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内部被ばくがいかに軽く見積もられているか。
以前から気になっていたのですが、内部被ばくについてあまりに軽く見積もることが行われていると思います。自分自身も一度間違った解釈をしていたものがあったので、それをここで述べておきたいと思います。
その例とはかなり有名な「チーム中川」による記事の一つです。まず、該当の記事を引用します。
http://tnakagawa.exblog.jp/15135529/ より部分引用:
【内部被ばくの見積もり(I-131 の場合)】
内部被ばくが実際にどの程度の影響があるのか、という質問が多いので、それについてご説明します。
私たちは、大気、大地、宇宙、食料等からも日常的に放射線を浴びています。これを「自然被ばく」といいます。放射性物質を含む水や食物を体内に取り込むと、体内の放射性物質が、体内から、放射線を発します。この日常的な水や食物からの内部被ばくは、主にカリウムによるものです。
カリウムは、水や食物などを通して、私たちの体の中に取り込まれ、常に約200g 存在します。その内の0.012%が放射能を持っています。すなわち日常的に360,000,000,000,000,000,000 個の“放射性”カリウムが、体内に存在しています。
“放射性”カリウムは、体内で1 秒間当たり6,000 個だけ、別の物質(カルシウムまたはアルゴン)に変わります。これを「崩壊」と呼んでいます。そして、崩壊と同時にそれぞれの“放射性”カリウムが放射線を放出します。これが内部被ばくの正体です。1 秒間あたり6,000 個の崩壊が起こることを、6,000Bq(ベクレル)と言います。
例えば今、“放射性”ヨウ素が、観測によって各地で検出されています。その“放射性”ヨウ素が含まれた水を飲むと、内部被ばくが起こります。この影響はいったいどれくらいでしょうか?
福島原発から約60km離れた福島市の18 日の飲料水に含まれていたヨウ素の崩壊量は、最大で1kg あたり180Bq(ベクレル)でした。1 秒間に180 個の崩壊が起こっているということです。ヨウ素が甲状腺に取り込まれる割合を20%とし、その放射能が半分になる日数を6 日と仮定できます。現在の福島市の水を毎日2 リットル飲み続けると、約720Bq(ベクレル)の内部被ばくを受けることになります。
(*ここに元記事ではベクレルの計算式が載っています。)
現在の福島市の水を毎日2 リットル飲み続けると、720Bq(ベクレル)の内部被ばくを受けることになります。これは、先ほどのカリウムによる日常的な内部被ばく(6,000Bq[ベクレル])の8 分の1 以下です。もちろん、取り込まれ方や崩壊の仕方はカリウムとヨウ素で異なるので、正確な比較ではありませんが、今観測されている放射性物質の影響をこのように見積もることができます。
(*部分引用終わり)
次に、以前自分が誤解して書いた文章を挙げておきます。カリウム40による被曝よりも放射性ヨウ素による内部被ばくの方がひどいことに変わりはないのですが、どういうわけかひどい勘違いをしています。どこが勘違いか気がつかれるでしょうか。
以下引用開始:
しかし、これは明らかに欺瞞なのです。なぜなら、カリウムは人間の体内にほぼ平均して広く分布するのに対し、ヨウ素は甲状腺に主に取り込まれ、甲状腺に集中的に分布するからです。人の甲状腺の重さはだいたい20グラム程度であるということです。そうであれば仮に720ベクレルのヨウ素の1割が甲状腺に集中するとして、15グラムに72ベクレルとなります。これを60キロに直すと、72の4000倍である288000ベクレルにもなるのです。「正確な比較ではありませんが、今観測されている放射性物質の影響をこのように見積もる」ことが出来るとするのはあまりにも現状を偽っていると考えます。
このことに関し、カリウム40による放射線の影響がどのぐらいになるかを幾つかの仮定を置いて計算をしてみました。それが資料10「カリウム40での内部被ばくがあるので、それと同じぐらいの内部被ばくは影響がないという主張のウソ」です。かなり安全側、つまり、カリウム40からの放射線がその周りの細胞に当たる量が多くなるように仮定をした結果でも、ある一つの細胞が体内にあるカリウム40からの放射線を受けるのは100日に一回あるかないかになるのです。これは、一個の細胞がその周囲に複数あるだろうカリウム40の原子から重複して放射線を受ける影響を見ていませんから、実際にはこれよりもカリウム40による影響は多いのですが、せいぜい一個の細胞が一日に受けるカリウム40からのガンマ線は数個程度のはずです。そして、プルトニウムのエアロゾルが肺に吸い込まれた場合は、その微粒子の周囲の細胞が長期にわたって集中的に繰り返しアルファ線を浴び続けるので、カリウム40よりもずっとひどい影響を受けるはずです。
(*以上引用終わり)
まず、60キロという数字が唐突に出てきてしまいます。大人の体重を仮に60キロとしています。これはまあ、いいのですが「人の甲状腺の重さはだいたい20グラム程度であるということです。そうであれば仮に720ベクレルのヨウ素の1割が甲状腺に集中するとして、15グラムに72ベクレルとなります。」の部分は今読んでも何でこんなことを書いたのかと思う文章です。本来、「15グラム」は「20グラム」でないといけないのです。まず、ここが非常に初歩的な勘違いです。しかし、より本質的な勘違いを自分の上の文章はしています。それは、「仮に720ベクレルのヨウ素の1割が甲状腺に集中するとして」の部分です。そして、この部分こそ、元の「チーム中川」によって書かれた記事の巧妙なところなのです。自分は720ベクレルが全身に分布していると考えて、その1割が甲状腺にあると仮定して、そこから甲状腺と同じレベルの被曝が全身にあれば全身被曝量がどの程度になるかを計算しています。しかし、720ベクレルはもともと甲状腺の被曝量なのです。このことが「チーム中川」の記事ではぼかされていますが、ベクレルの計算式を見ると、一部に”180×2×0.2” とあることから、180は飲料水に含まれていたヨウ素の崩壊量の最大で1kg あたり180Bqのことであり、2はそれを2リットル毎日飲むということで、0.2はヨウ素が甲状腺に取り込まれる割合を20%としていることから来ています。
本来は、次のように考えるべきなのです。カリウム40による6000ベクレルと言うのは全身被曝量です。これと比べるのですから同じように全身被曝量で比べるべきと考えがちですが、ヨウ素は実を言うとほとんど甲状腺に集まるので、もともと全身被曝線量を考えるよりも甲状腺だけの線量を考えるべきなのです。だからこそ、「チーム中川」の記事でも甲状腺の被曝量のみが述べられているのです。
では、放射性ヨウ素による甲状腺に対する720ベクレルというレベルの被曝線量と比べて、カリウム40による甲状腺への被曝線量がどの程度かを計算します。カリウム40は全身被曝量が6000ベクレルであり、それがほぼ全身に均一に分布しているので、甲状腺に分布している分量は、20グラムは60キロの3000分の1ということから、2ベクレルとなります。放射性ヨウ素による甲状腺被曝量が720ベクレルで、カリウム40による甲状腺被曝量は720ベクレルですから、300倍も違うのです。これを「チーム中川」の記事では「「正確な比較ではありませんが、今観測されている放射性物質の影響をこのように見積もる」ことが出来るとしていますが、自分の最初に書いた記事同様、あまりに軽く放射性ヨウ素による被曝を見積もっていると思います。
なお、放射性ヨウ素の甲状腺の被曝線量が720ベクレルであり、これが全身の2割なので、全身被曝線量はこの5倍の3600ベクレルとなります。これとカリウム40の全身被曝線量6000ベクレルを比べてしまうと放射性ヨウ素の方が被曝程度が軽いことになってしまいます。しかし、これは明らかに実態を表していないのです。たとえば電気ストーブで暖まるときに、ある程度離れて体全体をストーブにあてれば心地よいですが、ストーブの熱を体の一部へ集中してしまうと心地よいどころかやけどをしてしまいます。これと同じで、放射性ヨウ素は甲状腺に集中するので、その集中した部分での被曝線量で危険性を判断する必要があるのです。
放射線の危険性の評価には、このほかに実効線量とか預託線量とかいろいろな用語があり、分かりにくいこと甚だしいと改めて思いました。こういった複雑さが被曝被害を分かりにくくしていると思います。
2013年12月02日23時10分 武田信弘 ジオログのカウンターの値:39661
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