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「福島第一」の名を消し、事故を風化させようと与党は目論む〔PHOTO〕gettyimages
国民的大議論 放射性廃棄物 原発のゴミ 東京に「処分場」を なんでも福島に押しつけるのはヘン、最大消費地に作るのがスジ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37886
2014年01月09日(木) 週刊現代 :現代ビジネス
福島から出たものは福島へ―。一見、スジの通って見える論理を使って、いま政府・与党は福島を「すべての核のゴミを捨てられる便利なゴミ箱」に仕立てようとしている。このままではいけない。
■もう福島はダマされない
「私を含めて、県民の大半は、今回の『中間貯蔵施設』という文言を、そのまま信じてはいません。時間の経過とともに、それは期間を延長され、やがては『最終処分場』へと名称を変えていくのだと思います」
元福島県議の伊東達也氏はこう語る。
「本来であれば国は、これが最終処分場になると明言すべきなんです。いくら時間がかかろうが、とことん県民や地域住民と向き合って、一過性の説明会のようなものではなく、町で把握している全住民に通知を出して参加してもらい、過半数の信任を得る。それが、このような甚大な被害を出した、国の最低限の義務というものでしょう」(伊東氏)
政府はいま、東京電力福島第一原子力発電所の周辺に、福島県内の除染で出た、放射能を帯びたゴミ(放射性廃棄物)の中間貯蔵施設を作ろうとする動きを加速させている。
中間貯蔵施設とは、いわば原発のゴミの一時保管場所≠セ。
除染作業で集められた市街地の土や落ち葉などは、現状では各地に設けられた仮置き場に山積みになっている。増えつづけるゴミは仮置き場の収容能力を超え、除染作業そのものがストップしてしまう事態になった箇所もある。
そこで大規模な中間貯蔵施設を建てて、放射性廃棄物を受け入れようというわけだ。
それだけ聞くと、まともな計画に思えるかもしれない。だが、その裏には、政府・与党のとんでもない思惑がうごめいている。
政府は、建設費約1兆円とも言われるこの施設を、あくまで「一時的な」保管場所だと強調。候補地での地質調査を前に公表された『中間貯蔵施設の調査について』というパンフレットにも、「貯蔵開始後30年以内」に「福島県外」で最終処分を「完了」する、と書かれている。
だが冒頭の伊東氏のように、福島の人々はその言葉を信用していない。県外に最終処分場ができる見通しなどまったくないからだ。
'00年以降、国はNUMO(原子力発電環境整備機構)に放射性廃棄物の処分を担わせ、'02年からは全国の市町村に、処分場の候補地にならないかと働きかけ、公募を行ってきた。
候補地探しの武器は、「最終処分場の調査だけでも受け入れればジャブジャブ補助金を出す」という、補助金漬け≠フ手法。カネの力で反対派を黙らせ、窮乏にあえぐ過疎地の地方自治体を釣ろうという、あざといやり口である。そこにきて、あの大事故が起きたのだ。
さすがに最終処分場が決まらなかったのは当然と言えるだろう。
結果、原発は脱原発派から「トイレのないマンションだ」などと批判を浴びてきた。政府・与党としては一刻も早く最終処分場を確保して堂々と原発を再稼働したいのがホンネだ。
そこで目をつけたのが、この中間貯蔵施設の事業なのである。政府がこれを足がかりに、なし崩し的に福島を原発のゴミ処分地≠ノしようとしていることは明らかだ。
■これこそ「自己責任」です
政府内では現在、次のような議論が秘かに、しかも大真面目に行われている。
「いつまでも、あの事故現場が『福島第一原発』と呼ばれていると、事故のイメージが払拭できない。
そこで東電を分割、一部を国営化するのにあわせ、あの場所を『福島廃炉処理センター』などと改称する話が持ち上がっています。『事故処理は終わり、跡地には別の施設ができた』と言っておけば、国民の間では事故の記憶もあっという間に風化して、原発の再稼働でもなんでも、またやりたい放題できるようになる、ということです」(経産省キャリア)
表向きはさんざん、「福島の復興のために」「福島県民を助けるために」と連呼しておきながら、実は政府にそんなつもりはまったくない。
「原発事故で汚染されたから、ちょうどいいのでそのまま放射性廃棄物のゴミ捨て場にしてしまおう」
それこそが、安倍政権の狙いなのだ。
地元の専門家として、環境省の中間貯蔵施設環境保全対策検討会の委員をつとめた、福島大学共生システム理工学類教授の渡邊明氏はこう証言する。
「『専門家が安全を確認したので計画の実施に移る』と政府は言いますが、中身のある議論ができたとは言い難い。というのもあの検討会では、どこに作るのかも、どういう施設なのかも具体的にはわからなかった。絵空事で環境アセスメントをやっただけ。
どこにどういう形態の焼却施設を作るか、どれだけのものを燃やすのか。それによって環境への影響は変わってきますが、そういう議論に入ろうとすると、
『いや、具体策はまだ決まっていませんので』で終わってしまう。国の検討会というのは、どうもガス抜きのためだけにあるようなところがありますね」
こうした情報は、福島の人々には一切、伝えられていない。真相を知れば被災者たちが激怒し、政府に対して黙っているはずもないのは明らかだ。
それとも政府は、従来の原発推進政策と同様、地元を補助金漬け、カネまみれにすれば、福島の人々もあっさり納得するとでも思っているのだろうか。
福島県の地元紙記者はこう怒りをあらわにする。
「政府・与党はいろいろなところで馬脚を現している。
たとえば、土地の収用話です。政府は、福島第一に近い双葉町、大熊町、楢葉町の土地、計約18km2を国有化し、中間貯蔵施設を建設すると言っています。18km2と言えば、東京ドーム385個分の広さですよ」
そこにはこんな疑いがあるとこの記者は話す。
「『どうせ帰れない土地だから』と国が広大な土地を買い上げる。当然ながら、周辺は住民の数がゼロで、地権者もいなくなるから、政府はやりたい放題です。
施設が動き出す予定の2015年には特定秘密保護法も施行されていますから、テロ対策だと言って中の様子は一切、公表しない。取材をかけただけで逮捕です。万が一、危険物が漏れ出す事故があっても県民が知ることもないでしょう」
国がこんな詐欺的行為で福島を切り捨てるというのなら、いっそのこと自民党の大好きな自己責任論≠ノ立ち返ってはどうか。
もともと福島第一で発電されていた電力は主に東京で消費されていた。
ならば、電力の最大消費地である東京が処分場を受け入れ、原子力発電とそれにともなうゴミ処分の責任を負うのである。
それはとりもなおさず、事故の当事者である東京電力の幹部や原発を推進する国会議員、経産省の職員それぞれが、自ら責任を分担することにもなるはずだ。
■東電本店に作ったら?
京都大学原子炉実験所の小出裕章助教もこう話す。
「私は基本的には、中間貯蔵施設を、もともとは住民がいたような土地に作ることに反対です。『福島のものは福島へ』というが、汚染の原因は福島第一の原子炉のなかにあったもの。福島県民の責任ではなく東電の責任ですよね」
そして、こう提案する。
「東電の所有物は、東電の土地に返すのがスジだと思います。
いま、福島第一では作業員の人たちが放射能を相手に苦闘していますから、そこに放射能のあるものを戻してはいけない。
私は、東電の本店ビルに返すのがよいと思います。東電の会長室から順に詰め込んで放射能のあるゴミで埋め尽くしてはどうか。本店ビルで足りなければ、福島第二、柏崎刈羽の広大な敷地も使えばいい。
事故を起こした東電が責任も取らず、原発を再稼働させるなど許されないことですよ」
では本当に、東京に処分場を作ることは可能なのだろうか。
まずは候補地の選定である。現実問題としては、東電本店などが建つ内幸町周辺は、江戸時代初期の埋め立て地である日比谷入り江沿いで地盤が悪い。
東京の中心部はほとんどが、もとは海だったり、河川に運ばれた土砂がたまった沖積低地で地盤としては軟弱だ。
今回、福島で中間貯蔵施設の候補地選定を行った際の資料を参考に、類似の地盤を都内で探すと、稲城市、町田市、八王子市の一部から奥多摩方面に広がる砂岩の地質か、日の出町、檜原村周辺の古く硬い岩盤の土地が想定される。
つまり、東京での候補地は、多摩西部から山間部にかけての地域だ。
除染で出た汚染土や、原発の廃炉で出たガレキだけでなく、常に冷やしつづけることが必要な使用済み核燃料棒も受け入れる場合、まとまった量の水が確保しやすい川や湖の近くになる。空冷式の乾式キャスクに移して保管する手もあるが、すべてを乾式キャスクに移し替えるにはコストも時間もかかるからだ。すると、多摩川の支流・秋川沿いの東京サマーランドや八王子カントリークラブ周辺が最有力候補になってくるだろう。
「原理的に、使用済み核燃料プールで燃料棒を長期保管したとき、一番ありがちなアクシデントは汚染水漏れです。福島の1~4号機と同じで、地下水などを通じて放射性物質が広い範囲に拡散してしまいますからね」(別の経産省キャリア)
ひとたび多摩川が汚染されれば、汚染水は東京の住宅街を抜けて羽田空港付近で東京湾に出てしまう。
さらに、首都直下地震などで施設の電源が喪失したり、冷却水が不足すれば、メルトダウンなどが起こって放射性物質が拡散する恐れもある。
空気中での拡散範囲が局所的でも、川に近いことがアダとなりえる。玉川上水から神田川を通じて、皇居のお濠など都心部にも放射性物質が流れつき、都内の各所に無数のホットスポットが現れる可能性も考えられるのだ。
こうして、原発のゴミの処分場が抱える危険性を見てくると、福島にしろ東京にしろ、それを受け入れることを住民が納得するのは相当に困難なことが、あらためてわかるだろう。
だが、政府・与党の原発推進派は、それでも「最終処分場は必ず見つかる」「原発はどんどん再稼働すべきだ」と強調する。
■推進派の地元でもいいね
「東京電力福島第一原発事故を含め、事故によって死亡者が出ている状況ではない。安全性を最大限確保しながら活用する」(高市早苗・自民党政調会長)
「福島の不幸はあったけれども、それで全部やめてしまおうという議論を前提にやることは、やっぱりとても耐え難い苦痛を将来の日本国民に与えると逆に思いますね」「原発はあらゆる意味で安全で地震・津波、テロに耐えうるという結論が次第に出てくる」(細田博之・自民党幹事長代行)
本当にそうなら、彼らには原発の稼働にともなって出るゴミをどうするか、腹案があるのだろうか。原子力関連施設が安全安心で、日本のために必要な施設なら、原発推進派の与党議員たちは、当然、まずは自分の地元への誘致に取り組んでしかるべきだろう。
そこで本誌は原発推進を公言する与党議員13人に「地元に最終処分場を誘致しますか?」「(はい・いいえ、いずれの場合も)それはなぜですか?」とするアンケートを行った。質問を送った与党議員(敬称・役職略、カッコ内は選出の都道府県)は以下の通り。
麻生太郎(福岡)、石破茂(鳥取)、河村建夫(山口)、塩谷立(静岡)、高市早苗(奈良)、高木毅(福井)、谷垣禎一(京都)、津島淳(青森)、額賀nu郎(茨城)、細田博之(島根)、町村信孝(北海道)、山本順三(愛媛)、山本拓(福井)
だが、誰一人として回答してきた議員はいなかった。原発政策が大事だ大事だと声高に叫んでいながら、では「あなたの地元はどうですか?」と質問されると、誰も答えることができなかったわけだ。これで、政府が安全を保障するから信じて原発を動かせ、ゴミを受け入れろと言われても、納得する国民などいないだろう。
中部大学教授の武田邦彦氏はこう指摘する。
「いまでさえ、それ以上処理できなくて、最終処分場で地下300mくらいの深い場所に埋めなければならない放射性物質が、ドラム缶換算で130万本分あるんですよ。それを日本のどこかに、どうしても埋めなければならない。
それだけでも大変なのに、原発が再稼働すれば、またどんどんゴミが出てくる。埋めるところがない以上、もう原発はやめるしかないのです」
原発を稼働させつづける限り、福島か東京か、その他の地域か、必ずどこかの地域の人々が人身御供≠ノならなければいけない。原発依存社会とは、今度こそ決別すべきだ。
「週刊現代」2013年12月28日号より
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