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「子どもたちの緊急避難に関する請願書」を提出する〈ふくしま集団疎開裁判〉の支援者たち(11月13日、参議院議員会館にて) 〔撮影:三上英次 以下同じ〕
福島県:小児甲状腺がん、検査結果の「59人」が意味すること
http://www.janjanblog.com/archives/103500
2013年 11月 14日 10:09 三上英次
12日に発表された「福島県県民健康管理調査」によれば、原発事故当時に18歳以下だった子どもの〈小児甲状腺がん〉が、前回8月発表時の18人からさらに増えて26人となった。〈小児甲状腺がん〉はもともと「100万人に1人」と言われるほどの極めて珍しい病気である。その疑いのある者33人(うち1人は良性)と合わせ、今回、「59人」という数字の大きさが、いま改めてクローズアップされている。
この数字は、検査対象36万人のうち、9月末日までに検査を終えた22万6千人中の〈26人/33人〉であるが、「小児甲状線がんの確定者とその疑いのある者」は「3人/7人」(2013年2月)から「9人/15人」(同年6月)、「18人/25人」(同年8月)、そして今回の「26人/33人」と増え続ける一方である。
これまで、福島県での「小児甲状腺がん」の増加について、福島県立医科大学の担当者は「検査技術が向上した(から、これまでなら見つからなかったガンがみつかっているだけ)」「チェルノブイリでは、小児ガンの発生は事故から4年後」、したがって「福島原発事故が原因とは考えられない」等のコメントを繰り返して来た。
けれども、その「検査の精度」とはどの程度のものなのか、今年9月に出された『福島原発事故 県民健康管理調査の〈闇〉』(岩波新書)には、「検査の精度は高いのか」(P143〜145)の一節で次のようなエピソードが紹介されている。
福島県二本松市の主婦が長男の一次検査に立ち会った時のこと、「検査技師は甲状腺のエコー画像が映るモニターを見つめて何かを測っている様子だったが、特に説明はなく、2分ほどで検査は終わった」。
母親はその様子を不審に思い、別の病院で改めて甲状腺検査を受けたところ「7ミリメートルの結節」が見つかり、病院からは再検診のために3ケ月後に来るように言われる。ところが、福島県立医大から届いた判定結果はB判定(結節が5.1ミリメートル以上)ではなく、それよりワンランク下のA判定(結節が5ミリメートル以下)であった。そして、次回の検査は2年先となる。
不安を覚えた母親は、県立医科大学が行なった長男の画像と検査レポートを開示請求すると、そこに書かれていたのは「1.6ミリメートルののう胞」だけで、「しこり」は「なし」の記載になっていたという(同書P144)。
そのように2分程度の“検査”で終わり、そのあとは2年間も“放置”されるという県民健康管理調査の実態は、およそ「検査技術が向上したおかげで、これまでは見つけられなかった小児甲状腺が見つけられるようになった」とは真逆のことが福島で起きているかのごとくである。
さらに、チェルノブイリ原発事故では事故の年から小児甲状腺がんは見つかっており、「事故後から4年で急増し始めたという事実」からは、もう一つ注意すべきことがある。たとえば、もし、本当に福島県立医科大学担当者らが言うように、27年前よりも検査技術が高まって、「それだけ早く小児甲状腺がんが見つかりやすくなった」というのなら、私たちは次のことを考えなければいけない。すなわち、彼らによれば、1986年のチェルノブイリ事故当時は(検査技術が低く)〈事故から4年後〉にようやく原発事故が原因の小児甲状腺がんを検知できたということになるが、それならば、技術の進んだ今なら、それよりも早く、たとえば〈事故から3年後〉ぐらいに原発事故と因果関係のある小児甲状腺がんを発見することができるはず…である。
恐ろしいことに、あと4ケ月後の2014年3月には、福島原発事故から3年を迎える。それ以前の小児甲状腺がんは「原発事故の影響ではない」と福島県立医科大学グループは言うかもしれないが、2014年3月以降に発生する小児甲状腺がんは(検査技術も向上して“早期”発見が可能になったので)「原発事故の影響である」と彼らは認めてもよいはずだか、さて…その時に彼らは何と言うだろうか。
◇
さらに、この〈小児甲状腺がん〉の増加は、私たちに別の重大な危険を知らせている。それは、福島県や国が、この〈小児甲状腺がん〉の増加ただ1点にのみ人々の注意を引きつけ、その他の健康被害について表に出さないようにしているのではないかという疑問である。
その根拠は、1986年のチェルノブイリ原発事故での健康被害に関するIAEA(国際原子力機関)のレポートだ。IAEAは別名“国際原子力推進機関”――早い話がWHO(世界保健機関)等を陰であやつる“原子力マフィア”だが、そのIAEAは数ある健康被害の中で、「小児甲状腺がん」のみを、原発事故から10年後に被曝による影響として認めたのである。そういった過去の経緯からすると、おそらく日本政府も「原発事故による健康被害として、小児甲状腺がんだけは、世間の注目を浴びるのはやむを得ない。だから、とりあえずは小児甲状腺がんの数値だけ公表しておき、その代わり、それ以外の健康被害に関するデータは一切おもてに出さず、出来ることなら、そもそも、その検査すらしないでおこう」と考えているのではないかということが推察される。
しかし、原発事故による健康被害は、単に〈小児甲状腺がん〉だけにとどまるものではないことは、たとえば、ベラルーシの放射線汚染地区に住む数千人について10年にわたって研究を続けたバンダジェフスキー博士の論文などで明らかだ。
「原因と結果を分析すると、高頻度に見られる病理学的変化や疾患、とくに腫瘍や心血管系障害を引き起こす主因が放射性元素であることがわかる。それは1986年のチェルノブイリ原発と、それ以前から地球の各所で何度もおこなわれた核爆発によって環境中に放出されたものと考えられる。大量の放射性元素が数百万もの生命を、現在のみならず、将来にわたっても脅かし続ける」(バンダジェフスキー著 『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響』P7より)
「放射性セシウムが人体の臓器や組織に取り込まれると、明らかな組織的代謝的変化が起こり、個々の臓器の異常と生物全体の疾患を伴うようになる。放射性セシウムは、重要臓器や組織に侵入するので、体内にセシウムが少量でも取り込まれると、生体にとって脅威となることは避けられない」(前掲書 P17より)
「1987年から1997年にかけて、ベラルーシ共和国では、腎臓がんの症例数が2.4倍、甲状腺がんの症例数は3.5倍、直腸がんの症例数は1.4倍、結腸がんの症例数は1.6倍に増加した。」(前掲書 P47〜48より)
「新生児の一部は、発育不全と先天性欠損を患っていることも述べるべきである。生命維持に必要な臓器や系に重大な欠陥を持つ子どもの出生を防ぐ遺伝医学機関のあらゆる試みも望ましい結果を得ていない」(前掲書 P48より)
「チェルノブイリ事故は、世界中の人々の健康に大きな影響を与えた。放射能の病理学的影響は多種多様であって、それがもたらす影響の重大性はこれまで明らかになったものよりはるかに大きく、人々の生涯、あるいは数世代にわたって影響をおよぼすだろう」(前掲書 P53より)
原発事故によるさまざまな健康被害を憂慮するのは、福島県内で「健康相談会」をたびたび開催してきた小児科医の山田真医師も同じだ。山田医師は、むしろ、県民健康管理調査で発表される「しこりやのう胞」についてはきわめて慎重な態度をとって来たし、それよりも、心臓疾患や白血病のような血液の病気への懸念を示している。その点は、放射性物質による「個々の臓器の異常と生物全体の疾患」に警告を発し「放射能の病理学的影響は多種多様」だとするバンダジェフスキー博士の立場とかなりの共通点が見て取れる。
◇
そうした原発事故に対する危機的状況に対して、急がれるのが、子どもたちの放射能汚染地域からの避難である。このことについて、11月13日、〈ふくしま集団疎開裁判〉の支援者らは、《子どもの緊急避難に関する請願》として、全国から集められたおよそ9000筆の署名を、関係する国会議員に提出し、1日も早い子どもたちの放射能汚染地域からの避難やその権利保障について協力を求めた。
その署名提出先のひとつが山本太郎議員だ。参議院選(2013年7月)前から、“見殺し”とも言うべき文部科学省をはじめとする政府の政策を批判して来た山本議員は、「SPEEDI(放射能拡散予測システム)」の情報を隠し、的確な避難指示をせずヨウ素剤の配布を怠って住民に不必要な被曝をさせたこと等を挙げて「そもそも初動から国は対応を誤って、それが今まで来ている」と指摘。〈ふくしま集団疎開裁判〉の光前幸一弁護士も「今後も、いつ福島県の子どもたちを取り巻く環境が悪くなるか、予想できない。ぜひとも避難のシステム作りをお願いしたい」と申し入れた。
何度もチェルノブイリに視察に出向き『原発廃止で世代責任を果たす』(2012年4月、創森社刊)の著書もある民主党のしのはら孝議員も、《子どもの緊急避難に関する請願》に大いに理解を示す。「さきの戦争では、学童疎開が行なわれています。子どもたちの〈いのち〉を優先させたという意味では、戦前の為政者たちのほうが、いまの政権よりも責任感があります、原発事故でいちばん気をつけるべきは、被曝なのです」
議員会館を回ると、扉に〈2020年東京オリンピック開催〉を祝うポスターをでかでかと貼っている議員もいるが、どうして子どもたちの〈いのち〉を犠牲にしたままでオリンピックを開催できるのか。オリンピック開催も結構…、しかし、その前に子どもたちの避難が先である。いまの状態を放置して7年後のオリンピックの年にいったい日本はどうなっているのか――、それを考えると空恐ろしくなる。
(了)
《 参 考 》
11月13日に提出された「請願書」は以下の通り。
「子どもの緊急避難に関する請願書」
一 請願趣旨
原発事故からの復興は、子どもの復興(憲法で保障されている健康で文化的な生活を享受する権利)が何よりも最優先されるべきものです。日本国のリーダーとして未来を担う子どもの命の復興を最優先で実行し、子どもたちの命と未来のために復興税を使う事を求めます。
二 請願事項
1 チェルノブイリの教訓を生かして、子ども達を1mシーベルト/年以下の場所に避難する権利を認め、国がその費用を負担すること。
2 昨年6月に制定された「子ども・被災者生活支援法」を即時実行すること。
3 自主避難者に対する手厚い援助を実行すること。
4 福島県以外の東日本の子ども達にも「被曝検査」を即時実施すること。
以 上
《 備 考 》
◎ 〈ふくしま集団疎開裁判〉の会 文部科学省前アクション
〔日時〕 2013年12月6日(金)18時30分〜
〔場所〕 文部科学省前 (地下鉄「虎ノ門」駅または「霞ヶ関」駅下車)
※詳しくはこちらまで:http://fukusima-sokai.blogspot.jp/
◎ 「今なお続く原発被害〜子ども・被災者支援法/原発告訴団とふくしまの現状」
「福島原発訴訟団」等で活動する佐藤和良いわき市議による報告や講談師神田香織さんによる新作講談「福島の祈り」、それに「天草保養キャンプ」(2013年7月)の報告など。
〔日時〕 2013年11月16日(土)12時30分開場 13時開始 16時終了予定
〔場所〕 「JICA 地球ひろば」市ケ谷 2F国際会議場
〔備考〕 主催:NPO法人「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」 資料代1,000円
※ 詳細はこちらまで:http://www.support-fukushima.net
《関連サイト》
◎ 福島県 放射線医学県民健康管理センター
http://fukushima-mimamori.jp/thyroid-examination/
◎ 「県民健康管理調査」―甲状腺検査の実施状況について―
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/251112siryou2.pdf
◎ PARC自由学校
http://www.parc-jp.org/freeschool/
《関連記事》
◎ 小児がん増加をひそかに予見する県と国
http://www.janjanblog.com/archives/89807
◎ バンダジェフスキー博士 内部被曝への警鐘
http://www.janjanblog.com/archives/98749
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