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4号機の燃料棒取出し「広島原爆が撒き散らしたセシウム137の14000発分がまだプールの底に眠った状態のままになっています」〜第44回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no44/
WEB公開日 11月9日 小出裕章ジャーナル
聞き手:
今日のテーマは福島第一原発の燃料棒取り出しについてです。11月に入ってこの燃料棒を取り出す予定が組まれていますけれども、これは廃炉作業の一環と聞いております。まず、2011年3月11日の事故後、4号機はどういう状態にあるのでしょうか?
小出さん:
2011年3月11日に4号機は定期検査の最中でした。そのため原子炉の炉心の中には燃料は一切ありませんで、全ての燃料が使用済み燃料プールというところに移されていた状態で事故に突入しました。その使用済み燃料プールの中には、もともとの使用済み燃料もありましたし、定期検査のために原子炉の中にあった燃料棒も全て取り出して使用済み燃料プールにあったのです。
大量の使用済みになった燃料棒がプールの中にあるという状態で事故になりまして、運転中でなかったにも関わらず、4号機の原子炉建屋でも爆発が起こりまして、建屋が大規模に破壊されてしまいました。
そして4号機の場合には、かなり特殊な爆発が起こりまして、原子炉建屋の最上階、オペレーションフロアというところがあって、1号機の爆発も3号機の爆発もそこだけが吹き飛んでいるのですが、4号機の場合にはオペレーションフロアと呼んでいるフロアの更にその下の階までもが、爆発で壁が吹き飛んでしまっているのです。実はそこの階に使用済み燃料プールが埋め込まれているわけで、使用済み燃料棒プールは宙吊りのような形になってしまったのですね。
聞き手:
建物の中に、宙吊り状態になったのですか?
小出さん:
そのことの危険性は東京電力もすぐに気がつきまして、使用済み燃料棒プールが崩れ落ちないようにということで、下の階から鋼鉄製の支えを入れて、そしてコンクリートで固めるという工事をやったのですが、その工事自身が猛烈な汚染環境の中でやったわけで、しっかりとした工事が行われたのかどうか私は大変不安に思っていますし、実際上、爆発が起きてしまって、その支えを建てようと思った階の床の部分すら損傷しているわけですから、支えを入れられたところは使用済み燃料プールの約半分だけなのです。残りの半分は何の支えも入れられないまま、結局、宙吊り状態のまま今日まで来てしまっています。
その使用済み燃料プールの中には、先ほども聞いていただいたように大量の使用済み燃料棒が眠っていて、私の計算によると、広島原爆が撒き散らしたセシウム137の1万4000発分がまだ、プールの底に眠った状態のままになっています。
聞き手:
燃料棒が、広島原爆の1万4000発分あるということですか?
小出さん:
そうです。使用済み燃料がプールの底に入れてあるわけですが、その燃料の中に広島原爆の1万4000発分のセシウムが含まれているということです。
聞き手:
燃料棒取り出しは1533本ですが、燃料棒1本はどれぐらいの大きさのものなのですか?
小出さん:
今、おっしゃったのは燃料棒ではなくて、燃料集合体と呼んでいるものです。燃料集合体というものは、燃料棒が8行8列に組み合わされたものです。1本1本の燃料棒は直径が1センチ、長さが4メートルという、細長い物干し竿のようなものです。
聞き手:
これをプールから取り出して50メートル離れた共用プールに移すという作業ですが、こういう作業が必要という理由は何でしょうか?
小出さん:
先ほどから聞いていただいているように、4号機の使用済み燃料プールは、爆発によって建屋が壊されて宙吊りのような状態になっています。今現在も福島第一原発周辺では毎日のように余震が起きているわけですけれども、もし大きな余震が起きて使用済み燃料プールが崩れ落ちてしまって、中に水を蓄えることができないような状態になってしまいますとまた燃料が溶けてしまうわけですし、大量の放射性物質がまた吹き出してきてしまうということになるわけです。ですから少しでも危険の少ないところに一刻も早く移さなければいけないという仕事があったのです。
聞き手:
これは緊急を要する作業ではあるということですね?
小出さん:
本当はすぐにでもやって欲しかったのですけれども、ただし使用済みの燃料というのはプールの底から空気中に吊り上げてしまいますと、周辺の人がバタバタと死んでしまうというほどの放射能性物質の塊なのです。
ですから簡単にはプールからまず出せないのです。出すためには私たちがキャスクと呼ぶ巨大な鋼鉄と鉛の容器をプールの底に沈めまして、そのキャスクの中に使用済み燃料集合体を1体、2体、3体と入れていきまして、約20体ぐらい入るのですが、その段階でキャスクの蓋をしてキャスクごとプールの水面から引き上げるということをしなくてはいけないのです。
聞き手:
これはクレーンで引き上げるのですか?
小出さん:
そうです。キャスク自身が100トンもある重さのものですので、巨大なクレーンがないと吊り上げることができないのですが、すでに4号機の建屋は爆発で吹き飛んでしまいまして、クレーンも何もみんな壊れてしまって使えなかったのです。
ですから東京電力は今日までかけて4号機の壊れてしまった建屋を撤去しまして、その部分に新しい巨大な建屋を立てまして、そこに巨大なクレーンを設置してようやく、11月、まあ、今月から取り掛かれるところまでやっとたどり着いたのです。
聞き手:
キャスクという大きな容器をプールの中に沈めて、燃料棒を入れていくということですが、どうやってやるのですか?人手でやるのですか?機械でやるのですか?
小出さん:
元々、機械です。燃料交換器という機械がありまして、それで実行するのですが、元々あった燃料交換器自身はすでに爆発で壊れてしまいましたので、新しい燃料交換器をまた新たにそこに設置したのです。それを使ってやることになります。
聞き手:
この作業、順調に行くのでしょうか?心配になるのですが・・・。
小出さん:
私自身も大変心配で、4号機は1号機、2号機、3号機に比べると、放射能の汚染ということでは比較的少なかったのですが、それでも使用済み燃料プールの周辺は放射能で汚れているわけですし、そこで作業をしようとすれば、作業員が次々と被曝をしてしまうというそういう中で作業をしなければいけないわけです。熟練した作業員がきちんと集められるかどうかということが心配です。
聞き手:
作業員が集められるかどうかというのは基本的な問題ですね?
小出さん:
そうです。その上で、爆発によって使用済み燃料プールの中には大量の瓦礫がすでに落っこちてしまっていて、その瓦礫をこれまで取り除いてきたのではあるのですけれども、それでも大小様々な瓦礫がプールの中に残っているわけですし、瓦礫が崩れ落ちた時に使用済み燃料そのものが変形してしまっていたりすると思った通りには抜けない、ラックの中に入っているのですが抜けないし、キャスクの中にうまく入れることもできないかもしれないのです。これはやってみるしかないのですけれども、被曝環境の中でやらなければいけないし、なかなか困難な作業になるだろうと思います。
聞き手:
やってみなければ分からない。それでもやらなければいけないのですね。
小出さん:
そうです。必ずやらなければいけません。
聞き手:
これだけでもいろいろ問題がありますが、さらに地震が起きて崩れ落ちると大変なことになりますよね?
小出さん:
崩れ落ちてしまうことを私自身、一番恐れているですが、これまで福島第一原発事故で大量に吹き出してしまったセシウム137の量というのは日本国政府によれば、広島原爆の168発分だと言っているのですが、先ほど聞いて頂いたように、使用済み核燃料プールの底には14000発分もあるわけですから、これまで、最悪の場合にはこれまでの数10倍、あるいは100倍と言った放射性物質が吹き出してくる可能性があるということなのです。
聞き手:
使用済み核燃料を移すということは、4号機だけでなく、1・2・3号機でもやらなければいけないということですね?
小出さん:
そうなのです。先ほど、聞いていただいたように、4号機は放射能の汚染という意味では比較的汚染が少なかったので、まだ使用済み燃料プールの近くまで作業員が行くことができるのですけれども、1・2・3号機の中には、そこに行くまで作業員がまず行かれませんので、これから一体どうやって作業をできるか、大変不安に思っています。
聞き手:
この燃料棒取り出しは大事な作業ですので、注目していきたいと思います。
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