。これは理論的には、「物価水準の財政理論」と呼ばれる。この考えに従うと、現在の実質政府債務は、実質ネット財政収支の割引現在価値と等しくなるように物価が決定されると考えられている。

 そうでなければ、政府が債務を返済しないことになるからである。少しでも合理的であれば、返済される見通しのない資産には投資しないはずである。政府にとっても「フリーランチ」(おいしい話)は存在しないのである。日本の非常に高い政府債務/GDP比率に鑑みると、非常に高いインフレ率が実現しても、理論的には不思議ではない。

「物価水準の財政理論」も現実的な説得力欠く

 しかし、このような「財政政策が物価を決定する」という考え方は、数学的には理路整然としていても、いまひとつ現実的な説得力に欠けている。特に、毎日の経済活動の中では、物価水準やインフレ率は結局、企業による価格や賃金設定に依存する。企業が財政環境をにらみながら、価格や賃金を設定しているとは考えにくい。日々の経済活動からはどうしても、金融政策が物価を決めるように見えてしまう。

 だが歴史を振り返ってみると、政府債務の非常に大きな国ではハイパー・インフレーションが発生している。そしてこれこそが、独立した中央銀行が作られるきっかけになってきた。

 ではどちらの考え方が、今後の物価情勢を考える上で重要となるのであろうか?。筆者は明快な答えを提示することはできない。だが、日本国民が政府が現在の政府債務を将来の税金でまかなうことが「できるはずがない」といよいよ確信した時に、インフレ率の急騰は現実なものとなり得ると考えられる。「物価水準の財政理論」によれば、物価水準の著しい上昇だけが実質債務を引き下げ、財政を持続可能なものとすることができるからである。

 この結果、インフレ率やこれを反映したタームプレミアム(長期債保有に伴うリスクへの対価、ないしは無リスク金利に対する上乗せ金利)が高まり、長期金利も上昇してしまう。この点、日本銀行による直接的な政府債務の購入は、「政府債務を将来の税金でまかなえるはずがない」という見方が支配的なものとなるきっかけになるかもしれない。

 いずれにせよ、中央銀行による国債の直接購入の増加が、「マイルド」なインフレ率を達成できるかはまったく分からないのである。仮に、両者に関係があるとしても、それは非線形の関係にあるはずだ。そうであれば、結末を予測することはとても難しく、ハイパー・インフレーションが発生する可能性もある。

 マイルドなデフレの経済厚生のコストはいまだよく分かっていない一方で、少なくともインフレ率の高騰は、甚大な所得移転をもたらすことが分かっている。そのため超緩和的政策は、個々の経済主体の将来見通しをより不確実なものとし、経済厚生のコストは大きなものとなるはずである。

 なお、インフレ率が急速に高まりそうになったら、インフレ目標のもと、金利の変更を通じた金融政策がこれをコントロールできるはずだとする見方も聞かれる。しかし、こうした考え方の下になっているマクロ経済理論(いわゆる、ニュー・ケインジアン・モデル)におけるインフレ目標下の物価コントロールは、実は「インフレ率といった名目値は発散する(コントロール不可能なまでに動く)はずがない」という仮定に基づいている(詳細は極めてテクニカルになるため紹介しないが、興味がある読者は、ジョン・コクラン・シカゴ大学教授の”Determinacy and Identification with Taylor Rules”を参照されたい)。

インフレ率をコントロールできる保証はない

 すなわち、仮定と違ってインフレ率がコントロール不可能なまでに変化してしまうのであれば、実は、理論的に金融政策がインフレ率をコントロールできる保証はないのである。もちろん、現実経済には理論的でない主体も多く、この推論が必ずしも当てはまるとは限らない。しかし、この理論的帰結は、少なくとも、インフレ率に何が起こってもおかしくない、ということを意味している。だからこそ1度インフレ率の高騰が生じると、これを金融政策で簡単にコントロールできるとは考えにくいのである。

 前述のように、政府にとっても「フリーランチ」は存在しない。結局は、物価の安定のためにも、財政の持続可能性がとても重要といえるだろう。

*――― 以上、East Asia Forum(英文)より翻訳、転載、一部加筆


藤原 一平(ふじわら・いっぺい)

オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院准教授。応用マクロ研究センター副所長。
英オックスフォード大学経済学博士、大阪大学応用経済学博士。1993年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本銀行入行。
金融研究所などを経て2011年10月から現職。2013年から豪日研究センター所長。Japan and the World Economy編集委員。


「気鋭の論点」

経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものもありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ身近なテーマもたくさんあります。意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20130111/242126

 


JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本]
各省庁・日銀の組織利害を超えた、
横断的な政策の連携と調和を目指せ
2013年01月21日(Mon) 瀬口 清之
 円安と株高を背景に日本経済は少し明るさを取り戻している。これをさらに推し進めるために、安倍政権は日銀に対してより高いインフレ目標を設定するよう求めている。


12月23日のテレビ番組で日銀法の改正に言及した安倍首相〔AFPBB News〕

 日銀は11月まで従来の路線を守ろうとする姿勢が強かったが、12月の総選挙後、突然柔軟姿勢に転じたように見える。中央銀行の独立性を重視する立場の人たちは、日銀が政治の圧力に屈した印象を与えるこの変化に失望し、通貨価値の維持機能の低下や国債の暴落リスクの高まりに不安を覚えている。

 政治家、官僚、経済人、学者の中に通貨価値の安定を目指すという目標を否定する人はいない。短期的に円の通貨価値を低下させて円安にすることを期待している人たちも、中長期的には日本経済が活性化し、実力に応じて円高に向かうことには賛成するはずだ。

政府と日銀の間に摩擦が生じる理由

 日本が目指すべき目標は、日本経済の活力を回復させ、実質成長率を高め、デフレから脱却し、失業を減らすことであるという点も殆どの人々のコンセンサスである。ではなぜ同じ目標を持つ政府と日銀の間に摩擦が生じるのか。それは経済政策全体についての共通理解と相互信頼関係が十分確立されていないためである。

 政府の各部門と日銀が上記の共通目標の達成のために、日頃から個々の政策メニューの組み合わせ方について各組織の担当分野の壁を越えて十分に議論を重ねて、相互信頼関係の下に互いに協力し合っていれば、今見られているような摩擦はかなり緩和されるはずである。

 各省庁と日銀はどこもみな縦割り的体質が染み付いており、自分の庭先のことばかりに執着し、横断的政策連携が十分とは言えない。また、自分の組織の予算や権限が縮小するような政策に対しては、たとえそれが国益に資することが分かっていても、組織の利害を優先して反対する体質が改められていない。

 日本経済を活性化するためには金融政策のほかに、財政政策、産業政策、通商政策、税制、社会保障政策など主な政策手段をうまく組み合わせることが必要である。その中で、マクロ経済政策の代表である金融政策と財政政策は経済のスピード調整機能を担う。一方、その他の政策は日本企業の競争力を強化し、政府の効率化を図る体質改善・強化機能を担う。

 少し噛み砕いて主な手段と目標を列挙してみれば、(1)各種規制緩和による健全な競争の促進とそれを通じた生産性の向上、(2)企業に対する減税や補助金による企業の収益力の増大と雇用の確保、(3)政策分野別の適切な財政配分による政府機能の効率化、(4)所得税・消費税や社会保障給付水準の見直しによる財政赤字の削減、(5)TPP・FTAの推進や外交関係の緊密化等を通じた貿易・投資環境の改善などである。

 これらの体質改善・強化政策によって企業が活力を取り戻し、成長率を押し上げ、財政赤字を減らすことが日本の目標である。

 最終的な政策目標の実現には、マクロ経済政策と体質改善・強化政策の連携が重要である。水を飲む気がない馬を川辺に連れていっても水は飲まない。馬に水を飲ませるには馬自身が水を飲みたいと思うことが大前提である。馬を水辺に連れていくのはマクロ経済政策、馬に水を飲みたい気にさせるのは体質改善・強化のための各種政策である。

不十分なのは金融緩和なのか

 日本は1995年9月に短期の政策目標金利を0.5%まで引き下げて以来、短期金利はずっと1%未満ないしゼロ近傍に抑えられており、極端な金融緩和状態が17年以上続いている。

 一般的には金融緩和が不十分であるとの見方が多いが、馬(=日本企業)が普通の体力を回復していれば、十分水を飲めるところまで水辺には近づいている。それでも水を飲もうとしない馬が多いのは、水の飲ませ方が上手くないだけではなく、馬自身の体質改善・強化が不十分であると考えるのが自然である。

 日本経済の中長期的な安定成長確保のためには、様々な政策メニューを通じた企業と政府の体質改善・強化とマクロ経済政策によるスピード調整の両方がうまくバランスをとっていくことが重要である。


より高いインフレ目標の設定を求められた日銀の白川総裁〔AFPBB News〕

 金融政策を担当する日銀は金融政策だけを理解しているだけでは不十分である。財政政策、産業政策、通商政策、社会保障政策等を担う各省庁も自分の管轄する分野の政策だけを理解しているだけでは調和のとれた有効な政策パッケージを生み出すことはできない。

 日本に欠けているのは各省庁・日銀相互間でのフランクな政策論議と横断的連携を通じた政策の調和的運営である。政治家が強いリーダーシップをとり、縦割り的発想の染み付いた各省庁と日銀に対して組織の利害を超えて議論させ、政策の連携と調和を実現させることが重要である。

 その横断的連携の土台の上で、デフレ脱却、日本経済再生のためにどんな政策が必要かを国民に対してきちんと示す必要がある。これには経済財政諮問会議が適している。しかし、その場だけではなく、各省庁と日銀の様々なレベルで日常的に政策相互間の連携と調和を図る努力が必要である。政治家はここにも関与すべきである。

政策の有効性と政策運営のガバナンス実現に必要なもの

 各省庁・日銀間の横断的な政策の連携と調和を実現する上でもう1つ難題がある。政治家自身が国益より選挙を重視する傾向があるという問題だ。政権与党は次の選挙で勝つことを重視するため、国民に不人気な政策を採用したくない。

 インフレの時代には金融引き締めが不人気だが必要な政策だった。だからこそそれを担う中央銀行には独立性を与え、政府や政治家が嫌がっても国民のために金融引き締めを断行させた。それによって短期的には景気が悪くなっても、中長期的には通貨価値の安定を保ち、経済の健全な成長を確保することができた。

 しかし、今のデフレ時代に不人気な政策を政府から独立して決断・実行する主体はない。不人気な政策の代表例は規制緩和と社会保障の削減である。いずれも既得権益を持つ人々が抵抗するため、次の選挙で支持を得たい政治家は与野党を問わず厳しい選択を回避しがちである。年金・医療費の削減やTPPへの交渉参加に踏み切れていないのもそのためである。

 政府に対して誰かが不人気なことを言わなければ政策運営のガバナンスが働かない。不人気を覚悟で主張するリーダーが必要である。日本でかつてその役割を果たしたのは学者と財界だった。今も一部のエコノミストや経済界のリーダーは不人気を承知の上で政策提言を行っている。そうした勇気ある人物がもっと増えていくことを期待したい。

 日本経済再生のためには、政府・日銀のみならず、経済界、学界も含め、オールジャパンで政策運営のあり方を考える枠組みが大切である。各省庁・日銀が相互連携を欠き、縦割り型の政策運営を続ければ、個々の政策判断が独善に陥り、政策全体としての有効性を損なう。

 国益より組織の利害を優先する考え方を正し、オールジャパンの観点から横断的政策連携を通じた政策運営をリードするのが政治家の役割である。民主党時代は当初、官僚を排除し、政治家だけで政策をリードしようとして失敗した。自民党がその轍を踏まないことを多くの国民が強く期待している。

 自民党の選挙での大勝はかつての自民党の政策運営を評価して自民党を支持したわけではなく、民主党の政策運営に対する批判票が自民党に流れたことによるものであることは、自民党幹部も揃って口にしている共通認識である。その認識は的確である。それを踏まえてこれまでにはなかった各省庁・日銀の連携と調和に基づく政策運営を実現し、今度こそ日本の再生を実現してほしい。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36935


02. 2013年1月21日 02:47:12 : mb0UXcp1ss
【第15回】 2013年1月20日 
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー

「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換
インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」

金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で経済回復を目指すと宣言した安倍晋三首相。この「アベノミクス」において金融政策の柱となるのが、インフレターゲット(物価上昇率目標)を2〜3%に定め、大胆な金融緩和によって、デフレと円高から脱却するというシナリオだ。市場ではこのシナリオを好感して円安・株高が続く一方、物価上昇を不安視する声もある。果たして、日本は「失われた20年」を取り戻すことができるか。安倍政権が進める金融政策の理論的な柱となっている浜田宏一・内閣官房参与(米エール大学名誉教授)に、日本再生の鍵を握る金融政策のポイントを詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 編集長・原英次郎、小尾拓也)

安倍首相に様々な意見を申し上げ
それを政策の参考にしていただく


はまだ・こういち
経済学者、米エール大学経済成長センター名誉教授。1936年生まれ。神奈川県出身。東京大学法学部・経済学部卒。東大とエール大で経済学修士、エール大で経済学博士取得。東大経済学部教授、エール大経済学部教授、理論・計量経済学会(現日本経済学会)会長、内閣府経済社会総合研究所長、中央大学大学院総合政策研究科特任教授などを歴任。瑞宝重光章受章。2012年12月、第二次安倍内閣で内閣官房参与に就任。専門は国際金融論、ゲーム理論。『経済成長と国際資本移動――資本自由化の経済学』『損害賠償の経済分析』『国際金融の政治経済学』『アメリカは日本経済の復活を知っている』など著書多数。
――政権を取り戻した安倍自民党は、金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で経済回復を目指すと宣言しました。この「アベノミクス」において柱となっているのが、大胆な金融政策です。浜田教授は、安倍政権に内閣官房参与として参画し、経済・金融政策に対して提言を行なうお立場にいます。現在は、どのような活動をしていますか。また、安倍首相とはいつ頃からお付き合いがあるのですか。

 現在は、政府の非常勤公務員という立場です。安倍晋三首相には、経済・金融に関する様々な意見を申し上げ、首相がそれを取捨選択し、政策の参考にされることになります。

 安倍首相とは、小泉内閣時の経済財政諮問会議に内閣府の研究所の所長として陪席したときからの知り合いです。当時、内閣官房副長官を務めていらっしゃった安倍首相は、よく意見を理解していただきました。

 また、お父上である故安倍晋太郎外相を記念する国際交流基金日米センターの研究奨学金プログラム「安倍フェローシップ」に選ばれ、経済政策の決定過程の研究をさせていただいたご縁もあります。

――安倍内閣の金融政策の柱となるのが、インフレターゲット(物価上昇率目標)を2〜3%に定め、大胆な金融緩和によって、デフレと円高から脱却するというシナリオです。こうした政策が必要なのは、なぜですか。

 世界各国のマクロ経済の状態を見ると、新日銀法が施行されてからの15年間、日本だけが名目、実質の経済成長ともに1人遅れをとっていることです。他の国も原燃料高や財政難に悩んでいるのに、日本だけ何が違うのか。それはデフレ気味に経済を運営し、金融政策を引き締め、円高を容認してきたことに大きな原因があります。そこから脱却するには、やはりインフレ目標と大胆な金融緩和が必要だと思います。

 こうした考え方を持つ、いわゆる「リフレ派」と呼ばれる学者たちは、たとえば岩田規久男氏の「昭和恐慌研究会」などを通じて「デフレ円高のように、貨幣に関することは金融政策で直せる」と主張してきました。私も彼らの考え方に賛同しています。

 各国とも経済成長の天井となる、完全雇用、設備の完全利用で達成できる潜在GDP経路が決まっています。人口減少が進む日本にとって、潜在成長率が低下するのは仕方がないことです。潜在成長経路は、金融政策だけでは変わりません。

奇跡と言われた輸出産業が
苦しんでいるのは超円高のせい

 しかし、今日本が直面している問題は、経済が潜在生産能力のはるか下のところで運行していることです。金融を引き締めし過ぎていて、日本経済は実力を発揮し切っていないのです。つまり、失業、過剰設備の存在のために需給ギャップがあって、潜在生産能力の一部が失われているのです。

 円高でエルピーダメモリがつぶれ、奇跡と言われた高度成長を担っていた輸出産業、ソニー、パナソニック、シャープなどが苦しんでいるのは、超円高のせいです。円高はドルに対して円の価値が高過ぎ、デフレはモノに対して貨幣の価値が高過ぎるのです。それを是正するには、他の要因も副次的には関係しますが、お金を刷って円の量を増やすのが第一歩です。

――少なくとも、リーマンショック以降に行なわれた各国の金融緩和策を比べると、対GDP比で見た日本の資金供給量の水準は、他国と比べて低いわけではありません。にもかかわらず、なぜ日銀は「金融緩和が足りない」と言われるのか。また、なぜこれまで大きな成果を出せなかったのでしょうか。

 それぞれ決済の習慣が違う国を、通貨比率の水準だけで比較することには意味がありません。日本はモノやサービスを買うときに現金で支払うのが一般的ですが、米国はクレジットカードや小切手で支払うことが一般的。つまり、日本は市中に出回る現金の量が、もともと米国よりも圧倒的に多いのです。

 それを無視する日銀の自己擁護論は、日銀の用いる多くの詭弁の1つです。記者の方も言いくるめられてしまうのですね。

 リーマンショック後は、米国も大幅な金融緩和を行ないましたが、現金社会である日銀の金融拡張の度合いは、何もしていないのと同じでした。各国のベースマネーの絶対量を比較するのではなく、変化量を比較しないと、金融緩和が十分か否かを論じることはできません。

インフレターゲットは次善の策
目標は3%でもよいのではないか

――そうした状況を踏まえて、インフレターゲットが必要というわけですね。

 私は、インフレ―ターゲットに対しては次善の策だと思っています。正しい経済理解に基づいて金融政策をやっていれば、こんなに円高になることもないし、高度成長期のように緩やかなインフレ率は実現できるはずですから。

 日銀が正しい経済学に従うのなら、それに任せてもいいのです。しかし、この20年間を振り返ると、日本銀行は正しい経済観に従って金融緩和をして来なかった。だから、目標の義務付けが必要なのです。

 デフレ期待がこれだけ定着してしまった現在、個人的には、世界の有力経済学者の言うように、インフレ目標はそれより高く3%でもいいのではないかと思います。

――しかし世間には、「景気が停滞する中でお金だけ増やしても、インフレにならないのではないか」と疑問視する声も少なくありません。

 確かに、学者や実務界のエコノミストの中には、「効果がない」とおっしゃる人も多い。それはケインズが言った「流動性の罠」という現象で、いくら市中に出回るお金の量を増やしても、皆がお金を貯め込んで投資をしない状況を指します。


 背景にあるのは、金利が低いから何かに投資してもお金で自分で持っているのとあまり変わらないし、しかも金利が上がったら債券の価格が値崩れして損をするのではないかという不安です。だから、ゼロ金利の下でお金を増やしても、経済を活性化する効果がないという考え方ですね。

 しかし、そういう人たちは、債券市場だけ見ていて、株式市場や不動産市場を見ていない。20世紀が生んだ大経済学者の1人で、恩師のジェームス・トービンは、企業の資産と市場での評価を測る指標として「q理論」を提唱しました。

 この理論では、株式や不動産への投資機運の高まりが、株価を上昇させ、その結果企業がより投資しやすくなるということを指摘しています。日本でもこの効果が、本多祐三教授らによって確かめられています。

 別の経路も考えられます。ゼロ金利下で金融機関に行って「ゼロ金利でお金を貸してくれ」と言っても、その人に返済のアテがなければ貸してくれるわけがない。「それなら高額の担保を差し出せ」と言われるでしょう。ところが、今の日本のように株式も土地も下がっている状況では、担保物件の価値は低くなります。

 そこで、お金を借りることは難しい。金融緩和で担保となる不動産価格が上がると、お金が借り易くなり、多少のリスクを伴っても新しい投資を行ない、利益を増やそうと考える人が増える。これは米FRB議長バーナンキの主張です。

後でちゃんと売却できるなら
国債を直接引き受けてもよい

――では、日銀はインフレターゲットに向けて、どんなことができるでしょうか。

 伝統的な短期債を買う手段に比べて、日銀はやろうと思えばかなりのことができます。長期債券を買えば長期金利が下がり、経済にそれなりのインパクトを与えられるし、もっとドラスティックにやるならCP(社債)を買ってもいいでしょう。

 個別株式の購入はモラル的に問題がありますが、ETF(上場投信)を買ってもいいし、場合によっては外国通貨や外国債券を買ってもいい。また、後でちゃんと売却(市中から資金を吸収)できるなら、国債を直接引き受けてもいいのではないか。

 アベノミクスが整合的に続けられ、国民の政策に対する信用を得られれば、かなりの効果を出せるはずです。それに大胆に賭けていくことが、金融政策で景気を浮揚させることにつながっていくと思います。

――とはいえ、日銀が国債を大量に買い入れても、市中銀行が企業への貸し付けや運用などにお金を回さず、準備預金残高が積み上がって行くだけで、インフレ期待は醸成されないのではないかという意見もあります。

 そうですね。現在日銀は預け金に0.1%程度のわずかな金利を付けています。それは主に、銀行間の短期資金の仲介を行なう短資市場の保護を目的にしていますが、預け金の金利がゼロに近い市中金利と比べていくらか有利なため、市中銀行の資金が日銀に戻ってきてしまうという、金融緩和に日銀自身がブレーキをかける現象を生んだ。その結果企業への貸し出しにお金が回らず、これは悪いやり方だと思います。

 インフレ期待を醸成するには、日銀は包括的金融緩和の名の下で、色々な資産を買うと称してちょっぴりしかやっていない。それは株などのリスク資産も含むので、彼らはやりたくない。そのため、投機に対する影響が小さい国債、それも短期国債ばかりを買う状態が続いています。

外債購入は金融政策にとって有効
法律論でやらないのは筋違いでは

――日銀は外国債などを購入して円安誘導すべきという声も以前からありましたが、それは金融政策の枠を越えて、為替介入と捉えられる可能性があります。他国から批判されることはないでしょうか。

 政治的なコンセンサスは必要だと思いますが、経済学者は法律家と違い、法や政治的意味での行為の正当化に興味はありません。外債などを買えば円は安くなるため、金融政策にとって非常に有効です。実体を伴わない法律論でとるべき政策をとらないのは、筋違いではないでしょうか。

 麻生副総理も言っておられたように、今まで日本だけが我慢して他国にいいことを続けてきたのに、今自国のために金融緩和しようとするときに、他国に文句をつけられる筋合いはないのです。日本の金融政策は日本のためであり、ブラジルや他国のためではないのです。

――インフレ期待が大きく醸成されると、長期金利が高騰するのでないかと心配する声も多いですが……。

 ノーベル経済学者のマンデルは、、期待インフレ率が上がるほどには国債の金利が上がらないことを証明しています。

 実質金利は名目金利から期待インフレ率を引いたものですから、金融緩和によって名目金利が一定に抑えられている環境では、期待インフレ率が上がると実質金利は下がります。よって、その影響が名目金利に多少ハネ返って来たとしても、結果的に実質金利が下がって、投資し易い環境になることは変わらず、景気が刺激されることになります。

 重視すべきは、名目金利ではなく実質金利なのです。たとえば、我々が住宅ローンを組んで家を購入するときも、返済時にいくら返せばいいかの指標になるのは実質金利なのですから。

名目賃金は上がらないほうがよい
その理由はあまり理解されていない

――では、こうした金融政策をやれば、経済はどのような経路で上向くことが考えられますか。デフレから脱却して「名目成長率」が上がり、それがどう実質成長率の上昇に結び付いて行くのでしょうか。

 物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がりません。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増えるのです。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていくのです。

 その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策と言えます。

 よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。こうしたことは、あまり理解されていないように思います。

――今後の政府の方針として、日銀法の改正まで踏み込む可能性はありますか。

 有権者の信任を得た政治家が金融政策の舵取りをきちんとするのが政府の役目であり、その目標を達成するために具体的な手段を使って金融政策を実施するのが日銀の役目。そうした体制にするために日銀法を改正すべきだという意見に、私も賛同しています。きちんと約束しなければ、国民の信頼を得られないでしょう。

 白川(方明日銀総裁)緩和がうまく行かないのは、「もうそんなことをやりたくない」という意思を言外に示し、自ら「金融緩和策には効果がない」と吹聴しているためです。本気さが見えない中央銀行の政策を、誰が信用するでしょうか。

 安倍首相が日銀法改正を唱え始めたとき、金融政策に対する権限はありませんでしたが、それでも関係者は、特に市場は真剣に耳を傾けた。そこには「期待をつづる効果」があったのです。「(日銀擁護の)論より(市場の成果という)証拠」なのです。

 現状では、アコード(政策協定)をいくら書いても、日銀が「イヤだ」と言うことを強制できる法的根拠が、残念ながらないように思います。やはり日銀法改正は必要です。

日銀には豊富な知識と経験があるが
金融政策の目標を決められるのは問題

――具体的な政策は日銀に任せるにしても、いざというときには政府が乗り出し、方向性をきちんと指し示すということですね。


 どんな資産をどのタイミングで買うか、金利水準をどう変えるかといった具体的な政策は、日銀に任せればよい。第一次石油危機後に金融を緩めて「狂乱物価」を引き起こしてしまった日銀が、第二次石油危機時にインフレをスムーズに封じ込めたように、日銀には豊富な知識と経験があります。

 実際、彼らだけで「デフレの番人」を務めることは、十分可能でしょう。しかし、中央銀行が金融政策の目標を決められてしまう状況は、やはり問題です。

――これまで金融政策について詳しく聞いてきましたが、財政政策とのポリシーミックスはどうなりますか。足もとでは大型の補正予算が出される見通しで、国債の発行がさらに膨らむことは確実。それにより悪い金利上昇が起きると、金融政策の効果が相殺されかねません。

 それについては、本来私も金融政策だけで十分ではないかと思っています。
ただ、政府内には「最後の一押しは財政政策が必要」という意見がある。一方、「金融政策で財政危機を救えるのに、財政で大盤振る舞いすると救えなくなるのではないか」と不安を持つ人もいて、私はどちらかと言えばその意見に賛成です。

 それでも財政政策をやるならば、金融政策を全開で行なう必要があります。財政拡大で国債を大量に発行し、金利が上昇すると、海外資金の流入を招き、円高につながります。円高で輸出減、輸入増が起きると、外需が縮小し、財政出動で喚起した内需を相殺してしまう。これは、マンデル・フレミングモデルの考え方です。

 そうならないために、金融政策による金利の安定化を同時に図ると、つまり金融緩和を十分にやっているときは、財政政策も効いてきます。その意味でも、私は金融政策が主で、財政政策を従と考えています。

 しかし、内外の学者の中でも、多少のニュアンスの違いは見られます。あのクルーグマンでさえ、一緒に財政政策を使えと言っています。金融政策だけではすぐにデフレを解消できないと思っている人は、日銀にも考える時間を長期的に与えるべきと唱えていますが、安倍首相はそれではかえって期待をつづる効果を弱めるので、「せめて中期を目指す」ようにと理解を求めています。これは全くの正論です。

リフレ派は一生懸命やって来た
アベノミクスで争点が転換された

――いわゆるリフレ派の学者たちの主張は、これまでなかなか受け入れられない土壌があったように感じます。今後、世の中の考え方は変わるでしょうか。

「日銀はこれ以上の金融緩和をしてはいけない」と言わんばかりの理由を、合理的な理屈を付けて説明する人はたくさんいました。彼らが経済原理と全く離れたことを言っているのは、不思議だったし、不安に思いました。

 我々は無力感を感じながらも一生懸命やって来ましたが、争点を転換して見せたのが、アベノミクスでした。まさに、政治的リーダーシップがあったからこそです。今、やっと反対派の人たちと同じ土俵で議論できるようになったのは、大変嬉しいと思っています。

 

【第8回】 2013年1月21日 
【テーマ6】世界政治の行方(2)
安倍政権誕生で国際政治から孤立か
世界中が警戒する“日本の右傾化”の波紋
――藤原帰一・東京大学法学政治学研究科教授に聞く【後編】
2012年末に行われた衆議院選挙では自民党が294議席を獲得し、圧勝。安倍新政権が誕生した。「民主党政権への不信任によって自民党が返り咲いた」という見方が日本では強いが、領土問題を巡って関係が緊迫化する中国のみならず、アメリカなどの主要国も自民党政権の誕生、石原慎太郎氏率いる日本維新の会の躍進を好意的には見ていないようだ。図らずも世界から“右傾化”が懸念されることとなった日本は、これから世界政治のなかでどう見られていくのか。前回の欧米・中東編に続き、今回は日本を中心にした2013年の東アジア情勢について、東京大学法学部政治学研究科・藤原帰一教授に話を聞く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

“日本の右傾化”に世界中が警戒
安倍政権の賞味期限は「参院選」か

――先の衆議院選挙では自民党が圧勝した。安倍政権発足によって日本は今年、世界各国からどのように見られるようになるか。


ふじわら・きいち
東京大学法学部法学政治学研究科教授。1956年生まれ。専門は国際政治、東南アジア政治。東京大学法学部卒業後、同大学院単位取得中退。その間に、フルブライト奨学生として、米国イェール大学大学院に留学。東京大学社会科学研究所助教授などを経て、99年より現職。著書に『平和のリアリズム』(岩波書店、2005年石橋湛山賞受賞)など
 不安定要因になる可能性がある。その焦点は歴史問題だ。中国と韓国の反発については日本でもよく知られているが、アメリカ、ヨーロッパも安倍政権や日本維新の会の躍進を見る目が非常に厳しいことに注意しなければならない。歴史問題が中国・韓国の二国との関係だけだと考えるなら、たいへんな誤りだ。

 私自身は、日本の有権者が右傾化したから自民党の圧勝や日本維新の会の躍進が実現したとは考えていない。有権者は民主党政権の下での不安定にかわる安定を求めて、自民党に投票したに過ぎないからだ。また、変化には様々なものがあるが、日本維新の会が唱える変化(地方分権、官僚国家論の打破、中国へ毅然とした態度をとるなど)の方が、日本未来の党(反原発、対米関係の見直し)などの示したものよりも受け入れやすかったのだろう。

 昨年は、尖閣諸島をめぐる中国との軋轢が拡大した。この背景に中国による外洋への軍事的展開があったことは事実であり、日本政府の責任を問うのはバランスを失している。だが同時に、尖閣諸島を実効支配しているのは日本であることも注意すべきだろう。領土問題は打開が難しいからこそ、実効支配している側は挑発行為を控える必要があるからだ。

 昨年の尖閣諸島をめぐる危機に際しても、人民解放軍はいたちごっこのように国境と国境の境界線の中に入っては出て行くということを繰り返していたに過ぎず、南沙諸島におけるベトナムの既得権に食い込むような態度をとっていたわけではない。その点から言えば、石原慎太郎氏が都知事時代に都有地にしようとしたのは明らかな挑発行為である。その人物が代表を務めている政党が多くの議席を取ったことは、海外に非常に明確なメッセージを与えることになった。ただ、この領土問題に限ってみれば、中国・韓国・台湾の三国は強く反撥する一方、アメリカ、オーストラリア、ASEAN諸国、インドなどは日本の立場に近い。日本の脅威よりも中国の脅威の方がずっと強いと考えられているからだ。

 他方、歴史問題については、たとえば慰安婦に関する河野談話の見直しを求める立場に賛成する声は、日本国内を除いてないといっていい。安倍首相がもし河野談話の撤回を含む歴史問題における新たな立場をとるならば、中国・韓国ばかりでなく、アメリカ、ヨーロッパから見ても、日本が信頼できる交渉相手にはならないことを示している。領土問題と歴史問題に関して日本をめぐる情勢にはこのようなギャップがあることを認識する必要がある。

 安倍首相は、中国に対して日本が強硬姿勢をとった場合も、アメリカが日本との共同歩調を崩さないと確信しているが、私はそう考えていない。確かにアメリカ、特にオバマ政権は中国に対する警戒が非常に強く、海軍力の拡大などの軍事行動を喜んでいるわけではない。ただ、アメリカは中国との危機が拡大することを望んでおらず、そこに日本がいかに関与するかが問われている。

 私は中国に対しては「海上安全通行の確保」によって、対抗する基本を設けるのがふさわしいと考えている。領土・領海の話になると他国は同調しづらいが、安全通行を阻害する行為を認めないという話になれば、同調しやすい。この立場を取れば、日本が実効支配している地域では挑発的な行動を中国が取らないことにつながる。

 自民党政権は選挙において、尖閣諸島の実効支配の強化を訴えたが、日本が尖閣諸島に新たな施設をつくるなどすれば、自ら危機を進めることになる。とても防御的な措置とは受け取られない。そのとき、アメリカとの軋轢が生まれることは覚悟しなければならない。尖閣諸島の実効支配強化に加えて、靖国神社の参拝や河野談話の撤回まで推し進めれば、領土問題については日本と協調する国を遠ざける結果に終わるだろう。

 安倍首相の賞味期限は、参院選の結果次第だろう。本人は勝つ気でいると思われるが、参院選は政府に対する批判票が集まりやすい選挙でもあり、簡単には勝てないはずだ。

周辺国の領土・領海への侵攻で孤立
中国国内では統制能力の衰退も

――藤原教授は昨年から中国は世界から孤立を深めていくと予測されていたが、習近平氏の国家主席就任した2013年以降もその傾向は続くか。

 胡錦濤政権の後半である2009年以降、中国に対する警戒がASEAN各国、日本、韓国などに高まった。その原因となったのは、外洋における人民解放軍の展開だ。領土・領海について、他の国の排他的経済水域や領海に属するものを自分の国のものだと主張することで、各国の中国への厳しい見方が加速したのは事実だろう。それを変えるような方向性は習近平政権に移行する過程でも見えておらず、むしろ強めるような発言が続いているのが現状だ。

 また、中国最大の問題は、デモなどが続く国内治安の統制だろう。軍事予算よりも多くの予算を公安につかっていることからも、いかに国内治安の安定が第一の国家であるかが分かる。しかし、それにもかかわらず暴動を抑えることができないのが現状だ。反日暴動についても煽った政治家がいたのも事実だと思うが、政府が強制したから国民が行った暴動では全くない。現在の政府に対する批判も含めて反発が起きている。その意味では、中国政府が国内社会を統制する力は衰えていくだろう。

 ただ、国内第一の国である中国がその方向を変えることはない。経済的に豊かになったこともあって、外国の要求によって自分たちの選択を揺さぶられる必要はないという態度を取り始めていることからも明らかだ。

 そして、東アジアで最大の問題は中国問題であると同時に、北朝鮮問題だろう。現在、北朝鮮は膠着状態だが、この状態が続けば続くほど、中国との関係が問われることになる。2010年に韓国哨戒艇を撃沈させ、年末11月には韓国・延坪島(ヨンミョンド)を攻撃させることもしながら、中国は韓国と北朝鮮が協議するのが望ましいという立場をとって、批判をしなかった。このポジションは基本的に変わりがないだろう。そのことによって、北朝鮮問題の膠着が中国の孤立とも結びつくことになる。今でもすでにそうなっているが、それが今後も続くと思われる。

 一方、昨年末の北朝鮮のミサイル発射に対して、中国が容認しなかったことは北朝鮮側に立たなかったという意味で、中国の大きなメッセージといえるだろう。ただ、6ヵ国協議に加わっている中国、北朝鮮以外の国からすれば、容認しないだけでは済まない問題だ。伝統的に、中国は北朝鮮を国防の手駒に使ってきた。韓国主導で朝鮮半島を統一されたら、中国との国境まで国連軍がやってくることになるため、それは是非止めたいという思いが中国側にはある。さらに北朝鮮の解体によって、政治が不安定化し、人民が中国側に入ってくるなど、不安定な地域を国境に抱えることは是非したくないのが第一だろう。

中国の軍事的な脅威へは
核の「軍備管理」で対応を

――中国との緊張が続くなか、軍事的な不安要素を取り除くためには、中国と日本、韓国、アメリカなどの間でどのような関係性を作って行くべきか。

 理想論にはなるが、今、核については「軍備管理」の道を築くことがふさわしい。

 もちろんこれは、核がなくなれば世界が平和になるといった一般論から言っているわけではない。現在、中国においては、核兵器はそれほど優先順位の高いものではなく、ミサイルの命中精度が上がること、空母が最も大きな課題となっている。中国であまり重視されていない今、新たな兵器配備にモラトリアムを設け、それと引き換えに、西側はミサイル防衛の施設の配備に猶予期間を与える。そうして合意できるところから軍備の上限やモラトリアムを設けたりして、軍備管理の枠組みをつくることで、危機が起こったときにエスカレートすることを防げるはずだ。

 しかしこうした問題は、あまり日本では相手にされないだろう。というのは、1つには核兵器のおかげで安全が実現している、核を減らすとは何事かという議論があるからだ。実のところ核の削減は、核抑止を安定させることにつながっていることが認識されていないのが現状としてある。

 一方で、ハト派、平和運動の側からは、核兵器において重要なのは廃絶であり、抑止を保ちながら核兵器を減らしていくのはむしろ核兵器容認論だと考えられる。しかし問題はそこにあるわけではない。

 中国との緊張は、領土問題、北朝鮮との問題をめぐり、これからどんどん高まっていく。そのなかで、しかも今度は、日本がアクセルを踏む可能性が安倍政権の発足によって高まった。紛争がエスカレートしたときに、どこで留まるか。外の枠組をつくることが必要だ。

対中政策面でも韓国との協力は重要
朴新政権で日韓関係改善は?

――中国と同じく領土問題を抱える韓国に対して安倍首相は、朴槿恵(パク・クネ)新大統領に特使として額賀福志郎元財務相を派遣するなど日韓関係の改善を目指す方向を示した。今後、日韓の関係はどう動くことになるか。

 2013年は参議院選挙を控えているため、その間には外交問題で強い姿勢はとらないこと、憲法改正についても強い立場をとらないことが安倍政権にとって最も望ましい。公明党が連立のパートナーであり、参議院で多数派でないという立場からは、外交政策で強硬姿勢はとらないことが安倍首相本人の政治生命のためになるだろう。

 この問題において困ったことは、強硬政策に賛成する世論が日本側にも中国側にも韓国側にもあり、人気も高いことである。しかし実は日本にとってはこれほど損なことはない。中国との関係が長期的に課題であるときには、アメリカだけではなく、韓国、ASEANとの協力が絶対不可欠である。

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領による竹島上陸は、実効支配している国としての挑発行為であり、全く必要なかったと思うが、この問題で朴新大統領が日韓関係の修復のためのイニシアティブを投げてくる可能性がある。そのレスポンスを日本側がするかどうか。その対応が引き続き問われているが、応じる可能性は低いだろう。
http://diamond.jp/articles/print/30804

 
【第6回】 2013年1月21日 
グローバル経済進展で社会的分裂を深める日本と世界
安倍政権が経済格差に拍車をかける年に
――福山大学客員教授 田中秀征氏
2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけらるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。


たなか・しゅうせい
元経済企画庁長官、福山大学客員教授。1940年長野県生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。83年、衆議院議員初当選。93年6月、新党さきがけ結成、代表代行。
細川政権発足時、首相特別補佐。第一次橋本内閣、経済企画庁長官。現在、「民権塾」塾長も務める。
@グローバル経済の進展による分裂の深刻化

 グローバルな市場経済の急激な進展により、先進国、新興国、途上国を問わず経済格差が一段と拡大し、政治的、社会的分裂状態が深刻化する。

理由:この世界的な経済格差の拡大傾向に対して、今のところ有効な本格的国際協調の努力は始まっていない。

 筆者は1997年のアジア経済危機以来、「野放しのグローバル経済を檻に入れろ」と強く警告してきた。しかし短期資金の暴力的な動きや複雑怪奇な金融商品の出現さえ今もって有効に規制できず、数年に一度は世界的な経済危機となってわれわれの経済や生活を根底から脅かしている。

 功罪半ばするグローバル経済の負の部分をいかに減じていくか。それが国際的な重要課題になる年としたい。

A中国の覇権主義が国際問題化

 中国の覇権主義が、周辺国の脅威となり、国際問題化してくる。

理由:習近平総書記は就任直後に、「中国は覇権主義をとらない」と明確に言明した。

 だが、総書記があらためてそう言わねばならないほど、多くの国が中国の覇権主義に警戒感を強めている。

 西沙、南沙諸島問題でのフィリピン、ベトナムなどとの関係、尖閣問題での日本との関係をはじめ、中国は周辺国との関係で多くの領有権問題を抱えている。これらをめぐる中国の一方的な主張や行動は今や「アジアの問題」にとどまらず国際問題にも発展する雲行きだ。

 尖閣問題も今後は日中の二国間問題の域を越え、国際社会で覇権主義の展開の一環と受け取られるだろう。

B経済格差による日本国内の分裂が深刻化

 日本国内でも経済格差による分裂状況が深刻化する恐れがある。

理由:社会的、政治的分裂は、地方対大都市圏、世代間、大企業対中小企業、そして個人間で急速に進行している。それは既得権益をめぐる分裂抗争でもある。

 これは、景気対策の手法、TPP参加問題、あるいは原発対応などに関する政策対立として表面化しつつある。

 韓国では年末の大統領選挙で「経済格差の是正」が与野党共通の方向となり、日本と比べて一歩先んじた感がある。

C2013年内に安倍政権の政権維持が困難に

 安倍政権は逆にこの分裂状況に拍車をかけるおそれがあり、年内にも政権維持が困難になりかねない。

理由:安倍政権は、良し悪しはともかく、政、官、財、米と一体となり、(1)原発維持、(2)TPP推進、(3)集団的自衛権の行使の方向に突き進み、その結果国民世論の分裂は修復困難な段階に至るかもしれない。

 だが、与党である公明党は今まで一貫してこの3点について自民党に距離を置いてきた。衆議院での再議決にキャスティングボートを握る公明党は「与党内でのチェック機能」を強く期待される。

D「経済」と「生活」への骨太な構想

 グローバル経済の欠陥を克服する「経済」と「生活」への骨太な構想が求められる。

理由:年末の総選挙において、第三極中心の政権樹立が不発に終わったのは、中・長期的な構想力が欠如していたことも1つの原因である。

 日米の軍事的一体化、窮極の財政金融政策、憲法の全面改正によって一体どんな国を目指すのか。それで本当に日本が政治、経済両面においても立ち直ることができるのか。

 今回の総選挙が戦後最低の投票率、過去最大の無効票となったのは、結局のところ政党や政治家が明確な方向を指し示すことができなかったからだろう。
http://diamond.jp/articles/print/30757


03. 2013年1月21日 03:42:51 : mb0UXcp1ss
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日本一社員が幸せな会社の社長が説くデフレ脱却策
2013/01/20 (日) 11:17


 年相応と言うべきか、私も最近、NHKのラジオ深夜便を聞くことが多くなりました。 

 で、今朝、といっても午前4時台のことですが、どこかの社長さんが話をしていました。

 どんな話かと言えば‥

 ホウレンソウは禁止!

 ホウレンソウといっても、困った時にポパイが食べるあのホウレンソウのことではなくて、報告・連絡・相談のこと。

 会社勤めをしたことのある人なら、ご存じでしょ?

 組織の一員たるもの、何かある度にきちんと上司に報告、連絡、相談しなさい、と。そうすることによって組織の意思疎通がよくなり、職場が強化される、と。

 私たちも、仕事上の情報をちゃんと上司に報告しなさいよと、教えられたものでした。しかし、その常識をこの社長さんは否定するのです。

 では、何故この社長は、組織運営の基本とも言うべき報・連・相を否定するのか?
 そうやって、なんでもかんでも上司に判断を仰ごうとするから、自分で考えることがなくなる、と。この会社にはいたるところに「常に考える」という標語が貼られていると言います。つまり、この社長が言いたいことは、報・連・相がいかんというよりも、自分の頭でよく考えることが先決だということなのです。

 上司から命じられるままに行動しているから、どんな結果になろうともモチベーションが高まらない。しかし、自分の判断に基づいて行動するのであれば、少しでも結果を良くしようという気持ちになる、と。

 そういった社員一人ひとりのやる気が重要だということなのでしょう。

 この社長さん、こんなことも言っていました。

 「いいモノを安く売ろう」という発想がいかんと。そんなことをして、どうやって儲けることができるのか、と。皆がそんなことをすれば、過当競争が起きるだけだ、と。お客さんは、安いから満足するのではなく、商品に魅力を感じるから満足するのだ、と。

 だから、お客さんが満足するような商品を生み出すことが必要だが、そのためには社員に頑張ってもらうしかない。そして、社員に頑張ってもらうということは、社員一人ひとりがよく考えるということだ、と。

 では、その社員にどうやって頑張らせるのか?

 そのためには社員を喜ばせなければならない。だから、決して給料を安くしてはならず、休みもたっぷり与える。

 この会社、なんと65歳の平社員の平均年収が約700万円で、年間休日140日プラス有給休暇が40日もあると言います。

 この社長さんは言います。お客様に満足してもらわければならないと言っても、社員を喜ばせるのが先決で、その反対はあり得ない、と。社員は自分が満足できるから、その分一生懸命働こうという気になるのだ、と。

 まさに目から鱗の話ばかりなのです。

 こんな話を聞けば、皆様のなかにも、そんな会社で働きたかったと思う人も多いでしょう。

 それに肝心なことを言っておくと、この会社、創業以来赤字になったことがないのですって。また、だからこそ、社長の発言も説得力が増すのです。

 私、一瞬、こんな人が総理になって国家を経営すれば、政府の借金が雪だるまのように大きくなることもなければ、不景気が長引くこともないのだろう、なんて思ってしまいました。

 でも、一企業の経営と国家を経営するというのは比較にならないので、そう簡単にはいかないでしょう、多分。

 しかし、この社長、総理としても十分適性を有しているかも‥と思わせるような発言を別の機会にしているのです。

 例えば、税金の集め方について。

 「まずは税金の集め方を変えるべきだね。国が集めて地方に下ろす方法ではなく、地方が税金を集めて権限も地方に渡す。そうすれば「官官接待」なんてバカげたこともなくなる。国の仕事はそもそも最低限でいい。極端に言えば「戦争(安全保障)の心配」だけしておればいいんだ。外交なんてどうせダメなんだし。

 それに、日本の政治を見ていると、「共産主義か?」って思いたくなるね。電力会社だって、地域独占でしょ。復帰前の沖縄には、いくつも電力会社があって競争してたのに、今はその何倍もの人口がある各地方にそれぞれ電力会社がひとつだけ。やっぱりこれじゃ資本主義じゃなくて共産主義だよ」

 何故、日本は長引くデフレから脱却できないのか?

 それは、この社長が言うように、多くの企業が、「いいモノを安く売ろう」と必死になっているからではないのでしょうか? そして、社員をコスト扱いしているからではないのでしょうか? 

 この社長が言うように、バブル崩壊後、多くの会社が正社員を派遣やアルバイトに切り替えたが、それで会社が儲かるようになったのでしょうか?

 そうではなく、社員にその持てる能力をフルに発揮させ、そして、お客さんに喜んでもらえるような商品を次々に生み出すような努力をすることが必要だったのです。

 社員をコスト扱いする限り、中国を含むアジア諸国に安い労働力が存在する限り、日本の労働者に明るい未来は描けないのです。

 そうではなく、海外の労働者とは違うところを日本の労働者は見せなければならないのです。そして、日本の労働者に精一杯能力を発揮させるためには、やはりこの社長のいう餅、つまりインセンティブを与える工夫が是非とも必要なのです。

 今のアベノミクスにそのようなインセンティブが織り込まれているとはとても思えません。努力をした人を政府が支援するのではなく、ただお金を使わせるためにお金を与えるだけなのですから。

 私は、浜田教授よりもこの山田昭雄社長の言うことの方が、断然説得力があると思います。

 お札を刷るだけで景気が回復するなんて考え方は、つまらん!

 一言言っておけば、リフレ派の人々は、お札を刷り続ければ、いつかインフレが起きる筈だ、と言う訳ですが、そうした貨幣数量説的な考え方に従えば、今度は、どれだけ金融を緩和しても、金利を引き下げる効果はなくなってしまう訳ですから、何故景気を刺激することができるのか、ということになるのです。

以上


04. 2013年1月21日 06:02:16 : VbWAbFllIA
>>1,2,3

張り付けが長すぎ。読む気がしなくなる。
レスにはまずは自分の意見を書いて
引用は引用先のアドレスのみか要約のみで結構。


05. 2013年1月21日 08:37:25 : JfFbs5hoTk

●職業の安定●

これが近代社会に求められる最重要のことだ。
終身雇用を実現せねばならない。

職業が安定せず、明日にクビになるか、来年か、5年後か、なんてことでは
人口も増えまい。

日本人の職人根性も、職業の安定に支えられるものだ。

全体経済ばかり気にする経済主義者・成長主義者が日本を滅ぼすことになる。


06. 2013年1月21日 10:28:19 : 2b3wLWeNNQ
社会保障を「職場丸抱え」から国・自治体の責任に移行するのが世界標準ですよ。
それに必要な原資は当然、大企業を中心にきちんと負担してもらわねばなりません。

福祉大国と云われる北欧、実は「雇用を守る」という政策はありません。
構造不況業種はどんどん首切り・廃業させています。その代わり失業者が路頭に迷わぬ
ようなセイフティネットが完備しています。スカンジナビア航空が10年ほど前に
日本人CAをいきなり全員解雇した事があり私もビックリしましたが、かの国では
解雇された従業員の生活保障は国(この場合は日本政府)の責任であり、会社の責任
ではない、ということだったのですね。

金持ち、特に多額の不労所得を得ている層と、多額の内部留保をため込んでいる
大企業には相応の納税をさせつつ、失業者・ワーキングプアへの対策を重視するのが
消費不況から抜け出す王道だと思いますよ。


07. 2013年1月21日 10:49:02 : JfFbs5hoTk
北欧がどんな国かよーしらんが、そーゆーやり方はイケナイ。
人は何のために生きるか、良く生きるためだ。
良く生きるとは何か、それは職業と結びついている。
職業の安定こそが大事だ。
生活保障すれば良いとゆーもんではない。
人は飼育豚ではないのだ。

08. 2013年1月21日 13:31:36 : 183U02GDLU
終身雇用のゆるやかな撤廃が、日本の経済活性に必要であっても
社会保障が最低レベルの日本の住民であるからこそ
終身雇用が実際に無くなってしまう事を考えると、本当に恐怖を感じます。

(企業の大きな負担となっている)終身雇用を無くしたいのだったら
同時に定年制度も無くし何歳でも働ける環境を作らないと、
労働者側にはひどく不利になる一方です。
実際に欧米先進諸国は、終身雇用は無く、給与の年令勾配は無くフラット、
それに加え定年の無い国も多い。
アメリカは近世に厳しい法律が作られているので
企業が雇う際に(例えば35才までとか)年齢制限を設定する事自体が
禁止されてます。それと高齢になった事を理由にリストラする事も違法です。
こういう法律は企業にとっては重荷かもしれませんが
労働者が救われ働きやすく、結果的に経済発展にもつながっている訳です。

一方、日本の終身雇用は一見労働者を守っているように見えるのですが
中高年たたきの実態をみる限り、無用の長物と化していますね。
それでも定年退職も年齢制限もある限りは、終身雇用だけを無くすのは反対です。


09. 2013年1月21日 21:18:53 : I1OZC6W84s
くだらんコピペスレ
阿修羅のスペースは広大じゃねーんだ
自重しろ工作員

10. 2013年1月21日 22:42:46 : Leq45E6jPg
「終身雇用」が実際に活きていた時代でも、現実にそれに守られていたのは公務員と
中堅以上の会社の正社員だけでした。その枠から外れたガテン系労働者などは
見習いを卒業して一人立ちした瞬間から賃金は横ばい。若い時に羽振りが良くても
中年になるとサラリーマンより貧乏で子供を大学にやることもできず
子供たちも低学歴労働者にしかなれない、という社会階層の固定化が明らかに見られます。
シングルマザーなどは若い時から中高年になるまでずっと低収入でどうにもならない、
という問題は昔も今も同じです。

「同一労働同一賃金」の徹底、年齢・性別による差別の禁止、など他の先進国では
当たり前のこと実現し、そのかわり失業者の救済は本気でやる、という政策を
今こそ実施しなければ、日本はゾンビ企業に食い殺されてしまいますよ。


11. 2013年1月22日 14:44:46 : 404uJ0FDmo
池田信夫。

■デフレの原因は名目賃金の低下である #BLOGOS
 http://blogos.com/article/54534/


12. 2013年1月22日 18:07:11 : GLZUyh2mtU
銭儲けの亡者が書いた文だろう。

生活の安定を欠いた国民が消費を増やすはずはない。すぐに首を切られる就業者が増え、毎年上がる年金負担、今年から復興増税の天引きが始まり来年から消費税が上がる。

貧乏人が対抗できる手段は消費の切り詰めや低価格指向を強めることくらい。テレビや広告屋がいくら宣伝しても高額商品の売り上げは伸びないだろう。地方では車は半数近くが軽自動車になっている。これでは税収も減る。

デパートの売り上げは前年比マイナスが続き、激安スーパーのレジに人が並ぶことになるだろう。こんなインフレ策がうまくいくとは思えない。


13. 2013年1月22日 18:26:34 : xw1evTknkw
日銀が2%インフレと無制限緩和を決定し、また円売りが急激に

もう、荘民の暮らし無茶苦茶だわ


14. 2013年1月22日 18:51:09 : xEBOc6ttRg


アベノミクスの懸念材料を考える、自民党は昔と変わったのか 小宮一慶
• 2013年1月22日
•  政権交代には多くの人が期待しています。アベノミクスへの期待もあり、日本の株価は上昇、一時1万900円台を回復しました。しかし、経済指標をつぶさに見ますと今のところは結構厳しい状況です。今後も、景気刺激策で一時的な景気拡大はあるものの、安倍政権が主張する政策には多くの懸念材料がありますから、私はこのまま国内景気が中長期的に一本調子で上向くのは難しいのではないかと考えています。今回は、安倍政権の政策を見極める上での重要なポイントを説明していきます。
安倍政権の強運は世界経済が回復傾向にあること

 皆さんもご存じの通り、昨年12月16日の衆議院議員総選挙の前後から、日本の株価は目覚ましい回復を見せています。世界の中でも回復が底堅いと言われている米国の株価よりも、日本の株価の方が伸びているのです。日本株は出遅れ感が強いということもあるでしょうが、民主党政権の呪縛が解かれ、多くの人がアベノミクスに期待したいという部分が強いのではないかと思います。特に証券会社などは、アベノミクスによる日本株の上昇に乗っかりたいという思惑もあるようです。
 円高も是正されつつあり、一時は1ドル=89円前後まで戻しました。2010年7月以来の水準です。
 今、円安に振れている要因は、日本の政権交代や、新政府が打ち出している大胆な金融緩和が影響していると考えている人も多いのですが、日本の貿易収支の赤字額の拡大による実需の円売りと、米国の長期金利が上昇するのではないかという期待による要因も小さくありません。

 併せて「日経平均」も見てみましょう。2013年1月15日は1万879円08銭、この水準も2010年4月以来です。これは、今まで民主党への失望感が非常に強かったために、自民党への政権交代を機に、日本経済回復の期待が高まったこと、それから円高の是正によるものと考えられます。
 安倍政権が幸運なのは、世界経済が回復傾向に転じつつあるということです。現状の日本経済は、2四半期連続で名目、実質ともに国内生産がマイナスとなるなど、短期的にも落ち込んでいますが、米国景気は底堅いですし、中国経済は、おそらく2012年7-9月期か、遅くとも10-12月期には底を打っていると考えられます。それから欧州問題も、ギリシャやスペインなどでは火種を抱えたままとなっていますが、小康状態であることは間違いありません。この上で、安倍政権は、3月までに補正予算を組んで景気対策を実施するでしょうから、それもカンフル剤として日本経済に浮揚効果をもたらすと思います。
 しかし、私はこのまま国内景気が中長期的に一本調子に上向くとは思えません。バラマキを続けていると、今度は逆に日本国債に対する信任が失われる恐れがあります。そもそも公共投資は、国民から集めたお金を国民に返しているだけですから、短期的な景気対策にはなるものの、実質的な経済再生にはつながりません。結局はGDPが伸びていかないと、国民の所得は増えないのです。
最悪のシナリオは、景気が回復せず物価だけが上昇
 最悪のシナリオは、インフレだけが起こってGDPが増えないということです。安倍政権は「物価目標2%」と「名目成長率目標3%」を想定しています。多くの人は「物価目標2%」に注目していますが、私が懸念していることは、結局「名目成長率3%」がなかったら、国民全体は貧しくなるということです。
 もう一つ注目して欲しいのは、国内の「輸入物価指数」です。


 2012年11月は前年比1.4%(※速報値)に上昇しました。これと併せて「日経商品指数」を見ますと、やはり上昇傾向にあることが分かります。つまり、資源価格が上昇しつつあるのです。これも輸入物価が上がる一つの要因となっています。
 さらに「輸入物価指数」が上昇した2012年11月の平均の円相場を見ますと、1ドル=80円87銭という状況でした。しかし、ご存じのように、今は1ドル=89円前後まで円が下落してきていますから、輸入物価が11月よりもかなり上昇しているのではないかと考えられるのです。
 確かに、円安に振れることは輸出産業にとってメリットがあります。しかし、日本は資源の輸入が多い国ですし、資源を輸入する場合はドル建てで輸入することがほとんどですから、そう言う点では「輸入物価指数」が急激に上昇する恐れもあるのです。
名目成長をどれだけ確保できるか
 そうなりますと、当然のことながら「消費者物価指数」にもその上昇が反映されてくる可能性があります。景気が悪いままで輸入物価が上昇し、それに伴って消費者物価が上昇するということは、お金が海外へ流出するだけで何もメリットがない「悪いインフレ」となります。
 景気回復による需要増によってのインフレならばいいのですが、輸入物価の上昇によって物価目標2%が達成されてしまったら、日本経済が大きな打撃を受ける可能性があります。
 「輸入物価指数」が上昇しますと「企業物価指数」も上昇します。ここで最終消費財に対する需要増が起こらなければ、企業は最終消費財に価格を十分に転嫁できないので、企業の利益が減り、国内の企業業績はどんどん悪化していきます。一方、輸入物価や企業物価の上昇分を消費者物価に転嫁し「消費者物価指数」も上昇してしまったら、今度は消費者の負担が増えるわけで、国内景気はより厳しい状況になります。国内景気が回復しないまま、物価だけが上昇してしまうわけですからね。
 ですから、物価の指標とともに、景気が回復し、名目成長率がどこまで上がるかということにも注目しておかないといけません。名目GDPは給与の源泉であるわけですから、この実額がどこまで上がっていくかということをきちんと見ておくことが肝要なのです。

 さらに、「輸入物価指数」とともに注目すべきなのは、「貿易・通関」の数字です。
 2012年11月の数字を見ますと、輸出額は4兆9837億円、輸入額は5兆9385億円(※速報値)ですから、貿易収支は1兆円弱の赤字となります。このような貿易収支の赤字傾向は、震災以降、ずっと続いている状況です。さらに、先程も触れましたように「輸入物価指数」の上昇とともに輸入額が上昇する可能性がありますから、それがますます貿易赤字を生んでしまう恐れがあります。もちろん、円安で輸出も増加しやすいですが、貿易赤字額が増加するかどうかに注意が必要で、この指標の今後の動きにも注意が必要です。


国内景気は短期的には回復局面に
 今後の予測は難しいですが、最新の景気指標から国内景気の先行きを考えてみましょう。まず「鉱工業生産指数」を見ますと、じわりと低下しているのです。

 2012年9月は86.5まで低下し、10月は87.9と若干回復しましたが、再び11月は86.4(※速報値)まで悪化しています。これと併せて、「現金給与総額」も見ていきますと、2012年9月以降、前年比マイナスの状態が続いていることが分かります。
 これらの動きを見ますと、国内景気は、現状は非常に厳しい状況です。名目国内総生産や生産指数は、世界同時不況時とほぼ同じ水準です。そして、2012年10-12月のGDPは、横ばいの数字になるのではないかと予測しています。2013年1-3月は、米国景気の回復や日本株の上昇によって持ち上がってくるでしょうが、思ったほど良い数字は出ない可能性もあります。
 ただ、安倍政権は緊急経済対策でGDPの1%に相当する5兆円超の大規模な公共投資を実施します。建設業関係の人出不足も懸念されますし、執行のタイミングもありますが、これらの公共投資は少し景気を持ち上げると考えられます。
 政府は、今年の秋ごろに消費税上げの可否を判断するとしています。実質的には8月に発表される4-6月の成長率を見て、来年度の消費税増税を実施するのか否かを決めるのでしょう。そのためには、4-6月までには何としても景気を回復させたいと考えているでしょう。
 そして、7月には参議院選挙も控えていますから、選挙前には、有効求人倍率や失業率などの指標をもとに、景気回復が実感できるようにしたいと考えているはずです。
3月で期限切れとなる金融円滑化法


 ここでもう一つ、名目GDPで注目しておくべきは、現在の実額です。先にも少し触れましたが、もう少し詳しく見ると、2012年7-9月は年換算で473兆8千億円ですが、これはリーマンショック直後である2009年度の実額473兆9千億円とほぼ同じ水準なのです。
 2009年は名目GDPが急激に悪化したことで、中小企業を延命するために金融円滑化法などの対策がとられました。しかし、金融円滑化法はこのままですと今年3月末で期限切れを迎えてしまいます。経済が2009年度から全く回復していないにも関わらず、期限切れになってしまうのです。これでは、経営が厳しい企業をただ延命しただけになってしまいます。
 現在、「企業倒産件数」は、金融円滑化法のお陰もあって月に1000件前後という低い水準で落ちついています。しかし春先以降、それが再び上昇していく恐れがあるのです。自民党が公明党に配慮して、金融円滑化法の延長をする可能性もありますが、同法の行方にも注目が必要です。
 さらに、安倍政権は「物価目標2%」を掲げています。もしそれが実現した場合、市中金利も2%に上昇するでしょう。先ほども述べたように、物価上昇以上の名目成長があれば問題は小さいのですが、景気が浮揚しない中で金利が上昇しますと、債務を多く抱える会社は、経営が非常に厳しくなるのではないかと懸念しています。
昔の自民党に戻ることが怖い深刻な構造的な問題を抱える日本経済 昔の自民党に戻ることが一番怖い
 自民党の政策を見ていると、結局は、公共投資、税優遇、補助金等、昔と同じことをやろうとしています。これで景気が回復しなければ、財政赤字がますます増加することを考えれば、これは自民党政権の「終わりの始まり」になる可能性もあるのではないかと私は考えています。
 いつもお話ししているように、この20年間ずっと名目GDPが変わらない中で、唯一増え続けたのは「政府最終支出」です。それが裏返って、財政赤字になっているわけです。もし、自民党がバラマキを続けるというパターンを繰り返そうとしているのであれば、どこで財政が破綻するか、という話になります。
 とにかく、強力な産業政策や産業構造の大幅な転換を促すことで国内経済を中長期的に回復させ、名目GDPを高めていかないと、多くの問題は解決しないのです。ただし、日本の財政赤字はすでに1000兆円を超えているわけですから、政府は財政をうまくコントロールしながら、景気対策や成長戦略を立てていかなければなりません。さらに言いますと、少子高齢化がどんどん進んでいますから、社会保障費は年々膨らんでいきます。日本は長期的に非常に深刻な構造問題を抱えているということを、政府も私たちもしっかりと認識しなければなりません。
 ですから、結局は経済を強くする政策を行っていかないと、根本的な解決はされないのです。今までのように、問題の先送りばかりをしていたら、日本の財政は破綻しかねません。消費増税をうまく乗り越え、その上で、財政を健全化させる。しかし、今までのやり方を踏襲するのであれば、事態は今より深刻化することは間違いありません。
 もちろん、この景気の状況だと、景気刺激策をとらざるを得ないでしょう。そういう意味でも、今後の財政の舵取りが重要になってくるのです。
小泉政権時代にあった「環境利益」は期待できない
 自民党は、2001年に小泉政権がまとめた「骨太の方針」を復活させるという話をしていますが、実現は可能なのでしょうか。もちろん、徹底した構造改革をするというのであれば、世界も市場も評価するでしょうが、先程もお話ししたように自民党の悪いところだけ復活させようとするのであれば、国民の支持が大きく失われる恐れがあります。
 小泉政権では大きな成果を残したと言っていますが、それは小泉政権の実力もあったかもしれませんが、時代背景によるものも大きいと私は考えています。2000〜2007年の間は、米国でITバブル崩壊があったものの、ユーロ圏と中国では高成長を遂げていました。米国もITバブル崩壊後は、住宅バブルが発生し、景気は拡大しました。ですから、米国がITバブル崩壊を乗り越えた後、長期間に渡って世界中で好景気が続いていたのです。それが日本経済を底支えし、国内では2002〜2007年の間、戦後最長と言われる景気拡大が続いていきました。景気拡大自体は強いものではありませんでしたが、景気が後退しない中で、小泉政権は何とか改革を行うことができたというわけです。
 しかし、今の世界経済の状況はその当時とはまるで違います。欧州経済は大きく後退した上、金融危機の火種を抱えている状態ですし、中国も成長率が鈍化してきています。米国景気は回復基調にあるものの、絶好調とは言えません。このように世界景気の底支えなしに、安倍政権は改革を行うことができるのでしょうか。逆に言いますと、日本が自律成長できるところまでもって行けるのかどうかが、一番大きな焦点となります。中長期的な自律成長には、先ほども述べたように、強力な産業政策や産業構造の転換が必要で、それにはかなりの時間がかかると考えられます。いずれにしても、その道筋を立てたとしても、効果が出るまでは、非常に難しい財政や金融のかじ取りが必要なのです。
 企業経営でもそうなのですが、「環境利益」という言葉があります。つまり、世の中の状況が良いから儲かるということです。しかし、それは企業の実力ではありません。小泉政権の頃は、この「環境利益」が大きかったのです。世界経済が良かったからうまくいった部分が大きいのです。しかし、今は「環境利益」はありません。その中で、日本は自力で経済を反転させられるのでしょうか。私は、この点に非常に注目しています。
(つづく)
小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(以上、ディスカバー21)、『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』、『日経新聞の数字がわかる本』(日経BP社)他多数。最新刊『ハニカム式 日経新聞1週間ワークブック』』(日経BP社)――絶賛発売中!
小宮コンサルタンツ facebookページ:
http://www.facebook.com/komiyaconsultants

皆様からお寄せいただいたご意見(5件)
1. 世の中の状況が良いから儲かるという「環境利益」が期待できないという意見には同感です
そしてすべての元凶は少子高齢化が世界で急速に進行していることでしょう
これでは政治も経済も20年・30年先を見越した政策はできません
多くの高齢者の支持を得るために目先(3〜4年先)の利潤だけの政策になってしまうからです
当然でしょう、自分の子供もいないのに将来の孫の世代のことを考える人がどれだけいるのでしょうか?
まさに少子高齢化がもたらす悪循環に陥っているのが今の現状ではないでしょうか
そして今後同様に高齢化する世界中が目先の為の政策に走り出したら?と考えると、輸出によってGDPを伸ばすことなんてますます厳しくなっていくと思います

>強力な産業政策や産業構造の転換が必要
それも、前述したように少子高齢化を食い止める構造変換が最重要です
そうすれば20年後には好転し老後不安も徐々に解消できるはずです
育児休暇・保育園を増やすなんて都会だけしか通用しない小手先の手法では何も解決しないのは誰の目からも明らかです
これを打破するには、即刻中央集権の廃止・道州制の導入・地方分権・規制緩和を進め、人材の育成・地方の自立化を数十年掛けて進めるしか少子化を止める手段はないと考えます

残念なのは少子高齢化が解っていた20年前に、政治家・官僚・経済界が己の利権を捨て構造改革に取り組んでいれば現在とは違った日本になっていたでしょうね
保身に力をそそぐ政治家・官僚・各界の考えを改めないと、一度行き着く所まで落ちるんじゃないですかね? (うにゅ) (2013年01月22日 17:02)
2. 「結局は経済を強くする政策を行っていかないと、根本的な解決はされないのです。」と論評されていますが,これは根本的な解答にはなっていないと思います.では,ではどうすればよいのか具体的で,建設的な意見をお願いします. (岩田一) (2013年01月22日 12:57)
3. 今まで小宮先生の解説からかなりいろいろなマクロ経済を勉強させて頂き、先生の見通しは私の景気判断の大きなベースになってました。しかし、昨今わかって来た事は、先生は数字の解釈がベースなので、過去の説明は説得力があるのですが、未来予測は?と感じてます。なぜなら、
*高齢化と言うより、団塊が退職を始めるので収入のある就業人口が減っている事は、
 内需(市場)が人口問題により縮小しているので、これからは外需(輸出)を大きくせねば
 ならないと私は考えるので、この円安は日本の得意な加工貿易と言う輸出に大変有効で、
 輸出産業が息を吹き返すよいチャンスだが、この事実をあまり評価していない。
*現実、アメリカの景気回復と言う追い風があり、これは先生が前から「アメリカの景気回
 回復」−>$高(円安)−>日本の輸出増ー>日本の景気回復、のようなシナリオを
 描かれていた通りになって来たのに、その事が現実になるとあまりポジティブに評価されて
 ない。
*公共事業はばらまきと言うが、そのお金が給与をもらっている人の懐に入れば、消費が増え
 内需は増加に転じる。そうすれば、公共事業以外の内需も膨らむ。公共事業はトリガーで
 ある。ただ、老朽化した橋、トンネル、高速道路の補修は現実に必要な事になっている。
 このように、結局内需刺激財になるという未来予測が弱い。
のように、感じています。過去の解釈がベースは結構なのですが、その過去の解釈で説明されていた事(1年から半年前)と、今、言われている事に差異があるので、少し距離を置きたいと考え始めました。 (渡邊 伸廣) (2013年01月22日 12:49)
4. 景気の気は気分の気とよく言われます。
アベノミクスでとりあえず円安・株高となり国民の気分は上がりつつあるのに、評論家の中には批判的な方が多いように思います。この方たちは政府の政策には大体において反対するのですが、ではどうすればこの20年の日本経済の停滞を脱せられるのかについての具体策がほとんど聞こえてきません。「強力な産業構造変換」とか規制改革とか言いますが、では何をどうするかといった具体策やロードマップは語りません。
ただ批判するだけなら、一般論を語るだけなら誰にでもできる。私でもできる。経済評論家ならもう少し日本国民のためになる政策提言をしていただきたいです。批判だけなら気分を冷やすマイナスでしかないと思います。 (パピヨン) (2013年01月22日 11:11)
5. 経済って成長しないといけないものなのでしょうか?現状維持が許されないのだとしたら、それは根本がおかしいのではないでしょうか。文章の中でも触れられていますが、少子高齢化が進む中で、通常に考えれば、GDPが増えるわけがありません。「強力な産業構造変換」とありますが、具体的な内容がさっぱりわかりません。経済コンサルタントや評論家の方々には、もっと具体的な話をしていただきたいものです。小宮さんの話は、起きている事象については、具体的な数値を使っていますので、少しは好感が持てますが。 (なぐぴー) (2013年01月22日 08:32)
小宮一慶の「スイスイわかる経済!“数字力”トレーニング」 


15. 2013年1月23日 01:04:04 : 404uJ0FDmo
姉妹記事。

■「アベノミクス」成功の条件 −消費増税凍結と公共事業の差別化−
 http://blog.livedoor.jp/ksato123/archives/53859007.html


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