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原発再稼働への課題[日経新聞]
(1)遅れる安全審査 事業者の能力不足
原子力発電所の安全審査が遅れている。このままでは2013年度内に再稼働にこぎつけられる原発がひとつもなくなる可能性が高い。
今年7月に新しい規制基準が施行され、関西や九州など電力会社5社が14基の原発について安全審査を原子力規制委員会に申請した。当初は「早ければ半年ほど」で審査を終えるとされ、順調なら年内に審査終了、14年の早い段階で再稼働を果たすとの見通しもあったが、大幅に遅れそうだ。
11月半ばの規制委会合で田中俊一委員長は「何も出てこなければ、審査のしようがないところがある」と述べた。審査の遅れの大きな要因は、電力会社が規制委の求めに応じて必要な資料を提出できないことにある。
申請中の14基のうち、12基は三菱重工業製の加圧水型軽水炉(PWR)だ。事故時の原子炉の状態を予測する安全解析など専門性の高いデータづくりに関して、電力会社が自前ではできず、作業が三菱重工に集中しているとみられる。
審査開始前は、規制委側の能力不足が指摘され、円滑な再稼働ができるかが取り沙汰された。しかしふたを開けてみれば、再稼働の日取りを制約するのは事業者側の人的、技術的な能力不足であることが露呈した格好だ。
規制委の姿勢に批判的な見方もある。岡本孝司・東京大学教授は「安全はシステム全体でとらえるべきだ。ひとつの対策導入が全体の安全を下げる可能性がある」として、緊急時に使うフィルターベントの設置など対策がハードウエアに偏りがちなことを問題視する。
(編集委員 滝順一)
[日経新聞12月10日朝刊P.32]
(2)断層調査が高い壁 研究蓄積は不十分
原子力発電所の再稼働では断層調査が高いハードルだ。原子力規制委員会の専門家会合は11月、関西電力・大飯原発(福井県)の敷地内にある断層が「将来活動する可能性のある断層等には該当しない」と「シロ」判定を下した。調査開始からほぼ1年かかった。
規制委は昨年10月、関電・大飯、同・美浜(福井県)、日本原子力発電・敦賀(同)、日本原子力研究開発機構・もんじゅ(同)、東北電力・東通(青森県)、北陸電力・志賀(石川県)の6カ所について敷地内の断層調査に乗り出した。以前から活断層の疑いが指摘されていたためだ。
結論に至ったのは大飯のほか、敦賀で「活断層である」と判断しただけ。残り4カ所では専門家の議論が収束せず結論を持ち越すか、本格的な現地調査に入れないでいる。
大飯では、今度は安全審査のなかで敷地周辺の断層の連動が問題視され、審査が遅れている。断層の調査には深いトレンチ(試掘溝)を掘るなど現地調査に時間がかかる。規制委が決めた新基準では、少なくとも「12万〜13万年前」に遡って活動性を判断する必要があるが、判断材料となる地層が残っているとは限らない。
「活断層の研究の本格的な開始は1960年代」(奥村晃史・広島大学教授)と意外に歴史は浅い。地形や地質、地震学などの知識を総合する必要があるが、活動性を予測する科学的根拠を明確に示せるほどの蓄積があるとは言えない。
不確実性が高いなかでリスクをどうとらえるか。専門家でも見方が分かれがちだ。
(編集委員 滝順一)
[日経新聞12月11日朝刊P.29]
(3)地元との安全協定 役割明確化が急務
原子力発電所の稼働には地元の理解が必要だ。電力会社が立地自治体と結ぶ「安全協定」には法的な拘束力はないが、協定に基づく地元の了解が事実上、稼働を制約する。
福島第1原発事故を受けて重点的に防災対策を進める自治体が従来の「8〜10キロ圏」から「30キロ圏」に広がった。関係する自治体が15道府県45市町村から21道府県135市町村に増えた。対象人口は約480万人。
防災計画づくりは原則として自治体が担う。立地自治体で組織する原子力発電関係団体協議会は9月、県境を越える避難ルート確保や食料・物資調達に関して、国との役割分担の明確化などを原子力規制庁に要請した。国が自治体を支援する体制が欠かせない。
また防災地域の拡大に伴い、九州電力の玄海原発(佐賀県)周辺30キロ圏内の17市町が同社と安全協定を結ぶなど、周辺自治体と電力会社の新たな協定締結が進む。ただ立地自治体と同等の強い発言権を求める周辺自治体もあり、話し合いが円滑に進まない例もある。
フランスは2006年制定の「原子力安全透明化法」に基づき「地域情報委員会」を設け、政府や電力会社と地域のコミュニケーションの場としている。委員会は地方議員や有識者だけでなく、環境保護団体や労働組合の代表者も参加し多様な声を聞く仕組みになっている。
日本では法的裏付けなしに協定が既得権化しており、それが安全向上につながる保証もない。「自治体の役割を公式の制度として位置付けることが必要」と城山英明・東京大学教授は指摘する。
(編集委員 滝順一)
[日経新聞12月12日朝刊P.24]
(4)放射性廃棄物の処分 地下深部軸に検討
原子力発電には中長期的に道筋をつけねばならない重い課題がいくつかある。そのひとつが放射性廃棄物の処分。なかでも難題は使用済み核燃料の再処理後に残る「高レベル放射性廃棄物」だ。
政府は「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を2000年に施行。同法に基づき、電力会社が中心となって処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。
NUMOは、放射性廃棄物を固めた「ガラス固化体」約4万本を収める「地層処分場」を300メートル以上深い地下に建設する計画で、02年から関心のある自治体を公募してきた。高知県東洋町など複数の自治体が応募の意向を示したものの、住民の反対などで調査に入れた例はひとつもない。
資源エネルギー庁はこれまでの取り組みを抜本的に見直す考えで、7月に放射性廃棄物ワーキンググループ(委員長・増田寛也・前岩手県知事)を立ち上げ、新体制への切り替えを議論中だ。
処分法には(1)地上での長期間保管(2)海洋底下処分(3)宇宙処分――などもありうる。しかし、技術的な蓄積があり信頼性が最も高い手段として「地層処分が世界標準になりつつある」と原子力安全研究協会の杤山修・処分システム安全研究所長は言う。
フィンランドやスウェーデン、フランスなどが地層処分場を建設ないし計画中だ。米国ではネバダ州ユッカマウンテンの処分場計画をオバマ大統領が中止し、いちから適地探しをやり直す。その間は使用済み核燃料を地上で保管する計画だ。
(編集委員 滝順一)
=この項おわり
[日経新聞12月13日朝刊P.29]
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