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2013/1/19 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
平均株価が2年9カ月ぶりに1万900円台を回復して、市場は沸いている。この株高の流れはどこまで続くのか。「少なくとも参院選までは上がり調子」という楽観論が大きくなっているが、実は、さまざまな見方と疑念がある。
まず、90円付近をつけている円安が、いつまで続くのかということだ。
今の株高は円安とセット。
米エール大名誉教授の浜田宏一内閣官房参与は「円安は1ドル=100円くらいがいい水準ではないか」と言って、それに市場は反応した。裏を返せば、安倍政権としては1ドル=100円水準まで持っていきたいし、市場はそれを織り込んで上がっていることになる。そこまで行くか?
自国の通貨安を仕掛けたいのは日本だけではない。というより、輸出産業保護のため、各国が通貨安を競っている。日本だけ円安にしようとしたって、そうはうまくいかないし、これは通貨戦争の様相を呈している。先進国はどこもかしこもデフレや財政危機にあえいでいるため、各国とも為替レートは死活問題なのである。
「実際、今週に入り、諸外国から日本の円安政策を懸念する声が一気に噴出し始めました。IMFのラガルド専務理事が会見で『競争的な通貨切り下げ政策には反対』と言ったのは、明らかに日本の円安政策を意識したものです。2月に開かれるG20の議長国であるロシアのウリュカエフ中央銀行副総裁も、日本の政策が通貨戦争を招きかねないと牽制していたから、G20ではこれが主要テーマになるかもしれません。1ドル=90円までは順調に進んできた感がありますが、為替は相手のある話ですから、今後これまでのようなペースで円安が推移していくことは難しいでしょう」(三井住友銀行チーフストラテジスト・宇野大介氏)
安倍政権がいくら円安に誘導しようとしても、もう思い通りにはいかないのだ。ユーロ圏財務相会合のユンケル議長も「ユーロ相場は危険なほど高い」と言ってユーロ高の是正を求めたし、第4四半期のGDPがマイナス予測になったドイツのショイブレ財務相も日本の金融緩和に「大きな懸念」を表明した。
◆築かれつつある「円安反対包囲網」
失業率が高止まりしている米国は特に切実だ。ロビー団体の自動車政策会議は17日、「日本の政策は貿易相手国に甚大な被害をもたらす」との声明を発表。米政府に対抗措置を検討するよう求めた。
「自動車産業の業績が良くなれば、雇用創出にもつながる。だから、円安を放置するな、という論理です。米政府は、GM危機の時に総額500億ドルを投じて支えた。今年は、そのとき保有したGM株の放出を目指している。GMの株価が高いほど売却益は大きくなる。そのためにも、米国はドル安政策で自国の輸出企業を支えようとするでしょう。米セントルイス連銀の部ラード総裁は、日本の円安政策について『近隣窮乏化政策だ』とロコツな表現で批判しています。そうした海外諸国、特にアメリカの声にあらがって安倍政権が円安政策を進めていけるとは思えません」(東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏)
さながら「円安反対包囲網」なのだが、加えて、円安はいいことばかりではないという事情もある。経済評論家の杉村富生氏はこう言った。
「円安のおかげで、ガソリン代が値上がりし始めましたが、日本の貿易収支を見ると、いまLNGや原油の輸入による貿易赤字が最も大きくて約23兆円もある。食料品輸入の赤字が約6兆円。合わせて約30兆円ですが、円安が進めば、これが40兆円、50兆円に膨らむ可能性もある。とても自動車などの輸出増で補える額ではありません。しかも、エネルギー資源や食料は必需品だから輸入を減らすことはできない。円安で貿易赤字が増えれば、国民の富はどんどん海外に流出していく。円安による輸入品の高騰は生産企業や流通コストにもはね返り、国民生活や中小企業の経営に大打撃を与えます。生活コストがかさみ、国家も国民も貧乏になっていく。1ドル=100円で輸出企業は大喜びでしょうが、国民生活は大変なことになりますよ」
つまり、この円安・株高で喜ぶのは大企業と投資家だけ。庶民は「円安で株が上がった」と浮かれている場合ではないのだ。こうなると、安倍バブルの行く末はますます、怪しくなってくるのである。
◆米国が本気になればひっくり返る薄氷相場
この国の経済政策を担っているのが、安倍首相や麻生副総理兼財務相だということも忘れちゃいけない。この2人の能力に疑問符がつくことは、国民はとっくに知っているはずだ。
麻生は首相時代、「経済の専門家」と大見えを切っていたが、財政を悪化させただけだった。なにせ、株式市場の前場を「マエバ」と言ったご仁である。
「安倍首相の政策にも疑問符が付きます。賃金を上げた企業は減税するなどと言っていますが、法人税の税収が減った分はどう補(ほ)填(てん)するのか。さらに円安で生活コストがかさめば国民生活にとって何もいいことはありません。自民党は結局、大企業を儲けさせることしか考えていないのです」(斎藤満氏=前出)
市場が喜びそうなことは、とにかく打ち上げてみる。政策の整合性や今後のことは後回し。思いつくことはすぐにブチ上げて、株高を演出する。そんな刹那的なにおいがプンプンするのだ。
安倍は「3本の矢」とか言って、何とか参院選まで安倍バブルを持たせる気だが、とりあえず、市場は全部を織り込んでしまった。20兆円の財政出動、2%のインフレ目標。1ドル=100円の円安を目指し、官民ファンドでさまざまな企業も救済する。それでも株価は1万1000円に届かない。さあ、この先はどうする? もうネタ切れじゃないか? そんな疑念が渦巻くのだ。
米国の「財政の崖」問題も火種になる。米国株が暴落すれば、日本が共倒れのリスクがある。
「アメリカ発のゴタゴタは確実に日本市場の足を引っ張るでしょう。そもそもマーケットには“節分天井”という言葉があるくらいで、年度末の3月には利益確定の売りが殺到する。海外投機筋が手じまいに走れば、一気に市場はしぼんでしまう。そこに米国の財政の崖が直撃すれば、ひとたまりもありません」(市場関係者)
◆ノーベル賞学者が皮肉った安倍の危うさ
日本のマスコミは、ノーベル賞経済学者のP・クルーグマン博士が「安倍首相の経済政策を評価」などと報じていた。ノーベル賞学者のお墨付きとなれば、アベノミクスがさも素晴らしいもののように思ってしまうが、これだって、記事の原文をよく読むと、ニュアンスが違う。
「アベはナショナリストで経済政策への関心が乏しく、それ故に正統派の理論を無視できた」と皮肉まじりに書いていて、「彼の経済政策がもし仮に成功したならば、何か特筆すべきことが起こるかもしれない」と続けた。正当な理論の裏付けがない、ばくちのようなアベノミクスの危うさも同時に示唆しているのである。
1月に予定していた安倍の訪米が延期になったのは、もちろん、米国の思惑だ。通貨競争をめぐる日米のつばぜり合いは、すでに始まっている。
そして、米国が相手であれば、安倍がどんなに突っ張ってみたところで、勝ち目はない。ドルは世界の基軸通貨だし、米国が本気でドル安を仕掛ければ、円安・ドル高なんてあっという間にひっくり返ってしまう。
市場の活況とは裏腹に、実態は薄氷を踏むような危うい相場だと思っておいた方がいい。
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