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福島第一原発(2013年11月7日)[Photo] Bloomberg via Getty Images
国民へのツケ回しを見過ごすな!安倍政権が続々打ち出す原発政策と事故処理「3つの落とし穴」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37825
2013年12月17日(火)町田 徹 :現代ビジネス
原発事故の後始末の国民へのツケ回しに向けて、安倍政権が本格的に動き出した。
民主党政権が打ち出した「原発ゼロ」をご破算にして、原発を〈エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源〉として復活させる一方で、無制限だった賠償、除染、汚染水処理、汚染土の中間貯蔵、廃炉などを巡る東電の費用の負担責任に上限を設けて、足りない分を国民負担で穴埋めするという構想だ。
安全を確保したうえでコストが安いのならば、原発は再稼働させるべきだろう。賠償責任は巨額なので、なんらかの形でツケが国民に回ることも避けられないかもしれない。しかし、福島第一の事故で欠陥を露呈した原子力損害賠償保険を是正しないで安全を確保できたとは言い難い。国民負担を最小化する「破綻処理」抜きの東電救済も、間違った政策と言わざるをえない。
野党の追及を避けたかったのだろうか。特定秘密保護法案の採決強行に揺れた臨時国会が閉会した途端、容易には了解を得られそうにない原発・東電政策が続々と飛び出した。
■安全対策は精神論。新設もタブー視しない「原発ゼロ撤回」
その第一は、「原発ゼロ」を撤回するエネルギー基本計画の見直しだ。経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(会長は三村明夫・新日鉄住金相談役)が13日の会合で原案に合意した。
「エネルギー基本計画に対する意見」と題した見直し案は、原発を〈燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に引き続き活用していく、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源である〉と位置付けた。
そして、今後の政策として〈原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国のエネルギー制約を考慮し、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する〉という方向性を示した。
一見もっともらしいが、どのように原発を選別するのか、いくつぐらい必要かには触れておらず、原発の新設さえタブー視しない方針となっている。
そのうえで、〈安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、独立した原子力規制委員会によって世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で安全性が確認された原子力発電所については、再稼動を進める〉と述べ、来春以降にずれ込むとみられている原発の再稼働を着実に進める方針を改めて強調した。
ところが、肝心の安全対策については、〈万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスクを認識し、事故への備えを拡充しておくことが必要である〉と、具体策を何も明記せず、精神論にとどまった。
福島第一原発事故で賠償額が不足した原子力損害賠償保険の見直しに何ら言及していないだけでなく、いざ、事故が起きた時に周辺住民の避難が完了しない段階でベントが行なわれて放射性物質が撒き散らされることを防ぐ危機管理体制が構築されていないと指摘する声の存在も黙殺した内容なのだ。
さらに、使用済核燃料についても、〈世界共通の悩みであり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を着実に進めることが不可欠である〉と、同じく精神論を掲げただけ。耳触りのよい言葉が並んでいるものの、いつまでに、どういう解決をするのか、何ら具体的な対応を打ち出していないのだ。
新聞報道によると、同省はこの案を来年早々に閣議決定して、政府の方針とする考えという。
■負担額に上限設定。破綻処理抜きの「東電救済策拡充」
第二は、東電救済策の拡充だ。12月14日付の日本経済新聞の朝刊によると、政府は月内に、原子力災害対策本部(本部長は安倍首相)の会議を開催して、青天井だった福島第一原発事故処理に関する東電の負担に上限を設ける方針だ。上限は8兆円で、足りない分は政府が肩代わりすることになる。
具体的にみると、東電が負担するのは、被災者への賠償と廃炉作業が中心になり、除染、汚染水処理、汚染した土壌の輸送及びその中間貯蔵、廃炉のためのロボットなど技術・研究開発費の多くは国の負担になるらしい。この国の負担は、いずれ税金として、国民にツケが回されることは必至なのだ。
加えて、政府は、国から東電への資金援助枠を現行の5兆円から2倍の10兆円程度にする方針だ。現在の資金援助は、原子力損害賠償支援機構が交付国債を貸し付ける形で行い、東電は借りた交付国債を現金化している。今後については、東電国有化に伴って原子力損害賠償支援機構が取得した東電株を売却して、その資金を貸し付ける案もあるという。
政府は、東電が巨額の債務負担を抱えて電力の安定供給に支障が出る恐れがあるうえ、「リストラ疲れ」している職員の士気向上のためにも、こうした支援措置の拡充が不可欠と判断した、としている。
現実的に考えれば、賠償、除染、汚染水処理、汚染土の貯蔵、廃炉などの費用は巨額に及ぶ。筆者も早くから、なんらかの形で国が負担を分担することが不可欠だと指摘してきた。そうしたコストの巨大さを「不都合な真実」扱いして、問題を先送りしてきた民主党政権の対応に比べれば、今回政府が決めようとしている方針は評価すべき面がないわけではない。
しかし、そうした公的な肩代わりは、東電を破綻処理して、保有する資産を吐き出させ、最終的な国民負担を最小限にとどめる措置が前提である。その際には、株主責任と貸し手責任の追及も忘れてはならない。
そもそも巨額の事故処理負担を抱えて事実上経営破綻している会社をぬくぬくと生きながらえさせるのは、資本主義の原則にも反する。他の電力会社のモラルダウンを助長しかねないばかりか、国民全体が不公平感を感じないではいられない間違った政策だ。
支援機構が保有する東電株の売却も、再び株主を増やすことに他ならない。つまり、将来の破綻処理のハードルを上げかねない政策だ。絶対に避けるべきだろう。
汚染水処理ひとつをとっても、12日、経済産業省は2013年度の補正予算に479億円を計上したが、今後さらに膨張が避けられないとみられている。また、政府として、中間貯蔵のための用地取得に来年度予算で1000億円を計上するという。原子力規制庁は来春に定員をほぼ倍増しようとしており、480人の増員を要求する方針だ。
加えて、自民党はかねて、除染を公共事業扱いして、予算ばら撒きの口実にする方向を示してきた。これでは、肩代わりするという国費の中身の精査が欠かせない。
■福島県外での最終処分を明記しない「中間貯蔵地選定」
第三が汚染土の中間貯蔵の具体策の問題だ。この点も「不都合な真実」扱いしていた民主党政権と異なり、石原伸晃環境大臣が14日、佐藤雄平福島県知事と会談し、同県内の3カ所を候補地にしたいと要請した。
事実上、帰宅が困難になる被災者の胸の内を考えるとやり切れないが、現実的な解決策としては、こうした方向しかないだろう。これ以上、曖昧な状態で放置することはできない問題である。
ただ、福島県はあくまでも中間貯蔵地であり、最終的な処分場にしないと明記する「県外最終処分の法制化」に、政府が難色を示してきたことはいただけない。これでは、福島県民の信頼を得るのが困難になるだけだ。
ここは、単に30年後に汚染した土を県外の最終処分地に移すだけでなく、20〜25年以内に、そのための最終処分地と処分計画を決定する責任を政府が負うことを明確にする法制も行うべきだろう。
マシンガンのように様々な政策が打ち出されており、丁寧にフォローするのは難しい。が、我々は、どれも問題含みであることを理解し、安倍政権任せにせずに注文を付けていく必要がありそうだ。
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