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瀬直己社長ら経営陣が熱心なのは柏崎刈羽の再稼働ばかり〔PHOTO〕gettyimages
国民的大問題 どこまで行っても先は見えない 東電社員がみんなやる気をなくしたら フクイチから誰もいなくなる日
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37511
2013年11月13日(水)週刊現代
汚染水ばかりが注目されている福島第一原発で、新たな恐怖の作業≠ェ始まろうとしている。だが政治家も経営陣もその危険性への言及を避ける。将来を悲観した東電社員は次々と会社を去っている。
■こんな会社、辞めてやる
「このまま行ったら、フクイチからは誰もいなくなるだろうね」
フクイチ、つまり東京電力福島第一原発で働く作業員は、こう語る。
「もう現場には、ベテランと呼べる人はほとんどいない。全面マスクで必死に仕事をしても、日当はよくて1万5000円。ひどい下請けだと1万円を切る。民主党政権時代に野田(佳彦)総理が、耳を疑うような収束宣言をしたもんだから、それ以来、危険手当も出なくなった。ただでさえ線量が(年間の被曝限度を)オーバーして原発に慣れた作業員はどんどんいなくなっているのにね」
これまでもお伝えしてきた悲惨な作業員の現状。だがいま彼らは、東電本体の社員にもかつてない変化が起こっていると口々に指摘するのだ。
「東電の社員のなかには、11月を前にして完全にやる気を失っている人も多いんですよ。クレーン作業が始まったら、現場の危険度がグッと増すのがわかっているけれど、会社も政府もたいしたことないような顔をして、手当も出ない。そりゃ、やりきれないでしょう」「KK(柏崎刈羽原発)から来た応援要員の社員が、早く戻らせてくれと訴えている。周囲には『戻れないならオレも会社を辞めてやる』なんて漏らしている」―。
東電社員に会社を辞めると発言させた「11月のクレーン作業」。それは、4号機の使用済み燃料プールに保管されている、燃料棒の取り出し作業のことだ。
3・11の地震発生4日後、3月15日に水素爆発を起こした4号機。使用済み燃料プールのある5階から上は建屋が大きく破損し、プール内にもガレキが落下。
金属製の階段や足場、コンクリート片などが本来はミリ単位の傷も許されない燃料棒の上に降り注いだ。
元米国エネルギー省長官上級政策アドバイザーで同国の使用済み燃料に関する第一人者であるロバート・アルバレス氏はこう語る。
「福島第一の4号機の使用済み燃料集合体の数は1331本。これらは水のなかにあるため放射線が大幅に遮蔽されていますが万が一、水から出してしまったら近寄った人間はすぐに致命的な被曝をしてしまいます。燃料を取り出すには水中で燃料棒を容器に移し、水のなかに入ったままの状態で取り出す必要があるのです。また、使用済み燃料同士が近づくと、再臨界が起きる可能性も高まります」
汚染水も十分すぎるほど深刻な影響をもたらしているが、燃料棒の取り出しはこれまでとは次元の違う危険性をはらむ作業だ。
東電はこれまでに、爆発によって激しく損壊した4号機の5階床から上の構造物を撤去。そのうえで4号機建屋のすぐ横から、アルファベットのLの字が上下逆さになったようなかぎ型の建物を建設し、燃料棒を取り出すための巨大な天井クレーンを設置した。
このクレーン施設には今年8月、茂木敏充経産大臣も訪れ、作業が順調に進んでいるとアピールしようとした。だが、実際に燃料棒の取り出し作業にかかわる協力企業の社員はこう話す。
「作業を11月に始めるというのは、事態が進展していると見せたい政治家と本店の都合で決められたようなものですが、あわてて始めたってこの作業には10年以上かかる。その間、絶対にアクシデントがないとは誰にも言い切れない。もう神頼みですよ。
先日も作業にかかわる別の会社の社長が、神社でお祓いを受けて、お札をもらったと話していました。何しろ、9月には実際に、3号機で使っていたクレーンのアームが折れてしまった事故もありましたからね」
■若手がどんどんいなくなる
そうした作業を前に、'13年3月段階で約3万6000人を抱えていた東電からは次々と社員が辞めている。東電広報部によると今年4~6月の3ヵ月間に依願退職した社員は109人。ちなみに事故前の'10年度には年間134人だった依願退職者は'11年度には465人、'12年度には712人に増加しており、
「'12年度の712人は、そのうち7割が40歳以下です」(東京電力広報部)
転職しやすい若手ほど、今後、延々と危険な燃料棒取り出し作業をつづけることになる会社の将来を悲観し、職場を去っている。
だが、いかに東電社員や現場作業員が減る一方でも、取り出し作業は早期に進めなければならない。爆発でボロボロになった4号機の建屋がいつまでもつかわからないからだ。元東電社員で、フクイチで働くうちに原発に疑問を抱き、2000年に退社した技術者の木村俊雄氏もこう話す。
「現場はいま、本当に大変な状況だと思いますが、4号機から燃料棒を早く取り出したほうがいいのは間違いない。地震などで燃料プールが破損したら、大変なことが起きますから。
たとえコンピューターでの解析で、4号機の建屋やプールは地震が来ても大丈夫とされていても、その結果が絶対に信用できるかなんて誰にもわからない。もしプールが破損して水が漏れ、燃料棒が空気に触れれば、福島の現場が危険などころか、東京にも人が住めなくなる可能性さえあるでしょう」
原発などのプラント技術者たちの有志団体で、福島第一原発事故の検証も行っているプラント技術者の会の小川正治氏はこう話す。
「地震があるたびに4号機のプールは大丈夫かとハラハラしているんです。いよいよ取り出し作業が始まると聞いても、もはや技術問題うんぬんの前に、成功してほしいと祈るような気持ちで見ています。
クレーンでの作業自体は原発内ではずっと行われてきた作業ですが、これからは高線量下での作業になり難しさは増している。燃料棒を入れる容器は、中身と合わせて91~92tにもなります。うっかり落としたりすることのないように対策を施すことになっていますが、先々1~3号機の約1500本を取り出すのも含めて長い年月をかけてやる作業ですからヒューマンエラーもありえる。本当に、無事に終わってくれないかと祈るばかりですよ」
そんな重責を背負うフクイチで働くある東電社員はいらだちを隠せない様子でこうコメントした。
「本店ではいまだにフクイチのことを他人事のように思っている管理職がたくさんいるんですよ。
事故以来の人事を見ても、デキる社員は転職し、どうにもならないような連中が要職についていく。彼らは世間の目を気にして、彼らだけでコッソリ飲みに行っては、政府がもっとカネを出せとか原子力規制委員会がウルサいとか、挙げ句の果てにボーナスが安いなんて言っている」
■心が折れる
東電では管理職の給与は3割カットだが、一般職も2割カットされている。こんな上司の弛緩した姿を見れば、若手部下たちに使命感や責任感に燃えろと言っても無理というものだ。
本店で事務系の業務を行う40代の男性はこう話す。
「フクイチの現場は当然ですが、福島や東京など各地で被災者と直接向き合う補償担当者もつらいでしょう。自分たちは大変なことをしでかしたんだという思いは社員のなかでも人一倍感じているようです。それで、何とかしなければというモチベーションだけでやっている。
もともと補償担当になったのは、社内でも上司にモノをはっきり言う、煙たがられていたタイプが多い。だから、仕事はできる。
でも、実際にやれることと言えば、被災者に頭を下げつづけることがほとんどですからね」
東電は1~4号機の廃炉費用にすでに9600億円を引き当てているが、今後10年でさらに1兆円を積み立てる。この金額は意気込みを見せるための政治的アピールに過ぎないという評価もあるが、いずれにしろ廃炉のために莫大なコストを払っていくのは事実だ。
社員のなかには、子供が「お前のパパは東電だ!」といじめられるからとわざわざ引っ越し、周囲に職業を隠して息をひそめて暮らしている例もあるという。
このように、社員のモチベーションを下げている要因には、今後の福島での作業の危険性や社会からの厳しい視線も大きいが、企業としての東電の将来像が見えないこともある。
東電には、国に50%以上の議決権を渡して実質国有化される際に投入された1兆円に加え、補償費用などの支援も行われたことで、すでに国から計3兆円超ものカネがつぎ込まれている。だが汚染水処理などで次々と不手際が発覚し、一向に事態が改善していないことが露呈してしまった。
国民の批判を受け、しびれを切らした与野党は、汚染水処理や廃炉事業など、バッドカンパニー≠ニ呼ばれる部門を東電から切り分け、対策を完全に国の責任で行う案を出している。
与党・自民党では10月30日、大島理森・東日本大震災復興加速化本部長が分社化の提言を石破茂幹事長らに説明し、了承を得た。
だが、東電を存続させたまま、国費で廃炉や汚染水対策を丸抱えするのは国民に説明がつかないとして、反対論は根強い。
東電を破綻処理して経営責任を明確にせよとか、完全国有化して国が処理を主導すべきとの意見もある。
いずれの方策をとっても共通するのは、東電の株や社債が紙クズ同然になる可能性があるということだ。東電の株主総数は86万7704人。99・3%は個人株主だが、一方で東京都が4267万株、三井住友銀行が3592万株など地方公共団体や大手金融機関が大株主となっている。
また社債残高も4兆4036億円で、破綻時に東電がこれを弁済できなければ、日本経済に与える影響は計り知れない。最悪の場合、メガバンクや生保の連鎖破綻、東京都など行政機関の機能停止も起こりうるのだ。
■最後は自衛隊に頼むしかない
東電が本当に破綻したら、私たちの家や会社に供給される電力もストップしてしまうのだろうか。
「政府も東電も、最後の最後まで電力の安定供給にはこだわるでしょうが、社員のやる気、モラルが低下すれば停電が絶対にないとは言い切れないですよ。
電力業界ではよく知られた話ですが、実際に'00年米国のカリフォルニア州では、電力危機が起こった際に、のちに破綻する電力会社エンロンが電気料金を少しでも吊り上げるために送電を停止したこともあるんですよ」(協力会社社員)
では万が一、東電が破綻したり、将来的に人員不足で、数十年にもおよぶフクイチでの作業をつづけられなくなったら、誰がフクイチでの作業にあたるのか。
「東電がここから逃げ出して、撤収したら?そりゃ、ちょっとした地震やら台風で核燃料が再臨界したり汚染水がジャブジャブ漏れて、3・11の直後に匹敵する原子力災害になりますよ。
だったら、もうあのときみたいに自衛隊が出てくるしかないんじゃないか。あるいは、もう日本に任せていたら世界中が汚染されると、米軍や国連が出てくるかもしれない。でもそうなれば、日本の主権なんか消し飛んで、世界から無視される国になるんでしょうけどね」(前出の作業員)
そんな事態を防ぐためにどうするか。前出の技術者、木村氏はこう指摘する。
「与野党は、事故処理や廃炉作業だけを会社から切り離して、原発の運転は東電がつづけると言っているようですが、僕は、それなら原発事業全体を切り離せばいいと思う。原発は採算が合う事業なんだというなら、独立した会社になってもいいでしょう。
しかし、本当はやはり採算など合わないんですよ。いま得だ得だと言っている経営陣はいずれ死んでいくから構わないでしょうが、後の世代は延々と核のゴミの管理を引きずらされる。これにはとんでもなくカネがかかります。
原発を切り離すにしろ切り離さないにしろ、原発推進一辺倒ではない中立的な人がトップにつかなければ、未来はないと思います」
私たちも漠然と、電気はいつまでも来る、フクイチもそのうち片付くなどと思っていては大間違いなのだ。
「週刊現代」2013年11月16日号より
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