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作業員も逃げ出す「フクイチ」の危機的泥沼状態
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131115-00010000-fsight-soci
フォーサイト 11月15日(金)12時28分配信
「国が前面に」という安倍晋三首相の号令一下、東京電力福島第1原子力発電所(フクイチ)の汚染水処理対策事業が動き始めたように見える。2020年の五輪開催地を決めるアルゼンチン・ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会を4日後に控えた9月3日、政府は汚染水処理対策に総額470億円の財政出動を決めた。具体的には地下水を遮断するための「凍土壁」に320億円、放射性物質除去装置の増設に150億円を投入する計画で、10月上旬に事業者の選定も終えた。
ただ、仏作って魂入れず――。カネは出しても、汚染水対策を含めフクイチの廃炉に立ち向かうリーダーは不在のまま。士気の低下が著しい東電の組織崩壊にも歯止めがかけられない。
「首相の『国が前面に』発言以降、汚染水対策を決めるのが東電なのか、エネ庁(経済産業省資源エネルギー庁)なのか、規制委(原子力規制委員会)なのか。現場の指揮系統がますます混乱している」
とフクイチ支援に携わる大手重電メーカーの幹部は危機感を募らす。
■山積する難題
「汚染水は完全にコントロールされている」と世界に向かって大ボラを吹いた安倍発言も奏功したのか、IOC総会で悲願の東京五輪開催が決定。その4日後の9月11日、政府は汚染水処理への新たな取り組みとして、「凍土方式による遮水壁(凍土壁)の設置事業」と「高性能多核種除去設備の実証事業」を手がける事業者を、それぞれコンペ方式で公募(つまり事実上の入札を実施)すると発表した。同24日に応募を締め切り、選考の結果、10月9日に凍土壁の事業者を、翌10日に除去設備の事業者を相次ぎ発表した。
政府発注といっても通常の公共事業と異なり、この汚染水対策の2つの事業は「研究開発案件」と位置づけられている。これは「国が前面に」を安倍首相が急きょ決めたために国庫からの支出に法的な裏づけがなく、苦肉の策として12年度補正予算に計上された「廃炉の研究施設などの整備費用」(850億円)を支出の名目にしたためだ。
実はこの「研究開発案件」という縛りが、汚染水対策をねじ曲げてしまったきらいがある。政府の汚染水処理対策委員会(委員長=大西有三関西大学特任教授)は今年4−5月の会合で 、ゼネコン4社から地下水流入を抑制する対策工法の提案を受けた。
鹿島が「凍土壁」、大成建設が亀裂の入りにくい「粘土壁」、清水建設が「建屋止水」「周辺 地下水位低下対策」などの組み合わせ、そして安藤ハザマが「グラベル連壁(砕石による透水性の壁)」をそれぞれ提案したのだが、
「結局、どの工法が最も効果的なのかということより、大規模工事で前例のない工法ということで『凍土壁』が急浮上した」
と、ある大手ゼネコンの首脳は解説する。5月末に処理対策委は「有力な対策」として凍土壁の採用を決めた。
凍土壁は、トンネル工事や地下タンク設置などの際の遮水対策として、大型のものでも長さは数十メートル、凍結期間は長くても1年程度の施工実績はあるとされる。だが、全長1キロメートルを超える規模の工事(鹿島の提案では、フクイチ1−4号機の周囲1400メートルに1500本超の凍結管・測温管を埋め込み、凍土壁を構築する)での採用は「世界でも例がない」(業界関係者)。冷却に使う大量の電力をどう調達するか、数十年は要するとされる廃炉作業期間を通じて凍結できるのか、放射線量の高い現場のため作業員を確保できるかどうかなど、難題が山積している。
■不自然なコンペ運営
政府が9月に実施した事業者コンペで、凍土壁の設置業者に選ばれたのは「鹿島・東京電力」コンソーシアム(企業連合)である。同コンソーシアムには事業費補助の名目で今年度135億9400万円(上限)が支給される。
実は、この事業者コンペに応募したのは鹿島・東電連合のみ。他のゼネコンはそろって参加を見送った。ライバル各社にとって技術的に応札が無理だったかというと、そんなことはない。
凍土施工の国内最大手は環境工事専門会社の精研(大阪市)で、約8割の圧倒的なシェアを持つ。それに次ぐのは鹿島の子会社、ケミカルグラウト(東京・港)で、シェアは約2割。凍土施工の国内市場はこの2社がほぼ押さえている。
地盤凍結工法は、19世紀に英国ウェールズの鉱山用立坑施工で初めて採用され、欧米で普及。国内では、1959年に精研が京都大学防災研究所と共同基礎研究を開始、62年に大阪府守口市の水道管敷設工事で同社が初めて実用化した。その後、精研は清水建設や西松建設、前田建設工業をはじめ多くのゼネコンと組んで、東京湾横断道路のトンネル工事などで凍土施工を手がけた。
今回のフクイチ汚染水対策の事業者コンペでも、「精研の出番」との声がゼネコン業界で少なくなかった。しかし、「被曝の可能性が高い危険な現場に社員を出せないという経営判断」(業界関係者)で、精研はゼネコンからのアプローチを断ったといわれる。その結果、もう1つの凍土施工会社ケミカルグラウトを傘下に持つ鹿島が東電とコンソーシアムを組んで受注に至った。
ゼネコン各社がそろって凍土壁設置事業のコンペ参加を見送ったのはこうした経緯からだが、135億9400万円という大型プロジェクトが事実上無競争で落札されたことについては、業界内外から批判が沸き起こっている。
「アルジェリアの高速道路工事で数千億円規模の損失を抱える鹿島の救済策ではないか」(準大手ゼネコン幹部)
といったウワサが飛び交ったほか、
「あふれる汚染水は東電の起こした事故が原因であり、本来なら発注側に回るべきなのに受注側に名を連ねている」(業界担当アナリスト)
と、コンペ運営の不自然さを指摘する声もあった。
■海外企業からも集中砲火
政府のコンペ運営に対する批判は、もう1つの「高性能多核種除去設備の実証事業」でも噴出している。
そもそも、今回コンペ対象になったこの除去設備は、東芝が3.11後に開発を進め、現在3系統が試運転中の「高性能多核種除去設備(ALPS=Advanced Liquid Processing System、トリチウム以外の62種の放射性物質を除去できる)」の機能を補完・増強する役割を担う。
ALPSは本来なら昨年秋に稼働する予定だったが、開発が遅れて試運転が今年3月にずれ込み、さらに6月には水漏れが見つかって8月に全面停止。ようやく9月に試運転を再開した。フル稼働は早くても11月中と当初計画より1年遅れになっており、「汚染水処理の足を引っ張る元凶」とまでいわれている。
「ALPS2」または「第2アルプス」と呼ばれる新型の除去装置の入札には国内外から14事業者の提案があり、その中から東芝、日立GEニュークリア・エナジー、東電の3社コンソーシアムが選ばれた。日立GEニュークリア社は、日本国内での原発事業を手がける日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社で、80.01%を出資する日立が主導権を握っている。3社コンソーシアムには、事業費補助の名目で今年度69億7400万円(上限)が支給される。
泥沼化している汚染水問題の局面打開のため、東芝と日立は、コンペ前に両社の保有する技術を融合して新たな除去装置を開発する方針を決定した。両社が提案した新型除去装置は、放射性物質を取り除く工程を装置内で東芝方式と日立方式に分岐させ、それぞれ1日あたり250トン、計500トンの汚染水を1系統で処理できる見込み。
「現行ALPSの2倍の除去能力を持つ」
と関係者は胸を張る。
これに対し、
「東芝・日立が組んで応募することが明らかになった時点で、コンペは出来レースと理解した」(大手商社関係者)
と複数の関係者が異口同音に指摘する。実際、コンペに参加して落選した仏原子力大手アレバ社のドミニック・モックリー上席執行副社長は、
「海外企業が提案するには入札期間が短すぎた」と不満を表明している(11月5日付日本経済新聞朝刊)。
確かに、今回のコンペは9月11日に発表され、24日に応募が締め切られ、その期間は2週間に満たない。しかも、応募希望者への説明会は17日開催で、締め切りまで残りわずか1週間。これでは「コンペは形式上のもの」「開かれた市場のアリバイ作り」などと非難され、外国企業から「相変わらずの鎖国状態」と集中砲火を浴びるのも無理はない。
「安倍政権は、汚染水問題の抜本解決よりも有力企業に恩を売ることばかり考えている」(大手水処理メーカー幹部)
との指摘も説得力を持つ。
■「焼け石に水」の抜本改善策
一方、産業界の風向きも微妙に変わってきている。例えば、景気対策優先で財政出動を切望していた建設業界はここに来て、岩手や宮城の復興事業をはじめ道路、橋梁などの老朽インフラ対策、さらに東京五輪関連の施設整備など、「仕事はヤマほどある」(都内の中堅ゼネコン幹部)状況。人手不足による労務費高騰で工事利益率が悪化しているため、採算の見込めない公共工事を辞退する業者が相次ぎ、全国的に入札不調が頻発している。
そんな業界にとって、フクイチでの仕事は以前にも増してモチベーションを見いだしにくい「悩ましい受注案件」になっている。フクイチの作業に従事していた建設労働者は劣悪な職場環境に愛想を尽かし、労賃の相場が跳ね上がっている他地域に次から次へと流れている。
東電の広瀬直己社長は、11月8日の記者会見で労働環境の抜本的改善策を発表。作業員の日当を1万円増額するほか、多重下請け構造による賃金の「中抜き」に対する監視強化、大型休憩所や給食センターの新設などを盛り込んだ。
政府と東電はフクイチで働く年間約1万2000人の要員計画を打ち出していたが、年間被曝量の上限に達するベテラン作業員が職場を離脱しているうえに、前述のような景気好転による他地域への流出が重なり、要員計画は事実上破綻。広瀬が発表した労働環境の抜本的改善策も“焼け石に水”となる可能性が高い。「国が前面に」というなら、東電の破綻処理をはじめ経産省、原子力規制庁など関係機関を網羅した体制の再構築を一気呵成に断行し、さらに担当大臣を現地に常駐させて全権を委ねる非常時体制を敷くべきだろう。それほどの覚悟がなければ、「国が前面に」は看板倒れになることは避けられない。フクイチの危機は少しも収まってはいないのだから。(敬称略)
ジャーナリスト・杜耕次
Foresight(フォーサイト)|国際情報サイト
http://www.fsight.jp/
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