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フィンランドの「オンカロ」。「外国の放射性物質の受け入れはしないことを前提に建設されている」(小泉氏)。(時事通信フォト=写真)
小泉元首相側近の「原発安全」提言の是非
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140108-00011658-president-bus_all&p=1
プレジデント 1月8日(水)16時15分配信
■「注目が集まったのはよいチャンス」
「小泉純一郎元首相がああいうこと(原発即ゼロ)を言うのは想定していなかった。元首相が問題視した高レベル廃棄物の最終処分場問題は、年末にまとめる経済産業省のエネルギー基本計画案に新たな観点で書き込みたい。小泉発言に意外と注目が集まったのはある意味よいチャンス。もうちょっと前に出ていきたい」
自民党の原発推進派議員でつくる「電力安定供給推進議員連盟」(細田博之会長)の会合で、経済産業省資源エネルギー庁の幹部はそう発言した。
その半月後の12月6日。経産省は総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に「エネルギー基本計画」の原案を提出。そこには原発は「重要なベース電源」であり、現在停止中の原発も安全性が確認され次第「再稼働を進める」と明記されていた。民主党政権が掲げた「原発ゼロ」からの転換が打ち出されたのだ。
小泉元首相の「原発即ゼロ」発言の最大の理由となった最終処分場問題については、自治体の立候補を待つのではなく、国が選定する方法に改める、とされた。分科会案は年内にまとめられ、2014年1月に閣議決定される見込みだ。
候補地選びの変更は、処分場受け入れ地が決まらないため。経産省の外郭団体「原子力発電環境整備機構」が初めて最終処分場受け入れ地を公募したのは02年。応募したのは高知県東洋町だけだった。ところが東洋町では住民の反対運動が高まり受け入れ派の町長が町長選挙で敗北、応募は白紙撤回された。その後、処分場に立候補する自治体は皆無だ。
小泉元首相はプレジデント誌創刊50周年記念講演で、最終処分場として建設中のフィンランドの「オンカロ」(=洞窟、放射性廃棄物を地中深く埋めて10万年後の無害化を待つ施設)を視察した印象をこう語っている。
「10万年持ちこたえられる建造物が果たしてつくれるのか。(略)何が起こるかは、まったく予想できません」。
これに対し、推進議連の細田氏らが噛みついた。オンカロと日本は処分方法が違い、同列に論じるのは誤りというのだ。オンカロは使用済み核燃料をそのまま地下に埋める直接処分方式。一方、日本は、原発施設から出た使用済み核燃料を再処理して高レベル放射性廃棄物とウラン・プルトニウムに分け、後者を燃料として再利用し、放射性廃棄物はガラスと融合してガラス固化体に。それを金属製の二重の容器に入れて、さらに緩衝材の粘土で覆い、冷却のため30〜50年間、中間貯蔵してから地下300メートル以上の深さに埋める計画だ。
細田氏がまとめた「原子力発電の現状と将来」という資料によると、ガラス固化体は直接処分に比べ、体積を4分の1に減らせ、無害化までの期間を10分の1以下に短縮できるという。細田氏は議連で、「容積が小さく、安全だ。爆発したり高熱を発する心配はない。放射性物質も出ない。小泉さんはそういうことを知らないのが問題だ」と強調した。
■英国では稼働停止事故続き「もんじゅ」
だが元日本テレビ解説主幹で、オンカロ、チェルノブイリ、スリーマイル原発を現地取材した科学ジャーナリストの倉澤治雄氏はこう話す。
「オンカロのある地層は安定し滅多に地震が起こらないうえ、過去に観測された最大の地震はM(マグニチュード)4.9程度。それに対し、日本はM6〜7クラスの地震が頻発する地震の巣です。地震でガラス固化体の容器が損壊しないのか。しかもガラス固化体を地下に埋める場合、塩分を含んだ地下水がステンレス製の容器を腐食させ、放射性物質が漏れる危険性もあります。ガラス固化体の放射線量は1本当たり10の16乗ベクレル。生身の人間が近づけば即死します」
ガラス固化体を作る再処理工場についても、東海再処理施設は耐震対策や機器の故障などで07年から処理装置で停止中。青森県六ケ所村に建設中の再処理工場も、当初の1997年完成予定がトラブル続きで、いまだに完成していない。このため現在は英国で再処理してもらっているが、「英国の再処理工場も16年の稼働停止が決まっている」(倉澤氏)。
しかも日本政府は、全量再処理で取り出したプルトニウムを高速増殖炉で再利用する「核燃料サイクル」を基本としているが、肝心の高速増殖炉「もんじゅ」は事故続きで稼働停止したままだ。
原発ゼロか推進かは別にして、原発ゴミが今後も増え続ける。「引くも地獄、進むも地獄」(倉澤氏)の状況が今後も続く。
時事通信フォト=写真
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