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昨年6月、首相官邸前で行われた脱原発デモ。そろそろ、冷静にエネルギー政策を考えるべきだ
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20131118/dms1311180723000-n1.htm
2013.11.18
★(6)
「脱原発」をめぐる議論で、不思議に思うことがある。「脱原発が善、その他が悪」という、勧善懲悪の二分論で感情的に語る人がいることだ。社会問題があれば、普通なら「協力」を考えるが、こうしたやり方では「対立」が生まれる。
ここで私の個人的な、悲しい体験を紹介したい。知人に雑誌経営者がいる。福島原発事故の後で、放射能と原発をめぐる危険な情報を強調して、デマといえるような話をネットや雑誌で流し続けた。
約1年前、私は次の忠告をした。「原発について、どのような意見を示しても構わないが、デマや嘘への社会の目は厳しい。間違った情報を流すと身を滅ぼす」と。そのころ、一部ジャーナリストと周辺の人々が、誤った情報を流し続けて、社会的に糾弾されていた。
ところが、この経営者は逆に私を批判した。「黙ることは『原子力ムラ』を利する」「あなたは原発推進なのか。倫理的に問題だ」。私はあきれ、この人から離れた。そして、懸念通りのことが起こった。
「福島に人は住めない」とか「関東で子供の鼻血など健康被害が出ている」など、この雑誌経営者の言葉や記事は、より過激で間違ったものになった。雑誌を応援していた人々は驚き、距離を置く人もいた。
福島の人が記事に怒り、東京の関係者に連絡して雑誌への広告を止めてもらうこともあった。1年が経過して風の便りに聞くと、この雑誌の経営は厳しいままのようだし、その質も見方が偏って面白くなくなっていた。
残念なのは、この雑誌の経営者は善意で行動しているつもりなのに、周囲に不幸を広げてしまったことだ。同じような放射能パニックを、多くの読者の方が、原発事故後に経験したかもしれない。
感情の影響が大きくなりすぎると、理性的な現実の認識を歪める。もちろん、原発事故は衝撃だった。しかし、その後に起こった原発とエネルギーをめぐる議論では、恐怖や政府への怒りという人々の感情の影響が目立ち、冷静さ合理性を欠く面が多い。
けれども国や電力会社といった原発の推進者も、感情で動いている面があった。「安全神話」を広め、自ら信じ込み、事故の準備を怠り、原発に反対する意見を黙殺した。それらが一因で、福島原発で事故が起こったのだ。
原発事故から2年半が経過した。どのような考えの人も冷静になっていいころだ。今のエネルギー政策と福島事故対策の状況を一言でまとめると「混乱」だ。あらゆる場面で、それぞれの立場の人が主張を重ねるばかりで、その結果、何も決まらない。対立が目立つ。
それではいけない。可能な限り、原子力と放射能をめぐる事実を共有し、冷静に合意を重ね、成果を出さなければならない。その先に、多くの人が利益を得られるエネルギー体制の確立と、原発事故からの復興がある。 =おわり
■石井孝明(いしい・たかあき) 経済・環境ジャーナリスト。1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌記者を経て、フリーに。エネルギー、温暖化、環境問題の取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。
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