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亡国の輩よ、「原発ゼロ」の話はやめよう【1】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140107-00011634-president-bus_all&p=1
プレジデント 1月7日(火)11時15分配信 内閣参与(特命担当) 飯島 勲
■社会人は、最低限このレベルの知識を持て!
小泉純一郎元総理の講演について、感想を求められることが多い。私としては、小泉元総理の以前と変わらぬ感性とするどい直感力に敬服する次第である。今後とも日本国民に向け、前向きな発信をしていただけるよう心より望む次第だ。少なくとも小泉元総理の発言を無理やり政局にしようとする勢力の目論見は失敗に終わるだろう。
原発を巡って、日本中で議論が沸騰している。原発を巡るいくつかの論点についてわかりやすく解説をしていきたい。社会人ならこの程度の知識は必要だろうという最低限のレベルまでお教えする。
[1]最終処分場について
フィンランドでは、核廃棄物を地中奥深くに埋めて、天然ウランと同等の有害度になるまでの約10万年間隔離する方法が採用された。この処分場は、洞窟を意味する「オンカロ」と名付けられた。10万年という途方もない時間について、日本も同じ方法を採用しているかのような前提で、批判が寄せられているが、完全なる誤解だ。
日本では、使用済み核燃料は再処理で有害物質を減らしてから埋めるのである。この方法では、有害物質の低減期間が10万年から8000年に短縮される。また、高速増殖炉の使用で低減期間が300年にまで短縮される。
燃え残った有害な物質を保管するときには、ガラス固化体という形にして状態を安定させる。ガラス固化体になってしまえば、埋設された土地が活断層で動いたとしても問題ないといわれている。ガラス固化体に処理された形になると、最初の使用済み核燃料のわずか7分の1の体積にまで圧縮される。
次に、最終処分場の選定の問題である。今すぐに場所を決めなくてはならないかというと、まったく違う。
なぜなら、ガラス固化体が最終処分場に送られるまでの期間は、案外長い時間が必要であるためだ。
原子力発電所で使用した核燃料は発電所でまず数年〜10年オーダーで十分に冷却保管をする。そして再処理工場へ送られる。実は日本では「使用済み核燃料中間貯蔵施設」がほぼ完成しており、そこでさらに最長50年の貯蔵が可能である。
再処理工場に送られた後、高レベル放射能廃棄物貯蔵管理施設(30〜50年の貯蔵が可能)を経て、最終処分場へ送られることになる。
よって原発から出た使用済み核燃料がガラス固化体になって最終処分場に送られるには、100年かかるということもありうる。
最終処分場の場所は、平成20年代に廃棄物について精密調査してある程度選定し、40年代には決定して建設工事に着手する計画になっている。
すでに冷却保管されていることを考えても、現状の計画通り、約20年後に最終処分場があればいい計算になる。
使用済み核燃料の貯蔵やガラス固化体の貯蔵、処分の技術はすでに確立しており、今すぐ最終処分場を探さないといけないような強迫観念にかられる必要はない。「脱原発だ! 」「最終処分場はどうする! 」と焦ってオンカロのような施設を建設するのはまったくのムダであることが理解できるだろう。
一方、20年の余裕があるといっても、住民の理解を得る、自治体の許可を得る、という建設開始までのプロセスを考えると、それほど余裕があるわけではないという見方もできる。だから、この20年という与えられた猶予をどう使うかが問題になる。
「直ちに原発ゼロ」をもし政権が決断しても、すでに原発は福島に限らず存在している。すべての原発を廃炉にしたとしても放射性廃棄物は残る。だから捨て場所は絶対に確保しなければならない。その意味で原発の再稼働に賛成反対を問わず、放射性廃棄物の最終処分場の問題を議論して国民の理解を得ていく意味は大きいのではないか。それこそが政治の責任であろう。
[2]増える貿易赤字
今、日本では原発を再稼働できず、発電を石油やガスの輸入に頼っている。日本の貿易赤字は7兆円に膨らんでいるが、そのうちの3兆6000億円は、原発停止に伴う火力発電のための燃料費増だ。原子力を含めた日本のエネルギー自給率は、東日本大震災前に20%あったものが、4%にまで落ち込んでいる。
産油国は、日本が石油や天然ガスを買わざるをえない事情をよく知っていて、強気で値段をふっかけてくる。ロシアからLNGを輸入できれば、多少値段は安くはなるだろうが、根本的な解決にはならない。消費税が3%増税されることで増える税収は、およそ4兆円と予想されている。増えた国民負担とほぼ同等の金額が海外に流れていってしまう計算になる。一般家庭の電気料金にも大幅かつ断続的な値上げという形で影響が出てくるだろう。
[3]自然エネルギーの可能性
発電コストから考えて自然エネルギー(風力・太陽光)の可能性などまったくない。議論の余地がまったくないのだが、あるかのような発言を菅直人元総理と孫正義ソフトバンク社長が震災後にしたことは記憶に新しい。
菅直人が「国会には『菅の顔だけは見たくない』という人が結構いる。そういう人たちには『本当に見たくないのなら、早くこの法案を通したほうがいい』と言おうと思う」と、総理をやめるときの条件として無理やりに成立させた太陽光発電の強制買い取り法。この法により1キロワット時あたり42円という高額で買い取られ、このうち大半は国民負担となった。
ちなみに、原子力は震災前で約8円。事故の賠償費用などをかなり大きく見積もった20兆円を加えても10円を少し超える程度の金額である。
■原発の30分の1! SBの総発電量
そもそも太陽光発電の技術も進んできてはいるが、JR山手線の内側の面積(約58平方キロメートル)に太陽光パネルをびっちり敷き詰めても原発1基分(100万キロワット)の電力しか生み出せないのが実態だ。自然エネルギーで日本のエネルギー需要を賄うことが不可能なことは簡単にわかるはずだ。
当然、あれだけ大騒ぎした孫正義の自然エネルギー事業も国民の期待にまったく応えられていない。ソフトバンクのメガソーラー事業は、運転開始予定すらわからない計画・建設中を含めたソーラー発電の出力をすべて足しても約20万キロワットしかない。稼働率を考慮すると、実際の発電量は、原発1基分の30分の1程度。お話にならない。
(文中敬称略)
◇
亡国の輩よ、「原発ゼロ」の話はやめよう【2】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140107-00011637-president-bus_all
原発を巡って、日本中で議論が沸騰している。原発を巡るいくつかの論点についてわかりやすく解説をしていきたい。社会人ならこの程度の知識は必要だろうという最低限のレベルまでお教えする。
※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/11634)
[4]原発の安全
世界の8割の原子炉に日本のメーカーが携わっている。さらに言えば、日米の緊密な連携でつくられた原発も多い。主な企業でいえば、日立製作所が米国のGEと、東芝は米国のウェスチングハウスと提携している。
反対派の人々は、福島の事故で日本の原発への信頼感は地に落ちたというが、東日本大震災で日本の技術力への評価が高まった面もある。震源にもっとも近い原発である東北電力の女川原発は、通常運転中の1、3号機、定期検査中で原子炉起動中の2号機のすべてが設計通りに自動停止。福島第1原発の事故を防げなかった最大の原因である電源の確保についても、女川では外部からの送電線5回線のうち1本が無事で、非常用ディーゼル発電機も健全に稼働した。
12年7月には、国際原子力機関(IAEA)の調査団が女川を訪れ9日間かけて詳細な調査を行ったところ、「M9の大きな地震にもかかわらず、驚くほど損傷が少なく、設計時に十分な余裕度があった」と評価された。
トルコや東南アジアなど、地震がよく起きる発展途上国が原発を計画した際、地震がないフランスや米国の原発を使うより、大地震に耐えた日本の原発をモデルにしたほうが、より危険性を低く抑えられるのは当たり前だろう。実際にトルコでは、「原子力に関する日本の技術を信頼している」(トルコ・ユルドゥズ・エネルギー天然資源相)として、トルコの黒海沿岸シノップの原発を日本メーカーが担うことになった。その原発の値段は、他の候補よりもずいぶんと高かったにもかかわらずだ。
■亡国の菅直人が犯した過ち
女川の場合は、地元住民との信頼関係も強く、震災後でも電気が止まらなかった発電所内に避難所が設けられ、最大で360人を収容したという。
「女川原発は建てる前に津波の危険性も考慮して、敷地の高さを上げてもらった。電源の回線も増やしている。福島とは違う。地元のためにも早く再稼働すればいいのに」(地元住民)
という声も根強い。科学的な根拠と技術力に裏打ちされた安全性は今でも健在なのだ。東北電力の成功を見習えば、1000年に1度と言われる規模の災害にも耐えることができる。
[5]菅直人の罪
震災直後には現場に混乱を招き、その後は自分の人気取りにひた走った菅直人が残した傷は、今でも日本を痛めつけている。
震災後の11年5月6日、菅直人総理大臣(当時)が、中部電力に対して浜岡原発を停止するよう要請した。「命令」にしなかったのは、浜岡原発にいかなる不備も落ち度もなく得意の難癖を付けられなかったことに加え、責任を中部電力に押しつけるためだ。
しかし、とりあえずマスコミをたきつけさえすればいいと考えた菅直人は、法的拘束力のない要請という形でマスコミにアピールした。そして、マスコミは何の根拠もない菅直人の目論見にまんまとはまり、浜岡原発は運転停止の憂き目にあった。
浜岡原発は、東海地震が発生した際の震源地に近いと予測されている。女川と同様に「地震はくるもの」と考えてこれまでも準備が進められてきたが、さらに菅直人の言いがかりに応える形で、中部電力は海抜18メートルの防波壁(さらに4メートルの嵩上げ工事中)、加えて、万が一その防波壁を飛び越えた津波にも対応できるよう水密扉を設置した。
菅直人が犯した過ちから回復すべく、他の原発と同様に、1日も早く再稼働することが大事だ。
[6]発送電分離
原発に関連して言えば、無責任なマスコミや政治家が飛びつきやすいのが発送電分離だろう。
第2次大戦直後の昭和26年まで、日本の発電事業は自由競争だった。全国に数多の事業者が乱立して価格競争に明け暮れていた。戦後の混乱期で停電が相次ぐ中、事業者は利益優先で安定的な電力供給を確保できなかったため、全国を9ブロックに分けて各事業者を合併させたのが現在の電力9社体制のスタートだ。合併前の事業者は株主として現在の電力会社の中に面影をとどめている。東京都が東電の、大阪市が関西電力の大株主なのはその例だ。
もし、現在の日本で発送電分離が行われたら、せっかく整えたエネルギーの安定供給を壊してしまいかねない。原発が停止し、企業の経営基盤が揺らいでいる今、電力会社を競争にさらすのはあまりに危険だ。そうでなくとも、諸外国で発送電分離を実施して電力が安くなった例はほぼない。大半は値段が上がっている。
中国(中華人民共和国)の場合、発電は自由化されているが送電は共産党が握っている。共産党の指導に従わない場合、どんなに電気をつくっても送電してもらえないため、発電会社は倒産してしまうという。日本の場合、政治的な問題で送電を止めることはないだろうが、料金体系が送電会社主導になり、結果的に低価格に応じられない発電会社が倒産していき、電力供給が滞るような事態は十分に予想される。
さらに、日本の場合、送電網を狙うIT企業の思惑も忘れてはいけない。すでに太陽光発電で一儲けをたくらんでいるソフトバンクの孫正義だけではなく、楽天の三木谷浩史会長兼社長も送電線を狙っている可能性がある。
■自由化して得をするのは国民でない
電力会社を自由競争の世界に放り込み、自らが公共インフラであるという誇りを捨ててしまったらどうなるか。ソフトバンクや楽天のように営利を追求してしまったら、どうなるか。
私が経営者なら、電気料金を今の10倍にするだろう。電気料金を何十倍にしても電気を使わないと日本人は生きていけない。電力は、他の業種と違って初期投資に莫大なお金がかかるため、ほとんどの企業は参入することは不可能だ。そのため、いくら自由競争をさせても、結局値段を下げることができないばかりか、独占企業が営利を追求することに目覚めてしまうことで、逆に値段がどんどん上がるケースが多い。携帯電話会社がいい例ではないか。3社による競争をしても決して値段が安くなるわけではない。むしろどんどん高くなっている。
電力会社には、これまで以上に自分たちが公共インフラであることを自覚してもらい、安全運転、安定供給、コストの低減に努めてもらうのが1番だ。
[7]原発ゼロについて
エリート揃いの電力会社社員諸君は、震災ではじめて人生の挫折を味わったのではないか。民主党政権から政権浮揚のための悪者にされ、自分たちの会社名を名乗れず悔しい思いをしたと聞く。
やっと世論も冷静になってきた。給料がどんどん減らされ家族も同様に苦しんできたと思うが、しっかり支えてあげてほしい。日本の将来は諸君の奮闘にかかっている。ここで日本が負けるわけにはいかないのだ。
そんな中で、再稼働への方針を曲げない安倍晋三総理の毅然たる態度を断固支持したい。この先、最終処分場の建設地決定など、強制的な手段を選択しなければならない場面もくるはずだ。困難も多いだろうが、現在の姿勢をずっと貫いてもらいたい。
(文中敬称略)
内閣参与(特命担当) 飯島 勲 撮影=奥谷 仁 写真=時事通信フォト
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