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被曝と健康13 (一般編−5)藤井がんセンター部長の論理
http://takedanet.com/2013/10/post_9cc6.html
平成25年10月15日 武田邦彦(中部大学)
東葛6市の被曝評価について、中村先生の心境を整理してみましたが、次に、がんセンターの藤井部長の論理をやや簡単にチェックしてみます。
まず、藤井部長は一般公衆の被曝限度が1年1ミリであることを書き、「自然に病気になる人」との比較をしています。この表では、10万人あたりガン(被曝によって新たに発生するガン)は、1ミリの時には5人ですむが、東葛6市では29人になります。しかし、藤井先生は自然にガンで死ぬ人は3万人もいるので、それに比べるとまったく問題にならないぐらいガンになる人が少ないという見方をしています。
結論はハッキリ書いていませんが、除染も避難もしなくても良いという中村先生の考えを補強しているという点では「このまま居ても問題ない」と言うことになります。そして、藤井さんの表は、福島事故が起こってから国立がんセンターがとった一般的な見方でもあります。
この計算に間違いはありませんが、トリックが潜んでいます。それは、自然のガンで死ぬ人のほとんどが「天寿を全うしたときにガンで死んだ人」であり、「若いときにガンになった人」ではないことで、意味のある比較では、たとえば小児ガン(15才まで)で死亡する人は日本では平均10万人に2人ですから、被曝によってガンになるのがやや若年層に多いので、15才まで、15−50才、50才以上の3つの年齢でほぼ均等に起こるとすると、3分の1にして10万人あたり10人になります。
つまり、天寿を全うして死ぬときにガンで死ぬということではなく、被曝して子どもがガンになるということを考えますと、もともと10万人あたり2人しか死なないのに、それが調査をした地域では10人の発生が予想される。つまり子どもでガンになるのが5倍になると書くのが専門家としては正確な見方です。
ところが、天寿を全うして死ぬときにガンで死んだという人の数と、被曝して若くして死んだという人の数を、おなじ「数」として比較して被曝の影響は小さいとしています。これは藤井部長の「ウソ」です。
つまり、がんセンターには「年齢別ガン死亡者数」という統計がありますし、天寿をまっとうしてガンで他界する場合と、子どもでガンになることとの差もよくご存じだからです。
よく「ガン年齢」と言われるように、普通の人生では年齢と共にガンに対する抵抗力が下がり、ガンになるが男性では48才ぐらいといわれます。福島原発事故で多くの人が心配しているのが、子どもから働き盛りの人がどのぐらい危険なのかであって、天寿を全うして死ぬ人のガンが少し増えるかどうかを心配しているのではありません。
まして藤井さんは国立がんセンターというところに自らが命をかける仕事を得て、活躍しているのですから、国民が少しでもガンにならないように全力を尽くしたいという熱意があるはずです。それなのに、なぜ、「このままでは子どものガンは5倍になる」と書かなかったのか?
福島事故以来、東大教授も含めて、「国立」と名のつく機関の研究者のほとんどがウソをついたことを見ると、国からかなり強い圧力があり、また憲法が保証している「学問の自由」は実際的に役に立っていないと考えられます。「査定」のない大学教授はまだ独立できるが、国立研究所の人は上司の「査定」があるから、国の方針に反すれば出世に不利になります。
でも、そのような「国立研究所の出世問題」によって、子どものガンが増えることについて私は許されないと思いますが、藤井部長は「適切」としたということです。
藤井部長はご自分のシートで、1年1ミリが「法令=国民の合意」であり「耐えられる限界」であることを示しているので、それ以上の被害をがんセンター部長が「耐えられる」と個人的に決めることはできないことは、充分にご存じだったに相違ない。
産業界や専門家集団の科学的倫理が崩れていて、藤井部長一人では抵抗できないほどだったと推定される。機会があったら藤井部長に直接、お聞きしてみたいが、おそらく「法令」には触れず、「国民を不安に陥れるより、被曝による影響が小さかった」とお話になると思うが、専門家は政治家でも殿様でもないから、自分の専門以外(社会の反応)を考慮する必要も無いし、また一般的にはその力や権限があるとも考えられていない。
職務から考えると、公務員の義務違反になると思う。
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