http://www.asyura2.com/13/genpatu35/msg/618.html
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「放射線診療への疑問にお答えします」から
http://trustrad.sixcore.jp/tritium-2.html
トリチウムはどうなっているの?
そもそもトリチウムって何?
水素の同位体で三重水素とも呼ばれています。
H-1(陽子一つの原子核からなる。水素の同位体では環境中で最も多い)の原子核に中性子が二つ入っているもの。
H-1の原子核に中性子が一つで入っているのは重水素(D)。
原子炉でのトリチウムの生成
軽水(H-1)を使った沸騰水型軽水炉(BWR)ではDでの中性子捕獲によるT生成の寄与は他の生成過程をに比べると小さく、一つの原子炉あたり2×1013Bq程度が年間に生成されていると考えられます。
再処理工場からトリチウムの計画放出
それぞれの原子炉で生成されたトリチウムが入った燃料棒を扱うために、一つの施設あたりの計画放出量は原子力発電所よりも大きくなります。
六ヶ所村の再処理工場の場合
大気中への放出管理目標値
1.9×1015Bq/y
海洋中への放出管理目標値
1.8×1016Bq/y
大気圏核実験の影響
1960年代半ばには今の100倍程度の量が存在していました(海水中濃度)。
トリチウムの半減期12.3年であるので、大気圏核実験の影響は小さくなりつつあり、自然界に元々あったものと同じオーダーに近づいています。
広島への原爆投下
トリチウムの放出量は1.1×1016Bqと推定されています。
自然での生成
宇宙線が窒素原子を壊すことなどで生成されます。
生成量は0.2〜0.25個/cm2/s程度とされています。
地球の円周は4万kmであり、地球の表面積は5.1×1014m2なので、
地球では毎秒1〜1.3×1018個のトリチウムが作られることになります。
作られたトリチウムは半減期12.3年で減っていきますので、作られる数と減っていく数が等しくなる平衡状態にあると考えられます。
従って、宇宙線によって生成されるトリチウムは地球上で1〜1.3×1018Bq存在しています。
体に簡単に入り込むの?
放射性核種が体を構成する分子に入り込むとき
水の中
水素は水分子を構成する元素であるので、水の水素(H-1)と置き換わることでトリチウムは水分子の中に存在することができます(トリチウム水:HTO)。
体の中での水は入れ替わるので、体の中に取り込んだ後に10日程度で半分になると考えられています。
このように水に存在するトリチウムを自由水形トリチウムと呼んでいます。
体を構成する分子の中
体を構成する分子である有機化合物を構成する水素(H-1)と置き換わることで、トリチウムは有機化合物中に存在することできます。
有機化合物中にあるトリチウムを有機結合型トリチウム(organically bound tritium:OBT)と呼んでいます。
有機化合物中では骨格部分では置き換わった後は外れにくく、外側の部分では置き換わりやすいと考えられています。
その他
トリチウムはトリチウムガスとして存在し得ますが、容易に酸化し、トリチウム水になります。
同位体効果
トリチウムは軽水素よりも有機化合物中で置き換わりにくいと考えられています。
これを同位体効果と呼んでいます。
このために一般に生体内のトリチウムは比放射能(単位物質質量あたりに含まれるトリチウムの放射能)は環境中よりも小さくなります。
一旦置き換わったトリチウムは、同一部位の軽水素よりも外れにくくなりますが、これも同位体効果です。
このため、植物の成長過程では、トリチウムの比放射能が高くなりうることが観察されています(トリチウムを選択的に取り込むという意味ではありません)。
測定法
放射線を計測する方法
液体シンチレーション計測法など
核種の重さを計測する方法
昇温脱離(加熱して得られた脱離ガス中の測定対象物質を計測する前処理法。トリチウムでは存在形態の情報も得られる)などで得られたトリチウムから生成されていくHe-3を質量分析法で計測する方法は時間をかけると感度を上げることができます
モニタリング
福島第一原子力発電所
タービン建屋付近のサブドレン
「原子炉建屋等への地下水流入に対する抜本的対策」 の検討状況について(トリチウムの検出について)
海洋
Cesium, iodine and tritium in NW Pacific waters – a comparison of the Fukushima impact with global fallout
福島県内の上水などのトリチウム
原発事故前
平成21年度の上半期で上水中のトリチウム濃度は、0.57-1.05Bq/l
原発事故後
河川水等の環境放射線モニタリング(トリチウム)調査結果について
環境試料中のトリチウム濃度の分布の広がりが比較的大きいことから、この計測では差異が明確ではない(=「測定値が変動した地点が認められたものの、平常時の全国データの範囲内であった」)としています。
原発事故後の植物中濃度
Concentration of 3H in plants around Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station
測定データの地理的・時期的な分布から東電福島原発事故由来のトリチウムを植物試料の水から検出しています。
また、得られた植物の自由水形トリチウムの濃度から、湿度を考慮し、大気中のトリチウム濃度を推計し、その結果、20km圏外でのトリチウムの吸入での実効線量は保守的な評価で3μSvとしています。
線量換算係数
経口摂取に対する各臓器等価線量と実効線量換算係数を評価期間別・年齢階級別に示しています。
H_3
出典
Database of Dose Coefficients: Workers and Members of the Public
トリチウムのリスクをどう考えるのがよいですか?
外部被曝
トリチウムは壊変時にβ線を放出します。放出されるβ線の最大エネルギーは18.6keVです。このエネルギーの電子は細胞を突き抜けるパワーを持っていません。また、電子のエネルギーとしては医療用X線装置で用いられている加速電子よりも小さく、物質の表面から70μmの深さで与える電離エネルギーが小さいと考えられます。
内部被曝
内部被ばくは摂取量と(経口摂取量からの)実効線量換算係数から推計できます。
実効線量換算係数は対象となる放射性核種の体内での挙動が考慮されています。
それだけではなく、トリチウムの特異性として、DNAに選択的に取り込まれる元素であり、放出されるベータ線の飛程が短く細胞核の平均吸収線量が細胞全体の平均吸収線量よりも大きくなりうることがICRPの出版物でも指摘されています。
線量の推計例(あり得ない想定での推計です)
魚を年間60kg摂取と仮定
魚のトリチウム濃度を福島第一港湾内2,3号、3,4号機取水口間海水分析結果で得られた最大濃度と等しく、それらが有機結合型トリチウムとして存在すると仮定
60[kg/y]×4.7[kBq/kg]×4.2E-11[Sv/Bq]=10[µSv/y]
リスクの大きさは線量から推計できます。しかし…
リスク認知は主観による
放射線に限らずリスクをどう受け止めるかは主観性が高いと考えられています。
主観性が高いとは、リスクの感じ方は人それぞれということを意味します。
他の方がそのリスクをどう考えているのか推測するのは容易ではないと考えられます。
放射線リスクは受け入れがたい
同じリスクの大きさでも、放射線によるリスクは一般の方にとって避けたい気持ちが強いものであると考えられます。
人工の放射性核種による放射線リスクは受け入れがたい
また、同じ放射線リスクでも自然の放射性物質による線量と人工の放射性物質による線量では受け止め方が異なって当然だと考えられます。
人工の放射性核種による放射線リスクでは原発事故由来のものは受け入れがたい
さらに、同じ人工の放射性物質でも原発事故由来かそうでないかで受け止め方が違って当然ですし、同じ、原発事故由来核種でも、原発事故の種類によって避けたい気持ちが異なることが当然ありえると考えられます。
特に福島原発事故由来のものは受け入れがたい
福島原発事故による人々の放射線影響をチェルノブイリ事故と比較する際にも単に放射性物質の環境放出量や線量の違いだけでは論じられないのだろうと思われます。
対話さえ困難
それが受け入れられるかどうかは、リスクが小さいかどうかでは決定されず、価値観の違いが感じられると対話すら成り立たないことがあるでしょう。
このようにリスクの問題を取り扱う場合には、リスクをどう感じるかの主観性の違いに十分に配慮すべきだと考えられます。
リスクをどう捉えるかは、それぞれの個々の方の置かれた状況によっても異なると考えられます。
容易に解決が得られない問題
リスクとどう付き合うかは難問ですが、社会の中でルールを作っていく必要があります。
それぞれの方が納得が得られるようなサポートが求められるところです。
さらに学びたい?
トリチウムの生物影響?
トリチウム生物影響研究の動向
1.低線量放射線の生物影響とトリチウム研究
2.トリチウムの生体影響評価
原子力資料情報室
放射能ミニ講座 トリチウム
トリチウム水の処理法の総説
核融合炉トリチウム水処理システムの研究開発動向
読み物
トリチウムの発見秘話など
生化夜話 第6回:実験材料はビンテージワイン
生化夜話 第7回:3ジョン+1トニー→?
トリチウムの環境動態
阪上正信先生の総説
測定
講座 炉壁材料分析技術VI 7.トリチウム検出技術と定量評価
環境中のトリチウム
飯田 孝夫.トリチウムの環境動態
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