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消費者を“脅す”東電の再建計画――一六年までに全七基を再稼働
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140107-00010000-kinyobi-soci
週刊金曜日 1月7日(火)17時25分配信
東京電力が「総合特別事業計画」(再建計画)の見直しについて、年内のとりまとめに向けて急ピッチで作業を続けている。計画の肝となるのは、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働。東電は、再稼働によって経営黒字となり、これを前提に電力料金を値下げするとするシナリオを描いている。だが、再稼働が実現しない場合には「電力料金の値上げもあり得る」(幹部)と、消費者への「脅し」とも言える“強硬論”ものぞく。
再建計画は、二〇一一年八月に成立した原子力損害賠償支援機構法に基づき、東電と支援機構が一二年四月に策定。その見直し案として位置づけられている。
見直しの理由は、現在の計画が一三年四月からの柏崎刈羽原発の順次再稼働を前提とし、一三年度に約九〇〇億円の経常黒字を見込んでいたことだ。しかし、実際には再稼働はめどすら立たず、収支計画に大きな狂いが生じている。それでも東電は、当初計画より一年余り後ろ倒しにした一四年七月に柏崎刈羽原発の六、七号機を再稼働させることに固執し、再建計画の見直しを進めている。
東電側が関係機関に示した内部文書では、驚くべきことに一六年度までに全七基が再稼働すると想定しているのだ。これにより一七年度以降の原発の設備利用率は、東日本大震災前と同水準の五五%台に戻るとの試算まで出しており、事故の反省や反原発の世論などどこ吹く風といった印象だ。
東電の原発の設備利用率は一〇年度、五五・三%だったが、事故の影響で急激に下がり、一二年度でゼロになっている。内部文書では、現在、原子力規制委員会の審査にかかっている柏崎刈羽原発六、七号機が一四年七月に再稼働し、次の申請を目指す一、五号機が一五年春、二、三、四号機が一六年度までに順次再稼働すると想定している。原発の設備利用率は一四年度一八・五%、一五年度三三・二%、一六年度四五・五%と徐々に高まり、一七年度以降は五五・三%で安定すると試算した。
六、七号機だけでは値下げが可能になるまでの収益効果は出ないとみているためだが、その他については原子力規制委員会の審査申請の見通しすら立っていない。こうした東電の姿勢に、地元・新潟県の泉田裕彦知事は、先月六日の記者会見で、東電が再稼働時期を一方的に想定していることについて「何の根拠もない。絵に描いた餅」と批判した。審査に合格したとしても、その後に必要となる地元自治体の了承を得られる見込みは全くないのだ。
こうした再稼働の見通しが立っていない以上、再建計画に盛り込もうとしている再稼働時期は、もはや机上の空論でしかない。さらに、それによってもたらされる電気料金値下げも同様だ。幹部は「再稼働の時期を示すのは、国民感情からいってリスクもある」としながらも「再稼働をやらなくては、東電も立ちゆかないし、消費者への還元(=値下げ)も無理。誰も得をしない」と、本音もにじませる。
また、事故による除染などへの国費投入も見込まれ、東電の負担は圧縮される見通しだ。除染などで出た汚染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設にも、一兆円の国費が投入される方針。住民の帰還に伴い追加的に発生する除染も「公共事業」と位置づけて国費で対応する方向で調整を進めている。一〇兆円とも言われる賠償と除染費用を負う東電にとって、一兆円以上の負担軽減は大きな支援材料になる。
しかし、そうした財源はすべて税金であり、結局は国民負担としてのしかかる。今月一三日には、経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が「エネルギー基本計画」の素案を了承。計画案は、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置付け、原子力規制委員会が安全性を確認した原発の再稼働を進めると明記した。原発の活用が明確になり、電力各社の再稼働に向けた動きを後押しする内容になっている。再稼働を前提に、国民負担による東電支援策が着々と進められているのだ。
(北方農夫人・ジャーナリスト、12月20日号)
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